(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一つ以上の中空シリカ粒子は、前記2乃至5層の中空シリカ粒子層と150nm以下の距離を置いて離隔していることを特徴とする請求項3に記載の反射防止フィルム。
前記2乃至5層の中空シリカ粒子層と離隔している中空シリカ粒子の個数は、前記フィルムに含まれている中空シリカ粒子個数全体の10%以下であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止フィルム。
前記第1(メタ)アクリレート系バインダは、分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物の架橋重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
前記第2(メタ)アクリレート系バインダは、分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物及び分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物の架橋共重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
前記第2(メタ)アクリレート系バインダは、分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物、分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物及びフッ素系(メタ)アクリレート化合物の架橋共重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、発明の実施形態による反射防止フィルム及びその製造方法について説明する。
【0021】
それに先立ち、本明細書全体で明示的な言及がない限り、本明細書に使用されるいくつかの用語は次の通り定義される。
【0022】
まず、‘無機微粒子’とは各種無機素材から導出される粒子であって、例えば、ナノメートルスケールの数平均粒径、一例として100nm以下の数平均粒径を示す粒子を総称することができる。このような‘無機微粒子’は粒子内部に実質的に空いた空間がない無定形の粒子であり得る。一例として、‘シリカ微粒子’とはケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出される粒子であって、数平均粒径が100nm以下であり粒子内部に空いた空間がないケイ素化合物または有機ケイ素化合物粒子を意味し得る。
【0023】
また、‘中空粒子’(hollow particles)とは有機または無機粒子の表面及び/または内部に空いた空間が存在する形態の粒子を意味するものであり得る。一例として、‘中空シリカ粒子’とはケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出されるシリカ粒子であって、シリカ粒子の表面及び/または内部に空いた空間が存在する形態の粒子を意味し得る。
【0024】
そして、‘中空粒子層’とは基材と平行な方向に連続的に連結された中空粒子を含んで基材上の層の形態を成している中空粒子列を指称し得る。但し、一つの‘中空粒子層’に含まれている中空粒子全体が連続的に連結されなくてもよく、‘中空粒子層’をなす中空粒子のうちの、例えば、約5%以内、あるいは約1%以内は他の中空粒子と連結されずに不連続的であり得る。また、このような‘中空粒子層’が‘互いに隣接’しているということはある‘中空粒子層’をなす中空粒子のうちの少なくとも約40%以上、あるいは約50%以上、あるいは約60%以上、あるいは約70%以上、あるいは約80%以上、あるいは約90%以上の個数に該当する中空粒子が基材と平行な方向に他の‘中空粒子層’をなす中空粒子と接していることを意味し得る。
【0025】
また、‘(メタ)アクリレート’とはアクリレート(acrylate)またはメタクリレート(methacrylate)を通称すると定義する。また、このような‘(メタ)アクリレート’はフッ素含有置換基を有しないと定義し、これとの区別のためにフッ素含有置換基を有する化合物をフッ素系(メタ)アクリレート化合物と指称し得る。
【0026】
そして、‘コーティング層’とは後述する反射防止コーティング用組成物を所定の基材フィルム上に塗布(コーティング)することによって形成される組成物層を意味する。
【0027】
また、‘相分離’とは構成成分の密度、表面張力またはその他の物性の差によって組成物に含まれる特定成分の分布に差が形成されることを意味する。ここで、コーティング層が相分離される場合、特定成分の分布有無、例えば中空粒子の分布有無を基準に少なくとも二つの層に区分することができる。
【0028】
また、‘基材内に浸潤’するというのは反射防止フィルムのある層を形成するための成分(例えば、該当層のバインダを形成するための(メタ)アクリレート系化合物及び無機微粒子など)が基材内に浸透して該当層を形成することを指称し得る。例えば、基材内に浸透した成分は基材内の一定の領域に浸透したまま乾燥及び硬化され、該当領域の基材内に一定の層を形成することができる。これとは反対に、ある層が‘基材の上に’形成されるというのは該当層を形成するための成分が基材内に実質的に浸潤せず、基材と界面をなしたまま乾燥及び硬化されることにより、基材と重なる領域を有しない一定の層を形成することを指称し得る。
【0029】
そして、ある層(例えば、後述する一実施形態の第2層)が他の層(例えば、後述する一実施形態の第1層)を‘覆っている’というのはこれら二つの層の間にこれらと区分される他の層が実質的に存在しないことを指称し得る。例えば、後述する一実施形態の反射防止フィルムで、中空粒子層を含む第2層が基材内に浸潤した第1層を‘覆っている’というのは基材内浸潤層である第1層と、中空粒子層含有第2層との間に別途の層、例えば、基材内に浸潤もせず、中空粒子層も含まれない別途の層が存在しないことを意味し得る。一例として、前記一実施形態で、浸潤層である第1層と、中空粒子層含有第2層との間に、バインダ(例えば、(メタ)アクリレート系化合物から形成された架橋重合体)及び/または無機微粒子のみを含みながら基材内に浸潤しない別途の層が存在しないことを意味し得る。
【0030】
一方、本発明者らは反射防止フィルムに対する研究を重ねる過程で、後述する所定の組成物を用いて自発的な相分離を誘導しながら反射防止フィルムを形成することによって、より向上した層間の界面密着力及び耐擦傷性と共に優れた反射防止効果を示す反射防止フィルムを提供することができるのを確認して発明を完成した。このような反射防止フィルムの優れた特性はハードコート層として作用する第1層が基材内に浸潤した形態に形成されており、低屈折率層として作用する第2層が前記第1層を覆うように形成されているフィルムの構造的特性に起因すると見られる。
【0031】
