(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、塗料、土木接着、電気用途に広く利用されているが、特にビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂の高分子量タイプであるBPA型フェノキシ樹脂と呼ばれる樹脂は、塗料用ワニスのべース樹脂、フィルム成形用のベース樹脂として用いられたり、エポキシ樹脂ワニスに添加して流動性の調整や硬化物としたときの靭性改良を行なうために用いられたり、また臭素原子を骨格中に有するものは、熱可塑性樹脂に配合して難燃剤として使用されたりする。
【0003】
一方、電気・電子機器に使用される電子回路基板の場合、機器の小型化、軽量化、高機能化に伴い、特に多層プリント配線板に対して、更なる高多層化、高密度化、薄型化、軽量化、高信頼性、成形加工性が要求されている。この要求に対して、ビルドアップ法など新しい多層プリント配線板の製造方法が開発されてきており、これらに適した高性能のエポキシ樹脂が求められている。
【0004】
従来、多層電気積層板用樹脂としては、主にテトラブロモビスフェノールA(TBBA)構造を有する臭素含有エポキシ樹脂が使用されている。しかし、近年の環境問題よりハロゲンを含有しない材料が求められている。この対応としてBPA型エポキシ樹脂や多官能型エポキシ樹脂の使用が提案されているが、耐熱性や成形性あるいは電気特性において満足できるものではない。そこでこれらの要求を満たし実質的にハロゲンを含有しないエポキシ樹脂が望まれている。
【0005】
エポキシ樹脂にBPA型高分子量エポキシ樹脂やフェノキシ樹脂を添加して成形性や物性の改良をする提案も行なわれている。このことは、具体的には、特許文献1、特許文献2などにも記載されている。特許文献1にはエポキシ当量100〜1000のエポキシ樹脂にビスフェノールAとエピクロロヒドリンから製造されたフェノキシ樹脂を添加することが記載されており、また、特許文献2には重量平均分子量10000以上のビスフェノール型エポキシ樹脂にエポキシ当量500以下のビスフェノール型エポキシ樹脂を配合することが記載されているが、これらの特許文献にはビスフェノールSタイプの高分子量エポキシを使用するという記載は無い。また、特許文献3には、高分子量エポキシの原料とする2官能エポキシ樹脂の1つとしてビスフェノールS型エポキシ樹脂の記載があるが、ビスフェノールSの純度やビスフェノールS骨格の含有量についての記載は無く、更にはビスフェノールS含有高分子エポキシ樹脂としての特徴についての記載は無い。また、高耐熱化の対応として特許文献4には、高分子量エポキシの原料フェノールとして高純度のビスフェノールSを使用することが提案されているが、耐熱性が十分ではなく、耐水性が悪く、高度な品質要求に対応できるものではなかった。特許文献5では、スルホン基含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のメチル基の量を制御することで耐水性や耐熱性を改良する提案もされたが、要求特性の高まりに対応できるものではなかった。
電子回路基板用組成物に、これまで知られている高分子量エポキシ樹脂やフェノキシ樹脂(ポリヒドロキシポリエーテル樹脂と同義)を添加した場合、成形性、可撓性、耐衝撃性、接着性を良くする事ができるが、電子回路基板とした時の、耐水性や耐熱性や絶縁特性が悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来の高分子量エポキシ樹脂やフェノキシ樹脂の種々の問題点を解決して耐熱性、成形性、可撓性、耐衝撃性、接着性に優れた、特には電子回路基板用組成物を得るために必要な、臭素を含まない高分子量エポキシ樹脂および該高分子量エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、臭素を含まない芳香族環または
インダニル基を置換基とするビスフェノ−ルS類を含有する高分子量エポキシ樹脂、該高分子量エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物及び該エポキシ樹脂組成物よりなる電子回路基板用組成物であり、以下の発明より選択される。
(1)
下記式(1)で表される重量平均分子量が10,000〜200,000である高分子量エポキシ樹脂。
【化1】
(式中、X及びYは2価の有機残基であり、n個あるYの内少なくとも1つは下記式(2)で表される基である。Gはグリシジル基である。nは繰り返し数である。)
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に、芳香族環及び/又はインダニル基を有する置換基である。jは0〜3の整数であり、kは0〜4の整数である。)
【0009】
(2)
上記Rがイン
ダニル基、α−メチルベンジル基、フェニル基、ナフチル基から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)項の高分子量エポキシ樹脂。
(3)
上記Yの少なくとも1つが下記式(2a)で表される2価の基であることを特徴とする前記(1)項〜(2)項のいずれか1項に記載の高分子量エポキシ樹脂。
【化3】
【0010】
(4)
上記Yが下記式(2b)で表される2価の基であって、Yがn個の時にR3の合計が0.5n〜3n個であることを特徴とする前記(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の高分子量エポキシ樹脂。
【化4】
(式中、R3はそれぞれ独立に、インダニル基又はα−メチルベンジル基である。kは0〜4の整数である。)
(
5)
上記Xが、
それぞれ独立に、下記式(3)であることを特徴とする前記(1)〜(
4)のいずれか1項に記載の高分子量エポキシ樹脂。
【化5】
(式中、Eは、それぞれ独立に、下記式(3a)、式(3b)又は2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−フェニレン基のいずれかである。mは0〜3の整数である。)
【化6】
(式中、Zはメチレン基、ジメチルメチレン基又はフルオレニレン基である。R2は水素原子又はメチル基である。pは0又は1である。)
【化7】
(式中、R1はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。kは0〜4の整数である。)
