特許第6023677号(P6023677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023677シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、シアネートエステル樹脂金属張積層板、及びLED実装基板
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  • 特許6023677-シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、シアネートエステル樹脂金属張積層板、及びLED実装基板 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023677
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、シアネートエステル樹脂金属張積層板、及びLED実装基板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20161027BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20161027BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20161027BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20161027BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C08J5/24CEZ
   H01L33/48
   C08L79/00 Z
   C08K3/00
   H01L23/14 R
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-182781(P2013-182781)
(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公開番号】特開2015-48452(P2015-48452A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】関口 晋
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−049238(JP,A)
【文献】 特開平06−122763(JP,A)
【文献】 特開2010−174242(JP,A)
【文献】 特開2004−002371(JP,A)
【文献】 特開2007−131842(JP,A)
【文献】 特開2011−184650(JP,A)
【文献】 特開2013−053218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸したシアネートエステル樹脂組成物からなるシアネートエステル樹脂プリプレグであって、
前記シアネートエステル樹脂組成物が、
(A)一分子中にシアネート基を一個以上含有するシアネートエステル化合物
(B)一分子中にフェノール性水酸基を一個以上含有するフェノール化合物
(C)無機充填剤:(A)、(B)成分の合計100質量部に対して500質量部以上1000質量部以下
を含有するものであることを特徴とするシアネートエステル樹脂プリプレグ。
【請求項2】
前記シアネートエステル樹脂組成物が、
前記(A)成分として、下記一般式(1)で示されるシアネートエステル化合物又はそのオリゴマー
【化1】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化2】
のいずれかを示し、n=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
前記(B)成分として、下記一般式(2)で示される1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物(b−1)又は下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)、もしくはその両方
【化3】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化4】
のいずれかを示し、m=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
【化5】
を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のシアネートエステル樹脂プリプレグ。
【請求項3】
前記シアネートエステル樹脂組成物が、
前記(B)成分として、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)
【化6】
を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のシアネートエステル樹脂プリプレグ。
【請求項4】
前記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)が、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、又は2,7−ジヒドロキシナフタレンであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシアネートエステル樹脂プリプレグ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシアネートエステル樹脂プリプレグを複数枚重ねて加熱加圧成形してなるものであることを特徴とする積層基板。
【請求項6】
