特許第6021564号(P6021564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021564
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】吸収性材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 15/10 20060101AFI20161027BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20161027BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20161027BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20161027BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C08B15/10
   A61F13/15 320
   A61F13/53 300
   A61L15/28 200
   A61L15/60 200
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-218709(P2012-218709)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70194(P2014-70194A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】時田 規弘
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】中下 将志
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−102227(JP,A)
【文献】 特開2001−002703(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15〜13/84
A61L15/16〜15/64
C08B15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルセルロース誘導体および水を混合してアルキルセルロース誘導体水溶液を作製する工程と、
前記アルキルセルロース誘導体水溶液に、100重量部の前記アルキルセルロース誘導体に対して、0.5〜2.0重量部のカチオン性界面活性剤を添加して界面活性剤含有混合物を作製する工程と、
前記界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する工程と、
前記セルロースハイドロゲルを切断しながら親水性繊維と混合して前記セルロースハイドロゲルのセルロースハイドロゲル粒子および前記親水性繊維の重量比1:1〜1:2の混合物を作製する工程と、
前記混合物を100℃以下の温度で乾燥する工程とを含む吸収性材料の製造方法。
【請求項2】
前記カチオン性界面活性剤は、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドである請求項1に記載の吸収性材料の製造方法。
【請求項3】
前記アルキルセルロース誘導体は、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはそれらの組み合わせまたはそれらの塩である請求項1又は2に記載の吸収性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ、生理用品、ペット用衛生用品などの吸収性物品に使用する吸収体の吸収性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料アルキルセルロース誘導体および水からなる混合物に放射線を照射することによってアルキルセルロース誘導体を作製する、自己架橋型アルキルセルロース誘導体の製造方法が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。このアルキルセルロース誘導体を用いて、生分解性の吸水性樹脂または高強度のゲル化物を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−2703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法で作製されたアルキルセルロース誘導体を用いて作製したゲル化物は、おむつ、生理用品、ペット用衛生用品などの吸収性物品に用いるには体液の吸収速度が遅く、体液の吸収量が少ない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の吸収性材料の製造方法は、アルキルセルロース誘導体および水を混合してアルキルセルロース誘導体水溶液を作製する工程と、アルキルセルロース誘導体水溶液に界面活性剤を添加して界面活性剤含有混合物を作製する工程と、界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する工程と、セルロースハイドロゲルを切断しながら親水性繊維と混合してセルロースハイドロゲルのセルロースハイドロゲル粒子および親水性繊維の混合物を作製する工程と、混合物を100℃以下の温度で乾燥する工程とを含む。
また、本発明の他の吸収材料の製造方法は、アルキルセルロース誘導体および水を混合してアルキルセルロース誘導体水溶液を作製する工程と、アルキルセルロース誘導体水溶液に界面活性剤を添加して界面活性剤含有混合物を作製する工程と、界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する工程と、セルロースハイドロゲルを切断することによって細かくし、セルロースハイドロゲル粒子を作製する工程と、セルロースハイドロゲル粒子を100℃以下の温度で乾燥する工程とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、体液の吸収が速く、かつ吸収量が大きい吸収性材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施形態における生理用ナプキンの部分破断平面図である。
図2図2は、図1の本発明の第1の実施形態における生理用ナプキンのA−A線断面を示す模式断面図である。
図3図3は、吸収性材料の作製に使用する粉砕機の一例を示す図である。
図4図4は、吸収量の測定に使用するナイロンメッシュ袋を説明するための図である。
図5図5は、実施例1における吸収性材料の電子走査型顕微鏡写真を示す。
図6図6は、実施例9における吸収性材料の電子走査型顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施形態−
本発明に係る吸収性物品の第1の実施態様の吸収性物品として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。図1は、図1は本発明の第1の実施形態における生理用ナプキンの部分破断平面図であり、図2は、図1の本発明の第1の実施形態における生理用ナプキンのA−A線断面を示す模式断面図である。図1および図2に示すように、生理用ナプキン1は、液透過性の表面材2と、液不透過性の防漏シート3と、表面材2と防漏シート3との間に配置された吸収体4と、吸収体4を被覆する被覆材5とを有する。
【0009】
(表面材)
表面材2は、体液を透過する液透過性のシートである。使用者が生理用ナプキン1を装着したときに感じる肌触りをよくするために、表面材2は使用者の肌と接触する表面に設けられる。したがって、表面材2は肌触りを良好にする機能を有していることが好ましい。たとえば、表面材2は細い繊維で作製され、表面材2の表面が平滑であり、表面材2は変形に対して自由度が大きいことが必要である。
【0010】
表面材2には、一般に不織布が用いられる。表面材2に用いる不織布は周知のカードウェブを用いたエアースルー法にて形成することができる。表面材2に用いる不織布の製造方法は、上記のエアースルー法に限定されず、たとえば、繊維ウェブを絡合することで安定なシートにするニードルパンチ、スパンレース方式、繊維を接着剤あるいは繊維自身の溶融によりウェブを固定するバインダー接着、熱接着方式、フィラメント繊維によりシール化するスパンボンド方式、抄紙によりシート化する湿式法などでもよい。
【0011】
表面材2の不織布に用いられる繊維は、たとえば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリブチレンおよびこれらを主体とした共重合体エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリ乳酸等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドなどから構成される。
【0012】
