特許第6021808号(P6021808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021808ポリアルキレンオキシド粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021808
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ポリアルキレンオキシド粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/10 20060101AFI20161027BHJP
   C08G 65/12 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C08G65/10
   C08G65/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-517974(P2013-517974)
(86)(22)【出願日】2012年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2012062959
(87)【国際公開番号】WO2012165199
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-125631(P2011-125631)
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 絵美
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】井戸 亨
(72)【発明者】
【氏名】八軒 静香
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−270068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/10
C08G 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合溶媒及び該重合溶媒中に分散した触媒を含む重合液中で、アルキレンオキシドを重合させて、ポリアルキレンオキシド粒子を生成させる工程を備え、
前記触媒の平均粒子径が25μmより大きく、
前記触媒が有機亜鉛触媒であり、前記有機亜鉛触媒が、有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと反応させて粒子状の反応生成物を生成させる工程を含む方法により得ることのできる粒子状の反応生成物である、ポリアルキレンオキシド粒子の製造方法。
【請求項2】
前記重合液が、前記アルキレンオキシド1モルに対して0.00005モル以上の前記触媒を含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレンオキシド粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンオキシドは、水溶性及び熱可塑性を有することから、製紙用粘剤、セラミックバインダー、重合安定助剤、及び医薬用製剤原料等の用途に使用されている。ポリアルキレンオキシドを製紙用粘剤等の増粘剤として使用する場合、粘度制御の観点から、一般に高い分子量を有するポリアルキレンオキシドが好まれる。高い分子量を有するポリアルキレンオキシドの製造方法としては、有機亜鉛化合物と脂肪族多価アルコールと一価アルコールとを反応させて得られる触媒を利用する方法が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−17566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の製造方法により得られたポリアルキレンオキシドは、例えば、製紙用粘剤等の増粘剤として用いられる場合、水等の媒体に分散又は溶解しにくい傾向があることがわかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、水等の媒体への分散性に優れたポリアルキレンオキシド粒子、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重合溶媒及び該重合溶媒中に分散した触媒を含む重合液中で、アルキレンオキシドを重合させて、ポリアルキレンオキシド粒子を生成させる工程(重合工程)を備える、ポリアルキレンオキシド粒子の製造方法に関する。上記触媒の平均粒子径は、25μmより大きい。
【0007】
上記製造方法により得られたポリアルキレンオキシド粒子は、水等の媒体への分散性に優れる。
【0008】
上記触媒は有機亜鉛触媒であることが好ましい。また、上記有機亜鉛触媒が、有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと反応させて粒子状の反応生成物を生成させる工程(反応工程)を含む方法により得ることのできる粒子状の反応生成物であることが好ましい。
【0009】
重合液がこのような有機亜鉛触媒を含むことにより、ポリアルキレンオキシドの分子量をより高く制御することができる。
【0010】
上記重合液は、アルキレンオキシド1モルに対して0.00005モル以上の上記触媒を含むことが好ましい。触媒の使用量が上記範囲であることにより、重合反応速度の低下を抑制し、重合時間をより短く制御することができる。
【0011】
