特許第6021091号(P6021091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021091
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20161020BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20161020BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161020BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161020BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C09J133/14
   C09J133/26
   C09J11/06
   C09J175/04
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
   G02F1/1335
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-536731(P2015-536731)
(86)(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公表番号】特表2015-536354(P2015-536354A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】KR2014005443
(87)【国際公開番号】WO2014204250
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0070512
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0070504
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ノ・マ・キム
(72)【発明者】
【氏名】イン・ホ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イン・キュ・パク
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−217441(JP,A)
【文献】 特開平10−298491(JP,A)
【文献】 特開2008−248223(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128596(WO,A1)
【文献】 特開2010−180378(JP,A)
【文献】 特開2011−037929(JP,A)
【文献】 特開2011−016990(JP,A)
【文献】 特開2012−237004(JP,A)
【文献】 特開2012−111937(JP,A)
【文献】 特開2006−063311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00− 27/42
G02F 1/00− 1/39
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(補正)
下記化学式1の単量体0.1〜6.0重量部の重合単位、ジアルキル(メタ)アクリルアミド1〜15重量部の重合単位及びヒドロキシ基含有単量体1〜20重量部の重合単位を含むアクリル重合体;イオン性化合物及び架橋剤を含み、上記ヒドロキシ基含有単量体は、下記化学式2で表示され、下記化学式2のA及びBのアルキレン基が含む炭素の数が1〜3の範囲内である第1単量体0.1〜15重量部及び下記化学式2に表示され、下記化学式2のA及びBのアルキレン基が含む炭素の数が4〜8の範囲内である第2単量体0.1〜5重量部を含む粘着剤組成物。
【化1】
化学式1で、Qは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Uは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Zは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であり、mは、1〜12の範囲内の数である。
【化2】
化学式2で、Qは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、A及びBは、各々独
立的にアルキレン基であり、nは、0〜10の範囲内の数である。
【請求項2】
第1単量体の重合体内での重量の割合(A)と第2単量体の重合体内での重量の割合(B)の割合(A/B)が、1〜10の範囲内である請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
イオン性化合物は、無機塩または有機塩である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
架橋剤は、脂肪族イソシアネート架橋剤である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
架橋剤は、脂肪族環型イソシアネート化合物及び脂肪族非環型イソシアネート化合物からなる群より選択された一つ以上を含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
脂肪族環型イソシアネート化合物が、イソホロンジイソシアネート、メチレンジシクロキシルジイソシアネートまたはシクロヘキサンジイソシアネートであるイソシアネート化合物;前記イソシアネート化合物の二量体または三量体;または前記イソシアネート化合物とポリオールの反応物である請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
脂肪族非環型イソシアネート化合物が、炭素数1〜20のアルキレンジイソシアネート化合物;前記イソシアネート化合物の二量体または三量体;または前記イソシアネート化合物とポリオールの反応物である請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
架橋剤は、重合体100重量部に対して、0.01重量部〜20重量部で含まれる請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
表面保護基材層;及び前記基材層の一面または両面に形成されており、架橋された状態の請求項1に記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層を含む表面保護フィルム。
【請求項10】
表面エネルギーが30mN/m以下である被着体に対して、180度の剥離角度及び0.3m/minの剥離速度で測定した粘着剤層の剥離力が、1gf/25mm〜40gf/25mmの範囲内である請求項に記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
表面エネルギーが30mN/m以下である被着体に対して、180度の剥離角度及び3
0m/minの剥離速度で測定した粘着剤層の剥離力が、10gf/25mm〜300gf
/25mmの範囲内である請求項に記載の表面保護フィルム。
【請求項12】
請求項に記載の保護フィルムが表面に剥離可能に付着されている光学素子。
【請求項13】
保護フィルムが付着されている表面の表面エネルギーが、30mN/m以下である請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
請求項12に記載の光学素子を含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、光学素子保護用フィルム、光学素子及びディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板のような光学素子、その他プラスチック製品、家電製品や自動車などにほこりなどの汚物が付着するかスクラッチなどが発生することを防止するために保護フィルムを使用することができる。保護フィルムには、適切な剥離力と静電気防止特性が要求される。
【0003】
例えば、製品の使用や他の製品の組み立てのために保護フィルムを速い速度で剥離する際には、剥離力(以下、「高速剥離力」と称する。)が相対的に低いことが要求される。一方、遅い速度で剥離する際の剥離力(以下、「低速剥離力」と称する。)は相対的に高いことが適切な保護機能を示すことができる。
【0004】
また、主に保護フィルムの剥離時に発生する静電気によりほこりなどの異物が吸入されるか、電子製品の場合には、デバイスの静電破壊または誤作動などが誘発されることができる。特に、近来にはコンピュータの普及、液晶TVや携帯電話の多機能化によって部属が集積化されながら静電気による問題が一層目立っている。