また、表面材2の不織布の繊維は、単一成分で構成される繊維である必要はなく、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維や島/海型繊維などの複合繊維であってもよい。熱接着性を考慮すると、表面材2の不織布の繊維は、とくに、芯部と鞘部とから構成される複合繊維が好ましい。不織布の繊維の断面形状は、円形だけでなく、三角型、四角型や星型などの異形であってもよい。さらに、不織布の繊維の芯の部分が中空であってもよいし、不織布の繊維が多孔質であってもよい。不織布の繊維の芯部/鞘部構造における芯部と鞘部との断面積比はとくに限定されるものではないが、80/20〜20/80であることが好ましく、60/40〜40/60であればさらに好ましい。不織布の繊維の芯部/鞘部構造おける芯部と鞘部との断面積比が、80/20に対して芯部の断面積が大きくなる側の断面積比になると、繊維間の接着が弱くなる場合があり、不織布の繊維の芯部/鞘部構造おける芯部と鞘部との断面積比が、20/80に対して鞘部の断面積が大きくなる側の断面積比になると、繊維間の熱接着工程で繊維の大部分が融解してしまう場合がある。
【0013】
表面材2の不織布に用いる繊維の繊度は、好ましくは1.0〜20dtexであり、さらに好ましくは1.2〜4.4dtexである。また、表面材2の不織布に用いる繊維の繊維長は好ましくは5〜75mmであり、カード適正を考慮すると、表面材2の不織布に用いる繊維の繊維長は、さらに好ましくは25〜51mmである。
【0014】
表面材2の不織布に用いる繊維の坪量は、好ましくは10〜100g/m2であり、吸収体4に吸収された液が表面側に染み出るいわゆるリウェットバックを抑制する観点および不織布の透液性などの観点から、より好ましくは20〜35g/m2である。表面材2の不織布に用いる繊維の密度は、好ましくは0.001〜0.2g/cm3であり、リウェットバックおよび透液性などの観点から、より好ましくは0.015〜0.08g/cm3である。表面材2の不織布の3g/cm2加重下における厚みは、好ましくは0.1〜3mmであり、リウェットバックおよび透液性などの観点から、より好ましくは0.5〜2mmである。
【0015】
(防漏シート)
防漏シート3は、体液を透過しない液不透過性シートであり、排泄された体液が外に漏れないようにするために設けられている。防漏シート3の材料は、排泄された体液を透過しない材料であれば、とくに限定されない。たとえば、防水処理を施した不織布、ポリエチレンなどから構成されるプラスチックフィルム、不織布とプラスチックフィルムとの複合材料などを防漏シート3に用いることができる。
【0016】
(吸収体)
吸収体4は排泄された体液を吸収し保持する機能を有する。吸収体4は、アルキルセルロース誘導体を架橋して作製されたセルロースハイドロゲルのセルロースハイドロゲル粒子と、セルロースハイドロゲル粒子の外部から内部に到達している親水性繊維と、界面活性剤とを含む吸収性材料を含む。
【0017】
(アルキルセルロース誘導体)
アルキルセルロース誘導体には、たとえば、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびそれらの組み合わせが挙げられる。アルキルセルロース誘導体には、セルロース塩、すなわち、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースまたはそれらの組み合わせにおける塩も含まれる。
【0018】
セルロース塩には、たとえば、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩など)などの一価金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。アルキル基含有セルロース塩は、たとえば、アルカリ金属塩、とくにナトリウム塩が好ましい。
【0019】
(カルボキシアルキルセルロース)
カルボキシアルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシル基の水素が、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基により置換されたものである。とくに好ましいカルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースである。カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシル基の20%以上、好ましくは40%以上がアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩である。塩を形成する比率が20%未満であると水と均一な混合物ないし水溶液が形成されにくくなる。塩を形成する比率の上限はとくになく、100%塩を形成してもよい。
【0020】
(ヒドロキシアルキルセルロース)
ヒドロキシアルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシル基の水素に、たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどを反応させて得られるものである。したがって水素に置換する基がヒドロキシエチル(−C24OH)基、ヒドロキシイソプロピル基(−C36OH)、ヒドロキシ−n−プロピル基(−C36OH)であり、さらにはそのヒドロキシ末端にさらにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等を1〜10分子反応させて得られるポリオキシアルキレンエーテル置換基である。とくに好ましいヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルメチルセルロースである。ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシル基の20%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上がアルカリ金属塩である。塩を形成する比率が20%未満であると水と均一な混合物ないし水溶液が形成されにくくなる。塩を形成する比率の上限はとくになく、100%塩を形成してもよい。
【0021】
(アルキルセルロース)
アルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシル基の水素が、メチル基、エチル基、プロピル基により一部置換されたものである。とくに好ましいアルキルセルロースはメチルセルロースおよびエチルセルロースである。アルキルセルロースは、アルキルエーテル化度が66%以下であり、好ましくは50%以下、さらに好ましくは33%以下である。原料として使用するアルキルセルロースは、残存するヒドロキシル基の40%以上、好ましくは50%以上がアルカリ金属塩である。塩を形成する比率が40%未満であると水と均一な混合物ないし水溶液が形成されにくくなる。塩を形成する比率の上限はとくになく、100%塩を形成してもよい。
【0022】
アルキルセルロース誘導体は、平均重合度にはとくに制限はないが、たとえば、10〜7000、好ましくは50〜6000、さらに好ましくは200〜4000である。
【0023】
アルキルセルロース誘導体の平均エーテル化度(セルロースのヒドロキシル基の水素をカルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、またはアルキル基で置換する置換度のことをいう。)は、たとえば、0.5以上、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上であり、最大3である。平均エーテル化度が0.5未満では、十分な架橋が起こらない。
【0024】
アルキルセルロース誘導体は、公知の方法で製造したもの、とくに市販品が使用できる。
【0025】
カルボキシアルキルセルロースは、たとえば慣用のスラリー法(高液倍率法)やニーダー法(低液倍率法)などの種々の方法、たとえば、セルロースとアルカリとを反応させてアルカリセルロースを生成させる工程(マーセル化工程又はアルセル化工程)および、アルカリセルロースとモノクロロ酢酸との反応によりカルボキシメチルセルロース、またはアクリル酸エステルとの反応後エステルの加水分解によりカルボキシエチルセルロースを生成させる工程(カルボキシアルキル化工程)とを含む方法で作製される。
【0026】
ヒドロキシアルキルセルロースは、たとえばセルロースのヒドロキシル基にアルキレンオキシドを反応させることによって得られる。ヒドロキシエチルセルロースはエチレンオキシドを、ヒドロキシプロピルセルロースはプロピレンオキシドを、それぞれセルロースのヒドロキシル基に反応させることにより得られる。これらにさらにアルキレンオキシドを反応させたものを、使用することもできる。たとえばエチルヒドロキシエチルセルロースはヒドロキシエチルセルロースにさらにエチレンオキシドを反応させたものである。
【0027】
