特許第6020909号(P6020909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020909ガス中のホルムアルデヒド濃度の決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020909
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ガス中のホルムアルデヒド濃度の決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20161020BHJP
   G01N 21/35 20140101ALN20161020BHJP
【FI】
   G01N31/00 V
   G01N31/00 Y
   !G01N21/35 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-269607(P2012-269607)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2013-145228(P2013-145228A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-271811(P2011-271811)
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健次
(72)【発明者】
【氏名】前田 恒昭
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−111520(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3129842(JP,U)
【文献】 特開2004−184318(JP,A)
【文献】 特開2004−157007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中のホルムアルデヒドを二酸化炭素に変換して定量する濃度の測定方法であって、
アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収手段を用い、
前記吸収手段を経由しない試料ガスから得られた二酸化炭素を定量する第1の工程と
前記吸収手段を経由した試料ガスから得られた二酸化炭素を定量する第2の工程を有し、
第1工程における測定値と第2工程における測定値の差からホルムアルデヒドの濃度を算出することを特徴とするホルムアルデヒド濃度の測定方法。
【請求項2】
前記第1の工程と第2の工程の間に、前記吸収手段を経由した試料ガスにホルムアルデヒドが含有されていないことを確認する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のホルムアルデヒド濃度の測定方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素の定量において、標準ガスによる校正を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のホルムアルデヒド濃度の測定方法。
【請求項4】
ホルムアルデヒドを含有する試料ガスを供給する試料ガス入り口と、
該試料ガス入り口に接続されたガス流路と、
該ガス流路に配設された、反応ガスの入り口、該ガスと前記試料ガスを反応させて二酸化炭素を生成する反応部、該反応部で生成された二酸化炭素を検出する検出部、
を有し、
前記流路は、反応ガスの入り口の前段に、試料中のアルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部を配設した副流路及び該副流路への切替手段を有し、
該切替手段による切替えにより、前記吸収を経由しない試料ガスから得られた二酸化炭素量と、前記吸収を経由した試料ガスから得られた二酸化炭素量との差から、試料ガス中のホルムアルデヒド濃度を算出する手段を備えていることを特徴とするホルムアルデヒド濃度の測定装置。
【請求項5】
前記流路は、反応ガスの入り口の後段に、試料ガス及び反応ガスを前記検出部に直接供給する第2の副流路及び該第2の副流路への第2の切替手段を有し、
第2の切替手段の切替えにより、前記吸収を経由した試料ガスから得られたガスと反応ガスの混合物中にホルムアルデヒドが含有されていないことを確認する手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載のホルムアルデヒド濃度の測定装置。
【請求項6】
