特許第6023022号(P6023022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023022
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】電力消費量算出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20161027BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20161027BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   H04M11/00 302
   H04Q9/00 311H
   H02J13/00 301A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-162156(P2013-162156)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-33029(P2015-33029A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敦
(72)【発明者】
【氏名】岡 宏規
(72)【発明者】
【氏名】田中 百合子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 景一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 友美
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−181855(JP,A)
【文献】 特開2003−337147(JP,A)
【文献】 特表2012−523620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/26−1/32
H02J3/00−5/00
13/00
H03J9/00−9/06
H04M3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源設備、空調設備、および通信設備を共用することにより複数の通信サービスを混在させて提供する施設において、これら通信サービスで消費する個別のサービス別電力消費量を、当該施設全体で消費する施設電力消費量に基づいて算出する電力消費量算出システムであって、
前記電源設備の電源損失率および前記空調設備の空調効率を記憶する共用設備情報DBと、
前記通信設備のうち前記通信サービスがそれぞれ使用するサービス別通信設備規模量を記憶するサービス別情報DBと、
入力された前記施設電力消費量と前記共用設備情報DBの前記電源損失率とに基づいて前記電源設備で消費される電源設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量および前記電源設備電力消費量と前記共用設備情報DBの前記空調効率とに基づいて前記空調設備で消費される空調設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量と前記電源設備電力消費量および前記空調設備電力消費量とに基づいて前記通信設備で消費される通信設備電力消費量を算出する共用電力消費量算出部と、
前記共用電力消費量算出部で得た前記通信設備電力消費量を、前記サービス別情報DBの前記サービス別通信設備規模量で按分することにより、前記通信サービスのサービス別電力消費量を算出するサービス別電力消費量算出部と
を備えることを特徴とする電力消費量算出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力消費量算出システムにおいて、
前記通信設備電力消費量を示すWcは、前記施設電力消費量をWxとし、前記電源損失率をRpとし、前記空調効率をRaとし、前記電源設備電力消費量をWpとし、前記空調設備電力消費量をWaとした場合、次の式
Wp=Wx・Rp
Wa=(Wx−Wp)・Ra
Wc=Wx−(Wp+Wa)
により算出されることを特徴とする電力消費量算出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力消費量算出システムにおいて、
任意の前記通信サービスである通信サービスiに関する前記サービス別電力消費量を示すWiは、当該通信サービスiに関する前記サービス別通信設備規模量をLiとし、前記通信設備の全通信設備規模量をLとし、前記通信設備電力消費量をWcとした場合、次の式
Wi=Wc・Li/L
により算出されることを特徴とする電力消費量算出システム。
【請求項4】
電源設備、空調設備、および通信設備を共用することにより複数の通信サービスを混在させて提供する施設において、これら通信サービスで消費する個別のサービス別電力消費量を、当該施設全体で消費する施設電力消費量に基づいて算出する電力消費量算出システムで用いられる電力消費量算出方法であって、
