特許第6021851号(P6021851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021851吸湿材料及びその製造方法並びに包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021851
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】吸湿材料及びその製造方法並びに包装材料
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20161027BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20161027BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20161027BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20161027BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20161027BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20161027BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20161027BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20161027BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B01D53/26 200
   B01D53/28
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   B01J20/04 A
   B01J20/10 A
   B01J20/26 Z
   B65D81/26 L
   B65D65/40 D
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-83198(P2014-83198)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2014-237121(P2014-237121A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-100575(P2013-100575)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】階元 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 直子
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 孝郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 渉
【審査官】 福永 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−286519(JP,A)
【文献】 特開平03−188922(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/053821(WO,A1)
【文献】 特開昭63−185430(JP,A)
【文献】 特公昭61−012741(JP,B1)
【文献】 特開2011−212674(JP,A)
【文献】 特開2004−223366(JP,A)
【文献】 特開昭63−116727(JP,A)
【文献】 特公昭61−12741(JP,B1)
【文献】 特表2009−502472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26−53/28
B01J 20/00−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性を有するポリマー層、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂と吸湿性塩から選ばれた吸湿剤とを含む多孔構造を有する吸湿層、及び防湿層をこの順に有する吸湿材料であって、
前記非晶質シリカの量が、前記吸湿層の全固形分に対して20質量%〜80質量%であり、前記水溶性樹脂に対する非晶質シリカの質量比が、非晶質シリカ/水溶性樹脂の比で1.5/1〜10/1であり、前記吸湿層の空隙率が45%〜85%であり、前記吸湿層の平均細孔径が40nm以下である吸湿材料
【請求項2】
前記吸湿層の厚みが20μm〜50μmである請求項1に記載の吸湿材料。
【請求項3】
前記非晶質シリカが、気相法シリカ及び湿式シリカの少なくとも一方である請求項1又は請求項2に記載の吸湿材料。
【請求項4】
前記気相法シリカの平均1次粒子径が、10nm以下である請求項3に記載の吸湿材料。
【請求項5】
前記気相法シリカの平均2次粒子径が、50nm以下である請求項に記載の吸湿材料。
【請求項6】
前記水溶性樹脂は、けん化度が99%以下であり、かつ重合度が3300以上であるポリビニルアルコールである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の吸湿材料。
【請求項7】
前記吸湿層は、更に、架橋剤としてホウ酸を含有する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の吸湿材料。
【請求項8】
前記吸湿剤が、塩化カルシウムである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の吸湿材料。
【請求項9】
前記ポリマー層の厚みが、20μm〜100μmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の吸湿材料。
【請求項10】
前記防湿層と前記吸湿層の間に、更に、接着剤層を有する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の吸湿材料。
【請求項11】
前記接着剤層の接着剤の少なくとも1種が、ウレタン樹脂系接着剤であり、かつ前記接着剤層の厚みが3μm〜15μmである請求項10に記載の吸湿材料。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の吸湿材料を有する包装材料。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の1つ又は複数の吸湿材料を含み、
前記1つの吸湿材料Aのポリマー層の一部と吸湿材料Aの他の一部とが接着された接着部位、又は複数の吸湿材料から選ばれる、第1の吸湿材料のポリマー層の一部と、前記第1の吸湿材料とは異なる第2の吸湿材料の一部と、が接着された接着部位を有する包装材料。
【請求項14】
透湿性を有するポリマー層及び防湿層のいずれか一方の上に、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂とを含む塗布液の塗布により多孔構造を有する層を形成し、多孔構造に吸湿性塩から選ばれた吸湿剤を含む溶液を付与し、多孔構造内に吸湿剤を含浸させることで吸湿層を形成する工程と、
吸湿剤が含浸された前記吸湿層の上に、前記ポリマー層及び前記防湿層の他方を積層する工程と、
を有する吸湿材料の製造方法であって、
前記非晶質シリカの量が、前記吸湿層の全固形分に対して20質量%〜80質量%であり、前記水溶性樹脂に対する非晶質シリカの質量比が、非晶質シリカ/水溶性樹脂の比で1.5/1〜10/1であり、前記吸湿層の空隙率が45%〜85%であり、前記吸湿層の平均細孔径が40nm以下である吸湿材料の製造方法
【請求項15】
前記吸湿剤が、塩化カルシウムである請求項14に記載の吸湿材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿材料及びその製造方法並びに包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等の乾燥商品は、包装内の湿度を低く保ち内容物を大気中の水分から保護するため、シリカゲル等の乾燥剤が入った小袋等を包装内に同梱することが一般的に行われている。この包装は、乾燥商品を袋状包装材に投入し、さらに乾燥剤入りの小袋を投入し、そして袋状包装材を密封することにより行われる。乾燥剤入りの小袋を投入する工程は、通常自動化されているものの、包装工程を煩雑にし、乾燥商品によっては手作業となることがあり、面倒である。さらに、菓子類等の食品では、乾燥剤が食品に同封されることになるので、乾燥剤が誤って食品に混入されたり、誤飲されたりする恐れもある。
【0003】
そこで、乾燥剤入り小袋に代えて、包装材料として利用可能な乾燥剤入りフィルムが提案されている。例えば、モレキュラーシーブなどの粉末状の乾燥剤を樹脂に混練して成形した乾燥剤混入フィルムがある。(例えば、特許文献1参照)。この乾燥剤混入フィルムの吸湿性能は、混練する乾燥剤の吸湿容量と乾燥剤の吸湿速度によって決定する。フィルムにおける乾燥剤の含有量は、フィルムとしての物性を発現させるため制限され、長期保存を要する用途において吸湿容量が不足することが問題となる。また、乾燥剤の吸湿速度が速すぎると、乾燥剤がすぐに飽和してしまい、乾燥剤として機能を発現しなくなることが問題となる。