前記積層基板のガラス転移温度が200℃以上であることを特徴とする請求項に記載の積層基板。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシアネートエステル樹脂プリプレグ1枚又は複数枚重ねたものの両面に金属箔を重ねて、加熱加圧成形して製造されるものであることを特徴とするシアネートエステル樹脂金属張積層板。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシアネートエステル樹脂プリプレグ、又は、請求項又は請求項に記載の積層基板を使用して作製されたものであることを特徴とするLED実装基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料に好適に用いられるシアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、シアネートエステル樹脂金属張積層板、及びそれを用いたLED実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDの実装基板又は電子部品等の実装基板としては、エポキシ樹脂をガラスクロスに含浸させたガラスエポキシ樹脂基板やLED用には白色のガラスエポキシ樹脂基板が広く使われているが、ガラスエポキシ樹脂基板などは膨張係数が大きく、またガラス転移温度も150℃前後のものである。そのため、高融点の鉛フリー半田採用や部品の発熱や光の影響によりエポキシ樹脂の寸法に変化が生じたり、樹脂自体の性質が劣化するといった問題が解決すべき課題として残っている。
【0003】
一方、青色、白色のLED需要増と技術進歩に伴う一層のLEDの高輝度化によりLED用の実装基板としては耐熱性に優れているものが要求されており、このような実装基板の材料としては、セラミックスが主に使われているが、価格が高く、大型基板に用いるにはコスト面に難があった。また、その他にシリコーン樹脂を用いた基板が提案されているが、耐候性に難があった。
【0004】
上記のことから、実装基板の材料として、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コスト等に優れた材料が求められていた。
【0005】
尚、本発明に関する従来技術としては、例えば、下記の特許文献1〜3に記載されているものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−213426号公報
【特許文献2】特開2011−127074号公報
【特許文献3】特開2010−089493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、LEDの実装基板又は電気電子部品等の実装基板として用いた際に、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れたプリプレグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、
ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸したシアネートエステル樹脂組成物からなるシアネートエステル樹脂プリプレグであって、
前記シアネートエステル樹脂組成物が、
(A)一分子中にシアネート基を一個以上含有するシアネートエステル化合物
(B)一分子中にフェノール性水酸基を一個以上含有するフェノール化合物
(C)無機充填剤:(A)、(B)成分の合計100質量部に対して1000質量部以下
を含有するシアネートエステル樹脂プリプレグを提供する。
【0009】
このようなシアネートエステル樹脂プリプレグであれば、LEDの実装基板又は電気電子部品等の実装基板として用いた際でも、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れた実装基板を得ることができる。
【0010】
このうち、前記シアネートエステル樹脂組成物が、
前記(A)成分として、下記一般式(1)で示されるシアネートエステル化合物又はそのオリゴマー
【化1】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化2】
のいずれかを示し、n=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
前記(B)成分として、下記一般式(2)で示される1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物(b−1)又は下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)、もしくはその両方
【化3】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化4】
のいずれかを示し、m=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
【化5】
を含有するものであることが好ましい。
【0011】
このようなシアネートエステル樹脂をシアネートエステル樹脂プリプレグに用いれば、耐候性、耐熱性、寸法安定性により優れた実装基板を得ることができる。
【0012】
また、本発明は、前記シアネートエステル樹脂プリプレグを複数枚重ねて加熱加圧成形してなる積層基板を提供する。
【0013】
このような積層基板を実装基板に用いれば、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れたものを得ることができる。
【0014】
このうち、前記積層基板のガラス転移温度が200℃以上であることが好ましい。
【0015】
このような積層基板であれば、耐熱性、寸法安定性により優れた実装基板を得ることができる。
【0016】
また、本発明は、前記シアネートエステル樹脂プリプレグ1枚又は複数枚重ねたものの両面に金属箔を重ねて、加熱加圧成形して製造されるシアネートエステル樹脂金属張積層板を提供する。
【0017】
このようなシアネートエステル樹脂金属張積層板を用いれば、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れた実装基板を得ることができる。
【0018】
さらに、本発明は、
前記シアネートエステル樹脂プリプレグ、又は、前記積層基板を使用して作製されたLED実装基板を提供する。
【0019】
このようなLED実装基板を用いれば、実装基板が耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れているため、高品質なLED装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグであれば、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れた実装基板を得ることができ、このようなプリプレグから積層基板、金属張積層板等の作製を経てLED実装基板とすれば、高品質なLED装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のLED実装基板を用いて作製されたLED装置の断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前述のように、LEDの実装基板又は電気電子部品等の実装基板として、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れた実装基板の材料が求められていた。
