(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する導電性高分子(A)並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びハロゲン化物より選択される少なくとも一種の化合物(C)を含む導電性組成物。
スルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する導電性高分子(A)並びに同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基を含み且つ融点30度以上の化合物(D)を含む導電性組成物。
スルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する導電性高分子(A)並びに同一分子内に塩基性基及び酸性基を少なくとも各々1種以上含む化合物(E)を含む導電性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「可溶性」とは、水、塩基及び塩基性塩を含む水、酸を含む水、又はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の溶媒、又は、それらの混合物10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
また、「導電性」とは、10
9Ω・cm以下の体積抵抗率(10
−9S/cm以上の導電率(電気伝導率))を有する
また、本発明において「分子量(M)」とは、重量平均分子量(Mw)を意味する。
また、本発明において、「酸性基」とは、スルホン酸基又はカルボキシ基である。スルホン酸基及びカルボキシ基は、それぞれ酸の状態(−SO
3H、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO
3−、−COO−)で含まれていてもよい。
【0035】
<導電性高分子(A)>
本発明の組成成分であるスルホン酸及び/又はカルボキシル基を有する導電性高分子(A)としては、特に限定されず、公知の導電性高分子を用いることができる。
【0036】
具体的には、無置換又は置換基を有するポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリイソチアナフテン、ポリフラン、ポリカルバゾール、ポリジアミノアントラキノン及びポリインドールからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のπ共役系高分子中の骨格又は該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基及び/又はカルボキシル基及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩、あるいはスルホン酸基及び/又はカルボキシル基及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩で置換されたアルキル基又はエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性高分子が挙げられる。
【0037】
この中でもポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン骨格を含む導電性高分子が好ましい。特に、好ましい導電性高分子は、下記一般式(2)〜(4)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の繰り返し単位を、導電性高分子全体の繰り返し単位の総数中に20〜100モル%含有する導電性高分子である。
【0041】
前記一般式(2)〜(4)において、Xは硫黄原子又は窒素原子を表し、R
11〜R
21は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、−SO
3H、−R
61SO
3H、−OCH
3、−CH
3、−C
2H
5、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R
60)
2、−NHCOR
60、−OH,−O−、−SR
60、−OR
60、−OCOR
60、−NO
2、−COOH、−R
61COOH、−COOR
60、−COR
60、−CHO及び−CNからなる群より選ばれた基を表し、ここで、R
60は炭素数1〜24のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R
61はアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。
但し、一般式(2)のR
11〜R
12、一般式(3)のR
13〜R
16、一般式(4)のR
17〜R
21はそれぞれ少なくとも一つは−SO
3H、−R
61SO
3H、−COOH、−R
61COOH又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた基である。
【0042】
本発明で用いる導電性高分子(A)は、導電性や溶解性の観点から、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0044】
式(1)中、R
1〜R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又はI)であり、R
1〜R
4のうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩であり、前記塩を形成している塩基性化合物の含有量は0.1質量%以下である。
ここで、前記塩基性化合物の含有量が0.1質量%以下であれば、高い導電性を有する。
【0045】
ここで、「酸性基」とは、スルホン酸基又はカルボキシ基である。スルホン酸基及びカルボキシ基は、それぞれ酸の状態(−SO
3H、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO
3−、−COO−)で含まれていてもよい。
また、「塩」とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩のうち、少なくとも一種を示す。
【0046】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位としては、製造が容易な点で、R
1〜R
4のうち、いずれか1つが炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つがスルホン酸基であり、残りが水素であるものが好ましい。
【0047】
前記導電性高分子は、該導電性高分子を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を10〜100モル%含有することが好ましく、50〜100モル%含有することがより好ましく、pHに関係なく水及び有機溶剤への溶解性に優れる点で、100モル%含有することが特に好ましい。
【0048】
また、前記導電性高分子は、導電性に優れる観点で、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
【0049】
本発明の可溶性アニリン系導電性高分子は、前記一般式(1)の繰り返し単位、すなわち芳香環に対する酸性基の含有率を、可溶性向上の観点から、70%以上含まれるものが好ましく、さらに80%以上含まれるものが好ましく、特に90%以上含まれるもの好ましい。ここで、芳香環に対する酸性基の含有率が70%以下のものは水に対する溶解性が不十分で好ましくない。また、芳香環に対する酸性基の含有率が高くなるほど溶解性は向上しコンデンサ製造に適している。
【0050】
また、前記導電性高分子としては、前記一般式(1)で表される以外の構造単位として、可溶性、導電性及び性状に影響を及ぼさない限り、置換又は無置換のアニリン、チオフェン、ピロール、フェニレン、ビニレン、その他二価の不飽和基及び二価の飽和基の少なくとも一種の構造単位を含んでいてもよい。
【0051】
前記導電性高分子(A)としては、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0053】
式(5)中、R
22〜R
37は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン(−F、−Cl、−Br又はI)であり、R
22〜R
37のうち少なくとも一つは酸性基である。また、nは重合度を示す。
【0054】
前記一般式(5)で表される構造を有する化合物の中でも、溶解性に優れる点で、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)が特に好ましい。
【0055】
導電性高分子の質量平均分子量は、3000〜1000000が好ましく、3000〜50000がより好ましい。導電性高分子の質量平均分子量が3000以上であれば、導電性、成膜性及び膜強度に優れる。一方、導電性高分子の質量平均分子量が1000000以下であれば、溶媒への溶解性に優れる。
導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
【0056】
導電性高分子の質量平均分子量は、導電性、成膜性及び膜強度の観点から、3000〜1000000が好ましく、3000〜100000がより好ましい。
導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
【0057】
導電性高分子の質量平均分子量は、導電性、成膜性及び膜強度の観点から、3000〜1000000が好ましく、5000〜100000がより好ましい。
ここで、導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
【0058】
前記アニリン系導電性高分子の重量平均分子量は、導電性、成膜性及び膜強度の観点で、ポリエチレングリコール換算で3000以上のものが、好ましく、重量平均分子量5000以上50万以下のものがさらに好ましい。ここで、重量平均分子量が3000以下の場合、溶解性は優れているが成膜性及び導電性が不足しており、50万以上の場合、溶解性及び多孔質成形体への含浸性が不十分である。
【0059】
また、固体電解コンデンサは、導電率がよいものほど周波数特性などの性能が良いことから、導電率が0.01S/cm以上、好ましくは0.05S/cm以上の可溶性導電性高分子が用いられる。
【0060】
本発明の固体電解コンデンサの実施形態について、
図2を用いて説明する。
本発明の固体電解コンデンサは、例えば、誘電体酸化膜が形成された被膜形成金属(陽極)と、グラファイト層および金属層(陰極)との間に、セパレータを設けることができる。陽極と陰極との間にセパレータが設けられた固体電解コンデンサとしては、
図2に示すような巻回型の固体電解コンデンサ20が挙げられる。
なお、
図2において符号21は「陽極」であり、符号22は「陰極」であり、符号23は「セパレータ」である。
【0061】
巻回型の固体電解コンデンサ20は、陽極21と陰極22との間にセパレータ23を設け、これらを巻き回して巻回体とした後、被膜形成金属上に形成された誘電体酸化膜上に固体電解質層(図示略)を形成し、さらに陽極21と陰極22に外部端子24を接続して外装を施すことで得られる。誘電体酸化膜上に導電性高分子溶液を塗布する際は、ディップコート法が好適である。
また、陽極21と陰極22との間にセパレータ23を設けた後、上述した積層型の固体電解コンデンサと同様にして被膜形成金属上に形成された誘電体酸化膜上に固体電解質層を形成してから、これらを巻き回して巻回体としてもよい。
【0062】
巻回型の固体電解コンデンサ20に使用されるセパレータ23の材質としては、繊維、紙、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
また、セパレータ23として、絶縁油を染み込ませたセパレータが用いられることもある。上記絶縁油としては、鉱油、ジアリルエタン油、アルキルベンゼン油、脂肪族エステル油(レイン酸エステル、フマル酸エステルなど)、芳香族エステル油(フタル酸エステルなど)、多環芳香族油、シリコーン油等の電気絶縁油またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0063】
導電性や耐熱性の観点から、導電性高分子(A)は、下記工程(I)〜(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(X/Y)が1.20以上である場合が好ましい。