【0004】
吸湿容量を増加させた包装材料として、多孔質シリカに吸湿剤を担持させ、繊維シートに含有させる除湿用シート(例えば、特許文献2参照)、多孔質シリカからなる吸湿剤と水溶性有機高分子化合物のバインダーを含有する吸放湿性シート(例えば、特許文献3参照)又は特定の平均細孔径、平均粒子径、比表面積を有する多孔質シリカを含有する吸着能付与剤を用いた包材(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0005】
吸湿速度を制御する方法として、熱可塑性樹脂を窒素等の物理的発泡剤により発泡させた板状成形体を用いる方法(例えば、特許文献5参照)やゼオライトを含有したフィルムにポリオレフィン等の種々のフィルムを積層させる方法(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3919503号公報
【特許文献2】特開2009−240935号公報
【特許文献3】特開2012−110818号公報
【特許文献4】国際公開第2005/75068号パンフレット
【特許文献5】特開2006−44777号公報
【特許文献6】国際公開第2005/053821号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸湿容量が大きく、かつ透明性が高いことを両立した材料は提案されておらず、また、吸湿容量が大きく、かつ透明性が高く、吸湿速度の調節も可能な材料も提案されるに至っていないのが実情である。
【0008】
本発明は、吸湿容量が大きく、かつ透明性が高く、構成材料によって吸湿速度の調節が可能な吸湿材料及びその製造方法並びに包装材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段は、以下の通りである。
<1> 透湿性を有するポリマー層、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂と吸湿剤とを含み多孔構造を有する吸湿層、及び防湿層をこの順に有する吸湿材料。
<2> 吸湿層の厚みが20μm〜50μmであり、かつ、吸湿層の空隙率が45%〜85%である<1>に記載の吸湿材料。
<3> 非晶質シリカが、気相法シリカ及び湿式シリカの少なくとも一方である<1>又は<2>に記載の吸湿材料。
<4> 吸湿層の平均細孔径が40nm以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の吸湿材料。
【0010】
<5> 気相法シリカの平均1次粒子径が、10nm以下である<3>又は<4>に記載の吸湿材料。
<6> 気相法シリカの平均2次粒子径が、25nm以下である<5>に記載の吸湿材料。
【0011】
<7> 水溶性樹脂は、けん化度が99%以下であり、かつ重合度が3300以上であるポリビニルアルコールである<1>〜<6>のいずれか1つに記載の吸湿材料。
<8> 吸湿層は、更に、架橋剤としてホウ酸を含有する<1>〜<7>のいずれか1つに記載の吸湿材料。
<9> 吸湿剤が、塩化カルシウムである<1>〜<8>のいずれか1つに記載の吸湿材料。
<10> ポリマー層の厚みが、20μm〜100μmである<1>〜<9>のいずれか1つに記載の吸湿材料。
【0012】
<11> 防湿層と吸湿層の間に、更に、接着剤層を有する<1>〜<10>のいずれか1つに記載の吸湿材料。
<12> 接着剤層の接着剤の少なくとも1種が、ウレタン樹脂系接着剤であり、かつ接着剤層の厚みが、3μm〜15μmである<11>に記載の吸湿材料。
【0013】
<13> <1>〜<12>のいずれか1つに記載の吸湿材料を有する包装材料。
<14> <1>〜<12>のいずれか1つに記載の1つ又は複数の吸湿材料を含み、
1つの吸湿材料Aのポリマー層の一部と吸湿材料Aの他の一部とが接着された接着部位、又は、複数の吸湿材料から選ばれる、第1の吸湿材料のポリマー層の一部と、第1の吸湿材料とは異なる第2の吸湿材料の一部と、が接着された接着部位、を有する包装材料。
【0014】
<15> 透湿性を有するポリマー層及び防湿層のいずれか一方の上に、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂とを含む塗布液の塗布により多孔構造を有する層を形成し、多孔構造に吸湿剤を含む溶液を付与し、多孔構造内に吸湿剤を含浸させることで吸湿層を形成する工程と、吸湿剤が含浸された吸湿層の上に、上記のポリマー層及び防湿層の他方を積層する工程と、を有する吸湿材料の製造方法。
<16> 吸湿剤が、塩化カルシウムである<15>に記載の吸湿材料の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸湿容量が大きく、かつ透明性が高く、構成材料によって吸湿速度の調節が可能な吸湿材料及びその製造方法並びに包装材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の吸湿材料の積層構造の一例を示す概略断面図である。
図2】吸湿材料を折り返し、折り返し部以外の3辺を接着して、袋状にした包装材料の一例を示す斜視図である。
図3】第1の吸湿材料と第2の吸湿材料との対応する各4辺を接着して、袋状にした包装材料の一例を示す斜視図である。
図4】本発明の包装材料の一例を示す概略断面図である。
図5】袋状にした包装材料の接着部位の断面を拡大した図である。
図6】本発明の包装材料の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の吸湿材料及びその製造方法、並びにこれらを用いた包装材料について詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における固形分は、溶剤以外の低分子量成分などの液状の成分も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0019】
<吸湿材料>
本発明における吸湿材料は、透湿性を有するポリマー層、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂と吸湿剤とを含む多孔構造を有する吸湿層、及び防湿層を設けて構成されている。
本発明における吸湿材料は、必要に応じて接着剤層などの他の層を含んでもよい。
【0020】
本発明の吸湿材料の作用は明確ではないが、以下のように推定している。
本発明における吸湿材料は、小径の非晶質シリカと水溶性樹脂と吸湿剤とを含む吸湿層が空隙率の高い三次元構造を有し、三次元構造を形成している非晶質シリカ表面に吸湿剤が吸着した状態となることで、吸湿剤の吸湿容量に加え、表面積の広い吸湿層の空隙内にも水分を保持することができる。これにより、吸湿表面を広く確保することが可能になり、吸湿速度が高く、従来の吸湿材料より大きな吸湿容量が得られると考えられる。また、非晶質シリカの2次粒子径を小さく制御し吸湿層に分散されていることで、吸湿材料の透明性を高く維持することができるため、吸湿材料として大きな吸湿容量と透明性を両立することができるものと考えられる。これは、特に多孔構造が気相法シリカで形成されている場合により効果的である。
【0021】
−吸湿層−
本発明における吸湿層は、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカ、水溶性樹脂、及び吸湿剤を含む多孔構造を有しており、吸湿層はさらに架橋剤を含んでもよい。また、吸湿層は、必要に応じて、分散剤や界面活性剤などの他の成分を含んでもよい。
【0022】
吸湿層は、層の厚みや吸湿剤の種類を変えることで、吸湿速度を制御することが可能であり、また積層した際の層間の貼り合せに用いられる接着剤層の厚みや接着剤の種類を変えることで、吸湿速度を制御することも可能である。
【0023】
(非晶質シリカ)
本発明における吸湿層は、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカの少なくとも一種を含有する。
非晶質シリカとは、SiOの三次元構造が形成された多孔性の不定形微粒子のことであり、一般には製造法によって湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。非晶質シリカとしては、例えば、乾式法により得られる気相法シリカ、及び湿式法により得られる湿式シリカ等の合成非晶質シリカなどが挙げられる。
【0024】
−気相法シリカ−
気相法シリカとは、ケイ素塩化物を気化し、高温の水素炎中において気相反応させることで合成されるシリカ(シリカ微粒子)である。
気相法シリカは、屈折率が低いので、適切な微小粒子径まで分散を行なうことで吸湿層に透明性を付与することができる。このように吸湿層が透明であるということは、包装の内容物の視認が可能であり、また、インジケータ機能などを付与することができるという観点より重要である。
【0025】
また、気相法シリカは、含水シリカとは表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5個/nm〜8個/nmと多く、シリカ粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2個/nm〜3個/nmと少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い多孔構造になるものと推定される。
