特許第6020701号(P6020701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020701カラーフィルタ用緑色顔料およびカラーフィルタ
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  • 特許6020701-カラーフィルタ用緑色顔料およびカラーフィルタ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020701
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】カラーフィルタ用緑色顔料およびカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20161020BHJP
   C09B 47/10 20060101ALI20161020BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   C09B47/10
   C09B67/20 G
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-233498(P2015-233498)
(22)【出願日】2015年11月30日
(62)【分割の表示】特願2014-558699(P2014-558699)の分割
【原出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-57635(P2016-57635A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-22266(P2014-22266)
(32)【優先日】2014年2月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 勝徳
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−098594(JP,A)
【文献】 特開2004−070342(JP,A)
【文献】 特開2012−145604(JP,A)
【文献】 特開2007−320986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中のハロゲン原子数が平均11〜13個であり、そのうち臭素原子数が平均8〜11個、塩素原子数が平均2〜3個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料からなるカラーフィルタ用顔料と樹脂からなる塗膜において、質量換算で顔料1部あたり樹脂1.25部からなり、膜厚を1.5μm〜2.4μmとしたときに、単体でC光源を使用して測色した時のCIEのXYZ表色系において、下記式(5)〜(8)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるカラーフィルタ用顔料。
式(5)
y=−1.766x+0.628
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(6)
y=4.598x−0.199
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(7)
y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(8)
y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)。
【請求項2】
前記記載のCIEのXYZ表色系において、下記式(9)〜(12)で囲まれるxyz色度領域を表示できる請求項1記載のカラーフィルタ用顔料。
式(9)
y=−1.766x+0.667
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(10)
y=3.623x−0.034
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(11)
y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(12)
y=1.891x+0.045
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
【請求項3】
請求項1または2記載のカラーフィルタ用顔料と黄色顔料とを含有することを特徴とするカラーフィルタ用顔料。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のカラーフィルタ用顔料を含有するカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用緑色顔料およびカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに用いるカラーフィルタは、バックライトの白色光を透過させることでディスプレイのカラー表示を実現する部材である。そのうちのカラーフィルタ用緑色着色剤に対して、高輝度化および色再現範囲の拡大が要求されている。
【0003】
高輝度化は、バックライト光に対する透過率の高い顔料を選択することが重要であり、従来のピグメントグリーン36に代わり、ピグメントグリーン58を主顔料として使用することで改良が進んでいる。また、顔料の高輝度化により、バックライトの白色光を効率的に使用できるようになるため、ディスプレイの省エネ化や製造コストダウンが可能となっている。
【0004】
さらに、色再現範囲の拡大については、ピグメントグリーン36やピグメントグリーン58よりも特定色度での薄膜化が可能なピグメントグリーン7が主顔料として選択されている。ピグメントグリーン36やピグメントグリーン58の厚膜化による色再現範囲の拡大も可能であるものの、実用的な膜厚でNTSC比90%以上を達成するのは不可能であり、ピグメントグリーン7が選択される理由である。例えば、ピグメントグリーン7、ピグメントイエロー185を含有する緑色感光性樹脂組成物を用いて緑色画素を形成し、2.2μm以下の薄膜で高色再現を達成する提案がなされている。しかし、ピグメントグリーン7はピグメントグリーン36、ピグメントグリーン58と比較すると透過率が低いため、得られるディスプレイの輝度が低下してしまうという問題があった。さらに、輝度に関してはバックライトの光量アップで補うことも可能であるが、消費電力量の増大という新たな問題が生じるため改善が求められている。以上より、輝度と色再現性を両立するカラーフィルタ用色材が望まれている。
【0005】
これらの課題を解決するために、引用文献1および2では、ピグメントグリーン58と青色色材として、ピグメントブルー15:3やピグメントブルー15:6、および黄色顔料としてピグメントイエロー150から構成される色材の利用が提案されている。
【0006】
また、緑色顔料として、ピグメントグリーン7、黄色顔料としてピグメントイエロー138、黄色染料が色材として使用され、明度の改良が引用文献3において、提案されている。
【0007】
