特許第6023644号(P6023644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023644無線通信システム、無線通信方法及び移動体検知システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023644
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法及び移動体検知システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/02 20090101AFI20161027BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20161027BHJP
【FI】
   H04W4/02 150
   H04W64/00 160
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-96451(P2013-96451)
(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公開番号】特開2014-220562(P2014-220562A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 穣
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅史
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】澤田 学
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 泰伸
【審査官】 阿部 圭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−010251(JP,A)
【文献】 特開2010−232935(JP,A)
【文献】 特開2007−072746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置にそれぞれ設置され、所定の通信可能領域内に自己の識別情報を無線送信する複数の送信機と、
前記送信機のそれぞれから前記識別情報を受信することにより、自己の位置と移動方向を検知する受信機とを備える無線通信システムであって、
前記送信機の前記通信可能領域は、隣り合う前記送信機の前記通信可能領域と重なる領域を有し、
前記送信機は、前記通信可能領域が互いに重なる送信機が前記識別情報を送信するタイミングを一致させるように前記識別情報を送信し、
前記受信機は、所定時間内に前記識別情報が受信できない際に、自己の位置が前記通信可能領域が互いに重なる領域であると判別することにより、前記通信可能領域が重ならない領域と、前記通信可能領域の重なる領域とを判別して、自己の位置と移動方向を検知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
所定の位置にそれぞれ設置され、所定の通信可能領域内に自己の識別情報を無線送信する複数の送信機と、
前記送信機のそれぞれから前記識別情報を受信することにより、自己の位置と移動方向を検知する受信機とを備える無線通信システムが行う無線通信方法であって、
前記送信機の前記通信可能領域は、隣り合う前記送信機の前記通信可能領域と重なる領域を有し、
前記送信機が、前記通信可能領域が互いに重なる送信機が前記識別情報を送信するタイミングを一致させるように前記識別情報を送信するステップと、
前記受信機が、所定時間内に前記識別情報が受信できない際に、自己の位置が前記通信可能領域が互いに重なる領域であると判別することにより、前記通信可能領域が重ならない領域と、前記通信可能領域の重なる領域とを判別して、自己の位置と移動方向を検知するステップ
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項3】
請求項に記載の無線通信システムを備え、前記受信機を移動体に搭載し、前記移動体の位置と移動方向を検知することを特徴とする移動体検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線通信方法及び移動体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、RFID(Radio Frequency IDentification)タグとの間で通信を行うための複数台のリーダライタを互いに近接した状態で配置する場合であっても、各リーダライタ間での電波干渉に起因した通信障害の発生を、良好な通信品質を確保した状態で抑止可能にする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている無線通信システムは、システムコントローラが、複数のリーダライタに対して、無変調信号より成るデフォルト出力レベルのテスト信号の送信動作を順次指令し、リーダライタからテスト信号が送信された状態時に、他のリーダライタにおいて測定したテスト信号の受信レベルを収集する。そして、収集した受信レベルの中に予め設定された非干渉レベルを超えたものがあった場合に、テスト信号の送信源となったリーダライタの送信レベルを、リーダライタとその通信エリア内に進入したRFIDタグとの間の通信に必要な最小送信レベルを下回らない範囲で低下させることができる。ただし、リーダライタの送信出力を抑えるため通信エリアが狭くなってしまうという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−124321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている無線通信システムを使用した際に、受信機(特許文献1のRFIDタグ相当する)の進行方向と位置を精度良く検知したいという要求がある。図25は、従来技術による無線通信システムの構成を示す図である。送信機A(特許文献1のリーダライタに相当する)の通信可能領域であるゾーンAと、送信機Bの通信可能領域であるゾーンBを形成した場合に、図25に示すように、受信機CがゾーンAとゾーンBを横切る際に、ゾーンAとゾーンBが交わる部分(ゾーンA∩B)を横切ることになる。受信機Cの進行方向と位置を精度良く検知するためには、ゾーンA、ゾーンB、ゾーン(A∩B)を区別できることが望ましい。