【0026】
吸湿層に含まれる気相法シリカとしては、表面におけるシラノール基の密度が2個/nm〜3個/nmである気相法シリカが好ましい。吸湿層に含まれる気相法シリカの平均1次粒子径には特に限定はないが、吸湿層の透明性の観点から、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
吸湿層に含まれる気相法シリカの平均2次粒子径は、吸湿層の透明性の観点から、10μm以下であり、50nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましい。また、吸湿層の透明性の観点から、2次粒子径分布は均一であることが好ましく、標準偏差として10nm以下であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。
気相法シリカの平均2次粒子径が10μmを超えると、透明性、視認性を確保することができない。
【0027】
本発明における平均1次粒子径とは、透過型電子顕微鏡で観察し、100個の微粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の微粒子の直径を単純平均して求めた一次粒子の平均径をいう。
また、本発明における平均2次粒子径とは、走査型電子顕微鏡で観察し、100個の凝集粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定した場合の直径を求め、100個の凝集粒子の直径を単純平均して求めた2次粒子の平均径をいう。
【0028】
気相法シリカの例としては、AEROSIL(日本アエロジル(株)製)、レオロシール(トクヤマ(株)製)、WAKER HDK(旭化成(株)製)、CAB−O−SIL(CABOT(株)製)などを挙げることができ、AEROSIL300SF75(日本アエロジル(株)製)が好ましい。
【0029】
−湿式シリカ−
湿式シリカは、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させて凝集沈降させて得られる含水シリカである。
【0030】
湿式シリカは、製造方法により沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て得られる。沈降法シリカの例としては、東ソー・シリカ社製のニップシール、トクヤマ社製のトクシールが挙げられる。また、ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて得られ、具体例として、東ソー・シリカ社製のニップゲル、グレースジャパン社製のサイロイド、サイロジェットが挙げられる。
【0031】
吸湿層に含まれる非晶質シリカのBET法による比表面積は、200m/g以上が好ましく、250m/g以上がより好ましい。気相法シリカの比表面積が200m/g以上であることで、吸湿層の透明性を高く保つことが可能である。
【0032】
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer Emmett Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0033】
非晶質シリカの吸湿層中における含有量は、吸湿層の吸湿容量及び透明性の観点から、吸湿層の全固形分に対して、20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。
【0034】
本発明の吸湿層において、気相法シリカの2次粒子径を実現するための分散手段として、分散剤を添加することが好ましく、例えば、カオチン性のポリマーを用いることができる。カオチン性のポリマーとしては、特開2006−321176号公報の段落[0138]〜[0148]に記載の媒染剤の例などが挙げられる。
また、上記気相法シリカの2次粒子径を実現するための分散方法としては、例えば、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミル、ビーズミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機など、従来公知の各種分散機を用いることができるが、その中でもビーズミル分散機、液液衝突型分散機が好ましく、液液衝突型分散機がより好ましい。液液衝突型分散機としては、例えば、アルティマイザー(スギノマシン社製)が挙げられる。
【0035】
(水溶性樹脂)
吸湿層は、水溶性樹脂の少なくとも一種を含有する。
水溶性樹脂の含有により、気相法シリカがより好適に分散された状態で含有され、層強度がより向上したものとなる。
本発明における水溶性樹脂とは、加熱もしくは冷却工程を経て、最終的に20℃の水100gに対して0.05g以上溶解するものをいい、好ましくは0.1g以上溶解する樹脂のことをいう。
【0036】
本発明における水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
水溶性樹脂の中でも、吸湿層の膜強度の観点でポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0037】
水溶性樹脂の重合度としては、1500以上が好ましく、2000以上がより好ましく、更には3300以上が好ましい。また、重合度は、4500以下が好ましい。
中でも、吸湿層の膜強度の観点から、水溶性樹脂がポリビニルアルコール系樹脂であって、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が1800以上であるのが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が2000以上であるのがより好ましく、更には、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度が2400以上であるのが好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、4500以下がより好ましい。
【0038】
また、水溶性樹脂のけん化度としては、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、更には90%以下が好ましい。また、けん化度は、70%以上が好ましく、78%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。
中でも、吸湿層の透明性の観点から、水溶性樹脂がポリビニルアルコール系樹脂であって、ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度が70%以上99%以下であるのが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度が78%以上99%以下であるのがより好ましく、更には、ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度が85%以上99%以下であるのが好ましい。
水溶性樹脂のけん化度が70%以上であると、実用上水溶性を保つのに適している。
【0039】
更には、水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることが好ましく、この場合のけん化度、重合度は以下の範囲であるのが好ましい。すなわち、
ポリビニルアルコールの架橋剤としてホウ酸を用いる場合は、ポリビニルアルコールのけん化度は78%〜99%の範囲が好ましく、また、重合度は1500〜4500の範囲が好ましく、2400〜3500の範囲がより好ましい。
一方、ポリビニルアルコールの架橋剤を用いない場合は、ポリビニルアルコールはけん化度が低く高重合度であることが、架橋剤を用いた場合と同等の多孔構造を形成できる点で好ましい。具体的には、ポリビニルアルコールのけん化度は78%〜99%の範囲が好ましく、ポリビニルアルコールの重合度は2400〜4500の範囲が好ましい。
【0040】
水溶性樹脂は、上記の具体例の誘導体も含まれ、吸湿層に含有される水溶性樹脂は1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
吸湿層における水溶性樹脂の含有量(2種以上を併用する場合はその合計量)は、含有量の過少による、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止すると共に、含有量の過多によって空隙が樹脂により塞がれ易くなり、空隙率が減少することで吸湿性が低下するのを防止する観点から、吸湿層の全固形分に対して、4.0質量%〜16.0質量%が好ましく、6.0質量%〜14.0質量%がより好ましい。
また、水溶性樹脂をポリビニルアルコールとし、ポリビニルアルコールの架橋剤としてホウ酸を用いる場合、ポリビニルアルコールの吸湿層における含有量は、非晶質シリカの量に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜30質量%がより好ましい。水溶性樹脂をポリビニルアルコールとし、ポリビニルアルコールの架橋剤を用いない場合、ポリビニルアルコールの吸湿層における含有量は、非晶質シリカの量に対して、25質量%〜60質量%の範囲が好ましい。
