【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着するためのカバーレイフィルム用接着剤であって、下記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位を含み、かつ、下記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位の含有量が40モル%以下であるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤である。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、Rは芳香環を有する基を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、上記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位を特定の範囲で含有するポリビニルアセタール樹脂を用いれば、カバーレイフィルムに対して高い接着性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。特に、上記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位を特定の範囲で含有するポリビニルアセタール樹脂を用いれば、高い可撓性を有し、塩素元素の含有量が極めて少なく、金属に対する接着性にも優れるというポリビニルアセタール樹脂の優れた性能を維持したまま、ポリイミドフィルム等のカバーレイフィルムに対して高い接着性を発揮できることを見出した。
【0012】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、上記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位(以下、「芳香環を有するアセタール単位」ともいう。)を含有するポリビニルアセタール樹脂を含有する。
上記一般式(1)において、Rは芳香環を有する基を表す。Rとしては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フエニルプロピル、4−フエニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フエニルヘキシル、1−(4−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−メチルペンチルなどのアラルキル基や、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセン基、トリル基、キシリル基などのアリール基、4−メチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、n−ブチルフェニ、tert−ブチルフェニル基、アミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ノニルフェニル基、2−tert−ブチル−5−メチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クレジル基、オキシエチルクレジル基、2−メチル−4−tert−ブチルフェニル基、ドデシルフェニルなどのアルカリール基等が挙げられる。なかでも、過度なかさ高さを有さず、芳香族によるスタッキング効果が高いアリール基が好ましい。上記一般式(1)において、Rはフェニル基、ナフチル基又はアントラセン基がより好ましく、ナフチル基が更に好ましい。また、ナフチル基としては2−ナフチル基、1−ナフチル基等が挙げられる。
なお、R中の芳香環の水素原子は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0013】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記芳香環を有するアセタール単位を含み、かつ、上記芳香環を有するアセタール単位の含有量(即ち、アセタール化度)が40モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂が上記芳香環を有するアセタール単位を含み、かつ、上記芳香環を有するアセタール単位が40モル%以下であると、カバーレイフィルムに対する接着性が高くなる。特に、カバーレイフィルムがポリイミドフィルムである場合、上記ポリビニルアセタール樹脂はカバーレイフィルムに対する接着性がより一層高くなる。上記芳香環を有するアセタール単位の含有量の好ましい下限は3モル%、好ましい上限は37モル%であり、より好ましい下限は10モル%、より好ましい上限は34モル%である。
なお、上記芳香環を有するアセタール単位の含有量は、重溶媒中に溶解させたポリビニルアセタール樹脂の
1H−NMR測定により、主鎖構造の積分比に対するアセタール環の積分比の比率を測定することで算出できる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂を0.98gのDMSO−d
6に溶解し、
1H−NMR(Bulker社製、400MHz)を用いて評価し、得られたチャートにおいて5.7ppm付近に現れるピークの積分値と、1.1〜1.8ppm付近に現れるピークの積分値とを比較する方法によりアセタール単位の含有量を算出できる。
【0014】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が96モル%である。水酸基量が上記下限以上であると、金属に対する優れた接着性を発揮することができる。上記水酸基量が上記上限以下であると、高い可撓性を有し、優れた強度を発現することができるようになる。上記水酸基量のより好ましい下限は70モル%、より好ましい上限は90モル%である。
なお、上記水酸基量は、
1H−NMRによる水酸基量の定量化によって測定できる。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセチル基量の好ましい下限が0.5モル%、好ましい上限が30モル%である。アセチル基量が0.5モル%以上であると、合成時の粘度ばらつきを抑え、安定した品質の樹脂を得ることができる。上記アセチル基量が30モル%以下であると、高い可撓性と接着性を有するポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は10モル%である。
なお、上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、芳香環を有するアセタール単位の含有量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0016】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記一般式(1)で表される芳香環を有するアセタール構造単位、水酸基を有する構造単位、及び、アセチル基を有する構造単位の他に、他の構造単位があってもよい。例えば、他の構造単位として、カルボキシル基、エチレンオキシド基、アミン基、アミド基、エーテル基、エステル基等を有する構造単位が挙げられる。上記ポリビニルアセタール樹脂の他の構造単位は2モル%未満であることが好ましく、他の構造単位を含まないことがより好ましい。
【0017】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.5モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は150、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が150以上であると、上記ポリビニルアセタール樹脂の可撓性が高くなり、4000以下であると、上記ポリビニルアセタール樹脂を容易に成形することができる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は200、より好ましい上限は3500である。
【0018】
上記アルデヒドは、目的とする芳香環を有するアセタール単位に対応するアルデヒドを用いる。即ち、上記アルデヒドは、ベンジルアルデヒド、フェネチルアルデヒド等のアラルキル基を有するアルデヒドや、ベンズアルデヒド(フェニルアルデヒド)、ナフチルアルデヒド、アントラセンアルデヒド等のアリール基を有するアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを塩酸等の酸触媒の存在下で脱水縮合する方法(溶媒法)等の従来公知の方法により製造することができる。また、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを、100〜400℃、0.5〜100MPaの高温高圧流体中でアセタール化反応させる方法(加圧法)によっても製造することができる。
【0020】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、上記ポリビニルアセタール樹脂のみを含んでもよく、上記ポリビニルアセタール樹脂のほかに、更に、二酸化ケイ素(例えば、日本アエロジル社製の「アエロジル200」)やタルク等の微細な無機フィラ−が配合されていてもよい。
上記無機フィラ−の含有量はポリビニルアセタール100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、5〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0021】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、金属だけでなく、ポリイミド等のカバーレイフィルムに対して、接着性が高くなる。また、高い可撓性を有することから、本発明のカバーレイフィルム用接着剤を介してカバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着することにより、絶縁性の維持やパターンの保護、屈曲特性の向上等を図ることができる。また、製造法上、塩素の含有量が少ないポリビニルアセタール樹脂を接着成分として用いることにより、フレキシブルプリント基板の回路の劣化等の問題も発生しない。上記カバーレイフィルムはポリイミドを含むことが好ましく、ポリイミドフィルムであることがより好ましい。
【0022】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、フィルム状に成形して、カバーレイフィルム用接着フィルムとすることができる。
本発明のカバーレイフィルム用接着剤を含むカバーレイフィルム用接着フィルムもまた、本発明の1つである。
【0023】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、カバーレイフィルムの表面に形成する接着剤層として用いてもよい。
カバーレイフィルムと、該カバーレイフィルム上に形成された本発明のカバーレイフィルム用接着剤を含む接着剤層とを有する接着剤層付カバーレイフィルムもまた、本発明の1つである。
【0024】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤又はカバーレイフィルム用接着フィルムを用いてカバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着する方法として、フレキシブルプリント基板上に本発明のカバーレイフィルム用接着剤又はカバーレイフィルム用接着フィルムを介してカバーレイフィルムを重ねた後、180〜200℃、15〜25MPaの条件で熱圧着する方法等が挙げられる。同様に、本発明の接着剤層付カバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着する方法としては、フレキシブルプリント基板上に本発明の接着剤層付カバーレイフィルムを重ねた後、180〜200℃、15〜25MPaの条件で熱圧着する方法等が挙げられる。