【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。実施例において、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
【0049】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標) KF−804L + KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)、RI
(2)
1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−L400
溶媒:CDCl
3
内部標準:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(3)
13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
3
緩和試薬:トリスアセチルアセトナートクロム(Cr(acac)
3)
基準:CDCl
3(77.0ppm)
(4)ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)
装置:(株)島津製作所製 ICPM−8500
(5)エアーブラシ(スプレー塗布)
装置:アネスト岩田(株)製 レボリューションHP−TR2
【0050】
また使用した試薬の略号は以下のとおりである。
HPS:ハイパーブランチポリスチレン[日産化学工業(株)製 ハイパーテック(登録商標)HPS−200]
IPA:イソプロパノール
IPE:ジイソプロピルエーテル
THF:テトラヒドロフラン
MEK:エチルメチルケトン
PG:プロピレングリコール
dba:ジベンジリデンアセトン(C
6H
5CH=CH−C(=O)−CH=CHC
6H
5)
PE:ポリエチレン
PP:ポリプロピレン
PVC:ポリ塩化ビニル
PC:ポリカーボネート
PET:ポリエチレンテレフタラート
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体
PI:ポリイミド
ITO:酸化インジウムスズ
【0051】
[合成例1]HPS−Clの製造
【化9】
500mLの反応フラスコに、塩化スルフリル[キシダ化学(株)製]27g及びクロロホルム50gを仕込み、撹拌して均一に溶解させた。この溶液を窒素気流下0℃まで冷却した。
別の300mLの反応フラスコに、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーHPS15g及びクロロホルム150gを仕込み、窒素気流下均一になるまで撹拌した。
前述の0℃に冷却されている塩化スルフリル/クロロホルム溶液中に、窒素気流下、HPS/クロロホルム溶液が仕込まれた前記300mLの反応フラスコから、送液ポンプを用いて、該溶液を反応液の温度が−5〜5℃となるように60分間かけて加えた。添加終了後、反応液の温度を−5〜5℃に保持しながら6時間撹拌した。
さらにこの反応液へ、シクロヘキセン[東京化成工業(株)製]16gをクロロホルム50gに溶かした溶液を、反応液の温度が−5〜5℃となるように加えた。添加終了後、この反応液をIPA1,200gに添加してポリマーを沈殿させた。この沈殿をろ取して得られた白色粉末をクロロホルム100gに溶解し、これをIPA500gに添加してポリマーを再沈殿させた。この沈殿物を減圧ろ過し、真空乾燥して、塩素原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)8.5gを白色粉末として得た(収率99%)。
得られたHPS−Clの
1H NMRスペクトルを
図1に示す。ジチオカルバメート基由来のピーク(4.0ppm、3.7ppm)が消失していることから、得られたHPS−Clは、HPS分子末端のジチオカルバメート基がほぼ全て塩素原子に置換されていることが明らかとなった。また、得られたHPS−ClのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,000、分散度Mw/Mnは2.9であった。
【0052】
[合成例2]HPS−NEt
3Clの製造
【化10】
還流塔を付した50mLの反応フラスコに、合成例1で製造したHPS−Cl3.0g(20mmol)、トリエチルアミン[純正化学(株)製]2.0g(20mmol)及びクロロホルム/エタノール混合液(体積比2:1)30mLを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら48時間加熱還流した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルム50mLに溶解し、これをIPE200mLに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、40℃で真空乾燥して、トリエチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−NEt
3Cl)6.1gを薄茶色粉末として得た。
得られたHPS−NEt
3Clの
13C NMRスペクトルを
図2に示す。塩素原子が結合したメチレン基と、アンモニウム基が結合したメチレン基のピークから、得られたHPS−NEt
3Clは、HPS−Cl分子末端の塩素原子の91%がアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(91%)から算出されるHPS−NEt
3Clの重量平均分子量Mwは22,000となった。
【0053】
[合成例3]Pd[HPS−NEt
3Cl]の製造
50mLの二つ口フラスコに、合成例2で製造したHPS−NEt
3Cl200mg、Pd
2(dba)
3・CHCl
3[エヌ・イー ケムキャット(株)製]100mg及びクロロホルム/エタノール混合液(体積比2:1)10mLを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら70℃で6時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルム10mLに溶解し、これをIPE50mLに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−NEt
