特許第6022894号(P6022894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022894
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20161027BHJP
   B29C 55/04 20060101ALI20161027BHJP
   B29K 29/00 20060101ALN20161027BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20161027BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20161027BHJP
   B29L 11/00 20060101ALN20161027BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B29C55/04
   B29K29:00
   B29L7:00
   B29L9:00
   B29L11:00
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-236534(P2012-236534)
(22)【出願日】2012年10月26日
(62)【分割の表示】特願2012-532402(P2012-532402)の分割
【原出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-156623(P2013-156623A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】九内 雄一朗
【審査官】 後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−212550(JP,A)
【文献】 特開2006−227604(JP,A)
【文献】 特開2011−221278(JP,A)
【文献】 特開2008−275926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335− 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子層と保護フィルムとを有する偏光板の製造方法であって、
基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗工することによりポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る積層工程と、
前記積層フィルムを一軸延伸する延伸工程と、
前記一軸延伸を行なった前記積層フィルムの前記ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程と、
前記染色を行なった前記積層フィルムの前記ポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋し偏光子層を形成する架橋工程と、
前記架橋を行なった前記積層フィルムから、幅方向の両方の第1端部を切断して除去する貼合前除去工程と、
第1端部を除去した前記積層フィルムにおける前記偏光子層の前記基材フィルム側の面とは反対側の面に接着剤を用いて保護フィルムを貼合する貼合工程と、をこの順に有する偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記架橋工程の後であってかつ前記貼合前除去工程の前に、前記偏光子層を乾燥させる乾燥工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貼合前除去工程の後であってかつ前記貼合工程の前に、前記偏光子層を乾燥させる乾燥工程を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として、広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
【0003】
そのような薄型の偏光板を製造する方法として、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布して樹脂層を設けた後、延伸し、次いで染色することにより、偏光子層を有する偏光性積層フィルムを得、これをそのまま偏光板として利用する方法、および該フィルムに保護フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離したものを偏光板として利用する方法が提案されている(例えば、特開2000−338329号公報、特開2011−212550号公報参照)。
【0004】
さらに、特開2011−212550号公報には、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布した後の乾燥工程等で基材フィルムの両端が反り返ることを防止すべく、基材フィルムの両端にポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗布しない未塗布部分を設ける方法が記載されている。この未塗布部分については、延伸の際またはその後の巻き取りの際に波打ち等の不具合が生じやすいので、巻き姿が良好なロールを得るために延伸工程の前または後で切断により除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−338329号公報
【特許文献2】特開2011−212550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術のように、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、延伸、染色、架橋等することによって、基材フィルムと偏光子層とを有する積層フィルムを得る場合、その積層フィルムにおいては、染色、架橋等の工程で、熱、張力や延伸力などが作用し、その端部に波打ちや反りを生じることがあり、その結果、保護フィルムを貼合する際に端部に折れ込みやシワが生じることがある。このような折れ込みやシワが原因となって、たとえば部分的な接着剤の溜まりが生じ、その部分が乾燥不良となることで、偏光子層の青変劣化などの不具合を引き起こすことがあった。
【0007】
本発明は、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、延伸、染色、架橋等することによって積層フィルムを得、該積層フィルムにさらに保護フィルムを貼合する偏光板の製造方法であって、端部での折れ込みやシワの発生を抑制し、偏光子層の青変劣化を抑制する偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記のものを含む。
[1] 偏光子層と保護フィルムとを有する偏光板の製造方法であって、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る積層工程と、積層フィルムを一軸延伸する延伸工程と、一軸延伸を行なった積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程と、染色を行なった積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋し偏光子層を形成する架橋工程と、架橋を行なった積層フィルムから、幅方向の両方の第1端部を切断して除去する貼合前除去工程と、第1端部を除去した積層フィルムにおける偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する貼合工程と、をこの順に有する偏光板の製造方法。
[2] 上記積層工程の後であってかつ上記染色工程の前に、積層フィルムから、幅方向の両方の第2端部を切断して除去する染色前除去工程を有する、[1]に記載の方法。
