【文献】
口腔内崩壊錠(ODT)用の直打用賦形剤「SmartExTM」を開発,2013年10月 7日,URL,http://www.metolose.jp/pdf/news_20131007.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒドロキシプロポキシ基置換度が5〜16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、第1の糖又は糖アルコール及び水を少なくとも含んでなる水分散液を添加しながら、第2の糖又は糖アルコールの造粒を行う造粒工程を少なくとも含んでなる複合造粒物の製造方法。
前記第1及び第2の糖又は糖アルコールが、同じであっても異なってもよく、マンニトール、トレハロース、キシリトール、エリスリトール、乳糖及びショ糖からなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の複合造粒物の製造方法。
前記低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが、前記第1及び第2の糖又は糖アルコールの合計100質量部に対して1〜15質量部である請求項1又は2記載の複合造粒物の製造方法。
前記ポリビニルアルコールが、前記第1及び第2の糖又は糖アルコールの合計100質量部に対して0.05〜0.4質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合造粒物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、第1の糖又は糖アルコールを含む水分散液の調製方法は、所定量の水にポリビニルアルコール、第1の糖又は糖アルコールを溶解させ、この溶液に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを入れるか、その逆に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースにこの溶液を投入しても良い。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは水不溶性であり、分散は速やかに完了し、数分間、通常の撹拌機で混合するだけで良い。造粒操作時には沈降防止のため上記分散液を撹拌することが好ましい。
上記水分散液中の固形分濃度は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%である。1質量%未満では所定の添加量まで噴霧するまで長時間を要し、生産性が低下する場合がある。また、30質量%を超えると分散液の粘度が高くなりすぎ、送液できなくなる場合がある。水分散液中の固形分濃度は、水分散液を乾燥したときに生じる、複合造粒物を構成することになる固形分の濃度である。
【0010】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、水不溶性のポリマーで吸水して膨潤する特性を有する。基本骨格はセルロースであり、そこに少量のヒドロキシプロポキシ基が導入されている。そのヒドロキシプロポキシ基置換度は5〜16質量%であり、より好ましくは5〜9質量%である。ヒドロキシプロポキシ基置換度が5質量%未満だと吸水後の膨潤性が低く目的の崩壊性を示さず、結合性も低下する場合がある。16質量%を超えると膨潤性は高くなり、結合性も向上するが、水溶性が強くなり、目的の崩壊性を示さず、成形された錠剤の崩壊時間が長くなる場合がある。ヒドロキシプロポキシ基の置換度測定方法は日本薬局方に記載されている。
【0011】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径は、好ましくは5〜100μm程度であり、更に好ましくは20〜60μm程度である。5μm未満では吸水膨潤性が低下して、崩壊性が低下する場合がある。また、100μmを超えると比表面積の低下により、結合性が低下する場合がある。なお、平均粒子径は、体積換算粒子径であり、レーザー回折法を用いた粉体粒子径測定方法による。例えば、HELOS&RODOS(日本レーザー社製)を用いて測定できる。
【0012】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、得られる複合造粒物中の糖又は糖アルコール100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部、より好ましくは2〜10質量部である。1質量部未満では目的の崩壊性を有する錠剤を得ることができない場合がある。また、15質量部を超えると水不溶性物質の増大により口腔内での食感が低下する場合があり、また、吸湿性が増大し、製剤の安定性が低下する場合がある。なお、得られる複合造粒物中の糖又は糖アルコールは、水分散液中の第1の糖又は糖アルコールと、水分散液を添加される第2の糖又は糖アルコールとの合計量である。
【0013】
ポリビニルアルコールは、水溶性のポリマーで、結合剤として使用されるものである。酢酸ビニルモノマーを重合し、その後、アルカリによるケン化を行うことにより、ポリビニルアルコールが製造される。このケン化度に応じて、80〜90モル%のものを部分ケン化型、90モル%を超え98モル%未満のものを中間ケン化型、98モル%以上のものが完全ケン化型に分類される。部分ケン化型は常温水で溶解するが、完全ケン化型は常温水には溶解せず、90℃以上の熱水に溶解する性質を示す。完全ケン化型は部分ケン化型と比較して、水酸基が多いため、より多くの水素結合を形成し、成形性が向上するため好ましい。中間ケン化型は両者の中間的性質を示す。
また、ポリビニルアルコールの重合度は、市販されている約500〜2000程度が好ましい。重合度及びケン化度の測定法は、JIS K6726に従って行うことができる。
【0014】
ポリビニルアルコールは、得られる複合造粒物中の糖又は糖アルコール100質量部に対して、好ましくは0.05〜0.4質量部、より好ましくは0.1〜0.3質量部である。0.05質量部未満では目的の成形性を得ることができない場合がある。また、0.4質量部超過では成形性は優れるが、崩壊性が低下する場合がある。
【0015】
第1又は第2の糖又は糖アルコールとしては、マンニトール、トレハロース、キシリトール、エリスリトール、乳糖、ショ糖等が挙げられる。水分散液中の第1の糖又は糖アルコールと該水分散液の添加対象となる第2の糖又は糖アルコールの種類は、特に限定されず、同じ糖又は糖アルコールを用いても良く、別な糖又は糖アルコールを用いても良い。
【0016】
水分散液に溶解して用いる第1の糖又は糖アルコールの平均粒子径は、溶解できれば特に限定されない。