アルキルセルロースは、たとえばアルカリセルロースとアルキルクロライドまたはジアルキル硫酸との反応により作製される。メチルセルロースは、たとえばアルカリセルロースとメチルクロライドまたはジメチル硫酸との反応により、エチルセルロースはアルカリセルロースとエチルクロライドまたはジエチル硫酸との反応により得られる。
【0028】
セルロースハイドロゲル粒子は、好ましくは多孔質構造を有している。これにより、セルロースハライドゲル粒子が体液を吸収できる量が多くなる。また、体液がセルロースハイドロゲル粒子の中を拡散する速度よりもセルロースハライドゲル粒子の多孔質構造の中に浸透する速度の方が速いので、セルロースハイドロゲル粒子の体液の吸収が速くなる。
【0029】
(界面活性剤)
界面活性剤は、セルロースハイドロゲル粒子の親水性の表面を疎水性にすることができればとくに限定されない。たとえば、界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とが挙げられる。セルロースハイドロゲル粒子の表面は荷電している場合が多いので、界面活性剤は、好ましくはイオン性界面活性剤である。また、セルロースハイドロゲル粒子の表面はマイナスに荷電している場合が多いので、イオン性界面活性剤は、より好ましくはカチオン性界面活性剤である。
【0030】
なお、セルロースハイドロゲル粒子の表面が親水性の状態であると、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液はセルロースハイドロゲル粒子の表面に留まってしまう場合がある。この場合、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液がセルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透することが難しくなる場合がある。その結果、吸収体4の体液の吸収が遅くなり、体液の吸収量が小さくなる場合がある。
【0031】
セルロースハイドロゲル粒子は、界面活性剤をその内部に含んでいることが好ましい。これにより、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液は、セルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透しやすくなる。したがって、吸収性材料による体液の吸収が速くなり得る。
【0032】
吸収性材料における界面活性剤の含有量は、好ましくは100重量部のセルロースハイドロゲル粒子に対して0.5〜3.0重量部であり、より好ましくは100重量部のセルロースハイドロゲル粒子に対して0.5〜2.0重量部である。界面活性剤の含有量が、0.5重量部よりも少ないと、セルロースハイドロゲル粒子の表面を疎水性にする効果が小さすぎてしまう場合がある。界面活性剤の含有量が3.0重量部よりも多くなるとセルロースハイドロゲル粒子の表面の疎水性が高くなり過ぎてしまい、セルロースハイドロゲル粒子の液体の吸収が遅くなる場合がある。
【0033】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤には、たとえば、脂肪酸石けん、アルケニルコハクさん塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤には、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドはマイナスに荷電したセルロースハイドロゲル粒子の表面に強く結合できることから、カチオン性界面活性剤は、好ましくはジオレイルジメチルアンモニウムクロライドである。
【0035】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤には、アルキルベタイン、アミドバタインなどが挙げられる。
【0036】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤には、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。
【0037】
(セルロースハイドロゲル)
セルロースハイドロゲルは、アルキルセルロース誘導体が放射線により自己架橋したゲル(架橋ゲル、架橋物)である。放射線については後述する。セルロースハイドロゲルは、通常、架橋剤の非存在下で自己架橋したゲルである。セルロースハイドロゲルは生分解性を有する。しかし、セルロースハイドロゲルは、放射線の代わりに架橋剤や加熱により架橋したゲルであってもよい。
【0038】
セルロースハイドロゲルは、好ましくはアルキルセルロースハイドロゲル、カルボキシアルキルセルロースハイドロゲル、ヒドロキシアルキルセルロースハイドロゲルまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはメチルセルロースハイドロゲル、エチルセルロースハイドロゲル、カルボキシエチルセルロースハイドロゲル、ヒドロキシエチルセルロースハイドロゲル、ヒドロキシプロピルセルロースハイドロゲルまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
セルロースハイドロゲルのゲル分率は、1〜70%、好ましくは3〜50%、さらに好ましくは5〜40%である。セルロースハイドロゲルのゲル分率が1%未満では架橋が不充分となり、70%を越えると架橋が進みすぎ、吸水性が不充分となる。
【0040】
なお、ゲル分率は、生成物を多量(たとえば生成物の10〜100倍)の蒸留水中に48時間浸漬した後、20メッシュのステンレス金網でろ過した時の不溶分の割合であり、次式により求められる。
ゲル分率(%)=(W2/W1)×100(ここで、W1は使用したアルキルセルロース誘導体の乾燥重量を表し、W2は架橋生成物のろ過後の不溶分の乾燥重量を表す。)
【0041】
たとえばカルボキシメチルセルロースのような生分解可能なアルキルセルロースは、水洗廃棄または土中廃棄した場合、速やかに生分解する。したがって、廃棄するとき焼却する必要がないので、CO2の排出を低減することができる。
【0042】
(セルロースハイドロゲル粒子)
セルロースハイドロゲル粒子の粒径は、吸収性材料が0.9%生理食塩水や人工経血を吸収できれば、とくに限定されない。
【0043】
(親水性繊維)
親水性繊維には、パルプ繊維、レーヨン繊維、綿、アセテート、酢酸セルロース、微細孔を有するアクリル繊維、親水化処理が施された合成樹脂繊維などがある。とくに好ましい親水性繊維はパルプ繊維である。
【0044】
親水性繊維は、セルロースハイドロゲル粒子の外部から内部に到達していることが好ましい。これにより、使用者の体液を吸収性材料の内部への引き込みための経路を確保することができ、吸収性材料の吸水速度を速くすることができる。また、吸収性材料の親水性繊維は、セルロースハイドロゲル粒子を被覆していることが好ましい。これにより、セルロースハイドロゲル粒子の表面の密度を低下させることができ、吸収性材料に体液などを吸収させた場合、吸収性材料の表面が先に膨潤し、内部への浸透に非常に時間がかかることを抑制することができる。
【0045】
セルロースハイドロゲル粒子と親水性繊維との間の重量比は、好ましくは1:1〜1:2である。セルロースハイドロゲル粒子と親水性繊維との間の重量比が、1:1よりもセルロースハイドロゲル粒子側が少ない側にシフトすると、吸収性材料の保液量が小さくなる場合がある。また、セルロースハイドロゲル粒子と親水性繊維との間の重量比が、1:2よりもセルロースハイドロゲルが多い側へシフトすると、吸収性材料の吸収が速くならない場合がある。
【0046】
なお、吸収体4は、さらにポリアクリル酸ソーダ(SAP)を含んでもよい。SAPの保水効果により、吸収性材料の保水性能を向上させることができる。SAPの添加量は、たとえば、親水性繊維と同じ重量である。
【0047】
(被覆材)
被覆材5は、吸収体4を被覆することによって、吸収体4が崩れてばらばらになることを防止する。被覆材5は、液透過性のシートであり、好ましくはティッシュである。なお、吸収体4が、被覆材5がなくても崩れない場合は、生理用ナプキン1は、被覆材5を有さなくてもよい。
【0048】
(吸収性材料の製造方法)
次に吸収体4に含まれる吸収性材料の製造方法を説明する。吸収性材料の製造方法は、アルキルセルロース誘導体および水を混合してアルキルセルロース誘導体水溶液を作製する工程と、アルキルセルロース誘導体水溶液に界面活性剤を添加して界面活性剤含有混合物を作製する工程と、界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する工程と、セルロースハイドロゲルを切断しながら親水性繊維と混合して前記セルロースハイドロゲルのセルロースハイドロゲル粒子および前記親水性繊維の混合物を作製する工程と、混合物を100℃以下の温度で乾燥する工程とを含む。
【0049】
アルキルセルロース誘導体および水を混合してアルキルセルロース誘導体水溶液を作製する。アルキルセルロース誘導体は上で説明されたので、アルキルセルロース誘導体の説明は省略する。
【0050】
(水)