[3] 上記積層工程においては、基材フィルムの幅方向の両方の端部にポリビニルアルコール系樹脂層を形成しない第3端部を設ける、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 上記架橋工程の後であってかつ上記貼合前除去工程の前に、偏光子層を乾燥させる乾燥工程を有する、[1]に記載の方法。
[5] 上記貼合前除去工程の後であってかつ上記貼合工程の前に、偏光子層を乾燥させる乾燥工程を有する、[1]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、延伸、染色、架橋等することによって積層フィルムを得、該積層フィルムにさらに保護フィルムを貼合して偏光板を製造するにあたり、保護フィルムを貼合する際の端部での折れ込みやシワの発生を抑制し、偏光子層の青変劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の偏光板の製造方法を示すフローチャートである。
図2】第1の実施形態の偏光板の製造方法の各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。
図3】第2の実施形態の偏光板の製造方法の各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。
図4】第3の実施形態の偏光板の製造方法の各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の偏光板の製造方法を示すフローチャートである。本発明の製造方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る積層工程(S10)と、積層フィルムを一軸延伸する延伸工程(S20)と、一軸延伸を行なった積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程(S30)と、染色を行なった積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して架橋し偏光子層を形成する架橋工程(S40)と、架橋を行なった積層フィルムから、幅方向の両方の第1端部を切断して除去する貼合前除去工程(S50)と、第1端部を除去した積層フィルムにおける偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)と、をこの順に有する偏光板の製造方法である。貼合工程(S60)の後に、さらに基材フィルムを剥離する剥離工程(S70)を有してもよい。積層工程(S10)において基材フィルムの両面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、貼合工程(S60)において二つの偏光子層にそれぞれ保護フィルムを貼合するようにしてもよい。
【0012】
本発明の製造方法によると、貼合前除去工程(S50)を有することにより、架橋工程(S40)を終了した時点で積層フィルムにおいて波打ち反りが生じている端部を除去することができる。したがって、積層フィルムに保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)において、積層フィルムの端部に折れ込みやシワの発生や、偏光子層における青変劣化を抑制することができる。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の偏光板の製造方法の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態の偏光板の製造方法における各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。まず、図2(a)に示すように基材フィルム11を準備する。次に、積層工程(S10)により、基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層12aを形成して図2(b)に示す積層フィルムを得る。次に、図2(b)に示す積層フィルムについて、延伸工程(S20)、染色工程(S30)、架橋工程(S40)を行ない、樹脂層12aから偏光子層12bを形成し、図2(c)に示す積層フィルムを得る。次に、図2(c)に示す積層フィルムについて、点線A1にて切断して点線A1より外側の領域である幅方向の両方の端部(第1端部)13を除去する貼合前除去工程(S50)を行ない、図2(d)に示す積層フィルムを得る。その後、偏光子層12bに保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)を行なう。
【0015】
図2(c)において、点線A1の位置は、積層フィルムの端部において波打ちや反りが生じている場合は、その波打ちや反りのすべてが点線A1より外側の第1端部13に含まれるように決定することが好ましい。また、積層フィルムの端部においてポリビニルアルコール系樹脂層が形成されていない領域が含まれる場合は、そのポリビニルアルコール系樹脂層が形成されていない領域のすべてが点線A1より外側の第1端部13に含まれるように決定することが好ましい。第1端部13の領域を規定する点線A1は、たとえば、積層フィルムの幅方向の両端から内側に0.5cm以上20cm以下の領域内に決定することが好ましく、1.0cm以上15cm以下の領域内に決定することがより好ましく、1.5cm以上10cm以下の領域内に決定することがさらに好ましい。
【0016】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態の偏光板の製造方法における各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。まず、図3(a)に示すように基材フィルム21を準備する。次に、積層工程(S10)により、基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層22aを形成して図3(b)に示す積層フィルムを得る。なお、基材フィルム21の幅方向の両方の端部に予め点線A2を規定し、それより外側の領域にポリビニルアルコール系樹脂層を形成しない第3端部21aを設ける。このように、樹脂層22aを形成しない第3端部21aを設けることにより、樹脂層22aを乾燥させる際に、基材フィルムの両端が樹脂層22a側に反る現象を抑制することができる。樹脂層22aは、ポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布した後に乾燥させて形成する。第3端部21aの領域を規定する点線A2は、基材フィルムの幅方向の両端から内側に0.5cm以上20cm以下の領域内に決定することが好ましく、1.0cm以上15cm以下の領域内に決定することがより好ましく、1.5cm以上10cm以下の領域内に決定することがさらに好ましい。
【0017】
次に、図3(b)に示す積層フィルムについて、延伸工程(S20)、染色工程(S30)、架橋工程(S40)を行ない、ポリビニルアルコール系樹脂層22aから偏光子層22bを形成し、図3(c)に示す積層フィルムを得る。次に、図3(c)に示す積層フィルムについて、点線B2にて切断して点線B2より外側の領域である幅方向の両方の端部(第1端部)23を除去する貼合前除去工程(S50)を行ない、図3(d)に示す積層フィルムを得る。その後、偏光子層22bに保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)を行なう。
【0018】
図3(c)において、点線B2の位置は、積層フィルムの端部において波打ちや反りが生じている場合は、その波打ちや反りのすべてが点線B2より外側の第1端部23に含まれるように決定することが好ましい。また、樹脂層を形成しない領域(第3端部21a)のすべてが点線B2より外側の第1端部23に含まれるように決定することが好ましい。第1端部23の領域を規定する点線B2は、たとえば、積層フィルムの幅方向の両端から内側に0.5cm以上20cm以下の領域内に決定することが好ましく、1.0cm以上15cm以下の領域内に決定することがより好ましく、1.5cm以上10cm以下の領域内に決定することがさらに好ましい。