前記検出部が、標準ガスによる校正手段を有していることを特徴とする請求項4又は5に記載のホルムアルデヒド濃度の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中のホルムアルデヒド濃度の決定方法に関し、特に、ガス発生器もしくは高圧容器充てんの形で供給されるホルムアルデヒドガスのホルムアルデヒド濃度の定量分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器分析において気体中のホルムアルデヒドを分析する際、機器を校正する目的でホルムアルデヒド標準ガスが使用される。このホルムアルデヒド標準ガスとして、高圧容器充填のものやホルムアルデヒド標準ガス発生装置から発生させたもの、が使用される。一般的に標準ガスは、純度が決定された物質を希釈ガスで希釈することによって調製される。しかしながら、ホルムアルデヒドは非常に活性な物質であるため、純度を決定することができない。試薬として入手可能なホルムアルデヒドは水溶液で、安定剤としてメタノールを含んでおり、精確な濃度を決定できない。また、高圧容器詰めのホルムアルデヒド標準ガスについても、ホルムアルデヒドが非常に活性な物質であるため、あらかじめホルムアルデヒド濃度を決定し、その値を使用し続けることができない。そのため、ホルムアルデヒド標準ガスの使用毎にホルムアルデヒド標準ガス中のホルムアルデヒド濃度を定量する必要がある。
現在、気体中のホルムアルデヒドの分析で使用されている定量法は、JIS K 0303:2004「排ガス中のホルムアルデヒド分析方法」、JIS A1901:2009「建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法−小形チャンバー法」、厚生労働省の「室内空気中化学物質の測定マニュアル」などで示されているが、大きく分けて4つの方法が使用されている。
【0003】
(1)DNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)を用いて誘導体に変換する方法
この方法は、ホルムアルデヒドを固相捕集もしくは溶液吸収し、それと同時にDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)を用いて、下記の式に示すように、DNPH誘導体に化学変化させ、その後このDNPH誘導体を抽出し、ガスクロマトグラフ法もしくは高速液体クロマトグラフ法を用いてこのDNPH誘導体を定量することによって、ホルムアルデヒド濃度を定量する方法である。
【化1】
【0004】
(2)誘導体に変換し吸光光度法を用いて定量する方法
この方法は、濃度既知のホルムアルデヒド水溶液および試料ガス中のホルムアルデヒドを、それぞれ溶液吸収させ、その後、AHMT(4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール)やクロモトロープ酸(4,5-ジヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸)等の試薬を含んだ溶液と混合して誘導体に化学変化させ、これを吸光光度法で定量する方法である。
【0005】
(3)メタナイザーと水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC−FID)を組み合わせた方法
この方法は、気体試料をガスクロマトグラフ(GC)へ導入して、ホルムアルデヒドを分離し、その後、メタナイザー(接触還元式水素化装置)を用いてホルムアルデヒドをメタンへ化学変化させ、水素炎イオン化検出器(FID)で検出、定量する方法である(特許文献1,2)。
【0006】
(4)ホルムアルデヒドを直接測定する方法
赤外分光光度計やフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、キャビティーリングダウン分光光度計(CRDS)、熱伝導度付きガスクロマトグラフ(GC−TCD)など、気体試料を直接導入して定量分析が可能な機器を用いてホルムアルデヒドを検出、定量する方法である。
【0007】
そして、これらの方法においては種々の校正が行われており、例えば、(1)、(2)の方法では、既知量のホルムアルデヒドを試薬と反応させた標準溶液が用いられ(特許文献1等)、また、(3)の方法では、標準ガスとして一酸化炭素または二酸化炭素の希釈ガスを用いて濃度校正が行なわれている(特許文献2)。
また、特許文献3に記載された方法では、(3)の方法において、ホルムアルデヒドのみを凝縮する冷却トラップを設けた第2ガス通路を併設することにより、サンプルガスから得られたFIDの検出量と、該ホルムアルデヒドを含有しないガスから得られたFIDの検出量との差から、試料ガス中のホルムアルデヒド量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−197511号公報