水分散液の添加対象となる第2の糖又は糖アルコールの平均粒子径は、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。5μm未満では流動性が低下する場合や、崩壊性が低下する場合があり、100μm超過では成形性が低下したり、水分散液を添加した場合に未溶解物が増加する場合がある。なお、第1又は第2の糖又は糖アルコールの平均粒子径は、体積換算粒子径であり、レーザー回折法を用いた粉体粒子径測定方法による。例えば、HELOS&RODOS(日本レーザー社製)を用いて測定できる。
【0017】
第1及び第2の糖又は糖アルコールの合計量は、得られる複合造粒物中に、好ましくは80〜98質量%、より好ましくは90〜95質量%である。80質量%未満では口腔内での食感が低下する場合や、他の添加剤の増加により吸湿性が増大し、製剤の安定性が低下する場合がある。また、98質量%超過では目的の結合性、崩壊性を示さない場合がある。
水分散液中に添加する第1の糖又は糖アルコールは、得られる複合造粒物中の糖又は糖アルコールの全量中、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。1質量%未満では成形性、崩壊性が低下する場合があり、50質量%を超えると未溶解物が多く残る場合や送液中に沈降したり閉塞したりする場合がある。
【0018】
本発明によって得られる複合造粒物は、糖又は糖アルコール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールが単に物理混合されたものではなく、糖又は糖アルコール表面に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールが存在する粒子である。糖又は糖アルコールは、水に溶解しやすい特徴を持つが、圧縮成形性に劣り、キャッピング等の打錠障害を起こしやすい。本発明の複合造粒物では、糖又は糖アルコール表面に崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結合剤であるポリビニルアルコールが被覆されていることにより、結合性、崩壊性に優れるものである。
【0019】
本発明における造粒操作における装置としては、流動層造粒、撹拌造粒、転動流動層造粒、噴霧乾燥造粒等が使用可能であるが、噴霧と乾燥を同時に行うことができ、粉体表面に均一な被覆層を形成し易い流動層造粒装置が好ましい。
【0020】
流動層造粒を例に造粒操作について説明すると、流動層に第2の糖又は糖アルコール等の粉体を仕込み、結合液として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、第1の糖又は糖アルコールを含む水分散液を噴霧しながら、造粒を行うことにより複合造粒物を得ることができる。
【0021】
複合造粒物の平均粒子径は、造粒条件により異なるが、50〜300μmが好ましい。50μm未満では流動性が低く、打錠機への付着が起きる場合があり、300μmを超えると臼への充填性が低下し、錠剤重量バラツキが大きくなる場合がある。造粒物の平均粒子径は、日本薬局方の一般試験法に記載の篩い分け法により測定できる。
【0022】
得られた複合造粒物は、噴霧と乾燥を同時に行うことができる流動層造粒装置を用いて乾燥を行った場合には更に乾燥する必要はないが、乾燥を行なわかった場合や乾燥を行うことができない造粒装置を使用した場合は、公知の方法、例えば、流動層乾燥機、棚段乾燥機等を用いて、例えば40〜80℃で乾燥することができる。得られた複合造粒物の水分は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下が好ましい。5質量%を超えると製剤の安定性に悪影響を与える可能性がある。
【0023】
本発明によれば、得られた複合造粒物と薬物とを少なくとも含んでなる速放性錠剤を提供できる。
得られた複合造粒物を用いて、乾式直打法により錠剤を製造する場合について説明すると、得られた複合造粒物と薬物を混合後、少量の滑沢剤を添加混合し、通常のロータリー式連続打錠機により所定の圧力で圧縮することにより、打錠できる。錠剤の大きさは自由に選択できるが、錠剤径としては6〜12mm程度、錠剤重量としては一錠あたり70〜700mgが好ましい。錠剤径が6mmより小さい場合、取り扱いづらく、12mmを超えると服用し難い場合がある。
打錠時の打錠圧は10〜300MPaが好ましい。10MPa未満では目的の錠剤硬度が得られない場合があり、300MPaを超えるとキャッピング等の打錠障害が発生する場合がある。
【0024】
本発明の複合造粒物を用いた錠剤に使用可能な薬物としては、特に限定されず、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質及び化学療法剤、代謝系薬物、ビタミン系薬物等が挙げられる。
【0025】
中枢神経系薬物としては、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナック、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン等が挙げられる。
循環器系薬物としては、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ビンドロール、カプトプリル、硝酸イゾソルビト等が挙げられる。
【0026】
呼吸器系薬物としては、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール、グアイフェネシン等が挙げられる。
消化器系薬物としては、2−[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、パンクレアチン、ビサコジル、5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0027】
抗生物質及び化学療法剤としては、セファレキシン、セファクロール、セフラジン、アモキシシリン、ピバンピシリン、バカンピシリン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンステアレート、リンコマイシン、ドキシサイクリン、トリメトプリム/スルファメトキサゾール等が挙げられる。
代謝系薬物としては、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アデノシントリフォスフェート、グリベンクラミド、塩化カリウム等が挙げられる。
ビタミン系薬物としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC等が挙げられる。
【0028】
