特許第6023114号(P6023114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023114アンテナ方向調整方法および無線基地局装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023114
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】アンテナ方向調整方法および無線基地局装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/10 20060101AFI20161027BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20161027BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20161027BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   H04B7/10 A
   H04W16/28
   H04W72/04 131
   H04B7/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-75270(P2014-75270)
(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-198324(P2015-198324A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】森川 功治
(72)【発明者】
【氏名】上野 衆太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正人
(72)【発明者】
【氏名】徳安 朋浩
【審査官】 野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−009968(JP,A)
【文献】 特開2003−037542(JP,A)
【文献】 特開平8−331040(JP,A)
【文献】 特開平11−55745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/10
H04B 7/06
H04W 16/28
H04W 72/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P−MP無線通信システムを構成する無線基地局装置と複数の無線端末局装置とがTDMA伝送フレームを用いて無線通信を行う際に、無線基地局装置の指向性アンテナの方向を調整するための情報を表示するアンテナ方向調整方法において、
前記複数の無線端末局装置が要求する通信容量を登録する第1のステップと、
前記指向性アンテナの方向に対して、前記複数の無線端末局装置の受信信号の通信品質を検出して対応する変調方式を算出する第2のステップと、
前記無線端末局装置ごとに、前記変調方式に応じた1スロット当たりの伝送速度に基づいて、前記第1のステップで登録された通信容量を保証するために必要なスロット数を算出する第3のステップと、
前記複数の無線端末局装置のスロット数を合計した合計スロット数と前記TDMA伝送フレームのスロット数とを比較し、該合計スロット数が前記TDMA伝送フレームのスロット数以下であれば前記指向性アンテナの方向を可(OK)と表示し、該合計スロット数が前記TDMA伝送フレームのスロット数を超えていれば前記指向性アンテナの方向を不可(NG)と表示する第4のステップと
を有することを特徴とするアンテナ方向調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ方向調整方法において、
前記第4のステップは、前記指向性アンテナの方向が可(OK)であるときに、前記合計スロット数または前記TDMA伝送フレームのスロット数から前記合計スロット数を引いた空きスロット数を表示する
ことを特徴とするアンテナ方向調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ方向調整方法において、
前記第4のステップは、前記指向性アンテナの方向調整により、前記合計スロット数の減少または前記空きスロット数の増加が止まったときに、前記指向性アンテナの方向調整終了を表示する
ことを特徴とするアンテナ方向調整方法。
【請求項4】
請求項2に記載のアンテナ方向調整方法において、
前記第4のステップは、前記指向性アンテナの方向調整により、前記合計スロット数または前記空きスロット数が既定値に達したときに、前記指向性アンテナの方向調整終了を表示する