【特許文献2】特開2005−265810号公報
【特許文献3】特開2004−184318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の4つの方法には、以下のように、それぞれ大きな問題点があり、得られた定量値には信頼性が無い。
すなわち、前記(1)のDNPHを用いて誘導体に変換する方法では、固体捕集時もしくは溶液吸収時に上記の式1で示される化学反応が進行するが、この反応における反応の収率を100%であるとみなしている。しかしながら、実際に100%であることを確認することができない。一般的にこの反応は、ホルムアルデヒドやDNPHの濃度、反応温度、溶液の水素イオン濃度などの影響により収率が大きく変化する。
また、固相捕集時の捕集率、溶液吸収時の吸収率、溶媒抽出時の抽出率を100%であるとみなしているが、実際に100%であることを確認することができない。
また、前記(2)の誘導体に変換し吸光光度法を用いて定量する方法では、誘導体への変換効率を100%であるとみなしているが、実際に100%であることを確認できない。また共存する成分により、目的の誘導体への反応が妨害されてしまうことがあるが、それを確認することができない。また、共存する成分が定量で使用した光を吸収してしまうことがあるが、それを確認することができない。
さらに、前記の(3)のメタナイザーとGC−FIDを組み合わせた方法では、FIDに対して応答を示さないホルムアルデヒドを、水素による還元反応を用いてFIDに対して応答を示す物質であるメタンへ変換している。それゆえ、還元反応を受けなかったホルムアルデヒドが残存していても、それをFIDで確認することはできない。また、この還元反応では、ホルムアルデヒドと水素が等モルで反応することにより、メタノールを生成する。メタノールはFIDに対して応答を示す物質であるが、その応答の大きさはメタンと大きく異なる。FIDは、メタンとメタノールを見分けることができない。以上のことから、メタナイザーによるメタンへの反応効率を100%であるとみなしても、実際に100%であることを確認することができない。
【0010】
このように、(1)ないし(3)のいずれの方法においても、用いる反応効率が100%であることを確認することができないため、従来の校正方法では精確に校正を行うことができない。
そして、従来法では精確な校正を行うことができずに精確な定量ができないという問題は、特に、校正の際に用いるホルムアルデヒド標準ガスの製造においては、不可欠の解決すべき課題である。
【0011】
一方、上記(4)のホルムアルデヒドを直接測定する方法では、ホルムアルデヒド標準ガスによる校正が必須であるが、前述のとおり、現状では精確に校正を行うことができないので精確な定量はできない。
【0012】
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、精確な定量を可能とする、ホルムアルデヒドの濃度を定量する方法及びそのための装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ガス中のホルムアルデヒドを定量する方法として、ホルムアルデヒドを二酸化炭素に変換して定量する方法を用いるとともに、経路中にアルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収カラムを入れることにより、その吸収カラムを使用する前後において得られた測定値の差からホルムアルデヒドの濃度を算出することによって、上記課題を解決しうるという知見を得た。
【0014】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]ガス中のホルムアルデヒドを二酸化炭素に変換して定量する濃度の測定方法であって、
アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収手段を用い、
前記吸収手段を経由しない試料ガスから得られた二酸化炭素を定量する第1の工程と、
前記吸収手段を経由した試料ガスから得られた二酸化炭素を定量する第2の工程を有し、
第1工程における測定値と第2工程における測定値の差からホルムアルデヒドの濃度を算出することを特徴とするホルムアルデヒド濃度の測定方法。
[2]前記第1の工程と第2の工程の間に、前記吸収手段を経由した試料ガスにホルムアルデヒドが含有されていないことを確認する工程を有することを特徴とする[1]に記載のホルムアルデヒド濃度の測定方法。
[3]前記二酸化炭素の定量において、標準ガスによる校正を行うことを特徴とする[1]又は[2]に記載のホルムアルデヒド濃度の測定方法。