【0041】
水溶性樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と気相法シリカ表面のシラノール基とが水素結合を形成して、気相法シリカの2次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成し易くする。このような三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔構造を有する吸湿層を形成し得ると考えられる。得られた多孔構造を有する吸湿層は、吸湿後の水分を保持する層として機能すると推定される。
【0042】
(架橋剤)
本発明における吸湿層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。吸湿層は、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール)の架橋反応によって硬化された多孔構造を有する態様が好ましい。
【0043】
架橋剤としては、吸湿層に含まれる水溶性樹脂との関係で好適なものを適宜選択すればよいが、中でも、ホウ素化合物は、架橋反応が迅速である点で好ましく、ホウ素化合物の例として、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二ホウ酸塩(例えば、Mg、Co)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四ホウ酸塩(例えば、Na・10HO)、五ホウ酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。
ホウ素化合物の中では、より速やかに架橋反応を進行させることができる点で、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩が好ましく、特にホウ酸が好ましく、水溶性樹脂として好適に用いられるポリビニルアルコール系樹脂と組合せて使用することが最も好ましい。
一方、環境適正の観点からは、ホウ酸を含まない構成にしてもよい。
【0044】
吸湿層では、ホウ素化合物が、ポリビニルアルコール4.0質量%〜16.0質量%に対して、0.15質量%〜5.80質量%の範囲で含有されることが好ましく、0.75質量%〜3.50質量%の範囲で含有されることがより好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記範囲であると、ポリビニルアルコールを効果的に架橋し、ひび割れ等が防止される。
【0045】
水溶性樹脂としてゼラチンを用いる場合などは、ホウ素化合物以外の下記化合物も架橋剤(以下、「他の架橋剤」ともいう。)として用いることができる。
他の架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N'−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号明細書、同第2983611号明細書に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N'−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。他の架橋剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(吸湿剤)
本発明における吸湿層は、吸湿剤の少なくとも一種を含有する。
吸湿剤としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト、吸水ポリマー、吸湿性塩が挙げられ、吸湿速度の点で吸湿性塩が好ましい。
吸湿性塩としては、具体的には塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属塩、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛などの金属硫酸塩、酢酸カリウム等の金属酢酸塩、塩酸ジメチルアミンなどのアミン塩類、オルトリン酸などのリン酸化合物、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、メチロールリン酸グアニジン、炭酸グアニジンなどのグアニジン塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。中でも、吸湿容量の観点から、塩化カルシウムが好ましい。
【0047】
吸湿剤の塗布量は、吸湿容量及び透明性の両立の観点から、1g/m〜20g/mが好ましく、2.5g/m〜15g/mがより好ましく、5g/m〜13g/mが特に好ましい。
【0048】
本発明における吸湿層の厚みは、吸湿容量及び透明性の両立の観点から、20μm〜50μmが好ましく、25μm〜45μmがより好ましく、30μm〜45μmが特に好ましい。吸湿層の厚みが上記範囲であると、より大きな吸湿容量が得られ、かつ透明性を両立することができる。
本発明における吸湿層の空隙率は、45%〜85%が好ましく、50%〜80%がより好ましく、55%〜75%が特に好ましい。吸湿層の空隙率が45%以上であると、より大きな吸湿容量が得られ、また、吸湿層の空隙率が85%以下であると、膜強度の低下防止、及び乾燥時のひび割れを抑制することができる。
空隙率の測定方法の例としては、水銀圧入法又は吸湿層をジエチレングリコール等の有機溶剤に浸漬させてその質量変化から空隙容量を測定し、吸湿層の厚みを断面の顕微鏡観察により測定し算出する方法が挙げられる。
本願発明における吸湿層は、厚みが20μm〜50μmであり、かつ、空隙率が45%〜85%であることが好ましい。
【0049】
本発明における吸湿層の平均細孔径は、吸湿容量の観点から40nm以下であることが好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が特に好ましい。吸湿層の平均細孔径が40nm以下であると十分な透明性が得られる。
【0050】
平均細孔径は、島津オートポア9220(株式会社島津製作所製)を用いて水銀圧入法により測定される値である。
【0051】
〜吸湿層における非晶質シリカと水溶性樹脂との含有比〜
本発明の吸湿層において、非晶質シリカ(x)と水溶性樹脂(y)との含有比〔PB比(x/y)、水溶性樹脂1質量部に対する非晶質シリカの質量〕は、吸湿層の層構造にも大きな影響を与える場合がある。すなわち、PB比が大きくなると、空隙率や細孔容積が大きくなる。
具体的には、吸湿層のPB比(x/y)としては、PB比が大き過ぎることに起因する層強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつPB比が小さ過ぎることによって、空隙が樹脂により塞がれ易くなり、空隙率が減少することで吸湿容量が低下するのを防止する観点から、1.5/1〜10/1が好ましい。また、PB比は、膜強度の低下や乾燥時のひび割れの抑制効果をより効果的に高める観点から、1.5/1〜8/1がより好ましい。
また、包装材料として使用される場合、内容物を保護する観点から、吸湿層は充分な膜強度を有していることが必要である。さらにフィルムに裁断加工する場合、吸湿層の割れ及び剥がれ等を防止する上でも、吸湿層には充分な膜強度が必要である。このような観点より、吸湿層のPB比(x/y)としては10/1以下が好ましい。
【0052】
例えば、平均1次粒子径が10nm以下の気相法シリカと高けん化ポリビニルアルコールとをPB比(x/y)が1.5/1〜10/1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、塗布層を乾燥した場合、シリカ粒子の2次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が20nm以下、空隙率が45%〜85%、透明性の高い多孔構造を有する膜を容易に形成することができる。
【0053】
−ポリマー層−
本発明における吸湿材料は、透湿性を有するポリマー層(以下、ポリマー層ともいう)を含む。
本発明におけるポリマー層は、下記の透湿度に見合う透湿性を有しており、透湿性を有するポリマー層の透湿度は、1g/m・day〜50g/m・dayが好ましい。透湿度は、JIS Z 0208により規定された方法で測定される値である。
ポリマー層は少なくともポリマーを含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
ポリマーの種類としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。特に汎用性の点でLLDPE、CPPが好ましく、CPPがより好ましい。
【0054】
ポリマー層の厚みは、20μm〜100μmが好ましく、25μm〜80μmがより好ましい。
ポリマー層の厚みが上記の範囲であると、吸湿材料全体のハンドリング性と、包装材料等とした場合の取り扱い性と、をより高いレベルで両立することができる。
【0055】
本発明におけるポリマー層は、材質又は厚みにより、吸湿層への吸湿速度を制御することができる。
本発明の吸湿材料を包装材料として用いる場合、ポリマー層を接着部位とすることができる。
【0056】
−防湿層−
本発明における吸湿材料は防湿層を有する。