【0023】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、耐候性、耐熱性、寸法安定性等の特性に優れ、かつ、セラミックよりもコストのかからないシアネートエステル樹脂をプリプレグの主材として用いることを見出した。シアネートエステル樹脂からなるプリプレグ及びそれを用いた積層基板は耐熱性に優れ、膨張係数も非常に小さいことから半導体素子を半田実装しても温度サイクルなどのストレスが半導体素子にかからず高度の信頼性を維持できるものとなることを見出した。
【0024】
本発明者は、さらに検討を行った結果、下記のシアネートエステル樹脂組成物からなるプリプレグ、積層基板及び金属張積層板、及びLEDの実装基板又は電気電子部品等の実装基板により上記課題を解決することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0025】
即ち、本発明は、
ガラスクロスと、該ガラスクロスに含浸したシアネートエステル樹脂組成物からなるシアネートエステル樹脂プリプレグであって、
前記シアネートエステル樹脂組成物が、
(A)一分子中にシアネート基を一個以上含有するシアネートエステル化合物
(B)一分子中にフェノール性水酸基を一個以上含有するフェノール化合物
(C)無機充填剤:(A)、(B)成分の合計100質量部に対して1000質量部以下
を含有するシアネートエステル樹脂プリプレグである。
【0026】
さらに、本発明は、上記(A)〜(C)成分を含むシアネートエステル樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたシアネートエステルプリプレグを加圧加熱成形し硬化させて得られる積層基板を提供する。
またさらに、本発明は、上記のシアネートエステル樹脂プリプレグと、放熱効果・導電効果の大きい金属箔とを構成材料とする金属張積層板を提供する。
【0027】
<シアネートエステル樹脂プリプレグ>
本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグで用いるシアネートエステル樹脂は下記成分を含有する組成物である。
(A)一分子中にシアネート基を一個以上含有するシアネートエステル化合物
(B)一分子中にフェノール性水酸基を一個以上含有するフェノール化合物
(C)無機充填剤:(A)、(B)成分の合計100質量部に対して1000質量部以下
【0028】
[(A)成分:一分子中にシアネート基を一個以上含有するシアネートエステル化合物]
本発明で用いるシアネートエステル樹脂組成物の(A)成分として、下記一般式(1)で示されるシアネートエステル化合物又はそのオリゴマーを好ましく用いることができる。
【化6】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化7】
のいずれかを示し、n=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
【0029】
このシアネートエステル化合物は、1分子中にシアネート基を2個以上有するものであり、具体的には、多芳香環の2価フェノールのシアン酸エステル、例えばビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネートフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−シアネートフェニル)−2,2−プロパン、ジ(4−シアネートフェニル)エーテル、ジ(4−シアネートフェニル)チオエーテル、多価フェノールのポリシアン酸エステル、例えばフェノールノボラック型シアネートエステル、クレゾールノボラック型シアネートエステル、フェニルアラルキル型シアネートエステル、ビフェニルアラルキル型シアネートエステル、ナフタレンアラルキル型シアネートエステルなどが挙げられる。
【0030】
前述のシアネートエステル化合物は、フェノール類と塩化シアンを塩基性下、反応させることにより得られる。上記シアネートエステル化合物は、その構造より軟化点が106℃の固形のものから、常温で液状のものまでの幅広い特性を有するものの中から用途に合せて適宜選択することができる。シアネート基の当量が小さいもの、即ち官能基間分子量が小さいものは硬化収縮が小さく、低熱膨張、高Tgの硬化物を得ることができる。シアネート基当量が大きいものは、若干Tgが低下するが、トリアジン架橋間隔がフレキシブルになり、低弾性化、高強靭化、低吸水化が期待できる。シアネートエステル化合物中に結合あるいは残存している塩素は50ppm以下、より好ましくは20ppm以下であることが好適である。50ppm以下であれば、長期高温保管時熱分解により遊離した塩素あるいは塩素イオンが酸化されたCuフレームやCuワイヤー、Agメッキを腐食させ、剥離や電気的不良を引き起こす可能性がないため好ましい。また樹脂の絶縁性も低下することがないため好ましい。
【0031】
[(B)成分:一分子中にフェノール性水酸基を一個以上含有するフェノール化合物]
本発明で用いるシアネートエステル樹脂組成物は、硬化剤として(B)成分を含有するものであることが好ましい。一般に、シアネートエステル化合物の硬化剤や硬化触媒としては、金属塩、金属錯体や活性水素を持つフェノール性水酸基や一級アミン類などが用いられるが、本発明では、フェノール化合物(b−1)やジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)といったものが好適に用いられる。
【0032】
[フェノール化合物(b−1)]
(B)成分として、下記一般式(2)で示される1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物(b−1)を好ましく用いることができる。
【化8】

(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化9】

のいずれかを示し、m=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
【0033】