【0006】
しかしながら、従来の無線通信システムにあっては、送信機Aと送信機Bは干渉しないように交互に送信する場合、ゾーン(A∩B)では送信機Aまたは送信機Bのデータを受信してしまい、受信機Cにおける受信データが、「送信機Aのデータ」、「送信機Bのデータ」、「送信機Aのデータ」、「送信機Bのデータ」となることがあり進行方向を検知することができないという問題がある。
【0007】
図26は、非同期送信におけるデータ受信のタイミングを示す図である。図26に示すように、送信機Aと送信機Bが非同期動作の場合、送信機Aのデータ信号と送信機Bのデータ信号とに衝突が生じる時間帯があり、受信機で正確にデータを受信できないという問題もある。
【0008】
図27は、ゾーンを縮小した場合の無線通信システムの構成を示す図である。図27に示すように、2つの信号に衝突が生じないようにゾーンA、ゾーンBを互いに重ならないように構成すると、信号を受信できない領域が増えてしまい望ましくない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、通信可能領域(ゾーン)を縮小することなく、受信機の進行方向と位置を精度良く検知することができる無線通信システム及び無線通信方法と、無線通信システムを用いた移動体検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定の位置にそれぞれ設置され、所定の通信可能領域内に自己の識別情報を無線送信する複数の送信機と、前記送信機のそれぞれから前記識別情報を受信することにより、自己の位置と移動方向を検知する受信機とを備える無線通信システムであって、前記送信機の前記通信可能領域は、隣り合う前記送信機の前記通信可能領域と重なる領域を有し、前記受信機は、前記通信可能領域が重ならない領域と、前記通信可能領域の重なる領域とを判別して、自己の位置と移動方向を検知することを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記送信機は、前記通信可能領域が互いに重なる送信機が前記識別情報を送信するタイミングと異なるように前記識別情報を送信し、前記受信機は、所定時間内に2つの前記識別情報それぞれが受信できた際に、自己の位置が前記通信可能領域が互いに重なる領域であると判別することを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記送信機は、前記通信可能領域が互いに重なる送信機が前記識別情報を送信するタイミングと一致するように前記識別情報を送信し、前記受信機は、所定時間内に前記識別情報が受信できない際に、自己の位置が前記通信可能領域が互いに重なる領域であると判別することを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記送信機は、前記送信機毎に予め決められた異なるタイムスロットを使用して前記識別情報を送信し、前記受信機は、所定時間に2つのタイムスロットにおいて前記識別情報が受信できた際に、自己の位置が前記通信可能領域が互いに重なる領域であると判別することを特徴とする。
【0014】
本発明は、所定の通信可能領域内に自己の識別情報を送信し、所定の位置にそれぞれ設置された複数の送信機と、前記送信機のそれぞれから前記識別情報を受信することにより、自己の位置と移動方向を検知する受信機とを備える無線通信システムが行う無線通信方法であって、前記送信機の前記通信可能領域は、隣り合う前記送信機の前記通信可能領域と重なる領域を有し、前記受信機が、前記通信可能領域が重ならない領域と、前記通信可能領域の重なる領域とを判別して、自己の位置と移動方向を検知するステップを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記無線通信システムにおける前記受信機を移動体に搭載し、前記移動体の位置と移動方向を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通信可能領域(ゾーン)を縮小することなく、受信機の進行方向と位置を精度良く検知することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
図2図1に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを示す図である。
図3図1に示す計算機3が受信機Cの位置を推定する動作を示すフローチャートである。
図4】受信機Cの位置を推定する際に参照する管理表のテーブル構造を示す図である。
図5】計算機3が受信機Cの移動した位置を判断する動作を示すフローチャートである。
図6】計算機3が受信機Cの移動した位置を判断する際に参照する保管データのテーブル構造を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
図8図7に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを示す図である。
