(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
本発明が適用された報知システム1は、移動物の存在を周囲に報知するためのシステムである。詳細には、
図1に示すように、路側装置10、端末装置20、および通知装置40を備えて構成されている。なお、本実施形態において、路側装置10は複数備えられているが、これらの路側装置10は同様の構成であるため、
図1では1つの路側装置10を図示する。
【0011】
路側装置10は、
図1に示すように、路側制御部11と、HF帯送信部12と、位置検出部13と、を備えている。路側制御部11は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のコンピュータとして構成されており、所定のプログラムに従った処理を実施する。
【0012】
HF帯送信部12は、極短距離の通信に利用されるHF帯の電波を送信可能な通信モジュールとして構成されている。HF帯送信部12は、路側制御部11からの指令に応じて、データ送信を要求する要求信号を送信する。
【0013】
位置検出部13は、例えば、周知のGPS受信機として構成されており、位置の検出結果を路側制御部11に送る。なお、位置検出部13は、路側装置10の位置を特定可能な位置特定情報であれば、どのような情報を路側制御部11に送るようにしてもよい。例えば、受信側の装置(端末装置20、または端末装置20から送信された信号を受信した装置)において路側装置10の識別情報と位置とを対応付けたマップを備えている場合には路側装置10の識別情報を送ってもよい。
【0014】
ここで、複数の路側装置10は、
図2に示すように、交差点近くの道路周辺に配置されている。より具体的には、路側装置10は、ガードレールや交通信号機等の道路に配置された構造物に配置されており、予め設定された対象領域内(例えば自身から半径3m程度の範囲内)に要求信号と位置特定情報とを周期的に送信する。
【0015】
これらの路側装置10は、交差点からの距離が異なる位置にそれぞれ配置され、端末装置20は、端末装置20の移動に伴って複数の路側装置10からの要求信号を順次受信するよう設定されている。そして、端末装置20は、何れの路側装置10からの信号を受信したのかによって、交差点までの距離を認識できるよう構成されている。
【0016】
端末装置20は、
図2に示すように、歩行者や自転車等、乗用車等の車両から見て交通弱者である移動物に、所持または搭載されている。端末装置20は、
図1に示すように、端末制御部21と、HF帯受信部22と、UHF帯送信部23と、を備えている。
【0017】
HF帯受信部22は、HF帯の電波を受信可能に構成され、特に、路側装置10から送信されたHF帯の電波を受信する機能を有する。
UHF帯送信部23は、見通し範囲内を通信範囲とするUHF帯の電波を送信可能な通信モジュールとして構成されている。UHF帯送信部23は、端末制御部21からの指令に応じて、データを送信する。
【0018】
端末制御部21は、路側制御部11と同様に、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のコンピュータとして構成されており、所定のプログラムに従った処理を実施する。特に、端末制御部21は、HF帯受信部22を介して要求信号および位置特定情報を受信すると、端末装置20の識別情報(ID)および受信した位置特定情報を、UHF帯送信部23を介して通信相手を特定することなく送信する。
【0019】
通知装置40は、
図2に示すように、端末装置20からの電波を受信可能であり、端末装置20に関する移動体とは異なる車両等の移動体に搭載されている。そして、通知装置40は、
図1に示すように、通知制御部41と、UHF帯受信部42と、通知部43と、を備えている。
【0020】
UHF帯受信部42は、UHF帯の電波を受信可能に構成され、特に、通信装置20から送信されたUHF帯の電波を受信する機能を有する。通知部43は、ディプレイやスピーカ等を備えており、通知制御部41からの指令に応じて、ディスプレイやスピーカ等を利用して警報等の報知を実施する。
【0021】
通知制御部41は、路側制御部11等と同様に、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のコンピュータとして構成されており、所定のプログラムに従った処理を実施する。特に、道路鋲装置30から送信されたUHF帯の電波を受信すると、通知部43を介した警報を実施する。
【0022】
[本実施形態の処理]
このような報知システム1において、端末装置20は、
図3に示す端末処理を実施する。端末処理は、例えば、端末装置20の電源が投入されると開始され、その後、繰り返し実施される処理である。
【0023】
端末処理の詳細は、