[4]ホルムアルデヒドを含有する試料ガスを供給する試料ガス入り口と、
該試料ガスに接続されたガス流路と、
該ガス流路に配設された、反応ガスの入り口、該ガスと前記試料ガスを反応させて二酸化炭素を生成する反応部、該反応部で生成された二酸化炭素を検出する検出部、
を有し、
前記流路は、反応ガスの入り口の前段に、試料中のアルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部を配設した副流路及び該副流路への切替手段を有し、
該切替手段による切替えにより、前記吸収を経由しない試料ガスから得られた二酸化炭素量と、前記吸収を経由した試料ガスから得られた二酸化炭素量との差から、試料ガス中のホルムアルデヒド濃度を算出する手段を備えていることを特徴とするホルムアルデヒド濃度の測定装置。
[5]前記流路は、反応ガスの入り口の後段に、試料ガス及び反応ガスを前記検出部に直接供給する第2の副流路及び該第2の副流路への第2の切替手段を有し、
第2の切替手段の切替えにより、前記吸収を経由した試料ガスから得られたガスと反応ガスの混合物中にホルムアルデヒドが含有されていないことを確認する手段を備えていることを特徴とする[4]に記載のホルムアルデヒド濃度の測定装置。
[6]前記検出部が、標準ガスによる校正手段を有していることを特徴とする[4]又は[5]に記載のホルムアルデヒド濃度の測定装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、試料ガス中の精確なホルムアルデヒド濃度の定量ができる。また、検出部は、二酸化炭素、メタン、プロパンもしくはCxyzで示される化合物の標準ガスで校正され、これらの標準ガスは、安定性を有するSIトレーサブルな濃度値が付与されたものが供給されており、これらを利用することにより、SIトレーサブルな二酸化炭素濃度が得られ、結果としてSIトレーサブルなホルムアルデヒド濃度を得ることが可能となる。さらに、本発明の方法を用いることにより、ホルムアルデヒド以外の成分の揮発性有機化合物についても、測定、定量することが可能となるので、試料中にメタノールのような安定剤が含まれていても、ホルムアルデヒドの定量ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の方法を具現化するのに適した装置の一例を示す図である。
図2】実施例に用いた装置を示す図である。
図3】実施例において、二酸化炭素標準ガス(CO2/N2)を用いて、FT−IRを校正した際に得られた吸光スペクトルを示す図である。
図4】実施例において、試料ガスとして用いた、ホルムアルデヒドが含まれたガスの吸収スペクトルを示す図である。
図5】実施例において、(ステップ1)で、検出部10にて検出されたガスの吸光スペクトルである。
図6】実施例において、(ステップ3)で、検出部10にて検出されたガスの吸光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の、ガス中のホルムアルデヒドを定量する方法は、ホルムアルデヒドを二酸化炭素に変換して定量するものであって、経路中にアルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収カラムを入れることにより、その吸収カラムを使用する前後において得られた二酸化炭素量の測定値の差からホルムアルデヒドの濃度を算出することを特徴とするものである。
本発明において、ホルムアルデヒドを含有する試料ガスには、外気をはじめ、車室内の空気、排気ガスなどの、ガス分析、環境分析分野における種々のガスばかりでなく、ホルムアルデヒドの検出・定量装置の校正に用いる標準ガスも含まれる。
【0018】
本発明の測定方法は、以下のステップから構成される。
〈ステップ1〉
ホルムアルデヒドを含んだ試料ガスを流量F1で流し、流量F2で流れている反応ガスと混合する。反応ガスは、ホルムアルデヒドを含まず酸素を含んだガスであり、その酸素濃度はホルムアルデヒド濃度の10倍量以上の任意の濃度であり、空気や純粋な酸素であってもよい。
混合された後に、反応部へ誘導し化学式2で示される反応を進行させる。
このときの反応を式で示すと以下のとおりである。
HCHO + O2 → CO2 + H2O・・・(式2)
【0019】
一般に、ホルムアルデヒドは空気中の酸素とは反応しないが、触媒が存在すると、ホルムアルデヒドが空気中の酸素と反応してギ酸が生成し、その後、直ちにギ酸は酸化されて二酸化炭素と水になる。
上記式2で示される反応に用いられる触媒としては、ホルムアルデヒドが完全酸化されて二酸化炭素と水になるものであることが必要であり、例えば、パラジウム、白金、金などの貴金属を用いた酸化反応用触媒が用いられる。