【0005】
これによって、保護フィルムに含まれる粘着剤に帯電防止機能を付与しようとする努力が進行されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、粘着剤にエチレンオキシド変成フタル酸ジオクチル可塑剤を配合して静電気の発生を抑制しようとしている。また、特許文献2では、粘着剤に有機塩を添加し、特許文献3では、金属塩とキレート剤を粘着剤に配合している。しかし、前記方法によれば、粘着剤成分の保護される製品への伝写による汚染が発生するか、初期に発生する静電気の抑制が困難であり、特に保護機能のために重要な低速剥離力が過度に低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開第1993−140519号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第2004−0030919号公報
【特許文献3】大韓民国公開特許公報第2006−0128659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粘着剤組成物、光学素子保護用フィルム、光学素子及びディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な粘着剤組成物は、重合体、イオン性化合物及び架橋剤を含むことができる。粘着剤組成物で前記重合体は、架橋点を有する重合体であることができ、このような重合体は、前記架橋剤と反応して架橋構造を具現することができる。
【0010】
重合体は、例えば、アルキレンオキシド鎖を含む単量体の重合単位と窒素原子を有する単量体としてジアルキル(メタ)アクリルアミドの重合単位を含むことができる。前記ジアルキル(メタ)アクリルアミドは、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を含むことができる。本明細書で用語「単量体」は、重合反応を通じて重合体を形成することができる全ての種類の化合物を意味し、いかなる単量体の重合単位は、前記いかなる単量体が重合されて重合体の側鎖または主鎖などの骨格に含まれている状態を意味することができる。
【0011】
アルキレンオキシド鎖を有する単量体では、例えば、下記化学式1で表示される化合物を例示することができる。
【0012】
【化1】
【0013】
化学式1で、Qは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Uは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Zは、水素、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であり、mは、任意の数、例えば、1〜12の範囲内の数である。
【0014】
化学式1で、[−U−O−]単位が2個以上存在する場合、前記単位内のUの炭素数は、同一であるか相異なっていることができる。
【0015】
化学式1で、mは、例えば、1〜16、1〜12または1〜10の範囲内であることができる。このような範囲で重合体の製造時に重合効率及び重合体の結晶性を適正範囲で維持し、粘着剤に適切な導電性を付与することができる。
【0016】
本明細書で用語「アルキル基」は、特定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基を意味することができる。前記アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であることができる。前記アルキル基は、一つ以上の置換基により置換されているか、または非置換された状態であることができる。
【0017】
本明細書で用語「アルキレン基」または「アルキリデン基」は、特定しない限り、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキレン基またはアルキリデン基であることができる。前記アルキレン基またはアルキリデン基は、直鎖状、分岐状または環状であることができる。前記アルキレン基またはアルキリデン基は、必要に応じて一つ以上の置換基により置換されていることができる。
【0018】
化学式1で、Qは、他の例示でアルキル基、例えば、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基である。Qがアルキル基である化合物を使用すると、例えば、粘着剤組成物が保護フィルムなどに適用される際に被着体に残渣や染みがなしに前記保護フィルムが容易に除去される。
【0019】
本明細書で用語「アリール基」は、特定しない限り、ベンゼン環を含むかまたは2個以上のベンゼン環が連結されているか、あるいは2個以上のベンゼン環が1個または2個以上の炭素原子を共有しながら縮合または結合されている構造を含む化合物またはその誘導体から由来する1価残基を意味することができる。前記アリール基は、例えば、炭素数6〜25、炭素数6〜22、炭素数6〜16または炭素数6〜13のアリール基であることができる。このようなアリール基では、フェニル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基(xylyl group)またはナフチル基などを例示することができる。
【0020】
本明細書で特定官能基、例えば、前記アルキル基、アルキリデン基またはアルキレン基に置換されることができる置換基では、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基またはアリール基などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
化学式1の化合物では、アルコキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル及びアリールオキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどの1種または2種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
前記アルコキシでは、例えば、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12または炭素数1〜4のアルコキシを例示することができ、具体的には、メトキシ基またはエトキシ基を例示することができる。
【0023】
前記アルキレングリコールでは、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12または炭素数1〜4のアルキレングリコールを例示することができ、例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを例示することができ、前記アリールオキシでは、炭素数6〜24または炭素数6〜12のアリールオキシ、例えば、フェノキシなどを例示することができる。
【0024】
重合体は、窒素原子を含む単量体としてジアルキル(メタ)アクリルアミドをさらに含むことができる。化学式1の単量体がジアルキル(メタ)アクリルアミドとともに重合体に含まれることで、可使時間、粘着物性などを含む基本的な要求物性が優秀に満足されると同時に適切な帯電防止性が確保され、粘着剤の剥離時に残渣が残らない。例えば、化学式1の単量体のみを使用する場合にもその割合を過量にすれば、帯電防止性や残渣防止などではある程度効果があるが、この場合には粘着剤の可使時間側面で非常に不利である。また、ジアルキル(メタ)アクリルアミドのみを使用する場合にも、その割合を適切に調節すれば、帯電防止性や残渣防止などではある程度効果があるが、粘着剤から悪臭が出て、また低速及び高速剥離力のバランスが確保されない問題がある。したがって、前記化学式1の単量体とジアルキル(メタ)アクリルアミドの適正割合の使用を通じて前記物性を全て兼備する粘着剤を提供することができる。
【0025】
例えば、前記物性を満足させるために重合体は、化学式1の単量体0.1〜6重量部の重合単位とジアルキル(メタ)アクリルアミド1〜15重量部の重合単位を含むことができる。本明細書で特定しない限り、単位重量部は、各成分の間の重量の割合を意味することができる。例えば、重合体が化学式1の単量体0.1〜6重量部の重合単位とジアルキル(メタ)アクリルアミド1〜15重量部の重合単位を含むことは、前記化学式1の単量体の重量(A)とジアルキル(メタ)アクリルアミドの重量(B)の割合(A:B)が「0.1〜6:1〜15」になるように前記各々の単量体を含む単量体の混合物から前記重合体が形成されたことを意味することができる。他の例示で、化学式1の単量体0.5〜6重量部または1〜6重量部の重合単位が重合体に含まれることができ、ジアルキル(メタ)アクリルアミド1〜13重量部または2〜13重量部の重合単位が重合体に含まれることができる。