図9図7に示す受信機Cの動作を示すフローチャートである。
図10図7に示す計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する動作を示すフローチャートである。
図11】計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する際に参照する管理表のテーブル構造を示す図である。
図12】計算機3が受信機Cの移動した位置を推定する動作を示すフローチャートである。
図13】受信機Cの移動した位置を推定する際に参照する場所状態遷移表のテーブル構造を示す図である。
図14】受信機Cの移動した位置を推定する際に参照する保管データのテーブル構造を示す図である。
図15】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
図16図15に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを説明する。
図17図15に示す受信機Cの動作を示すフローチャートである。
図18図15に示す計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する動作を示すフローチャートである。
図19】計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する際に参照する管理表のテーブル構造を示す図である。
図20】計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する際に参照する場所変換表のテーブル構造を示す図である。
図21】計算機3が受信機Cの移動した位置を推定する動作を示すフローチャートである。
図22】受信機Cの移動した位置を推定する際に参照する保管データのテーブル構造を示す図である。
図23】衝突しないように時分割送信を行う際のタイミングを示す図である。
図24】故意に衝突を生じさせる送信を行う際のタイミングを示す図である。
図25】従来技術による無線通信システムの構成を示す図である。
図26】非同期送信におけるデータ受信のタイミングを示す図である。
図27】ゾーンを縮小した場合の無線通信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による無線通信システムを説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号A、Bは、無線通信によって信号送信を行う送信機である。送信機A、Bは、それぞれ通信可能領域(ゾーンという)を有している。ここでは、送信機Aの通信可能領域をゾーンA、送信機Bの通信可能領域をゾーンBとする。符号Cは、移動体に備えられ、送信機A、Bから送信する信号を受信する受信機である。符号Dは、所定周期でイベントを発生して、送信機A、Bそれぞれに対して出力するタイマイベント発生器である。符号1は、移動体に備えられ、無線通信によって信号送信を行う送信機である。符号2は、送信機1から送信する信号を受信する受信機である。符号3は、受信機2が受信した信号に基づき、受信機1(移動体)の位置を推定する処理を行う計算機(コンピュータ)である。
【0019】
次に、図2を参照して、図1に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを説明する。図2は、図1に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを示す図である。タイマイベント発生器Dは、ある周期T0(例えば500ms)毎にイベントを発生させ、送信機A及び送信機Bにイベントを通知する。イベントを受信した送信機Aは直ちに無線で時間thの間プリアンブルと時間twの間送信機Aの識別子と場所情報を含むデータを送信する。同様に、送信機Bはある時間td経過後(例えば100ms後)に無線でプリアンブルと送信機Bの識別子と場所情報を含むデータを送信する。なお、識別子が場所情報を兼ねていてもよい。
【0020】
送信機1の周波数帯は、送信機A、Bとは異なる周波数帯を用いる。「送信機AまたはBと受信機Cの通信距離」と「送信機1と受信機2の通信距離」は後者の方が十分長くなるように周波数や送信電力を選択してある。受信機Cは送信機Aからのデータと送信機Bからのデータを受信する機能、また受信したデータの受信強度を測定する機能を備えている。送信機1は受信機Cが受信した送信機AまたはBの識別子と場所情報を含むデータ、測定した受信強度、送信機1の識別子を1つのデータにまとめて受信機2へ送信する。受信機2は計算機3と接続され、送信機1から送られた信号を受信し、計算機3へ転送する。計算機3は受信機Cの位置(移動体の位置)を把握するとともに、受信機Cの移動した位置を判断する。
【0021】
次に、図3図4を参照して、図1に示す計算機3が受信機Cの位置を推定する動作を説明する。図3は、図1に示す計算機3が受信機Cの位置を推定する動作を示すフローチャートである。図4は、受信機Cの位置を推定する際に参照する管理表のテーブル構造を示す図である。
【0022】
まず、計算機3は、受信機2からデータを受信する(ステップS1)。図4に示す管理表は、計算機3内部に記憶されている。そして、計算機3は、受信したデータに含まれる識別子が管理表(図4)にあるか否かを判定する(ステップS2)。この判定の結果、データに含まれる識別子が管理表にない場合、計算機3は、管理表に識別子と場所状態、受信強度を登録し、更新時間に0を設定する(ステップS3)。
【0023】