これに比べて、基材と、低屈折率層の間に、中空粒子を実質的に含まない別途のハードコート層(例えば、中空粒子を実質的に含まず、バインダのみを含むか、バインダ及び無機微粒子のみを含む別途のハードコート層または高屈折率層)が形成された構造の反射防止フィルムの場合、各層の形成のために別途のコーティングまたは硬化工程が必要であって工程が複雑であったり、層間の界面密着力などが低下するという短所がある。
【0032】
しかし、基材内に浸潤した第1層(ハードコート層)が第2層(低屈折率層)を覆っている一実施形態の反射防止フィルムは単一化されたコーティング及び硬化工程を通じた単純化された方法で形成されながらも、優れた層間の界面密着力を示すことができる。
【0033】
また、一実施形態の反射防止フィルムは第2層(低屈折率層)内に中空粒子が稠密に形成され、これら中空粒子が連続的に連結された中空粒子層を2乃至5層で含み、さらにこのような中空粒子層が第2層内に互いに隣接するように形成されている。
これにより、一実施形態の反射防止フィルムはより優れた反射防止効果を示し、大きく向上した界面密着力などを示すことができる。
【0034】
このような一実施形態の反射防止フィルムはバインダと、無機微粒子を含み、基材内に浸潤している第1層;及びバインダと、各層が連続的に連結された中空粒子を含み互いに隣接した2乃至5層の中空粒子層を含みながら、第1層を覆っている第2層を含むことができる。より具体的な一例によれば、前記反射防止フィルムは第1(メタ)アクリレート系バインダと、前記第1(メタ)アクリレート系バインダ内の無機微粒子を含み、基材内に浸潤している第1層;及び第2(メタ)アクリレート系バインダと、前記第2(メタ)アクリレート系バインダ内の2乃至5層の中空粒子層を含みながら、第1層を覆っている第2層を含むことができる。
【0035】
このような反射防止フィルムで、基材内に浸潤している第1層は反射防止フィルムのハードコート層として作用しながら、約1.5以上の屈折率を示す高屈折率層として作用することができる。このようなハードコート層には基材内に浸潤した第1(メタ)アクリレート系バインダが含まれ得、このような第1(メタ)アクリレート系バインダは分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物の架橋重合体を含むことができる。また、前記ハードコート層は第1(メタ)アクリレート系バインダ内の無機微粒子を含むことができる。
【0036】
また、基材内浸潤層である第1層と接触してこれを覆っている第2層は中空粒子の全部または大部分(例えば、約97重量%以上、あるいは約99重量%以上)が実質的に分布して反射防止フィルムの低屈折率層として作用できる。このような低屈折率層は約1.45以下の低い屈折率を示して適切な反射防止効果を示すことができる。より具体的に、第2層内の中空粒子は互いに連続的に連結されて中空粒子層をなしており、このような中空粒子層の2乃至5層、あるいは2乃至4層が互いに隣接して第2層内に稠密に形成されている。これにより、第2層がより低い屈折率及び優れた反射防止効果を示すことができ、優れた耐擦傷性などを示すことができる。
【0037】
そして、このような低屈折率層には第2(メタ)アクリレート系バインダが含まれ、このような第2(メタ)アクリレート系バインダは分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物及び分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物の架橋共重合体を含むことができる。また、前述した2乃至5層の中空粒子層は前記低屈折率層の第2(メタ)アクリレート系バインダ内に含まれ得る。
【0038】
このような反射防止フィルムで、ハードコート層として作用する第1層の第1(メタ)アクリレート系バインダは分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物及び分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物の架橋共重合体をさらに含むことができる。また、低屈折率層として作用する第2層は無機微粒子をさらに含むことができる。
【0039】
このような反射防止フィルムの一例に対する概略的な模式図が
図1に示されている。
図1を参照すれば、このような反射防止フィルムではハードコート層として作用する第1層2が基材1内に浸潤して硬化された状態で形成され、低屈折率層として作用する第2層3が浸潤層である第1層2と接触してこれを覆いながら浸潤層が形成された基材の上に形成できる。この時、基材内に浸潤した第1層2と、基材上の第2層3の間にこれらと区分される別途の層を含まない。このように別途の層が形成されないというのは、浸潤層である第1層と、中空粒子が実質的に分布する第2層との間に、例えば、バインダ及び/または無機微粒子のみを含み中空粒子を実質的に含まず基材内に浸潤しない別途の層が含まれないことを指称し得る。
【0040】
このように、ハードコート層として作用する第1層2が基材1内に浸潤した状態で存在し、これらと接触するように低屈折率層として作用する第2層3が基材の上に形成されることによって、他の実施形態の反射防止フィルムは基材、ハードコート層及び低屈折率層の界面密着力に優れて使用過程での剥離現象を最少化することができる。
【0041】
また、前記第2層の任意の断面面積に対する前記中空粒子の断面面積比率が約70乃至95%、あるいは約75乃至93%、あるいは約80乃至90%、あるいは約85乃至92%になるほどに、低屈折率層として作用する第2層内に中空粒子が稠密に分布できる。したがって、一実施形態の反射防止フィルムは優れた低屈折特性及び反射防止効果を示すことができる。
【0042】
以下、一実施形態の反射防止フィルムに含まれる各層についてより具体的に説明する。
【0043】
まず、反射防止フィルムは基材(substrate)を含む。
図1に示したように、基材1は通常の透明薄膜であって、第1層の第1(メタ)アクリレート系バインダ及び無機微粒子が浸潤し得る素材のものであればその種類が特に制限されない。例えば、基材としてはポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、アセテートセルロース樹脂などの素材に由来したものを使用することができる。一例で、透明性と反射防止効果の向上のために、トリアセテートセルロース(TAC)樹脂を基材として使用することができる。
【0044】
また、反射防止フィルムは、分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物の架橋重合体を第1(メタ)アクリレート系バインダとして含み、このような第1(メタ)アクリレート系バインダ内の無機微粒子を含む第1層2をハードコート層として含むことができる。このようなハードコート層は基材内に浸潤した層であり得る。このような第1層2は前記第1(メタ)アクリレート系バインダと無機微粒子が基材内に浸潤して基材と一体に硬化されたものであり得る。たとえ
図1では第1層2が基材1の全面に浸潤したと示されたが、他の例では第1層2が基材1の一部分に浸潤して構成され得る。
【0045】