3Cl])143mgを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−NEt
3Cl]のPd含有量は19質量%であった。
【0054】
[合成例4]HPS−NBu
3Clの製造
【化11】
還流塔を付した50mLの反応フラスコに、合成例1で製造したHPS−Cl3.0g(20mmol)、トリブチルアミン[純正化学(株)製]3.7g(20mmol)及びクロロホルム/エタノール混合液(体積比2:1)30mLを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら48時間加熱還流した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣を、クロロホルム50mLに溶解し、これをIPE200mLに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、40℃で真空乾燥して、トリブチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−NBu
3Cl)5.8gを薄茶色粉末として得た。
得られたHPS−NBu
3Clの
13C NMRスペクトルを
図3に示す。塩素原子が結合したメチレン基と、アンモニウム基が結合したメチレン基のピークから、得られたHPS−NBu
3Clは、HPS−Cl分子末端の塩素原子の80%がアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(80%)から算出されるHPS−NBu
3Clの重量平均分子量Mwは28,000となった。
【0055】
[合成例5]Pd[HPS−NBu
3Cl]の製造
50mLの二つ口フラスコに、合成例4で製造したHPS−NBu
3Cl200mg、酢酸パラジウム[エヌ・イー ケムキャット(株)製]100mg及びクロロホルム/エタノール混合液(体積比2:1)10mLを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら70℃で6時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルム10mLに溶解し、これをIPE50mLに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−NBu
3Cl])167mgを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−NBu
3Cl]のPd含有量は12質量%であった。
【0056】
[合成例6]HPS−NOct
3Clの製造
【化12】
還流塔を付した100mLの反応フラスコに、合成例1で製造したHPS−Cl4.6g(30mmol)、トリオクチルアミン[純正化学(株)製]10.6g(30mmol)及びクロロホルム45gを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら48時間加熱還流した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣を、クロロホルム150gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE3,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、40℃で真空乾燥して、トリオクチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−NOct
3Cl)9.6gを淡黄色粉末として得た。
得られたHPS−NOct
3Clの
13C NMRスペクトルを
図4に示す。塩素原子が結合したメチレン基と、アンモニウム基が結合したメチレン基のピークから、得られたHPS−NOct
3Clは、HPS−Cl分子末端の塩素原子の71%がアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(71%)から算出されるHPS−NOct
3Clの重量平均分子量Mwは37,000となった。
【0057】
[合成例7]Pd[HPS−NOct
3Cl]の製造−1
100mLの二つ口フラスコに、合成例6で製造したHPS−NOct
3Cl8.0g、酢酸パラジウム[エヌ・イー ケムキャット(株)製]4.3g及びクロロホルム/エタノール混合液(質量比4:1)100gを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら17時間加熱還流した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルム100gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE2,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−NOct
3Cl])9.9gを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−NOct
3Cl]のPd含有量は22質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0058】
[合成例8]Pd[HPS−NOct
3Cl]の製造−2
1Lの二つ口フラスコに、酢酸パラジウム[川研ファインケミカル(株)製]4.3g及びクロロホルム200gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、合成例6に従って製造したHPS−NOct
3Cl18.0gをクロロホルム200gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この滴下ロート内を、エタノール100gを使用して前記反応フラスコへ洗い込んだ。この混合物を60℃で17時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をTHF300gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE6,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−NOct