共用設備情報DBが、前記電源設備の電源損失率および前記空調設備の空調効率を記憶する共用設備情報記憶ステップと、
サービス別情報DBが、前記通信設備のうち前記通信サービスがそれぞれ使用するサービス別通信設備規模量を記憶するサービス別情報記憶ステップと、
共用電力消費量算出部が、入力された前記施設電力消費量と前記共用設備情報DBの前記電源損失率とに基づいて前記電源設備で消費される電源設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量および前記電源設備電力消費量と前記共用設備情報DBの前記空調効率とに基づいて前記空調設備で消費される空調設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量と前記電源設備電力消費量および前記空調設備電力消費量とに基づいて前記通信設備で消費される通信設備電力消費量を算出する共用電力消費量算出ステップと、
サービス別電力消費量算出部が、前記共用電力消費量算出ステップで得た前記通信設備電力消費量を、前記サービス別情報DBの前記サービス別通信設備規模量で按分することにより、前記通信サービスのサービス別電力消費量を算出するサービス別電力消費量算出ステップと
を備えることを特徴とする電力消費量算出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電力消費量算出方法において、
前記通信設備電力消費量を示すWcは、前記施設電力消費量をWxとし、前記電源損失率をRpとし、前記空調効率をRaとし、前記電源設備電力消費量をWpとし、前記空調設備電力消費量をWaとした場合、次の式
Wp=Wx・Rp
Wa=(Wx−Wp)・Ra
Wc=Wx−(Wp+Wa)
により算出されることを特徴とする電力消費量算出方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の電力消費量算出方法において、
任意の前記通信サービスである通信サービスiに関する前記サービス別電力消費量を示すWiは、当該通信サービスiに関する前記サービス別通信設備規模量をLiとし、前記通信設備の全通信設備規模量をLとし、前記通信設備電力消費量をWcとした場合、次の式
Wi=Wc・Li/L
により算出されることを特徴とする電力消費量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力消費量算出技術に関し、特に設備を共用して同一施設で提供される各通信サービスについて個別に電力消費量を算出する電力消費量算出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
施設における省エネルギーや省CO2を効率よく実施する場合、任意の建物内で消費されている電力量を可視化する必要がある。従来、計測機器から収集した電力情報に基づいて、設備で使用している電力量を可視化して提供する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。この技術は、施設全体への電力を供給する高圧受電設備の電力監視盤から、施設全体で消費する電力の瞬時値を示す瞬時電力を収集し、利用者端末で画面表示されている実績画面データ上に瞬時電力を表示するための瞬時画面データを生成して、各利用者端末へ配信するものである。これにより、実績画面データを画面表示している利用者端末で、施設全体で消費する電力の瞬時値を画面表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−168689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のインターネットをはじめとする各種の通信ネットワークの普及に伴い、企業の規模に関わらず企業内で個別のサーバを設置するなど、自前の通信設備を設置することが一般的であった。しかし、これら通信設備に関するセキュリティやコスト面から、通信サービス会社が運営するデータセンタに委託する企業が多くなっている。そのために、1つのデータセンタに、異なる企業に対する複数の通信サービスが混在することになる。
【0005】
一方、昨今の電気料金は変動要素が複数あり、変動幅も大きくなる可能性がある。そのため、飛行機の燃料サーチャージのように電気料金の変動に合わせた料金体系にする必要が出てくる。したがって、変動に合わせた料金を考えるためには、同一データセンタで提供する複数の通信サービスに関する電力料金を、通信サービス別(企業別)の電力消費量に応じて振り分ける必要がある。