図3に示すように、まず、HF帯受信部22を介して、路側装置10から送信されたHF信号(要求信号)を受信したか否かを判定する(S110)。HF信号を受信していなければ(S110:NO)、S110の処理を繰り返す。
【0024】
また、HF信号を受信していれば(S110:YES)、HF信号に含まれる位置情報等を端末制御部21のRAM(記憶部)に書き込む(S120)。ここで、HF信号には、
図4(a)に示すように、送信時刻、位置情報、インフラID、および優先度の情報が含まれている。
【0025】
インフラIDは、路側装置10を識別する固有のID(識別子)を示す。また、優先度の情報は、送信パラメータの一部を示す情報であって、端末装置20からの情報を通知装置40に伝える際に求められる確実性の高さを示す。この優先度の情報は、交差点の見通しの善し悪しや、勾配等の状況に応じて設定され、特に、路側装置10の交差点からの距離が近くなるにつれてより高くなるよう設定されている。
【0026】
続いて、端末装置20から電波送信をする際の各種設定に関するパラメータを表す送信パラメータを設定する(S130)。ここで、送信パラメータは、取得した優先度に応じて設定される。詳細には、
図4(b)に示すように、例えば、端末装置20のROMにおいて、優先度に、パケットの送信間隔Td、電波強度TxP、送信回数Nmax、速度の閾値Vth、振動数の閾値αn_th、および振動の大きさの閾値αm_thが対応付けられたテーブルを有している。
【0027】
図4(b)に示す例において、優先度は1〜3の3段階で設定され、優先度3が最も高い優先度に、また、優先度1が最も低い優先度に設定されている。そして、優先度が高くなるに従って、所在情報を送信する回数が多く、所在情報の送信周期が短く、所在情報を送信する際の電波強度が強くなるよう設定されている。
【0028】
なお、送信パラメータのテーブルにおいては多数の送信パラメータを設定可能とされているが、この中から任意の送信パラメータを設定することができる。つまり、全ての送信パラメータを利用することを必須としない。本処理では、パケットの送信間隔Td、送信回数Nmax、速度の閾値Vth、および振動数の閾値αn_thを送信パラメータとして設定し、電波強度TxP、および振動の大きさの閾値αm_thについては利用しない。
【0029】
続いて、移動物の速度と送信パラメータとして設定された基準速度(速度の閾値Vth)とを比較する(S310)。ここで、移動物の速度は、例えば周知のGPS受信機による位置検出履歴から推定してもよいし、周知の速度センサから推定してもよいし、後述する変形例に示す構成等、その他の構成としてもよい。
【0030】
移動物の速度が基準速度以下であれば(S310:NO)、S110の処理に戻る。また、移動物の速度が基準速度よりも大きければ(S310:YES)、移動物の単位時間当たりの振動数と基準振動数(振動数の閾値αn_th)とを比較する(S320)。ここで、移動物の振動数は、周知の加速度センサ等から取得すればよい。
【0031】
移動物の振動数が基準振動数以下であれば(S320:NO)、S110の処理に戻る。また、移動物の振動数が基準振動数よりも大きければ(S320:YES)、設定した送信パラメータの読み込みを行い、送信パラメータに従って送信タイミングや出力等の設定を行う(S140)。
【0032】
そして、この設定に従ってデータの送信を行う(S150)。ここで、端末装置20から送信されるデータは、例えば、
図4(c)に示すように、送信時刻、位置情報、インフラID、優先度、およびタグIDの情報が含まれている。
【0033】
この処理では、路側装置10から受信したデータに対してタグIDを追加したデータを送信する構成とすることができ、このようにすると、端末装置20においてデータを生成する処理を簡素化することができる。S150の処理においてパケットを送信すると、タイマを起動し、タイマ時間Tの計時を開始する。
【0034】
続いて、端末装置20からパケットが送信された回数Nと送信パラメータとして設定された送信回数Nmaxとを比較する(S160)。送信回数Nが送信回数Nmaxに満たなければ(S160:YES)、HF帯受信部22を介して、路側装置10から送信されたHF信号(要求信号)を受信したか否かを判定する(S170)。
【0035】
HF信号を受信していなければ(S170:NO)、送信回数Nをインクリメントするとともに、送信パラメータとして設定された送信間隔Tdだけ待機し(S190)、S140の処理に戻る。また、HF信号を受信していれば(S170:YES)、タイマ時間Tおよび送信回数Nをリセットし、S120の処理に戻る。
【0036】
なお、S160の処理にて、送信回数Nが送信回数Nmax以上であれば(S160:NO)、端末処理を終了する。