このフェノール化合物としては1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つフェノール樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールA型樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ビフェニルアラルキル型樹脂、ナフタレンアラルキル型樹脂が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を併用することができる。
【0034】
フェノール化合物(b−1)は、フェノール水酸基当量が小さいもの、例えば、水酸基当量120以下のものはシアネート基との反応性が高く、120℃以下の低温でも硬化反応が進行する。この場合はシアネート基に対する水酸基のモル比を小さくすると良い。好適な範囲はシアネート基1モルに対し0.05〜0.11モルである。この場合、硬化収縮が少なく、低熱膨張で高Tgの硬化物が得られる。
【0035】
一方、フェノール水酸基当量が大きいもの、例えば水酸基当量175以上のものはシアネート基との反応が抑えられ保存安定性が良く、流動性が良い組成物が得られる。好適な範囲はシアネート基1モルに対し0.1〜0.4モルである。この場合、Tgは若干低下するが吸水率の低い硬化物が得られる。希望の硬化物特性と硬化性を得る為にこれらフェノール化合物は2種類以上併用することもできる。
【0036】
[ジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)]
(B)成分として、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)を好ましく用いることができる。
【化10】
【0037】
このジヒドロキシナフタレンとしては、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
融点が130℃の1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレンは非常に反応性が高く、少量でシアネート基の環化反応を促進する。融点が200℃以上の1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンは比較的反応が抑制される。
【0038】
これらジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)を単独で使用した場合、官能基間分子量が小さく、かつ剛直な構造であるため硬化収縮が小さく、高Tgの硬化物が得られる。また(b−1)水酸基当量の大きい1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物と併用することにより硬化性を調整することもできる。
【0039】
上記フェノール化合物(b−1)及びジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)中のハロゲン元素やアルカリ金属などが120℃、2気圧下での抽出で10ppm、特に5ppm以下であることが望ましい。
【0040】
本発明で用いるシアネートエステル樹脂組成物は、上記のフェノール化合物(b−1)を単独で、又は上記のジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)を単独で、もしくはフェノール化合物(b−1)及びジヒドロキシナフタレン化合物(b−2)の組み合わせを(B)成分として含有することが好ましい。
【0041】
[(C)成分:無機充填剤]
本発明で用いるシアネートエステル樹脂組成物は、(C)成分として無機充填剤を含有する。この無機充填剤は、本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグを各種積層基板とした際の線膨張率を下げ、且つ、該積層基板の熱伝導率や強度を向上させることを目的として、シアネートエステル樹脂組成物に含まれる。
【0042】
この(C)成分としては、公知の無機充填剤であればいずれのものであってもよく、例えば、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、ヒュームド二酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。補強性無機充填剤として、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等が挙げられる。(C)成分は上記の無機充填剤を1種単独でも2種類以上を組み合わせても使用することができる。また、(C)成分の平均粒径及び形状は特に限定されず、平均粒径は、通常、0.01〜50μm、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは1〜5μmである。尚、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。(C)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部当り1000質量部以下(通常、50〜1000質量部)の範囲であり、得られるシアネートエステル樹脂積層板の線膨張率及び放熱特性の観点から、900質量部以下(特に、100〜900質量部)の範囲であることがより好ましい。
【0043】
(C)成分の無機充填剤は、上記の樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものであってもよい。このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。尚、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
また、無機充填剤は、有機溶剤に分散させたスラリー状態でも組成物に添加することができる。
【0044】