【0026】
重合体で、化学式1の単量体の重量の割合(A)とジアルキル(メタ)アクリルアミドの重量の割合(B)は追加に調節されることができる。例えば、前記重量の割合(B/A)は、約0.1〜10、約0.1〜9、約0.1〜8、約0.1〜7または約0.1〜6の範囲内で調節されることができる。
【0027】
重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、例えば、アルキル(メタ)アクリレートの重合単位をさらに含むことができる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートでは、例えば、粘着剤の凝集力、ガラス転移温度または粘着性などを考慮して、炭素数が1〜14であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。このような単量体では、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートなどを例示することができ、前記のうち1種または2種以上が重合体に重合単位で含まれることができる。
【0029】
重合体は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体65重量部〜99重量部の重合単位と、化学式1の単量体とジアルキル(メタ)アクリルアミドの合計0.1重量部〜30重量部の重合単位と、を含むことができる。他の例示で、重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体70重量部〜90重量部の重合単位と、化学式1の単量体とジアルキル(メタ)アクリルアミドの合計5重量部〜20重量部の重合単位と、を含むことができる。このような範囲で粘着剤が適切な粘着性を示しながら帯電防止性や剥離力特性などの要求物性が適合に発揮されることができる。
【0030】
また、重合体は、ヒドロキシ基を有する単量体の重合単位をさらに含むことができる。前記重合単位は、前記重合体にヒドロキシ基を提供することができる。
【0031】
ヒドロキシ基を有する単量体では、例えば、下記化学式2で表示される単量体を例示することができる。
【0032】
【化2】
【0033】
化学式2で、Qは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、A及びBは、各々独立的にアルキレン基であり、nは、任意の数、例えば、0〜10の数である。
【0034】
化学式2で、[−O−B−]単位が2個以上存在する場合、前記単位内のBの炭素数は同一であるか相異なっていることができる。
【0035】
化学式2で、A及びBは、例えば、各々独立的に直鎖状のアルキレン基であることができる。
【0036】
化学式2の化合物では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
重合体は、例えば、前述した(メタ)アクリル酸エステル単量体65重量部〜99重量部の重合単位と、ヒドロキシ基を有する単量体0.5重量部〜30重量部または(メタ)アクリル酸エステル単量体70〜90重量部の重合単位と、ヒドロキシ基を有する単量体0.5重量部〜20重量部の重合単位と、を含むことができる。他の例示で、前記ヒドロキシ基を有する単量体1重量部〜15重量部の重合単位が重合体に含まれてもよい。上述の範囲で粘着剤に適切な凝集力を付与しながら帯電防止性能などの目的性能も容易に確保することができる。
【0038】
一つの例示で、前記ヒドロキシ基を有する単量体では、側鎖に存在する炭素数がお互いに相異なっている2種の単量体を使用することができる。
【0039】
例えば、重合体は、前記化学式2で表示されながら化学式2のA及びBに存在するアルキレン基の炭素の数が1〜3の範囲内である第1単量体と、前記化学式2で表示されながら化学式2のA及びBに存在するアルキレン基の炭素の数が4〜20、4〜16、4〜12、4〜8または4〜6である第2単量体の重合単位を含むことができる。
【0040】
このように第1及び第2単量体を区分するために、炭素の数を計算する時には、直鎖形態に形成されたアルキレン基の炭素の数のみが考慮され、例えば、前記A及びBに炭素を含む置換基が置換されている場合に、その置換基の炭素数は考慮されない。このように2種のヒドロキシ基単量体の重合単位を通じて特に優秀な剥離力特性、すなわち、高速及び低速剥離力のバランスが優秀な粘着剤を提供することができる。
【0041】
重合体が第1単量体の重合単位と第2単量体の重合単位を含む際に、前記各単量体の割合は、特別に限定されないが、例えば、重合体は、第1単量体0.1重量部〜30重量部の重合単位及び第2単量体0.1重量部〜10重量部の重合単位を含むことができる。他の例示で、前記重合体は、前記第1単量体の約1重量部〜25重量部、約1重量部〜20重量部または約1重量部〜15重量部の重合単位と、前記第2単量体の約0.1重量部〜8重量部、約0.1重量部〜5重量部または約1〜3重量部の重合単位と、を含むことができる。このような範囲で第1単量体は第2単量体に比して多い量で重合体に含まれることができ、例えば、第1単量体の重量(A)と第2単量体の重量(B)の割合(A/B)は、約1〜25の範囲内である。前記割合(A/B)の他の下限は、例えば、約1.1または約1.2程度であることができ、前記割合(A/B)の他の上限は、例えば、約20、約15、約10または約8程度であることができる。このような割合の範囲内で適切な帯電防止性能を示しながらも剥離時に汚染物質を残さないで、適切な高速及び低速剥離力のバランスを示す粘着剤を提供することができる。
【0042】
重合体は、必要な場合、粘着剤の重合体の製造に使われる公知の単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ酪酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物などのカルボキシル基含有単量体;イソシアネート基を有する単量体、グリシジル(メタ)アクリレートなどのようなグリシジル基を有する単量体または(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロルリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどのような窒素原子を含むラジカル重合性単量体やスチレンなどのようなラジカル重合性単量体をさらに含むことができる。このような単量体は、重合されて重合体に含まれていることができ、例えば、約20重量部以下の割合で重合体に含まれることができる。
【0043】
重合体は、上述した単量体のうち必要な単量体を選択し、選択された単量体を目的する割合で配合した単量体の混合物を溶液重合(solution polymerization)、光重合(photo polymerization)、塊状重合(bulk polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)または乳化重合(emulsion polymerization)のような重合方式に適用して製造することができる。
【0044】
粘着剤組成物は、光安定剤、例えば、ヒンダードアミン化合物(hindered amine compound)のような光安定剤を含むことができる。このような光安定剤は、例えば、粘着剤が高温条件で放置される場合にも凝集されなくて凝集されたクラスタ内で後述する帯電防止剤の濃度が増加する現象を誘発しないで、前記重合体に含まれるアルキレンオキシド鎖のエーテル結合部位が熱により分解されてラジカルが発生するか、前記ヒドロキシ基を有する単量体が縮合反応を起こす問題を防止し、粘着剤組成物の保存安全性を大きく改善することができる。
【0045】
光安定剤では、例えば、下記化学式3で表示される化合物を例示することができる。
【0046】
【化3】
【0047】
化学式3で、M〜Mは、各々独立的にR−N、(R)(R)−Cまたは(R)(R)−Cであり、前記Rは、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、R及びRは、各々独立的にアルキル基であり、R及びRは、各々独立的に水素原子またはアルキル基であり、Lは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アルキル基または下記化学式4の置換基である。前記化学式3で、M〜Mのうち少なくとも一つは、前記R−Nであり、R−NであるM、MまたはMにすぐ隣接して存在するM、M、M、MまたはMは、前記(R)(R)−Cであることができる。
【0048】
【化4】
【0049】