さらに、引用文献4〜6においては、臭素や塩素、水素の原子数を規定したハロゲン化亜鉛フタロシアニンからなり、黄味の一定色座標を表示可能なカラーフィルタ用顔料が提案されている。
【0008】
しかしながら、高輝度化、色再現範囲の拡大を目的としたカラーフィルタを形成するためには、これら先行技術では、不十分であり、未だ達成できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−247539号公報
【特許文献2】特開2012−072252号公報
【特許文献3】特開2013−088546号公報
【特許文献4】特開2004−070342号公報
【特許文献5】特開2004−070343号公報
【特許文献6】特開2007−284589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、輝度が高く、色再現範囲が広いカラーフィルタ用緑色顔料およびそれからなるカラーフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るカラーフィルタ用顔料は、1分子中のハロゲン原子数が平均11〜13個であり、そのうち臭素原子数が平均8〜11個、塩素原子数が平均2〜3個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料からなるカラーフィルタ用顔料と樹脂からなる塗膜において、質量換算で顔料1部あたり樹脂1.25部からなり、膜厚を1.5μm〜2.4μmとしたときに、単体でC光源を使用して測色した時のCIEのXYZ表色系において、下記式(5)〜(8)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるカラーフィルタ用顔料。
式(5)
y=−1.766x+0.628
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(6)
y=4.598x−0.199
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(7)
y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(8)
y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)。
【0012】
前記記載CIEのXYZ表色系において、下記式(9)〜(12)で囲まれるxyz色度領域を表示できる請求項1記載のカラーフィルタ用顔料。
式(9)
y=−1.766x+0.667
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(10)
y=3.623x−0.034
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(11)
y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(12)
y=1.891x+0.045
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
【0013】
また、前記記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と黄色顔料を含有することを特徴とするカラーフィルタ用顔料。
【0014】
さらに、前記記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料または前記記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と黄色顔料を含有することを特徴とするカラーフィルタ用顔料を含有するカラーフィルタを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、1分子中のハロゲン原子数が平均10〜14個、臭素原子数が平均8〜12個、塩素原子数が平均2〜5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニンを使用することにより、ピグメントグリーン7を使用するよりも、膜厚が薄く、そのため、輝度が高く、色再現域の広いカラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の顔料が単色で色再現可能なC光源での領域を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明におけるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と樹脂からなる塗膜において、XYZ表色系において、特定のxy色度座標領域を表示が可能で、輝度が高く膜厚が薄い、すなわち着色力の高いカラーフィルタを作成できることが判明した。
【0018】
本発明においては、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンは一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.30μmのハロゲン化亜鉛フタロシアニンをハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料という。
【0019】
なお、本発明における一次粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子株式会社製)で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成するハロゲン化亜鉛フタロシアニン一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料であるハロゲン化亜鉛フタロシアニンは、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。また、透過型電子顕微鏡の代わりに走査型電子顕微鏡を使用してもよい。
【0020】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、複数種の、特定のハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を特定割合にて含有するものである。より具体的には、1分子中のハロゲン原子数が平均10〜14個であり、そのうち臭素原子数が平均8〜12個、塩素原子数が平均2〜5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニンである。高色再現を発現するためにより好ましくは、1分子中のハロゲン原子数が平均11〜13個であり、そのうち臭素原子数が平均8〜11個、塩素原子数が平均2〜3個である。
【0021】
さらに、上記ハロゲン化亜鉛フタロシアニンと樹脂からなる塗膜において、質量換算で顔料1部あたり樹脂1.25部からなり、膜厚を1.5μm〜2.4μmとしたときに、単体でC光源を使用して測色した時のCIEのXYZ表色系において、下記式(1)〜(4)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるカラーフィルタ用緑色顔料である。