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性高分子を固形濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
(II)前記試験溶液について、ゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
(III)前記工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が15000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求める工程。
【0064】
工程(I)は、導電性高分子を溶離液に溶解させて、試験溶液を調製する工程である。
溶離液は、溶媒に溶質が溶解した液である。溶媒としては、水、アセトニトリル、アルコール(メタノール、エタノールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
溶質としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリシン、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸などが挙げられる。
【0065】
工程(I)で用いる溶離液のpHは10以上である。pHが10未満であると、定量値がぶれることがある。pHが10以上の溶離液を用いることで、安定した測定結果が得られる。
pHが10以上の溶離液は、例えば以下のようにして調製することができる。
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合して、混合溶媒を得る。ついで、得られた混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を得る。
このようにして得られる溶離液は25℃でのpHが10.8である。
なお、溶離液のpHは、溶離液の温度を25℃に保持した状態で、pHメータを用いて測定した値である。
【0066】
pHが10以上の溶離液の調製方法は上述した方法に限定されず、例えば水とメタノールの混合溶媒(水:メタノール=8:2)を用いて、固形分濃度が20mmol/Lの炭酸ナトリウムと、固形分濃度が30mmol/Lの炭酸水素ナトリウムを別々に調製し、これらを混合して溶離液としてもよい。
【0067】
導電性高分子は、溶離液に加えたときの固形分濃度が0.1質量%になれば、固体状で溶離液に添加して溶解させてもよいし、予め溶媒に溶解させて導電性高分子溶液とし、この導電性高分子溶液を溶離液に添加してもよい。試験溶液中の導電性高分子の固形分濃度が0.1質量%であれば、溶離液のpH緩衝作用が十分に発揮され、安定した測定結果が得られる。
なお、導電性高分子溶液を用いる場合、溶離液に加えたときに導電性高分子の固形分濃度が0.1質量%になれば、導電性高分子溶液の固形分濃度については特に制限されないが、1.0質量%以上が好ましい。導電性高分子溶液の固形分濃度が1.0質量%未満であると、溶離液に加えたときに溶離液のpH緩衝作用が十分に働かず、試験溶液のpHが10未満となり、定量値がぶれて、安定した測定結果が得られにくくなる。
また、導電性高分子溶液に用いる溶媒としては、後述する導電性高分子が可溶な溶媒が挙げられる。中でも、水が好ましい。
【0068】
工程(II)は、試験溶液について、高分子材料評価装置を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定する工程である。
高分子材料評価装置は、ゲル浸透クロマトグラフを備えており、分子量の大きさにより化合物(ポリマー、オリゴマー、モノマー)を分離して分析できる。
ゲル浸透クロマトグラフには、フォトダイオードアレイ検出器、UV検出器などの検出器が接続されている。
【0069】
工程(II)では、GPCにより例えば
図1に示すようなクロマトグラムが得られる。
図1に示すクロマトグラムは、縦軸が吸光度、横軸が保持時間であり、高分子量体は比較的短い保持時間で検出され、低分子量体は比較的長い保持時間で検出される。
【0070】
工程(III)は、工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程である。
具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料については固形分濃度が25ppmとなるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製する。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成する。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する。
【0071】
工程(IV)は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、例えば
図1に示すように、分子量(M)が15000Da以上の領域(x)の面積(X)を求める工程である。
また、工程(V)は、分子量(M)が15000Da未満の領域(y)の面積(Y)を求める工程である。
工程(VI)は、面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求める工程である。
【0072】
本発明の導電性高分子は、上述した評価方法により算出した面積比(X/Y)が1.20以上である場合が好ましい。面積比(X/Y)が1.20以上であれば、高い導電性を示す。かかる理由は以下のように考えられる。
【0073】
導電性高分子には、その製造過程において副生するオリゴマー、未反応モノマー、不純物などの低分子量体が含まれている場合が多い。これら低分子量体は、導電性低下の原因となると考えられる。
面積(Y)は、分子量(M)が15000Da未満の領域の面積であり、この領域には主にオリゴマー、モノマー、不純物などの低分子量体が存在する。面積比(X/Y)が1.20以上であれば、導電性高分子に含まれる低分子量体の割合が少なく、導電性アニリン系ポリマーの分子量が高いので、高い導電性を示す。
なお、面積比(X/Y)の値が大きいほど、導電性高分子に含まれる低分子量体の割合が少ない。従って、面積比(X/Y)の値は大きくなるほど好ましく、具体的には1.30以上がより好ましく、1.50以上がさらに好ましい。
【0074】
<導電性高分子(A)の製造方法>
導電性高分子(A)は、アニリン誘導体を、塩基性化合物の存在下、酸化剤を用いて重合することで得られる。
本発明で用いるアニリン誘導体は、スルホン基及び/又はカルボキシ基を有し、このような酸性基置換アニリン誘導体としては、酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩よりなる群から選ばれる化合物が好ましい。
また、酸性基置換アニリンとしては、優れた導電性を発現し、且つ水溶性を向上させるという点を考慮すると、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0076】
式(6)中、R
38〜R
42は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖又は分岐のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又はI)であり、R
38〜R
42のうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩である。
【0077】
前記一般式(6)で表される化合物の代表的なものは、スルホン基置換アニリン又はカルボキシ基置換アニリンであり、中でも、得られる導電性高分子の導電性や溶解性等の観点から、アミノ基に対して酸性基がo−位又はm−位に結合している化合物が好ましい。
【0078】
スルホン基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンスルホン酸、アニリン−2,6−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、アニリン−3,5−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−3,4−ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
【0079】
アミノベンゼンスルホン酸類以外のスルホン基置換アニリンとしては、例えば、メチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t−ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類;メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類などを挙げることができる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性高分子が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、又は、ハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0080】
カルボキシ基置換アニリンとして代表的なものはアミノベンゼンカルボン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンカルボン酸、アニリン−2,6−ジカルボン酸、アニリン−2,5−ジカルボン酸、アニリン−3,5−ジカルボン酸、アニリン−2,4−ジカルボン酸、アニリン−3,4−ジカルボン酸などが好ましく用いられる。
【0081】
アミノベンゼンカルボン酸類以外のカルボキシ基置換アニリンとしては、例えば、メチルアミノベンゼンカルボン酸、エチルアミノベンゼンカルボン酸,n−プロピルアミノベンゼンカルボン酸、iso−プロピルアミノベンゼンカルボン酸、n−ブチルアミノベンゼンカルボン酸、sec−ブチルアミノベンゼンカルボン酸、t−ブチルアミノベンゼンカルボン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類;メトキシアミノベンゼンカルボン酸、エトキシアミノベンゼンカルボン酸、プロポキシアミノベンゼンカルボン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;フルオロアミノベンゼンカルボン酸、クロロアミノベンゼンカルボン酸、ブロムアミノベンゼンカルボン酸等のハロゲン基置換アミノベンゼンカルボン酸類などが挙げられる。その他のカルボキシ基置換アニリンの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性高分子が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類又はハロゲン基置換アミノベンゼンスルホン酸類が実用上好ましい。
これらのカルボキシ基置換アニリンはそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種(異性体を含む。)以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
これら一般式(6)で表される酸性基置換アニリンの中でも、製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が特に好ましい。
【0082】
塩基性化合物としては、無機塩基、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが用いられる。
【0083】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物の塩などが挙げられる。特に、得られるポリマーの導電性や溶解性等の観点から、水酸化ナトリウムを用いることが実用上好ましい。
【0084】
脂式アミン類としては、下記一般式(7)で表される化合物、又は下記一般式(8)で表されるアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
【0086】
式(7)中、R
43〜R
45は、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0088】
式(8)中、R
46〜R
49は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0089】
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン及びこれらの骨格を有する誘導体、並びにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