【0019】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態の偏光板の製造方法における各製造工程後の積層フィルムを模式的に示す上面斜視図である。まず、図4(a)に示すように基材フィルム31を準備する。次に、積層工程(S10)により、基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層32aを形成して図3(b)に示す積層フィルムを得る。なお、基材フィルム31の幅方向の両方の端部に予め点線A3を規定し、それより外側の領域にポリビニルアルコール系樹脂層を形成しない第3端部31aを設ける。このように、樹脂層32aを形成しない第3端部31aを設けることにより、樹脂層32aを乾燥させる際に、基材フィルムの両端が樹脂層32a側に反る現象を抑制することができる。樹脂層32aは、ポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を塗布した後に乾燥させて形成する。第3端部31aの領域を規定する点線A3は、基材フィルムの幅方向の両端から内側に0.5cm以上20cm以下の領域内に決定することが好ましく、1.0cm以上15cm以下の領域内に決定することがより好ましく、1.5cm以上10cm以下の領域内に決定することがさらに好ましい。
【0020】
次に、図4(b)に示す積層フィルムについて、延伸工程(S20)を行なう。そして、延伸後の積層フィルムである図4(c)に示す積層フィルムについて、点線B3にて切断して点線B3より外側の領域である幅方向の両方の端部(第2端部)34を除去する染色前除去工程(S25)を行ない、図4(d)に示す積層フィルムを得る。染色前除去工程(S25)を有することにより、それまでの工程で端部に波打ちや反りが生じた場合はその端部を除去することができ、延伸後の積層フィルムを良好に巻き取ることができる。したがって、その後の工程で端部の折れ込みやシワが発生することを防止することができる。第2端部34の領域を規定する点線B3は、樹脂層を形成しない領域(第3端部31a)のすべてが点線B3より外側の第2端部34に含まれるように決定することが好ましい。第2端部34を規定する点線B3は、基材フィルムの幅方向の両端から内側に0.5cm以上20cm以下の領域内に決定することが好ましく、1.0cm以上15cm以下の領域内に決定することがより好ましく、1.5cm以上10cm以下の領域内に決定することがさらに好ましい。なお、染色前除去工程(S25)は、上述のように延伸工程(S20)の後に行なう態様に限定されず、延伸工程(S20)の前に行なってもよい。
【0021】
その後、染色工程(S30)および架橋工程(S40)を行ない、図4(e)に示す積層フィルムを得る。そして、染色および架橋を行なった後の図4(e)に示す積層フィルムについて、点線C3にて切断して点線C3より外側の領域である幅方向の両方の端部(第1端部)33を除去する貼合前除去工程(S50)を行ない、図4(f)に示す積層フィルムを得る。その後、偏光子層32bに保護フィルムを貼合する貼合工程(S60)を行なう。
【0022】
本実施形態における貼合前除去工程(S50)では、染色工程(S30)および架橋工程(S40)で端部に波打ちや反りが生じた場合にその端部を除去することができ、保護フィルムの貼合に際して折れ込みやシワが発生することを防止することができる。
【0023】
図4(e)において、点線C3の位置は、積層フィルムの端部において波打ちや反りが生じている場合は、その波打ちや反りのすべてが点線C3より外側の第1端部33に含まれるように決定することが好ましい。第1端部33の領域を規定する点線C3は、たとえば、積層フィルムの幅方向の両端から内側に0.5cm以上20cm以下の領域内に決定することが好ましく、1.0cm以上15cm以下の領域内に決定することがより好ましく、1.5cm以上10cm以下の領域内に決定することがさらに好ましい。
【0024】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、たとえば上記実施形態の各工程を組み合わせて実施することもできる。以下、全ての実施形態において共通する各工程について詳細に説明する。
【0025】
[樹脂層形成工程(S10)]
ここでは、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。基材フィルムに適した材料は、後述する。なお、本実施形態において、基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の延伸に適した温度範囲で延伸できるものを用いることが好ましい。
【0026】
形成する樹脂層の厚みは、3μm超かつ30μm以下であることが好ましく、さらには5〜20μmが好ましい。3μm以下であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、30μmを超えると、最終的に得られる偏光子層の厚みが10μmを超えてしまうことがある。
【0027】
樹脂層は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒に溶解させて得たポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムの一方の表面上に塗工し、溶剤を蒸発させて乾燥することにより形成される。樹脂層をこのように形成することにより、薄く形成することが可能となる。ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムに塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、などを公知の方法から適宜選択して採用できる。乾燥温度は、たとえば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。乾燥時間は、たとえば2〜20分である。
【0028】
また、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂の密着性を向上させるために、基材フィルムと樹脂層の間にプライマー層を設けても良い。プライマー層はポリビニルアルコール系樹脂に架橋剤などを含有する組成物で形成することが密着性の観点から好ましい。
【0029】
(基材フィルム)
基材フィルムに用いる樹脂としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられ、それらのガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)に応じて適切な樹脂を選択できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。
【0030】
基材フィルムは、上述の樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしたものであっても構わない。もちろん、単層でなく多層膜を形成していても構わない。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるエチレン−ポリプロピレン共重合体なども用いることも出来る。共重合は他の種類のモノマーでも可能であり、プロピレンに共重合可能な他種のモノマーとしては、たとえば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例を挙げれば、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
【0032】