化学式4で、M〜M10は、各々独立的にR−N、(R)(R)−Cまたは(R)(R)−Cであり、前記Rは、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、R及びRは、各々独立的にアルキル基であり、R及びRは、各々独立的に水素原子またはアルキル基である。前記化学式4で、M〜Mのうち少なくとも一つは、前記R−Nであり、M、MまたはMにすぐ隣接して存在するM、M、M、MまたはM10は、前記(R)(R)−Cであることができる。
【0050】
化学式3及び化学式4で、M〜M10が独立的にR−N、(R)(R)−Cまたは(R)(R)−Cということは、前記M〜M10の位置に窒素原子(N)または炭素原子(C)が存在し、その窒素原子または炭素原子にR〜Rのような置換基が結合されている形態を意味する。
【0051】
化学式4で、符号
【化5】
は、前記符号連結されている化学式4の炭素原子が化学式3の酸素原子に結合されていることを意味する。
【0052】
化学式3で、アルキレン基またはアルキリデン基であるLは、必要な場合に置換または非置換されていることができる。例えば、前記Lは、アリール基により置換されており、前記アリール基では、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル基などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
化学式3で、Rは、例えば、水素原子、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜16または炭素数4〜12のアルコキシ基であることができる。前記アルキル基またはアルコキシ基は、直鎖状または分岐状であることができ、一つ以上の置換基により置換されていることができる。
【0054】
化学式3で、R、R及びPは、各々独立的に炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基であることができる。前記アルキル基は、直鎖状または分岐状であることができ、一つ以上の置換基により置換されていることができる。
【0055】
また、化学式3で、R及びRは、水素原子であることができる。
【0056】
また、化学式3で、Lは、例えば、炭素数4〜12または炭素数6〜10のアルキレン基であるか、炭素数2〜10または炭素数4〜8のアルキリデン基であることができる。前記アルキレン基またはアルキリデン基は、直鎖状または分岐状であることができ、一つ以上の置換基により置換されていることができる。
【0057】
化学式3の化合物では、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバシン酸(bis(1,2,2,6,6−pentamethyl−4−piperidyl)sebacate)、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバシン酸(Methyl 1,2,2,6,6−pentamethyl−4−piperidyl sebacate)、プロパン二酸2−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−2−ブチル−1,3−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−-ピペリジニル)エステル(propanedioic acid,2−[[3,5−bis(1,1−dimethylethyl)−4−hydroxyphenyl]methyl]−2−butyl−1,3−bis(1,2,2,6,6−pentamethyl−4−piperidinyl) ester)、ビス(2,2,6,6−テトラメチルー4−ピペリジル)セバシン酸(bis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidyl)sebacate)またはビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルー4−ピペリジニル)セバシン酸(bis−(1−octyloxy−2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)sebacate)などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
光安定剤は、例えば、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部、0.05重量部〜10重量部、0.05重量部〜8重量部、0.05重量部〜6重量部または0.05重量部〜5重量部の割合で粘着剤組成物に含まれることができる。このような割合下で、前記アルキレンオキシド鎖の分解によるラジカルの発生やヒドロキシ基含有単量体の縮合などを効果的に防止し、保存安全性が優秀な粘着剤組成物を提供することができる。
【0059】
粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含むことができ、これは重合体の架橋点と反応して架橋構造を実現することができる。
【0060】
架橋剤では、例えば、脂肪族イソシアネート架橋剤を使用することができる。このような架橋剤が前記重合体、すなわち、2種以上のヒドロキシ基を有する単量体を含む重合体と架橋構造を実現すれば、適合な低速及び高速剥離力と共に必要な静電気防止特性を有する粘着剤を実現することができる。
【0061】
例えば、架橋剤では、脂肪族環型イソシアネート化合物及び/または脂肪族非環型イソシアネート化合物を含む架橋剤を使用することができる。前記用語「脂肪族環型イソシアネート化合物」は、環型構造を含むが、前記構造が芳香族環型には該当しない環型構造を含むイソシアネート化合物を意味し、脂肪族非環型イソシアネート化合物は、例えば、脂肪族線型または分岐型のイソシアネート化合物を意味することができる。前記脂肪族環型イオシアネート化合物では、例えば、イソホロンジイソシアネート (isophorone diisocyanate)またはメチレンジシクロキシルジイソシアネート(methylene dicyclohexyl diisocyanate)またはシクロヘキサンジイソシアネート(cyclohexane diisocyanate)などのようなイソシアネート化合物や、その二量体(dimer)または三量体(trimer)などのような誘導体または前記のうちいずれの一つとポリオール(例えば、トリメチロールプロパン)との反応物を例示することができ、脂肪族非環型イソシアネート化合物では、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのような炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12または炭素数1〜8のアルキレンジイソシアネート化合物や、その二量体(dimer)または三量体(trimer)などのような誘導体または前記のうちいずれの一つとポリオール(例えば、トリメチロールプロパン)との反応物を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記脂肪族環型イソシアネート化合物と脂肪族非環型イソシアネート化合物が一緒に使用される場合には、その割合は、特別に限定されないで、必要によって適切に選択されることができる。通常的に脂肪族環型イソシアネート化合物100重量部に対して、脂肪族非環型イソシアネート化合物1重量部〜500重量部または20重量部〜300重量部程度が架橋剤に含まれることができる。このような架橋剤、すなわち、脂肪族環型イソシアネート化合物及び脂肪族非環型イソシアネート化合物を含む架橋剤では、市販されているものを使用することもでき、その例では、Asahi社製のMHG−80B及びDuranate PまたはBAYER社製のNZ−1などがある。
【0063】
架橋剤では、前記に追加して、必要な場合、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジルエチレンジアミンまたはグリセリンジグリシジルエーテルなどのようなエポキシ架橋剤;N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)またはトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドなどのようなアジリジン架橋剤またはアルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、アンチモン、マグネシウム及び/またはバナジウムのような多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルに配位した化合物である金属キレート架橋剤などの公知の架橋剤を一緒に使用することができる。
【0064】