式(1)
y=−1.766x+0.628
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(2)
y=5.573x−0.326
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(3)
y=−3.498x+1.216
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(4)
y=3.840x−0.325
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
【0022】
好ましくは、下記式(5)〜(8)で囲まれるxy色度座標領域を表示できるカラーフィルタ用緑色顔料である。
式(5)
y=−1.766x+0.628
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(6)
y=4.598x−0.199
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(7)
y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(8)
y=2.865x−0.159
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
【0023】
さらに、好ましくは、下記式(9)〜(12)で囲まれるxyz色度領域を表示できる請求項1記載のカラーフィルタ用顔料。
式(9)
y=−1.766x+0.667
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(10)
y=3.623x−0.034
(式中、xは、0.13<x<0.17である。)
式(11)
y=−3.498x+1.177
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
式(12)
y=1.891x+0.045
(式中、xは、0.17<x<0.21である。)
【0024】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の平均組成は、蛍光X線分析から求めることができる。
【0025】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、従来のハロゲン化数が高い緑色顔料ほど、黄味の色相ではなく、青味の色相に特異性のあるものである。本発明の顔料をカラーフィルタに含有することで、従来の高ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料では、達成出来なかった色相を表現でき、輝度が高く、さらに、着色力が高いため、カラーフィルタとした時の膜厚の薄膜化が可能となった。一方、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料よりも青味のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、黄色顔料との混合では緑色画素を形成できないため、カラーフィルタ用顔料としては適していない。また、青味の色相であるピグメントグリーン7とピグメントイエロー185を含有する緑色感光性樹脂組成物を用いて、緑色画素を形成し、2.2μm以下の薄膜で高色再現を達成する提案がなされているが、ピグメントグリーン36やピグメントグリーン58と比較すると透過率が低く、得られるディスプレイの輝度が低下してしまうという問題があった。輝度に関しては、バックライトの光量アップで補うことも可能であるが、消費電力量の増大という新たな問題が生じるため改善が求められている。
【0026】
本発明で用いるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンから製造することが出来る。このハロゲン化亜鉛フタロシアニンは、例えば、クロルスルホン酸法、ハロゲン化フタロニトリル法、溶融法等の様な公知の製造方法で製造できる。
【0027】
クロルスルホン酸法としては、亜鉛フタロシアニンを、クロロスルホン酸等の硫黄酸化物系の溶媒に溶解し、これに塩素ガス、臭素を仕込みハロゲン化する方法が挙げられる。この際の反応は、温度20〜120℃かつ3〜20時間の範囲で行われる。
【0028】
ハロゲン化フタロニトリル法としては、例えば、芳香環の水素原子の一部または全部が臭素の他、塩素等のハロゲン原子で置換されたフタル酸やフタロジニトリルと、亜鉛の金属または金属塩を適宜出発原料として使用して、対応するハロゲン化亜鉛フタロシアニンを合成する方法が挙げられる。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒を用いてもよい。この際の反応は、温度100〜300℃かつ7〜35時間の範囲で行われる。
【0029】
溶融法としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムの様なハロゲン化アルミニウム、四塩化チタンの様なハロゲン化チタン、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等の様なアルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物〔以下、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物という〕、塩化チオニル等、各種のハロゲン化の際に溶媒となる化合物の一種または二種以上の混合物からなる10〜170℃程度の溶融物中で、亜鉛フタロシアニンをハロゲン化剤にてハロゲン化する方法が挙げられる。
【0030】
好適なハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウムである。ハロゲン化アルミニウムを用いる上記方法における、ハロゲン化アルミニウムの添加量は、亜鉛フタロシアニンに対して、通常は、3倍モル以上であり、好ましくは10〜20倍モルである。
【0031】
ハロゲン化アルミニウムは単独で用いてもよいが、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物をハロゲン化アルミニウムに併用すると溶融温度をより下げることができ操作上有利になる。好適なアルカリ(土類)金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウムである。加えるアルカリ(土類)金属ハロゲン化物の量は溶融塩を生成する範囲内でハロゲン化アルミニウム10質量部に対してアルカリ(土類)金属ハロゲン化物が5〜15質量部が好ましい。
【0032】
また、ハロゲン化剤としては、塩素ガス、塩化スルフリル、臭素等がある。
【0033】
ハロゲン化の温度は10〜170℃が好ましいが、30〜140℃がより好ましい。更に、反応速度を速くするため、加圧することも可能である。反応時間は、5〜100時間で好ましくは、30〜45時間である。
【0034】