低屈折率層として作用する第2層3は基材1内に浸潤した第1層2に接触してこれを覆うように形成され、互いに隣接した2乃至5層の中空粒子層4を含む層であり得る。このような中空粒子層4のそれぞれは基材と平行な方向に連続的に連結された複数個の中空粒子を含んで基材上の層形態をなしており、このような中空粒子層4の2乃至5層が互いに隣接しながら第2層内に中空粒子が稠密に分布している。このような中空粒子及び中空粒子層の分布によって、一実施形態の反射防止フィルムはより優れた反射防止効果を示すことができる。
【0046】
但し、一実施形態の反射防止フィルムは第2層内に稠密に分布されている2乃至5層の中空粒子層4と離隔している一つ以上の中空粒子5をさらに含むことができる。しかし、一実施形態の反射防止フィルムでは、このように離隔している中空粒子5も前記2乃至5層の中空粒子層4と約150nm以下、あるいは約100nm以下、あるいは約50nm以下、あるいは約30nm以下、あるいは約5乃至30nmの比較的に短い距離を置いて離隔し得る。また、一実施形態の反射防止フィルムで、前記2乃至5層の中空粒子層4と離隔している中空粒子5の個数はフィルムに含まれている中空粒子個数全体の約10%以下、あるいは約7%以下、あるいは約5%以下、あるいは約3%以下、あるいは約1乃至3%であり得る。このように、大部分の中空粒子が第2層内に稠密に分布しており、独立的に離隔した最小限の中空粒子を含むことによって、一実施形態の反射防止フィルムはさらに向上した反射防止特性を示すことができる。
【0047】
一方、前述した第1層2及び第2層3の間には、バインダ及び/または無機微粒子のみを含み基材内に浸潤しない別途の層が含まれない。以前に知られたフィルムのようにハードコート層と低屈折率層の間にバインダのみからなる別途の層が存在する場合、各層と基材の密着力が低下するという短所が示されることがあり、一実施形態の反射防止フィルムは低屈折率層として作用する第2層3が基材1及びハードコート層として作用する第1層2に接触するように真上に形成されることによって、より向上した層間密着力、耐擦傷性及び反射防止効果を示すことができる。
【0048】
ここで、第2層3の第2(メタ)アクリレート系バインダは分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物及び分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物の架橋共重合体を含むことができる。他の例で、前記第2(メタ)アクリレート系バインダは分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物、分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物及びフッ素系(メタ)アクリレート化合物の架橋共重合体を含むこともできる。このようなフッ素系(メタ)アクリレート化合物がさらに共重合された架橋共重合体が第2(メタ)アクリレート系バインダに含まれることによって、低屈折率層として作用する第2層3のより低い屈折率及び優れた反射防止効果を実現することができる。また、第2層3の耐スクラッチ性をより向上させることができる。
【0049】
また、第2層3は第2(メタ)アクリレート系バインダ内の無機微粒子をさらに含むことができ、これによって第2層3の耐擦傷性及び反射防止効果がより向上できる。
【0050】
一方、第1層2の第1(メタ)アクリレート系バインダは前述した分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物の架橋重合体以外に、分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物及び分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物の架橋共重合体をさらに含むことができる。
【0051】
この時、第1層2の第1(メタ)アクリレート系バインダに含まれる架橋共重合体は第1層2と、第2層3の境界面を基準に第1層2の一定の領域、例えば、第1層2の約5乃至50%の深さまで、あるいは約5乃至45%の深さまで、あるいは約5乃至40%の深さまで含まれ得る。そして、第1層2のバインダに含まれる架橋共重合体は第2層3方向に分布勾配が増加するように含まれ得る。
【0052】
このように、分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物が第1層2の一定の深さまで分布勾配を有して分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物と架橋共重合されており、連続して第2層3の全体に架橋共重合されて含まれることによって、第1層2及び第2層3間の界面密着力がより向上でき、第2層3に含まれる中空粒子が稠密に分布できる。
【0053】
そして、前述した反射防止フィルムで、第1層2は低屈折率層として作用する第2層3より屈折率がさらに高い層であって、屈折率が約1.5乃至1.58、あるいは約1.5乃至1.57、あるいは約1.51乃至1.56であり得る。また、前記第2層3は屈折率が約1.1乃至1.45、あるいは約1.15乃至1.43、あるいは約1.2乃至1.42であり得る。
【0054】
また、前述した他の実施形態の反射防止フィルムは反射率が約0.5乃至4%、あるいは約0.8乃至3%、あるいは約1乃至2%である優れた反射防止特性を示し、PDP、CRTまたはLCDなどの多様なディスプレイ装置で反射防止フイルムとして適切に適用することができる。
【0055】
以下、一実施形態の反射防止フィルムを形成するための反射防止コーティング用組成物及びこれを用いた反射防止フィルムの製造方法について説明する。
【0056】
このような反射防止コーティング用組成物は分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物;分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物;無機微粒子;及び中空粒子を含むことができる。このような組成物の各組成物について説明すれば以下の通りである。
【0057】
<分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物>
まず、前記反射防止コーティング用組成物は分子量600未満の(メタ)アクリレート系化合物を含むことができる。このような低分子量の(メタ)アクリレート系化合物は、任意の基材に組成物が塗布される場合、少なくとも一部が基材内に浸潤し得る。
【0058】
このように基材に浸潤する低分子量の(メタ)アクリレート系化合物は単独重合または後述する分子量600乃至100,000の高分子量(メタ)アクリレート系化合物と共に共重合されて浸潤領域に対応する第1層のバインダを形成することができる。
【0059】
そして、前記低分子量(メタ)アクリレート系化合物の残部は浸潤せず基材上に残り得る。このような残部の化合物は後述する高分子量(メタ)アクリレート系化合物と共に共重合され前記浸潤領域の第1層を覆っている第2層のバインダを形成することができる。