粘着剤組成物は、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部または0.01重量部〜5重量部の架橋剤を含むことができる。このような範囲で、適切な架橋構造が実現され、粘着剤の低速及び高速剥離力などが目的する範囲に調節されることができる。
【0065】
粘着剤組成物は、帯電防止剤を含むことができる。帯電防止剤では、例えば、イオン性化合物を使用することができ、陰イオンとしてビス(フルオロスルホニル)イミドを含むイオン性化合物を使用することができる。ビス(フルオロスルホニル)イミドは、電気的に安定した形態を有して粘着剤に帯電防止性能を安定的に付与することができる。
【0066】
イオン性化合物では、前記陰イオンを含む限り多様な化合物、例えば、無機塩または有機塩を使用することができる。無機塩では、例えば、前記陰イオンとともに金属陽イオン、例えば、アルカリ金属陽イオンまたはアルカリ土金属陽イオンを含む化合物を使用することができる。前記陽イオンでは、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、ベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)及びバリウムイオン(Ba2+)などの1種または2種以上を例示することができ、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及びバリウムイオンの1種または2種以上またはイオン安全性及び移動性を考慮してリチウムイオンを使用することができる。
【0067】
イオン性化合物が有機塩である場合には、陽イオンとして、例えば、N−エチル−N、N−ジメチル−N−プロピルアンモニウム、N、N、N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−メチル−N、N、N−トリブチルアンモニウム、N−エチル−N、N、N−トリブチルアンモニウム、N−メチル−N、N、N−トリヘキシルアンモニウム、N−エチル−N、N、N−トリヘキシルアンモニウム、N−メチル−N、N、N−トリオクチルアンモニウムまたはN−エチル−N、N、N−トリオクチルアンモニウムなどのような4級アンモニウム化合物、テトラアルキルホスホニウムなどのようなホスホニウム(phosphonium)またはその誘導体、ピリジニウム(pyridinium)またはその誘導体、テトラヒドロピリジニウムまたはその誘導体、ジハイドロピリジニウムまたはその誘導体、イミダゾリウム(imidazolium)またはその誘導体、ピロリン骨格を含む化合物またはその誘導体、ピロール骨格を含む化合物またはその誘導体、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどのようなイミダゾリウムまたはその誘導体、ピラゾリウムまたはその誘導体、トリアルキルスルホニウムまたはその誘導体、1−メチル−1−プロピルピロリジウムなどのようなピロリジウム(pyrolidinium)またはその誘導体または1−メチル−1−プロピルピペリジウムなどのようなピペリジウム(piperidinium)またはその誘導体などを前記陰イオン成分とともに含む有機塩を使用してもよい。有機塩では、前記言及した陽イオンの中で陽イオンに含まれるアルキル基がアルキニル基またはエポキシ基などに置換された陽イオンを含む化合物を使用することができる。
【0068】
粘着剤組成物でイオン性化合物の含量は、特別に限定されず、例えば、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部、0.1重量部〜5重量部、0.1重量部〜4重量部、0.1重量部〜3重量部、0.1重量部〜2重量部または0.1重量部〜1重量部の割合で存在することができる。イオン性化合物の割合は、目的する帯電防止性や成分間の相溶性などを考慮して変更することができる。
【0069】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。前記カップリング剤の例では、ガンマ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アセトアセテートプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アセトアセテートプロピルトリエトキシシラン、ベータ−シアノアセチルトリメトキシシラン、ベータ−シアノアセチルトリエトキシシランまたはアセトキシアセトトリメトキシシランを挙げることができ、前記のうち1種または2種以上の混合を使用することができる。例えば、シランカップリング剤では、アセトアセテート基またはベータ−シアノアセチル基を有するシランカップリング剤を使用することが適切である。シランカップリング剤は、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部、または0.01重量部〜1重量部で粘着剤組成物に含まれることができる。前記範囲で適切な粘着力増加効果及び耐久信頼性を確保することができる。
【0070】
また、粘着剤組成物は、粘着性能の調節の観点で、粘着性付与剤をさらに含むことができる。粘着性付与剤では、ヒドロカーボン系樹脂またはその水素添加物、ロジン樹脂またはその水素添加物、ロジンエステル樹脂またはその水素添加物、テルペン樹脂またはその水素添加物、テルペンフェノール樹脂またはその水素添加物、重合ロジン樹脂または重合ロジンエステル樹脂などの1種または2種以上の混合物を使用することができる。粘着性付与剤は、前記重合体100重量部に対して、1重量部〜100重量部で組成物に含まれることができる。前記含量範囲で適合な添加効果及び相溶性と凝集力向上効果を確保することができる。
【0071】
また、粘着剤組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、前記帯電防止剤と配位結合を形成することができる配位結合性化合物、光開始剤、多官能性アクリレート、エポキシ樹脂、架橋剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤及び可塑剤からなる群より選択された一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0072】
前記粘着剤組成物は、架橋構造が実現された状態で表面エネルギーが30mN/m以下である被着体に対する低速剥離力が、約1gf/25mm〜40gf/25mm、1gf/25mm〜30gf/25mm、1gf/25mm〜20gf/25mmまたは1gf/25mm〜10gf/25mm程度であり、高速剥離力が、10gf/25mm〜300gf/25mm、10gf/25mm〜250gf/25mm、10gf/25mm〜200gf/25mm、10gf/25mm〜150gf/25mmまたは10gf/25mm〜100gf/25mm程度であることができる。
【0073】
前記用語「低速剥離力」は、例えば、180度の剥離角度及び0.3m/minの剥離速度で測定した剥離力であり、高速剥離力は、180度の剥離角度及び30m/minの剥離速度で測定した剥離力である。
【0074】
具体的に、前記各々の剥離力は、架橋構造が実現された粘着剤組成物を表面エネルギーが30mN/m以下である被着体に付着し、23℃の温度及び65%の相対湿度で、24時間の間維持した後、上述した剥離角度及び剥離速度で測定したことである。前記各剥離力を測定する具体的な方式は、下記実施例に記述する。
【0075】
前記被着体の表面エネルギーを測定する方式は、特別に限定されず、公知な表面エネルギーの測定方式を適用することができる。例えば、被着体の接触角を測定し、それから表面エネルギーを求めるか、あるいは公知の表面エネルギー測定装備を使用して測定することができる。前記被着体の表面エネルギーは、例えば、10mN/m〜30mN/m程度であることができる。
【0076】
また、粘着剤組成物は、前記高速剥離力(H)の前記低速剥離力(L)に対する割合(H/L)が、1〜30、1〜25、1〜20、1〜15、5〜15または7〜13であることができる。
【0077】
また、前記粘着剤組成物は、架橋構造が具現された状態で前記被着体、すなわち、表面エネルギーが30mN/m以下である被着体から180度の剥離角度及び40m/minの剥離速度で剥離される際に発生する剥離帯電圧が0.5kV以下である。前記剥離帯電圧の測定方法は、下記実施例で記述する。
【0078】
前記のような低速剥離力、高速剥離力及び/または剥離帯電圧が確保されると、被着体に対する適切な保護機能を示すと共に静電気などの誘発を最小化しながら高速で容易に剥離されることができる。
【0079】
また、本発明は、粘着シートに関する。前記粘着シートは、例えば、保護フィルム、具体的には、光学素子用保護フィルムであることができる。
【0080】