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、単に建物レベルや受電設備レベルで電力消費量を可視化するものであるために、複数の通信サービスが混在するデータセンタなどの施設において、これら通信サービス別に電力消費量を把握するには、個々の通信機器ごとに電力消費量を検出するセンサを設ける必要があり、設備規模や設備コストの観点から現実的ではない。このため、データセンタのような施設において複数の通信サービスが混在して提供されている場合には、これら通信サービス別に電力消費量を容易に求めることが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、データセンタのような施設において複数の通信サービスが混在して提供されている場合であっても、これら通信サービスごとに電力消費量を容易に求めることができる電力消費量算出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電力消費量算出システムは、電源設備、空調設備、および通信設備を共用することにより複数の通信サービスを混在させて提供する施設において、これら通信サービスで消費する個別のサービス別電力消費量を、当該施設全体で消費する施設電力消費量に基づいて算出する電力消費量算出システムであって、前記電源設備の電源損失率および前記空調設備の空調効率を記憶する共用設備情報DBと、前記通信設備のうち前記通信サービスがそれぞれ使用するサービス別通信設備規模量を記憶するサービス別情報DBと、入力された前記施設電力消費量と前記共用設備情報DBの前記電源損失率とに基づいて前記電源設備で消費される電源設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量および前記電源設備電力消費量と前記共用設備情報DBの前記空調効率とに基づいて前記空調設備で消費される空調設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量と前記電源設備電力消費量および前記空調設備電力消費量とに基づいて前記通信設備で消費される通信設備電力消費量を算出する共用電力消費量算出部と、前記共用電力消費量算出部で得た前記通信設備電力消費量を、前記サービス別情報DBの前記サービス別通信設備規模量で按分することにより、前記通信サービスのサービス別電力消費量を算出するサービス別電力消費量算出部とを備えている。
【0009】
また、本発明にかかる上記電力消費量算出システムの一構成例は、前記通信設備電力消費量を示すWcが、前記施設電力消費量をWxとし、前記電源損失率をRpとし、前記空調効率をRaとし、前記電源設備電力消費量をWpとし、前記空調設備電力消費量をWaとした場合、次の式
Wp=Wx・Rp
Wa=(Wx−Wp)・Ra
Wc=Wx−(Wp+Wa)
により算出されるものである。
【0010】
また、本発明にかかる上記電力消費量算出システムの一構成例は、任意の前記通信サービスである通信サービスiに関する前記サービス別電力消費量を示すWiが、当該通信サービスiに関する前記サービス別通信設備規模量をLiとし、前記通信設備の全通信設備規模量をLとし、前記通信設備電力消費量をWcとした場合、次の式
Wi=Wc・Li/L
により算出されるものである。
【0011】
また、本発明にかかる電力消費量算出方法は、電源設備、空調設備、および通信設備を共用することにより複数の通信サービスを混在させて提供する施設において、これら通信サービスで消費する個別のサービス別電力消費量を、当該施設全体で消費する施設電力消費量に基づいて算出する電力消費量算出システムで用いられる電力消費量算出方法であって、共用設備情報DBが、前記電源設備の電源損失率および前記空調設備の空調効率を記憶する共用設備情報記憶ステップと、サービス別情報DBが、前記通信設備のうち前記通信サービスがそれぞれ使用するサービス別通信設備規模量を記憶するサービス別情報記憶ステップと、共用電力消費量算出部が、入力された前記施設電力消費量と前記共用設備情報DBの前記電源損失率とに基づいて前記電源設備で消費される電源設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量および前記電源設備電力消費量と前記共用設備情報DBの前記空調効率とに基づいて前記空調設備で消費される空調設備電力消費量を算出し、前記施設電力消費量と前記電源設備電力消費量および前記空調設備電力消費量とに基づいて前記通信設備で消費される通信設備電力消費量を算出する共用電力消費量算出ステップと、サービス別電力消費量算出部が、前記共用電力消費量算出ステップで得た前記通信設備電力消費量を、前記サービス別情報DBの前記サービス別通信設備規模量で按分することにより、前記通信サービスのサービス別電力消費量を算出するサービス別電力消費量算出ステップとを備えている。
【0012】
また、本発明にかかる上記電力消費量算出方法の一構成例は、前記通信設備電力消費量を示すWcが、前記施設電力消費量をWxとし、前記電源損失率をRpとし、前記空調効率をRaとし、前記電源設備電力消費量をWpとし、前記空調設備電力消費量をWaとした場合、次の式