【0090】
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリン及びこれらの骨格を有する誘導体、並びにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
【0091】
塩基性化合物としては、無機塩基が好ましい。また、無機塩基以外の塩基性化合物の中では、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン等が好ましく用いられる。
無機塩類やこれらの塩基性化合物を用いれば、高導電性で、かつ高純度な導電性高分子を得ることができる。
これらの塩基性化合物はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0092】
塩基性化合物の濃度は、反応性や導電性の観点から、0.1mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0mol/Lであり、特に好ましくは0.2〜8.0mol/Lである。
【0093】
前記酸性基置換アニリン誘導体(モノマー)と塩基性化合物の質量比は、反応性や導電性の観点から、モノマー:塩基性化合物=1:100〜100:1であることが好ましく、10:100〜100:10であることがより好ましく、10:90〜90:10であることがさらに好ましく、10:20〜10:5であることが特に好ましい。
【0094】
酸性基置換アニリンと塩を形成できるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどが挙げられる。
【0095】
酸性基置換アニリンと塩を形成できる置換アンモニウムとしては、脂式アンモニウム類、環式飽和アンモニウム類、環式不飽和アンモニウム類などが挙げられる。
【0096】
前記脂式アンモニウム類としては、下記一般式(9)で表される。
【0098】
式中、R
50〜R
53は、水素、及び炭素数1〜4のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれる基である。
【0099】
前記脂式アンモニウム類としては、具体的には、例えば、メチルアンモニウムなどの第一級アルキルアンモニウム、ジメチルアンモニウムなどの第二級アルキルアンモニウム、トリメチルアルキルアンモニウムなどの第三級アルキルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの第四級アルキルアンモニウムなどを例示することができる。なかでも、溶解性の観点から、R
33〜R
36の炭素数1〜4の第三級アルキルアンモニウムの場合が最も好ましく、次いでR
33〜R
36の炭素数1〜4の第二級アルキルアンモニウムの場合が好ましい。
【0100】
環式飽和アンモニウム類としては、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが例示される。
環式不飽和アンモニウム類としては、ピリジニウム、α−ピコリニウム、β−ピコリニウム、γ−ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが例示される。
【0101】
酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素等を用いることが好ましい。
これらの酸化剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0102】
酸化剤の使用量は、前記モノマー1モルに対して1〜5モルが好ましく、より好ましくは1〜3モルである。
本発明においては、モノマーに対して酸化剤がモル比で等モル以上存在している系にて重合を行うことが重要である。また、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
【0103】
重合の方法としては、例えば、酸化剤溶液中にモノマーと塩基性化合物の混合溶液を滴下する方法、モノマーと塩基性化合物の混合溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にモノマーと塩基性化合物の混合溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法などが挙げられる。
【0104】
重合に使用する溶媒としては、水、又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、水と混合するものであれば限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
なお、溶媒として混合溶媒を用いる場合、水と水溶性有機溶媒との混合比は任意であるが、水:水溶性有機溶媒=1:100〜100:1が好ましい。
【0105】
重合後は、通常、遠心分離器等の濾過器により溶媒を濾別する。さらに、必要に応じて濾過物を洗浄液により洗浄した後、乾燥させて、重合体(導電性高分子)を得る。
洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等の多価アルコール誘導体;アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が、高純度のものが得られるため好ましい。特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリルが効果的である。
【0106】
前記製造方法により得られる(可溶性アニリン系)導電性高分子(A)中の塩を形成している塩基性化合物の含有量が0.1質量%を超える場合には、後述するような精製等を行うことにより、前記塩基性化合物(塩)の含有量を0.1質量%以下にすることができる。導電性及び耐熱性の観点から、前記塩基性化合物の含有量は、0.1質量%以下が好ましい。
【0107】
(精製工程)
前記製造方法により得られる導電性高分子(A)は未反応モノマー、低分子量物質及び不純物質などを含んでいる場合があり、導電性を阻害する要因となっていることから、これら不純物質などを除去することが望ましい。
未反応モノマーや低分子量物質などの不純物質を除去するには、前記導電性高分子の分散液又は溶解液を膜濾過する方法が好ましい。膜濾過する際に用いる溶媒としては、水、塩基性塩を含む水、酸を含む水、アルコールを含む水等の溶媒やそれらの混合物などを用いることができる。膜濾過に用いる分離膜としては、未反応モノマー、低分子量物質及び不純物質の除去効率を考慮すると、限外濾過膜が好ましい。
分離膜の材質としてはセルロース、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン等の高分子を用いた有機膜やセラミックスに代表される無機材料を用いた無機膜を用いることができ、通常、限外濾過膜の材質として使用するものであれば、特に制限はない。
さらに、前記製造方法により得られる導電性高分子(A)は酸化剤由来などの陽イオンと塩を形成しており、導電性を阻害する要因となっている。これら陽イオンを除去することで導電性を向上させることができる。
陽イオンなどの不純物を除去するには、導電性高分子の分散液又は溶解液を陽イオン交換樹脂に接触させる方法が好ましい。
陽イオン交換樹脂により不純物除去する場合、導電性高分子(A)を溶媒に分散又は溶解させた状態で用いる。
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類、及びこれらを混合したものが好ましい。
【0108】
前記導電性高分子を前記溶媒に分散又は溶解させる際の濃度としては、工業性や精製効率の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0109】
陽イオン交換樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、オルガノ株式会社製の「アンバーライト」などの強酸型の陽イオン交換樹脂が好ましい。
陽イオン交換樹脂の形態については特に限定されることなく、種々の形態のものを使用でき、例えば球状細粒、膜状や繊維状などが挙げられる。
導電性高分子に対する陽イオン交換樹脂の量は、導電性高分子100質量部に対して100〜2000質量部が好ましく、500〜1500質量部がより好ましい。陽イオン交換樹脂の量が1質量部未満であると、陽イオンなどの不純物が十分に除去されにくい。一方、陽イオン交換樹脂の量が1500質量部を超えると、導電性高分子の分散液又は溶解液に対し過剰量となるため、陽イオン交換樹脂に接触させて陽イオン交換処理した後の、分離液又は溶離液の回収が困難となる。
【0110】
導電性高分子の分散液又は溶解液と、陽イオン交換樹脂の接触方法としては、容器に導電性高分子の分散液又は溶解液と陽イオン交換樹脂を入れ、攪拌又は回転させることで、陽イオン交換樹脂と接触させる方法が挙げられる。
また、陽イオン交換樹脂をカラムに充填し、導電性高分子の分散液又は溶解液を、好ましくはSV=0.01〜20、より好ましくは0.2〜10の流量で通過させて、陽イオン交換処理を行う方法でもよい。
ここで、空間速度SV(1/hr)=流量(m
3/hr)/濾材量(体積:m
3)である。
【0111】
導電性高分子の分散液又は溶解液と、陽イオン交換樹脂を接触させる時間は、精製効率の観点から、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。
なお、接触時間の上限値については特に制限されず、導電性高分子の分散液又は溶離液の濃度、陽イオン交換樹脂の量、後述する接触温度などの条件に併せて、適宜設定すればよい。
【0112】
導電性高分子の分散液又は溶解液と、陽イオン交換樹脂を接触させる際の温度は、工業的観点から、10〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
【0113】
このようにして精製された導電性高分子は、オリゴマーやモノマーなどの低分子量体や、陽イオンなどの不純物が十分に除去されているので、より優れた導電性を示す。
【0114】
<アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物(B)>
陽イオン交換樹脂への接触により精製された導電性高分子(A)にアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物(B)を添加することで加熱処理後の導電性の低下を抑制する。これは、導電性高分子(A)の側鎖が加熱によって熱分解するのをアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが抑制するためと考えられる。
【0115】
前記アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物(B)としては、アルカリ金属水酸化物として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が、アルカリ土類金属水酸化物として、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
これらの水酸化物は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0116】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物(B)の含有量は、耐熱性や導電性の観点から、導電性高分子(A)のスルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、0.2〜0.65モルが好ましく、0.3〜0.6モルがより好ましい。
【0117】
<アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(C)>
精製して得られた前記導電性高分子(A)に前記化合物(C)を添加することで加熱処理後の導電性の低下を抑制することができる。
その理由として、導電性高分子(A)の側鎖が加熱によって脱離するのを、前記化合物(C)の金属イオンが抑制するためと考えられる。
【0118】
前記化合物(C)とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属類及び/又はベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属類の酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩又はハロゲン化物である。
これらの中でも、反応性や経済性の面からリチウム、ナトリウム、マグネシウム又はカルシウムとの酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩又はハロゲン化物が好ましい。