アルキルセルロース誘導体と一緒に混合する水には、市水、工業用水、脱気水、脱イオン水、ゲルろ過水、蒸留水などが挙げられ、好ましくは酸素やイオンなどが含まれていないものである。
【0051】
アルキルセルロース誘導体水溶液中の、アルキルセルロース誘導体の割合は、10〜80重量%であることが好ましい。カルボキシメチルセルロースのようなアルキルセルロース誘導体の場合、放射線により分解が優先するが、水の存在下では水から生じたヒドロキシラジカルが生成し、このラジカルを介して自己架橋が進行すると考えられる。アルキルセルロース誘導体水溶液におけるアルキルセルロース誘導体と水との混合状態は、アルキルセルロース誘導体が水分として含有する状態でも、糊状のペーストであって、できる限り均一な状態が好ましい。アルキルセルロース誘導体水溶液中のアルキルセルロース誘導体の割合が10重量%よりも小さいと架橋が起こりにくくなり、アルキルセルロース誘導体水溶液中のアルキルセルロース誘導体の割合が80重量%よりも大きいとアルキルセルロース誘導体の分解が多くなる。
【0052】
次に、アルキルセルロース誘導体水溶液に界面活性剤を添加して界面活性剤含有混合物を作製する。界面活性剤含有混合物は、水溶液でもペースト状混合物でもよいが、好ましくはペースト状混合物である。
【0053】
(界面活性剤)
上述したように、アルキルセルロース誘導体水溶液に添加する界面活性剤は、セルロースハイドロゲル粒子の親水性の表面を疎水性にすることができればとくに限定されない。たとえば、アルキルセルロース誘導体水溶液に添加する界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とが挙げられる。セルロースハイドロゲル粒子の表面は荷電している場合が多いので、アルキルセルロース誘導体水溶液に添加する界面活性剤は、好ましくはイオン性界面活性剤である。また、セルロースハイドロゲル粒子の表面はマイナスに荷電している場合が多いので、アルキルセルロース誘導体水溶液に添加するイオン性界面活性剤は、好ましくはカチオン性界面活性剤である。
【0054】
界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する前に、界面活性剤を添加するので、セルロースハイドロゲル粒子の表面のみならず内部まで界面活性剤を存在させることができる。上述したように、これにより、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液は、セルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透しやすくなり、吸収性材料による体液の吸収が速くなり得る。
【0055】
界面活性剤の添加量は、好ましくは100重量部のアルキルセルロース誘導体に対して0.5〜3.0重量部であり、より好ましくは100重量部のアルキルセルロース誘導体に対して0.5〜2.0重量部である。界面活性剤の添加量が、0.5重量部よりも少ないと、セルロースハイドロゲル粒子の表面を疎水性にする効果が小さすぎてしまう場合がある。界面活性剤の添加量を3.0重量部よりも多くするとセルロースハイドロゲル粒子の表面を疎水性が高くなり過ぎてしまい、液体の吸収速度が低下する場合がある。
【0056】
次に、界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する。セルロースハイドロゲルは上で説明されたので、セルロースハイドロゲルの説明は省略する。
【0057】
(放射線)
界面活性剤含有混合物に照射する放射線には、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線などが挙げられる。とくに好ましい放射線はγ線、電子線、およびX線である。
【0058】
照射する放射線の量は、γ線換算で0.1〜50kGyであり、好ましくは0.3〜20kGyであり、さらに好ましくは0.5〜10kGyである。放射線の照射量が0.1kGy未満では架橋せず、吸水性が不充分となり、50kGyを越えると架橋が進みすぎ、吸水性が不充分となる。
【0059】
放射線照射は、酸素の非存在下に放射線を照射すると、効率よく(すなわち、低放射線量で)架橋させることができる。酸素の存在下に放射線を照射すると、アルキルセルロース誘導体が酸化分解する比率が多くなるためである。
【0060】
放射線の代わりに架橋剤や加熱によりアルキルセルロース誘導体を架橋してもよい。
【0061】
次に、セルロースハイドロゲルを切断しながら親水性繊維と混合してセルロースハイドロゲルのセルロースハイドロゲル粒子および親水性繊維の混合物を作製する。セルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合する場合、セルロースハイドロゲルを切断しながらセルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合することにより、吸収性材料の親水性繊維を、セルロースハイドロゲル粒子の外部から内部に到達させるとともに、セルロースハイドロゲル粒子を被覆させることができる。このような混合を行う装置として、たとえば、粉砕カッターを備え、その粉砕カッターを回転させることによって粉砕を行う粉砕機を使用するのが好ましい。そのような粉砕機には、たとえば、大阪ケミカル(株)製のWonder crush/mil D3V-10、(株)レッチェ社製のグラインドミックスGM200などがある。粉砕カッターを備え、その粉砕カッターを回転させることによって粉砕を行う粉砕機の一例を図3に示す。
【0062】
粉砕機10は、取手11が設けられている容器フタ12と、内部に粉砕カッター13および粉砕カッター13を不図示の回転軸に固定する留めネジ14を有する粉砕槽15と、本体16とを備える。不図示の回転軸は、粉砕槽15の底部17に対して垂直に延びている。混合する試料は粉砕槽15の中に投入する。粉砕カッター13は、粉砕槽15の底部17に設けられ、回転軸に対して垂直方向に延在する略矩形形状の2つの刃を有する。一方の略矩形形状の刃は容器フタ12の方向に凸に湾曲しており、他方の略矩形形状の刃は粉砕槽15の底部17の方向に凸に湾曲している。粉砕カッター13が回転することによって、粉砕槽15内の試料は粉砕される。また、2種以上の試料が粉砕槽15に投入された場合、粉砕槽15内の2種以上の試料は粉砕されるとともに、混合される。
【0063】
本発明の一実施形態では、セルロースハイドロゲルと親水性繊維とを粉砕槽15の中に投入し、容器フタ12で粉砕槽15を密閉した後、粉砕カッター13を高速回転、たとえば、25000rpmで回転させることによって、セルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合する。そして、セルロースハイドロゲル粒子と、セルロースハイドロゲル粒子の外部から内部に到達している親水性繊維とを含む混合物を得ることができる。
【0064】
なお、セルロースハイドロゲルを切断しながらセルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合することができれば、セルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合する混合装置は、粉砕機10に限定されない。
【0065】
セルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合するときの、セルロースハイドロゲルと親水性繊維との間の重量比は、好ましくは1:1〜1:2である。セルロースハイドロゲルと親水性繊維との間の重量比が、1:1よりもセルロースハイドロゲル側が少ない方にシフトすると、吸収性材料の保液量が小さくなる場合がある。また、セルロースハイドロゲルと親水性繊維との間の重量比が、1:2よりもセルロースハイドロゲルが多い方へシフトすると、吸収性材料の吸収が速くならない場合がある。
【0066】
次に、セルロースハイドロゲル粒子および親水性繊維の混合物を100℃以下の温度で乾燥する。
【0067】
(乾燥)
セルロースハイドロゲル粒子および親水性繊維の混合物の乾燥は、乾燥機(恒温乾燥機など)などの適当な装置を用いて行うことができる。また、乾燥は、空気又は酸素雰囲気下、または不活性雰囲気(ヘリウム、アルゴン、窒素)下で行ってもよく、大気中で行ってもよい。また、乾燥は、大気圧下または加圧下でおこなってもよい。なお、水を適用した後、乾燥処理(自然乾燥、減圧乾燥、熱風乾燥などの慣用の乾燥処理)を行ってもよい。セルロースハイドロゲルの乾燥温度は、好ましくは20℃以上100℃以下であり、より好ましくは30℃以上80℃以下である。乾燥温度が20℃よりも低いと、セルロースハイドロゲルはよく乾燥せず、100℃よりも高くなると熱分解による性能劣化という問題が生じる。
【0068】
なお、セルロースハイドロゲルと親水性繊維とを混合するとき、さらにポリアクリル酸ソーダ(SAP)を添加してもよい。SAPの保水効果により、吸収性材料の保水性能を向上させることができる。SAPの添加量は、たとえば、親水性繊維と同じ重量である。