【0060】
このような低分子量(メタ)アクリレート系化合物が基材内に十分に浸潤し反射防止フィルムのハードコート層として作用する第1層のバインダが形成できるようにするために、前記低分子量(メタ)アクリレート系化合物は、例えば、約600未満、あるいは約500未満、あるいは約400未満の分子量を有し、また他の例では、約50以上、あるいは約100以上の分子量を有し得る。
【0061】
一例で、基材内に浸潤してより高い屈折率を示す第1層(例えば、ハードコート層及び/または高屈折率層)が形成されるようにするために、前記低分子量(メタ)アクリレート系化合物は硫黄、塩素または金属などの置換基や芳香族置換基を有し得る。
【0062】
このような低分子量(メタ)アクリレート系化合物はペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチレンプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−(2−アクリロキシエトキシフェニル)フルオレン(屈折率1.62)、ビス(4−メタクリロキシチオフェニル)スルフィド(屈折率1.689)、及びビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド(屈折率1.695)からなる群より選択される化合物を含むことができ、これらの中で選択された2種以上の混合物を含むこともできる。
【0063】
<分子量600乃至100,000の(メタ)アクリレート系化合物>
一方、反射防止コーティング用組成物には分子量600乃至100,000の高分子量(メタ)アクリレート系化合物が含まれ得る。このような高分子量(メタ)アクリレート系化合物は、大きい分子量及びこれによるバルキーな化学構造などにより、任意の基材に組成物が塗布される場合、前述した低分子量の化合物に比べて、相対的に少量が基材内に浸潤し、残り相当量は基材の上に残り得る。
【0064】
これにより、高分子量の(メタ)アクリレート系化合物は前述した低分子量の(メタ)アクリレート系化合物と同等な深さまで浸潤しなくなる。その結果、基材内の浸潤領域は次の2つの領域に区分され得る。まず、低分子量(メタ)アクリレート系化合物のみが浸潤した領域あるいは浸潤し得る深さでの領域であって、ここには、低分子量(メタ)アクリレート系化合物の架橋重合体からなるバインダが存在し得る。浸潤領域の残り領域として、高分子量(メタ)アクリレート系化合物が浸潤している領域には、高分子量(メタ)アクリレート系化合物と、低分子量(メタ)アクリレート系化合物が架橋共重合されたバインダが存在し得る。
【0065】
そして、基材に浸潤しない高分子量(メタ)アクリレート系化合物の残りは前述した低分子量化合物と共に共重合され前記浸潤層を覆っている第2層(例えば、反射防止フィルムの低屈折率層)の第2(メタ)アクリレート系バインダを形成することができる。これにより、反射防止フィルムのハードコート層として作用できる第1層と、その上を覆っている第2層(低屈折率層)の間の界面密着力が向上すると同時に、低屈折率層の耐擦傷性が向上し、低屈折率層に含まれる中空粒子がより稠密に分布されるようにする。
【0066】
このような高分子量(メタ)アクリレート系化合物は前述した低分子量化合物に比べて相対的に分子量が大きくてバルキー(bulky)な構造を有する化合物であって、例えば、約400以上、あるいは約500以上、あるいは約600以上の分子量を有し、また他の例として約100,000以下、あるいは約80,000以下、あるいは約50,000以下の分子量を有し得る。
【0067】
このような大きい分子量及びバルキーな構造のために、高分子量(メタ)アクリレート系化合物は前述した低分子量(メタ)アクリレート系化合物の2分子以上がリンカーによって連結された構造の化合物を含むことができる。この時、リンカーは(メタ)アクリレート系化合物を連結できると知られた任意の化学結合、例えば、ウレタン結合、チオエーテル結合、エーテル結合またはエステル結合などを含む2価以上のラジカルであり得る。
【0068】
また、前記高分子量(メタ)アクリレート系化合物はよりバルキーな構造のために、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、炭素数6以上の芳香族または脂肪族炭化水素基及びイソシアネート基からなる群より選択された1種以上の置換基を有し得る。
【0069】
このような高分子量(メタ)アクリレート系化合物としては前記条件を満足する商用品を使用するか直接合成して使用することができる。このような商用品の例としては、UA−306T、UA−306I、UA−306H、UA−510T、UA−510I、UA−510H(以上、共栄社化学株式会社製品);BPZA−66、BPZA−100(以上、共栄社化学株式会社製品);EB9260、EB9970(以上、バイエル社製品);Miramer SP1107、Miramer SP1114(以上、MIWON社製品)などが挙げられる。
【0070】
前述した高分子量(メタ)アクリレート系化合物は前記低分子量化合物100重量部に対して、約5乃至30重量部、あるいは約5乃至25重量部、あるいは約5乃至20重量部で反射防止コーティング用組成物に含まれ得る。このような高分子量(メタ)アクリレート系化合物の含量比は高分子量及び低分子量(メタ)アクリレート系化合物を含むバインダ形成用化合物の混合使用による最小限度の効果を確保しながらも、過量添加時の構成層の物性最適化または中空粒子の分布傾向変化などを考慮して設定することができる。
【0071】
<フッ素系(メタ)アクリレート化合物>
一方、前述した反射防止コーティング用組成物はバインダ形成用化合物として一つ以上のフッ素が置換されたフッ素系(メタ)アクリレート化合物をさらに含むことができる。このようなフッ素系(メタ)アクリレート化合物はフッ素含有置換基の存在によって、基材に組成物が塗布された時に基材内に浸潤しなくなる。そのため、フッ素系(メタ)アクリレート化合物は前述した低分子量及び高分子量の(メタ)アクリレート化合物と共に反射防止フィルムの低屈折率層として作用する第2層の第2(メタ)アクリレート系バインダを形成することができる。このようなフッ素系(メタ)アクリレート化合物はより低い屈折率を示すので低屈折率層の屈折率をより低くすることができ、極性官能基を含むことによって後述する中空粒子との相溶性に優れ、低屈折率層の耐スクラッチ性向上を助けることができる。
【0072】
このようなフッ素系(メタ)アクリレート化合物は任意の(メタ)アクリレート化合物に一つ以上のフッ素含有置換基が結合された構造を有し得、このようなフッ素系(メタ)アクリレート化合物の例としては、下記の化学式1乃至化学式5の化合物からなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられる:
【0074】
上記化学式1で、R
1は水素基または炭素数1乃至6のアルキル基であり、aは0乃至7の整数であり、bは1乃至3の整数であり;
【0076】
上記化学式2で、cは1乃至10の整数であり;