錠剤を製造するにあたり、本発明の複合造粒物以外に固形製剤に一般的に使用される添加剤を通常の添加量用いても良い。このような添加剤としては、崩壊剤、結合剤、増量剤、滑沢剤、矯味成分、香料等が挙げられる。
【0029】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、クロスポビドン等が例示される。結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が例示される。
【0030】
増量剤としては、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が例示される。
矯味成分としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
香料剤としては、メントール、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0031】
本発明によれば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール及び第1の糖又は糖アルコールを少なくとも含む水分散液を、第2の糖又は糖アルコール表面に添加(好ましくは噴霧)被覆し、表面改質を行うことにより、高い成形性と速崩壊性の両立が可能となる。高い成形性と速崩壊性の両立が可能となる理由としては、複合造粒物表面が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールにより被覆され、圧縮成形時には水酸基を多く有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールにより、強固な水素結合を形成し結合性が向上するものと考えられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは速やかに吸水膨潤する特性を有するため、圧縮成形物は速やかに崩壊するものと考えられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例1
精製水316gにケン化度98.5モル%、重合度1700のポリビニルアルコール10質量%水溶液8g及びD−マンニトール60gを添加し、撹拌羽根にて混合溶解した。次に、ヒドロキシプロポキシ基置換度8質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース16gを上記水溶液に添加混合し、水分散液を調製した。次に、D−マンニトール323.2gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度60℃、排気温度25〜28℃、流動エアー量50m
3/hr、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaで上記の水分散液を噴霧し、造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた複合造粒物100質量部に、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量部を添加混合後、ロータリー打錠機にて直径8mm、曲面半径12mm、錠剤質量200mgの錠剤を打錠圧7.5kNで打錠を行った。得られた錠剤の錠剤硬度、日本薬局方崩壊時間、口腔内崩壊時間を測定し、その結果を複合造粒物の組成とともに表2に示す。錠剤硬度は、錠剤の直径方向に1mm/秒の速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度を測定した。日本薬局方崩壊時間は、日本薬局方崩壊試験に基づき試験液として水を用いて測定した。ディスクなし口腔内崩壊時間は、健康な成人6人に対して錠剤を舌の上に乗せ、口腔内で錠剤が崩壊するまでの時間を測定し、その平均値を求めた。
【0033】
実施例2
精製水324gにケン化度98.5モル%、重合度1700のポリビニルアルコール10質量%水溶液8g及びD−マンニトール60gを添加し、撹拌羽根にて混合溶解した。次に、ヒドロキシプロポキシ基置換度8質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース8gを上記水溶液に添加混合し、水分散液を調製した。次に、D−マンニトール331.2gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度60℃、排気温度25〜28℃、流動エアー量50m
3/hr、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaで上記の水分散液を噴霧し、造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた複合造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0034】
実施例3
精製水528gにケン化度98.5モル%、重合度1700のポリビニルアルコール10質量%水溶液8g及びD−マンニトール60gを添加し、撹拌羽根にて混合溶解した。次に、ヒドロキシプロポキシ基置換度8質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40gを上記水溶液に添加混合し、水分散液を調製した。次に、D−マンニトール299.2gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度60℃、排気温度25〜28℃、流動エアー量50m
3/hr、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaで上記の水分散液を噴霧し、造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた複合造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0035】
実施例4
精製水312gにケン化度88モル%、重合度500のポリビニルアルコール10質量%水溶液4g及びエリスリトール40gを添加し、撹拌羽根にて混合溶解した。次に、ヒドロキシプロポキシ基置換度11質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24gを上記水溶液に添加混合し、水分散液を調製した。次に、エリスリトール315.6gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度60℃、排気温度25〜28℃、流動エアー量50m