また、取り扱い性の観点から、前記化合物の中でも、酢酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物が好ましい。
なお、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を、単に、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩(C)ということがある。
また、上記酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩又はハロゲン化物以外に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の硝酸塩であってもよい。
【0119】
また、前記化合物(C)の添加量は、前記導電性高分子(A)のモノマー繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、導電性や耐熱性の観点から、0.01〜2.0モルが好ましく、0.1〜1.5モルがより好ましく、0.2〜1.0モルが特に好ましい。
【0120】
<同一分子内に塩基性基及び2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ、融点が30℃以上の化合物(D)>
精製して得られた前記導電性高分子(A)に同一分子内に塩基性基及び2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ、融点が30℃以上の化合物(D)を添加することで加熱処理後の導電性の低下を抑制することができる。
その理由として、導電性高分子(A)の側鎖が加熱によって脱離するのを、前記化合物(D)に含まれる塩基性基が抑制する、及び/又は、導電性高分子(A)に対して前記化合物(D)に含まれるヒドロキシ基がドープ剤として働き導電性を向上するためと考えられる。
【0121】
ここで、前記化合物(D)は、下記一般式(10)で表される化学構造を有する。
【0123】
式(10)中、A
1は、ヒドロキシ基であり、B
1は塩基性基であり、R
54は有機基である。
【0124】
ヒドロキシ基としては、ヒドロキシ基の状態であっても保護基で保護された状態であっても良い。保護基としては、例えば、アセチル基、トリメチルシリル基やt−ブチルジメチルシリル基等のシリル基、アセタール型保護基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基等)、ベンゾイル基等が挙げられる。また、アルコキシド基であっても良い。
【0125】
塩基性基としては、例えば、アレニウス塩基、ブレンステッド塩基、ルイス塩基、等で定義される塩基性基が挙げられる。
有機基としては、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族、直鎖若しくは分岐鎖、飽和及び/又は不飽和の有機基が挙げられる。
【0126】
同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ、融点が30℃以上の化合物(D)としては、例えば、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸、等が挙げられる。
また、一部の前記化合物(D)には、L体とD体の幾何異性体が存在するが、L体とD体のどちらか一方を用いてもよく、L体とD体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
また、一部の前記化合物(D)には、o−位とm−位とp−位の置換基位置異性体が存在するが、o−位とm−位とp−位のどちらか一方を用いてもよく、種々の比率の混合物として用いてもよい。
中でも、導電性や耐熱性の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸がより好ましい。これらの化合物(D)は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
また、前記化合物(D)の含有量は、前記導電性高分子(A)のスルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、導電性や耐熱性の観点から、0.01〜0.65モルが好ましく、特に、0.05〜0.45モルが好ましい。
【0127】
前記化合物(D)の融点は、日本工業規格「JIS K 0064」記載の「化学製品の融点及び溶融範囲測定方法」による測定方法で行うことが望ましい。又は、文献「ACROS ORGANICS(2004,vol.4)」、「Aldrich(2005−2006,JAPAN)」、「The MERCK INDEX(TWELFTH EDITION)」若しくは「化学便覧 基礎編 日本化学会編(丸善出版)」に記載の融点である。
また、同一分子内に基性基及び2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ、融点が30℃以上の化合物であって、上記測定方法以外の測定方法により測定した融点が30℃未満であっても、上記測定方法によれば、融点が30℃以上であれば、本発明の導電性組成物を構成する化合物(D)に含まれる。
【0128】
<同一分子内に酸性基及び塩基性基を少なくとも各々1種以上含む化合物(E)>
前記導電性高分子(A)に同一分子内に酸性基及び塩基性基を少なくとも1種以上含む化合物(E)を添加することで加熱処理後の導電性の低下を抑制することができる。
その理由として、導電性高分子(A)の側鎖が加熱によって脱離するのを、前記化合物(E)に含まれる塩基性基が抑制する、及び/又は、導電性高分子(A)に対して前記化合物(E)に含まれる酸性基がドープ剤として働き導電性を向上するためと考えられる。
【0129】
ここで、前記化合物(E)は、下記一般式(11)で表される化学構造を有する。
【0131】
式(11)中、A
2は、酸性基であり、B
2は塩基性基であり、R
55は有機基である。
【0132】
酸性基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基の有機酸基、リン酸、ホウ酸、クロム酸などの無機酸基等が挙げられる。
塩基性基としては、例えば、アレニウス塩基、ブレンステッド塩基、ルイス塩基、等で定義される塩基性基が挙げられる。
有機基としては、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族、直鎖若しくは分岐鎖、飽和及び/又は不飽和の有機基が挙げられる。
同一分子内に酸性基及び塩基性基を少なくとも各々1種以上含む化合物(E)としては、例えば、グリシン、L−アラニン、β−アラニン、4−アミノ酪酸、2−アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノプロパンスルホン酸、サルコシン、4−ピペリジンカルボン酸、プロリン、2−ベンズイミダゾールプロピオン酸、ノルバリン、セリン、トレオニン、2−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、チロシン、3−(3,4−ジヒドキシフェニル)−アラニン、イソセリン、4−アミノ−3−ヒドロキシ酪酸、ホモセリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、システイン、システイン酸、リジン、アルギニン、イミノ二酢酸、グルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2,6−ジアミノピメリン酸、グアニジノ酢酸、チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸、シスチン等が挙げられる。
また、一部の前記化合物(E)には、L体とD体の立体異性体や対掌体(エナンチオマー)が存在するが、L体とD体のどちらか一方を用いてもよく、L体とD体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
中でも、導電性や耐熱性の観点から、2−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、イソセリン、セリン、システイン酸、アスパラギン酸、2−アミノエタンスルホン酸、グリシン、アラニン、ホモセリン、トレオニンが好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、イソセリン、セリン、システイン酸、アスパラギン酸、2−アミノエタンスルホン酸、グリシン、アラニン、ホモセリン、トレオニンがより好ましい。これらの化合物(E)は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
また、前記化合物(E)の含有量は、前記導電性高分子(A)のスルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、耐熱性及び導電性の観点から、0.1〜0.65モルが好ましく、特に、0.15〜0.45モルが好ましい。
【0133】
<同一分子内に2つ以上のカルボン酸又はその塩を有する化合物(F)>
前記導電性高分子(A)に同一分子内に2つ以上のカルボン酸又はその塩を有する化合物(F)を添加することで、加熱処理後の導電性の低下を抑制することができる。
その理由として、導電性高分子(A)の側鎖の酸性基が加熱によって脱離し、脱ドープ状態となるのを、前記化合物(F)に含まれるジカルボン酸がドーパントとして働き導電性の低下を抑制するためと考えられる。
また、前記カルボン酸が塩を形成していた場合でも、ドーパントとして働くことから、塩を形成していない場合と同様の効果が得られると推測できる。
前記ジカルボン酸塩を添加することで、導電性高分子の側鎖の酸性基と塩を形成し、熱脱離が抑制されるため、耐熱性の観点からは、塩を形成していることが好ましい。
【0134】
前記導電性組成物に用いられる分子内に2つ以上のカルボン酸又はその塩を有する化合物(F)としては、脂肪族、脂環式、芳香族、直鎖若しくは分岐鎖、飽和及び不飽和のジカルボン酸、ヘテロ原子を含むジカルボン酸、ならびにポリカルボン酸から選択される。
【0135】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0136】
脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環構造の炭素数が3〜10である脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0137】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0138】
ヘテロ原子を含むジカルボン酸としては、例えば、ジグリコール酸、メチレンビス(グリコール酸)、エポキシコハク酸などのアルキルエーテルジカルホン酸、イミノ二酢酸などのイミンを含むジカルボン酸、2,2’−チオグリコール酸、3,3’−チオプロピレン酸、メチレンビス(チオグリコール酸)などのスルフィドを含むジカルボン酸などが挙げられる。
【0139】
ポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸などが挙げられる。
【0140】
前記ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アルキル基、アリール基、アセチル基、チオール基、ハロゲン基、シリル基、並びにナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
【0141】
脂肪族ジカルボン酸のアミノ基置換ジカルボン酸としては、例えば、2−メチルマロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2,6−ジアミノピメリン酸などが挙げられる。
【0142】
また、一部のジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在するが、トランス体とシス体のどちらか一方を用いても良く、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いても良い。
【0143】
前記導電性組成物に用いられる前記化合物(F)の含有量は、前記導電性高分子(A)のスルホン酸基及び/又はカルボキシ基を有する繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、0.05〜2.0モルが好ましく、0.1〜1.5モルがより好ましく、0.1〜1.0モルがさらに好ましく、0.1〜0.75モルが特に好ましい。