(6)2官能エポキシ樹脂(X)と2価フェノ−ル化合物(Y)とを触媒の存在下に重合反応させて得られる重量平均分子量が10,000〜200,000である高分子量エポキシ樹脂であって、2価フェノ−ル化合物(Y)が4,4’−ビスフェノ−ルS1モルに対してインデン及び/又はスチレンの合計で0.5〜3.0モルを反応させて得られるフェノ−ル樹脂及びそれ以外の2価フェノ−ル化合物からなることを特徴とする高分子量エポキシ樹脂。
【0011】
(
7)前記(1)〜(
6)のいずれか1項に記載の高分子量エポキシ樹脂、当該高分子量エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
(
8)
上記エポキシ樹脂硬化剤の少なくとも1つが多官能フェノ−ル樹脂であることを特徴とする前記(
7)項記載のエポキシ樹脂組成物。
【0012】
(
9)前記(
7)項〜(
8)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物から得られる硬化性接着フィルム。
【0013】
(
10)前記(
7)項〜(
8)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を金属箔に塗工、必要に応じて乾燥して得られる樹脂付き金属箔。
(
11)前記(
7)項〜(
8)に記載のエポキシ樹脂組成物をガラスクロスに含浸、必要に応じて乾燥して得られるプリプレグ。
【0014】
(
12)前記(
7)項〜
(8)項のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、または前記(
9)項記載の硬化性接着フィルム、または前記(
10)項記載の樹脂付き金属箔、または前記(
11)項記載のプリプレグを硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
(13)前記(1)に記載の高分子量エポキシ樹脂の製造方法であって、下記式(4)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(5)で表される置換基含有ビスフェノ−ルS類を含む2価フェノ−ル化合物とを、触媒の存在下で重合反応させることを特徴とする高分子量エポキシ樹脂の製造方法。
【化8】
(式中、Eは2価の有機残基である。Gはグリシジル基である。iは繰り返し数で、平均値は0〜2である。)
【化9】
(式中、Rはそれぞれ独立に、芳香族環及び/又は縮合環を有する置換基である。jは0〜3の整数であり、kは0〜4の整数である。)
(14)上記Eが下記式(3a)、式(3b)及び2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−フェニレン基のいずれかから選ばれることを特徴とする前記(13)記載の高分子量エポキシ樹脂の製造方法。
【化10】
(式中、Zはメチレン基、ジメチルメチレン基又はフルオレニレン基である。R2は水素原子又はメチル基である。pは0又は1である。)
【化11】
(式中、R1はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。kは0〜4の整数である。)
(15)
上記置換基含有ビスフェノ−ルS類が、3、3’−ジフェニル−4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン又は4,4’−ビスフェノ−ルS 1モルに対してインデン及び/又はスチレンの合計モルで0.5〜3.0モルを反応させて得られるフェノ−ル樹脂であることを特徴とする前記(13)又は(14)に記載の高分子量エポキシ樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高分子量エポキシ樹脂及び当該高分子量エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物により製造された電子回路基板は、耐熱性(ガラス転移温度)、耐水性および接着性が総合的に著しく優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の高分子量エポキシ樹脂を得るために使用する2官能エポキシ樹脂(X)は、分子内に2個のエポキシ基を持つ化合物であればどのようなものでもよく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどの単環2価フェノールのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、2価アルコールのジグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸などの2価カルボン酸のジグリシジルエステルなどが挙げられる。また、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの置換基で置換されたこれらのものが挙げられる。
【0017】
これらのエポキシ樹脂の中で好ましいものは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、または4,4’−(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビスフェノールから選ばれる2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応によって得られるエポキシ樹脂である。これらのエポキシ樹脂は複数種を併用して使用することもできる。
【0018】
また、使用する2官能エポキシ樹脂(X)のエポキシ基純度は、90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%であり、さらに好ましくは98%〜100%である。90%未満だと、製造される高分子量エポキシ樹脂が十分に高分子量化しなくなり、好ましくない。不純物としてのαジオール濃度や全塩素濃度はいずれも少ないことが好ましいが、どちらか一方が多くても、もう一方が少なくて全体のエポキシ基純度が前述の範囲に入っていれば本発明の高分子量エポキシ樹脂を得ることができる。
【0019】
なお、エポキシ基純度は式(1)で求める。
【0021】
E=エポキシ当量(g/eq)
A=αジオール濃度(meq/100g)
C=全塩素濃度(重量%)
【0022】