上記のなかでも、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、および、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0033】
また、プロピレン系樹脂フィルムを構成するプロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックの立体規則性を有するプロピレン系樹脂からなるプロピレン系樹脂フィルムは、その取扱い性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
【0034】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸には、主に2価のジカルボン酸が用いられ、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0035】
ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの共重合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは結晶性の樹脂であるが、結晶化処理する前の状態のものの方が延伸などの処理を施しやすい。必要であれば、延伸時、または延伸後の熱処理などによって結晶化処理することが出来る。また、ポリエチレンテレタレートの骨格にさらに他種のモノマーを共重合することで結晶性を下げた(もしくは、非晶性とした)共重合ポリエステルも好適に用いられる。このような樹脂の例として、例えば、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などを共重合したものなどが好適に用いられる。これらの樹脂も延伸性にすぐれ好適に用いることができる。
【0036】
ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体以外の具体的な樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレート、などが挙げられる。これらのブレンド樹脂や、共重合体も好適に用いることが出来る。
【0037】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくはノルボルネン系樹脂が用いられる。環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、たとえば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0038】
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例としては、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。たとえば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(たとえば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂として、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0040】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。また、これらの共重合物や、水酸基の一部を他種の置換基などで修飾された物なども挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
【0041】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合されたポリマーからなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性を有する樹脂である。また、高い透明性を有することから光学用途でも好適に用いられる。光学用途では光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなども市販されており、好適に用いることが出来る。
【0042】
このようなポリカーボネート樹脂は広く市販されており、たとえば、パンライト(登録商標)(帝人化成(株))、ユーピロン(登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチック(株))、SDポリカ(登録商標)(住友ダウ(株))、カリバー(登録商標)(ダウケミカル(株))などが挙げられる。
【0043】
基材フィルムには、上記の熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、および着色剤などが挙げられる。基材フィルム中の上記にて例示した熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現されないおそれがあるからである。
【0044】
基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、さらには5〜200μmが好ましい。基材フィルムの厚さは、5〜150μmが最も好ましい。
【0045】
基材フィルムは、樹脂層との密着性を向上させるために、少なくとも樹脂層が形成される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルムの樹脂層が形成される側の表面にプライマー層、接着剤層等の薄層を形成してもよい。なお、ここでいう基材フィルムは、接着剤層やコロナ処理層などは含まないものを意味する。
【0046】
(樹脂層)
樹脂層には、ポリビニルアルコール系樹脂が用いられる。本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が90モル%〜100モル%のものが好適に用いられ、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。たとえば、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで数%ほど変性したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜10000がより好ましい。
【0047】
このような特性を与えるポリビニルアルコール樹脂としては、例えば(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)、PVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%)など;例えば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、N−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%)など;例えば日本酢ビ・ポバール(株)のJF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられ好適に用いることができる。
【0048】
[延伸工程(S20)]
ここでは、基材フィルムおよび樹脂層からなる積層フィルムを一軸延伸する。好ましくは、5倍超かつ17倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。さらに好ましくは5倍超かつ8倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、延伸倍率が17倍を超えると延伸時の積層フィルムの破断が生じ易くなると同時に、延伸フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・ハンドリング性が低下するおそれがある。延伸工程(S20)における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行なうこともできる。この場合、二段階目以降の延伸処理も延伸工程(S20)の中で行ってもよいが、染色工程(S30)や架橋工程(S40)における処理と同時に行なってもよい。このように多段で延伸を行なう場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行なう。