【0144】
前記化合物(B)〜(F)は、それぞれ一種で用いても良いし、導電性や耐熱性の観点から、目的の用途に合わせて2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0145】
また、上記導電性高分子(A)と、前記化合物(B)〜(F)からなる各組成物は、製膜性の観点から、以下の溶剤(G)を含んでいることが好ましい。
【0146】
<溶剤(G)>
溶剤(G)としては、導電性高分子(A)と前記化合物(B)、導電性高分子(A)と前記化合物(C)、導電性高分子(A)と前記化合物(D)、導電性高分子(A)と前記化合物(E)、又は導電性高分子(A)と前記化合物(F)を溶解するものであればよく、例えば、水又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。
混合溶媒を用いる場合、水と水溶性有機溶剤との混合比は特に限定されないが、水:水溶性有機溶剤=1:100〜100:1の混合溶媒が好ましい。
水溶性有機溶剤は、水と混合するものであれば特に限定はない。水溶性有機溶剤として、具体的には、アセトニトリルやメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール類、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が好ましく、特にアルコール類が好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が好ましい。
【0147】
溶剤(G)としては、溶解性及び成膜性の観点から、水又は水とアセトニトリル、水とアルコール類との混合溶媒が好ましく、水又は水とアルコール類との混合溶媒がより好ましい。また、該混合溶媒は、水を50質量%以上含有することが好ましい。
【0148】
なお、前記陽イオン交換後の導電性高分子は、水などの溶媒に分散又は溶解した状態であるので、エバポレータなどで溶媒を除去すれば固体状の導電性高分子が得られるが、溶媒に分散又は溶解した状態のまま用いてもよい。
導電性組成物中、成分(A)の含有量は、導電性や加工性の観点から、溶剤(G)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。濃度が高いほど十分な膜厚の導電性高分子層を形成することができる。一方、濃度が低いほど溶液中の導電性高分子及び化合物が凝集するのを抑制でき、高粘度化しにくくなり、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しやすくなる。
【0149】
<導電体製造>
本発明においては、前記導電性組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、必要であれば前記塗膜に対し、加熱処理を行う工程とを順次行うことにより導電体を製造することができる。
導電性組成物を塗工する基材としては、特に限定されず、高分子化合物、木材、紙材、金属、金属酸化物、セラミックス及びそれらフィルム又はガラス板などが用いられる。例えば、高分子化合物からなる基材としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート等のいずれか1種又は2種以上を含有する高分子フィルムなどが挙げられる。
【0150】
これらの高分子フィルムは、少なくともその一つの面上に、前記導電性組成物からなる導電膜を形成させるため、該導電膜の密着性を向上させる目的で前記フィルム表面にコロナ表面処理又はプラズマ処理、あるいは紫外線オゾン処理が施されていることが好ましい。
【0151】
導電性組成物の塗工方法としては、一般に塗料の塗工に用いられる方法が利用できる。例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法、スプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等が用いられる。
【0152】
<導電性高分子層>
本発明において、導電性高分子層は、可溶性アニリン系導電性高分子と、分子内に2つ以上のカルボン酸もしくはその塩を有する化合物と、溶剤とを混合して得られた導電性組成物から形成される。
【0153】
導電性高分子層の形成方法としては、ディップコート法、刷毛塗り法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、スプレーコート法、フローコート法、スクリーン法印刷、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などが挙げられる。中でも、操作が容易である点で、ディップコート法が好ましい。
ディップコート法により導電性組成物を塗布する場合、作業性の観点から、導電性組成物への浸漬時間は、1〜30分が好ましい。また、ディップコートする際に、減圧時にディップさせて常圧に戻す、あるいは、ディップ時に加圧するなどの方法も有効である。
【0154】
導電性高分子層を形成した後の乾燥方法としては、加熱乾燥が好ましいが、例えば、風乾や、スピンさせて物理的に乾燥させる方法などを用いてもよい。
また、乾燥条件は、前記導電性高分子(A)や前記化合物(B)〜(F)、前記溶剤(G)の種類により決定されるが、通常、乾燥温度は乾燥性の観点から50℃〜190℃が好ましく、乾燥時間は1〜120分が好ましい。
【0155】
前記導電体はコンデンサ用途にも用いることができる。適用できるコンデンサには、アルミ電解コンデンサ、タンタルコンデンサ、固体電解コンデンサ等がある。例えば、固体電解コンデンサ用の固体電解質として導電性高分子を用いる巻回形コンデンサを製造する場合について説明する。
【0156】
まず、誘電体酸化皮膜層を形成した陽極箔とエッチング処理あるいはエッチング後化成処理された陰極箔とをその間にセパレーターを介在させて巻回することによりコンデンサ素子を形成する。その後、この素子に前記導電性高分子からなる導電性高分子層を形成する。
導電性高分子層を形成する方法としては、導電性高分子の分散水溶液を陽極箔に又はコンデンサ素子に含浸させる方法が挙げられる。
次に、導電性高分子層上にカーボンペーストを塗布することにより、導電性高分子層上にカーボン層を形成する。さらに、カーボン層上に銀ペーストを塗布し、所定の温度で乾燥させることによりカーボン層上に銀ペイント層を形成する。銀ペイント層に導電性接着剤を介して陰極端子を接続する。また、陽極箔に陽極端子を接続する。
その後、陽極端子及び陰極端子の端部が外部に引き出されるようにモールド外装樹脂を形成する。
以上の方法により、固体電解コンデンサが作製される。
【0157】
<巻回型固体電解コンデンサの製造方法>
本発明の実施の形態において、巻回型固体電解コンデンサは、導電性高分子層の形成工程の他、公知の技術により製造される。
例えば、アルミニウム箔の表層近傍をエッチングにより多孔質体化した後、陽極酸化により陽極酸化皮膜を形成し、本実施の形態による導電性高分子層を含む固体電荷質を形成した後、陰極部を形成し、陽極部及び陰極部には外部端子を接続し外装を施して、本実施の形態にかかる巻回型固体電解コンデンサを得ることが出来る。
前記陽極酸化皮膜は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ニッケル等の金属材料(皮膜形成金属)からなる電極(弁作用金属体)を陽極酸化して形成されたものである。多孔質の弁作用金属体を陽極酸化して形成される陽極酸化皮膜は、弁作用金属体の表面状態を反映し、表面が微細な凹凸構造と成っている。この凹凸の周期は弁作用金属体の種類などに依存するが、通常、200nm以下程度である。
また、凹凸を形成する凹部(細孔部)の深さは、弁作用金属体の種類などに特に依存しやすいので一概には決められないが、例えば、アルミニウムを用いる場合、凹部の深さは数十nm〜1μm程度である。
【0158】
<積層型固体電解コンデンサの製造方法>
本発明の実施の形態において、積層型固体電解コンデンサは、導電性高分子層の形成工程の他、公知の技術により製造される。
例えば、アルミニウム箔などの弁作用金属体の表層近傍をエッチングにより多孔質体化した後、陽極酸化により陽極酸化皮膜を形成する。ついで、陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成した後、これをグラファイト液に浸漬させて、又はグラファイト液を塗布して導電性高分子層上にグラファイト層を形成し、さらにグラファイト層上に金属層を形成する。さらに、陰極部及び陽極部に外部端子を接続して外装することで、本実施の形態にかかる積層型固体電解コンデンサを得ることが出来る。
【実施例】
【0159】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における評価方法は以下の通りである。
【0160】
面積比(X/Y)の算出
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
この溶離液に、導電性高分子溶液を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(I))。
得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲル浸透クロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2414(屈折率計)、2996(PDA)」)で、カラム(TSK−GEL ALPHA−M 7.8×300mm 2本;東ソー株式会社製)を用いて分子量分布を測定し、クロマトグラムを得た(工程(II))。また、測定は、流速0.6mL/min、カラム温度40℃で行った。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した(工程(III))。具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料については固形して、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した。
そして、分子量(M)が15000Da以上の領域の面積(X)と、15000Da未満の領域の面積(Y)をそれぞれ求めた(工程(IV)、(V))。
これら面積(X)と面積(Y)との面積比(X/Y)を求めた(工程(VI))。
【0161】
導電性高分子中の塩の含有量
導電性高分子中の塩を形成している塩基性化合物の含有量は、陽イオンクロマトグラフィーにより以下の条件で測定した。濃度は、検出されたピーク面積と既知濃度のトリエチルアミン及びアンモニア溶液のピーク面積とを比較して計算された。
カラム:TSKgel IC−Cation I/IIカラム(東ソー製)
溶離液:1.0mmol/Lの硝酸溶液と10質量%のアセトニトリル溶液との混合溶液
導電性高分子濃度:1000質量ppm
流速:0.5mL/min
注入量30μL
温度40℃
【0162】
静電容量(電気容量)測定・等価直列抵抗測定
静電容量及び等価直列抵抗は、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製E4980A プレシジョンLCRメータ)を用いて周波数120Hzにて静電容量、100kHzにて等価直列抵抗を測定した。
【0163】
導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)[mol]
導電性高分子の粉末に対し、粉末の重量を高分子の繰り返し単位の分子量で除して、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)[mol]を求めた。
導電性高分子の分散液又は溶解液の場合、溶解液又は分散液を100℃で1時間乾燥し、残存した固形分を導電性高分子の粉末として、同様に導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)[mol]を求めた。
【0164】
体積抵抗率・導電率の評価
導電性組成物をマニュアルスピンナーASC−4000(Actes inc.製)によりガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、膜厚が0.1μm程度の導電体(塗膜)を作製した。
得られた導電体の表面抵抗値を、抵抗率計ロレスタGP(三菱化学社製)に直列四探針プローブを装着して、室温で測定した。膜厚はナノスケールハイブリッド顕微鏡VN−8000(キーエンス製)を用いて測定し、これに表面抵抗値を乗じて体積抵抗率を求めた。
また、この体積抵抗率の逆数を計算し、導電率を求めた。
【0165】
塗膜の性状の評価