3Cl])19.9gを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−NOct
3Cl]のPd含有量は11質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0059】
[参考例1]無電解ニッケルめっき液Aの調製
300mLのビーカーに、メルプレートNI−871 M1[メルテックス(株)製]12mL及びメルプレートNI−871 M2[メルテックス(株)製]20mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を200mLとした。この溶液へ10体積%硫酸水溶液を加え、溶液のpHを4.5に調整した。この溶液を撹拌しながら90℃に加熱し、無電解めっき液Aとした。
【0060】
[参考例2]無電解ニッケルめっき液Bの調製
200mLのビーカーに、メルプレートNI−6522LF1[メルテックス(株)製]5mL、メルプレートNI−6522LF2[メルテックス(株)製]15mL及びメルプレートNI−6522LFアディティブ[メルテックス(株)製]0.5mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を100mLとした。この溶液へ10体積%硫酸水溶液を加え、溶液のpHを4.5〜4.7に調整した。この溶液を撹拌しながら80℃に加熱し、無電解めっき液Bとした。
【0061】
[実施例1]6−ナイロン基板への無電解めっき
合成例3で製造したPd[HPS−NEt
3Cl]0.1gを、エタノール9.9gに溶解し、固形分濃度1質量%の無電解めっき下地剤を調製した。
図5に示すように、基板中央部に幅18mmのセロテープ(登録商標)[ニチバン(株)製 CT−18S]でマスキングした50×50mmの6−ナイロン基板[宇部興産(株)製]に、上記下地剤1mLをまんべんなく滴下し、500rpm×10秒間+2,000rpm×30秒間でスピンコートした。この基板を、90℃のホットプレートで30分間乾燥した後、前記セロテープ(登録商標)を剥がし、
図6に示すように、基板両端に下地層を具備した基板を得た。
得られた基板を、参考例1で調製した90℃の無電解めっき液A中に20秒間浸漬した。その後、取り出した基板を水洗し、1時間風乾した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0062】
[実施例2]6,6−ナイロン基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えて6,6−ナイロン基板[旭化成(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0063】
[実施例3]PE基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてPE基板[共栄樹脂(株)製 硬質ポリエチレン板]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0064】
[実施例4]PP基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてPP基板[共栄樹脂(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0065】
[実施例5]PVC基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてPVC基板[笠井産業(株)製 薄板硬質塩化ビニール板]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0066】
[実施例6]PC基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてPC基板[タキロン(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0067】
[実施例7]アクリル基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてアクリル基板[三菱レイヨン(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0068】
[実施例8]ポリアセタール基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてポリアセタール基板[日本ポリペンコ(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0069】
[実施例9]PET基板への無電解めっき
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてPET基板[日本ポリペンコ(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0070】
[実施例10]ABS基板への無電解めっき−1
実施例1において、6−ナイロン基板に替えてABS基板[三菱樹脂(株)製]を使用した以外は同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板両端部分にのみ金属光沢のある金属めっき膜が生じ、下地剤未塗布の基板中央部分には金属めっき膜は生じなかった。
【0071】
[実施例11]金属めっき膜の基板密着性試験
実施例1で得られためっき基板上の金属めっき膜部分に、幅18mmのセロテープ(登録商標)[ニチバン(株)製 CT−18S]を貼り、へらで擦りつけてしっかり密着させた。その後、密着させたセロテープ(登録商標)を一気に剥がし、金属めっき膜の基板密着性を評価した。金属めっき膜の状態を目視で確認したところ、金属めっき膜は基板から剥がれることなく、基板上に密着したままであった。
【0072】
[実施例12]スプレー塗布による下地層の作製
合成例5で製造したPd[HPS−NBu
3Cl]1.0gを、IPA20gに溶解し、固形分濃度5質量%の無電解めっき下地剤を調製した。