具体的には、エポキシ当量(E)=187g/eq、αジオール濃度(A)=6.0meq/100g、全塩素濃度(C)=0.16重量%のエポキシ樹脂の場合、式(1)より、エポキシ基純度(%)=98.1%と求められる。また、エポキシ当量(E)=187g/eq、αジオール濃度(A)=15.0meq/100g、全塩素濃度(C)=0.11重量%のエポキシ樹脂の場合、式(1)より、エポキシ基純度(%)=96.7%と求められる。
【0023】
本発明の高分子量エポキシ樹脂を得るために使用するビスフェノ−ルS類としてはフェニル基、ナフチル基、α−メチルベンジル基などの芳香族環や
インダニル基な
どから選ばれた少なくとも一種を置換基として有することが必須で、これらの置換基を含まないビスフェノ−ルSを用いた高分子量エポキシ樹脂では耐水性が劣り、溶剤溶解性も悪い場合が多い。置換基の数によって耐水性はより良くなり、置換基の種類によっても、より満足いく耐水性が得られる。このうち、フェニル基、ナフチル基、
インダニル基、及び、α−メチルベンジル基のいずれかから選ばれる置換基が好ましい。具体的に芳香族環または
インダニル基を置換基とするビスフェノ−ルS類は、3,3’−ジフェニル−4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホンや4,4‘−ビスフェノ−ルSの1モルに対して、インデン及び/またはスチレンの合計で0.5〜3.0モルを反応させて得られるフェノ−ル樹脂類が好ましい。
【0024】
4,4’−ビスフェノールS等にインデン及び/またはスチレンを反応させる際の置換モル数は、4,4’−ビスフェノールS等の1モルに対するベンゼン環に結合する水素のモル数の範囲内にあればよい。なお、いずれかの原料が未反応で残る反応条件を採用することもできるが、4,4’−ビスフェノールS等の1モルに対するインデン及び/またはスチレンの合計の使用量は0.5〜3.0モルの範囲とすることが好ましい。いずれかの反応成分が未反応で残る場合は、未反応成分を分離することが望ましいが、ビスフェノールS類は残存したままでも差し支えない。また、インデンまたはスチレンを多量に使用すると、未反応のインデンまたはスチレンが残存し、インデンまたはスチレンの重合体が生成する場合があり、高分子量エポキシ樹脂としての耐熱性や難燃性を低下させる原因となるため、インデンまたはスチレンの未反応成分は分離することが望ましい。
【0025】
また、本発明で用いる置換基含有ビスフェノールS類のモノマー純度は96重量%以上のものがよく、好ましくは、98重量%以上である。純度が96重量%未満では、得られる高分子量エポキシ樹脂が十分に高分子量化しなくなり、好ましくない。
【0026】
また、本発明で用いる置換基含有ビスフェノールS類は、耐熱性、耐水性の向上に寄与するので、2価フェノール化合物(Y)中に0重量部を超える含有率であれば効果を発現するが、好ましくは10〜100重量%であり、より好ましくは50〜100重量%であり、さらに好ましくは75〜100重量%である。
【0027】
本発明の高分子量エポキシ樹脂を得る際に使用する2価フェノール化合物(Y)における置換基含有ビスフェノールS類以外の2価フェノール成分としては、2個の水酸基が芳香族環に結合したものであればどのようなものでもよい。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールD、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、ビフェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。また、これらの2価フェノール類のアルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの置換基で置換されたものが挙げられる。これらの2価フェノールの中で好ましいものは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、4,4’−(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビスフェノールである。これらの2価フェノール化合物は複数種を併用して使用することもできる。なお、これらの2価フェノール化合物の純度は96重量%以上のものがよく、好ましくは、98重量%以上である。純度が96重量%未満では、製造される高分子量エポキシ樹脂が十分に高分子量化しなくなり、好ましくない。
【0028】
本発明の高分子量エポキシ樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、10,000〜200,000の範囲である。10,000未満のものでは、充分な耐熱性が無く、200,000を越えると取り扱いが困難になり、好ましくない。耐熱性、樹脂の取り扱いの両面からみて、重量平均分子量の範囲は、好ましくは、10,000〜100,000であり、より好ましくは、15,000〜70,000であり、さらに好ましくは、20,000〜50,000である。
【0029】
本発明の高分子量エポキシ樹脂の製造反応に使用する2官能エポキシ樹脂(X)と2価フェノール化合物(Y)の配合当量比は、エポキシ基:フェノール性水酸基=1:0.94〜1.06とするのが好ましい。この当量比が0.94より小さくなっても、また、1.06より大きくなっても充分に高分子量化することができない。
【0030】
本発明における高分子量エポキシ樹脂のエポキシ当量は、5,000g/eq.以上であればよい。それは、フェノール性水酸基過剰で反応させた場合、エポキシ基濃度が殆ど0になるため、エポキシ当量は無限の値になる。そのため、エポキシ当量の上限を規定することは、実質的に臨界的意味を持たない。
【0031】
本発明の高分子量エポキシ樹脂を得る際に使用する触媒は、エポキシ基とフェノール性水酸基、アルコール性水酸基やカルボキシル基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。具体的には、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類などが挙げられる。
【0032】
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウムなど、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどの有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0033】