本発明は、上記製造方法により得ることのできるポリアルキレンオキシド粒子にも関する。本発明に係るポリアルキレンオキシド粒子において、150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は40質量%未満である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法により得ることのできるポリアルキレンオキシド粒子は、水等の媒体への分散性に優れる。また、上記ポリアルキレンオキシド粒子は、水等の媒体中で凝集しにくいため、溶解性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について以下に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係るポリアルキレンオキシド粒子の製造方法は、重合溶媒及び該重合溶媒中に分散した触媒を含む重合液中で、アルキレンオキシドを重合させてポリアルキレンオキシド粒子を生成させる工程を備える。
【0015】
アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド及びエピクロルヒドリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。これらのアルキレンオキシドの中でも、得られるポリアルキレンオキシドの水に対する溶解性が高い点で、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好適に用いられる。これらのアルキレンオキシドは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
重合溶媒は、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒であってもよい。これらの重合溶媒の中でも、工業的に入手が容易である点、得られるポリアルキレンオキシドの融点より沸点が低く、重合反応後の除去が容易である点から、n−ヘキサン又はn−ペンタンが好適に用いられる。これらの重合溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
重合溶媒の使用量は、重合熱を除去し、重合反応を制御しやすい点から、アルキレンオキシド100質量部に対して、200〜10000質量部であることが好ましく、400〜600質量部であることがより好ましい。
【0018】
本実施形態における触媒は、通常、粒子状である。触媒の平均粒子径は、25μmより大きく、30〜50μmであることが好ましく、35〜45μmであることがより好ましい。触媒の平均粒子径が25μm以下である場合、得られるポリアルキレンオキシド粒子の粒子径が小さく、水等の媒体への膨潤が速くなる傾向があり、媒体中で分散不良を起こす傾向がある。触媒の平均粒子径の値は、後述するレーザー回折法により測定される。
【0019】
触媒は、高い分子量を有するポリアルキレンオキシドが得られる点から、有機亜鉛触媒であることが好ましい。触媒としての有機亜鉛触媒は、有機亜鉛化合物を、脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと反応させて粒子状の反応生成物を生成させる反応工程を含む方法により得ることのできる粒子状の反応生成物であることが好ましい。
【0020】
有機亜鉛触媒を得るために用いられる有機亜鉛化合物は、例えば、一般式ZnR(Rは1価の有機基を表す。)で表される化合物である。Rとしては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基及び炭素数4〜6のシクロアルキル基等が挙げられる。有機亜鉛化合物の具体例としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛及びジ−n−ブチル亜鉛等のジアルキル亜鉛、ジフェニル亜鉛、並びにジシクロブチル亜鉛等が挙げられる。これらの有機亜鉛化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
有機亜鉛触媒として上述の粒子状の反応生成物を得るために用いられる脂肪族多価アルコールは、2以上の水酸基を有し、2以上の炭素数を有する脂肪族アルコールである。脂肪族多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3,4−ペンタントリオール、グリセリン及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。脂肪族多価アルコールは、高い分子量を有するポリアルキレンオキシドが得られる点から、炭素数が4の脂肪族多価アルコールであることが好ましい。炭素数が4の脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3−ブタンジオール及び1,4−ブタンジオールが挙げられる。これらの脂肪族多価アルコールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
脂肪族多価アルコールの使用量は、有機亜鉛化合物1モルに対して、0.1〜1.1モルであることが好ましく、0.3〜0.9モルであることがより好ましい。脂肪族多価アルコールの使用量が、有機亜鉛化合物1モルに対して0.1モル未満である場合、重合反応速度が極端に低下して反応に時間がかかるおそれがあり、経済的に不利になる傾向がある。脂肪族多価アルコールの使用量が、有機亜鉛化合物1モルに対して1.1モルを超える場合、得られるポリアルキレンオキシド粒子が凝集して塊状化する可能性がある。
【0023】
有機亜鉛触媒として上述の粒子状の反応生成物を得るために用いられる一価アルコールは、1つの水酸基を有し、水酸基の活性水素以外の活性水素を有しないアルコールである。一価アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール及び1−ブタノール等の第一級アルコール;2−プロパノール及び2−ブタノール等の第二級アルコール;t−ブタノール等の第三級アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。一価アルコールは、これらの中でも、分子量が高いポリアルキレンオキシドが得られる点から、炭素数が1〜6の一価アルコールであることが好ましい。炭素数が1〜6の一価アルコールとしては、例えばエタノール、プロパノール及びブタノールが挙げられる。これらの一価アルコールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