【0049】
本実施形態における延伸工程(S20)においては、積層フィルムの長手方向に対して行なう縦延伸処理や、幅方向に対して延伸する横延伸処理などを実施することが出来る。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法などが挙げられ、横延伸方式としてはテンター法などが挙げられる。
【0050】
また、延伸処理は、湿潤式延伸方法と乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、積層フィルムを延伸する際の温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
【0051】
[染色工程(S30)]
ここでは、延伸した後の積層フィルムの樹脂層を、二色性色素で染色する。二色性色素としては、たとえば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
【0052】
染色工程は、たとえば、上記二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に、積層フィルム全体を浸漬することにより行なう。染色溶液としては、上記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されても良い。二色性色素の濃度としては、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることが特に好ましい。
【0053】
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
【0054】
染色溶液への積層フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、30秒〜3分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
【0055】
なお、染色処理は、延伸工程と同時に行なうことも可能であるが、ポリビニルアルコール系樹脂に吸着させた二色性色素を良好に配向させることが出来るよう、未延伸フィルムに延伸工程を施した後に行なうことが好ましい。この際、予め目標の倍率で延伸されたものを単に染色するのみでも良いし、予め低倍率で延伸されたものを染色中に再度延伸して、トータルで目的の倍率に達する方法であっても良い。また、さらにその後の架橋処理中に延伸をする場合には、ここでも低倍率の延伸にとどめておくことも出来る。この場合架橋処理後に目的に倍率に達するように適時調整すればよい。
【0056】
[架橋工程(S40)]
染色工程(S30)に次いで架橋工程(S40)を行なう。架橋工程は、たとえば架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に染色工程(S30)を経た積層フィルムを浸漬することにより行なうことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0057】
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、たとえば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、6〜15重量%であることがより好ましい。
【0058】
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
【0059】
架橋溶液への積層フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜90℃の範囲にあることが好ましい。
【0060】
なお、架橋工程は、架橋剤を染色溶液中に配合することにより、染色工程と同時に行なうこともできる。また、予め目標の倍率で延伸されたものを単に架橋させるのみでも良いし、架橋処理と延伸処理を同時に行っても良い。予め延伸工程で低倍率で延伸された延伸フィルムを、架橋処理中に再度延伸することで、トータルで目的の倍率に達するようにしてもよい。
【0061】
架橋工程の後に洗浄工程を行なうことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を施すことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水に延伸フィルムを浸漬することにより行なうことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。浸漬時間は通常2〜300秒間、好ましくは3〜240秒間である。
【0062】
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。以上の工程を経ることにより、樹脂層が偏光子としての機能を有することになる。本明細書においては、偏光子としての機能を有する樹脂層を偏光子層という。
【0063】
[貼合前除去工程(S50)]
貼合前除去工程(S50)における積層フィルムの切断は、ロールなどの長尺を連続で処理できる方法が好ましい。方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、一般にスリッターと呼ばれている方法などを好適に用いることができる。
【0064】
スリッターの例としては、たとえばレザー刃と呼ばれる剃刀刃を用いる方法が挙げられる。同じレザー刃を用いた方法でも、特にバックアップガイドを設けずに空中でスリットする中空切りや、バックアップガイドとして、溝を切ったロールに刃を入れ込んでスリットの蛇行を安定させる溝ロール法などがある。その他にも、シヤー刃と呼ばれる円形の刃を2枚用いて、フィルムの搬送にあわせて回転させながら上刃で下刃に接圧をかけてスリットする方法や、シヤー刃やスコアー刃と呼ばれる刃を焼き入れロール等に押し付けてスリットする方法、さらに、シヤー刃を2枚組み合わせてハサミのようにカットしながらスリットする方法などを用いることができる。中でも、フィルムのスリット位置を簡単に変更でき、かつ、走行が安定しやすい方法である「レザー刃を用いた溝ロール法」などが好適に用いられる。
【0065】
この貼合前除去工程(S50)は、大掛かりな装置を必要としないので、他のいずれかの工程のインラインに組み込んで実施することが効率的である。たとえば、架橋工程(S40)の直後にスリッターなどの端部除去装置を設置してそこで端部(第1端部)を除去した後、そのまま、乾燥工程に投入することも出来る。また、同様に、乾燥工程の直後などに設置しても良い。当然のことながら、スリット工程だけが別の独立した工程として存在していても良く、このような独立工程の例としては、たとえば、ロールの巻き替えなどを行なうリワインダーなどのスリッターが設置してあるものなどが挙げられる。しかしながら、通常、これらの工程は一つのライン内で連続していることが生産性の観点から好ましく、架橋工程(S40)、貼合前除去工程(S50)、貼合工程(S60)の順に連続している設備であることが好ましい。また、貼合前除去工程の前後のどちらか一方、または両方に偏光子の乾燥工程があることが好ましい。乾燥工程としては、任意の適切な方法(たとえば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。たとえば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜95℃であり、乾燥時間は、通常、1〜15分間程度である。
【0066】