前記化合物の二種以上を併用する溶融法は、溶融塩中の塩化物と臭化物とヨウ素化物の比率を調節したり、塩素ガスや臭素やヨウ素の導入量や反応時間を変化させたりすることによって、生成するハロゲン化亜鉛フタロシアニン中における、特定ハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニンの含有比率を任意にコントロールすることができるので好ましい。
【0035】
本発明における好適な原料となる金属フタロシアニンは、亜鉛フタロシアニンである。反応中の原料の分解が少なく原料からの収率がより優れ、強酸を用いず安価な装置にて反応を行えるので、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを得る上では、溶融法が好適である。
【0036】
本発明では、原料仕込方法、触媒種や使用量、反応温度や反応時間の最適化により、既存のハロゲン化亜鉛フタロシアニンとは異なるハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニンを得ることが出来る。
【0037】
上記いずれの製造方法にせよ、反応終了後、得られた混合物を水又は塩酸等の酸性水溶液中に投入すると、生成したハロゲン化亜鉛フタロシアニンが沈殿する。ハロゲン化亜鉛フタロシアニンとしては、これをそのまま用いても良いが、その後、濾過、水または硫酸水素ナトリウム水、炭酸水素ナトリウム水、水酸化ナトリウム水洗浄、必要に応じてアセトン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤洗浄を行い、乾燥等の後処理を行ってから用いるのが好ましい。
【0038】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニンは、必要に応じてアトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等の粉砕機内で乾式磨砕し、ついで、ソルベントソルトミリング法やソルベントボイリング法等で顔料化することによって、顔料化前よりは、分散性や着色力に優れ、かつ、明度の高い緑色を発色する顔料が得られる。
【0039】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの顔料化方法には特に制限はなく、例えば、顔料化前のハロゲン化亜鉛フタロシアニンを分散媒に分散させると同時に顔料化を行ってもよいが、多量の有機溶剤中でハロゲン化金属フタロシアニンを加熱攪拌するソルベント処理よりも、容易に結晶成長を抑制でき、かつ比表面積の大きい顔料粒子が得られる点で、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
【0040】
このソルベントソルトミリングとは、合成直後またはその後に磨砕を行った、顔料化を経ていないハロゲン化亜鉛フタロシアニンである粗顔料と、無機塩と、有機溶剤とを混練磨砕することを意味する。この場合、後者の粗顔料を用いるほうが好ましい。具体的には、粗顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行う。この際の混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0041】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0042】
本発明では、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmのハロゲン化金属フタロシアニン顔料をカラーフィルタ用途に用いるのが好ましい。本発明における前記した好ましいハロゲン化亜鉛フタロシアニンを得るに当たっては、ソルベントソルトミリングにおける粗顔料使用量に対する無機塩使用量を高くするのが好ましい。即ち当該無機塩の使用量は、粗顔料1質量部に対して5〜20質量部とするのが好ましく、7〜15質量部とするのがより好ましい。
【0043】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましく、このような有機溶媒としては水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0044】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を製造する方法においては、粗顔料のみをソルベントソルトミリングしても良いが、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンとフタロシアニン誘導体とを併用してソルベントソルトミリングすることもできる。また、フタロシアニン誘導体は、粗顔料の合成時や顔料化の後に加えてもよいが、ソルベントソルトミリングなどの顔料化工程の前に加えることがより好ましい。フタロシアニン誘導体を加えることによってカラーフィルタ用レジストインキの粘度特性の向上と分散安定性の向上が達成出来る。
【0045】
このようなフタロシアニン誘導体としては、公知慣用のものがいずれも使用出来るが、下記一般式(1)または(2)のフタロシアニン顔料誘導体が好ましい。尚、このフタロシアニン誘導体は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンまたはその原料たる亜鉛フタロシアニンに対応するフタロシアニン誘導体であるのが好ましいが、併用する場合にも少量なので、ハロゲン化銅フタロシアニン誘導体や、銅フタロシアニン誘導体を用いることも出来る。
【0046】
一般式(1) P−(Y)n
【0047】
一般式(2) P−(A−Z)n
【0048】
(式中、Pは中心金属を有さないまたは中心金属を有する無置換またはハロゲン化フタロシアニン環のn個の水素を除いた残基を表す。Yは第1〜3級アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基またはそれと塩基或いは金属との塩を表す。Aは二価の連結基を、Zは第1〜2級アミノ基の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、又は窒素を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基を表す。そしてmは1〜4を、nは1〜4を表す。)
【0049】
前記中心金属としてはZnで、前記第1〜2級アミノ基としては、例えばモノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。また、前記カルボン酸基やスルホン酸基と塩を形成する塩基や金属としては、例えばアンモニアや、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンの様な有機塩基、カリウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウムの様な金属が挙げられ、Aの二価の連結基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレン基、−CO2−、−SO2−,−SO2NH(CH2)m−等の二価の連結基が挙げられる。そして、Zとしては、例えばフタルイミド基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0050】