3/hr、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaで上記の水分散液を噴霧し、造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた複合造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0036】
実施例5
精製水304gにケン化度88モル%、重合度1700のポリビニルアルコール10質量%水溶液12g及びエリスリトール60gを添加し、撹拌羽根にて混合溶解した。次に、ヒドロキシプロポキシ基置換度11質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース24gを上記水溶液に添加混合し、水分散液を調製した。次に、乳糖314.8gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度60℃、排気温度25〜28℃、流動エアー量50m
3/hr、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaで上記の水分散液を噴霧し、造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた複合造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0037】
比較例1
実施例2と同様の組成であるが、造粒を行わず、下記に示すそれぞれの粉体の物理混合物の打錠を実施した。
D−マンニトール391.2g、ヒドロキシプロポキシ基置換度8質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース8g、ケン化度98.5モル%、重合度1700のポリビニルアルコール0.8gを混合し、得られた混合粉体100質量部に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量部を添加混合後、ロータリー打錠機にて実施例1と同様の条件で打錠を実施し、得られた錠剤の錠剤硬度、日本薬局方崩壊時間、口腔内崩壊時間を評価し、その結果を表2に示す。
【0038】
比較例2
特許文献4に記載の方法にて低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いて造粒を実施した。
精製水316gにヒドロキシプロポキシ基置換度8質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース16gを添加混合し、水分散液を調製した。次に、D−マンニトール384gを流動層造粒装置に仕込み、吸気温度60℃、排気温度25〜28℃、流動エアー量50m
3/hr、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaで上記の水分散液を噴霧し、造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0039】
比較例3
実施例1における低置換度ヒドロキシプロピルセルロースにかえてクロスカルメロースナトリウムを使用した以外は実施例1と同一の条件で造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0040】
比較例4
実施例1におけるポリビニルアルコールにかえてヒドロキシプロポキシ基置換度:64質量%のヒドロキシプロピルセルロースを使用した以外は実施例1と同一の条件で造粒を実施した。水分散液の組成及び被造粒粉体を表1に示す。
得られた造粒物を実施例1と同様の方法にて打錠し、同様の方法にて評価を実施した結果を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
単純な物理混合物である比較例1では打錠時にキャッピングが発生し、高い錠剤硬度のものが得られなかった。また、崩壊時間も長いものであった。一方、組成としては同一である実施例2の複合造粒物は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、第1の糖又は糖アルコール及び水からなる水分散液を用いて第2の糖又は糖アルコールを造粒することにより得られ、圧縮成形性、崩壊性ともに優れた特性を示した。これは成形性の低い糖又は糖アルコールの表面を水酸基が多く存在する低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールで被覆されることにより、多くの水素結合を形成し結合性が向上したものと考えられる。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは速やかに吸水膨潤する特性を有するため、本発明の複合造粒物からなる錠剤は速やかに崩壊したものと考えられる。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース水分散液を用いて造粒を実施した比較例2では崩壊性は優れるが、成形性が不十分であった。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの代わりに崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムを添加した比較例3では、崩壊性が不十分であり、ポリビニルアルコールの代わりに水溶性のヒドロキシプロピルセルロースを用いた比較例4では、成形性、崩壊性ともに不十分であった。
【0044】
実施例6
アセトアミノフェン10質量部、実施例1で得られた複合造粒物90質量部を混合後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを0.5質量部添加混合後、ロータリー打錠機にて直径8mm、曲面半径12mm、錠剤質量200mgの錠剤を打錠圧5kNで打錠を行った。
得られた錠剤の錠剤硬度、日本薬局方崩壊時間、口腔内崩壊時間を評価し、その結果を表3に示す。
【0045】
実施例7
アスコルビン酸10質量部、実施例1で得られた複合造粒物90質量部を混合後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを0.5質量部添加混合後、ロータリー打錠機にて直径8mm、曲面半径12mm、錠剤質量200mgの錠剤を打錠圧5kNで打錠を行った。
得られた錠剤の錠剤硬度、日本薬局方崩壊時間、口腔内崩壊時間を評価し、その結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
本発明の複合造粒物及び薬物を混合して、打錠することにより、速放性の錠剤を得ることができた。この錠剤は口腔内においても優れた崩壊性を示し、口腔内における食感も優れるものであった。