例えば、粘着シートは、偏光板、偏光子、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの光学素子用保護フィルムで使用することができる。本明細書で用語「偏光子」と「偏光板」は、お互いに区別される対象を指称する。すなわち、偏光子は、偏光機能を示すフィルム、シートまたは素子その自体を指称し、偏光板は、前記偏光子と共に他の要素を含む光学素子を意味する。偏光子とともに光学素子に含まれることができる他の要素では、偏光子保護フィルムまたは位相差層などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0081】
粘着シートは、例えば、表面保護用基材フィルムとその基材フィルムの一側に存在する粘着剤層を含むことができる。前記粘着剤層は、例えば、前記粘着剤組成物として、架橋された粘着剤組成物、すなわち、架橋構造が具現された粘着剤組成物を含むことができる。
【0082】
前記粘着剤組成物は、架橋構造が具現された後に相対的に高い低速剥離力と相対的に低い高速剥離力を示して、両剥離力のバランスが優秀であり、耐久信頼性、作業性、透明性及び帯電防止性が卓越である。これによって、前記保護フィルムは、各種光学装置または部品やディスプレイ装置または部品、例えば、LCDなどに使用される偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート及び輝度向上フィルムなどの光学素子の表面を保護するための表面保護フィルムで効果的に使用することができるが、前記用途が前記保護フィルムに限定されるものではない。
【0083】
表面保護用基材フィルムでは、この分野で公知されている一般的なフィルムまたはシートを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリ(塩ビニル)フィルムまたはポリイミドフィルムのようなプラスチックフィルムを有することができる。このようなフィルムは、断層で構成されるか、2層以上が積層されていることができ、場合に応じて、防汚層または帯電防止層などの機能性層をさらに含んでもよい。また、基材密着性向上の観点で、前記基材の一面または両面にプライマー処理のような表面処理を実行してもよい。
【0084】
基材フィルムの厚さは、用途によって適切に選択することで、特別に限定されず、通常的に5μm〜500μmまたは10μm〜100μmの厚さで形成することができる。
【0085】
粘着シートに含まれる粘着剤層の厚さは、特別に限定されず、例えば、2μm〜100μmまたは5μm〜50μmであることができる。
【0086】
粘着剤層を形成する方法は、特別に限定されず、例えば、バーコーターなどの通常の手段で粘着剤組成物またはそれから製造されたコーティング液を基材フィルムなどに塗布し硬化させるか、粘着剤組成物またはコーティング液をまず剥離性基材の表面に塗布して硬化させて、さらに基材フィルムに伝写させる方法などを使用することができる。
【0087】
粘着剤層の形成過程は、粘着剤組成物またはコーティング液内部の揮発成分または反応残留物のような気泡誘発成分を充分に除去した後に実行することが好ましい。これによって、粘着剤の架橋密度または分子量などが過度に低くて弾性率が落ちて、高温状態でガラス板及び粘着剤層の間に存在する気泡が大きくなって内部で散乱体を形成する問題点などを防止することができる。
【0088】
また、前記過程で粘着剤組成物を硬化させる方法も特別に限定されず、例えば、組成物内に含まれた重合体及び架橋剤が反応できるように適切な熟成工程を経るか、内部に光開始剤などの活性化を誘導することができる光照射、例えば、紫外線の照射などを通じて実行することができる。
【0089】
粘着剤層は、例えば、ゲル含量が80%〜99%程度であることができる。ゲル含量は、例えば、下記数式1で計算することができる。
【0090】
[数式1]
ゲル(gel)含量 = B/A × 100
【0091】
数式1で、Aは、前記粘着剤の質量を示し、Bは、前記粘着剤をエチルアセテートに常温で48時間の間沈積した後に回収した不溶解分の乾燥質量を示す。
【0092】
また、本発明は、光学素子に関する。例示的な光学素子は、光学素子及び前記光学素子の表面に付着した前記粘着シートを含むことができる。例えば、前記粘着シートの粘着剤層が前記光学素子の表面に付着され、これによって、前記表面保護用基材フィルムにより光学素子が保護される。
【0093】
光学素子に含まれる光学素子では、例えば、偏光子、偏光板、偏光子保護フィルム、位相差層または視野角補償層などを例示することができる。
【0094】
前記偏光子では、例えば、ポリビニルアルコール偏光子などのように、この分野で公知されている一般的な種類を制限なしに採用することができる。
【0095】
偏光子は、多くの方向に振動しながら入射される光から一方向に振動する光のみを抽出することができる機能性フィルムまたはシートである。このような偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されている形態であることができる。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をゲル化して得ることができる。この場合、使用することができるポリ酢酸ビニル系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体は勿論、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との重合体を含んでもよい。前記酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体には、不飽和カルボン酸類、オレフイン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類などの1種または2種以上の混合を有することができるが、これに限定されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂のゲル化度は、通常85モル%〜100モル%程度、好ましくは、98モル%以上であることができる。前記ポリビニルアルコール系樹脂は、追加に変性されていることもでき、例えば、アルデヒド類に変性されたポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールなどを使用してもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは、1,500〜5,000程度であることができる。
【0096】
ポリビニルアルコール系樹脂を製膜して偏光子の円盤フィルムとして使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特別に限定されず、この分野で公知されている一般的な方法を使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂で製膜された円盤フィルムの厚さは、特別に限定されず、例えば、1μm〜150μmの範囲内で適切に制御することができる。延伸の容易性などを考慮して、前記円盤フィルムの厚さは、10μm以上に制御されることができる。偏光子は、前記のようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸(例えば、一軸延伸)する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸(boric acid)水溶液で処理する工程及びホウ酸水溶液で処理した後に洗浄する工程などを通して製造することができる。前記二色性色素では、ヨウ素(iodine)や二色性の有機染料などを使用することができる。
【0097】
前記偏光板は、例えば、前記偏光子;及び前記偏光子の一側または両側に付着されている他の光学用フィルムを含むことができる。前記他の光学用フィルムでは、上述した偏光子保護フィルムや位相差層、視野角補償層、防幻(ぼうげん)層などを例示することができる。
【0098】
前記偏光子保護フィルムは、前記粘着剤層を含む保護フィルムとは区別される概念で偏光子に対する保護フィルムである。偏光子保護フィルムでは、例えば、トリアセチルセルロースのようなセルロース系フィルム;アクリルフィルム;ポリカーボネートフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムのようなポリエステル系フィルム;ポリエテルスルホン系フィルム;及び/またはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはシクロ系やノルボルネン構造を有するポリオレフインフィルムまたはエチレンプロピレン重合体のようなポリオレフイン系フィルムなどで構成される保護フィルムが積層された多層フィルムで形成することができる。保護フィルムの厚さも特別に限定されず、通常的な厚さで形成することができる。