本発明における防湿層は、防湿性を有する材料を含む層であれば特に限定されない。防湿層は、透湿度1g/m・day未満の層であることが好ましい。透湿度は、JIS Z 0208により規定された方法で測定される値である。
防湿層としては、1つの材料を用いてもよく、2以上の材料を積層したものを用いてもよい。防湿層として、例えば、あらかじめ金属が蒸着された材料を用いてもよい。
【0057】
防湿性を有する材料は、防湿性の観点から、シリカ蒸着フィルム、又はアルミナ蒸着フィルムを用いることが好ましい。また、防湿性が高いアルミ箔やアルミ蒸着フィルムを用いてもよい。市販品を用いてもよく、市販品の例としては、三菱樹脂社製のテックバリアMX(シリカ蒸着PET)、東レ社製のバリアロックス(アルミナ蒸着PET)等が挙げられる。
【0058】
防湿層の厚みは、防湿性の観点から、6μm〜120μmが好ましく、6μm〜100μmがより好ましい。
【0059】
−接着剤層−
本発明における吸湿材料は接着剤層を有してもよい。
接着剤層は、透湿性を有しており、接着剤層の厚み及び種類により、吸湿層における吸湿速度を制御することができる。
接着剤層に用いる接着剤の種類は特に限定されないが、例えばウレタン樹脂系、ポリエステル系、アクリル樹脂系、エチレン酢酸ビニル樹脂系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系、シリコーン系が挙げられ、接着強度の観点からウレタン樹脂系接着剤が好ましい。
接着剤層には、少なくとも1種のウレタン樹脂系接着剤が含まれることが好ましく、他の1つ以上の接着剤を併用してもよい。
【0060】
接着剤層の厚みは、接着強度及び包装材料等とした場合の取り扱い性の観点から3μm〜15μmが好ましく、3μm〜10μmがより好ましい。接着剤層の厚みが上記範囲であると、接着強度と包装材料等とした場合の取り扱い性をより高いレベルで両立することができる。
また、上記範囲で厚みを選択することで、吸湿層の吸湿速度を制御することができる。
【0061】
本発明の吸湿材料は、例えば、図1に示すように、ポリマー層16と、吸湿層15と、防湿層13と、をこの順に積層したものでもよく、さらに吸湿層15と防湿層13との間に接着剤を付与して接着剤層を介して構成されていてもよい。
【0062】
<吸湿材料の製造方法>
本発明における吸湿材料の製造方法は、透湿性を有するポリマー層及び防湿層のいずれか一方の上に、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂とを含む塗布液の塗布により多孔構造を有する層を形成し、多孔構造に吸湿剤を含む溶液を付与し、多孔構造内に吸湿剤を含浸させることで吸湿層を形成する工程(吸湿層形成工程)と、吸湿剤が含浸された吸湿層の上に、上記のポリマー層及び防湿層の他方を積層する工程(積層工程)と、を設けて構成されている。
非晶質シリカを用いて多孔構造に構成された吸湿層において、吸湿剤が付与されることにより、吸湿剤は多孔構造を形成しているシリカ表面に吸着した状態が形成される。これにより、吸湿表面を広く確保することが可能になり、吸湿速度が高く、吸湿容量の大きいものとなる。特に多孔構造が気相法シリカで形成されている場合、透明性も付与され、吸湿材料は、光透過性(すなわち材料を通しての視認性)を有するものとなる。
【0063】
−吸湿層形成工程−
本発明における吸湿層形成工程は、透湿性を有するポリマー層及び防湿層のいずれか一方の上に、平均2次粒子径が10μm以下である非晶質シリカと水溶性樹脂とを含む塗布液の塗布により多孔構造を有する層を形成し、多孔構造に吸湿剤を含む溶液を付与し、多孔構造内に吸湿剤を含浸させることで吸湿層を形成する。
【0064】
(多孔構造を有する層の形成)
塗布液は、非晶質シリカ、水溶性樹脂、及び必要に応じて分散剤や水、架橋剤などの多の成分を混合し、分散処理することで調製することができる。
例えば、顔料である気相法シリカ粒子と分散剤とを水中に添加し、高速回転湿式コロイドミル(例えばエム・テクニック(株)製のクレアミックス)や液液衝突型分散機(例えばスギノマシン社製のアルティマイザー)を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転条件下、所定の時間(好ましくは10〜30分間)かけて分散させた後、架橋剤(例えばホウ酸)、水溶性樹脂(好ましくはポリビニルアルコール水溶液)を加え、更に必要に応じて他の成分を加えて、上記と同様の回転条件下、分散させることで調製することができる。
得られる塗布液は、均一性の高いゾル状の液であり、塗布液を塗布法により支持体上に塗布し乾燥させることにより、三次元網目構造を有する多孔構造の吸湿層を形成することができる。
【0065】
また、非晶質シリカと分散剤を含有する水分散物の調製は、非晶質シリカ水分散液をあらかじめ調製し、この水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を非晶質シリカ水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、非晶質シリカ水分散液ではなく、粉体の非晶質シリカを用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
非晶質シリカと分散剤とを混合した後、得られた混合液を分散機で細粒化することで、平均粒子径20nm〜5000nmの水分散液を得ることができる。特に、非晶質シリカとして気相法シリカを用いる場合には、平均粒子径20nm〜100nmの水分散液を得ることができる。
分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等、従来公知の各種の分散機を使用することができる。中でも、撹拌型分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機が好ましい。
【0066】
塗布液の調製には、溶媒を用いることができる。溶媒の例として、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0067】
塗布は、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等を用いた塗布法により行える。
【0068】
塗布液の塗布後は、吸湿層は減率乾燥を示すようになるまで乾燥される。乾燥は、一般に40℃〜180℃で0.5分〜10分(好ましくは0.5分〜5分)の範囲で行うことができる。
【0069】
多孔構造の吸湿層を形成する場合、塗布液を塗布し乾燥させて多孔構造を有する層(塗布層)を形成した後、形成された層に、塩基性化合物を含む溶液を付与してもよい。このようにすることで、良好な細孔構造を有する多孔構造が得られる。
塩基性化合物を含む溶液の付与方法としては、吸湿層上にさらに塗布する方法、スプレー等の方法により噴霧する方法、塩基性化合物を含む溶液中に塗布層が形成された支持体を浸漬する方法等を挙げることができる。
【0070】
塩基性化合物を含む溶液は、塩基性化合物の少なくとも1種を含有する。
塩基性化合物としては、弱酸のアンモニウム塩、弱酸のアルカリ金属塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、弱酸のアルカリ土類金属塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウムなど)、ヒドロキシアンモニウム、1〜3級アミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリへキシルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミンなど)、1級〜3級アニリン(例えば、ジエチルアニリン、ジブチルアニリン、エチルアニリン、アニリンなど)、置換基を有してもよいピリジン(例えば、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)−アミノピリジンなど)、等が挙げられる。
【0071】
また、上記の塩基性化合物とともに、他の塩基性物質及び/又はその塩を併用してもよい。他の塩基性物質としては、例えば、アンモニアや、エチルアミン、ポリアリルアミン等の第一アミン類、ジメチルアミン等の第二アミン類、N−エチル−N−メチルブチルアミン等の第三アミン類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
【0072】
上記のうち、特に弱酸のアンモニウム塩が好ましい。弱酸とは、化学便覧基礎編II(丸善株式会社)等に記載の無機酸及び有機酸でpKaが2以上の酸である。弱酸のアンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。中でも、好ましくは炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウムであり、乾燥後において層中に残存せずインク滲みを低減できる点で効果的である。なお、塩基性化合物は、2種以上を併用することができる。
【0073】
塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の「塩基性化合物を含む液」中における含有量は、「塩基性化合物を含む液」の全質量(溶媒を含む)に対し、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。塩基性化合物(特に弱酸のアンモニウム塩)の含有量が上記の範囲内であると、硬化度が良好でアンモニア濃度が高くなり過ぎて作業環境を損なうこともない。