さらに、本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグをLED実装基板として使用する場合、光反射率を改善するため白色にすることが望ましい。そのため、得られるプリプレグや積層基板を白色にするために無機充填剤として白色顔料を用いることができる。LED実装基板として使用する場合、プリプレグや積層基板は光反射率が全可視光領域にわたって好ましくは80%以上(即ち、80〜100%)であることが望ましい。白色顔料としては、従来から一般的に使用されている公知の白色顔料であれば制限なく使用できるが、好適には二酸化チタン、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム又はこれらの2種以上の組み合わせを用いることができる。この組み合わせとしては、二酸化チタンと具体的に例示された他の白色顔料の少なくとも1種との組み合わせが挙げられる。これらのうち、二酸化チタン、酸化マグネシウムがより好ましく、二酸化チタンがさらに好ましい。二酸化チタンの結晶形はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が最も好ましく使用される。
【0045】
白色顔料は、平均粒径が0.05〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0μmである。また、白色顔料と(A)及び(B)成分の樹脂成分ならびに前述した無機充填剤との混合性及び分散性を高めるため、白色顔料を、Alの水酸化物、Siの水酸化物などの水酸化物、あるいはシリコーンなどのカップリング剤等で予め表面処理してもよい。尚、平均粒径は、上述のとおりレーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。白色顔料成分は1種類単独でも2種類以上を組み合わせても使用することができる。
【0046】
白色顔料を配合する場合の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部当り1〜300質量部であることが好ましく、3〜200質量部であることがより好ましく、10〜150質量部であることが特に好ましい。該配合量が1質量部以上であれば、十分な白色度の硬化物が得られる。配合量が300質量部以下であれば、全無機充填剤中の占める割合が高くなることがなく、プリプレグをLED実装基板に用いた際の線膨張率を下げ、かつ、実装基板の放熱特性を向上させるという無機充填剤の所望の特性を低下させることがないため好ましい。尚、白色顔料の量は、シアネートエステル樹脂組成物全体において1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、10〜30質量%の範囲であることがさらにより好ましい。
【0047】
[その他の成分]
本発明で用いるシアネートエステル樹脂組成物には、上述した(A)〜(C)成分以外にも、必要に応じて、それ自体公知の各種の添加剤を配合することができる。
【0048】
シアネートエステル樹脂組成物には、接着性を付与するため、接着助剤(接着性付与剤)を必要に応じて添加できる。このような接着助剤としては公知のものを使用することができ、また、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0049】
本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグは、上記(A)〜(C)成分を必須成分として含有してなるシアネートエステル樹脂組成物を、例えば、溶剤に溶解・分散された状態で、ガラスクロスに含浸させ、次に、乾燥炉中で好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃でガラスクロスから溶剤を蒸発させて除去することにより得ることができる。
以下、本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグの製造方法について詳しく説明する。
【0050】
〔シアネートエステル樹脂組成物の調製〕
上記のシアネートエステル樹脂組成物は、例えば、所要の成分を均一に混合することによって調製することができる。この場合、シアネートエステル樹脂組成物は、(A)〜(C)成分(及びその他の成分)を均一に混合してベース組成物を得て、このベース組成物にキシレン、ヘプタン、メチルエチルケトン等の溶剤を加えて溶液又は分散液として調製する。さらに本発明のプリプレグをLED実装基板として用いる場合は、(C)成分として通常の無機充填剤と前述の白色顔料とを添加し、溶液や分散液として調製することが好ましい。
【0051】
−ガラスクロス−
本発明で用いるガラスクロス用の基材の種類は、特に限定されないが、例えば、無アルカリガラスクロス、高引張強度のTガラスクロス、石英ガラスクロスのいずれを用いても良いが、プリプレグや後述の積層基板の必要特性に応じて適宜選択すればよく、より好ましい基材は無アルカリガラスクロスや石英ガラスクロスである。
【0052】
−溶剤−
本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグの製造において、シアネートエステル樹脂組成物を溶解・分散する際に溶剤を用いてもよい。このような溶剤としては、上述したシアネートエステル樹脂組成物を溶解・分散させることができ、かつ、組成物が未硬化又は半硬化の状態に保持される温度で蒸発させることができるものであれば特に限定されず、例えば、沸点が好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜150℃の溶剤が挙げられる。溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系非極性溶剤;エーテル類、エステル類等の炭化水素系極性溶剤が挙げられる。溶剤の使用量は、上述したシアネートエステル樹脂組成物が溶解・分散し、得られた溶液又は分散液をガラスクロスに含浸させることができる量であれば、特に制限されず、該シアネートエステル樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
【0053】
<積層基板>
本発明の積層基板は、上述した(A)〜(C)成分を必須成分として含有してなるシアネートエステル樹脂プリプレグを複数枚重ねて加熱加圧成形してなる積層基板である。本発明の積層基板において、その厚さは、実装基板とした際の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは20〜2,000μm、より好ましくは50〜1,000μmである。
【0054】
また、積層基板のガラス転移温度が200℃以上であれば、200℃以下での熱膨張係数の変化がほとんどなく、LED実装基板とした際の歪を抑えることができる。すなわち、歪による半導体素子の剥離現象といった悪影響を抑えることができる。ガラス転移温度は200℃以上あれば良いが、好ましくはガラス転移温度が250℃以上である。