端部(第1端部)を除去しないフィルムが、保護フィルムの貼合時に不具合を生じる主原因としては、架橋工程(S40)で生じる端部のウェーブカール、反り、折れこみなどによって生じる急激な厚み差が挙げられ、このような厚み差がある部分に接着剤が溜まることによって引き起こされる不具合(たとえば、当該溜まりの乾燥不良による偏光子の青変劣化)が多い。また、積層工程(S10)において樹脂層を形成しない領域(第3端部)を有し、かつ延伸工程(S20)の前または後においてかかる領域(第3端部)を除去していない場合には、延伸工程(S20)での端部ゆがみやウェーブカール、さらには塗布部と未塗布部の段差そのものが貼合時の不具合をより助長する。このような観点から、貼合前除去工程(S50)においては、樹脂層を形成しない第3端部を除去するのはもちろん、第3端部よりやや内側から除去することで、極端に厚みが異なる部分を除去してしまうことが好ましい。もちろん、厚みが端部まで比較的一定であり、端部除去する必要がない場合には第1端部が第3端部と一致するように除去してもよい。
【0067】
第3の実施形態における染色前除去工程(S25)についても、上述の貼合前除去工程(S50)と同様の方法で行なうことができる。
【0068】
[貼合工程(S60)]
ここでは、偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合して偏光板を得る。保護フィルムを貼合する方法としては、粘着剤で偏光子層と保護フィルムを貼合する方法、接着剤で偏光子層面と保護フィルムを貼合する方法が挙げられる。
【0069】
(保護フィルム)
貼合工程(S50)で用いられる保護フィルムとしては、光学機能を有さない単なる保護フィルムであってもよいし、位相差フィルムや輝度向上フィルムといった光学機能を併せ持つ保護フィルムであってもよい。保護フィルムの材質としては、特に限定されるものではないが、たとえば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において従来より広く用いられてきているフィルムを挙げることができる。
【0070】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、適宜の市販品、例えば、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(登録商標)(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)を好適に用いることができる。このような環状ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などの予め製膜された環状ポリオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を用いてもよい。
【0071】
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、またはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、一つの方向につき通常1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
【0072】
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光子層と接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行なうのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
【0073】
酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、たとえば、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を好適に用いることができる。
【0074】
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、視野角特性を改良するために液晶層などを形成してもよい。また、位相差を付与するため酢酸セルロース系樹脂フィルムを延伸させたものでもよい。酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
【0075】
上述したような保護フィルムの表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの光学層を形成することもできる。保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法はとくに限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0076】
保護フィルムの厚みは薄型化の要求から、薄いものが好ましく、88μm以下が好ましく、48μm以下がより好ましい。薄すぎると強度が低下して加工性に劣るため、5μm以上であることが好ましい。
【0077】
(粘着剤)
保護フィルムと偏光子層との貼合に用いられる粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの架橋剤を加えた組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。
【0078】
粘着剤層の厚みは1〜40μmであることが好ましいが、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲で、薄く塗るのが好ましく、より好ましくは3〜25μmである。3〜25μmであると良好な加工性を有し、かつ偏光フィルムの寸法変化を押さえる上でも好適な厚みである。粘着剤層が1μm未満であると粘着性が低下し、40μmを超えると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じ易くなる。
【0079】
粘着剤により保護フィルムを偏光子層に貼合する方法においては、保護フィルム面に粘着剤層を設けた後、偏光子層に貼合してもよいし、偏光子層面に粘着剤層を設けた後、ここに保護フィルムを貼合してもよい。
【0080】
粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものではなく、保護フィルム面、もしくは偏光子層面に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、保護フィルムと偏光子層とを貼り合わせてもよいし、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、保護フィルム面もしくは偏光子層面に転写して積層してもよい。また、粘着剤層を保護フィルムもしくは偏光子層面に形成する際には必要に応じて保護フィルムもしくは偏光子層面、または粘着剤の片方若しくは両方に密着処理、たとえば、コロナ処理等を施してもよい。
【0081】
(接着剤)
保護フィルムと偏光子層との貼合に用いられる接着剤は、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤が挙げられる。保護フィルムとしてケン化処理などで親水化処理された酢酸セルロース系フィルムを用いる場合、偏光子層との貼合用の水系接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μm以下となる。
【0082】
水系接着剤を用いて偏光子層と保護フィルムとを貼合する方法は特に限定されるものではなく、たとえば偏光子層および/または保護フィルムの表面に接着剤を均一に塗布し、塗布面にもう一方のフィルムを重ねてロールなどにより貼合し、乾燥する方法などが挙げられる。通常、接着剤は、その調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15〜30℃の範囲である。
