特許第6021062号(P6021062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021062
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】カバーレイフィルム用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 129/14 20060101AFI20161020BHJP
   C08F 16/38 20060101ALI20161020BHJP
   C08F 8/28 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161020BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C09J129/14
   C08F16/38
   C08F8/28
   C09J7/02 Z
   H05K3/28 F
   H05K3/28 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-278529(P2012-278529)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-122266(P2014-122266A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 英裕
(72)【発明者】
【氏名】竹井 貴代美
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 拓
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007134(JP,A)
【文献】 特開2001−098027(JP,A)
【文献】 特開2001−105546(JP,A)
【文献】 特開平07−049402(JP,A)
【文献】 特開2007−161993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 129/14
C08F 8/28
C08F 16/38
C09J 7/02
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着するためのカバーレイフィルム用接着剤であって、
下記一般式(1)で表される芳香環を有するアセタール単位を含み、かつ、下記一般式(1)で表される芳香環を有するアセタール単位の含有量(アセタール化度)が40モル%以下であるポリビニルアセタール樹脂を含有する
ことを特徴とするカバーレイフィルム用接着剤。
【化1】
式(1)中、Rは芳香環を有する基を表す。
【請求項2】
一般式(1)で表される芳香環を有するアセタール単位の含有量(アセタール化度)が10〜34モル%であることを特徴とする請求項1記載のカバーレイフィルム用接着剤。
【請求項3】
カバーレイフィルムが、ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1又は2記載のカバーレイフィルム用接着剤。
【請求項4】
一般式(1)中のRが、アラルキル基又はアリール基であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のカバーレイフィルム用接着剤。
【請求項5】
一般式(1)中のRが、フェニル基、ナフチル基又はアントラセン基であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のカバーレイフィルム用接着剤。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のカバーレイフィルム用接着剤を含むことを特徴とするカバーレイフィルム用接着フィルム。
【請求項7】
カバーレイフィルムと、前記カバーレイフィルム上に形成された請求項1、2、3、4又は5記載のカバーレイフィルム用接着剤を含む接着剤層とを有することを特徴とする接着剤層付カバーレイフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーレイフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板には、フレキシブル銅張積層板に導電パターンを形成した後、絶縁性の維持やパターンの保護、屈曲特性の向上等の目的で、接着剤を介してカバーレイフィルムが積層される。カバーレイフィルムは、耐熱性に優れることから、ポリイミドフィルムが主流となってきている。
【0003】
カバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着するためのカバーレイフィルム用接着剤として、一般的に、エポキシ樹脂を含有する接着剤組成物が用いられている(例えば、特許文献1、2)。エポキシ樹脂を含有する接着剤組成物は、ポリイミドフィルム等のカバーレイフィルムに対して接着性が高く、安定して貼着できる。
【0004】
しかしながら、エポキシ樹脂は、製造法上、塩素元素等の不純物を含有する。このようなエポキシ樹脂を含有する接着剤組成物をカバーレイフィルム用接着剤として用いた場合、フレキシブルプリント基板の回路の劣化等の問題を引き起こすことがある。塩化物イオン等の不純物の含有量が少ないエポキシ樹脂が提案されているが、その製造には精製工程を繰り返す必要があり、コストの点で課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−279639号公報
【特許文献2】特開平5−39471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、カバーレイフィルム用接着剤として、エポキシ樹脂に代えてポリビニルアセタール樹脂を用いることを検討した。ポリビニルアセタール樹脂は高い可撓性を有し、製造法上塩素元素の含有量が極めて少なく、金属に対する接着性にも優れる等、カバーレイフィルム用接着剤に求められる性能の多くを満たす。しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂は、カバーレイフィルムへの接着性に劣るという問題がある。
【0007】