Wp=Wx・Rp
Wa=(Wx−Wp)・Ra
Wc=Wx−(Wp+Wa)
により算出されるものである。
【0013】
また、本発明にかかる上記電力消費量算出方法の一構成例は、任意の前記通信サービスである通信サービスiに関する前記サービス別電力消費量を示すWiが、当該通信サービスiに関する前記サービス別通信設備規模量をLiとし、前記通信設備の全通信設備規模量をLとし、前記通信設備電力消費量をWcとした場合、次の式
Wi=Wc・Li/L
により算出されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、データセンタのような施設において複数の通信サービスが混在して提供されている場合であっても、通信機器ごとに電力消費量を検出するセンサを設けることなく、施設全体の電力消費量からこれら通信サービスごとに電力消費量を容易に求めることができる。したがって、通信サービスごとに電力消費量を可視化することができ、通信サービス別に、より正確な電力料金を徴収することができる。また、通信サービス別に、消費電力削減対策の検討、電力消費量の増減予測、さらには環境影響評価などを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電力消費量算出システムの構成を示すブロック図である。
図2】共用設備情報DBの構成例である。
図3】サービス別情報DBの構成例である。
図4】電力消費量算出システムの動作を示すフローチャートである。
図5】施設における電力消費量の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[電力消費量算出システム]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる電力消費量算出システム10について説明する。図1は、電力消費量算出システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
この電力消費量算出システム10は、全体としてサーバ装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、電源設備、空調設備、および通信設備を共用することにより複数の通信サービスを混在させて提供する、データセンタのような施設において、これら通信サービスで消費する個別のサービス別電力消費量を、当該施設全体で消費する施設電力消費量に基づいて算出する機能を有している。
【0018】
一般的に、複数の通信サービスを混在させて提供する施設には、各通信サービスで共用する主な共用設備として、電源設備、空調設備、および通信設備が設けられており、この電源設備で得られた供給電力が、空調設備および通信設備へ供給されるものとなっている。また、通信設備には、各通信サービスで用いる通信機器が各ラックに収容されて多数設置されており、これら通信機器が、各通信サービスの規模に応じて、これら通信機器数やラック数を単位とした設備規模量で、各通信サービスに割り当てられている。
【0019】
本発明は、このような、複数の通信サービスを混在させて提供する施設の構成に着目し、施設全体の電力消費量からこれら共用設備で消費される電力消費量を求めた後、通信設備で消費される電力消費量を、各通信サービスの設備規模に応じて按分することにより、これら通信サービスで消費する個別のサービス別電力消費量を算出するようにしたものである。
【0020】
図1に示すように、電力消費量算出システム10には、主な機能部として、データ入力部11、共用設備情報DB12、サービス別情報DB13、計算処理部14、およびデータ出力部15が設けられている。
【0021】
データ入力部11は、全体としてキーボードなどの操作入力装置や、通信回線を介して外部装置とデータ通信を行う通信インターフェース部からなり、各種の入力情報を入力する機能を有している。主な入力情報としては、対象施設名などの電力消費量の算出対象となる対象施設を特定する情報や、対象施設全体における電力消費量など、通信サービス別電力消費量の算出に用いる各種入力情報がある。
【0022】
共用設備情報DB12は、ハードディスクなどの記憶装置で構成されるデータベースからなり、施設ごとに、当該施設に設けられている電源設備の電源損失率と、同じく施設に設けられている空調設備の空調効率とを記憶する機能を有している。施設の単位としては、ビル、建物、フロア、フロア内の特定区画などがある。
【0023】
図2は、共用設備情報DBの構成例である。ここでは施設ごとに、電源損失率Rpと空調効率Raとが予め登録されている。
電源損失率Rp(%)は、電源設備への入力電力量に対する、当該電源設備での損失電力量の割合を示す値であり、送電盤、受電盤、USPなどにおける電源損失率を合計して算出したり、給電と受電の電力量計測して算出することができる。