また、該反応は、用いる触媒にもよるが、加温されていてもよく、或いは、常温下であってもよい。
【0020】
反応部で生成された二酸化炭素は、検出部で検出されて、その濃度が定量される。
該検出部における二酸化炭素濃度の定量においては、標準ガスを用いて校正されることが好ましい。
また、生成された二酸化炭素濃度の定量法としては、特に限定されないが、好ましくは、赤外分光光度計、非分散赤外分光光度計(ND−IR)、FT−IR、CRDS、GC−TCD、メタナイザーを装備したGC−FID、のいずれかを用いて行う。
【0021】
〈ステップ2〉
ホルムアルデヒドを含んだ試料ガスを、所定の流量で流し、アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部へ誘導する。この吸収部では、ホルムアルデヒドのようなケトン化合物のみが吸収される。
具体的には、吸収部には、アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する化合物である、例えば、前述のアルデヒド・ケトン化合物と特異的に反応するDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)を用いた固相吸収フィルタ等が用いられる。
その後、所定の流量で流れている反応ガスと混合し、混合された後、前記の反応部を経由することなく、直接前記検出部へ誘導する。そして、ホルムアルデヒドが検出されないことを確認する。
なお、ステップ2は省略可能である。
【0022】
〈ステップ3〉
ホルムアルデヒドを含んだ試料ガスを所定の流量で流し、アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部へ誘導した後、所定の流量で流れている反応ガスと混合する。混合された後に、反応部へ誘導する。これにより、ホルムアルデヒドやケトン化合物以外の成分由来の二酸化炭素濃度を定量する。
【0023】
ホルムアルデヒド濃度値(CHCHO)は、下記の計算式1を用いることによって、導くことができる。
HCHO=(CA−CB)×((F1+F2)/F1)・・・計算式1
ここで、
HCHO:試料ガス中のホルムアルデヒド濃度値(単位:mol/mol)
A:ステップ1で定量された二酸化炭素の濃度値(単位:mol/mol)
B:ステップ3で定量された二酸化炭素の濃度値(単位:mol/mol)
1:試料ガスの流量値(mL/min)
2:反応ガスの流量値(mL/min)
【0024】
ホルムアルデヒド、二酸化炭素、水、及びホルムアルデヒドが部分酸化されることによって生ずるギ酸を、それぞれ見分けることによって、本発明の妥当性を確認することができる。
また、大気試料のようにホルムアルデヒド以外のケトン化合物が含まれる場合、それらの化合物の濃度が合算された濃度値が得られる。
【0025】
次に、本発明の方法を実施するのに適した装置について記述する。
図1は、前記のステップ1〜ステップ3を具現化するのに適した装置の一例を示す。
図中、1は、試料ガス入り口、2は、流量計、3は、四方切替バルブ、4は、アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部、5は、反応ガス入り口、6は、流量計、7は、四方切替バルブ、8は、反応部、9は、二酸化炭素標準ガス入り口、10は、検出部を、それぞれ示す。
【0026】
図に示すとおり、本発明の測定装置は、ホルムアルデヒドを含有する試料ガスを供給する試料ガス入り口1と、該試料ガス入り口に接続されたガス流路を有し、該ガス流路には、反応ガスの入り口5、該ガスと前記試料ガスを反応させて二酸化炭素を生成する反応部8、該反応部で生成された二酸化炭素を検出する検出部10が配設され、さらに、前記ガス流路には、反応ガスの入り口5の前段に、試料中のアルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部4を配設した副流路、及び該副流路へ切替るための切替バルブ3を有している。なお、図では、四方切替バルブ3を示しているが、吸収部への接続・切断の切替え機能を有するものであればよく、特に、限定されない。
【0027】
前記吸収部4は、アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収できればよく、特に限定されるものではない。
また、試料ガス入り口1及び反応ガスの入り口5の直後に、それぞれ流量計2,6が設け、試料ガス及び反応ガスが定量で供給されるようにされている。流量計2、6は、流量が測定できるものであれば、特に限定されない。