本発明は、カバーレイフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤を提供することを目的とする。特に、本発明は、カバーレイフィルムとして用いられるポリイミドフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着するためのカバーレイフィルム用接着剤であって、下記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位を含み、かつ、下記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位の含有量が40モル%以下であるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤である。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、Rは芳香環を有する基を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、上記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位を特定の範囲で含有するポリビニルアセタール樹脂を用いれば、カバーレイフィルムに対して高い接着性を発揮できることを見出し、本発明を完成した。特に、上記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位を特定の範囲で含有するポリビニルアセタール樹脂を用いれば、高い可撓性を有し、塩素元素の含有量が極めて少なく、金属に対する接着性にも優れるというポリビニルアセタール樹脂の優れた性能を維持したまま、ポリイミドフィルム等のカバーレイフィルムに対して高い接着性を発揮できることを見出した。
【0012】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、上記一般式(1)で表される芳香環を有する構造単位(以下、「芳香環を有するアセタール単位」ともいう。)を含有するポリビニルアセタール樹脂を含有する。
上記一般式(1)において、Rは芳香環を有する基を表す。Rとしては、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、3−フエニルプロピル、4−フエニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フエニルヘキシル、1−(4−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−メチルペンチルなどのアラルキル基や、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセン基、トリル基、キシリル基などのアリール基、4−メチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、n−ブチルフェニ、tert−ブチルフェニル基、アミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ノニルフェニル基、2−tert−ブチル−5−メチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クレジル基、オキシエチルクレジル基、2−メチル−4−tert−ブチルフェニル基、ドデシルフェニルなどのアルカリール基等が挙げられる。なかでも、過度なかさ高さを有さず、芳香族によるスタッキング効果が高いアリール基が好ましい。上記一般式(1)において、Rはフェニル基、ナフチル基又はアントラセン基がより好ましく、ナフチル基が更に好ましい。また、ナフチル基としては2−ナフチル基、1−ナフチル基等が挙げられる。
なお、R中の芳香環の水素原子は置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0013】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記芳香環を有するアセタール単位を含み、かつ、上記芳香環を有するアセタール単位の含有量(即ち、アセタール化度)が40モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂が上記芳香環を有するアセタール単位を含み、かつ、上記芳香環を有するアセタール単位が40モル%以下であると、カバーレイフィルムに対する接着性が高くなる。特に、カバーレイフィルムがポリイミドフィルムである場合、上記ポリビニルアセタール樹脂はカバーレイフィルムに対する接着性がより一層高くなる。上記芳香環を有するアセタール単位の含有量の好ましい下限は3モル%、好ましい上限は37モル%であり、より好ましい下限は10モル%、より好ましい上限は34モル%である。
なお、上記芳香環を有するアセタール単位の含有量は、重溶媒中に溶解させたポリビニルアセタール樹脂のH−NMR測定により、主鎖構造の積分比に対するアセタール環の積分比の比率を測定することで算出できる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂を0.98gのDMSO−dに溶解し、H−NMR(Bulker社製、400MHz)を用いて評価し、得られたチャートにおいて5.7ppm付近に現れるピークの積分値と、1.1〜1.8ppm付近に現れるピークの積分値とを比較する方法によりアセタール単位の含有量を算出できる。
【0014】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が96モル%である。水酸基量が上記下限以上であると、金属に対する優れた接着性を発揮することができる。上記水酸基量が上記上限以下であると、高い可撓性を有し、優れた強度を発現することができるようになる。上記水酸基量のより好ましい下限は70モル%、より好ましい上限は90モル%である。
なお、上記水酸基量は、H−NMRによる水酸基量の定量化によって測定できる。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセチル基量の好ましい下限が0.5モル%、好ましい上限が30モル%である。アセチル基量が0.5モル%以上であると、合成時の粘度ばらつきを抑え、安定した品質の樹脂を得ることができる。上記アセチル基量が30モル%以下であると、高い可撓性と接着性を有するポリビニルアセタール樹脂を提供することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は10モル%である。