有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスフォニウムブロマイド、テトラメチルホスフォニウムアイオダイド、テトラメチルホスフォニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0034】
第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミンなどが挙げられる。
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0035】
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。環状アミン類の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5などが挙げられる。
【0036】
上記の触媒は併用することができる。通常、触媒の使用量は反応固形分中、0.001〜1重量%であるが、アルカリ金属化合物を使用すると高分子量エポキシ樹脂中にアルカリ金属分が残留し、それを使用した電子回路基板の絶縁特性を極端に悪化させるため、高分子量エポキシ樹脂中のLi、Na、Kの含有量の合計が5ppm以下、好ましくは、3ppm以下である。また、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類などを触媒として使用した場合も、高分子量エポキシ樹脂中に触媒残渣として残留し、アルカリ金属分の残留と同様にプリント配線板の絶縁特性を悪化させるので、高分子量エポキシ樹脂中の窒素の含有量が150ppm以下であり、高分子量エポキシ樹脂中のリンの含有量が150ppm以下である。さらに好ましくは、高分子量エポキシ樹脂中の窒素の含有量が100ppm以下であり、高分子量エポキシ樹脂中のリンの含有量が100ppm以下である。
【0037】
本発明における高分子量エポキシ樹脂を得る際の合成反応の工程において、溶媒を用いても良く、その溶媒としては、高分子量エポキシ樹脂を溶解し、非反応性であれば、どのようなものでも良い。具体的には、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。
【0038】
芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、オキサンなどが挙げられる。アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0039】
グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0040】
上記の溶媒は併用することができる。製造時の合成反応における固形分濃度は35%〜95%が好ましい。また、反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0041】
本発明の高分子量エポキシ樹脂を得る際の重合反応は、使用する触媒が分解しない程度の反応温度で行う。反応温度は、好ましくは50〜230℃、より好ましくは120〜200℃であり、さらに好ましくは、150〜180℃である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。
【0042】
本発明の高分子量エポキシ樹脂、当該高分子量エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂およびエポキシ硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、高分子量エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として用いるエポキシ樹脂は1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。具体的にはBPA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128、YD−8125,YD−011,YD−825GSなど)、BPF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDF−170,YDF−8170,YDF−2001,YDF−870GSなど)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDPN−638など)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDCN−701など)、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YSLV−80XY)、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製YX−4000など)、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製ESN−170,ESN−375,ESN−475Vなど)、リン含有エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製FX−289B,FX−305など)、多官能特殊骨格エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製EPPN−501など)、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製NC−3000)など公知慣用の化合物が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、物性をそこなわない範囲でフェニルグリシジルエーテルなどの1官能エポキシ樹脂を用いても良い。
【0043】