ことを特徴とするアンテナ方向調整方法。
【請求項5】
P−MP無線通信システムを構成する無線基地局装置と複数の無線端末局装置とがTDMA伝送フレームを用いて無線通信を行う際に、指向性アンテナの方向を調整するための情報を表示する無線基地局装置において、
前記複数の無線端末局装置が要求する通信容量を登録する登録手段と、
前記指向性アンテナの方向に対して、前記複数の無線端末局装置の受信信号の通信品質を検出して対応する変調方式を算出する復調手段と、
前記無線端末局装置ごとに、前記変調方式に応じた1スロット当たりの伝送速度に基づいて、前記登録手段に登録された通信容量を保証するために必要なスロット数を算出し、前記複数の無線端末局装置のスロット数を合計した合計スロット数と前記TDMA伝送フレームのスロット数とを比較し、該合計スロット数が前記TDMA伝送フレームのスロット数以下であれば前記指向性アンテナの方向を可(OK)と表示し、該合計スロット数が前記TDMA伝送フレームのスロット数を超えていれば前記指向性アンテナの方向を不可(NG)と表示する演算・表示手段と
を備えたことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線基地局装置において、
前記演算・表示手段は、前記指向性アンテナの方向が可(OK)であるときに、前記合計スロット数または前記TDMA伝送フレームのスロット数から前記合計スロット数を引いた空きスロット数を表示する構成である
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線基地局装置において、
前記演算・表示手段は、前記指向性アンテナの方向調整により、前記合計スロット数の減少または前記空きスロット数の増加が止まったときに、前記指向性アンテナの方向調整終了を表示する構成である
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項8】
請求項6に記載の無線基地局装置において、
前記演算・表示手段は、前記指向性アンテナの方向調整により、前記合計スロット数または前記空きスロット数が既定値に達したときに、前記指向性アンテナの方向調整終了を表示する構成である
ことを特徴とする無線基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局装置と複数の無線端末局装置とがTDMA伝送フレームを用いて無線通信を行うP−MP(ポイント−マルチポイント)無線通信システムにおいて、無線基地局装置の指向性アンテナの方向を調整するための情報を表示するアンテナ方向調整方法および無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
災害等により途絶したアクセス通信路を回復するために臨時通信回線を構築するとき、可搬型の無線通信システムが用いられている。可搬型の無線通信システムは無線局装置の設置場所を固定することなく、需要の発生した任意の2地点間に無線局装置を設営し、通信回線を構築する。このとき、一方の無線局装置の指向性アンテナを対向する無線局装置に向けて設置し、通信品質(受信レベルやSN比)が最も良好となる方向にアンテナ方向を調整する作業が行われる。
【0003】
無線基地局装置と無線端末局装置とが1対1(P−P対向)の場合、無線基地局装置の指向性アンテナを無線端末局装置の方向に向け、無線基地局装置に装備された通信品質(受信レベルやSN比)を示すインジケータ等で確認しながらアンテナ方向の微調整を行うことができる。
【0004】
一方、無線基地局装置と複数の無線端末局装置とがTDMA伝送フレームを用いて無線通信を行うP−MP無線通信システムでは、無線基地局装置の指向性アンテナの方向を複数の無線端末局装置に対して通信品質が良好となる方向に調整する作業が必要になる。このとき、複数の無線端末局装置の受信レベルをまとめてインジケータに表示すると、最も近傍に設置された無線端末局装置からの受信レベルが支配的となり、総合的に最適となる方向調整には作業者のスキルや地形を把握した勘に頼ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−101467号公報
【特許文献2】特開2013−207633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
P−MP無線通信の場合は、散在する複数の無線端末局装置の受信信号から合成された受信レベルの最大値が得られる方向が最適とは限らない。また、UHF帯の長距離伝搬では地形の影響を強く受けるため、必ずしも正対する方向が最適ではない。さらに、複数の無線端末局装置に対して見通し外通信を確保する場合は、無線局間で確立した無線回線の通信品質(例えばSN比)をインジケータに表示させなければ、作業者が方向調整を行うことは困難である。