【0099】
前記光学素子で前記保護フィルムにより保護される光学素子の表面には、表面処理層が存在することができる。前記表面処理層は、例えば、表面エネルギーが30mN/m以下であることができる。すなわち、前記光学素子で前記保護フィルムにより保護される光学素子の表面には、表面エネルギーが30mN/m以下である表面処理層が形成されており、前記保護フィルムの前記粘着剤層が前記表面処理層に付着されている。
【0100】
前記表面処理層では、高硬度層、AG(Anti−glare)層またはSG(Semi−glare)層のような眩しさ防止層またはAR(Anti reflection)層またはLR(Low reflection)層のような低反射層などを例示することができる。
【0101】
高硬度層は、500gの荷重下での鉛筆硬度が1H以上または2H以上である層であることができる。鉛筆硬度は、例えば、KS G2603で規定した鉛筆心を使用してASTM D 3363規格によって測定することができる。
【0102】
高硬度層は、例えば、高硬度の樹脂層であることができる。前記樹脂層は、例えば、常温硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化された状態で含むことができる。一つの例示では、前記樹脂層は、熱硬化型または活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、または活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化された状態で含むことができる。高硬化層の説明で「硬化された状態」とは、前記各樹脂組成物に含まれる成分が架橋反応または重合反応などを経て樹脂組成物がハード(hard)状態に転換された場合を意味することができる。また、前記常温硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、前記硬化状態が常温下で誘導されるか、あるいは適切な湿気の存在下、熱の印加または活性エネルギー線の照射によって誘導されることができる組成物を意味することができる。
【0103】
この分野では、硬化された状態で上述した範囲の鉛筆硬度を満足することができる多様な樹脂組成物が知られており、平均的技術者は、適合な樹脂組成物を容易に選択することができる。
【0104】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、主材としてアクリル化合物、エポキシ化合物、ウレタン化合物、フェノール化合物またはポリエステル化合物などを含むことができる。前記「化合物」は、単量体性、オリゴマー性または重合体性化合物であることができる。
【0105】
一つの例示では、前記樹脂組成物として、透明性などの光学的特性が優秀であり、黄変などに対する抵抗性が卓越なアクリル樹脂組成物、例えば、活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂組成物を使用することができる。
【0106】
活性エネルギー線硬化型アクリル組成物は、例えば、活性エネルギー線重合性の重合体成分と反応性希釈用単量体を含むことができる。
【0107】
前記重合体成分では、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エーテルアクリレートまたはエステルアクリレートなどのように業界でいわゆる活性エネルギー線重合性オリゴマーで知られた成分や、または(メタ)アクリル酸エステル単量体などのような単量体を含む混合物の重合物を例示することができる。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体では、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ヘテロシクリック(メタ)アクリレートまたはアルコキシ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。この分野では、活性エネルギー線硬化型組成物を製造するための多様な重合体成分が知られており、前記のような化合物を必要に応じて選択することができる。
【0108】
活性エネルギー線硬化型アクリル組成物に含まれることができる反応性希釈用単量体では、活性エネルギー線硬化型官能基、例えば、アクリロイル基またはメタクリロイル基などを一つまたは二つ以上有する単量体を例示することができる。反応性希釈用単量体では、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体や多官能性アクリレートなどを使用することができる。
【0109】
活性エネルギー線硬化型アクリル組成物を製造するための前記成分の選択や選択された成分の配合の割合などは、特別に限定されず、目的する樹脂層の硬度及びその他物性を考慮して調節することができる。
【0110】
AG層またはSG層のような眩しさ防止層では、例えば、凹凸面が形成されている樹脂層または粒子を含む樹脂層として、前記粒子が前記樹脂層とは相異なっている屈折率を有する粒子である樹脂層を使用することができる。
【0111】
前記樹脂層では、例えば、前記高硬度層の形成に使用する樹脂層を使用することができる。眩しさ防止層を形成する場合には、樹脂が必ず高硬度を示すように樹脂組成物の成分を調節する必要はないが、高硬度を示すように樹脂層を形成しても関係ない。
【0112】
前記樹脂層に凹凸面を形成する方式は、特別に限定されない。例えば、樹脂組成物のコーティング層を目的する凹凸構造を有する金型と接触させた状態で前記樹脂組成物を硬化させるか、あるいは樹脂組成物に適切な硬度の粒子を配合し、コーティング及び硬化させて凹凸構造を具現することができる。
【0113】
また、眩しさ防止層は、樹脂層とは屈折率が相異なっている粒子を使用して実現してもよい。
【0114】
一つの例示で、前記粒子は、例えば、樹脂屈折率の差が0.03以下または0.02〜0.2であることができる。屈折率の差が過度に小さいと、ヘイズを誘発しにくいし、反対に過度に大きいと、樹脂内での散乱がたくさん発生して、ヘイズを増加させるが、光透過度またはコントラスト特性などの低下が誘導されるので、これを考慮して適切な粒子を選択することができる。
【0115】
樹脂層に含まれる粒子の形状は、特別に限定されず、例えば、球形、楕円形、多面体形、無定形またはその他形状であることができる。前記粒子は、平均直径が50nm〜5,000nmであることができる。一つの例示では、前記粒子として、表面に凹凸が形成されている粒子を使用することができる。このような粒子は、例えば、平均表面粗度(Rz)が10nm〜50nmまたは20nm〜40nmや、及び/または表面に形成された凹凸の最大高さが、約100nm〜500nmまたは200nm〜400nmであり、凹凸間の幅が、400nm〜1,200nmまたは600nm〜1,000nmであることができる。このような粒子は、樹脂相溶性やその内部での分散性が優秀である。
【0116】
前記粒子では、多様な無機または有機粒子を例示することができる。無機粒子では、シリカ、非結晶質チタニア、非晶質ジルコニア、インジウムオキサイド、アルミナ、非晶質亜鉛オキサイド、非晶質セリウムオキサイド、バリウムオキサイド、カルシウムカーボネート、非晶質バリウムチタネートまたは硫酸(りゅうさん)バリウムなどを例示することができ、有機粒子では、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂などの有機系素材の架橋物または非架橋物を含む粒子を例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0117】
樹脂層が形成される前記凹凸構造または前記粒子の含量は、特別に限定されない。前記凹凸構造の形状または前記粒子の含量は、例えば、AG層の場合、前記樹脂層のヘイズ(haze)が約5%〜15%、7%〜13%または約10%程度になるように調節され、SG層の場合、ヘイズが約1%〜3%程度になるように調節されることができる。前記ヘイズは、例えば、SEPUNG社製のHR−100またはHM−150などのようなヘイズメートル(hazemeter)を使用して製造社のマニュアルによって測定することができる。
【0118】
AR層やLR層のような低反射層は、低屈折物質をコーティングして形成することができる。低反射層を形成することができる低屈折物質は、多様に知られており、これは全ての前記光学素子に適切に選択されて使用されることができる。低反射層は、低屈折物質のコーティングを通じて反射率が約1%以下になるように形成することができる。
【0119】