粗顔料調製時及び/又はソルベントソルトミリング時に粗顔料に含めることが出来るフタロシアニン誘導体は、通常、粗顔料1質量部当たり0.01〜0.3質量部である。尚、粗顔料調製時及び/又はソルベントソルトミリング時にフタロシアニン誘導体を用いる場合には、粗顔料とフタロシアニン誘導体との合計量を粗顔料の使用量と見なして、無機塩の使用量等は、前記した範囲から選択する。
【0051】
ソルベントソルトミリング時の温度は、30〜150℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。ソルベントソルトミリングの時間は、5時間から20時間が好ましく、8〜18時間がより好ましい。
【0052】
こうして、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmのハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の粉体を得ることが出来る。
【0053】
洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩を除去することが出来る。必要であれば、結晶状態を変化させない様に、酸洗浄、アルカリ洗浄、有機溶剤洗浄を行ってもよい。
【0054】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等がある。特にスプレードライ乾燥はペースト作成時に易分散であるため好ましい。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等となった際に顔料を解して粉末化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。こうして、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を主成分として含む乾燥粉末が得られる。
【0055】
尚、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、従来のハロゲン化銅フタロシアニン顔料に比べて一次粒子の凝集力が弱く、より解れやすい性質を持つ。電子顕微鏡写真により、従来の顔料では観察できない、凝集体を構成する個々の顔料一次粒子を観察することができる。
【0056】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、公知慣用の用途にいずれも使用できるが、特に一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmであることから、顔料凝集も比較的弱く、着色すべき合成樹脂等への分散性がより良好となる。
【0057】
また、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、カラーフィルタ緑色画素部に使用する場合においては、カラーフィルタ用感光性組成物への顔料分散が容易であり、カラーフィルタ用感光性組成物を硬化する際に多用される365nmの光硬化感度が低下せず、現像時の膜へりやパターン流れも起こり難くなるので好ましい。近年要求されている輝度と色再現性とのいずれもが高いカラーフィルタ緑色画素部がより簡便に得られる。
【0058】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の一次粒子は、更に縦横のアスペクト比が1〜3であると、各用途分野において粘度特性が向上し、流動性がより高くなる。アスペクト比を求めるには、まず、一次粒子の平均粒子径を求める場合と同様に、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき長い方の径(長径)と、短い方の径(短径)の平均値を求め、これらの値を用いて算出する。
【0059】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を、少なくともカラーフィルタの緑色画素部に含有させることで、本発明のカラーフィルタを得ることが出来る。
【0060】
従来のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と同様に、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、カラーフィルタの緑色画素部を得る場合に、特段に黄色顔料を調色のために併用することなく、或いは併用するにしてもより少量で済むため、380〜780nmの全域における光透過率の低下も最小限に防止できる。
【0061】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、前記した様に、従来のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と同様に、380〜780nmにおける分光透過スペクトルの透過率が最大となる波長(Tmax)は、500〜520nmであり、その透過曲線の半値幅が110nm以下と非常にシャープである。(この波長は、後述する様な感光性樹脂による影響を受けない。)。
【0062】
本発明における分光透過スペクトルとは、日本工業規格JIS Z 8722(色の測定方法−反射及び透過物体色)の第一種分光測光器に準じて求められるもので、ガラス基板等の上に前記所定乾燥膜厚に製膜した顔料を含む樹脂被膜について所定波長領域の光を走査照射して、各波長における各透過率値をプロットしたものである。カラーフィルタとしての透過率は、例えば樹脂のみで同一乾燥膜厚となした被膜について同様に求めた分光透過スペクトルで補正すること(ベースライン補正等)によって、より精度良く求めることが出来る。
【0063】
本発明の、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を緑色画素部に含有するカラーフィルタは、白色光、F10等の光源を用いた場合、光源の緑の輝線を良く透過させることができ、かつハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の分光透過スペクトルがシャープなため、緑色の色純度、着色力を最大限に発現することができる。
【0064】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、それだけをそのままカラーフィルタの緑色画素部の製造に用いることが出来るが、必要ならば、経済性を考慮して、公知慣用の緑色ハロゲン化銅フタロシアニンまたはその他の緑色ハロゲン化異種金属フタロシアニン顔料の様な緑色ハロゲン化金属フタロシアニン顔料を併用して用いても良い。
【0065】
本発明におけるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料:公知慣用の緑色ハロゲン化金属フタロシアニン顔料(質量比)=100:0〜80:20、好ましくは100:0〜90:10として用いることが好ましい。
【0066】