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した報知システム1において、路側装置10(路側制御部11)は、HF帯送信部12を介して予め設定された領域内に要求信号を送信し、端末装置20(端末制御部21)は要求信号を受信し、要求信号に含まれる優先度、または端末装置20がおかれた環境に応じて生成される優先度、のうちの少なくとも一方を取得する。そして、端末装置20は取得した優先度に応じて、電波送信に関するパラメータを表す送信パラメータを設定し、送信パラメータに従って自身の存在を示すデータを含む所在情報を送信する。
【0037】
このような報知システム1によれば、優先度に応じて送信パラメータを設定するので、優先度が高いときだけに、送信頻度や送信回数を多くするなど、所在情報を送信する際の設定を変更することができる。よって、所在情報を受信する装置に確実に所在情報を送信し、かつ端末装置20での消費電力を節約することができる。
【0038】
また、上記報知システム1において、端末装置20は、端末装置20の移動速度と予め設定された速度基準値とを比較し、端末装置20の移動速度が速度基準値以上である場合に、所在情報を送信する。
【0039】
このような報知システム1によれば、端末装置20の移動速度が大きく、所在情報を送信する優先度が高い場合に所在情報を送信することができる。
さらに、上記報知システム1において、端末装置20は、端末装置20に加わる振動の大きさまたは振動周期と予め設定された振動基準値とを比較し、端末装置20に加わる振動の大きさまたは振動周期が振動基準値以上である場合に、所在情報を送信する。
【0040】
このような報知システム1によれば、端末装置20の振動が激しく、端末装置20が移動していると推定できる場合に、所在情報を送信する優先度が高いものとして所在情報を送信することができる。
【0041】
さらに、報知システム1において端末装置20は、優先度が高くなるに従って、所在情報を送信する回数を多く設定するか、所在情報の送信周期を短くするか、或いは、所在情報を送信する際の電波強度を強くするか、のうちの少なくとも1つの設定を行う。
【0042】
このような報知システム1によれば、優先度が高くなるに従って、所在情報を受信する装置が所在情報を受信できる確度を高めることができる。
さらに、報知システム1において、路側装置10(路側制御部11)は、優先度に関する情報を含む要求信号を送信する。
【0043】
このような報知システム1によれば、路側装置10によって優先度を送信することで端末装置20での送信パラメータを設定できる。
また、報知システム1において、路側には、複数の路側装置10を備え、端末装置20は、端末装置20の移動に伴って複数の路側装置10からの要求信号を順次受信するよう設定されているとともに、要求信号に含まれる優先度は、路側装置10の交差点からの距離が近くなるにつれてより高くなるよう設定されている。
【0044】
このような報知システム1によれば、端末装置20が交差点に接近するにつれて優先度を高く設定することができる。例えば、
図4(b)の中から速度閾値を送信パラメータとして設定した場合、移動速度が大きい端末ほど交差点から遠い位置からパケットを送信し、逆に移動速度が小さい端末は交差点から遠い位置ではパケットを送信しなくなるため、端末の電力消費量を節約することができる。
【0045】
[第1変形例]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、ある交差点において複数の路側装置10を備えた構成としたが、
図5に示すように、1つの路側装置10だけを備えていてもよい。このようにすると、路側装置10の数を抑制することができるので、システムを簡素化することができる。
【0047】
[第2変形例]
また、上記実施形態においては、端末処理において、端末装置20の移動速度が速度基準値以上である場合、かつ端末装置20に加わる振動の大きさまたは振動周期が振動基準値以上である場合に、端末装置20からデータ送信するよう構成したが、
図6に示すように、これらの処理(S310、S320)は省略してもよい。また、これらの処理のうちの何れか一方を省略してもよい。
【0048】
[第3変形例]
また、上記実施形態では、路側装置10は優先度を含む要求信号を送信したが、送信間隔Tdや速度閾値Vth、或いは送信周波数等、送信パラメータとして端末装置20が設定すべきパラメータを送信してもよい。この場合、端末装置20においては送信パラメータを備えないようにしてもよいし、複数の送信パラメータのうちの何れか一方を優先して採用するようにしてもよい。
【0049】
このように路側装置10から送信パラメータを送信する場合には、路側装置10から送信される要求信号には、
図7に示すように、送信時刻、位置情報、インフラID、および送信パラメータに関する情報が含まれていればよい。