【0055】
本発明の積層基板は、前述の得られたプリプレグを複数枚積層して加圧加熱成形することにより得ることができる。具体的には、プリプレグを複数枚積層して、例えば、5〜50MPaの圧力、70〜180℃の温度の範囲で真空プレス機等を用いて加圧加熱により積層基板が製造される。また、白色のシアネートエステル樹脂積層基板を作製する場合は、シアネートエステル樹脂組成物を調製する際に、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して700質量部以下の無機充填剤成分と、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して1〜300質量部の白色顔料成分とを含有する無機充填剤を用いることにより、白色のLED実装基板用シアネートエステル樹脂積層基板を得ることができる。
【0056】
このような積層基板を実装基板に用いれば、耐候性、耐熱性、寸法安定性、コストに優れたものを得ることができる。また、ガラス転移温度が200℃以上となるものであれば、耐熱性により優れたものとなり、例えば高輝度LEDのような優れた耐熱性を要求するような装置にも好適に用いることのできる実装基板を作製することができる。
【0057】
<シアネートエステル樹脂金属張積層板>
本発明のシアネートエステル樹脂金属張積層板は、上述した(A)〜(C)成分を必須成分として含有してなるシアネートエステル樹脂プリプレグ1枚又は複数枚重ねたものの両面に金属箔を重ねて、加熱加圧成形して製造されるものである。
【0058】
前述の得られたプリプレグを、絶縁層の厚みに応じた枚数を重ね、加圧加熱して積層基板とすることができる。金属箔に挟まれた(積層)部分の厚さは、実装基板とした際の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは20〜2,000μm、より好ましくは50〜1,000μmである。具体的には、プリプレグ又はプリプレグを複数枚積層したものの両面に金属箔を重ねて、例えば、5〜50MPaの圧力、70〜180℃の温度の範囲で真空プレス機等を用いて加圧加熱により金属張積層板が製造される。金属箔としては特に限定されないが、電気的、経済的に銅箔が好ましく用いられる。この金属張積層板をサブトラクト法や穴あけ加工などの通常用いられる方法により加工することで印刷配線板を得ることができる。
【0059】
上記の金属張積層基板の電極パターンは、公知の方法で作製すればよく、例えば、本発明のシアネートエステル樹脂積層基板と、該積層基板の片面又は両面に設けられた金属箔とを有する金属張積層板に対してエッチング等を行うことにより作製することができる。
【0060】
このようなシアネートエステル樹脂金属張積層板を実装基板とすることで、耐候性、耐熱性、寸法安定性に優れていることから、金属箔との剥離が抑制されており、また、セラミックよりもコストのかからないことから、高品質かつ低コストなLED装置を製造することができる。
【0061】
<LED実装基板>
本発明のLED実装基板は、前述のシアネートエステル樹脂プリプレグ、又は、前述の積層基板を使用して作製されたものである。
以下、図面を参照して本発明のLED実装基板を実際に用いたLED装置の説明をする。
【0062】
図1は、本発明のLED実装基板を用いて作製されたLED装置の断面図の一例である。
LED装置1は、LEDチップ5を実装した積層基板2と透明封止体7とを接着したものである。このうち、積層基板2上には銅箔等からなる電極パターン3が形成され、LEDチップ5がダイボンディングペースト4を介して電極パターン3上に設置され、さらに、電極パターン3とLEDチップ5とがボンディングワイヤー6により電気的に接続されている。
【0063】
本発明によれば、実装基板をシアネートエステル樹脂プリプレグ又は積層基板から作製するため、高いガラス転移温度を有し耐熱性に優れ、かつ膨張係数も小さく寸法精度に優れたものとすることができ、これにより銅箔等からなる電極パターンと積層基板との間や封止材と実装基板との間に膨れや剥離といった現象が起こりにくい。また、耐候性も優れた積層基板を実装基板としているため、積層基板自体や電極パターン等の変色が起こりにくく、連続使用に耐えうるLED装置とすることができる。以上のことから、本発明のLED実装基板は、半導体素子やLED素子を実装する実装基板として最適なものとなる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグ、それを用いた積層基板及び金属張積層板について実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、及び金属張積層板の製造
−プリプレグの製造−
シアネートエステル化合物としてプリマセット PT−60(ロンザ製 シアネート基当量:119)90質量部、フェノール化合物 TD−2131(DIC製 フェノール性水酸基当量:110)10質量部、溶融球状シリカ(龍森製 MP−15EF 平均1.5μm微粉末)900質量部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)500質量部に溶解し、高速混合装置で均一に混合し分散液を調製した。
このシアネートエステル樹脂組成物のメチルエチルケトン分散液にガラスクロスWEA−116E(日東紡製、厚さ:100μm、Eガラス)を浸漬することにより分散液をガラスクロスに含浸させた。このガラスクロスを60℃で2時間熱風乾燥機に放置することで溶剤を揮発させプリプレグ(P−1)を作製した。このプリプレグは室温でタックもなく取り扱いも容易な基材であった。
【0066】
−積層基板の製造−
製造したプリプレグ(P−1)を2枚重ねて熱プレス機にて170℃で1時間加圧成形後、さらにこれを185℃で1時間2次硬化させてシアネートエステル樹脂積層基板(S−1)を得た。
【0067】
−金属張積層板の製造−
製造したプリプレグ(P−1)を銅箔(福田金属製、厚さ:35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成形して成形品を得、さらにこれを150℃で1時間2次硬化させて厚み120ミクロン厚みの銅張積層板(CS−1)を得た。
【0068】
[実施例2]
シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、及び金属張積層板の製造
−プリプレグの製造−