【0074】
塩基性化合物を含む液は、必要に応じて、金属化合物、架橋剤、他の媒染剤成分、界面活性剤等をさらに含有することができる。
塩基性化合物を含む液は、アルカリ溶液として用いられることで膜の硬化を促進する。塩基性化合物を含む液のpH(25℃)は、7.1以上が好ましく、より好ましくはpH8.0以上であり、更に好ましくはpH9.0以上である。pHが7.1以上であると、塗布液に含まれる水溶性樹脂の架橋反応をより促し、層のひび割れがより効果的に抑制される。
【0075】
塩基性化合物を含む液は、例えば、イオン交換水に、架橋剤(例:ホウ素化合物、例えば0.1質量%〜1質量%)、及び塩基性化合物(例:炭酸アンモニウム;例えば1質量%〜10質量%)と、必要に応じて界面活性剤等の添加剤と、を添加し、攪拌することで調製することができる。
【0076】
塩基性化合物を含む液を塗布によって付与する場合の塗布方法としては、吸湿層形成用に用いる塗布液の塗布方法と同様の方法を挙げることができる。中でも、塩基性化合物を含む溶液を塗布する場合、塗布形成された塗布層にコーターが直接接触しない方法を選択することが好ましい。
【0077】
塩基性化合物を含む溶液の付与量としては、吸湿層の吸湿能の点で、吸湿剤の付与量が1g/m以上20g/m以下となる量が好ましく、吸湿剤の付与量が3g/m以上12g/m以下となる量がより好ましい。
【0078】
塩基性化合物を含む溶液の付与後は、一般に40℃〜180℃で0.5分〜30分間加熱され、乾燥及び硬化が行われる。中でも、40℃〜150℃で1分〜20分間加熱することが好ましい。例えば、上記溶液がホウ素化合物として硼砂や硼酸を含有する場合には、60℃〜100℃での加熱を0.5分〜15分間行うことが好ましい。
【0079】
また、塩基性化合物を含む溶液は、吸湿層形成用の塗布液を塗布すると同時に付与してもよい。この場合、塗布液と塩基性化合物を含む溶液とを、塗布液が支持体と接触するようにして支持体上に同時塗布(重層塗布)し、その後、乾燥硬化させることで、多孔構造を有する層とすることができる。
【0080】
同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行うことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40℃〜150℃で0.5分〜10分加熱することにより行われる。好ましくは、40℃〜100℃で0.5分〜5分加熱することで行われる。例えば、塩基性化合物を含む溶液に含有する架橋剤としてホウ砂やホウ酸を用いる場合、60℃〜100℃で5分〜20分の加熱を行うことが好ましい。
【0081】
(吸湿層の形成)
上記のようにして、多孔構造を有する層を形成した後、この層に、吸湿剤を含む溶液を付与し、多孔構造内に吸湿剤を含浸させることにより吸湿層が形成される。
吸湿剤を含む溶液の付与は、吸湿層上に溶液を塗布する方法、スプレー等の方法により溶液を噴霧する方法、多孔構造を有する層を溶液中に浸漬する方法、等が挙げられる。
塗布により吸湿剤を含む溶液を付与する場合、塗布法としては、吸湿層形成用に用いる塗布液の塗布方法と同様の方法を挙げることができる。
【0082】
吸湿剤を含む溶液は、吸湿剤の少なくとも1種を含有し、必要に応じて、界面活性剤や溶媒等の他の成分を含んでもよい。
吸湿剤を含む液は、例えば、イオン交換水に、吸湿剤(例えば無機塩)、及び必要に応じて界面活性剤等の添加剤を添加し、攪拌することで調製することができる。
【0083】
吸湿剤を含む溶液の付与量としては、吸湿層の吸湿量、吸湿速度の観点から、吸湿剤の付与量が1g/m以上20g/m以下となる量が好ましく、吸湿剤の付与量が3g/m以上12g/m以下となる量がより好ましい。
【0084】
吸湿剤を含む溶液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥および硬化が行われる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。例えば、上記溶液がホウ素化合物として硼砂や硼酸を含有する場合には、60〜100℃での加熱を0.5〜15分間行うことが好ましい。
【0085】
−積層工程−
本発明における積層工程は、上記の吸湿層形成工程において、吸湿剤が含浸されて形成された吸湿層の上に、上記のポリマー層及び防湿層の他方を積層する。
【0086】
例えば防湿層(又はポリマー層)の形成方法としては、特に制限されるものではなく、ポリマー層(又は防湿層)上に設けられた吸湿層の上に、防湿性を有する材料(又は透湿性を有する材料)の貼り合せにより形成してもよい。また、防湿性を有する材料(又は透湿性を有する材料)を含む塗布液を調製し、塗布液を吸湿層の上に塗布して防湿層(又はポリマー層)としてもよい。
【0087】
<包装材料>
本発明における吸湿材料は、包装材料として用いてもよく、包装材料の形態としては、袋状であってもよい。
包装材料として用いる場合、以下に示す態様として用いてもよい。
本発明の第1の態様に係る包装材料は、1つの吸湿材料Aのポリマー層の一部と、吸湿材料Aの他の一部と、が接着された接着部位を有し、吸湿材料を包装内部に入れる態様に形成されてもよい。
本発明の第2の態様に係る包装材料は、複数の吸湿材料から選ばれる、第1の吸湿材料のポリマー層の一部と、第1の吸湿材料と異なる第2の吸湿材料の一部と、が接着された接着部位を有し、吸湿材料を包装内部に入れる態様に形成されてもよい。
【0088】
本発明における吸湿材料は、例えば図2に示すように、1枚の吸湿材料11を折り曲げて、吸湿材料11のポリマー層の一部と、吸湿材料11の他の一部と、を接着し、袋状にして用いてもよい。この場合、図4図5に示されるように、1枚の吸湿材料11を折り曲げて重なり合ったポリマー層16同士を熱圧着等により接着することで袋状に成形することができる。図2及び図4に示す接着部位12は、図5に示すような積層構造となっている。図5は、図4の接着部位12の層構成を拡大して示す拡大断面図である。
【0089】
また、図3に示すように、複数の吸湿材料から選ばれる第1の吸湿材料21のポリマー層の一部と、第1の吸湿材料21と異なる第2の吸湿材料31の一部とを接着し、袋状にして用いてもよい。この場合、2枚の吸湿材料を互いのポリマー層16が接するように重ね、一方の吸湿材料(例えば吸湿材料21)の防湿層側から熱を付与し圧着等して接着することで袋状に成形できる。
【0090】
更に、包装材料の他の例として、図6に示すように、あらかじめ吸湿材料11を成形することにより、収納部となる凹部51が成形された吸湿材料11と、吸湿材料11の凹部51の開口面側における凹部非形成部でポリマー層16と接着された板状の相手基材41と、で構成された包装材料であってもよい。この場合、吸湿材料11の防湿層13側から熱を付与して圧着等することで、吸湿材料11と相手基材41と接着させて収容部を有する包装材料とすることができる。
具体例には、本発明の包装材料は、薬等の包装に用いられるブリスターパック(PTP包装ともいう)として利用される。
【0091】
熱の付与は、加熱した棒や板を接触させて加熱したり、加熱圧着することによる熱板シールのほか、インパルスシール、超音波シールにより行うことができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0093】
(実施例1)
<吸湿層の形成>
−吸湿層形成用塗布液の調製−
下記組成に示す(1)気相法シリカ1、(2)イオン交換水、(3)シャロールDC−902P、及び(4)ジルコゾールZA−30を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた(この工程を適宜、シリカ分散処理と称する)、その後、得られた分散液を45℃に加熱し、20時間保持した。その後、分散液を30℃に保持し、分散液に(5)ホウ酸水溶液及び(6)ポリビニルアルコール(PVA)溶解液を加え、吸湿層形成用塗布液を調製した。
【0094】
(吸湿層形成用塗布液の組成)
(1)気相法シリカ1(非晶質シリカ) … 8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製、平均1次粒子径:7nm、平均2次粒子径:20nm)
(2)イオン交換水 … 47.3部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液) … 0.8部
(分散剤、含窒素有機カチオンポリマー、第一工業製薬(株)製)
(4)「ジルコゾールZA−30」 … 0.5部
(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニル)
(5)ホウ酸(5%水溶液) … 6.6部
(6)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 … 26.0部
【0095】
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・JM33 … 1.81部
(ポリビニルアルコール;けん化度95.5%、重合度3300、日本酢ビ・ポバール(株)製)
・HPC−SSL … 0.08部
(水溶性セルロース、日本曹達(株)製)