【0050】
このような報知システム1によれば、端末装置20は路側装置10から電波送信に関するパラメータを取得するので、送信パラメータを容易に設定することができる。そして、取得したパラメータそのものを送信パラメータに設定すれば、送信パラメータを設定する際の処理を簡素化することができる。
【0051】
[第4変形例]
上記実施形態では、端末装置20が移動物の移動速度を検出する構成については、特に特定しなかったが、端末装置20は、路側装置10から受信するパケット数や、中身の情報に応じて移動物の移動速度や移動方向を推定する処理を実施してもよい。また、移動速度等に応じて報知を行うか否か(例えば、端末装置20からのデータ送信を行うか否か)を設定してもよい。
【0052】
このような移動物の移動速度を推定したり、報知を行うか否かを設定したりする処理としては、例えば、
図8に示す速度推定処理を実行することが考えられる。なお、移動物の速度を推定する処理については、通知装置40等、端末装置20からの電波を受信可能な装置が実施してもよい。
【0053】
速度推定処理は、報知システム1において、路側制御部11がHF帯送信部12を介して、要求信号を周期的に送信し、端末装置20が要求信号を受けた回数(パケット数)に応じて移動物の移動速度を推定する処理である。
【0054】
また、速度推定処理は、
図8に示すように、路側装置10から要求信号が送信される周期毎に開始される処理である。速度推定処理では、まず、要求信号を受信したか否かを判定する(S410)。
【0055】
応答を受信していれば(S410:YES)、路側装置10のIDを特定し(S420)、このIDに関するカウンタをインクリメントし(S430)、速度推定処理を終了する。また、応答を受信していなければ(S410:NO)、応答を受信するための待機時間が経過したか否かを判定する(S440)。
【0056】
待機時間が経過していなければ(S440:NO)、S410の処理に戻る。また、待機時間が経過していれば(S440:YES)、カウンタ値(要求信号に対するデータを受けた回数)に応じて移動物の移動速度を推定する(S450)。この処理では、例えば、路側装置10による要求信号が送信される範囲(例えば半径3m程度の形成エリア)の広さとデータを受けた回数とから移動速度を推定する。
【0057】
より詳細には、例えば、下記数式によって移動速度Vを算出することができる。
【0058】
【数1】
また、報知システム1では、複数の路側装置10を備えているので、端末装置20が路側装置10から送信される位置情報を順次取得し、その変化を検出することで、端末装置20は移動物の移動方向を特定することができる。
【0059】
そして、移動速度や移動方向、或いは端末装置20が検出された位置に応じて、報知を行う優先度が高いか否かを判定する(S460)。報知を行う優先度が高く、報知をする必要がある場合には、通知部43等による報知を行うよう指示する信号を送信する(S470)。そして、カウンタをクリアし(S480)、速度推定処理を終了する。なお、カウンタがリセットされても、一定時間は報知が継続されるようにしてもよい。
【0060】
このような報知システム1によれば、データを受けた回数に応じて移動物の移動速度を推定することができるので、速度情報を端末装置20の外部(速度センサ等)から取得する必要がない。よって、通信を簡素化するとともに、端末装置20の構成も簡素化することができる。
【0061】
[第5変形例]
上記実施形態では、端末装置20が路側装置10から優先度に関する情報を取得したが、端末装置20において優先度を設定してもよい。例えば、端末装置20の移動速度の大きさや移動方向、或いは振動の大きさ等に応じて優先度を設定してもよい。この場合、移動ベクトルが交差点方向に向かうにつれて、移動速度が大きくなるにつれて、或いは振動の大きさが大きくなるにつれて、優先度を高く設定すればよい。
【0062】
このような無線通信システムによれば、端末装置20自身が環境に応じて優先度を設定することができる。
なお、端末装置20が優先度を生成する際には、端末装置20自身で得られた情報だけに基づいて生成してもよいし、路側装置10から取得した情報を加味して生成してもよい。
【0063】
[本発明と実施形態の構成との関係]
上記実施形態において、路側制御部11は、本発明でいう要求送信手段に相当する。また、上記実施形態におけるS120,S130の処理は、本発明でいう優先度取得手段に相当し、S130の処理は、本発明でいう送信パラメータ設定手段に相当する。
【0064】
さらに、S150の処理は、本発明でいう所在情報送信手段に相当し、S310の処理は、本発明でいう速度比較手段に相当する。また、S320の処理は、本発明でいう振動比較手段に相当し、S410〜S450の処理は、本発明でいう移動速度検出手段に相当する。