また、緑色顔料の他に、特性を発現させるため調色用に黄色顔料を使用することがある。ここで併用できる黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー83、同110、同129、同138、同139、同150、同180、同185等の黄色有機顔料が挙げられる。本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と黄色顔料との併用割合は、前記ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100質量部当たり、黄色顔料が10〜200質量部である。
【0067】
また、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いれば、黄色顔料を調色のために併用した場合でも、調色のために2種以上の異なる色の顔料を混色する従来の場合に比べて、濁りの少ない、色純度、着色力に優れ、かつ明るいカラーフィルタ緑色画素部とすることが出来る。
【0068】
例えば、従来のC.I.ピグメントグリーン7、同36の様な緑色顔料に、上記した黄色顔料を併用した混合顔料を用いた場合に比べて、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料に黄色顔料を併用した場合のほうが、色純度、着色力が高いため、明るさの低下がより小さくなり、緑色領域の光透過量もより大きくなる。
【0069】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、公知の方法でカラーフィルタの緑色画素部のパターンの形成に用いることが出来る。典型的には、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、感光性樹脂とを必須成分して含むカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を得ることが出来る。
【0070】
カラーフィルタの製造方法としては、例えば、このハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を感光性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して緑色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0071】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で緑色画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。なお、赤色画素部のパターンおよび青色画素部のパターンも公知の顔料を使用して、同様の方法で形成できる。
【0072】
カラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を調製するには、例えば、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0073】
ここでのハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料としては、上記フタロシアニン誘導体を含んでいても含んでいなくても良いハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と、必要に応じて黄色顔料を用いることが出来る。
【0074】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のディスパービック(DISPERBYK登録商標)130、同161、同162、同163、同170、同LPN−6919、同LPN−21116、エフカ社のエフカ46、エフカ47等が挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0075】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0076】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて0〜100質量部の分散剤及び/又は0〜20質量部のフタロシアニン誘導体とを、均一となる様に攪拌分散して分散液を得ることができる。次いでこの分散液に、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料1質量部当たり、3〜20質量部の感光性樹脂、感光性樹脂1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を得ることができる。
【0077】
この際に使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
【0078】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等がある。
【0079】
こうして調製されたカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルタとなすことができる。
【0080】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、青味の緑色で着色力が高く、高色純度でコントラストの高い明るい緑色を発色する。従って、詳述したカラーフィルタ用以外にも、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子トナー、ジェットインキ、熱転写インキなどの着色に適する。
【実施例】
【0081】
次に本発明について、実施例を示して具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0082】
(製造例1)
フタロニトリル、アンモニア、塩化亜鉛を原料として亜鉛フタロシアニンを製造した。この1−クロロナフタレン溶液は、750〜850nmに光の吸収を有していた。
【0083】
[実施例1]
300mLフラスコに、塩化スルフリル 91部、塩化アルミニウム 109部、塩化ナトリウム 15部、亜鉛フタロシアニン 30部、臭素 74部を仕込んだ。130℃まで40時間かけて昇温し、水に取り出した後、ろ過することにより緑色粗顔料を得た。得られた緑色粗顔料 20部、粉砕した塩化ナトリウム 140部、ジエチレングリコール 32部、キシレン 1.8部を1L双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水 2kgに取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、緑色顔料を得た。得られた緑色顔料は、リガク社製ZSX100Eによる蛍光X線分析から、1分子中のハロゲン原子数が平均13.97個であり、そのうち臭素原子数が平均11.46個、塩素原子数が平均2.51個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であった。
【0084】