また、エポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂硬化剤としては、具体的には、アミン系硬化剤(脂肪族ポリアミン類、芳香族アミン類、ジシアンジアミドなど)、フェノール系硬化剤(フェノールノボラック樹脂、ビスフェノール型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂(フェノールアラルキル樹脂)、テルペン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノールノボラック樹脂、トリアジン構造含有ノボラック樹脂など)、酸無水物系硬化剤(無水フタル酸、無水トリメリット酸など)、イミダゾール類(四国化成工業株式会社2MZなど)など公知慣用の化合物が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。上記のアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤の配合量については、当量比で、エポキシ基:硬化剤官能基=1:0.4〜1.3とするのが好ましい。この範囲を外れると得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性が損なわれるという問題が生じる。また、イミダゾール類については当該高分子量エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の100重量部に対し0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化性を調整する目的で各種硬化促進剤を使用できる。具体的には、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン系化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジシアノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール系化合物、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアジニン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1、5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)−オクタンなどのジアザビシクロ系化合物、それらのジアザビシクロ系化合物のテトラフェニルボレート塩、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
【0045】
さらに、その溶剤としては、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどが挙げられ、これらの溶剤は適宜に2種またはそれ以上の混合溶剤として使用することも可能である。その他、保存安定性のために紫外線防止剤、可塑剤など、また無機充填材として水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、シリカなど、カップリング剤としてシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤なども使用可能である。また、難燃性を付与するために、ノンハロゲンタイプのリン系、窒素系、シリコン系難燃剤などを添加しても良い。
【0046】
本発明の高分子量エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物は、従来の多層電気積層板やビルドアップ法など新しい電子回路基板に使用できる。ビルドアップ法とは、ガラスプリプレグを積層した内層回路板上に、40〜90μmのフィルム(絶縁層)あるいは、銅箔付きのフィルム(銅箔:9〜18μm)を積層していく方法であり、一般的に回路形成工程として、積層プレス工程・穴あけ(レーザーまたはドリル)工程・デスミア/メッキ工程となる。そして、従来の積層板に比べ同性能のものなら、実装面積・重量ともに約1/4になる、小型・軽量化のための優れた工法である。
【0047】
特に、本発明の高分子量エポキシ樹脂は、フィルム化してビルドアップ絶縁層として用いるのが好ましい。通常のビスフェノールA型高分子量エポキシ樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が95℃、臭素化ビスフェノールA型高分子量エポキシ樹脂では125℃程度であるが、本発明の高分子量エポキシ樹脂は、150℃の高Tgとすることができ耐熱性に優れている。そのため、ビルドアップ法で用いる40〜90μmのフィルム(絶縁層)にした場合、高耐熱性の本発明の高分子量エポキシ樹脂を使用することは有効である。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は実質的に臭素を含まず、ビスフェノールS骨格は構造的に燃えにくい性質があるため、ノンハロゲンタイプとしての使用も有効である。通常のエポキシ樹脂は線膨張係数が70ppm/℃程度であるが、本発明の高分子量エポキシ樹脂は、線膨張率が50〜60ppm/℃であり、プリント配線板を構成する際、歪みや反りが生ぜず好ましい。
【0048】
本発明に係る接着フィルムを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、(イ)本発明の樹脂組成物を押出機にて混練した後に押出し、Tダイやサーキュラーダイ等を用いてシート状に成形する押出成形法、(ロ)本発明の樹脂組成物を有機溶剤等の溶媒に溶解または分散させた後、キャスティングしてシート状に成形するキャスティング成形法、(ハ)従来公知のその他のシート成形法等が挙げられる。また、接着フィルムの膜厚は、特に限定はされないが、例えば10〜300μm、好ましくは25〜200μm、より好ましくは40〜180μmである。ビルドアップ法で使用する場合は40〜90μmが最も好ましい。膜厚が10μm以上であれば絶縁性を得ることができるし、300μm以下であれば電極間の回路の距離が必要以上に長くならない。なお、接着フィルムの溶媒の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物全体に対し、0.01〜5重量部であることが好ましい。フィルム中の溶媒の含有量が樹脂組成物全体に対し、0.01重量部以上であれば、回路基板へ積層する際に密着性や接着性が得られ、また、5重量部以下であれば加熱硬化後の平坦性が得られる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