【0007】
また、複数の無線端末局装置の中には、無線基地局装置から近距離にあるために高速変調方式が適用可能な無線端末局装置、無線基地局装置から遠距離にあり通信距離を確保するために低速変調方式が適用される無線端末局装置、複数のVLANを用いる無線端末局装置があり、変調方式にかかわらずそれぞれ要求する通信容量を保証する必要がある。
【0008】
本発明は、P−MP無線通信システムにおいて、複数の無線端末局装置がそれぞれ要求する通信容量を保証できるように無線基地局装置の指向性アンテナの方向を調整するための情報を表示するアンテナ方向調整方法および無線基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、P−MP無線通信システムを構成する無線基地局装置と複数の無線端末局装置とがTDMA伝送フレームを用いて無線通信を行う際に、無線基地局装置の指向性アンテナの方向を調整するための情報を表示するアンテナ方向調整方法において、複数の無線端末局装置が要求する通信容量を登録する第1のステップと、指向性アンテナの方向に対して、複数の無線端末局装置の受信信号の通信品質を検出して対応する変調方式を算出する第2のステップと、無線端末局装置ごとに、変調方式に応じた1スロット当たりの伝送速度に基づいて、第1のステップで登録された通信容量を保証するために必要なスロット数を算出する第3のステップと、複数の無線端末局装置のスロット数を合計した合計スロット数とTDMA伝送フレームのスロット数とを比較し、該合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数以下であれば指向性アンテナの方向を可(OK)と表示し、該合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数を超えていれば指向性アンテナの方向を不可(NG)と表示する第4のステップとを有する。
【0010】
第1の発明のアンテナ方向調整方法において、第4のステップは、指向性アンテナの方向が可(OK)であるときに、合計スロット数またはTDMA伝送フレームのスロット数から合計スロット数を引いた空きスロット数を表示する。
【0011】
第1の発明のアンテナ方向調整方法において、第4のステップは、指向性アンテナの方向調整により合計スロット数の減少または空きスロット数の増加が止まったときに、指向性アンテナの方向調整終了を表示する。
【0012】
第1の発明のアンテナ方向調整方法において、第4のステップは、指向性アンテナの方向調整により合計スロット数または空きスロット数が既定値に達したときに、指向性アンテナの方向調整終了を表示する。
【0013】
第2の発明は、P−MP無線通信システムを構成する無線基地局装置と複数の無線端末局装置とがTDMA伝送フレームを用いて無線通信を行う際に、指向性アンテナの方向を調整するための情報を表示する無線基地局装置において、複数の無線端末局装置が要求する通信容量を登録する登録手段と、指向性アンテナの方向に対して、複数の無線端末局装置の受信信号の通信品質を検出して対応する変調方式を算出する復調手段と、無線端末局装置ごとに、変調方式に応じた1スロット当たりの伝送速度に基づいて、登録手段に登録された通信容量を保証するために必要なスロット数を算出し、複数の無線端末局装置のスロット数を合計した合計スロット数とTDMA伝送フレームのスロット数とを比較し、該合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数以下であれば指向性アンテナの方向を可(OK)と表示し、該合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数を超えていれば指向性アンテナの方向を不可(NG)と表示する演算・表示手段とを備える。
【0014】
第2の発明の無線基地局装置において、演算・表示手段は、指向性アンテナの方向が可(OK)であるときに、合計スロット数またはTDMA伝送フレームのスロット数から合計スロット数を引いた空きスロット数を表示する構成である。
【0015】
第2の発明の無線基地局装置において、演算・表示手段は、指向性アンテナの方向調整により、合計スロット数の減少または空きスロット数の増加が止まったときに、指向性アンテナの方向調整終了を表示する構成である。
【0016】