【0078】
上記化学式3で、dは1乃至11の整数であり;
【0080】
上記化学式4で、eは1乃至5の整数であり;
【0082】
上記化学式5で、fは4乃至10の整数である。
【0083】
一方、フッ素系(メタ)アクリレート化合物は前述した低分子量(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、約0.5乃至20重量部、あるいは約5乃至18重量部、あるいは約10乃至16重量部で反射防止コーティング用組成物に含まれ得る。
【0084】
このようなフッ素系(メタ)アクリレート化合物としては前記条件を満足する商用品を使用することができ、このような商用品の例としては、オプツールAR110(製造社:ダイキン工業株式会社)、LINC−3A及びLINC−102A(製造社:共栄社化学株式会社)、PFOA(製造社:Exfluor)、OP−38Z(製造社:DIC)などが挙げられる。
【0085】
<無機微粒子>
一方、反射防止コーティング用組成物には無機微粒子が含まれ得る。
【0086】
無機微粒子は、任意の基材に組成物が塗布される場合、前述した2種以上のバインダ形成用化合物と共にその一部が基材内に浸潤して分散した状態で含まれ得る。また、基材内に浸潤しない残りは低屈折率層として作用する第2層に分散した状態で含まれるものであって、耐擦傷性向上及び反射防止効果に寄与できる。
【0087】
一実施形態で、無機微粒子は各種無機素材から導出される粒子であって、ナノメートルスケールの数平均粒径を有するものであり得る。
【0088】
このような無機微粒子は数平均粒径が、例えば、約100nm以下、あるいは約5乃至50nm、あるいは約5乃至20nmであり得る。コーティング層の透明度、屈折率及び耐擦傷性などの調節のために、無機微粒子の粒径は前述した範囲になるように調節することができる。
【0089】
また、前記基材上のコーティング層の向上した透明性などを確保するために、ケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出されるシリカ微粒子を無機微粒子として用いることができる。
【0090】
無機微粒子は前述した低分子量(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して、例えば、約5乃至30重量部、あるいは約5乃至25重量部、あるいは約5乃至20重量部で反射防止コーティング用組成物に含まれ得る。無機微粒子による最小限度の効果を示すことができながらも、基材の種類によって浸潤可能な無機微粒子の含量と、過量添加時の反射率上昇による反射防止効果の低減などを考慮して、無機微粒子の含量は前記範囲で調節することができる。
【0091】
一方、無機微粒子は所定の分散媒に分散した形態であって、固形分含量が約5乃至40重量%であるゾル(sol)の形態に含まれ得る。ここで、分散媒に使用可能な有機溶媒としてはメタノール(methanol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ブタノール(butanol)などのアルコール類;メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、メチルイソブチルケトン(methyl iso butyl ketone、MIBK)などのケトン類;トルエン(toluene)、キシレン(xylene)などの芳香族炭素水素類;ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide)、ジメチルアセトアミド(dimethyl acetamide)、N−メチルピロリドン(methyl pyrrolidone)などのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル(ester)類;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、1,4−ジオキサンなどのエーテル(ether)類;またはこれらの混合物が例として挙げられる。
【0092】
一実施形態によれば、無機粒子としては商用化されたシリカゾルを用いることができ、例えば、日産化学社のMEK−ST、MIBK−ST、MIBK−SD、MIBK−SD−L、MEK−AC、DMAC−ST、EG−ST;あるいはGaematech社のPurisolなどがある。
【0093】
<中空粒子>
一方、反射防止コーティング用組成物には中空粒子がさらに含まれ得る。このような中空粒子は粒子の表面及び/または内部に空いた空間が存在する形態の粒子を意味するものであって、低い低屈折率及び反射防止効果を達成するための成分である。
【0094】
このような中空粒子は組成物が基材に塗布された時、反射防止フィルムのハードコート層として作用する第1層に実質的に分布せず、このような浸潤層を覆っている基材上の層、即ち、低屈折率層として作用する第2層に分布して既に前述したような2乃至5層の中空粒子層を形成することができる。ここで、中空粒子が第1層に‘実質的に分布し(含ま)ない’というのは基材内の浸潤層である第1層内に存在する中空粒子の含量比が全体中空粒子を基準に約5重量%未満、あるいは約3重量%未満、あるいは約1重量%未満であることを意味し得る。
【0095】
一方、一実施形態の組成物には、前述したバインダ形成用化合物などと共に所定の溶媒が含まれることによって、自発的な相分離が起こり反射防止フィルムを形成することができる。この時、中空粒子は他の構成成分との密度差や表面エネルギー差などによって相分離時に浸潤層である第1層に実質的に分布せず、低屈折率層として作用する第2層に稠密に分布し得る。その結果、より向上した膜強度、耐擦傷性及び反射防止特性を示す反射防止フィルムの形成を可能にする。
【0096】
このような中空粒子は粒子の表面及び/または内部に空いた空間が存在する形態の粒子であればその素材が特に制限されないが、一実施形態では低屈折率層の透明性及び/または低い屈折率確保のためにケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出される中空シリカ粒子を用いることができる。
【0097】
この時、中空粒子の粒径はフィルムの透明性が維持できながらも反射防止効果を示すことができる範囲で決定され得る。一例によれば、中空粒子は数平均粒径が、例えば、約5乃至80nm、あるいは約10乃至75nm、あるいは約20乃至70nmであり得る。
【0098】
中空粒子は前述した低分子量(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して、例えば、約1乃至30重量部、あるいは約1乃至25重量部、あるいは約5乃至20重量部で反射防止コーティング用組成物に含まれ得る。中空粒子による最小限度の効果を示すことができながらも、相分離による好ましい分布が形成されるようにするために、中空粒子の含量は前述した範囲で調節することができる。
【0099】