【0069】
なお、100℃以下の温度で乾燥することによって作製されたセルロースハイドロゲルおよび親水性繊維の混合物にさらに親水性繊維、たとえば粉砕パルプを添加することによって吸収体4の吸収性材料を作製してもよい。混合物に添加する親水性繊維の量は、たとえば、混合物と同じ重量である。
【0070】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施態様の吸収性物品として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。第2の実施形態の生理用ナプキンも、第1の実施形態の生理用ナプキン1と同様に、液透過性の表面材と、液不透過性の防漏シートと、表面材と防漏シートとの間に配置された吸収体と、吸収体を被覆する被覆材とを有する。以下、本発明の第2の実施態様の吸収性物品について、本発明の第1の実施態様の吸収性物品と異なる部分を主に説明する。
【0071】
(吸収体)
第2の実施形態の生理用ナプキンの吸収体は排泄された体液を吸収し保持する機能を有する。吸収体は、アルキルセルロース誘導体を架橋して作製されたセルロースハイドロゲルのセルロースハイドロゲル粒子と、界面活性剤とを含む吸収性材料を含む。第2の実施形態の生理用ナプキンの吸収性材料は第1の実施形態の生理用ナプキンの吸収性材料と異なり、親水性繊維を含まない。
【0072】
(界面活性剤)
界面活性剤は、第1の実施形態の生理用ナプキンの吸収性材料における界面活性剤と同様にセルロースハイドロゲル粒子の親水性の表面を疎水性にすることができればとくに限定されない。たとえば、界面活性剤には、第1の実施形態の生理用ナプキンの吸収性材料における界面活性剤と同様に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤などのイオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とが挙げられる。セルロースハイドロゲル粒子の表面は荷電している場合が多いので、界面活性剤は、好ましくはイオン性界面活性剤である。また、セルロースハイドロゲル粒子の表面はマイナスに荷電している場合が多いので、イオン性界面活性剤は、より好ましくはカチオン性界面活性剤である。
【0073】
なお、セルロースハイドロゲル粒子の表面が親水性の状態であると、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液はセルロースハイドロゲル粒子の表面に留まってしまう場合がある。この場合、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液がセルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透することが難しくなる場合がある。その結果、吸収体4の体液の吸収が遅くなり、体液の吸収量が小さくなる場合がある。とくに、セルロースハイドロゲル粒子の表面に留まっている体液によってセルロースハイドロゲル粒子の表面が膨潤してしまうと、セルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透することがさらに難しくなる場合がある。また、高湿度下では、セルロースハイドロゲル粒子同士が結合してしまい、吸収性材料の吸収性が悪くなる場合がある。
【0074】
第2の実施形態においても、セルロースハイドロゲル粒子は、界面活性剤をその内部に含んでいることが好ましい。これにより、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液は、セルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透しやすくなる。したがって、吸収性材料による体液の吸収が速くなり得る。
【0075】
吸収性材料における界面活性剤の含有量は、好ましくは100重量部のセルロースハイドロゲル粒子に対して0.5〜2.0重量部である。界面活性剤の含有量が、0.5重量部よりも少ないと、セルロースハイドロゲル粒子の表面を疎水性にする効果が小さすぎてしまう場合がある。界面活性剤の含有量が2.0重量部よりも多くなるとセルロースハイドロゲル粒子の表面の疎水性が高くなり過ぎてしまい、セルロースハイドロゲル粒子の液体の吸収が遅くなる場合がある。
【0076】
(吸収性材料の製造方法)
次に第2の実施形態の生理用ナプキンの吸収体に含まれる吸収性材料の製造方法を説明する。吸収性材料の製造方法は、アルキルセルロース誘導体および水を混合してアルキルセルロース誘導体水溶液を作製する工程と、アルキルセルロース誘導体水溶液に界面活性剤を添加して界面活性剤含有混合物を作製する工程と、界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する工程と、セルロースハイドロゲルを切断することによって細かくし、セルロースハイドロゲル粒子を作製する工程と、セルロースハイドロゲル粒子を100℃以下の温度で乾燥する工程とを含む。
【0077】
第2の実施形態においても、界面活性剤含有混合物に放射線を照射してセルロースハイドロゲルを作製する前に、界面活性剤を添加するので、セルロースハイドロゲル粒子の表面のみならず内部まで界面活性剤を存在させることができる。上述したように、これにより、セルロースハイドロゲル粒子の表面に付着した体液は、セルロースハイドロゲル粒子の内部に浸透しやすくなり、吸収性材料による体液の吸収が速くなり得る。
【0078】
第2の実施形態の生理用ナプキンの吸収体に含まれる吸収性材料の製造方法では、セルロースハイドロゲルを切断することによって細かくし、セルロースハイドロゲル粒子を作製する工程が、第1の実施形態の生理用ナプキンの吸収体に含まれる吸収性材料の製造方法ととくに異なるので、上記工程を主に説明する。
【0079】
セルロースハイドロゲルを切断することによって細かくし、セルロースハイドロゲル粒子を作製する。セルロースハイドロゲルを切断することによって細かくできる装置として、たとえば、第1の実施形態で説明した粉砕機と同様の粉砕機を使用することが好ましい。
【0080】
たとえば、第1の実施形態で説明した粉砕機10の粉砕槽15の中にセルロースハイドロゲルを投入し、容器フタ12で粉砕槽15を密閉した後、粉砕カッター13を高速回転、たとえば、25000rpmで回転させることによって、セルロースハイドロゲルを切断することによってセルロースハイドロゲルを細かくし、セルロースハイドロゲル粒子を作製する。
【0081】
なお、セルロースハイドロゲルを切断することによってセルロースハイドロゲルを細かくすることができれば、セルロースハイドロゲルを細かくする装置は、第1の実施形態で説明した粉砕機10に限定されない。
【0082】
本発明の吸収性物品は、人間が使用する吸収性物品のほかにペットなどの人間以外の動物が使用する吸収性物品も含む。人間およびペットなどの人間以外の動物を含めて吸収性物品を使用する動物を「使用するもの」と呼ぶ。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0084】
なお、実施例および比較例において、0.9%生理食塩水における吸水速度、吸水倍率および保水倍率ならびに人工経血における吸収速度、リウェット量および保血倍率を、以下のようにして測定した。
【0085】
(0.9%生理食塩水における吸水速度)
(1)27.0gの塩化ナトリウム(試薬1級)を3Lのビーカーに加え、塩化ナトリウムおよびイオン交換水の合計の質量が3000.0gになるように、さらにイオン交換水を3Lのビーカーに加えた。そして、すべての塩化ナトリウムが完全に溶解するまで、塩化ナトリウム含有イオン交換水を撹拌して、0.9%生理食塩水を作製した。
(2)1Lビーカーに0.9%生理食塩水を入れ、25℃±1℃の水温に設定したウォーターバスの中に0.9%生理食塩水が入った1Lのビーカーを設置した。そして、1Lのビーカーの中の0.9%生理食塩水の温度が25℃±1℃になるまで放置した。
(3)1Lビーカーに入っている0.9%生理食塩水を30g取り出し、回転子(長さ:30mm、直径:8mm)が入っている100mLビーカーに加えた。
(4)30gの0.9%生理食塩水が入っている100mLビーカーをマグネックスターラー(MITAMURA RIKEN KOGYO INC. MAGMIX STIRRER (AC100W))の上に設置した。そして、非接触式回転計(LINE SEIKI TM-4000)を使用して回転子の回転数を測定しながら、回転子の回転数が600±30rpmになるように、回転子の回転数を調整した。
(5)2.00gの吸収性材料を、回転子が回転している100mLビーカーの中に加えた。そして、ストップウォッチを使用して、100mLビーカーに吸収性材料を加えてから、100mLビーカーの中の吸収性材料含有生理食塩水の液表面が平らになるまでの時間を測定した。この測定した時間が0.9%生理食塩水における吸水速度となる。吸収性材料が、0.9%生理食塩水を吸収すると、吸収性材料含有生理食塩水の液表面の動きが止まるので、吸収性材料含有生理食塩水の液表面は平らになる。吸水速度が短い程、吸収性材料は液体を速く吸収できる。