シアネートエステル化合物としてプリマセット PT−60(ロンザ製シアネート基当量:119)78質量部、フェノール化合物 MEH−7800SS(明和化成製フェノール性水酸基当量:175)22質量部、溶融球状シリカ(龍森製 MP−15EF 平均1.5μm)900質量部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)500質量部に溶解し、高速混合装置で均一に混合し分散液を調製した。
このシアネートエステル樹脂組成物のメチルエチルケトン分散液にガラスクロスWEA−116E(日東紡製、厚さ:100μm、Eガラス)を浸漬することにより分散液をガラスクロスに含浸させた。このガラスクロスを60℃で2時間熱風乾燥機に放置することで溶剤を揮発させプリプレグ(P−2)を作製した。このプリプレグは室温でタックもなく取り扱いも容易な基材であった。
【0069】
−積層基板の製造−
製造したプリプレグ(P−2)を2枚重ねて熱プレス機にて170℃で1時間加圧成形後、さらにこれを185℃で1時間2次硬化させてシアネートエステル樹脂積層基板(S−2)を得た。
【0070】
−金属張積層板の製造−
製造したプリプレグ(P−2)を銅箔(福田金属製、厚さ:35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成形して成形品を得、さらにこれを150℃で1時間2次硬化させて厚み120ミクロン厚みの銅張積層板(CS−2)を得た。
【0071】
[実施例3、4、及び比較例1]
下記の表1に示される配合量でシアネートエステル樹脂組成物の分散液を作製し、ガラスクロスとして実施例1で使用したものを用い、実施例1と同じ条件でプリプレグ(P−3、P−4、P−1)、積層基板(S−3、S−4、S−1)、銅張積層板(CS−3、CS−4、CS−1)を作製した。
【0072】
【表1】
【0073】
[比較例2]
エポキシ樹脂プリプレグ、積層基板及び金属張積層板の製造
−プリプレグの製造−
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製 EOCN1020)60質量部、フェノールノボラック樹脂(群栄化学製 H−4)30質量部、球状シリカ((株)(龍森製 MP−15EF 平均1.5μm)900質量部、触媒(北興化学(株)製 TPP)0.2質量部、溶剤としてメチルエチルケトン 500質量部に溶解し、高速混合装置で均一に混合し分散液を調製した。
このエポキシ樹脂組成物のメチルエチルケトン分散液にガラスクロスWEA−116E(日東紡製、厚さ:100μm、Eガラス)を浸漬することにより分散液をガラスクロスに含浸させた。このガラスクロスを60℃で2時間熱風乾燥機に放置することで溶剤を揮発させプリプレグ(P−2)を作製した。このプリプレグは室温でタックもなく取り扱いも容易な基材であった。
【0074】
−積層基板の製造−
製造したプリプレグ(P−2)を2枚重ねて熱プレス機にて170℃で1時間加圧成形後、さらにこれを185℃で1時間2次硬化させてエポキシ樹脂積層基板(S−2)を得た。
【0075】
−金属張積層板の製造−
製造したプリプレグ(P−2)を銅箔(福田金属製、厚さ:35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成形して成形品を得、さらにこれを150℃で1時間2次硬化させて厚み120ミクロン厚みの銅張積層板(CS−2)を得た。
【0076】
[実施例5]
シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、及び金属張積層板の製造
−プリプレグの製造−
シアネートエステル化合物としてプリマセット PT−60 (ロンザ製シアネート基当量:119)90質量部、フェノール化合物 TD−2131 (DIC製フェノール性水酸基当量:110)10質量部、溶融球状シリカ(龍森製 MP−15EF 平均1.5μm)900質量部、溶剤としてメチルエチルケトン 500質量部に溶解し、高速混合装置で均一に混合し分散液を調製した。
このシアネートエステル樹脂組成物のメチルエチルケトン分散液に石英ガラスクロス(信越石英製、厚さ:100μm)を浸漬することにより分散液をガラスクロスに含浸させた。このガラスクロスを60℃で2時間熱風乾燥機に放置することで溶剤を揮発させプリプレグ(P−5)を作製した。このプリプレグは室温でタックもなく取り扱いも容易な基材であった。
【0077】
−積層基板の製造−
製造したプリプレグ(P−5)を2枚重ねて熱プレス機にて170℃で1時間加圧成形後、さらにこれを185℃で1時間2次硬化させてシアネートエステル樹脂積層基板(S−5)を得た。
【0078】
−金属張積層板の製造−
製造したプリプレグ(P−5)を銅箔(福田金属製、厚さ:35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成形して成形品を得、さらにこれを150℃で1時間2次硬化させて厚み120ミクロン厚みの銅張積層板(CS−5)を得た。
【0079】
上記で得られたプリプレグ(P−1〜P−5、P−1、P−2)、積層基板(S−1〜S−5、S−1、S−2)、銅張積層板(CS−1〜CS−5、CS−1、CS−2)の各種特性を下記の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0080】
1.外観
得られた樹脂積層基板の表面の均一性、即ち、該表面が平滑であるか、凹凸を有し不均一であるかどうかを目視により確認した。
【0081】
2.機械的特性
得られた樹脂積層基板について、JIS K 6251及びJIS K 6253に準拠し、引張強度(0.2mm厚)及び硬度(タイプD型スプリング試験機を用いて測定。6mm厚(即ち、0.2mm厚×30枚))を測定した。
【0082】
3.表面のタック性
得られた樹脂積層基板の表面のタック性を指触にて確認した。
【0083】
4.線膨張係数
得られた樹脂積層基板(0.2mm厚)について、JIS K 7197に従って熱機械分析(TMA)測定法により、−100〜100℃の範囲にわたって、該積層板に対して平行な方向(XY軸方向)の線膨張係数を測定した。
【0084】
5.IRリフロー
積層基板、及び銅張積層板に対してIRリフロー装置(商品名:リフローソルダリング装置、((株)タムラ製作所製)により260℃、10秒間のIRリフロー処理を行って、外観、及び銅箔が剥離したかどうかを確認した。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例1〜5は、プリプレグにタック性も良好、積層基板の特性も良好で、銅張積層板の特性にも問題はなかった。