また、中空粒子は分散媒(水または有機溶媒)に分散された形態であって固形分含量が約5乃至40重量%であるコロイド状で含まれ得る。ここで、分散媒として使用可能な有機溶媒としてはメタノール(methanol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ブタノール(butanol)などのアルコール類;メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、メチルイソブチルケトン(methyl iso butyl ketone、MIBK)などのケトン類;トルエン(toluene)、キシレン(xylene)などの芳香族炭素水素類;ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide)、ジメチルアセトアミド(dimethyl acetamide)、N−メチルピロリドン(methyl pyrrolidone)などのアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル(ester)類;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、1,4−ジオキサンなどのエーテル(ether)類;またはこれらの混合物が例として挙げられる。
【0100】
<溶媒>
前述した反射防止コーティング用組成物には溶媒がさらに含まれ得る。溶媒は組成物の粘度を適正範囲で調節すると同時に、バインダ形成用化合物の基材内浸潤と、中空粒子の円滑な相分離と分布傾向を調節する役割を果たす。
【0101】
上記のような効果が十分に発現されるようにするために、溶媒は誘電率(dielectric constant)(25℃)が約20乃至30であり、双極子モーメントが約1.7乃至2.8であるものを用いることができる。このような物性を充足できる溶媒の例としては、メチルエチルケトン、エチルアセテートまたはアセチルアセトンなどが挙げられ、その他にも上記物性を充足する任意の溶媒を使用することができる。また、一例によれば、前述した物性を充足する溶媒と共に、他の溶媒を共に混合して使用することもできる。このような混合して使用可能な溶媒の例としては、イソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノール、i−ブタノールまたはt−ブタノールなどが挙げられる。但し、前記誘電率(dielectric constant)及び双極子モーメント範囲を満足する溶媒が組成物に含まれる溶媒の全体重量を基準に約60重量%以上含まれるようにするのが適切な相分離の発現側面から適切である。
【0102】
そして、反射防止コーティング用組成物で、溶媒は前述した低分子量(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して、例えば、約100乃至500重量部、あるいは約100乃至450重量部、あるいは約100乃至400重量部で含むことができる。組成物のコーティング時、流動性が良くない場合にはコーティング層に縞模様が生ずるなど不良が発生することがあり、このように組成物に要求される最小限の流動性を付与するために、溶媒は一定含量以上に含まれ得る。また、溶媒を過量で添加する場合、固形分含量が過度に低くなって乾燥及び硬化時に不良が発生することがあり、中空粒子の分布傾向が好ましい範囲を逸脱することがある。
【0103】
<重合開始剤>
一方、前述した反射防止コーティング用組成物には重合開始剤がさらに含まれ得る。重合開始剤は紫外線などのエネルギー線によって活性化されバインダ形成用化合物の重合反応を誘導することができる化合物であって、本技術分野での通常の化合物を用いることができる。
【0104】
このような重合開始剤の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルまたはベンゾインブチルエーテルなどが挙げられ、その他にも多様な光重合開始剤を用いることができる。
【0105】
この時、重合開始剤の含量は低分子量(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して、例えば、約5乃至25重量部、あるいは約5乃至20重量部、あるいは約5乃至15重量部であり得る。バインダ形成用化合物の重合反応が十分に行われるようにするために、重合開始剤の含量は一定水準以上にすることができる。また、重合開始剤を過量で添加する場合には反射防止フィルムをなす各層の耐スクラッチ性または耐摩耗性などの機械的物性が低下することがあるため適切でない。
【0106】
以下、前述した反射防止コーティング用組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法について説明する。
図2には前述した反射防止コーティング用組成物を用いて一実施形態の反射防止フィルムを製造する方法がフローチャートとして概略的に示されている。
【0107】
図2を参照すれば、このような反射防止フィルムの製造方法は前述した反射防止コーティング用組成物を準備する段階;前記反射防止コーティング用組成物を基材の少なくとも一面に塗布する段階;塗布された組成物を乾燥させながらバインダ形成用化合物の一部及び無機微粒子を基材に浸潤させる段階;及び浸潤及び乾燥された組成物を硬化させて前記基材の浸潤領域に対応する第1層と、前記中空粒子を含み第1層を覆っている第2層を形成する段階を含む方法で製造することができる。
【0108】
このような方法を経ると、組成物内の所定物性を有する溶媒が先に基材の一部を溶かすことができ、これにより、バインダ形成用化合物の一部(例えば、低分子量及び高分子量を有する(メタ)アクリレート系化合物の一部)と、無機微粒子の少なくとも一部が基材内に浸潤し得る。この時、浸潤しない一部のバインダ形成用化合物及び無機微粒子と、中空粒子は基材上のコーティング層(例えば、第2層)を形成することができる。特に、このようなコーティング層は前記成分が浸潤した基材の上に薄い厚さで残留し、コーティング層内には中空粒子が稠密に存在し2乃至5層の中空粒子層が形成できる。
【0109】
その後、硬化を行うと、第1層及び第2層の第1及び第2(メタ)アクリレート系バインダが形成されながら、ハードコート層として作用する基材内浸潤層である第1層と、互いに隣接した2乃至5層の中空粒子層を含みながら第1層を覆っている第2層が形成できる。その結果、一実施形態の反射防止フィルムを形成することができる。
【0110】
このように、一実施形態の反射防止フィルムは単一組成物を用いた単一コーティング及び硬化工程を適用しても、一部成分の基材内浸潤及び相分離によって単純化された工程で形成できる。特に、このような反射防止フィルムはハードコート層として作用する第1層が基材内に浸潤して第2層と接触するように形成されているので、優れた界面接着力及び機械的物性などを示すことができる。さらに、このような反射防止フィルムは第1層と第2層の間に別途の層が存在せず第2層内に中空粒子が稠密に存在して互いに隣接した2乃至5層の中空粒子層を形成することができるので、より低い屈折率及び優れた反射防止特性を示すことができる。これは前述した反射防止コーティング用組成物が少なくとも2種のバインダ形成用化合物及び所定物性の溶媒などを含むことによって、基材内浸潤及び相分離が最適化され得るためであると見られる。