導電性組成物2.5mlを直径75mmの時計皿に入れ、オーブンの中で150℃30分間乾燥することで、塗膜を作製した。
前記塗膜の性状を観察し、塗膜に割れや剥がれの有無を目視にて評価した。
【0166】
導電性組成物の調製
以下、実施例及び比較例における導電性組成物は、溶剤として水を用いて、導電性高分子(A)の濃度が、3〜5質量%になるように調製した。
【0167】
融点(℃)
以下、実施例及び比較例における化合物の融点(℃)は、ACROS ORGANICS(2004,vol.4)、Aldrich(2005−2006,JAPAN)、The MERCK INDEX(TWELFTH EDITION)
記載の値である。
【0168】
[製造例A1;導電性高分子(A1)の製造]
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを0℃で、4mol/Lのトリエチルアミン水溶液(水:アセトニトリル=3:7)300mlに溶解し、モノマー溶液を得た。
別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを水/アセトニトリル=3:7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。
続いて、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、酸化剤溶液中にモノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後、反応生成物を遠心濾過器にて濾別した。
さらに、反応生成物をメタノールにて洗浄した後、乾燥させ、前記式(1)で表される繰り返し単位(式(1)中、R
1がスルホン酸基であり、R
2〜R
3が水素原子であり、R
4がメトキシ基である。)を有する導電性高分子の粉末185gを得た。
得られた導電性高分子中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミン及びアンモニア)の含有量は16.7質量%であった。
【0169】
得られた導電性高分子5質量部を水98質量部に室温で溶解させ、導電性高分子(A1´)溶液を得た。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
得られた導電性高分子(A1´)溶液100質量部に対して、50質量部となるように酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)をカラムに充填し、該カラムに導電性高分子(A1´)溶液をSV=8の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子(A1)溶液を得た。
得られた導電性高分子(A1)溶液において、導電性高分子の割合は4.5質量%であった。また導電性高分子(A1)溶液中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミン及びアンモニア)の含有量は0.1質量%以下であった。
また、分子量(M)は、24300であり、X/Y=0.98であった。
【0170】
[製造例B1;導電性高分子(A2)の製造)]
水/アセトニトリル(体積比1/1)混合液150mlにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液をエチレングリコールを用いたバスで0℃に冷却し、撹拌動力0.7kw/m
3下、2−アミノアニソール−4−スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合液150mlに溶解させた溶液を200mmol/hrで滴下した。
滴下終了後、撹拌下2時間冷却を保持したのち、反応生成物を冷却下で減圧濾過装置にて濾別し、メチルアルコールにて洗浄後乾燥し、導電性高分子の粗ポリマーを得た。
得られた粗ポリマー20gを400mlの水で溶解し、酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)100mlをカラムに充填し、該カラムに前記粗ポリマー溶液をSV=0.3の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子(A2)溶液を得た。
得られた導電性高分子(A2)溶液において、導電性高分子(A2)の割合は4.5質量%であった。また、得られた導電性高分子中に含まれる塩を形成している塩基性化合物の含有量は0.1質量%以下であった。
また、分子量(M)は、34900であり、X/Y=1.24であった。
【0171】
[製造例C1;導電性高分子(A3)の製造]
水/アセトニトリル(体積比1/1)混合液150mlにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液を、エチレングリコールを用いたバスで0℃に冷却し、撹拌動力0.7kw/m
3下、2−アミノアニソール−4−スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合液150mlに溶解させた溶液を200mmol/hrで滴下した。
滴下終了後、撹拌下2時間冷却を保持したのち、反応生成物を冷却下で減圧濾過装置にて濾別し、メチルアルコールにて洗浄後乾燥し、導電性高分子の粗ポリマーを得た。
得られた粗ポリマー20gを400mlの水で溶解し、酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)100mlをカラムに充填し、該カラムに前記粗ポリマー溶液をSV=0.3の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子(A3)溶液を得た。
また、分子量(M)は、36800であり、X/Y=1.28であった。
【0172】
[製造例D1;導電性高分子(A4)の製造]
水/アセトニトリル(体積比1/1)混合液150mlにペルオキソ二硫酸アンモニウム200mmolと硫酸1.0gを溶解させた溶液をエチレングリコールを用いたバスで内温0℃に冷却し、撹拌動力0.7kw/m3下、2−アミノアニソール−4−スルホン酸200mmolとトリエチルアミン200mmolを水/アセトニトリル(体積比1/1)混合液150mlに溶解させた溶液を200mmol/hrで滴下した。
滴下終了後、撹拌下2時間冷却を保持したのち、反応生成物を冷却下で減圧濾過装置にて濾別し、メチルアルコールにて洗浄後乾燥し、導電性高分子の粗ポリマーを得た。
得られた粗ポリマー20gを10Lの水で溶解し、固形分濃度が0.2質量%のポリマー溶液を調製した後、限外濾過ユニットを用い、固形分濃度が3質量%となるまで処理した。酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)100mlをカラムに充填し、該カラムに前記処理溶液をSV=0.3の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子(A4)溶液を得た。
また、分子量(M)は、43600であり、X/Y=1.51であった。
【0173】
[製造例E1;導電性高分子(A5)の製造]
上記製造例A1と同様の方法により、前記式(1)で表される繰り返し単位(式(1)中、R
1がスルホン酸基であり、R
2〜R
3が水素原子であり、R
4がメトキシ基である。)を有する導電性高分子(A)の粉末185gを得た。
得られた導電性高分子中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミン及びアンモニア)の含有量は16.7質量%であった
得られた導電性高分子5質量部を水95質量部に室温で溶解させ、導電性高分子(A5´)を得た。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
得られた導電性高分子(A5´)溶液100質量部に対して、50質量部となるように酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)をカラムに充填し、該カラムに導電性高分子(A5´)溶液をSV=8の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子(A5)溶液を得た。
得られた導電性高分子(A5)溶液において、導電性高分子の割合は4.5質量%であった。また導電性高分子(A5)中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミン及びアンモニア)の含有量は0.1質量%以下であった。
また、分子量(M)は、21600であり、X/Y=0.89であった。
【0174】
[製造例F1;導電性高分子(A6)の製造]
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを0℃で、4mol/Lのトリエチルアミン水溶液(水:アセトニトリル=3:7)300mlに溶解し、モノマー溶液を得た。
別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを水/アセトニトリル=3:7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。
続いて、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、酸化剤溶液中にモノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後、反応生成物を遠心濾過器にて濾別した。
さらに、反応生成物をメタノールにて洗浄した後、乾燥させ、前記式(1)で表される繰り返し単位(式(1)中、R
1がスルホン酸基であり、R
2〜R
3が水素原子であり、R
4がメトキシ基である。)を有する導電性高分子の粉末185gを得た。
得られた導電性高分子中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミン及びアンモニア)の含有量は16.7質量%であった。
得られた導電性高分子5質量部を水95質量部に室温で溶解させ、導電性高分子(A6´)溶液を得た。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
得られた導電性高分子(A6´)溶液100質量部に対して、50質量部となるように酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライト」)をカラムに充填し、該カラムに導電性高分子(A6´)溶液をSV=8の流量で通過させて陽イオン交換処理を行い、精製された導電性高分子(A6)溶液を得た。
得られた導電性高分子(A6)溶液において、導電性高分子の割合は4.5質量%であった(溶剤100質量部に対して、4.7質量部)。また導電性高分子(A6)中に含まれる塩を形成している塩基性化合物(トリエチルアミン及びアンモニア)の含有量は0.1質量%以下であった。
また、分子量(M)は、21800であり、X/Y=1.11であった。
【0175】
<前記導電性高分子(A)と前記化合物(B)を含有する導電性組成物>
[実施例1−1〜1−9]
製造例B1で得た導電性高分子(A2)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、表1に示す配合量で塩基性化合物としてアルカリ金属水酸化物(B)([実施例1−1〜1−8]、アルカリ土類金属水酸化物(B)[実施例1−9]を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表1に併せて示す。
【0176】
[比較例1−1〜1−3]
導電性高分子(A2)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、表1に示す配合量でアルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物以外の塩基性化合物を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表1に併せて示す。
【0177】
【表1】
【0178】
表1中の耐熱性の評価は、下記基準1及び2で行った。
(耐熱性評価基準1)
A:120℃×5分間加熱乾燥した時の体積抵抗率に比べ、更に180℃×60分間加熱乾燥した時の体積抵抗率の増加が、100倍未満である。
B:120℃×5分間加熱乾燥した時の体積抵抗率に比べ、更に180℃×60分間加熱乾燥した時の体積抵抗率の増加が、100以上かつ250倍未満である。
C:120℃×5分間加熱乾燥した時の体積抵抗率に比べ、更に180℃×60分間加熱乾燥した時の体積抵抗率の増加が、250倍以上である。
【0179】
(耐熱性評価基準2)
A:基準となる[比較例1−1]の導電率に比べ、導電率が20倍以上である。