第2の発明の無線基地局装置において、演算・表示手段は、合計スロット数または空きスロット数が既定値に達したときに、指向性アンテナの方向調整終了を表示する構成である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、P−MP無線通信システムの無線基地局装置において、複数の無線端末局装置の受信信号の通信品質に対応する変調方式を検出し、さらにそれぞれ要求する通信容量を保証するために必要なスロット数を算出し、複数の無線端末局装置の合計スロット数とTDMA伝送フレームのスロット数とを比較して指向性アンテナの方向の可否を表示することにより、各無線端末局装置がそれぞれ要求する通信容量を保証できるように容易に無線基地局装置の指向性アンテナの方向を調整することができる。
【0018】
また、本発明は、各無線端末局装置がそれぞれ要求する通信容量を保証できるアンテナ方向に調整するだけでなく、合計スロット数または空きスロット数を表示することにより、さらに指向性アンテナの方向をより最適方向に微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明におけるP−MP無線通信システムの概要を示す図である。
図2】本発明の無線基地局装置10の実施例1の構成を示す図である。
図3】本発明の無線基地局装置10の実施例1の処理手順を示すフローチャートである。
図4】指向性アンテナ11の方向の調整結果の一例を示す図である。
図5】本発明の無線基地局装置10の実施例2の構成を示す図である。
図6】本発明の無線基地局装置10の実施例2の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明におけるP−MP無線通信システムの概要を示す。
図1において、無線基地局装置10の通信エリア内に3つの無線端末局装置TS#1〜TS#3があり、無線基地局装置10の指向性アンテナ11の方向を調整することにより、無線端末局装置TS#1〜TS#3がそれぞれ要求する通信容量を保証する変調方式とTDMA伝送フレームの無線スロットが割り当てられた状況を示す。指向性アンテナ11は、例えば半値幅30度のUHF帯で長距離無線通信(数10km)を行う場合、無線基地局装置10がカバーするエリアは半径数kmを想定する。TDMA伝送フレームは8スロット構成とし、最大8個の無線端末局装置との無線通信を前提とする。
【0021】
変調方式に対する1スロット当たりの伝送速度の例を表1に示し、各無線端末局装置TS#1〜TS#3がVLANごとに要求する通信容量(伝送速度)を表2に示す。無線端末局装置TS#3は、2つのVLANに対応する。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
図1に示す状況は次の通りである。
無線端末局装置TS#1は、無線基地局装置10から近距離にあるため、所要の通信品質に対応する変調方式として64QAMを適用できる。64QAMの伝送速度は1スロット当たり 600kbit/s であり、無線端末局装置TS#1が要求する通信容量 500kbit/s 以上を保証するために必要なスロット数は1となる。
【0025】
無線端末局装置TS#2は、無線基地局装置10から遠距離にあるため、所要の通信品質に対応する変調方式としてQPSKを適用して通信距離を確保する。QPSKの伝送速度は1スロット当たり 200kbit/s であり、無線端末局装置TS#2が要求する通信容量 600kbit/s 以上を保証するために必要なスロット数は3となる。
【0026】
無線端末局装置TS#3は、無線基地局装置10から中距離にあるため、所要の通信品質に対応する変調方式として16QAMを適用できる。16QAMの伝送速度は1スロット当たり 400kbit/s であり、無線端末局装置TS#3のVLAN03が要求する通信容量 300kbit/s 以上を保証するために必要なスロット数は1であり、VLAN04が要求する通信容量1000kbit/s 以上を保証するために必要なスロット数は3である。
【0027】
図1の状況では、無線端末局装置TS#1〜TS#3の合計スロット数が8となり、TDMA伝送フレームのスロット数(8)以下であるので、それぞれ要求する通信容量を保証できる。しかし、無線基地局装置10の指向性アンテナ11の方向によって、例えば無線端末局装置TS#1の通信品質が劣化し、変調方式が64QAM(1スロット当たり 600kbit/s )から16QAM(1スロット当たり 400kbit/s )になれば、要求する通信容量( 500kbit/s 以上)を保証するために必要なスロット数は2となる。この場合、無線端末局装置TS#1〜TS#3の合計スロット数は9となり、それぞれ要求する通信容量を保証できないことになり、指向性アンテナ11の方向調整が必要になる。
【0028】
本発明は、無線基地局装置10の指向性アンテナ11について、