次に、データに含まれる識別子が管理表にある場合、計算機3は、データに含まれる場所情報が管理表の場所状態と異なるか否かを判定する(ステップS4)。この判定の結果、データに含まれる場所情報が管理表の場所状態と異ならない場合、計算機3は、管理表の該当する識別子の受信強度を変更し、更新時間に0を設定する(ステップS5)。
【0024】
次に、データに含まれる場所情報が管理表の場所状態と異なる場合、計算機3は、受信強度が基準値以下かつ更新時間が周期T0以下であるか否かを判定する(ステップS6)。この判定の結果、受信強度が基準値以下かつ更新時間が周期T0以下でない場合、計算機3は、場所状態と受信強度をデータに含まれる場所情報と受信強度に変更し、更新時間を0に設定する(ステップS7)。
【0025】
次に、受信強度が基準値以下かつ更新時間が周期T0以下である場合、計算機3は、現在の場所をゾーンAとゾーンBの交わり部分(A∩B)であるとみなす(ステップS8)。そして、計算機3は、場所状態を「場所の交わり」に変更し、受信強度を基準値に変更し、更新時間を0に設定する(ステップS9)。
【0026】
次に、図5図6を参照して、計算機3が受信機Cの移動した位置を判断する動作を説明する。図5は、計算機3が受信機Cの移動した位置を判断する動作を示すフローチャートである。図6は、計算機3が受信機Cの移動した位置を判断する際に参照する保管データのテーブル構造を示す図である。まず、計算機3は、管理表と保管データ(図6)から場所状態を読取り、該当する保管データが無ければ、識別子を追加し、変化前の場所状態をNULLにする(ステップS11)。そして、計算機3は、場所状態が変わっているか否かを判定する(ステップS12)。この判定の結果、場所状態が変わっている場合、計算機3は、保管データの場所状態から管理表の場所状態に移動したことを通知する(ステップS13)。一方、場所状態が変わっていない場合は、ステップS13を実行しない。
【0027】
次に、計算機3は、保管データに管理表の識別子と場所状態をコピーし、管理表の各識別子に対する更新時間にsleep時間を加える(ステップS14)。そして、計算機3は、更新時間が規定時間を越えたか否かを判定する(ステップS15)。この判定の結果、更新時間が規定時間を超えていなければ、所定のSleep時間分待って(ステップS16)、ステップS11に戻る。一方、更新時間が規定時間を超えていれば、計算機3は、管理表と保管データから該当する識別子のデータを削除する(ステップS17)。そして、計算機3は、所定のSleep時間分待って(ステップS16)、ステップS11に戻る。
【0028】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態による無線通信システムを説明する。図7は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、図1に示す装置と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、図8を参照して、図7に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを説明する。図8は、図7に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを示す図である。タイマイベント発生器Dは、ある周期(例えば500ms)毎にイベントを発生させ、送信機A及び送信機Bにイベントを通知する。イベントを受信した送信機A、Bは直ちに無線を送信する。図8において、時間Thはプリアンブル、時間Twは無線送信機の識別子と場所情報を含むデータを送信する。なお、識別子が場所情報を兼ねていてもよい。
【0029】
受信機CはゾーンAに入った時に送信機Aの信号を受信したことを契機に送信機Aから信号を受信した旨の情報を送信機Cを介して受信機Cに送信する。また、ゾーンA∩Bに入った時に無線の受信レベルが規定値以上であるかを判断し、規定値以上であれば重なったゾーンに受信機Cが存在することを示す情報を送信機1を介して受信機2に送信する。受信機CがゾーンBに入った時に送信機Bの信号を受信したことを契機に送信機Bから信号を受信した旨の情報を送信機1を介して受信機2に送信する。
【0030】
次に、図9を参照して、図7に示す受信機Cの動作を説明する。図9は、図7に示す受信機Cの動作を示すフローチャートである。まず、受信機Cは、Th/2周期で自身をON(受信可能状態とする)にする(ステップS21)。そして、受信機Cは、受信したか否かを判定する(ステップS22)。この判定の結果、受信していなければ、受信機Cは、自身をOFF(受信できない状態)にして(ステップS23)、ステップS21に戻る。
【0031】
一方、受信した場合、受信機Cは、ONの時間を周期T0分延期する(ステップS24)。そして、受信機Cは、受信を終了したか否かを判定する(ステップS25)。この判定の結果、受信が終了していなければ、受信機Cは、周期T0を超えた否かを判定する(ステップS26)。この判定の結果、超えていなければステップS25に戻り、超えていればステップS23に戻る。
【0032】
次に、受信が終了した場合、受信機Cは、受信データから無線送信機の識別子(および場所情報)を判定できるかを確認する(ステップS27)。この確認の結果、判定できれば、受信機Cは、自分の識別子を付加して受信データと受信強度を送信機1から送信する(ステップS28)。一方、判定できなければ、受信機Cは、自身の識別子を付加して重なったゾーンであることを示すデータと受信強度を送信機1から送信する(ステップS29)。受信機Cは、図9に示す処理を繰り返し実行する。
【0033】