なお、上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、芳香環を有するアセタール単位の含有量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0016】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記一般式(1)で表される芳香環を有するアセタール構造単位、水酸基を有する構造単位、及び、アセチル基を有する構造単位の他に、他の構造単位があってもよい。例えば、他の構造単位として、カルボキシル基、エチレンオキシド基、アミン基、アミド基、エーテル基、エステル基等を有する構造単位が挙げられる。上記ポリビニルアセタール樹脂の他の構造単位は2モル%未満であることが好ましく、他の構造単位を含まないことがより好ましい。
【0017】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.5モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は150、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が150以上であると、上記ポリビニルアセタール樹脂の可撓性が高くなり、4000以下であると、上記ポリビニルアセタール樹脂を容易に成形することができる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は200、より好ましい上限は3500である。
【0018】
上記アルデヒドは、目的とする芳香環を有するアセタール単位に対応するアルデヒドを用いる。即ち、上記アルデヒドは、ベンジルアルデヒド、フェネチルアルデヒド等のアラルキル基を有するアルデヒドや、ベンズアルデヒド(フェニルアルデヒド)、ナフチルアルデヒド、アントラセンアルデヒド等のアリール基を有するアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを塩酸等の酸触媒の存在下で脱水縮合する方法(溶媒法)等の従来公知の方法により製造することができる。また、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを、100〜400℃、0.5〜100MPaの高温高圧流体中でアセタール化反応させる方法(加圧法)によっても製造することができる。
【0020】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、上記ポリビニルアセタール樹脂のみを含んでもよく、上記ポリビニルアセタール樹脂のほかに、更に、二酸化ケイ素(例えば、日本アエロジル社製の「アエロジル200」)やタルク等の微細な無機フィラ−が配合されていてもよい。
上記無機フィラ−の含有量はポリビニルアセタール100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、5〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0021】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、金属だけでなく、ポリイミド等のカバーレイフィルムに対して、接着性が高くなる。また、高い可撓性を有することから、本発明のカバーレイフィルム用接着剤を介してカバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着することにより、絶縁性の維持やパターンの保護、屈曲特性の向上等を図ることができる。また、製造法上、塩素の含有量が少ないポリビニルアセタール樹脂を接着成分として用いることにより、フレキシブルプリント基板の回路の劣化等の問題も発生しない。上記カバーレイフィルムはポリイミドを含むことが好ましく、ポリイミドフィルムであることがより好ましい。
【0022】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、フィルム状に成形して、カバーレイフィルム用接着フィルムとすることができる。
本発明のカバーレイフィルム用接着剤を含むカバーレイフィルム用接着フィルムもまた、本発明の1つである。
【0023】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤は、カバーレイフィルムの表面に形成する接着剤層として用いてもよい。
カバーレイフィルムと、該カバーレイフィルム上に形成された本発明のカバーレイフィルム用接着剤を含む接着剤層とを有する接着剤層付カバーレイフィルムもまた、本発明の1つである。
【0024】
本発明のカバーレイフィルム用接着剤又はカバーレイフィルム用接着フィルムを用いてカバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着する方法として、フレキシブルプリント基板上に本発明のカバーレイフィルム用接着剤又はカバーレイフィルム用接着フィルムを介してカバーレイフィルムを重ねた後、180〜200℃、15〜25MPaの条件で熱圧着する方法等が挙げられる。同様に、本発明の接着剤層付カバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に貼着する方法としては、フレキシブルプリント基板上に本発明の接着剤層付カバーレイフィルムを重ねた後、180〜200℃、15〜25MPaの条件で熱圧着する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、カバーレイフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤を提供することができる。特に、本発明によれば、カバーレイフィルムとして用いられるポリイミドフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
【0027】
(実施例1)