また、表面処理層の形成には、大韓民国公開特許第2007−0101001号、第2011−0095464号、第2011−0095004号、第2011−0095820号、第2000−0019116号、第2000−0009647号、第2000−0018983号、第2003−0068335号、第2002−0066505号、第2002−0008267号、第2001−0111362号、第2004−0083916号、第2004−0085484号、第2008−0005722号、第2008−0063107号、第2008−0101801号または第2009−0049557号などで公知な素材を使用することができる。
【0120】
表面処理層は、単独に形成するか、あるいは2個以上を組み合わせて形成することができる。組合せの例では、基材層の表面にまず高硬度層を形成し、その表面にさらに低反射層を形成する場合を例示することができる。
【0121】
また、本発明は、ディスプレイ装置、例えば、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)に関する。例示的なディスプレイ装置は、液晶パネルを含むことができ、前記液晶パネルの一面または両面には、前記光学素子が付着されていることができる。前記フィルムは、例えば、接着剤または粘着剤を使用して液晶パネルに付着されていることができる。前記接着剤または粘着剤は、上述した保護フィルムに存在する粘着剤以外の接着剤または粘着剤である。
【0122】
液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は、特別に限定されない。例えば、その種類に限定されず、TN(Twisted Neumatic)型、STN(Super Twisted Neumatic)型、F(ferroelectric)型及びPD(polymer dispersed LCD)型などを含んだF各種受動行列方式;2端子型(two terminal)及び3端子型(three terminal)を含んだ各種能動行列方式;横電界型(IPS mode)パネル及び垂直配向型(VA mode)パネルを含んだ公知の液晶パネルを全て適用することができる。また、液晶表示装置に含まれるその以外のその他構成の種類及びその製造方法も特別に限定されず、この分野の一般的な構成を制限なしに採用して使用することができる。
【発明の効果】
【0123】
本発明の粘着剤組成物は、保存安全性が優秀であり、また架橋構造が形成された後に適切な低速及び高速剥離力を示し、そのバランスが優秀である。これによって、前記粘着剤組成物を、例えば、保護フィルムに適用する場合には、優秀な保護硬化を示すと同時に高速剥離時に容易に剥離されて高速工程の側面でも有利であり、前記過程で優秀な静電気防止特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下、実施例及び比較例を通じて前記粘着剤組成物をより詳しく説明するが、前記粘着剤組成物の範囲は、下記提示された実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0125】
1. 可使時間(pot life)の測定
製造された重合体に架橋剤などを配合して製造された各実施例または比較例のコーティング液(粘着剤組成物)の粘度を、製造時点から各々0時間及び24時間になる時点で測定した後、下記基準によって可使時間特性を評価した。この時、粘度は、コーティング液を250mLのガラスボトル(glass bottle)に約200gの重さで入れた後、23℃に維持された恒温槽に30分間入れて温度平衡になった時に、回転型粘度計(Brookfield viscometer(DV−II+))を利用して信頼区間トークを維持するRPM区間で粘度を測定した。
【0126】
<可使時間特性の評価基準>
O:24時間後、製造時点(0時間)対比粘度変化が30%未満
X:24時間後、製造時点(0時間)対比粘度変化が30%以上
【0127】
2. 低速剥離力の測定
実施例及び比較例で製造された粘着シートを眩しさ防止層が形成された偏光板の前記眩しさ防止層にJIS Z 0237によって2kgのローラーで付着した。その後、23℃の温度及び65%の相対湿度で24時間の間保管した後、横の長さが25mmであり、縦の長さが120mmになるように裁断して試片を製造した。その後、試片をガラス基板に固定し、引張試験機を利用して180度の剥離角度及び0.3m/minの剥離速度で、粘着シートを横方向に眩しさ防止層から剥離しながら剥離力を測定した。剥離力は、2個の同一な試片に対して測定した後、その平均値を採用した。
【0128】
3. 高速剥離力の測定
実施例及び比較例で製造された粘着シートを眩しさ防止層が形成された偏光板の前記眩しさ防止層にJIS Z 0237によって2kgのローラーで付着した。その後、23℃の温度及び65%の相対湿度で24時間の間保管した後、横の長さが25mmであり、縦の長さが250mmになるように裁断して試片を製造した。その後、試片をガラス基板に固定し、引張試験機を利用して180度の剥離角度及び30m/minの剥離速度で、粘着シートを横方向に眩しさ防止層から剥離しながら剥離力を測定した。剥離力は、2個の同一な試片に対して測定した後、その平均値を採用した。
【0129】
4. 剥離帯電圧(ESD)の測定
低速及び高速剥離力の測定で使用したものと同一であるが、横の長さが約22cmであり、縦の長さが約25cmである試片を製造した。その後、試片をガラス基板に固定し、試片の粘着シートを引張試験機で約180度の剥離角度及び40m/minの剥離速度で剥離しながら剥離帯電圧を測定した。
【0130】
5.粘着シート除去後の染み発生有無
低速剥離力の測定時に使用したものと同一な試片で粘着シートを剥離した後、被着体の表面に静電気による染みが発生するか否かを観察して、下記基準によって評価した。
【0131】
<評価基準>
A:被着体の表面で染みが発生しない場合
B:被着体の表面で染みが発生した場合
【0132】
製造例1. アクリル重合体(A)の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易に冷却装置を設置した1L反応機に、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)85重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4−HBA)2重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)5重量部、ジメチルアクリルアミド3重量部及びポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(エチレンオキサイド単位付加モル数:9モル)5重量部を投入し、溶剤としてエチルアセテート100重量部を投入した。その後、窒素ガスを1時間の間パージング(purging)して酸素を除去し、反応開始剤(AIBN:azobisisobutyronitrile)を投入して約8時間の間反応させた後に、反応物をエチルアセテートに希釈してアクリル重合体(A)を製造した。
【0133】
製造例2〜製造例9. アクリル重合体(B)〜(I)の製造
重合体の製造時に単量体の割合を下記表1及び表2のように変更したこと以外は、製造例1と同一にアクリル重合体を製造した。
【0134】
【表1】
【0135】
実施例1.
粘着剤組成物の製造
製造例1のアクリル重合体(A)100重量部に対して、架橋剤としてイソボロンジイソシアネート系架橋剤及びヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤の混合物(MHG−80B、Asahi社製)5.0重量部及びLiTFSi(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)0.5重量部を均一に配合し、コーティング性を考慮して適正濃度に希釈して粘着剤組成物を製造した。
【0136】
粘着シートの製造
製造された粘着剤組成物をPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム(厚さ:38μm)の一面にコーティング及び乾燥し、厚さが約20μmである均一なコーティング層を形成した。その後、約90℃で3分程度維持させて前記コーティング層に架橋反応を誘導して粘着シートを製造した。
【0137】
実施例2〜実施例4及び比較例1〜比較例5
粘着剤組成物の組成を下記表2及び表3のように変更したこと以外は、実施例1と同一な方式で粘着剤組成物を製造した。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
前記製造された各実施例及び比較例の粘着剤組成物に対して物性を評価した結果を整理して、下記表4及び表5に記載した。
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】