一価アルコールの使用量は、有機亜鉛化合物1モルに対して、1モル以上であることが好ましく、2〜15モルであることがより好ましく、4〜12モルであることがさらに好ましい。一価アルコールの使用量が、有機亜鉛化合物1モルに対して1モル未満の場合、アルキレンオキシドの重合反応が円滑に進行し難くなる傾向がある。一価アルコールの使用量が、有機亜鉛化合物1モルに対して15モルを超える場合、後述するように未反応のアルコールを除去する際に、除去量が増えて、除去に要する時間が長くなる傾向がある。
【0025】
脂肪族多価アルコールに対する一価アルコールのモル比は、(一価アルコールのモル数/脂肪族多価アルコールのモル数)として算出される。このモル比は、2以上であることが好ましく、4〜50であることがより好ましい。上記モル比が2未満である場合、アルキレンオキシドの重合反応が円滑に進行し難くなる傾向がある。上記モル比が50を超える場合、後述のように未反応のアルコールを除去する際に、除去に要する時間が長くなる傾向がある。上記モル比が増えるにつれて、得られる触媒の平均粒子径が大きくなる傾向がある。
【0026】
有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと反応させる方法は、特に限定されない。例えば、(1)有機亜鉛化合物を一価アルコールと反応させた後、生成物を脂肪族多価アルコールと反応させる方法、(2)有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコールと反応させた後、生成物を一価アルコールと反応させる方法、(3)有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと同時に反応させる方法により、反応を行うことができる。これらの方法の中でも、操作が簡便である観点から、(3)有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと同時に反応させる方法が特に好適である。
【0027】
有機亜鉛化合物と脂肪族多価アルコール及び一価アルコールとの反応は、反応を円滑に行う観点から、通常、触媒調製用の溶媒を含む反応液中で、不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0028】
触媒調製用の溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びシクロヘキサン等の炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの触媒調製用の溶媒の中でも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、かつ安価である点から、n−ヘキサン又はn−ヘプタンが好適に用いられる。これらの触媒調製用の溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
不活性ガスとしては、得られる有機亜鉛触媒が失活しにくいガスであれば特に限定されず、例えば窒素、アルゴン及びヘリウムが挙げられる。
【0030】
有機亜鉛化合物を脂肪族多価アルコール及び一価アルコールと反応させる際、好ましくは、有機亜鉛化合物及び上記溶媒を含む反応液に対して、脂肪族多価アルコール及び一価アルコールが、これらの混合液として又は別々に供給される。脂肪族多価アルコール又は一価アルコールの反応系内(反応液)への供給(添加)速度は、10g/分以下であることが好ましく、2g/分以下であることがより好ましい。供給速度が10g/分以下であることにより、得られる触媒の粒度分布をより狭く制御できる傾向がある。また、脂肪族多価アルコール又は一価アルコールを反応系内へ供給する際の反応系(反応液)の温度は、0〜60℃であることが好ましい。
【0031】
脂肪族多価アルコール及び一価アルコールを反応系内に供給した後、アルコールと有機亜鉛化合物との反応を進行させるために、反応系内の温度を変更し、別の温度(反応温度)に調整してもよい。反応温度は、通常0〜200℃であり、好ましくは20〜200℃である。反応時間は、例えば0.5〜10時間である。
【0032】
有機亜鉛化合物、脂肪族多価アルコール及び一価アルコールを含む反応液は、攪拌されることが好ましい。攪拌は、公知の方法により行うことができる。攪拌速度は低いことが好ましい。攪拌速度が低いことにより、得られる触媒の平均粒子径がより大きくなる傾向がある。
【0033】
上記触媒は、触媒調製用の溶媒、未反応の脂肪族多価アルコール及び一価アルコール等に分散した分散液の状態で得られる。未反応のアルコールは、重合反応を円滑に行う観点から、分散液から除去されることが好ましい。触媒の失活を抑制する観点から、分散媒として実質的に触媒調製用の溶媒のみを含む分散液の状態で、触媒が重合反応に供されることが好ましい。
【0034】
重合液は、アルキレンオキシド1モルに対して、触媒を0.00005モル以上含むことが好ましく、0.0001〜0.0006モル含むことがより好ましい。触媒の含有量が、アルキレンオキシド1モルに対して0.00005モル未満の場合、重合反応速度が極端に低下して重合時間が長くなる可能性がある。
【0035】
重合溶媒及び該重合溶媒中に分散した触媒を含む重合液中で、アルキレンオキシドを重合させる方法は、特に限定されない。例えば、重合反応容器に重合溶媒及び触媒を加え、さらにアルキレンオキシドを加えて重合液を調製し、不活性ガス雰囲気下、重合液を攪拌しながらアルキレンオキシドを重合させることができる。重合反応は、重合反応効率を向上させる点、及び得られるポリアルキレンオキシド粒子の塊状化を防ぐ点から、通常、重合液を攪拌しながら行われる。