次に、図10図11を参照して、図7に示す計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する動作を説明する。図10は、図7に示す計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する動作を示すフローチャートである。図11は、計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する際に参照する管理表のテーブル構造を示す図である。
【0034】
まず、計算機3は、受信機2からデータを受信する(ステップS31)。そして、計算機3は、受信したデータに含まれる識別子が管理表(図11)にあるか否かを判定する(ステップS32)。この判定の結果、データに含まれる識別子が管理表にない場合、計算機3は、受信したデータに場所情報が含まれるか否かを判定する(ステップS33)。
【0035】
この判定の結果、データに場所情報が含まれていなければ、計算機3は、管理表に識別子と受信強度を登録し、更新時間に0、場所情報に不定を設定し(ステップS34)、ステップS31に戻る。一方、データに場所情報が含まれていれば、計算機3は、管理表に識別子と場所状態、受信強度を登録し、更新時間に0を設定して(ステップS35)、ステップS31へ戻る。
【0036】
次に、データに含まれる識別子が管理表にある場合、計算機3は、受信したデータに場所情報が含まれるか否かを判定する(ステップS36)。この判定の結果、データに場所情報が含まれる場合、計算機3は、該当する識別子のデータ列に受信したデータから取得した場所状態、受信強度を上書きし、更新時間を0に設定して(ステップS37)、ステップS31に戻る。一方、データに場所情報が含まれない場合、計算機3は、受信強度が閾値以上か否かを判定する(ステップS38)。この判定の結果、閾値以上でなければ、計算機3は、管理表の該当する識別子のデータ列に受信強度を登録し、更新時間に0、場所情報に不定を設定して(ステップS39)、ステップS31に戻る。一方、閾値以上であれば、計算機3は、管理表の該当する識別子のデータ列に受信強度を登録し、更新時間に0、場所情報に「境界」を設定して(ステップS40)、ステップS31に戻る。
【0037】
次に、図12図13図14を参照して、計算機3が受信機Cの移動した位置を推定する動作を説明する。図12は、計算機3が受信機Cの移動した位置を推定する動作を示すフローチャートである。図13は、受信機Cの移動した位置を推定する際に参照する場所状態遷移表のテーブル構造を示す図である。図14は、受信機Cの移動した位置を推定する際に参照する保管データのテーブル構造を示す図である。まず、計算機3は、管理表(図13)と保管データ(図14)から場所状態を読取り、該当する保管データがなければ、保管データの場所状態は不定とみなし保管データを作成する(ステップS51)。そして、計算機3は、管理表の場所状態と保管データの場所状態が変わっているか否かを判定する(ステップS52)。この判定の結果、管理表の場所状態と保管データの場所状態が変わっていれば、計算機3は、場所状態遷移表に基づき処理を行う(ステップS53)。
【0038】
次に、計算機3は、保管データの場所状態を変化前の状態に管理表の場所状態を保管データの場所状態にコピーする(ステップS54)。管理表の場所状態と保管データの場所状態が変わっていなければ、ステップS53、S54を実行しない。そして、計算機3は、管理表の識別子に対する更新時間にsleep時間を加える(ステップS55)。
【0039】
次に、計算機3は、更新時間が規定時間を超えた否かを判定する(ステップS56)。この判定の結果、更新時間が規定時間を超えていなければ、計算機3は、Sleep時間分待って、ステップS51に戻る。一方、更新時間が規定時間を超えていれば、計算機3は、管理表と保管データから該当する識別子のデータを削除し(ステップS58)、Sleep時間分待って、ステップS51に戻る。
【0040】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態による無線通信システムを説明する。図15は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、図1に示す装置と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、図16を参照して、図15に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを説明する。図16は、図15に示す送信機A、Bにおけるタイムスロットの割り当てを示す図である。タイマイベント発生器Dは、ある周期Tc(例えば100ms)毎にイベントを発生させ、無線送信機A及び無線送信機Bにイベントを通知する。イベントを受信した送信機Aは直ちに無線で時間thだけキャリアを送信し、決められたタイムスロットの先頭(例えばタイムスロット0)で時間twの間キャリアを送信する。一方、送信機Bも直ちに無線で時間thだけキャリアを送信し、送信機Aのタイムスとロットと異なる決められたタイムスロットの先頭(例えばタイムスロット1)で時間twの間キャリアを送信する。
【0041】
受信機1は、どのタイムスロットでキャリアを検知したかを判定し、送信機Cは送信機Cの識別子と受信機1がどのタイムスロットでキャリアを検知したかの情報を送信する。受信機Cは送信機Cのデータを受信し、計算機3に転送する。ここで、図17を参照して、図15に示す受信機Cの動作を説明する。図17は、図15に示す受信機Cの動作を示すフローチャートである。まず、受信機Cは、Th/2周期で自身をON(受信可能状態とする)にする(ステップS61)。そして、受信機Cは、受信したか否かを判定する(ステップS62)。この判定の結果、受信していなければ、受信機Cは、自身をOFF(受信できない状態)にして(ステップS63)、ステップS61に戻る。