一方、比較例1は、無機充填剤の量が多すぎたため、プリプレグを作製できなかった。また、比較例2は、耐熱性に劣るエポキシ樹脂を用いたため、積層基板とした際のガラス転移温度が低く、高輝度LEDのような耐熱性を要求される実装基板には不向きであった。
【0087】
[実施例6]
シアネートエステル樹脂プリプレグ、積層基板、及び金属張積層板の製造
−プリプレグの製造−
シアネートエステル化合物としてプリマセット PT−60 (ロンザ製シアネート基当量:119)78質量部、フェノール化合物 MEH−7800SS (明和化成製フェノール性水酸基当量:175)22質量部、さらにシリカ(商品名:アドマファインE5/24C、平均粒子径:約3μm、(株)アドマテックス製)570質量部と酸化チタン(商品名:PF−691、平均粒子径:約0.2μm、石原産業製)150質量部とを加えて、溶剤としてメチルエチルケトン 500質量部に溶解し、高速混合装置で均一に混合し分散液を調製した。
このシアネートエステル樹脂組成物のメチルエチルケトン分散液にガラスクロスWEA−116E(日東紡製、厚さ:100μm、Eガラス)を浸漬することにより分散液をガラスクロスに含浸させた。このガラスクロスを60℃で2時間熱風乾燥機に放置することで溶剤を揮発させプリプレグ(P−6)を作製した。このプリプレグは室温でタックもなく取り扱いも容易な基材であった。
【0088】
−積層基板の製造−
製造したプリプレグ(P−6)を2枚重ねて熱プレス機にて170℃で1時間加圧成形後、さらにこれを185℃で1時間2次硬化させて白色のシアネートエステル樹脂積層基板(S−6)を得た。
【0089】
−金属張積層板の製造−
製造したプリプレグ(P−6)を銅箔(福田金属製、厚さ:35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成形して成形品を得、さらにこれを150℃で1時間2次硬化させて厚み120ミクロン厚みの銅張積層板(CS−6)を得た。
【0090】
[比較例3]
エポキシ樹脂プリプレグ、積層基板及び金属張積層板の製造
−プリプレグの製造−
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製 EOCN1020)60質量部、フェノールノボラック樹脂(群栄化学製 H−4)30質量部、シリカ(商品名:アドマファインE5/24C、平均粒子径:約3μm、(株)アドマテックス製)570質量部と酸化チタン(商品名:PF−691、平均粒子径:約0.2μm、石原産業製)150質量部とを加えて、溶剤としてメチルエチルケトン 500質量部に溶解し、高速混合装置で均一に混合し分散液を調製した。
このエポキシ樹脂組成物のメチルエチルケトン分散液にガラスクロスWEA−116E(日東紡製、厚さ:100μm、Eガラス)を浸漬することにより分散液をガラスクロスに含浸させた。このガラスクロスを60℃で2時間熱風乾燥機に放置することで溶剤を揮発させプリプレグ(P−3)を作製した。このプリプレグは室温でタックもなく取り扱いも容易な基材であった。
【0091】
−積層基板の製造−
製造したプリプレグ(P−3)を2枚重ねて熱プレス機にて170℃で1時間加圧成形後、さらにこれを185℃で1時間2次硬化させて白色のエポキシ樹脂積層基板(S−3)を得た。
【0092】
−金属張積層板の製造−
製造したプリプレグ(P−3)を銅箔(福田金属製、厚さ:35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて150℃で30分間加圧成形して成形品を得、さらにこれを150℃で1時間2次硬化させて厚み120ミクロン厚みの銅張積層板(CS−3)を得た。
【0093】
・光反射率
得られた白色積層基板(S−6、S−3)について、波長450nmの光を照射し全可視光領域にわたって光反射率を測定した(初期)。また、得られた積層基板に対して上記IRリフロー装置により260℃、60秒間のIRリフロー処理を行った後、同様に全可視光領域にわたって光反射率を測定した(IRリフロー後)。
尚、光反射率は、光反射率測定機X−rite 8200(積分球分光光度計、X−rite社(US)製)を用いて測定した。
これらの各測定結果を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
・点灯試験
実施例6、比較例3で作製した銅張積層板(CS−6、CS−3)を用い、図1に示すようなLED装置を作製して点灯試験を行った。図1において、電極パターン3は、本文に記載されている一般的な方法で銅張積層板をエッチングすることにより作製した。ダイボンディングペースト4としてKJR−632DA−1(信越化学(株)製)を用いて、青色LEDチップ5(波長450nm)をダイボンディングした。ボンディングワイヤー6としては金線を用いた。透明封止体7は、電極パターン3の一部、LEDチップ5及びボンディングワイヤー6をシリコーン樹脂コート剤(商品名:KJR−9022、信越化学(株)製)でキャスティングコートすることにより作製した(硬化条件:150℃、4時間)。点灯試験は、このようにして得たLED装置を投入電流150mAで連続点灯し積層基板の変色の有無を観察することにより行った。その結果を表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例6で作製された銅張積層板を実装基板として用いたLED装置は、2000時間の連続点灯においても変色せず、輝度の変化は起こらなかった。一方、エポキシ樹脂を用いた比較例3では、1000時間までの連続点灯では変色が起こらなかったが、2000時間の連続点灯を終えた段階で黄変が発生し、輝度が下がってしまった。
【0098】
上記の結果から、本発明のシアネートエステル樹脂プリプレグであれば、耐候性、耐熱性、寸法安定性に優れた積層基板、金属張積層板を得ることができ、このような積層基板、金属張積層板をLED実装基板とすれば、優れた耐候性により長期使用に耐えうる高品質なLED装置が得られることが明らかになった。
【0099】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0100】
1…LED装置、 2…積層基板、 3…電極パターン、
4…ダイボンディングペースト、 5…LEDチップ、 6…ボンディングワイヤー、
7…透明封止体。
図1