50×50mmのABS基板[三菱樹脂(株)製]上部全面に、エアーブラシを用いて上記下地剤を2〜3秒間スプレーし塗布した。なお、スプレーには圧力0.1MPaの窒素を使用し、被塗布基板の上方およそ30cmからスプレーした。この基板を、80℃のホットプレートで1時間乾燥し、基板上全面に下地層を具備したABS基板を得た。
得られた基板を、参考例1で調製した90℃の無電解めっき液A中に20秒間浸漬した。その後、取り出した基板を水洗し、1時間風乾した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。
【0073】
[実施例13]ABS基板への無電解めっき−2
合成例7で製造したPd[HPS−NOct
3Cl]0.02gを、MEK1.98gに溶解し、固形分濃度1質量%の無電解めっき下地剤を調製した。
予めエタノールで表面を洗浄した50×50mmのABS基板[三菱樹脂(株)製]に、上記下地剤0.5mLをまんべんなく滴下し、slope10秒間+2,000rpm×30秒間+slope10秒間でスピンコートした。この基板を、100℃のホットプレートで10分間乾燥し、基板上全面に下地層を具備した基板を得た。
得られた基板を、参考例1で調製した90℃の無電解めっき液A中に30秒間浸漬した。その後、取り出した基板を水洗し、1時間風乾した。
無電解めっき処理により、下地層を形成した基板上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0074】
[実施例14]PIフィルムへの無電解めっき−1
基材を予めエタノールで表面を洗浄した50×50mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)250EN]に、無電解めっき液Aへの浸漬時間を1分間に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0075】
[実施例15]PIフィルムへの無電解めっき−2
基材を予め水酸化ナトリウム水溶液及び水で順に表面を洗浄した50×50mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)250EN]に、無電解めっき液Aへの浸漬時間を1分間に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0076】
[実施例16]PIフィルムへの無電解めっき−3
基材を予めエタノールで表面を洗浄した50×50mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)500V]に、無電解めっき液Aへの浸漬時間を1分間に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0077】
[実施例17]PIフィルムへの無電解めっき−4
基材を予め水酸化ナトリウム水溶液及び水で順に表面を洗浄した50×50mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)500V]に、無電解めっき液Aへの浸漬時間を1分間に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0078】
[実施例18]PIフィルムへの無電解めっき−5
基材を予めエタノールで表面を洗浄した50×50mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)500H]に、無電解めっき液Aへの浸漬時間を1分間に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0079】
[実施例19]PIフィルムへの無電解めっき−6
基材を予め水酸化ナトリウム水溶液及び水で順に表面を洗浄した50×50mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)500H]に、無電解めっき液Aへの浸漬時間を1分間に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。また、下地層の無電解めっき液への溶出に起因する無電解めっき液槽内壁への金属めっき膜の生成は、確認されなかった。
【0080】
[実施例20]PIフィルムへの細線描画
合成例7で製造したPd[HPS−NOct
3Cl]1gを、MEK99gに溶解し、さらにその溶液1gにPG4gを加えて粘度を調整し、固形分濃度0.2質量%の無電解めっき下地剤インクを調製した。
予め、50℃の20質量%水酸化カリウム水溶液に1分間浸漬し、純水で洗浄、乾燥させた20×15mmのPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)250EN]上に、Gペン[ゼブラ(株)製 Gペン]を使用して、上記無電解めっき下地剤インクの細線を描いた。なお、一度描いた線はさらに2回なぞり、合わせて3回の重ね描きとした。このフィルムを、100℃のホットプレートで10分間乾燥し、フィルム上面に細線状の下地層を具備したフィルムを得た。
得られたフィルムを、参考例2で調製した80℃の無電解めっき液B中に1分間浸漬した。その後、取り出したフィルムを水洗し、1時間風乾した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したフィルム上に、線幅数百μmの線状の金属光沢のある金属めっき膜が生じた(
図7)。
【0081】
[実施例21]ITO付PET基板への無電解めっき
合成例8で製造したPd[HPS−NOct
3Cl]1.0gを、IPA99gに溶解し、固形分濃度1質量%の無電解めっき下地剤を調製した。
予めIPAで表面を洗浄した50×50mmのITO付PET基板のITO面全面に、上記下地剤をIPAで5倍に希釈した溶液1mLをまんべんなく滴下し、1,000rpm×30秒間でスピンコートした。この基板を、80℃のホットプレートで5分間乾燥し、ITO膜上全面に下地層を具備した基板を得た。
得られた基板を、参考例1で調製した90℃の無電解めっき液B中に120秒間浸漬した。その後、取り出した基板を水洗し、80℃のホットプレートで5分間乾燥した。
無電解めっき処理により、下地層を形成したITO膜上全面に金属光沢のある金属めっき膜が生じた。