(6)以上の試験を5回行い、5回の測定結果の平均値が試料の0.9%生理食塩水における吸水速度となる。
【0086】
(0.9%生理食塩水における吸収倍率および保水倍率)
(1)0.9%生理食塩水における吸水速度を測定するときに使用した0.9%生理食塩水と同じように作製した0.9%生理食塩水を用意した。
(2)2Lビーカーに0.9%生理食塩水を1000mL入れ、液温を測定した。
(3)250メッシュのナイロンメッシュ(NBC工業製、N-NO.250HD)を200mm×200mmの大きさに切り出して質量(x(g))を測定した後、図4(a)に示すようにB−B一点鎖線の部分を折って、ナイロンメッシュ21を半分に折った。図4(b)に示すように、折られた部分が右側になるように配置した後、下端から5mm上の位置、右端から5mm左の位置および左端から5mm右の位置にヒートシール22形成して、上端23が開放しているナイロンメッシュ袋24を作製した。質量を予め測定した粉砕した吸収性材料(y(g))をナイロンメッシュ袋24に入れ、不図示のヒートシールを形成して、ナイロンメッシュ袋24の開放している上端23を閉じた。
(4)吸収性材料入りの袋の上端23が上になるようにしながら、吸収性材料入りの袋を0.9%生理食塩水の入った2Lビーカーの底に触れるまで浸漬させ、1時間放置した。なお、洗濯バサミを使用して、吸収性材料入りの袋の上端23の辺を2Lビーカーの縁に固定した。
(5)放置後、吸収性材料が入った袋を引き上げ、吸収性材料が入った袋の短辺の中央(上端23に対して5mm下側、横方向の両端に対して50mm内側)を洗濯バサミで挟んだ後、15分間水切りを行った。
(6)吸収性材料が入った袋から洗濯バサミを取り外した後、吸収性材料が入った袋の重量(z1(g))を測定した。
(7)次式から吸収倍率を計算した。
吸収倍率(g/g)=((z1−x)−y)/y
(8)(6)で測定した、吸収性材料が入った袋を遠心分離器で90秒間脱水した。使用した遠心分離器は国産遠心(株)社製分離機 型H130であった。遠心分離機の回転数は850rpm(遠心力は150G)であった。
(9)脱水後の吸収性材料の入った袋の重量(z2)を測定した。
(10)次式から保水倍率を計算した。
保水倍率(g/g)=((z2−x)−y)/y
(11)なお、吸収性材料の中のセルロースハイドロゲルの吸水倍率(CMC保水倍率)は以下の式で算出することができる。
CMC保水倍率(g/g)=(吸収性材料の保水倍率−(7.6×親水性繊維の構成比率(wt%)/100))/(ハイドロゲルの構成比率(wt%)/100)
ここで、親水性繊維(パルプ)単体の保水量は7.6g/gである。
(12)以上の試験を5回行い、5回の測定結果の平均値が試料の0.9%生理食塩水における吸収倍率および保水倍率となる。
【0087】
(人工経血における吸収速度)
直径3cmのアルミホイルカップ上に、0.1gの吸収性材料を設置し、2mLの人工経血を、1mL/秒の滴下速度で滴下した。そして、人工経血が吸収性材料に完全に吸収されて、吸収性材料の表面から人工経血がなくなるまでの時間(吸水速度)を測定した。
【0088】
(人工経血におけるリウェット量)
直径3cmのアルミホイルカップ上に、0.1gの吸収性材料を設置し、2mLの人工経血を滴下して2分間放置した。そして、人工経血を吸収した吸収性材料の上に30g/m2の不織布を載せ、さらにその上に濾紙(35×50mm)を載せ、30g/cm2の加重が濾紙にかかるように、さらにその上に重しを載せた。重しを載せてから3分経過後、濾紙の重量を測定し、不織布の上に載せる前の濾紙の重量に対する増量分をリウェット量とした。
【0089】
(人工経血における保血倍率)
人工経血における保血倍率は、上述の人工経血におけるリウェット量から次式を用いて算出した。
保血倍率(g/g)=(2(g)−リウェット量(g))/0.1(g)
なお、2mLの人工経血の質量は2gである。また、0.1(g)は吸収性材料の質量である。
【0090】
(人工経血の作製方法)
上述の試験で使用した人工経血は以下のようにして作製した。
ポリ容器Aにグリセリン(和光純薬工業(株)製 和光一級)320±2gを入れ、さらにカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)(和光純薬工業(株)製 化学用)32.0±0.3gを添加し、攪拌機で回転数約600rpmで10分間攪拌し溶液Aを作製した。次に、別のポリ容器Bに入れたイオン交換水3リットルを攪拌機(HSIANGTAIMACHINERY INDUSTRY CO.LTD.製)で回転数約1100rpmで攪拌しながら先に調整した溶液Aを少量ずつ添加した。さらに、イオン交換水1リットルでポリ容器Aを洗浄しながら添加した。このようにして得られた溶液Bに、塩化ナトリウム(NaCl)(和光純薬工業(株)製 試薬特級)40gと炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)(和光純薬工業(株)製 和光一級)16gを攪拌しながら少量ずつ添加し、添加を終えた後、約3時間攪拌した。次いで、上記調整して得られた溶液Cに、食用色素製剤(光洋プロダック(株)製):赤色102号)を32g、食用色素製剤(光洋プロダック(株)製):赤色2号)を8g、食用色素製剤(光洋プロダック(株)製):黄色5号)を8g攪拌しながら添加して、その後約1時間攪拌して人工経血を得た。得られた人工経血の粘度を粘度測定器(芝浦システム社製 ビスメトロン 型式VGA−4)で測定すると、22〜26mPa・sであった。
【0091】
(実施例1)
カルボキシメチルセルロールナトリウム(ダイセル化学工業製 品番:1380)とイオン交換水とを混合して、カルボキシメチルセルロール(以下、CMCと呼ぶ)の濃度が20重量%のCMC水溶液を作製した。50gのCMC水溶液に、0.67gのジオレイルジメチルアンモニウムクロライド(2−OLR)75重量%溶液(日油製、カチオン性界面活性剤)を添加して混合し、ペースト状混合物を作製した。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して1.0重量部であった。ペースト状混合物にγ線を10kGy照射してCMCハイドロゲルを作製した。はさみを使用してCMCハイドロゲルを1cm角に切断し、切断したCMCハイドロゲル、50gと、10gのパルプ繊維とを粉砕機(大阪ケミカル(株)製、Wonder crush/mill、D3V-10)に投入して、30秒間、粉砕および混合をして、CMC混合物を作製した。投入したCMCハイドロゲルとパルプ繊維との重量比は1:1であった。粉砕および混合をしたCMC混合物を60℃の温風で乾燥した後、乾燥したCMC混合物を20メッシュのふるいに通して実施例1を作製した。
【0092】
(実施例2)
実施例2は実施例1と同様な方法で作製された。しかし、測定に用いる吸収性材料の量を、実施例1の量に対して80重量%の量にした。たとえば、生理食塩水における吸水速度の測定では、1.60gの吸収性材料を使用し、人工経血における吸収速度、リウェット量および保血倍率の測定では0.08gの吸収性材料を使用した。
【0093】
(実施例3)
2−OLR75重量%溶液の添加量を0.33gにしたことを除いて、実施例3は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して0.5重量部であった。
【0094】
(実施例4)
2−OLR75重量%溶液の添加量を1.33gにしたことを除いて、実施例4は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して2.0重量部であった。
【0095】
(実施例5)
粉砕機に投入したパルプ繊維の量を20gにしたことを除いて、実施例5は実施例1と同様な方法で作製された。CMCハイドロゲルとパルプ繊維との重量比は1:2であった。
【0096】
(実施例6)
0.67gの2−OLR75重量%溶液の代わりに20gのショ糖脂肪酸エステル2.5重量%溶液(第一工業製薬製、DKエステル、非イオン性界面活性剤)を添加したことを除いて、実施例6は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加したショ糖脂肪酸エステルの割合は、100重量部のCMCに対して1.0重量部であった。
【0097】
(実施例7)
2−OLR75重量%溶液の添加量を1.33gにしたことおよび粉砕機に投入したパルプ繊維の量を20gにしたことを除いて、実施例7は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して2.0重量部であった。また、CMCハイドロゲルとパルプ繊維との重量比は1:2であった。
【0098】
(実施例8)