B:基準となる[比較例1−1]の導電率に比べ、導電率が3倍以上かつ20倍未満である。
C:基準となる[比較例1−1]の導電率に比べ、導電率が3倍未満である。
【0180】
評価基準1及び2に基づく、耐熱性評価は、表1に示すように、いずれも同じ結果となった。
表1より、アルカリ金属水酸化物を添加した実施例1−1〜1−8と、アルカリ土類金属水酸化物を添加した実施例1−9では、加熱しても導電率の低下が抑制され、加熱後の導電体でも優れた導電性及び耐熱性を示した。
一方、塩基性化合物無添加の比較例1−1、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物以外の塩基性化合物を用いた比較例1−2及び1−3は、加熱により導電率が低下し、加熱後の導電体では、実施例と比較して、導電性も耐熱性も悪かった。
【0181】
また、導電性組成物における化合物(B)の含有量と、得られた導電体の体積抵抗値及び導電率との関係を表2に示す。化合物(B)の代表例として、水酸化リチウムを用いた。
導電性組成物溶液の調製、及び導電体の形成は、実施例1−1〜1−9と同様の方法、条件で行った。
【0182】
【表2】
【0183】
表2より、0.2〜0.6molの水酸化リチウムを含有する導電性組成物を用いた、実施例1−1、1−2、1−10、1−11、及び1−12は、加熱しても導電率の低下が抑制された。
一方、水酸化リチウムを添加していない比較例1−4、0.7mol〜1.0molの水酸化リチウムを含有する導電性組成物を用いた、比較例1−5及び1−6は、加熱により導電率が低下した。
【0184】
[実施例1−13、1−14]
製造例A1で得た導電性高分子(A1)溶液と製造例B1で得た導電性高分子(A2)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、下記表3に示す配合量で、アルカリ金属水酸化物の代表例として、水酸化リチウムを添加し、導電性組成物を調整した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表3に併せて示す。
【0185】
【表3】
【0186】
表3より、導電性高分子(A)をGPC測定した場合の上記面積比(X/Y)が、X/Y比1.20以上の導電性高分子(A2)を用いた実施例1−1及び1−2は、X/Y比1.20以下の導電性高分子(A1)を用いた実施例1−13及び1−14よりも、加熱後の導電性が高かった。
【0187】
<前記導電性高分子(A)と前記化合物(C)を含有する導電性組成物>
[実施例2−1〜2−14]
製造例B1で得た導電性高分子(A2)溶液を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、表4に示す量のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩(C)を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、180℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表4に示す。
【0188】
[比較例2−1]
導電性高分子(A2)溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、180℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表4に示す。
【0189】
[比較例2−2〜2−3]
導電性高分子(A2)溶液を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、表4に示す量の塩基性化合物としてトリエチルアミン、アンモニア水を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、180℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表4に示す。
【0190】
【表4】
【0191】
表4中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。なお、導電率評価において、導電性高分子(A)及び溶剤(G)のみ含む組成物(比較例2−1)を基準とする相対的な評価を行った。
A:基準となる[比較例2−1]の導電率に比べ、導電率が20倍以上である。
B:基準となる[比較例2−1]の導電率に比べ、導電率が3倍以上かつ20倍未満である。
C:基準となる[比較例2−1]の導電率に比べ、導電率が3倍未満である。
【0192】
表4より、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(C)を添加した実施例2−1〜2−14では、180℃で60分間加熱した場合でも、高い導電率を維持することができ、導電性、耐熱性に優れることが示された。
一方、化合物(C)無添加の比較例2−1、化合物(C)の代わりにトリエチルアミンやアンモニアを添加した比較例2−2、2−3は、180℃で60分間加熱すると、実施例と比べて導電率が低く、耐熱性が低いことが示された。
【0193】
[実施例2−1〜2−4、実施例2−15〜18]
製造例A1で得た導電性高分子(A1)溶液と製造例B1で得た導電性高分子(A2)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、下記表3に示す配合量で、前記化合物(C)の代表例として、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムを添加し、導電性組成物を調整した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表3に併せて示す。
【0194】
【表5】
【0195】
表5より、導電性高分子(A)をGPC測定した場合の上記面積比(X/Y)が、X/Y比1.20以上の導電性高分子(A2)を用いた実施例2−1〜2−4は、X/Y比1.20以下の導電性高分子(A1)を用いた実施例2−15〜2−18よりも、加熱後の導電性が高かった。
【0196】
<前記導電性高分子(A)と前記化合物(D)を含有する導電性組成物>
[実施例3−1〜3−17]
製造例F1で得た導電性高分子(A6)溶液を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、表F1に示す量の同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ融点30℃以上の化合物(D)を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、160℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表6に示す。
【0197】
また、表6中の実施例3−2で得られた前記導電性組成物溶液2.5mlを直径75mmの時計皿に入れ、オーブンの中で150℃30分間乾燥することで、塗膜を作製した。この塗膜の性状を観察した時の割れや剥がれの有無を表6に示す。
【0198】
[比較例3−1]
導電性高分子(A6)溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、160℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表6に示す。
また、前記導電性高分子(A6)溶液2.5mlを直径75mmの時計皿に入れ、オーブンの中で150℃30分間乾燥することで、塗膜を作製した。この塗膜の性状を観察した時の割れや剥がれの有無を表7に示す。
【0199】
[比較例3−2〜3−4]
導電性高分子(A6)溶液を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、表6に示す量の塩基性基のみを持つ化合物としてアンモニア水、トリエチルアミン、ヒドロキシ基のみを持つ化合物として2−メトキシエタノールを添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で、120℃で10分間乾燥した後、160℃で60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表6に示す。
【0200】
【表6】
【0201】
表6中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。なお、導電率評価において、導電性高分子(A)及び溶剤(G)のみを含む組成物(比較例3−1)を基準とする相対的な評価を行った。
A:基準となる[比較例3−1]の導電率に比べ、導電率が10倍以上である。
B:基準となる[比較例3−1]の導電率に比べ、導電率が2倍以上かつ10倍未満である。
C:基準となる[比較例3−1]の導電率に比べ、導電率が2倍未満である。
【0202】
表6より、同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ融点30℃以上の化合物(D)を添加した実施例3−1〜3−8では、160℃で60分間加熱した場合でも、高い導電率を維持することができ、導電性、耐熱性に優れることが確認された。
一方、前記化合物(D)無添加の比較例3−1、塩基性基のみを持つ化合物を添加した比較例3−2〜3−3、ヒドロキシ基のみを持つ化合物を添加した比較例3−4は、160℃で60分間加熱した後では、実施例と比較して、導電性も耐熱性も悪かった。
【0203】
【表7】
【0204】
表7より、同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基を含み、かつ融点30℃以上の化合物(D)を添加した実施例3−9では、150℃で30分間加熱乾燥しても塗膜の性状は良好で、優れた塗膜性を示した。
一方、前記化合物(D)無添加の比較例3−6は、150℃30分間加熱乾燥により、塗膜の性状に割れや剥がれが観察され、実施例と比較して、塗膜性は悪かった。
以上より、本発明により、耐熱性だけでなく、成膜性にも優れた導電体を得ることができる。
【0205】
[実施例3−10〜3−12]
製造例D1で得た導電性高分子(A4)溶液と製造例F1で得た導電性高分子(A6)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、下記表8に示す配合量で、前記化合物(D)の代表例として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを添加し、導電性組成物を調整した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表8に併せて示す。
【0206】
【表8】
【0207】
表8より、導電性高分子(A)をGPC測定した場合の上記面積比(X/Y)が、X/Y比1.20以上の導電性高分子(A4)を用いた実施例3−10〜3−12は、X/Y比1.20以下の導電性高分子(A6)を用いた実施例3−2〜3−4よりも、加熱後の導電性が高かった。
【0208】
<前記導電性高分子(A)と前記化合物(E)を含有する導電性組成物>
[実施例4−1〜4−22]
製造例E1で得た導電性高分子(A5)溶液を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、表9に示す量の同一分子内に酸性基及び塩基性基を少なくとも各々1種以上含む化合物(E)を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、10分間乾燥した後、160℃、60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表9に示す。
【0209】
[比較例4−1]
導電性高分子(A5)溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、10分間乾燥した後、160℃、60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表9に示す。
【0210】
[比較例4−2〜4−5]
導電性高分子(A5)溶液を用い、導電性高分子の繰り返し単位(モノマーユニット)1モルに対して、表9に示す量の塩基性基のみを有する化合物としてアンモニア水、トリエチルアミン、酸性基のみを持つ化合物として酢酸、p−トルエンスルホン酸を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、10分間乾燥した後、160℃、60分間加熱処理し、導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表9に示す。
【0211】