空調効率Ra(%)は、空調設備への入力電力量に対する、当該空調設備での損失電力量の割合を示す値である。これらRp,Raは、施設ごとに予め計測しておけばよい。特に、施設で複数台の空調設備を使用している場合には、それぞれの空調設備の空調効率を平均化したものを用いればよい。
【0024】
サービス別情報DB13は、ハードディスクなどの記憶装置で構成されるデータベースからなり、施設ごとに、当該施設に設けられている通信設備のうち各通信サービスiがそれぞれ使用するサービス別通信設備規模量Liとを記憶する機能を有している。
図3は、サービス別情報DBの構成例である。ここでは、施設ごとに、当該施設で提供する通信サービス名と当該通信サービスのサービス別通信設備規模量Liとの組が登録されている。
【0025】
サービス別通信設備規模量Liは、通信設備に設置されている通信機器のうち、各通信サービスに割り当てられている設備規模量であり、通信機器数やラック数など、設備規模を示す指標値を単位とするものであればよい。また、後述するように、サービス別通信設備規模量Liに代えて、通信設備で稼働中の全通信設備規模量に対するサービス別通信設備規模量Liの割合、すなわちサービス別規模占有率Riをサービス別情報DB13に登録しておいてもよい。
【0026】
また、クラウドサービスのような同一の複数のサーバ装置を複数の通信サービスで利用する場合、各通信サービス別のトラヒック情報を各通信機器のMIBデータから取得し、これらトラヒック情報やその比率を、サービス別通信設備規模量Liに代えて用いてもよい。
【0027】
計算処理部14は、CPUおよびその周辺回路を有し、記憶部(図示せず)からプログラムを読み込んでCPUで実行することにより、電力消費量を算出するための各種処理部を実現する機能を有している。
計算処理部14で実現される主な処理部として、データ入力処理部14A、共用電力消費量算出部14B、サービス別電力消費量算出部14C、およびデータ出力処理部14Dがある。
【0028】
データ入力処理部14Aは、データ入力部11から入力された入力情報を取得して認識処理する機能を有している。これにより、当該入力情報で指定された施設および当該施設で消費する施設電力消費量が特定される。
【0029】
共用電力消費量算出部14Bは、データ入力部11から入力され、データ入力処理部14Aで特定された施設電力消費量Wxと共用設備情報DB12の電源損失率Rpとに基づいて電源設備で消費される電源設備電力消費量Wpを算出する機能と、施設電力消費量Wxおよび電源設備電力消費量Wpと共用設備情報DB12の空調効率Raとに基づいて空調設備で消費される空調設備電力消費量Waを算出する機能と、施設電力消費量Wxと電源設備電力消費量Wpおよび空調設備電力消費量Waとに基づいて通信設備で消費される通信設備電力消費量Wcを算出する機能とを有している。
【0030】
サービス別電力消費量算出部14Cは、共用電力消費量算出部14Bで得た通信設備電力消費量Wcを、サービス別情報DB13のサービス別通信設備規模量Liで按分することにより、各通信サービスのサービス別電力消費量Wiを算出する機能とを有している。
【0031】
データ出力部15は、全体として、LCDなどの画面表示装置や、通信回線を介して外部装置とデータ通信を行う通信インターフェース部からなり、各種の出力情報を出力する機能を有している。主な出力情報としては、サービス別電力消費量算出部14Cで算出したサービス別電力消費量Wiのほか、これらWiの算出に用いた各種情報がある。
【0032】
[本実施の形態の動作]
次に、図4および図5を参照して、本実施の形態にかかる電力消費量算出システム10の動作について説明する。図4は、電力消費量算出システムの動作を示すフローチャートである。図5は、施設における電力消費量の関係を示す説明図である。
【0033】
まず、データ入力処理部14Aは、データ入力部11から入力された入力情報を取得して、当該入力情報で指定された施設xおよび施設電力消費量Wxを特定する(ステップ100)。
次に、共用電力消費量算出部14Bは、データ入力処理部14Aで特定された施設xの電源損失率Rpと空調効率Raを、設備情報DB12Aから取得する(ステップ101)。
【0034】
続いて、共用電力消費量算出部14Bは、データ入力処理部14Aで特定された施設電力消費量Wxと電源損失率Rpとに基づいて電源設備で消費される電源設備電力消費量Wpを算出するとともに(ステップ102)、施設電力消費量Wxおよび電源設備電力消費量Wpと空調効率Raとに基づいて空調設備で消費される空調設備電力消費量Waを算出し(ステップ103)、施設電力消費量Wxと電源設備電力消費量Wpおよび空調設備電力消費量Waとに基づいて通信設備で消費される通信設備電力消費量Wcを算出する(ステップ104)。
【0035】