得られた緑色顔料 2.48部を、BYK−LPN6919(ビックケミー社製) 1.24部、ユニディックZL−295(DIC社製) 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機社製ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物1を得た。着色組成物1 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物1を得た。この評価用組成物1をソーダガラスに膜厚を変えてスピンコートし、90℃で3分乾燥して評価用ガラス基板を得た。このガラス基板を230℃で1時間加熱した後、C光源における色度(x,y)をコニカミノルタ社製CM−3500dで測定し、膜厚をレーザーテック社製リアルカラー共焦点顕微鏡OPTELICS C130で測定した。
【0085】
評価結果は、下記のようになった。
【0086】
膜厚:1.5μm、色度x:0.200、色度y:0.466
膜厚:1.9μm、色度x:0.191、色度y:0.497
膜厚:2.4μm、色度x:0.180、色度y:0.536
【0087】
[実施例2]
300mLフラスコに、塩化スルフリル 91部、塩化アルミニウム 109部、塩化ナトリウム 15部、亜鉛フタロシアニン 30部、臭素 59部を仕込んだ。130℃まで40時間かけて昇温し、水に取り出した後、ろ過することにより緑色粗顔料を得た。得られた緑色粗顔料 20部、粉砕した塩化ナトリウム 140部、ジエチレングリコール 32部、キシレン 1.8部を1L双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水 2kgに取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、緑色顔料を得た。得られた緑色顔料は、蛍光X線分析から、1分子中のハロゲン原子数が平均12.71個であり、そのうち臭素原子数が平均10.22個、塩素原子数が平均2.49個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であった。
【0088】
得られた緑色顔料 2.48部を、BYK−LPN6919 1.24部、ユニディックZL−295 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4 mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物2を得た。着色組成物2 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物2を得た。この評価用組成物2をソーダガラスに膜厚を変えてスピンコートし、90℃で3分乾燥して評価用ガラス基板を得た。このガラス基板を230℃で1時間加熱した後、C光源における色度(x,y)と膜厚を測定した。
【0089】
評価結果は、下記のようになった。
【0090】
膜厚:1.5μm、色度x:0.182、色度y:0.436
膜厚:1.9μm、色度x:0.171、色度y:0.462
膜厚:2.4μm、色度x:0.158、色度y:0.494
【0091】
[実施例3]
300mLフラスコに、塩化スルフリル 91部、塩化アルミニウム 109部、塩化ナトリウム 15部、亜鉛フタロシアニン 30部、臭素 44部を仕込んだ。130℃まで40時間かけて昇温し、水に取り出した後、ろ過することにより緑色粗顔料を得た。得られた緑色粗顔料 20部、粉砕した塩化ナトリウム 140部、ジエチレングリコール 32部、キシレン 1.8部を1L双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水 2kgに取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、緑色顔料を得た。得られた緑色顔料は、蛍光X線分析から、1分子中のハロゲン原子数が平均11.98個であり、そのうち臭素原子数が平均9.00個、塩素原子数が平均2.98個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であった。
【0092】
得られた緑色顔料 2.48部を、BYK−LPN6919 1.24部、ユニディック ZL−295 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物3を得た。着色組成物3 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物3を得た。この評価用組成物3をソーダガラスに膜厚を変えてスピンコートし、90℃で3分乾燥して評価用ガラス基板を得た。このガラス基板を230℃で1時間加熱した後、C光源における色度(x,y)と膜厚を測定した。
【0093】
評価結果は、下記のようになった。
【0094】
膜厚:1.5μm、色度x:0.163、色度y:0.391
膜厚:1.9μm、色度x:0.154、色度y:0.407
膜厚:2.4μm、色度x:0.142、色度y:0.428
【0095】
[実施例4]
300mLフラスコに、塩化スルフリル 109部、塩化アルミニウム 131部、塩化ナトリウム 18部、亜鉛フタロシアニン 30部、臭素 52部を仕込んだ。130℃まで40時間かけて昇温し、水に取り出した後、ろ過することにより緑色粗顔料を得た。得られた緑色粗顔料 20部、粉砕した塩化ナトリウム 140部、ジエチレングリコール 32部、キシレン 1.8部を1L双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水 2kgに取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、緑色顔料を得た。得られた緑色顔料は、蛍光X線分析から、1分子中のハロゲン原子数が平均12.69個であり、そのうち臭素原子数が平均8.54個、塩素原子数が平均4.16個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であった。
【0096】
得られた緑色顔料 2.48部を、BYK−LPN6919 1.24部、ユニディック ZL−295 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4 mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物4を得た。着色組成物4 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物4を得た。この評価用組成物4をソーダガラスに膜厚を変えてスピンコートし、90℃で3分乾燥して評価用ガラス基板を得た。このガラス基板を230℃で1時間加熱した後、C光源における色度(x,y)と膜厚を測定した。
【0097】
膜厚:1.5μm、色度x:0.176、色度y:0.391
膜厚:1.9μm、色度x:0.164、色度y:0.407
膜厚:2.4μm、色度x:0.148、色度y:0.428
【0098】
[調色用組成物1の調製]