・イオン交換水 … 23.5部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル … 0.55部
(ブチセノール20P、協和発酵ケミカル(株))
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) … 0.06部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」)
【0096】
−吸湿層の形成−
ポリマー層として下記表1に示した厚みの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のシート(以下、LLDPEシートともいう)を用意した。このLLDPEシート上に、上記で得られた吸湿層形成用塗布液をエクストルージョンダイコーターにて、塗布量が165g/mとなるように塗布した。
塗布により形成された塗布層を、熱風乾燥機にて80℃で(風速3m/秒〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が36%になるまで乾燥させた。乾燥させている間の塗布層は、恒率乾燥を示した。乾燥終了の直後、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬し、塩基性化合物を含む液を、塗布層に13g/mを付着させた。さらに、72℃の環境下で10分間乾燥させ、多孔構造を有する層を形成した。
その後、形成された層に、以下に示す組成の吸湿剤塗布液をエクストルージョンダイコーターにより、塗布量を50g/m(CaCl付与量:7g/m)として塗布し、熱風乾燥機にて80℃(風速3m/秒〜8m/秒)で乾燥し、厚み40μmの吸湿層を得た。
形成された吸湿層は、空隙率が60%であり、平均細孔径が20nmであった。
【0097】
(塩基性化合物を含む液の組成)
(1)ホウ酸 … 0.65部
(2)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製) … 5.0部
(3)イオン交換水 … 93.75部
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) … 0.6部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」)
(吸湿剤塗布液の組成)
(1)イオン交換水 … 85.4部
(2)塩化カルシウム(CaCl;吸湿剤) … 14部
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) … 0.6部
(花王(株)製、「エマルゲン109P」)
【0098】
−防湿層の貼合−
防湿層であるシリカ蒸着PET(テックバリアMX、三菱樹脂社製)のシリカ蒸着面に、東洋インキ社製の接着剤(ウレタン樹脂系接着剤:LIS−073−50U、硬化剤:CR−001)を、乾燥後の塗布量が下記表1に示す厚みになるように塗布し、吸湿層を形成した上記のポリマー層の、吸湿層形成面側が接着剤に接するようにして、シリカ蒸着PET上にポリマー層を重ね、ドライラミネートすることにより貼り合せた。このようにして、本発明の吸湿材料を得た。
得られた吸湿材料は、LLDPEシート/吸湿層/接着剤層/(蒸着面)シリカ蒸着PETの積層構造に構成されている
なお、下記表1において、例えば、接着剤塗布量3g/mは接着剤の厚み3μmに、接着剤塗布量15g/mは接着剤の厚み15μmに、それぞれ相当する。表1中の「接着剤の厚み」の欄の数値の単位は「μm」である。
【0099】
−吸湿材料の成形−
上記で得られた吸湿材料を、ホットプレートにより130℃で2秒間、予備加熱した後、100℃に加熱した凹凸型の間に挟み込むことにより、図6に示すように凹状の収容部が成形された成型品を作製した。
【0100】
−評価−
上記のようにして得た吸湿材料及び成型品に対して、以下の評価を行った。評価結果は、下記表1に示す。
【0101】
<平均細孔径>
平均細孔径の測定は、島津オートポア9220(株式会社島津製作所製)を用いて水銀圧入法により行った。
【0102】
<粒子径の測定>
得られた吸湿層の表面を電子顕微鏡(JEM2100、日本電子社製)にて観察し、表面の任意の位置にある100個のシリカ粒子について、それぞれその投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの、個々の粒子の直径を求め、100個のシリカ粒子の直径を単純平均することで平均1次粒子径を求めた。
また、得られた吸湿層の表面を電子顕微鏡(S−4700、HITACHI社製)にて加速電圧10kVにて観察し、表面の任意の位置にある100個の凝集粒子について、それぞれその投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の凝集粒子の直径を単純平均することで平均2次粒子径を求めた。
【0103】
<透明性>
吸湿材料の全光透過率を、ヘーズメータHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて測定し、下記基準で評価した。
<評価基準>
A:全光透過率が80%以上
B:全光透過率が70%以上80%未満
C:全光透過率が60%以上70%未満
D:全光透過率が60%未満
【0104】
<視認性>
吸湿材料の視認性評価は、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクそれぞれについて12ポイントの明朝体の「鷹」の字が並んだ画像を吸湿材料のポリマー層側に配置し、防湿層側から見た際の「鷹」の字の視認性を下記基準で評価した。
<評価基準>
A:吸湿材料が透明であるため、「鷹」の字を十分視認できる。
B:「鷹」の字を視認できる。
C:「鷹」の字をかろうじて視認できる。
D:吸湿材料が不透明であるため、「鷹」の字を視認するのが難しい。
【0105】
<吸湿容量>
吸湿材料の吸湿容量は、以下のように評価した。
100mm×100mmサンプルを60℃10%RHの恒温恒湿槽内に1時間保管し、乾燥させた。23℃50%RH環境に移した直後の質量を測定し、乾燥状態の質量とした。その後、経時による質量変化を測定し、質量変化がなくなった時の質量から吸湿容量を求めた。
<評価基準>
A:23℃50%RHでの吸湿容量が10g/m以上である。
B:23℃50%RHでの吸湿容量が6g/m以上10g/m未満である。
C:23℃50%RHでの吸湿容量が3g/m以上6g/m未満である。
D:23℃50%RHでの吸湿容量が3g/m未満である。
【0106】
<吸湿速度>
得られた吸湿材料の吸湿速度は、以下のように評価した。
100mm×100mmサンプルを60℃10%RHの恒温恒湿槽内に1時間保管し、乾燥させた。23℃50%RH環境に移した直後の質量を測定し、乾燥状態の質量とした。その後、経時による質量変化からサンプルの吸水量を測定し、吸水開始から飽和するまでの時間を吸湿速度とした。
【0107】
<空隙率>
吸湿層の空隙量(ml/m)と厚み(μm)とから単位厚み当たりの空隙量を算出し、空隙率を求めた。
ここで、吸湿層の厚みは、光学顕微鏡により観察した結果から求めた。また、吸湿層の空隙量は、吸湿層上にジエチレングリコール1mlを滴下し、1分間経過後に滴下面を布で拭き、滴下前後での重量変化(単位面積当たり吸収液量)を算出した。この算出値を空隙量とした。
【0108】
<割れ>
得られた成形品を目視で観察し、吸湿層におけるひび割れの有無を下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:ひび割れの発生はない。
B:ひび割れがごく僅かに発生しているが、通常の取り扱いでは支障を来たさない程度である。
C:ひび割れが僅かに発生しているが、許容できる程度である。
D:ひび割れの発生が著しく認められ、実用上許容できない程度である。
【0109】
(実施例2)
実施例1において、シリカ分散処理を液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)から、ビーズミル分散機(ダイノミルKDP、シンマルエンタープライズ社製)に代えて下記条件として得られた気相法シリカ2(平均1次粒子径7nm、平均2次粒子径:26nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸湿層を形成した。
(シリカ分散処理条件)
・ビーズ種:ジルコニアビーズ
・ビーズ径:1.0mmφ
・ビーズ充填率:80%
・周速:8m/sec
・処理回数:2回
・吐出流量:590g/min
また、実施例1aと同様に防湿層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0110】
(実施例3)
実施例1において、(1)気相法シリカ1(AEROSIL300SF75 日本アエロジル(株)製、平均1次粒子径:7nm)を気相法シリカ3(AEROSIL200 日本アエロジル(株)製、平均1次粒子径:12nm、平均2次粒子径:30nm)に変更した以外は実施例1と同様にしてシリカ分散処理を行い、吸湿層を形成した。また実施例1と同様に防湿層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0111】
(実施例4)