【0083】
水系接着剤を使用する場合は、偏光子層と保護フィルムとを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するため、積層フィルムを乾燥させる。乾燥炉の温度は、30〜90℃が好ましい。30℃未満であると偏光子層面と保護フィルム面が剥離しやすくなる傾向がある。90℃以上であると熱によって光学性能が劣化するおそれがある。乾燥時間は10〜1000秒とすることができ、特に生産性の観点からは、好ましくは60〜750秒、更に好ましくは150〜600秒である。
【0084】
乾燥後はさらに、室温またはそれよりやや高い温度、たとえば、20〜45℃程度の温度で12〜600時間程度養生しても良い。養生のときの温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
【0085】
また偏光子層と保護フィルムを貼合する際の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。ここでいう光硬化性接着剤とは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで硬化する接着剤であり、たとえば、重合性化合物及び光重合開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むものなどを挙げることができる。前記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマーなどの光重合性モノマーや、それらモノマーに由来するオリゴマーなどを挙げることができる。前記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。重合性化合物及び光重合開始剤を含む光硬化性接着剤として、光硬化性エポキシ系モノマー及び光カチオン重合開始剤を含むものが好ましい。
【0086】
なお、上述したように、端部(第1端部)を除去しないフィルムが、保護フィルムの貼合時に生じる不具合として、折れ込みやシワによる接着剤の部分的な溜まりが挙げられるが、光硬化性接着剤を使用した場合にこの溜まり部分が加熱されると、この部分が黄変劣化する恐れがあり、この黄変劣化を回避する観点からも、第1端部を除去する本発明の製造方法は効果的である。
【0087】
偏光子層と保護フィルムを光硬化性接着剤にて貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光子層および/または保護フィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である偏光フィルムまたは保護フィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、または両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
【0088】
偏光子層または保護フィルムの表面に接着剤を塗布した後、偏光フィルムおよび保護フィルムを接着剤塗布面を介してニップロールなどで挟んで貼り合わせることにより接着される。また、偏光子層と保護フィルムとを一部重ね合わせた状態で偏光子層と保護フィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層フィルムをロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、偏光子層と保護フィルムの間に接着剤を滴下した後、この積層フィルムをロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、これらロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。上記ニップロール等を用いて貼り合わされた後の接着剤層の、乾燥または硬化前の厚さは、5μm以下かつ0.01μm以上であることが好ましい。
【0089】
偏光子層および/または保護フィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0090】
接着剤として光硬化性樹脂を用いた場合は、偏光フィルムと保護フィルムとを接合後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
【0091】
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cmであることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm以下である場合、光源から輻射される熱および光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光フィルムの劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤に応じて適用されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上でかつ2μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上でかつ1μm以下である。
【0092】
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光フィルムの偏光度、透過率および色相、ならびに保護フィルムの透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行なうことが好ましい。
【0093】
[剥離工程(S70)]
本発明の製造方法においては、保護フィルムを偏光子層に貼合する貼合工程(S60)の後、基材フィルムの剥離工程(S70)を行なうことができる。基材フィルムの剥離工程(S70)では、基材フィルムを積層フィルムから剥離する。基材フィルムの剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われる剥離フィルムの剥離工程と同様の方法で剥離できる。貼合工程(S60)の後、そのまますぐ剥離してもよいし、一度ロール状に巻き取った後、別に剥離工程を設けて剥離してもよい。
【実施例】
【0094】
[実施例1]
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルムロールを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムロールの合計厚みは100μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
【0095】
(2)プライマー層の形成
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部混合した。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した上記基材フィルムロールのコロナ処理面上にグラビアコーターを用いて連続で塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。この作業を、基材フィルムの反対側にも施し、両面にプライマー層を設けた「プライマー層/基材フィルム/プライマー層」の構成からなるフィルムを作成した。
【0096】