ピグメントイエロー129(チバスペシャリティケミカルズ社製イルガジンイエローL0800) 1.65部を、DISPERBYK−161(ビックケミー社製) 3.85部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 11.00部と共に0.3〜0.4 mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物5を得た。着色組成物5 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することで調色用組成物1を得た。
【0099】
[調色用組成物2の調製]
ピグメントイエロー139(ビーエーエスエフ社製パリオトールイエローD1819)を用いたこと以外は、調色用組成物1の調整と同様にして分散処理を行い、調色用組成物2を得た。
【0100】
[調色用組成物3の調製]
ピグメントイエロー150(ランクセス社製E4GNGT)を用いたこと以外は、調色用組成物1の調整と同様にして分散処理を行い、調色用組成物3を得た。
【0101】
[調色用組成物4の調製]
ピグメントイエロー185(ビーエーエスエフ社製パリオトールイエローD1155)を用いたこと以外は、調色用組成物1の調整と同様にして分散処理を行い、調色用組成物4を得た。
【0102】
[実施例5〜20]
実施例1〜4で得た評価用組成物1〜4と調色用組成物1〜4を混合、製膜、乾燥して得られたガラス基板を230℃で1時間加熱した後に、C光源における色度(x,y)=(0.240,0.650)を示す塗膜を作成し、コニカミノルタ社製CM−3500dで輝度を測定し、レーザーテック社製リアルカラー共焦点顕微鏡OPTELICS C130で膜厚を測定した。
【0103】
(比較例1)
ピグメントグリーン7(DIC社製FASTOGEN Green S) 2.48部を、BYK−LPN6919 1.24部、ユニディック ZL−295 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物6を得た。着色組成物6 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物5を得た。
【0104】
(比較例2)
ピグメントグリーン58(DIC社製FASTOGEN Green A110) 2.48部を、BYK−LPN6919 1.24部、ユニディックZL−295 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物7を得た。着色組成物7 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物6を得た。この評価用組成物6をソーダガラスに膜厚を変えてスピンコートし、90℃で3分乾燥して評価用ガラス基板を得た。このガラス基板を230℃で1時間加熱した後、C光源における色度(x,y)と膜厚を測定した。
【0105】
膜厚:1.5μm、色度x:0.245、色度y:0.509
膜厚:1.9μm、色度x:0.238、色度y:0.545
膜厚:2.4μm、色度x:0.230、色度y:0.589
【0106】
(比較例3)
300mLフラスコに、塩化スルフリル 91部、塩化アルミニウム 109部、塩化ナトリウム 15部、亜鉛フタロシアニン 30部、臭素 30部を仕込んだ。130℃まで40時間かけて昇温し、水に取り出した後、ろ過することにより緑色粗顔料を得た。得られた緑色粗顔料 20部、粉砕した塩化ナトリウム 140部、ジエチレングリコール 32部、キシレン 1.8部を1L双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水 2kgに取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、緑色顔料を得た。得られた緑色顔料は、蛍光X線分析から、1分子中のハロゲン原子数が平均10.01個であり、そのうち臭素原子数が平均6.92個、塩素原子数が平均3.09個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であった。
【0107】
得られた緑色顔料 2.48部を、BYK−LPN6919 1.24部、ユニディック ZL−295 1.86部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92部と共に0.3〜0.4 mmのジルコンビーズを用いて、ペイントコンディショナーで2時間分散して、着色組成物8を得た。着色組成物8 4.0部、ユニディックZL−295 0.98部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22部を加えて、ペイントコンディショナーで混合することでカラーフィルタ用緑色画素部を形成するための評価用組成物7を得た。この評価用組成物7をソーダガラスに膜厚を変えてスピンコートし、90℃で3分乾燥して評価用ガラス基板を得た。このガラス基板を230℃で1時間加熱した後、C光源における色度(x,y)と膜厚を測定した。
【0108】
膜厚:1.5μm、色度x:0.127、色度y:0.343
膜厚:1.9μm、色度x:0.123、色度y:0.346
膜厚:2.4μm、色度x:0.118、色度y:0.350
【0109】
[比較例4〜15]
比較例1〜3で得た評価用組成物5〜7と調色用組成物1〜4を混合、製膜、乾燥して得られたガラス基板を230℃で1時間加熱した後に、C光源における色度(x,y)=(0.240,0.650)を示す塗膜を作成し、コニカミノルタ社製CM−3500dで輝度を測定し、レーザーテック社製リアルカラー共焦点顕微鏡OPTELICS C130で膜厚を測定した。
【0110】
これらの実施例及び比較例を表1にまとめ、本発明における顔料の単色で表示可能な色度領域を図1に示した。
【0111】
(判定基準)
調色に使用した調色用組成物によらず、評価用組成物5よりも膜厚が薄く、かつ評価用組成物5よりも輝度が高くなるものを○とした。特定の調色用組成物で調色した場合のみ、評価用組成物5よりも膜厚が薄く、かつ評価用組成物5よりも輝度が高くなるものを△とした。いずれの調色用組成物で調色しても、評価用組成物5よりも膜厚が薄く、かつ評価用組成物5よりも輝度が高くならないものを×とした。
【0112】
【表1】
表1からわかるように、本発明の顔料から作られた実施例5〜20の塗膜は、ピグメントグリーン7から作られた評価用組成物5を用いた比較例4、比較例7、比較例10、比較例13の塗膜に対し、膜厚が薄く、かつ輝度が高いことから、カラーフィルタ用緑色顔料としてより望ましい特性を有していることは明白である。本発明の顔料から作られた実施例5〜20の塗膜は、ピグメントグリーン58から作られた評価用組成物6を用いた比較例5、比較例8、比較例11、比較例14の塗膜に対し、膜厚が薄く、カラーフィルタ用緑色顔料としてより望ましい特性を有していることは明白である。本発明の顔料から作られた実施例5〜20の塗膜は、評価用組成物7を用いた比較例6、比較例9、比較例12、比較例15の塗膜に対し、調色用組成物の種類によらず調色可能であり、かつ輝度が高いことから、カラーフィルタ用緑色顔料としてより望ましい特性を有していることは明白である。
図1