【表9】
【0212】
表9中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。
A:基準となる[比較例4−1]の導電率に比べ、導電率が5倍以上である。
B:基準となる[比較例4−1]の導電率に比べ、導電率が2倍以上かつ5倍未満である。
C:基準となる[比較例4−1]の導電率に比べ、導電率が2倍未満である。
【0213】
表9より、同一分子内に酸性基及び塩基性基を少なくとも各々1種以上含む化合物(E)を添加した実施例4−1〜4−22では、160℃で60分間加熱しても導電率は高く、優れた導電性及び耐熱性を示した。
一方、同一分子内に酸性基及び塩基性基を少なくとも各々1種以上含む化合物(E)無添加の比較例4−1、塩基性基のみを有する化合物を添加した比較例4−2及び4−3、酸性基のみを有する化合物を添加した比較例4−4及び4−5は、160℃で60分間加熱により導電率が低下し、実施例と比較して、導電性も耐熱性も悪かった。
【0214】
[実施例4−1〜4−4、実施例4−23〜4−26]
製造例D1で得た導電性高分子(A4)溶液と製造例E1で得た導電性高分子(A5)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、下記表10に示す配合量で、前記化合物(E)の代表例として、L−システイン酸、L−セリンを添加し、導電性組成物を調整した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表10に併せて示す。
【0215】
【表10】
【0216】
表10より、導電性高分子(A)をGPC測定した場合の上記面積比(X/Y)が、X/Y比1.20以上の導電性高分子(A4)を用いた実施例4−23〜4−26は、X/Y比1.20以下の導電性高分子(A5)を用いた実施例4−1〜4−4よりも、加熱後の導電性が高かった。
【0217】
<前記導電性高分子(A)と又は前記化合物(F)を含有する導電性組成物>
[実施例5−1〜5−17]
製造例D1で得た導電性高分子(A4)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1モルに対して、表11に示す配合量で、同一分子内に2つ以上のカルボン酸又はその塩を有する化合物(F)を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
【0218】
前記の通り調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃×10分間、又は180℃×60分間加熱乾燥し導電体を形成した。得られた導電体の導電率を表11又は表12に併せて示す。
【0219】
[比較例5−1〜5−4]
導電性高分子(A4)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1モルに対して、表11又は表12に示す配合量で酸性化合物を添加した以外は、実施例と同様に行った。
得られた導電体の導電率を表11又は表12に併せて示す。
【0220】
【表11】
【0221】
表11中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。
A:120℃×10分間加熱乾燥した時の導電率が20S/cm以上である。
B:120℃×10分間加熱乾燥した時の導電率が10S/cm以上かつ20S/cm未満である。
C:120℃×10分間加熱乾燥した時の導電率が10S/cm未満である。
【0222】
表11より、同一分子内に2つ以上のカルボン酸又はその塩を有する化合物(F)を含む導電性組成物を用いた実施例5−1〜5−8は、120℃×10分間加熱しても10S/cm以上の導電率を有し、耐熱性及び導電性に優れていた。
一方、前記化合物(F)を添加していない比較例5−1、同一分子内に1つのカルボン酸を有する化合物を添加した比較例5−2及び5−3は、120℃で10分間加熱後の導電率が10S/cm未満であり、耐熱性及び導電性が低かった。
【0223】
【表12】
【0224】
表12中の耐熱性評価(1)は、下記基準で行った。
A:180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が0.5S/cm以上である。
B:180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が0.1S/cm以上かつ0.5S/cm未満である。
C:180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が0.01S/cm以上かつ0.1S/cm未満である。
D:180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が0.01S/cm未満である。
【0225】
表12より、180℃で60分間加熱しても、前記化合物(F)を添加した実施例5−9〜5−17は、無添加の比較例5−4と比較して、導電性が高かった。
特に、前記化合物(F)としてカルボン酸塩を用いた実施例5−12〜5−17は、180℃で60分間加熱しても、比較例5−4と比較して、より導電性が高かった。
以上より、前記化合物(F)を含む導電性組成物は、高温下でも無添加の比較例5−1及び比較例5−4、前記化合物(F)以外の化合物を添加した比較例5−2及び5−3と比較して、高温下で加熱した後の導電性が高かった。
特に、前記化合物(F)としてカルボン酸塩を用いた場合、より高い温度で加熱しても、無添加の場合と比較して導電性は高かった。
【0226】
また、実施例5−9〜5−17、及び比較例5−4の以下の基準に基づく耐熱性評価(2)は、表12の通りであった。
表12中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。
A:基準となる180℃×60分間加熱乾燥した時の[比較例5−1]の導電率に比べ、180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が20倍以上である。
B:基準となる180℃×60分間加熱乾燥した時の[比較例5−1]の導電率に比べ、180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が3倍以上かつ20倍未満である。
C:基準となる180℃×60分間加熱乾燥した時の[比較例5−1]の導電率に比べ、180℃×60分間加熱乾燥した時の導電率が3倍未満である。
【0227】
[実施例5−1〜5−2、実施例5−18〜5−19]
製造例A1で得た導電性高分子(A1)溶液と製造例D1で得た導電性高分子(A4)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、下記表13に示す配合量で、前記化合物(F)の代表例として、シュウ酸を添加し、導電性組成物を調整した。
調製した導電性組成物溶液をガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、5分間乾燥し、更に180℃、60分間加熱乾燥し、導電体を形成した。得られた導電体の体積抵抗値及び導電率を表13に併せて示す。
【0228】
【表13】
【0229】
表13より、導電性高分子(A)をGPC測定した場合の上記面積比(X/Y)が、X/Y比1.20以上の導電性高分子(A4)を用いた実施例5−1〜5−2は、X/Y比1.20以下の導電性高分子(A1)を用いた実施例5−18〜5−19よりも、加熱後の導電性が高かった。
【0230】
<固体電解コンデンサ評価>
固体電解コンデンサの評価1
[実施例6−1〜6−6]
製造例C1で得た導電性高分子(A3)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、表14に示す配合量で、分子内に2つ以上のカルボン酸又はその塩を有する化合物(F)として、アルキルジカルボン酸(シュウ酸)[実施例6−1〜6−3]又は置換アルキルジカルボン酸(L−アスパラギン酸)[実施例6−4〜6−6]を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
アルミコンデンサの陽極酸化被膜に導電性組成物溶液を2分間浸漬させた後、熱風乾燥機により120℃、30分間乾燥させ、更に180℃、120分間加熱処理を行い、陽極酸化被膜上に導電性高分子層を形成させた。得られた巻回型固体電解コンデンサの静電容量と等価直列抵抗を表14に併せて示す。
【0231】
[比較例B1〜B3]
導電性高分子(A3)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、表14に示す配合量で酸性化合物を添加した以外は、実施例と同様に行った。
得られた固体電解コンデンサの静電容量と等価直列抵抗を表14に併せて示す。
【0232】
【表14】
【0233】
表14中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。
A:120℃×30分間加熱乾燥した時の静電容量値に比べ、更に180℃×120分間加熱処理した時の静電容量値の減少が、10%未満、且つ、120℃×30分間加熱乾燥した時の等価直列抵抗値に比べ、更に180℃×120分間加熱処理した時の等価直列抵抗値の増加が、10倍未満である。
B:120℃×30分間加熱乾燥した時の静電容量値に比べ、更に180℃×120分間加熱処理した時の静電容量値の減少が、50%未満、且つ、120℃×30分間加熱乾燥した時の等価直列抵抗値に比べ、更に180℃×120分間加熱処理した時の等価直列抵抗値の増加が、10倍未満である。
C:120℃×30分間加熱乾燥した時の静電容量値に比べ、更に180℃×120分間加熱処理した時の静電容量値の減少が、50%未満、且つ、120℃×30分間加熱乾燥した時の等価直列抵抗値に比べ、更に180℃×120分間加熱処理した時の等価直列抵抗値の増加が、10倍以上である。
【0234】
表14より、ジカルボン酸を添加した実施例6−1〜6−6では、加熱処理しても静電容量の低下が抑制され、且つ、等価直列抵抗の増加が抑制され、加熱処理後に優れた耐熱性を示した。
一方、ジカルボン酸無添加の比較例6−1、ジカルボン酸以外の有機酸を用いた比較例6−2及び6−3は、加熱により等価直列抵抗が著しく増加し、加熱処理後は耐熱性が悪かった。
【0235】
固体電解コンデンサの評価2
製造例D1で得た導電性高分子(A4)溶液を用い、導電性高分子のモノマーユニット1つに対して、表15に示す配合量で、実施例7−1〜7−13として、前記化合物(B)に含まれる水酸化リチウム、前記化合物(C)に含まれる酢酸リチウム、前記化合物(D)に含まれるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、前記化合物(F)に含まれるシュウ酸、前記化合物(E)及び(F)に含まれるL−アスパラギン酸を添加し、また、比較例7−1〜7−4として、無添加、トリエチルアミン、酢酸、p−トルエンスルホン酸を添加し、導電性組成物溶液を調製した。
アルミコンデンサの陽極酸化被膜に導電性組成物溶液を2分間浸漬させた後、熱風乾燥機により120℃、30分間乾燥させ、更に180℃、60分間加熱処理を行い、陽極酸化被膜上に導電性高分子層を形成させた。得られた巻回型固体電解コンデンサの静電容量と等価直列抵抗を表15に併せて示す。
【0236】
【表15】
【0237】
表15中の耐熱性の評価は、下記基準で行った。
A:120℃×30分間加熱乾燥した時の静電容量値に比べ、更に180℃×60分間加熱処理した時の静電容量値の減少が、20%未満、且つ、120℃×30分間加熱乾燥した時の等価直列抵抗値に比べ、更に180℃×60分間加熱処理した時の等価直列抵抗値の増加が、2倍未満である。
B:120℃×30分間加熱乾燥した時の静電容量値に比べ、更に180℃×60分間加熱処理した時の静電容量値の減少が、40%未満、且つ、120℃×30分間加熱乾燥した時の等価直列抵抗値に比べ、更に180℃×60分間加熱処理した時の等価直列抵抗値の増加が、3倍未満である。
C:120℃×30分間加熱乾燥した時の静電容量値に比べ、更に180℃×60分間加熱処理した時の静電容量値の減少が、40%以上、又は、120℃×30分間加熱乾燥した時の等価直列抵抗値に比べ、更に180℃×60分間加熱処理した時の等価直列抵抗値の増加が、3倍以上である。
【0238】
表15より、化合物(B)〜(F)を各々添加した実施例7−1〜7−13は、加熱処理しても静電容量の低下が抑制され、且つ、等価直列抵抗の増加が抑制され、加熱処理後に優れた耐熱性を示した。
一方、化合物(B)〜(F)無添加の比較例7−1、化合物(B)〜(F)以外の化合物を用いた比較例7−2〜7−4は、加熱により等価直列抵抗が著しく増加し、加熱処理後は耐熱性が悪かった。