(1) 接続する複数の無線端末局装置の合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数以下となり、各無線端末局装置が要求する通信容量を保証するようにアンテナ方向を調整するための情報を表示すること、
(2) さらに、複数の無線端末局装置の合計スロット数(空きスロット数)を指標として、アンテナ方向が最適方向になるように微調整するための情報を表示すること
を特徴とする。
【0029】
(実施例1)
図2は、本発明の無線基地局装置10の実施例1の構成を示す。図3は、本発明の無線基地局装置10の実施例1の処理手順を示す。実施例1は、上記の特徴(1) に対応する。
【0030】
図2および図3において、無線基地局装置10は、本発明に関係するものとして、指向性アンテナ11、無線部12、復調部13、演算部14、方向調整インジケータ15を備える。無線基地局装置10の演算部14には、管理制御端末装置20から接続対象の各無線端末局装置TS#n(n=1,2,3)が要求する通信容量Yn が登録される(S1)。接続対象の無線端末局装置の数Nは、TDMA伝送フレームのスロット数以下であり、ここではN=3とする。
【0031】
指向性アンテナ11が所定の方向に調整されると(S2)、無線部12は各無線端末局装置TS#nからの受信信号を処理し、復調部13は各無線端末局装置TS#nの受信信号の通信品質(例えばSN比)を検出して対応する変調方式を算出する(S3)。演算部14は、各無線端末局装置TS#nの変調方式に応じた1スロット当たりの伝送速度Xn に基づき、各無線端末局装置TS#nが要求する通信容量Yn を保証するために必要なスロット数(Roundup(Yn/Xn)) を算出する(S4)。ここで、Roundup 関数は、小数点以下切り上げを示す。
【0032】
さらに演算部14は、各無線端末局装置TS#nの合計スロット数とTDMA伝送フレームのスロット数とを比較し、指向性アンテナ11の方向の可否(OK/NG)を判定する(S5)。すなわち、各無線端末局装置TS#nの合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数以下であれば、指向性アンテナ11が各無線端末局装置TS#nの要求する通信品質を保証できる方向になっているとして、方向調整インジケータ15に可(OK)を表示して終了する(S6)。一方、各無線端末局装置TS#nの合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数を超えていれば、指向性アンテナ11が各無線端末局装置TS#nの要求する通信品質を保証できる方向になっていないとして、方向調整インジケータ15に不可(NG)を表示し(S7)、ステップS2に戻って指向性アンテナ11の方向を再調整する。
【0033】
図4は、指向性アンテナ11の方向の調整結果の一例を示す。
ここでは、接続対象の無線端末局装置TS#nが要求する通信容量Yn は、表2に示すものとする。
【0034】
図4(1) は、指向性アンテナ11の方向の初期調整状況を示す。無線端末局装置TS#1,TS#2,TS#3の通信品質に基づく変調方式は64QAM,QPSK,8PSKとなり、VLAN01,VLAN02,VLAN03,VLAN04がそれぞれ要求する通信容量を保証するために必要なスロット数は1,3,1,4となり、その合計スロット数が9になった状況を示す。この場合、TDMA伝送フレームのスロット数(8)より大きいので、判定はNGとなり、指向性アンテナ11の方向の再調整が行われる。
【0035】
図4(2) は、指向性アンテナ11の方向を図4(1) の初期調整状況から再調整した状況1を示す。無線端末局装置TS#1,TS#2,TS#3の通信品質に基づく変調方式は64QAM,QPSK,16QAMとなる。ここでは、無線端末局装置TS#1および無線端末局装置TS#2は不変である。無線端末局装置TS#3は通信品質が向上したために変調方式が8PSKから16QAMになって1スロット当たりの伝送速度が 400kbit/s に上昇する。これにより、VLAN01,VLAN02,VLAN03,VLAN04がそれぞれ要求する通信容量を保証するために必要なスロット数は1,3,1,3となり、その合計スロット数が8になる。この場合、TDMA伝送フレームのスロット数(8)以下になるので、判定はOKとなり、指向性アンテナ11の方向調整を終了する。
【0036】