【0111】
前述した反射防止フィルムの製造方法で、前記基材の少なくとも一面に組成物を塗布する方法はワイヤーバーなど当業界の通常のコーティング装置及び方法を用いて遂行できる。
【0112】
また、前記乾燥段階は組成物の相分離及び基材内への浸潤を促進するために、約5乃至150℃の温度で約0.1乃至60分間、あるいは約20乃至120℃の温度で約0.1乃至20分間、あるいは約30乃至110℃の温度で約1乃至10分間遂行できる。
【0113】
そして、前記硬化段階では、乾燥された組成物に光を照射する方法などでエネルギーを付加して重合反応を開始し、これによって浸潤及び乾燥された組成物を硬化することができる。このような硬化段階は十分な硬化反応を誘導するために紫外線照射量約0.1乃至2J/cm
2で約1乃至600秒間、あるいは紫外線照射量約0.1乃至1.5J/cm
2で約2乃至200秒間、あるいは紫外線照射量約0.2乃至1J/cm
2で約3乃至100秒間遂行できる。
【0114】
以上のような方法を通じて、既に前述した一実施形態の反射防止フィルムが得られ、このような反射防止フィルムでは低屈折率層として作用する第2層の任意の断面面積に対する中空粒子の断面面積比率が約70乃至95%、あるいは約75乃至93%、あるいは約80乃至90%、あるいは約85乃至92%になるほどに、低屈折率層内に中空粒子が稠密に分布できる。
【0115】
前述した反射防止フィルムの製造方法は前述した段階以外にも、各段階の以前または以後に当業界で通常遂行される段階をさらに含んで遂行できるのは勿論である。
【0116】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみに限定するのではない。
【実施例】
【0117】
[実施例1]
(反射防止コーティング用組成物の製造)
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量298.3)100重量部及びウレタン官能基を有するアクリレート(製造社:共栄社化学株式会社、製品名:UA−306T、分子量1000)11.33重量部を含む(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して;
シリカ微粒子が分散したシリカゾル(分散媒:メチルイソブチルケトン及びメチルアルコール、固形分含量40重量%、シリカ微粒子の数平均粒径:10nm、製造社:Gaematech、製品名:Purisol)約15.87重量部;
中空シリカが分散したコロイド溶液(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分含量20重量%、中空シリカの数平均粒径:50nm、製造社:触媒化成工業、製品名:MIBK−sol)約11.33重量部;
光重合開始剤約10.85重量部(具体的に、ダロキュア−1173約1.11重量部、イルガキュア−184約6.48重量部、イルガキュア−819約2.15重量部及びイルガキュア−907約1.11重量部);及び
溶媒約251.85重量部(具体的に、メチルエチルケトン(MEK)約179.63重量部、エタノール約24.07重量部、n−ブチルアルコール約24.07重量部及びアセチルアセトン約24.07重量部)を混合して反射防止コーティング用組成物を製造した。
【0118】
(反射防止フィルムの製造)
前記反射防止コーティング用組成物をトリアセテートセルロースフィルム(厚さ80μm)にワイヤーバー(9号)を用いてコーティングした。これを90℃オーブンで1分間乾燥した後、ここに200mJ/cm
2のUVエネルギーを5秒間照射して組成物を硬化させた。
【0119】
これによって、基材内に浸潤して形成されたハードコート層を含み、前記ハードコート層を覆っている低屈折率層を含む反射防止フィルムを収得した。
【0120】
そして、前記反射防止フィルムの断面写真を
図3の(a)に、その一部分を拡大観察した写真を
図3の(b)に示した。
図3から分かるように、実施例1による反射防止フィルムは、基材1に浸潤して硬化されたバインダと、前記バインダ内に無機微粒子が分散したハードコート層2(約3.9μm);及び前記ハードコート層2上に硬化されたバインダと、前記バインダ内に中空粒子層4が形成された低屈折率層3(約0.15μm)を含むと確認された。
【0121】
また、前記ハードコート層2と低屈折率層3の間に別途の層は観察されず、低屈折率層3の任意の断面面積に対する中空粒子の断面面積比率が約90%であり低屈折率層3内に中空粒子が非常に稠密に分布するのが確認された。そして、前記低屈折率層3内には互いに隣接した3乃至5層の中空粒子層4が形成されているのが確認され、このような中空粒子層と離隔している中空粒子の個数は中空粒子個数全体の約5%に過ぎないのが確認された。
【0122】
[実施例2]
(反射防止コーティング用組成物の製造)
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量298.3)100重量部、フッ素系アクリレート(製品名:オプツールAR110、製造社:ダイキン工業株式会社、固形分含量15重量%、メチルイソブチルケトン溶媒)11.33重量部、及びウレタン官能基を有するアクリレート(製造社:共栄社化学株式会社、製品名:UA−306T、分子量1000)11.33重量部を含む(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して;
シリカ微粒子が分散したシリカゾル(分散媒:メチルイソブチルケトン及びメチルアルコール、固形分含量40重量%、シリカ微粒子の数平均粒径:10nm、製造社:Gaematech、製品名:Purisol)約15.87重量部;
中空シリカが分散したコロイド溶液(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分含量20重量%、中空シリカの数平均粒径:50nm、製造社:触媒化成工業、製品名:MIBK−sol)約11.33重量部;
光重合開始剤約10.85重量部(具体的に、ダロキュア−1173約1.11重量部、イルガキュア−184約6.48重量部、イルガキュア−819約2.15重量部及びイルガキュア−907約1.11重量部);及び
溶媒約251.85重量部(具体的に、メチルエチルケトン(MEK)約179.63重量部、エタノール約24.07重量部、n−ブチルアルコール約24.07重量部及びアセチルアセトン約24.07重量部)を混合して反射防止コーティング用組成物を製造した。
【0123】
(反射防止フィルムの製造)
前記反射防止コーティング用組成物を使用したことを除いて、実施例1と同一な条件及び方法で反射防止フィルムを製造した。
【0124】
前記反射防止フィルムの断面写真を
図4の(a)に、その一部分を拡大観察した写真を
図4の(b)に示した。実施例2による反射防止フィルムは、基材1に浸潤して硬化されたバインダと、前記バインダ内に無機微粒子が分散したハードコート層2(約2.8μm);及び前記ハードコート層2上に硬化されたバインダと、前記バインダ内に中空粒子層4が形成された低屈折率層3(約0.145μm)を含むと確認された。