実施例1において、ポリマー層(材質:LLDPE)の厚みを120μmにする以外は実施例1と同様にして吸湿層を形成した。また、実施例1aと同様に防湿層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0112】
(実施例5)
実施例1において、接着剤層の塗布量を2g/m(厚み2μm相当)とする以外は実施例1aと同様にして吸湿材料を形成すると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0113】
(比較例1)
実施例1において、吸湿剤塗布液を付与しなかった以外は、実施例1aと同様にして吸湿層を形成した。また、実施例1aと同様に防湿層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0114】
(比較例2)
実施例1において、吸湿層形成用塗布液から、(5)ホウ酸(5%水溶液)と(6)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液を除いた以外は、実施例1aと同様にして吸湿層を形成すると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0115】
(比較例3)
実施例1において、(1)気相法シリカ1(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製、平均1次粒子径7nm、平均2次粒子径20nm)を、シリカゲル(P78D、水澤化学(株)製、平均2次粒子径:12μm)に変更した以外は、実施例1aと同様にして吸湿層を形成した。また、実施例1aと同様に防湿層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
表1に示すように、実施例は、透明性及び視認性に優れ、吸湿容量が大きい吸湿材料であることがわかる。また、ポリマー層の厚みにより吸湿速度を調節することができることがわかる。
これに対し、吸湿剤を含まない比較例1は吸湿容量が小さく、透明性と吸湿容量を両立できるものではないことがわかる。また、水溶性樹脂及び架橋剤を含まない比較例2は吸湿層を形成することができず、吸湿層に粗大なシリカゲルを用いた比較例3は2次粒子径が大きいため透明性及び視認性に劣ることがわかる。
【0118】
(実施例6)
防湿層であるシリカ蒸着PET(テックバリアMX、三菱樹脂社製)のシリカ蒸着面に、実施例1と同様に調製した吸湿層形成用塗布液をエクストルージョンダイコーターにて、塗布量165g/mとなるように塗布し、実施例1と同様の手順で厚み40μmの吸湿層を形成した。また、ポリマー層として下記表2に示した厚みのLLDPEシートを用意した。このLLDPEシート上に、東洋インキ社製の接着剤(ウレタン樹脂系接着剤:LIS−073−50U、硬化剤:CR−001)を、乾燥後の塗布量が下記表2に示す厚みになるように塗布し、吸湿層を形成した防湿層の、吸湿層形成面側が接着剤に接するようにして、シリカ蒸着PET上に防湿層を重ね、にドライラミネートすることで貼り合せた。このようにして、本発明の吸湿材料を得た。さらに、成型品を作製した。
得られた吸湿材料は、LLDPEシート/接着剤層/吸湿層/(蒸着面)シリカ蒸着PETの積層構造に構成されている
得られた吸湿材料及び成型品について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は下記表2に示す。
【0119】
(実施例7)
実施例6において、実施例2と同様のシリカ分散処理を行なって得られた気相法シリカ2を用いたこと以外は、実施例6と同様にして吸湿層を形成した。
また、実施例6aと同様にポリマー層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0120】
(実施例8)
実施例6において、(1)気相法シリカ1を、気相法シリカ3(AEROSIL200 日本アエロジル(株)製、平均1次粒子径:12nm、平均2次粒子径:30nm)に変更した以外は、実施例6と同様にしてシリカ分散処理を行い、吸湿層を形成した。また、実施例6と同様にポリマー層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0121】
(実施例9)
実施例6と同様にして吸湿層を形成し、ポリマー層の厚みを120μmにする以外は、実施例6aと同様にして吸湿材料を形成すると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0122】
(実施例10)
実施例6において、接着剤層の塗布量を2g/m(厚み2μm相当)とする以外は、実施例6aと同様にして吸湿材料を形成すると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0123】
(比較例4)
実施例6において、吸湿剤塗布液を付与しなかった以外は実施例6と同様にして吸湿層を形成した。また、実施例6aと同様にポリマー層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0124】
(比較例5)
実施例6において、吸湿層形成用塗布液から、(5)ホウ酸(5%水溶液)と(6)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液を除いた以外は、実施例6aと同様にして吸湿層を形成すると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0125】
(比較例6)
実施例6において、(1)気相法シリカ1を、シリカゲル(P78D、水澤化学(株)製、平均2次粒子径:12μm)に変更した以外は、実施例6と同様にして吸湿層を形成した。また、実施例6aと同様にポリマー層を貼り合せ、吸湿材料とすると共に成型品を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
表2に示すように、実施例は、透明性及び視認性に優れ、吸湿容量が大きい吸湿材料であることがわかる。また、接着剤の塗布量及びポリマー層の厚みにより吸湿速度を調節することができることがわかる。
これに対し、吸湿剤を含まない比較例4は吸湿容量が小さく、透明性と吸湿容量を両立できるものではないことがわかる。また、水溶性樹脂及び架橋剤を含まない比較例5は吸湿層を形成することができず、吸湿層に粗大なシリカゲルを用いた比較例6は2次粒子径が大きいため透明性及び視認性に劣ることがわかる。
【0128】
(実施例11〜15)
実施例1において、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)の種類及び量、吸湿層の厚み、空隙率を下記表3に示すように変更し、架橋剤であるホウ酸を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして吸湿材料を得、さらに成型品を作製した。得られた吸湿材料及び成型品について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は下記表3に示す。
【0129】
(実施例16〜18)
実施例1において、非晶質シリカを湿式シリカ(ミズカシルP705、水澤化学工業社製)に代え、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)の種類及び量、架橋剤の有無を下記表3に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして吸湿材料を得、さらに成型品を作製した。得られた吸湿材料及び成型品について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は下記表3に示す。
【0130】
(実施例19〜23)
実施例1において、水溶性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)の種類及び量、架橋剤の有無を下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、吸湿材料を得、さらに成型品を作製した。得られた吸湿材料及び成型品について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は下記表3に示す。
【0131】
(実施例24)
実施例1において、吸湿剤である塩化カルシウムを硫酸マグネシウムに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、吸湿材料を得、さらに成型品を作製した。得られた吸湿材料及び成型品について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は下記表3に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
表3に示すように、各実施例において、透明性及び視認性に優れ、吸湿性が高くかつ吸湿容量の大きい吸湿材料が得られた。
【符号の説明】
【0134】
11・・・吸湿材料
12・・・接着部位
13・・・防湿層
14・・・接着剤層
15・・・吸湿層
16・・・ポリマー層
21・・・第1の吸湿材料
31・・・第2の吸湿材料
41・・・相手基材
51・・・凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6