図4(3) は、指向性アンテナ11の方向を図4(1) の初期調整状況から再調整した状況2を示す。無線端末局装置TS#1,TS#2,TS#3の通信品質に基づく変調方式は32QAM,8PSK,16QAMとなる。ここでは、無線端末局装置TS#1の通信品質が劣化したために変調方式が64QAMから32QAMになって1スロット当たりの伝送速度が 500kbit/s に低下する。無線端末局装置TS#2の通信品質が向上したために変調方式がQPSKから8PSKになって1スロット当たりの伝送速度が 300kbit/s に上昇する。無線端末局装置TS#3は通信品質が向上したために変調方式が8PSKから16QAMになって1スロット当たりの伝送速度が 400kbit/s に上昇する。これにより、VLAN01,VLAN02,VLAN03,VLAN04がそれぞれ要求する通信容量を保証するために必要なスロット数は1,2,1,3となり、その合計スロット数が7になる。この場合、TDMA伝送フレームのスロット数(8)以下になるので、判定はOKとなり、指向性アンテナ11の方向調整を終了する。
【0037】
ここで、図4(2) の状況1に対する図4(3) の状況2の違いは、無線端末局装置TS#2,TS#3の通信品質が向上して高速な通信方式を用いることができたため、各無線端末局装置TS#1〜TS#3の合計スロット数が7となり、1スロットが空きとなったことを示す。この合計スロット数またはTDMA伝送フレームのスロット数から合計スロット数を引いた空きスロット数を指標として表示することにより、指向性アンテナ11を最適な方向に微調整することが可能である。以下に実施例2として説明する。
【0038】
(実施例2)
図5は、本発明の無線基地局装置10の実施例2の構成を示す。図6は、本発明の無線基地局装置10の実施例2の処理手順を示す。実施例2は、上記の特徴(1),(2) に対応し、無線基地局装置10の演算部16および方向調整インジケータ17が実施例1と異なる。
【0039】
図5および図6において、無線部12および復調部13の処理、ステップS1〜S5の処理は実施例1と同様である。ステップS5において、演算部16は、各無線端末局装置TS#nの合計スロット数と、TDMA伝送フレームのスロット数とを比較し、指向性アンテナ11の方向の可否(OK/NG)を判定する。ここで、各無線端末局装置TS#nの合計スロット数がTDMA伝送フレームのスロット数以下であれば「OK」であり、実施例1では終了するが、実施例2では空きスロット数0〜7を方向調整インジケータ17に表示する(S8)。なお、空きスロット数ではなく合計スロット数を表示してもよい。例えば、図4(2) の場合は、合計スロット数が8、空きスロット数が0であり、図4(3) の場合は、合計スロット数が7、空きスロット数が1である。
【0040】
方向調整インジケータ17は、NGと、空きスロット数0〜7を表示する9個のインジケータを有する。例えば、空きスロット数0〜7を表示するインジケータは、空きスロットが増える(合計スロット数が減る)ごとに、点灯するインジケータが増えるように設定する。したがって、空きスロットのインジケータの点灯数が多いほど、指向性アンテナ11が最適な方向になっていることを示す。ただし、表示方法はこれに限らない。
【0041】
次に、空きスロット数(または合計スロット数)を指標として、アンテナ方向調整により改善したか否かを表示し(S9)、アンテナ方向を調整して空きスロット数が増加(または合計スロット数が減少)していれば、ステップS2に戻って指向性アンテナ11の方向の微調整を繰り返し、空きスロット数の増加(または合計スロット数が減少)が止まれば、その旨の表示により方向調整を終了する。すなわち、アンテナ方向調整時に空きスロット数の増加は、ある無線端末局装置TS#aが通信品質の向上によって高速な変調方式の適用が可能となり、要求する通信容量Ya を保証するために必要なスロット数が減ったことを示し、指向性アンテナ11がより最適な方向に調整されたと見なすことができる。
【0042】
また、空きスロット数(または合計スロット数)の増加の有無ではなく、アンテナの方向調整により、空きスロット数(または合計スロット数)がTDMA伝送フレームのスロット数以下の範囲で既定値に達したときに、その旨の表示により最適方向と見なして方向調整を終了してもよい。
【0043】
なお、指向性アンテナ11の方向調整により空きスロットが増えれば、新たな無線端末局装置の接続要求に対応することができ、また各無線端末局装置TS#nの通信容量の増量にも対応することができ、無線通信システム全体のスループットを向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 無線基地局装置
11 指向性アンテナ
12 無線部
13 復調部
14,16 演算部
15,17 方向調整インジケータ
20 管理制御端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6