【0042】
一方、受信した場合、受信機Cは、ONの時間を周期Tc分延期する(ステップS64)。そして、受信機Cは、Th/2以上連続受信したか否かを判定する(ステップS65)。この判定の結果、受信が終了していなければ、受信機Cは、周期Tcを超えた否かを判定する(ステップS66)。この判定の結果、超えていなければステップS65に戻り、超えていればステップS63に戻る。
【0043】
次に、Th/2以上連続受信していなければ、受信機Cは、自身のONの時間を周期Tc分延期し、Thの終了を検知しタイムスロットを認識する(ステップS67)。そして、受信機Cは、タイムスロット毎にデータの有無を検出し(ステップS68)、送信機1を使って送信機1の識別子とタイムスロット毎のデータの有無情報を受信機2に送信する(ステップS69)。
【0044】
次に、図18図19図20を参照して、計算機3が受信データから受信機1の位置を把握する動作を説明する。図18は、図15に示す計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する動作を示すフローチャートである。図19は、計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する際に参照する管理表のテーブル構造を示す図である。図20は、計算機3が受信データから受信機Cの位置を把握する際に参照する場所変換表のテーブル構造を示す図である。
【0045】
まず、計算機3は、受信機2からデータを受信する(ステップS71)。そして、計算機3は、受信したデータに含まれる識別子は管理表にあるか否かを判定する(ステップS72)。この判定の結果、データに含まれる識別子は管理表にない場合、計算機3は、管理表(図19)に新たな識別子を登録する(ステップS73)。一方、データに含まれる識別子は管理表にある場合、計算機3は、受信データのタイムスロット毎のデータの有無情報と場所変換表(図20)から場所に変換し、管理表(図19)に登録し、更新時間を0に設定する(ステップS74)。
【0046】
次に、図21図22を参照して、計算機3が受信機Cの移動した位置を推定する動作を説明する。図21は、計算機3が受信機Cの移動した位置を推定する動作を示すフローチャートである。図22は、受信機Cの移動した位置を推定する際に参照する保管データのテーブル構造を示す図である。まず、計算機3は、管理表と保管データ(図22)から場所状態を読取り、該当する保管データが無ければ、識別子を追加し、変化前の場所状態をNULLにする(ステップS81)。そして、計算機3は、管理表の場所状態と保管データの場所状態が変わっているか否かを判定する(ステップS82)。この判定の結果、管理表の場所状態と保管データの場所状態が変わっていなければ、ステップS81に戻る。一方、管理表の場所状態と保管データの場所状態が変わっていれば、計算機3は、保管データの変化前の場所状態から管理表の場所状態に移動したことを通知する(ステップS83)。
【0047】
次に、計算機3は、保管データに管理表の識別子と場所状態をコピーし、管理表の識別子に対する更新時間にsleep時間を加える(ステップS84)。そして、計算機3は、更新時間が規定時間を超えたか否かを判定する(ステップS85)。この判定の結果、更新時間が規定時間を超えていなければ、計算機3は、Sleep時間分待って(ステップS86)、ステップS81に戻る。一方、更新時間が規定時間を超えてれば、計算機3は、管理表と保管データから該当する識別子のデータを削除し(ステップS87)、Sleep時間分待って(ステップS86)、ステップS81に戻る。
【0048】
以上説明したように、送信機Aと送信機Bのタイミングを同期させ、図23に示すように、送信機Aと送信機Bが衝突しないように時分割送信し、送信機Aと送信機Bの信号が同時に受信できることでゾーンAとゾーンBの交わり部分(A∩B)に受信機Cが位置していることを検知することができる。図23は、衝突しないように時分割送信を行う際のタイミングを示す図である。
【0049】
また、図24に示すように、送信機Aと送信機Bが衝突するように送信し、送信機Aと送信機Bのデータが衝突している場合に受信機が解釈できないデータを受信したことを通知し、それによりゾーンAとゾーンBの交わり部分(A∩B)に受信機Cが位置していることを検知することができる。図24は、故意に衝突を生じさせる送信を行う際のタイミングを示す図である。
【0050】
また、パルス位置変調や拡散符号などの衝突に強い変調方式を適用して、それによりゾーンAとゾーンBの交わり部分(A∩B)に受信機Cが位置していることを検知することができる。
【0051】
これにより、領域(ゾーン)を細かく推定することが可能となり、受信機Cの進行方向などの推定を容易に行うことが可能になる。
【0052】
前述した実施形態における送信機A、B、受信機C、送信機1、受信機2内の処理動作をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0053】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
通信可能領域(ゾーン)を縮小することなく、受信機の進行方向と位置を精度良く検知することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
A、B・・・送信機、C・・・受信機、D・・・タイマイベント発生器、1・・・送信機、2・・・受信機、3・・・計算機
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