【0036】
重合反応で用いられる上記不活性ガスは、触媒が失活しにくいガスであれば特に限定されない。例えば窒素、アルゴン及びヘリウムが挙げられる。
【0037】
重合反応の重合温度(重合液の温度)は、通常5〜100℃であり、好ましくは20〜50℃である。重合反応の時間は、通常0.5〜10時間である。
【0038】
重合反応終了後、例えば、ろ過により取り出した生成物を乾燥することにより、ポリアルキレンオキシド粒子の粉体が得られる。
【0039】
かくして得られるポリアルキレンオキシド粒子は、通常、粒子径の異なる複数の粒子(一次粒子)から構成される。特に、本実施形態のポリアルキレンオキシド粒子は、小さい粒子径の粒子の含有量が少ない点に一つの特徴を有している。係るポリアルキレンオキシド粒子において、水等の媒体への分散性及び溶解性の観点から、150μm未満の粒子径を有する粒子の割合が40質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、20質量%未満であることがさらに好ましく、10質量%未満であることが特に好ましい。150μm未満の粒子径を有する粒子の割合の下限は、特に制限がなく、0質量%であってもよい。ポリアルキレンオキシド粒子における150μm未満の粒子径を有する粒子の上記質量百分率の値(粒度分布)は、後述する網目通過式分級法により測定することができる。上記粒子径は、ポリアルキレンオキシド粒子の1次粒子径に相当する場合が多い。
【0040】
本実施形態のポリアルキレンオキシド粒子の製造工程において特定の平均粒子径を有する触媒を使用することにより、得られるポリアルキレンオキシド粒子の粒度分布において、小さい粒子の割合が減少する。その結果、ポリアルキレンオキシド粒子の水等の媒体への分散性及び溶解性が向上する。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を製造例、実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
[評価方法]
製造例で得られた触媒及び実施例で得られたポリアルキレンオキシド粒子を、以下の方法に従って評価した。
【0043】
(1)触媒の平均粒子径
触媒の平均粒子径は下記レーザー回折法により測定される。
キャリアとしてヘキサンを使用して、触媒スラリーを作製した。レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、型番:SALD−7100)に上記触媒スラリーを循環させ、触媒の平均粒子径を測定した。
【0044】
(2)ポリアルキレンオキシド粒子の粒度分布及び質量平均粒子径
ポリアルキレンオキシド粒子の粒度分布及び質量平均粒子径は下記網目通過式分級法により測定及び算出される。
ポリアルキレンオキシド粒子100gと、滑剤として非晶質シリカ(株式会社トクヤマ製、トクシールNP)2gとを混合した。
JIS Z 8801−1標準篩として、目開き500μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、及び目開き75μmの篩を上からこの順で受皿の上に重ね合わせた。
最上段に配置された目開き500μmの篩に、ポリアルキレンオキシド粒子と非晶質シリカとの混合物を入れた。篩をロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせることにより、混合物を分級した。
分級後、各篩上に残ったポリアルキレンオキシド粒子の質量を測定し、各質量の全量に対する質量百分率を計算した。目開きの大きい篩から順に質量百分率を積算し、篩の目開きと、篩上に残ったポリアルキレンオキシド粒子の質量百分率の積算値(積算質量百分率)との関係を、対数確率紙にプロットした。紙面上のプロットを直線で結び、積算質量百分率が50質量%のときの篩の目開きの値を、ポリアルキレンオキシド粒子の質量平均粒子径とした。
また、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩及び受皿上に残ったポリアルキレンオキシド粒子の質量百分率の合計値を、150μm未満の粒子径を有する粒子の質量百分率として算出した。
【0045】
(3)ポリアルキレンオキシド粒子の水への分散性
1000mL容のビーカーに、イオン交換水500gを入れ、イオン交換水の温度を25℃に調整した。ビーカー内のイオン交換水を、2枚羽根直立型パドル(翼径:80mm)を備えた攪拌機を用いて回転速度250rpmで攪拌しながら、ポリアルキレンオキシド粒子2.5gを一度に投入した。10秒間攪拌した後、攪拌を停止し、ビーカー内のポリアルキレンオキシド粒子の分散状態を目視で観察した。以下の基準に従って分散性を評価した。以下の基準において、「大きい凝集体」とは、目視で確認できる程度の粗大な凝集体を意味する。
A:大きい凝集体の数0個(なし)
B:大きい凝集体の数1〜2個
C:大きい凝集体の数3〜4個
D:大きい凝集体の数5個以上
【0046】
[製造例1:触媒A]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び攪拌機としての翼径53mmの4枚の(45度傾斜)パドル翼を有する攪拌翼が装着された、内径80mm、容積500mLのフラスコを準備した。
【0047】
フラスコ内を窒素で置換した後、該フラスコ内にn−ヘキサン(住友化学株式会社製、高純度工業用)56.3g、及び高沸点の脂肪族炭化水素(新日本石油株式会社製、商品名:0号ソルベント)9.9gを加え、さらにジエチル亜鉛(日本アルキルアルミ株式会社製)9.9g(80ミリモル)を加えた。フラスコ内の反応液を10℃に冷却し、先端周速0.97m/秒(攪拌回転速度350rpm)で攪拌した。
【0048】
次いで、1,4−ブタンジオール6.5g(72ミリモル)とエタノール29.0g(629ミリモル)との混合液の全量を、滴下ロートを用いて0.5g/分の添加速度で、上記フラスコ内に添加した。添加終了後、フラスコ内を30℃まで昇温して、ジエチル亜鉛を1,4−ブタンジオール及びエタノールと1時間反応させ、次に、50℃まで昇温して1時間反応を行った。