2−OLR75重量%溶液の添加量を2.0gにしたことを除いて、実施例8は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して3.0重量部であった。
【0099】
(実施例9)
親水性繊維を添加しないことを除いて、実施は実施例1と同様な方法で作製された。
【0100】
(実施例10)
実施例10は実施例9と同様な方法で作製された。しかし、測定に用いる吸収性材料の量を、実施例1の量に対して80重量%の量にした。たとえば、生理食塩水における吸水速度の測定では、1.60gの吸収性材料を使用し、人工経血における吸収速度、リウェット量および保血倍率の測定では0.08gの吸収性材料を使用した。
【0101】
(実施例11)
2−OLR75重量%溶液の添加量を0.33gにしたことおよび親水性繊維を添加しないことを除いて、実施例11は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して0.5重量部であった。
【0102】
(実施例12)
2−OLR75重量%溶液の添加量を1.33gにしたことおよび親水性繊維を添加しないことを除いて、実施例12は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して2.0重量部であった。
【0103】
(実施例13)
0.67gの2−OLR75重量%溶液の代わりに20gのショ糖脂肪酸エステル2.5重量%溶液(第一工業製薬製、DKエステル、非イオン性界面活性剤)を添加したことおよび親水性繊維を添加しないことを除いて、実施例13は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加したショ糖脂肪酸エステルの割合は、100重量部のCMCに対して1.0重量部であった。
【0104】
(比較例1)
親水性繊維および界面活性剤を添加しないことを除いて、比較例1は実施例1と同様な方法で作製された。
【0105】
(比較例2)
界面活性剤を添加しないことを除いて、比較例は実施例1と同様な方法で作製された。
【0106】
(比較例3)
界面活性剤を添加しないことおよび粉砕機に投入したパルプ繊維の量を20gにしたことを除いて、比較例は実施例1と同様な方法で作製された。CMCハイドロゲルとパルプ繊維との重量比は1:2であった。
【0107】
(比較例4)
0.67gの2−OLR75重量%溶液の代わりに20gのショ糖脂肪酸エステル2.5重量%溶液(第一工業製薬製、DKエステル、非イオン性界面活性剤)を添加したことおよび粉砕機に投入したパルプ繊維の量を20gにしたことを除いて、比較例は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加したショ糖脂肪酸エステルの割合は、100重量部のCMCに対して1.0重量部であった。また、CMCハイドロゲルとパルプ繊維との重量比は1:2であった。
【0108】
(比較例5)
2−OLR75重量%溶液の添加量を2.0gにしたことおよび粉砕機に投入したパルプ繊維の量を20gにしたことを除いて、比較例は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して3.0重量部であった。また、CMCハイドロゲルとパルプ繊維との重量比は1:2であった。
【0109】
(比較例6)
界面活性剤を添加しないことおよび親水性繊維を添加しないことを除いて、比較例6は実施例1と同様な方法で作製された。
【0110】
(比較例7)
2−OLR75重量%溶液の添加量を2.00gにしたことおよび親水性繊維を添加しないことを除いて、比較例7は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加した2−OLRの割合は、100重量部のCMCに対して3.0重量部であった。
【0111】
(比較例8)
0.67gの2−OLR75重量%溶液の代わりに40gのショ糖脂肪酸エステル2.5重量%溶液(第一工業製薬製、DKエステル、非イオン性界面活性剤)を添加したことおよび親水性繊維を添加しないことを除いて、比較例8は実施例1と同様な方法で作製された。CMC水溶液に添加したショ糖脂肪酸エステルの割合は、100重量部のCMCに対して2.0重量部であった。
【0112】
吸収性材料が親水性繊維を含む第1の実施形態の実施例および比較例において、0.9%生理食塩水における吸水速度、吸水倍率および保水倍率ならびに人工経血における吸収速度、リウェット量および保血倍率の試験結果を以下の表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
実施例1〜5は、27秒以下の0.9%生理食塩水における吸収速度と、18倍以上の0.9%生理食塩水における吸水倍率と、12倍以上の0.9%生理食塩水における保水倍率とを有していた。実施例1〜5は、87秒以下の人工経血を2mL滴下したときの吸収速度と、8倍以上の人工経血における保血倍率とをさらに有していた。実施例6および8では、人工経血の吸収が若干遅かったものの、実施例6および8は、27秒以下の0.9%生理食塩水における吸収速度と、18倍以上の0.9%生理食塩水における吸水倍率と、12倍以上の0.9%生理食塩水における保水倍率と、87秒以下の人工経血を2mL滴下したときの吸収速度とを有していた。実施例7では、0.9%生理食塩水における保水倍率が若干小さかったものの、実施例7は、27秒以下の0.9%生理食塩水における吸収速度と、18倍以上の0.9%生理食塩水における吸水倍率と、87秒以下の人工経血を2mL滴下したときの吸収速度と、8倍以上の人工経血における保血倍率とを有していた。
【0115】
比較例1および2では、0.9%生理食塩水の吸収および人工経血の吸収が遅かった。比較例3および4では、0.9%生理食塩水の吸収は速かったが、0.9%生理食塩水の吸水倍率および保水倍率は小さかった。比較例5の人工経血における保血倍率は低かった。
【0116】
実施例1〜8と比較例1とを比較することによって、界面活性剤および親水性繊維によって、吸収性材料における0.9%生理食塩水の吸水速度および経血の吸収速度が向上することがわかった。また、CMCゲルの保水倍率が大きくなることがわかった。
【0117】
実施例1〜4と比較例2とを比較することによって、界面活性剤によって、吸収性材料における0.9%生理食塩水の吸水速度および経血の吸収速度がさらに向上することがわかった。
【0118】
実施例2と比較例2とを比較することによって、比較例2に対して80重量%の量の実施例2により、比較例2の同等以上の0.9%生理食塩水における吸収速度、吸水倍率および保水倍率ならびに人工経血における吸収速度および保血倍率を得られることがわかった。すなわち、比較例2を実施例2に置き換えることによって、少ない量の吸収性材料で良好な特性を有する吸収体を作製できることがわかった。これにより、吸収体を薄くしたり、吸収体の原料費を安くしたりすることができる。
【0119】
実施例1〜7と比較例5とを比較することによって、界面活性剤の添加量が多すぎると、人工経血の保血倍率が低下する場合があることがわかった。
【0120】
実施例6より、吸収性材料の0.9%生理食塩水における吸収速度、吸水倍率および保水倍率ならびに人工経血における吸収速度および保血倍率を向上させることができる界面活性剤は、カチオン性界面活性剤に限定されず、非イオン性界面活性剤によっても吸収性材料の上記特性を向上させることができることがわかった。
【0121】
以上の実験結果から、実施例1〜8および比較例1〜5を、以下、さらに考察する。
【0122】
(実施例1〜5,7,8)
図5に実施例1における吸収性材料の電子走査型顕微鏡(SEM)写真を示す。図5のSEM写真に示すように、放射線の照射による架橋によって得られたCMCハイドロゲル粒子をパルプ繊維に絡ませ乾燥させることにより、繊維と一体化された吸収性材料を得ることができた。また、パルプ繊維は、CMCハイドロゲル粒子の外部から内部に到達していることがわかった。CMCハイドロゲル粒子を親水性繊維に絡ませることによって吸収性材料の表面積が大きくなり、CMCハイドロゲル粒子の表面の密度が下がって、吸収性材料の表面に空壁が確保された。これにより、0.9%生理食塩水や人工経血を吸収性材料の内部への引き込みための経路を確保することができた。このため、吸収性材料の吸水が速くなったと考えられる。
【0123】
CMCハイドロゲル粒子の表面の水酸基やカルボキシル基により、CMCハイドロゲル粒子の表面はマイナスに荷電し得る。ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドはカチオン性界面活性剤であり、プラスに荷電しているので、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドは、CMCハイドロゲル粒子の表面に強く吸着され得る。そして、これにより、CMCハイドロゲル粒子の表面は疎水性になったものと予想される。したがって、CMCハイドロゲル粒子の表面は撥水状態になり、CMCハイドロゲル粒子の表面は乾燥した状態になり得る。これにより、CMCハイドロゲル粒子の表面に付着した0.9%生理食塩水や人工経血におけるCMCハイドロゲル粒子の内部へ浸透が促進されたと予想される。