共用電力消費量算出部14Bにおいて、これら電源設備電力消費量Wp、空調設備電力消費量Wa、通信設備電力消費量Wcは、次の式(1)−式(3)により算出される。なお、式(2)のWx−Wpが、電源設備から空調設備および通信設備へ供給される電力供給量Wsに相当している。
Wp=Wx・Rp …(1)
Wa=(Wx−Wp)・Ra …(2)
Wc=Wx−(Wp+Wa) …(3)
【0036】
なお、Wcの算出に当たっては、電源設備電力消費量Wp、空調設備電力消費量Waを具体的な値として求めず、次の式(4)に基づいて、Wx,Rp,Raから直接Wcを算出してもよい。
Wc=Wx・(1−Rp)・(1−Pa) …(4)
【0037】
この後、サービス別電力消費量算出部14Cは、施設xで提供する各通信サービスに関するサービス別通信設備規模量Liをサービス別情報DB13から取得して(ステップ105)、共用電力消費量算出部14Bで得た通信設備電力消費量Wcを、これらサービス別通信設備規模量Liで按分することにより、各通信サービスのサービス別電力消費量Wiを算出し(ステップ106)、一連の電力消費量算出処理を終了する。
【0038】
サービス別電力消費量算出部14Cにおいて、サービス別電力消費量Wiは、次の式(5)により算出される。なお、Lは、施設xの通信設備で稼働中の全通信設備規模量であり、各通信サービスiのサービス別通信設備規模量Liを合計して求められる。
Wi=Wc・Li/L …(5)
なお、サービス別通信設備規模量Liに代えて規模占有率Riがサービス別情報DB13に登録されている場合には、式(5)のうちLi/LをRiに置換すればよい。
【0039】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、共用電力消費量算出部14Bが、入力された施設電力消費量Wxと共用設備情報DB12の電源損失率Rpとに基づいて電源設備で消費される電源設備電力消費量Wpを算出し、施設電力消費量Wxおよび電源設備電力消費量Wpと共用設備情報DB12の空調効率Raとに基づいて空調設備で消費される空調設備電力消費量Waを算出し、施設電力消費量Wxと電源設備電力消費量Wpおよび空調設備電力消費量Waとに基づいて通信設備で消費される通信設備電力消費量Wcを算出し、サービス別電力消費量算出部14Cが、共用電力消費量算出部14Bで得た通信設備電力消費量Wcを、サービス別情報DB13のサービス別通信設備規模量Liで按分することにより、通信サービスのサービス別電力消費量Wiを算出するようにしたものである。
【0040】
これにより、データセンタのような施設において複数の通信サービスが混在して提供されている場合であっても、通信機器ごとに電力消費量を検出するセンサを設けることなく、施設全体の電力消費量からこれら通信サービスごとに電力消費量を容易に求めることができる。したがって、通信サービスごとに電力消費量を可視化することができ、通信サービス別に、より正確な電力料金を徴収することができる。また、通信サービス別に、消費電力削減対策の検討、電力消費量の増減予測、さらには環境影響評価などを実現することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態において、共用設備情報DB12およびサービス別情報DB13をネットワーク上に配置し、複数の計算処理部14からアクセス可能とするようにしてもよい。これにより、通信サービスが、複数の施設に跨って提供されている場合でも、各施設ごとに当該通信サービスに関するサービス別電力消費量を算出することができ、これらを合計すれば、複数の施設に跨って提供されている通信サービスに関するサービス別電力消費量についても、容易に算出することができる。
【0042】
また、施設が通信サービス提供専用ではなく、オフィス部分や通路部分などの共用設備が含まれている場合には、これら共用施設での電力消費量を施設電力消費量から予め減算しておけばよい。
また、本実施の形態では、各通信サービスに関する個別のサービス別電力消費量を算出する場合を例として説明したが、これに限定されるものでなはく、それぞれの電力消費量に代えて電気料金を用いることにより、各通信サービスに関する個別のサービス別電気料金を算出することができる。
【0043】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10…電力消費量算出システム、11…データ入力部、12…共用設備情報DB、13…サービス別情報DB、14…計算処理部、14A…データ入力処理部、14B…共用電力消費量算出部、14C…サービス別電力消費量算出部、14D…データ出力処理部、15…データ出力部、Wx…施設電力消費量、Rp…電源損失率、Wp…電源設備電力消費量、Ws…電力供給量、Ra…空調効率、Wa…空調設備電力消費量、Wc…通信設備電力消費量、Li…サービス別通信設備規模量、L…全通信設備規模量、Wi…サービス別電力消費量。
図1
図2
図3
図4
図5