前記反応部8は、ホルムアルデヒドが完全に酸化されて二酸化炭素を生成するものであれば良く、好ましくは、酸化触媒が充填されたものが用いられる。
前記検出部には、例えば、FT−IR、ND−IR等の赤外分光光度計、CRDS、GC−TCD、メタナイザーを装備したGC−FID、光音響式二酸化炭素センサー、レーザー光吸収式二酸化炭素センサー、非分散型赤外線吸収式二酸化炭素センサー、固体電解質式二酸化炭素センサー等を用いる。
該検出部10を校正する方法は2通りあり、その1つは、標準ガス入り口9から導入される二酸化炭素標準ガスを用いる方法である。
他の1つは、試料ガス入り口1から導入する方法であり、この場合は、標準ガスとしてCxyz(xは、1〜10、yは0〜22、zは0〜5)で示される任意の化合物、例えば二酸化炭素(x=1、y=0、z=2)、メタン(x=1、y=4、z=0)、プロパン(x=3、y=8、z=0)等、が使用可能である。この場合には、標準ガス入り口9を使用しない。
さらに、本発明の測定装置は、前記ガス流路の反応ガスの入り口5の後段に、試料ガス及び反応ガスを前記検出部10に直接供給する第2の副流路及び該第2の副流路へ切り替えるための第2の切替バルブ7を有している。図では、四方切替バルブ7を示しているが、反応部への接続・切断の切替え機能を有するものであればよく、特に、限定されない。
【0028】
以下、該装置を用いた本発明の測定方法を、ステップ毎に説明する。
〈ステップ1:総CO2の測定〉
ステップ1では、切替バルブ3の流路を実線で示した流路(吸収部を経由しない流路)に設定し、また、切替バルブ7の流路を実線で示した流路(反応部を経由する流路)に設定する。
また、検出部10として、例えば、赤外分光光度計を使用し、この検出部10は、二酸化炭素標準ガス9を用いて校正されている。
【0029】
ホルムアルデヒドを含有する試料ガスを、試料ガス入り口1より、流量計2を経由して、所定の流量(F1)で、流路に供給する。
また、反応ガスを、反応ガス入り口5より、流量計6を経由して、所定の流量(F2)で、ガス流路中に供給する。
試料ガスと反応ガスは混合され、反応部8へ誘導される。反応部8にて、前記化学式2で示される化学反応が進行する。
その後、反応部で生成された二酸化炭素は検出部に誘導され、検出部10で二酸化炭素を検出し、その濃度を定量して、濃度値(CA)を得る。
【0030】
〈ステップ2:妥当性の評価、残留ホルムアルデヒドの確認〉
ステップ2では、切替バルブ3の流路を破線で示した流路(吸収部を経由する流路)に切り替え、また、切替バルブ7の流路を破線で示した流路(反応部を経由しない流路)に切り替える。
検出部10は、前記ステップ1と同じである。
【0031】
ガス流路に供給された試料ガスは、前記切替バルブ3を経た後に吸収部(DNPH固相吸収フィルタ)4へ誘導される。この吸収部4にて、ホルムアルデヒドが吸収される。その後、前記切替バルブ7を経て検出部10へ導入される。この検出部10にて、ホルムアルデヒドが検出されていないことを確認する。
なお、このステップ2は省略することが可能である。
【0032】
〈ステップ3:妥当性の確認、ホルムアルデヒド以外の有機化合物の影響評価〉
ステップ3では、切替バルブ3はそのままで、切替バルブ7の流路を実線で示した流路(吸収部を経由しない流路)に切り替える。
試料ガスは、切替バルブ3、吸収部4、及び切替バルブ7を経た後に、反応部8へ誘導される。反応部8にて、ホルムアルデヒドやケトン化合物以外の成分由来の二酸化炭素が生成される。その後、検出部10で二酸化炭素を検出し、その濃度を定量して、濃度値(CB)を得る。
最後に、前記の計算式1を用いることによって、ホルムアルデヒド濃度値(CHCHO)を得る。
【実施例】
【0033】
以下、本発明のホルムアルデヒド濃度の測定方法について、実施例を用いて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
図2は、本実施例に用いた装置の概略図である。
図2に示す蔵置は、前述の図1に示した装置において、四方切替バルブ3,7に代えて、六方切替バルブ3´,7´を用いた点で異なるだけである。
本実施例においては、吸収部4には、アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸着剤が充てんされている。この吸着剤は、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンをシリカゲルへ担持させたものである。
また、反応部8には、触媒として繊維状のパラジウムを用いた。このパラジウム繊維の外径は1μm〜2μm、繊維1本あたりの長さは0.65mmである。
さらに、検出部10として、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた。