攪拌機、冷却管、温度計、窒素吹きこみ口を備えたセパラブルフラスコに、2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128(BPA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量187g/eq、αジオール濃度7meq/100g、全塩素濃度0.16重量%)155.3重量部、2価フェノール化合物(Y)として、新日鐵化学株式会社製TX−1127(フェノール性水酸基当量177g/eq.、スチレン付加ビスフェノールS、1置換体66%、2置換体14%、3置換体2%、4,4’−ビスフェノールS18%の混合物)144.7重量部、シクロヘキサノンを100重量部仕込み、145℃まで昇温、溶解して1時間撹拌した。その後反応触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、以下、2E4MZと略す)を0.12重量部仕込み、165℃まで昇温した。反応の進行とともに反応溶液の粘度が上昇するが、適宜シクロヘキサノンを加えて一定のトルクとなるように撹拌を継続し、触媒添加後10時間重合反応を行った後、シクロヘキサノンで不揮発分が40重量%になるまで希釈、混合した。得られた高分子量エポキシ樹脂のシクロヘキサノンワニスを、真空オーブンを用いて170℃、0.2kPaの条件下で1時間溶剤を除去し高分子量エポキシ樹脂を得た。得られた樹脂をテトラヒドロフランで不揮発分30重量%になるように希釈し、MEKで表面を脱脂したPETフィルム上に塗工、熱風循環式オーブンを用いて空気雰囲気下150℃にて2時間乾燥した後、PETフィルムより剥がして、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。こうして得られた樹脂の性状分析は次の方法で行った。分析結果は表1に示したとおりである。
【0051】
重量平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算値として測定した。具体的には東ソー株式会社製HLC−8320本体に、東ソー株式会社製のカラム、TSK−gelGMHXL、TSK−gelGMHXL、TSK−gelG2000HXLを直列に備えたものを使用した。また、溶離液はテトラヒドロフラン(THF)とし、流速は1ml/minとした。カラム室の温度を40℃にした。検出はRI検出器を使用して測定を行い、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた。測定用試料は、サンプル0.1gを10mlのTHFに溶解した。
エポキシ当量:JISK7236に準拠して測定した。
α−ジオール濃度:HIO4とチオ硫酸ナトリウムを使用し、電位差滴定法により測定した。
全塩素濃度:JISK7243−3に準拠して測定した。
ガラス転移温度:示差走査熱量測定の2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)をTg[DSC]とした。具体的には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6200を用いて行った。樹脂フィルムをパンチングし、積層、アルミニウム製カプセルにパッキングしたものを測定試料とした。測定温度範囲は室温から240℃とした。昇温速度は10℃/minとし、測定を2サイクル行った。
吸水率:耐水性の指標として、樹脂フィルムを50mm×50mm角に切り出した試験片5枚を用いて測定を行った。熱風循環式オーブンを用いて空気雰囲気下100℃にて試験片を10分間乾燥させた後直ぐに重量を測定し、その試験片を25℃の水に浸水させ、48時間後の重量増分から吸水率を求めた。
【0052】
実施例2
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−8125(BPA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量172g/eq、αジオール濃度2meq/100g、全塩素濃度0.08重量%、エポキシ基純度99.3%)160.3重量部、2価フェノール化合物(Y)として、新日鐵化学株式会社製TX−1209(フェノール性水酸基当量154g/eq.、インデン付加ビスフェノールS、1置換体50%、4,4’−ビスフェノールS50%の混合物)27.9重量部、と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(フェノール性水酸基当量153g/eq.)111.8重量部、触媒としてトリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製、商品名:TPP)0.6重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0053】
実施例3
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−8125(前述)138.9重量部、2価フェノール化合物(Y)として、三光株式会社製BIS−OPP−S(フェノール性水酸基当量201g/eq.、3、3’−ジフェニル−4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)161.1重量部、触媒として2E4MZ(前述)0.12重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0054】
実施例4
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製ESF−300(ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂、エポキシ当量254g/eq、αジオール濃度3meq/100g、全塩素濃度0.12重量%、エポキシ基純度98.4%)187.5重量部、2価フェノール化合物(Y)として、新日鐵化学株式会社製TX−1127(前述)81.3重量部と日華化学株式会社製BPS−P(T)(フェノール性水酸基当量125g/eq.、4,4’−ビスフェノールS)31.2重量部、触媒として2E4MZ(前述)0.12重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0055】
実施例5