(3)樹脂層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、基材フィルムの一方のプライマー層上にカンマコーターを用いて連続で塗工し、80℃で5分間乾燥させることにより、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる3層構造の積層フィルムロールを作製した。ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層の厚みは10.6μmであった。ここでも、同じ作業を基材フィルムの反対側のプライマー層上にも施し、両面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を設けた「ポリビニルアルコール系樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層」の構成からなる積層フィルムを作成した。ここで、ポリビニルアルコール水溶液は、基材フィルムの端から1cmの両端の領域(第3端部)においては塗布しなかった。
【0097】
(4)染色前除去工程および延伸工程
上記の積層フィルムロールの両端部(第2端部)を端から2cmの位置で切断して未塗布部分を連続で除去した後(染色前除去工程)、ロール間空中延伸装置にて160℃の延伸温度で縦方向に5.8倍に自由端一軸延伸し、積層フィルムロールを得た。得られた積層フィルムロールの厚みは55.2μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.1μmであった。
【0098】
(5)染色工程、架橋工程、貼合前除去工程
延伸後の積層フィルムロールについて、次の手順で染色工程および架橋工程を行なった。まず、積層フィルムを30℃のヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に150秒間程度の滞留時間となるように浸漬し、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行ない(染色工程)、ついで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である72℃の架橋溶液に600秒間程度の滞留時間となるように浸漬させた(架橋工程)。その後、10℃の純水で4秒間洗浄した後、このフィルムの両端部を端から1.5cmずつの位置でスリットして両端部のカール部分(第1端部)を除去した(貼合前除去工程)。最後に80℃で300秒間乾燥させて、積層フィルムロールを得た。
【0099】
(6)貼合工程
貼合前除去工程を経た積層フィルムロールを用いて、次の手順で偏光板を作製した。まず、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部混合し、接着剤溶液とした。
【0100】
次に、得られた積層フィルムロールの両面に存在するポリビニルアルコール系樹脂層上に、上記接着剤溶液を塗布した後、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製「KC4UY」)を両面から貼合し、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板は、偏光子端部での折れ込みやシワ、青変といった不具合もなく、偏光子の端部まで良好に接着された良い状態のものであった。
【0101】
[実施例2]
基材として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、エチレングリコールの3種のモノマーが共重合されてなるポリエステル基材を用いた。基材フィルムの厚みは70μmであった。実施例1と同じ方法でプライマー層およびポリビニルアルコール系樹脂層を設け、「ポリビニルアルコール系樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層」の構成からなる積層フィルムを作成した(積層工程)。プライマー層の厚みは0.2μm、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは10.4μmであった。ここでも、ポリビニルアルコール水溶液は、基材フィルムの端から1cmの両端の領域(第3端部)においては塗布しなかった。
【0102】
上記の積層フィルムロールの端から2cmの両端の領域(第2端部)を除去してから(染色前除去工程)、ロール間空中延伸装置にて110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し(延伸工程)、積層フィルムロールを得た。得られた積層フィルムロールの厚みは40.5μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.2μmであった。
【0103】
得られた積層フィルムを実施例1と同様にして染色工程を行ない、洗浄し、ついで、積層フィルムの端から2cmの両端の領域(第1端部)をスリットにより連続で除去した(貼合前除去工程)。その後、実施例1と同じ方法で乾燥して積層フィルムを得た。得られた積層フィルムに実施例1と同じ方法で両面に保護フィルムを貼合して(貼合工程)、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板は、偏光子端部での折れ込みやシワ、青変といった不具合もなく、偏光子の端部まで良好に接着された良い状態のものであった。
【0104】
[実施例3]
実施例2と同じ積層フィルムロールを用いたが、延伸前に両端部を除去せずに(染色前除去工程を行なわずに)用いた。ロール間空中延伸装置にて110℃の延伸温度で縦方向に4.0倍に自由端一軸延伸し(延伸工程)、縦延伸した積層フィルムロールを得た。延伸倍率が低いため特に破断など不具合は生じなかったため、そのまま巻き取ることができた。得られた積層フィルムを実施例1と同様にして染色工程を行ない、洗浄し、ついで、積層フィルムの端から2cmの両端の領域(第1端部)をスリットにより連続で除去した(貼合前除去工程)。
【0105】
その後、実施例1と同じ方法で乾燥して積層フィルムを得た。得られた積層フィルムに実施例1と同じ方法で両面に保護フィルムを貼合して(貼合工程)、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板は、偏光子端部での折れ込みやシワ、青変といった不具合もなく、偏光子の端部まで良好に接着された良い状態のものであった。
【0106】
[比較例1]
貼合前除去工程を行なわなかった以外は、実施例1と同様にして、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板ロールには、端部から生じたフィルム屑の噛み込み部に接着剤が溜まって若干の青変が生じ、また、架橋槽で部分的に生じた端部歪みからシワも発生していた。
【0107】
[比較例2]
貼合前除去工程を行なわなかった以外は、実施例2と同様にして、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板ロールには、端部から生じたフィルム屑の噛み込み部に接着剤が溜まって若干の青変が生じ、また、架橋槽で部分的に生じた端部歪みからシワも発生していた。
【0108】
[比較例3]
染色前除去工程を行なわなかった以外は、比較例2と同様にして、保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/接着剤層/保護フィルムの9層からなる偏光板ロールを得た。得られた偏光板ロールには、塗布部/未塗布部(第3端部)の境界の段差に接着剤が溜まって青変が多数生じ、また、延伸時に生じた未塗布部のリボン状の歪みから多くのシワや折れ込みが発生していた。
【0109】
表1は、実施例1〜3、比較例1〜3の各製造方法の概要および貼合後の端部の状態をまとめたものである。
【0110】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の製造方法により製造される偏光板は、液晶表示装置をはじめとする各種表示装置に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
11,21,31 基材フィルム、12a,22a,32a 樹脂層、12b,22b,32b 偏光子層、13,23,33 第1端部、34 第2端部、21a,31a 第3端部。
図1
図2
図3
図4