【0034】
(ステップ1)
(1)FT−IRの校正
濃度が167.15μmol/molの二酸化炭素標準ガス(CO2/N2)を用いて、FT−IRを校正した。得られた吸光スペクトルを図3に示す。
この吸光スペクトルにおける、波数2362cm-1の吸光度は、0.04323であった。
下記の計算式2を用いることによって、試料ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度値を導くことができる。
CO2=(AX/ASTD)×CSTD ・・・・・計算式2
なお、計算式2において、
CO2:試料ガス中の二酸化炭素の濃度値(単位:μmol/mol)
X:試料ガスを測定して得られた吸光スペクトルにおける、波数2362cm-1の吸光度(単位:無次元量)
STD:標準ガスを測定して得られた吸光スペクトルにおける、波数2362cm-1の吸光度(単位:無次元量)
STD:標準ガスに含まれる二酸化炭素の濃度値(単位:μmol/mol)
である。
【0035】
(2)総CO2の測定
最初に、試料ガスとして用いた、ホルムアルデヒドが含まれたガスの吸収スペクトルを図4に示す。
総CO2の測定では、切替バルブ3の流路を実線で示した流路(吸収部を経由しない流路)に設定し、また、切替バルブ7の流路を実線で示した流路(反応部を経由する流路)に設定した。
ホルムアルデヒドを含有する試料ガスを、試料ガス入り口1より、流量計2を経由して、所定の流量(F1=8mL/min)で、流路に供給した。また、反応ガスを、反応ガス入り口5より、流量計6を経由して、所定の流量(F2=2mL/min)で、ガス流路中に供給した。
試料ガスと反応ガスは混合され、反応部8へ誘導された。反応部8にて、前記(明細書)化学式2で示される化学反応が進行する。
その後、反応部で生成された二酸化炭素は検出部に誘導され、検出部10にて検出された。得られた吸光スペクトルを図5に示す。
この吸光スペクトルにおける、波数2362cm-1の吸光度は、0.01051であった。
前記計算式2を用いて、二酸化炭素の濃度値(CA=40.64μmol/mol)を得た。
【0036】
〈ステップ2:妥当性の評価、残留ホルムアルデヒドの確認〉
ステップ2では、切替バルブ3の流路を破線で示した流路(吸収部を経由する流路)に切り替え、また、切替バルブ7の流路を破線で示した流路(反応部を経由しない流路)に切り替えた。
検出部10は、前記ステップ1と同じである。
ガス流路に供給された試料ガスは、前記切替バルブ3を経た後に吸収部4へ誘導された。この吸収部4にて、ホルムアルデヒドが吸収された。その後、前記切替バルブ7を経て検出部10へ導入された。得られた吸収スペクトルには、波数2700cm-1〜3000cm-1の領域に赤外線の吸収が確認されなかった。このことから、吸収部4が有効に機能していると共に、切替バルブ3の出口から検出部10までの流路において、ホルムアルデヒドが残留していないことが確認された。
【0037】
〈ステップ3:妥当性の確認、ホルムアルデヒド以外の有機化合物の影響評価〉
ステップ3では、切替バルブ3はそのままで、切替バルブ7の流路を実線で示した流路(吸収部を経由しない流路)に切り替えた。
試料ガスは、切替バルブ3、吸収部4、及び切替バルブ7を経た後に、反応部8へ誘導された。反応部8にて、ホルムアルデヒドやケトン化合物以外の成分由来の二酸化炭素が生成された。その後、検出部10にてその二酸化炭素が検出された。得られた吸収スペクトルを図6に示す。
【0038】
この吸光スペクトルにおける、波数2362cm-1の吸光度は、0.00044であった。
前記計算式2を用いて、二酸化炭素の濃度値(CB=1.70μmol/mol)を得た。
最後に、前記の計算式1を用いることによって、試料ガス中のホルムアルデヒドの濃度値(CHCHO)を得た。
すなわち、
HCHO=(CA−CB)×((F1+F2)/F1)
=(40.64−1.70)×((8+2)/8)=48.68μmol/mol
である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の方法及び装置は、ガス分析、環境分析分野、標準ガスの製造、の各分野にて利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:試料ガス入り口
2:流量計
3:四方切替バルブ
3´:六方切替バルブ
4:アルデヒド・ケトン化合物を選択的に吸収する吸収部
5:反応ガス
6:流量計
7:四方切替バルブ
7´:六方切替バルブ
8:反応部
9:標準ガス入り口
10:検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6