【0049】
その後、フラスコ内を140℃まで昇温して、未反応のアルコールをn−ヘキサンと共に系外に留去した。冷却後、フラスコ内の反応液をn−ヘキサン400mlで希釈し、有機亜鉛触媒(触媒A)を3質量%含む分散液302gを得た。得られた触媒Aの平均粒子径の測定結果を表1に示す。
【0050】
[製造例2:触媒B]
先端周速を0.97m/秒(攪拌回転速度350rpm)から0.55m/秒(攪拌回転速度200rpm)に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、有機亜鉛触媒(触媒B)を3質量%含む分散液302gを得た。得られた触媒Bの平均粒子径の測定結果を表1に示す。
【0051】
[製造例3:触媒C]
先端周速を0.97m/秒(攪拌回転速度350rpm)から1.94m/秒(攪拌回転速度700rpm)に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、有機亜鉛触媒(触媒C)を3質量%含む分散液302gを得た。得られた触媒Cの平均粒子径の測定結果を表1に示す。
【0052】
[製造例4:触媒D]
1,4−ブタンジオールの使用量を6.5g(72ミリモル)から2.2g(24ミリモル)に変更した以外は、製造例2と同様の操作を行い、有機亜鉛触媒(触媒D)を3質量%含む分散液302gを得た。得られた触媒Dの平均粒子径の測定結果を表1に示す。
【0053】
[製造例5:触媒E]
エタノールの使用量を29.0g(629ミリモル)から17.6g(382ミリモル)に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、有機亜鉛触媒(触媒E)を3質量%含む分散液302gを得た。得られた触媒Eの平均粒子径の測定結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1において、アルコール比とは、脂肪族多価アルコール(1,4−ブタンジオール)に対する一価アルコール(エタノール)のモル比を表す。添加速度とは、脂肪族多価アルコールと一価アルコールの混合液の系内(フラスコ内)への供給(添加)速度を表す。系内温度とは、脂肪族多価アルコールと一価アルコールの混合液を系内へ供給する際の系内(反応液)の温度を表す。
【0056】
[実施例1]
滴下ロート、窒素ガス導入管、及び翼径47mmのいかり型パドル翼を有する攪拌翼を装着した、内径94mm、容積1Lの耐圧反応容器を準備した。
【0057】
耐圧反応容器内を窒素で置換した後、該反応容器内に重合溶媒のn−ヘキサン(住友化学株式会社製、高純度工業用)345gを加え、さらに攪拌下で製造例1で得られた触媒Aの分散液を3.1g加え、均一に分散させて、重合液を調製した。
【0058】
次いで、重合液にエチレンオキシド81g(1.84モル)を添加した。その後、重合液を30℃まで昇温して、エチレンオキシドを6時間重合させた。
【0059】
重合反応終了後、生成物を、ろ過によりn−ヘキサンから分離してから、40℃で5時間減圧乾燥することにより、ポリエチレンオキシド粒子80.5gを得た。得られたポリエチレンオキシド粒子の収率は、エチレンオキシドに対して99.3質量%であった。得られたポリエチレンオキシド粒子について、質量平均粒子径及び水への分散性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0060】
[実施例2]
触媒Aの分散液を触媒Bの分散液に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシド粒子80.7gを得た。得られたポリエチレンオキシド粒子の収率は、エチレンオキシドに対して99.6質量%であった。得られたポリエチレンオキシド粒子について、質量平均粒子径及び水への分散性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0061】
[実施例3]
触媒Aの分散液を触媒Cの分散液に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシド粒子80.3gを得た。得られたポリエチレンオキシド粒子の収率は、エチレンオキシドに対して99.1質量%であった。得られたポリエチレンオキシド粒子について、質量平均粒子径及び水への分散性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0062】
[実施例4]
触媒Aの分散液を触媒Dの分散液に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシド粒子80.3gを得た。得られたポリエチレンオキシド粒子の収率は、エチレンオキシドに対して99.1質量%であった。得られたポリエチレンオキシド粒子について、質量平均粒子径及び水への分散性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0063】
[比較例1]
触媒Aの分散液を触媒Eの分散液に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエチレンオキシド粒子80.4gを得た。得られたポリエチレンオキシド粒子の収率は、エチレンオキシドに対して99.3質量%であった。得られたポリエチレンオキシド粒子について、質量平均粒子径及び水への分散性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表2より、実施例で得られたポリアルキレンオキシド粒子に関しては、小さい粒子の割合が少なく、質量平均粒子径が適度に大きいことがわかる。また、表3より、実施例で得られたポリアルキレンオキシド粒子は、水への分散性に優れることがわかる。