【0124】
(実施例6)
ショ糖脂肪酸エステルは非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、プラスもしくはマイナスに荷電していないので、CMCハイドロゲル粒子の表面の水酸基やカルボキシル基との間の水素結合で、ショ糖脂肪酸エステルはCMCハイドロゲル粒子の表面に吸着したと予想される。非イオン性界面活性剤を用いた場合も、CMCハイドロゲル粒子の表面を撥水状態にすることによって、CMCハイドロゲル粒子の表面に付着した0.9%生理食塩水や人工経血におけるCMCハイドロゲル粒子の内部へ浸透が促進されたと予想される。
【0125】
(比較例1)
CMCハイドロゲル粒子の表面は親水性であるので、CMCハイドロゲル粒子間に保持された0.9%生理食塩水や人工経血は、CMCハイドロゲル粒子間に保持されたままの状態になり、CMCハイドロゲル粒子の内部へ速く浸透しなかったものと予想される。また、親水性繊維がないので、0.9%生理食塩水や人工経血を吸収性材料の内部への引き込みための経路を確保できないため、比較例1の0.9%生理食塩水の吸水および経血の吸収が遅かったものと予想される。
【0126】
(比較例2)
比較例2は、親水性繊維によって、0.9%生理食塩水や人工経血を吸収性材料の内部への引き込みための経路を確保できているが、CMCハイドロゲル粒子の表面は親水性であるので、CMCハイドロゲル粒子の内部へ速く浸透しなかったものと予想される。このため、比較例2の0.9%生理食塩水の吸水および経血の吸収は遅かったものと予想される。
【0127】
(比較例3)
比較例3は、親水性繊維の割合を高くすることによって、0.9%生理食塩水や人工経血を吸収性材料の内部への引き込みための経路を非常に多く確保できた。このため、比較例3の0.9%生理食塩水の吸水および経血の吸収が速かったものと予想される。しかし、CMCハイドロゲル粒子の表面は親水性であるので、CMCハイドロゲル粒子の内部へ速く浸透しなかったものと予想される。このため、比較例の0.9%生理食塩水の吸水倍率および保水倍率は小さかったものと予想される。
【0128】
(比較例4)
比較例4では、0.9%生理食塩水の吸水倍率および保水倍率に対する非イオン性界面活性剤の効果は現れなかった。これは、増えたパルプ繊維のため、非イオン性界面活性剤とCMCハイドロゲル粒子の表面の水酸基やカルボキシル基との間の水素結合が弱くなり、CMCハイドロゲル粒子の表面が十分な撥水状態になっていなかったためであると予想される。
【0129】
(比較例5)
比較例5では、人工経血の保血倍率が小さかった。これは、界面活性剤の添加量が増えたため、CMCハイドロゲル粒子の表面の疎水性が強くなり過ぎてしまい、CMCハイドロゲル粒子の内部への浸透がかえって起こりにくくなったためであると予想される。
【0130】
吸収性材料が親水性繊維を含まない第2の実施形態の実施例および比較例において、0.9%生理食塩水における吸水速度、吸水倍率および保水倍率ならびに人工経血における吸収速度、リウェット量および保血倍率の試験結果を以下の表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
実施例9〜11は、41秒以下の0.9%生理食塩水における吸収速度と、25倍以上の0.9%生理食塩水における吸水倍率と、20倍以上の0.9%生理食塩水における保水倍率とを有していた。実施例9〜11は、110秒以下の人工経血を2mL滴下したときの吸収速度と、14倍以上の人工経血における保血倍率とをさらに有していた。実施例12では、人工経血の吸収は若干遅かったものの、実施例12は、41秒以下の0.9%生理食塩水における吸収速度と、25倍以上の0.9%生理食塩水における吸水倍率と、20倍以上の0.9%生理食塩水における保水倍率と、14倍以上の人工経血における保血倍率とを有していた。実施例13では、人工経血の吸収が遅く、人工経血の保血倍率は小さかったものの、実施例13は、41秒以下の0.9%生理食塩水における吸収速度と、25倍以上の0.9%生理食塩水における吸水倍率と、20倍以上の0.9%生理食塩水における保水倍率とを有していた。
【0133】
比較例6〜8では、0.9%生理食塩水および人工経血の吸収が遅かった。比較例6では、さらに0.9%生理食塩水の吸水倍率および保水倍率が小さかった。比較例7および8では、さらに人工経血における保血倍率が小さかった。
【0134】
実施例9〜13と比較例6とを比較することによって、界面活性剤により吸収性材料における0.9%生理食塩水の吸水および/または経血の吸収が速くなることがわかった。
【0135】
実施例10と比較例6とを比較することによって、比較例6に対して80重量%の量の実施例10により、比較例6の同等以上の0.9%生理食塩水における吸収速度、吸水倍率および保水倍率ならびに人工経血における吸収速度および保血倍率を得られることがわかった。すなわち、比較例6を実施例10に置き換えることによって、少ない量の吸収性材料で良好な特性を有する吸収体を作製できることがわかった。これにより、吸収体を薄くしたり、吸収体の原料費を安くしたりすることができる。
【0136】
実施例9〜12と比較例7とを比較することによって、界面活性剤の添加量が多すぎると、の0.9%生理食塩水および/または人工経血の吸収が遅くなることがわかった。
【0137】
実施例13より、吸収性材料の0.9%生理食塩水における吸収速度、吸水倍率および保水倍率を向上させることができる界面活性剤は、カチオン性界面活性剤に限定されず、非イオン性界面活性剤によっても吸収性材料の上記特性を向上させることができることがわかった。しかし、比較例8より、非イオン性界面活性剤の場合も、界面活性剤の添加量が多すぎるとの0.9%生理食塩水の吸収が遅くなることがわかった。
【0138】
以上の実験結果から、実施例9〜13および比較例6〜8を、以下、さらに考察する。
【0139】
(実施例9〜12)
図6に実施例9における吸収性材料の電子走査型顕微鏡(SEM)写真を示す。図6のSEM写真に示すように、界面活性剤により、CMCハイドロゲル粒子の表面は乾燥している状態であることがわかる。
【0140】
CMCハイドロゲル粒子の表面の水酸基やカルボキシル基により、CMCハイドロゲル粒子の表面はマイナスに荷電し得る。ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドはカチオン性界面活性剤であり、プラスに荷電しているので、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドは、CMCハイドロゲル粒子の表面に強く吸着され得る。そして、これにより、CMCハイドロゲル粒子の表面は疎水性になったものと予想される。したがって、CMCハイドロゲル粒子の表面は撥水状態になり、CMCハイドロゲル粒子の表面は乾燥した状態になり得る。これにより、CMCハイドロゲル粒子の表面に付着した0.9%生理食塩水や人工経血におけるCMCハイドロゲル粒子の内部へ浸透が促進されたと予想される。
【0141】
(実施例13)
ショ糖脂肪酸エステルは非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、プラスもしくはマイナスに荷電していないので、CMCハイドロゲル粒子の表面の水酸基やカルボキシル基との間の水素結合で、ショ糖脂肪酸エステルはCMCハイドロゲル粒子の表面に吸着したと予想される。非イオン性界面活性剤を用いた場合も、CMCハイドロゲル粒子の表面を撥水状態にすることによって、CMCハイドロゲル粒子の表面に付着した0.9%生理食塩水におけるCMCハイドロゲル粒子の内部へ浸透が促進されたと予想される。
【0142】
(比較例6)
CMCハイドロゲル粒子の表面は親水性であるので、CMCハイドロゲル粒子間に保持された0.9%生理食塩水や人工経血は、CMCハイドロゲル粒子間に保持されたままの状態になり、CMCハイドロゲル粒子の内部へ速く浸透しなかったものと予想される。
【0143】
(比較例7および比較例8)
比較例7および比較例8では、0.9%生理食塩水および人工経血における吸収に対するカチオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤の効果は現れなかった。これは、界面活性剤の添加量が増えたため、CMCハイドロゲル粒子の表面の疎水性が強くなり過ぎてしまい、CMCハイドロゲル粒子の内部への浸透がかえって起こりにくくなったためであると予想される。
【符号の説明】
【0144】
1 吸収性物品(生理用ナプキン)
2 表面材
3 防漏シート
4 吸収体
5 ティッシュ
10 粉砕機
11 取手
12 容器フタ
13 粉砕カッター
14 留めネジ
15 粉砕槽
16 本体
21 ナイロンメッシュ
22 ヒートシール
23 上端
24 ナイロンメッシュ袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6