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製TX−0902(テトラメチルビスフェノールS型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量212g/eq、αジオール濃度1meq/100g、全塩素濃度0.06重量%、エポキシ基純度99.4%)179.0重量部、2価フェノール化合物(Y)として、TX−1209(前述)78.0重量部と日華化学株式会社製BPS−P(T)(前述)43.0重量部、触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.6重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0056】
比較例1
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128(前述)182.7重量部、2価フェノール化合物(Y)として、日華化学株式会社製BPS−P(T)(前述)117.3重量部と日、触媒としてトリエチルアミン(一般試薬)0.15重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0057】
比較例2
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−8125(前述)175.8重量部、2価フェノール化合物(Y)として、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(前述)39.4重量部と新日鐵化学株式会社製ビスフェノールA(フェノール性水酸基当量114g/eq.)84.8重量部、触媒として2E4MZ(前述)0.12重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0058】
比較例3
2官能エポキシ樹脂(X)として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128(前述)188.1重量部、2価フェノール化合物(Y)として、新日鐵化学株式会社製ビスフェノールA(前述)111.9重量部、触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.6重量部に、変えた他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂および樹脂フィルムを得た。また、得られた樹脂フィルムを使用して実施例1と同様の測定を行った。分析結果は、表1に示したとおりである。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果より、芳香族環または複素環を置換基として持たないビスフェノールS含有高分子量エポキシ樹脂は、耐熱性が良い(ガラス転移温度が高い)が、耐水性が悪い(吸水率が大きい)。ビスフェノールSを含有しない高分子量エポキシ樹脂は、耐水性が良い(吸水率が小さい)が、耐熱性が悪い(ガラス転移温度が低い)。本発明の、芳香族環または複素環を置換基として有するビスフェノールS含有高分子量エポキシ樹脂は、耐熱性が良く、耐水性も良い。
【0061】
実施例6〜11、比較例4〜7
上記の実施例および比較例で得られた高分子量エポキシ樹脂(実施例1、2、3および比較例1、2、3)とエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、溶剤を表2記載の条件となるように混合し、不揮発分が40重量%のエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この時、ジシアンジアミドは、ジシアンジアミドが4重量部に対し、N,N−ジメチルホルムアミドが15重量部、2−メトキシエタノールが15重量部からなる混合溶媒に溶解、調製したジシアンジアミド溶液を用いた。それ以外は、樹脂100重量部に対し、2−メトキシエタノール50重量部、メチルエチルケトン50重量部を混合溶解して用いた。
【0062】
なお、表中のその他のエポキシ樹脂として、新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128(前述)と新日鐵化学株式会社製エポトートYDCN−700−5(オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量202g/eq.、軟化点86℃)を、エポキシ樹脂硬化剤として、ジシアンジアミドとフェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製BRG−557、フェノール性水酸基当量105g/eq.、軟化点86℃)を、硬化促進剤として2E4MZ(前述)を用いた。
【0063】
上記のエポキシ樹脂組成物ワニスをガラス布(日東紡株式会社製WEA116E106S136、0.1mm厚)に含浸させた後、その含浸布を150℃の乾燥室中で8分間乾燥させ、Bステージ状のプリプレグを得た。このプリプレグを切断して得たプリプレグ8枚を銅箔(三井金属鉱業株式会社製3EC−III、35μm)2枚に挟み、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い積層板を得た。
【0064】
硬化物性の試験方法および評価方法は以下の通りである。
ガラス転移温度:樹脂フィルムと同様に、示差走査熱量測定の2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)をTg[DSC]とした。
銅箔引きはがし強さ:JISC6481に準じて測定した。
PCT後ハンダ耐熱:耐水性の指標として、JISC6481に準じて作製した試験片を121℃、0.2MPaのオートクレーブ中に3時間処理した後、260℃のハンダ浴中につけて、20分以上膨れやはがれが生じなかったものを○とし、10分以内に膨れやはがれが生じたものを×とし、それ以外を△と評価した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示された本発明の高分子量エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物を使用して製造された積層板の物性と比較例のエポキシ樹脂組成物を使用して製造した積層板の物性の比較から明らかなように、本発明の樹脂組成物により製造された積層板は、耐熱性(ガラス転移温度)、耐水性(PCT後ハンダ耐熱)および接着性が総合的に著しく優れている。