ポリビニルアルコール(けん化度99%、重合度500)6.67g、2−ナフチルアルデヒド11.23g、及び、p−トルエンスルホン酸ナトリウム1水和物0.033gを200mLの耐圧反応容器(耐圧工業硝子社製)に加え、耐圧反応容器内の圧力が2MPaになるように窒素を加えた後、40℃で、30分間静置した。次いで、圧力を2MPaに保ちながら温度を160℃まで上昇させ、その状態で2時間反応させた。
得られた樹脂をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、アセトンを用いて再沈殿して精製した。再沈殿の操作を2回繰り返した後、得られた沈殿物をろ過して精製し、真空乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0028】
得られたポリビニルアセタール樹脂を0.98gのDMSO−dに溶解し、H−NMR(Bulker社製、400MHz)を用いて評価した。得られたチャートにおいて5.7ppm付近に現れるピークの積分値と、1.1〜1.8ppm付近に現れるピークの積分値とを比較する方法によりアセタール化度を算出したところ、10モル%であった。
【0029】
(実施例2)
耐圧反応容器に更に水0.67gを加えてから反応を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、34モル%であった。
【0030】
(実施例3)
ポリビニルアルコール(けん化度99%、重合度500)10gをジメチルスルホキシド90gに溶解させ、90℃で2時間攪拌し、均一なポリビニルアルコール溶液を得た。得られたポリビニルアルコール溶液の温度を40℃まで冷却した後、2−ナフチルアルデヒド1.8g、p−トルエンスルホン酸3.0gを加え、40℃で12時間反応させた。
反応後の溶液を900mLのアセトンに加え樹脂を析出させ、再沈殿法により精製した。即ち、析出物を100gのジメチルスルホキシドに再溶解させ、1000mLのアセトンで再沈殿するプロセスを3回繰り返して精製し、ポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0031】
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、10モル%であった。
【0032】
(実施例4)
2−ナフチルアルデヒドの添加量を5.8gとした以外は実施例3と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例3と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、32モル%であった。
【0033】
(実施例5)
2−ナフチルアルデヒドの添加量を4.2g、反応時間を45分、使用するポリビニルアルコールの重合度を2000とした以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、5.5モル%であった。
【0034】
(実施例6)
2−ナフチルアルデヒドの添加量を11.3g、反応時間を40分、使用するポリビニルアルコールのけん化度を70%とした以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、5.6モル%であった。
【0035】
(実施例7)
2−ナフチルアルデヒドをベンズアルデヒド18.3gに変更した以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂0.02gを0.98gのDMSO−dに溶解し、H−NMR(Bulker社製、400MHz)を用いて評価した。得られたチャートにおいて5.4ppm付近に現れるピークの積分値と、1.1〜1.8ppm付近に現れるピークの積分値とを比較する方法によりアセタール化度を算出したところ、14モル%であった。
【0036】
(比較例1)
耐圧反応容器に更に水1.34gを加えてから反応を行ったこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、41モル%であった。
【0037】
(比較例2)
市販のポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、BM−2、ブチラール化度68%、アセチル化度1%、Mw:200000)を用いた。
【0038】
(比較例3)
2−ナフチルアルデヒド1.8gに代えてベンズアルデヒド11.8gを添加した以外は実施例3と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂について、実施例1と同様の方法によりアセタール化度を算出したところ、70モル%であった。
【0039】
(評価)
実施例及び比較例のポリビニルアセタール樹脂をカバーレイフィルム用接着剤として、ポリイミドフィルム(縦10mm、横50mm、厚み0.2mm)に対する接着性を評価した。
即ち、得られたポリビニルアセタール樹脂1.0gを、2枚のポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100H)の間に挟み、180℃、5分間加熱してポリビニルアセタール樹脂を溶融させた後、20MPaの圧力で5分間加圧、圧着することにより、2枚のポリイミドフィルムが、ポリビニルアセタール樹脂を介して接着した積層体を得た。なお、積層体は、2枚のポリイミドフィルムの間に、厚み0.2mmのポリビニルアセタール樹脂層が積層されていた。
得られた積層体について、JIS 6854−2に規定される180°剥離試験に準拠して剥離挙動を観察し、ポリイミドフィルムから完全に剥離する前にポリビニルアセタール樹脂層の材料が破壊した場合を「○」と、ポリビニルアセタール樹脂層の材料が破壊することなくポリイミドフィルムから剥離した場合を「×」と評価した。
結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、カバーレイフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤を提供することができる。特に、本発明によれば、カバーレイフィルムとして用いられるポリイミドフィルムへの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を含有するカバーレイフィルム用接着剤を提供することができる。