【0125】
また、前記ハードコート層2と低屈折率層3の間に別途の層は観察されず、低屈折率層3の任意の断面面積に対する中空粒子の断面面積比率が約90%であり低屈折率層3内に中空粒子が非常に稠密に分布するのが確認された。そして、前記低屈折率層3内には互いに隣接した2乃至4層の中空粒子層4が形成されているのが確認され、このような中空粒子層と離隔している中空粒子の個数は中空粒子個数全体の約4%に過ぎないのが確認された。
【0126】
特に、実施例2による反射防止フィルムは低屈折率層にフッ素系アクリレートが含まれることによって組成物の相分離がより円滑に起こり耐スクラッチ性も向上するのを確認した。
【0127】
[実施例3]
(反射防止コーティング用組成物の製造)
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量298.3)100重量部及びウレタン官能基を有するアクリレート(製造社:共栄社化学株式会社、製品名:510H、分子量2000)11.33重量部を含む(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して;
シリカ微粒子が分散したシリカゾル(分散媒:メチルイソブチルケトン及びメチルアルコール、固形分含量40重量%、シリカ微粒子の数平均粒径:10nm、製造社:Gaematech、製品名:Purisol)約15.87重量部;
中空シリカが分散したコロイド溶液(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分含量20重量%、中空シリカの数平均粒径:50nm、製造社:触媒化成工業、製品名:MIBK−sol)約11.33重量部;
光重合開始剤約10.85重量部(具体的に、ダロキュア−1173約1.11重量部、イルガキュア−184約6.48重量部、イルガキュア−819約2.15重量部及びイルガキュア−907約1.11重量部);及び
溶媒約251.85重量部(具体的に、メチルエチルケトン(MEK)約179.63重量部、エタノール約24.07重量部、n−ブチルアルコール約24.07重量部及びアセチルアセトン約24.07重量部)を混合して反射防止コーティング用組成物を製造した。
【0128】
(反射防止フィルムの製造)
前記反射防止コーティング用組成物をトリアセテートセルロースフィルム(厚さ80μm)にワイヤーバー(9号)を用いてコーティングした。これを90℃オーブンで1分間乾燥した後、ここに200mJ/cm
2のUVエネルギーを5秒間照射して組成物を硬化させた。
【0129】
これによって、基材内に浸潤して形成されたハードコート層を含み、前記ハードコート層を覆っている低屈折率層を含む反射防止フィルムを収得した。
【0130】
前記反射防止フィルムの断面写真をSEMで確認した。確認結果、実施例3による反射防止フィルムは、基材に浸潤して硬化されたバインダと、前記バインダ内に無機微粒子が分散したハードコート層(約3.1μm);及び前記ハードコート層上に硬化されたバインダと、前記バインダ内に中空粒子が分散した低屈折率層(約0.16μm)を含むと確認された。
【0131】
また、前記ハードコート層と低屈折率層の間に別途の層は観察されず、低屈折率層の任意の断面面積に対する中空粒子の断面面積比率が約90%であり低屈折率層内に中空粒子が非常に稠密に分布するのが確認された。そして、前記低屈折率層3内には互いに隣接した3乃至5層の中空粒子層が形成されているのが確認され、このような中空粒子層と離隔している中空粒子の個数は中空粒子個数全体の約5%に過ぎないのが確認された。
【0132】
[実施例4]
(反射防止コーティング用組成物の製造)
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量298.3)100重量部及びエステル官能基を有するアクリレート(製造社:SKサイテック、製品名:DPHA、分子量524)11.33重量部を含む(メタ)アクリレート系化合物100重量部に対して;
シリカ微粒子が分散したシリカゾル(分散媒:メチルイソブチルケトン及びメチルアルコール、固形分含量40重量%、シリカ微粒子の数平均粒径:10nm、製造社:Gaematech、製品名:Purisol)約15.87重量部;
中空シリカが分散したコロイド溶液(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分含量20重量%、中空シリカの数平均粒径:50nm、製造社:触媒化成工業、製品名:MIBK−sol)約11.33重量部;
光重合開始剤約10.85重量部(具体的に、ダロキュア−1173約1.11重量部、イルガキュア−184約6.48重量部、イルガキュア−819約2.15重量部及びイルガキュア−907約1.11重量部);及び
溶媒約251.85重量部(具体的に、メチルエチルケトン(MEK)約179.63重量部、エタノール約24.07重量部、n−ブチルアルコール約24.07重量部及びアセチルアセトン約24.07重量部)を混合して反射防止コーティング用組成物を製造した。
【0133】
(反射防止フィルムの製造)
前記反射防止コーティング用組成物をトリアセテートセルロースフィルム(厚さ80μm)にワイヤーバー(9号)を用いてコーティングした。これを90℃オーブンで1分間乾燥した後、ここに200mJ/cm
2のUVエネルギーを5秒間照射して組成物を硬化させた。
【0134】
これによって、基材内に浸潤して形成されたハードコート層を含み、前記ハードコート層を覆っている低屈折率層を含む反射防止フィルムを収得した。
【0135】
そして、前記反射防止フィルムの断面写真を
図5の(a)に、その一部分を拡大観察した写真を
図5の(b)に示した。
図5から分かるように、実施例4による反射防止フィルムは、基材1に浸潤して硬化されたバインダと、前記バインダ内に無機微粒子が分散したハードコート層2(約2.78μm);及び前記ハードコート層2上に硬化されたバインダと、前記バインダ内に中空粒子層4が形成された低屈折率層3(約0.18μm)を含むと確認された。
【0136】
また、前記ハードコート層2と低屈折率層3の間に別途の層は観察されず、低屈折率層3の任意の断面面積に対する中空粒子の断面面積比率が約90%であり低屈折率層3内に中空粒子が非常に稠密に分布するのが確認された。そして、前記低屈折率層3内には互いに隣接した3乃至5層の中空粒子層4が形成されているのが確認され、このような中空粒子層と離隔している中空粒子の個数は中空粒子個数全体の約3%に過ぎないのが確認された。
【0137】
[比較例1]
(反射防止コーティング用組成物の製造)
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(PETA)100重量部に対して;
シリカ微粒子が分散したシリカゾル(分散媒:メチルイソブチルケトン及びメチルアルコール、固形分含量40重量%、数平均粒径:10nm、製造社:Gaematech、製品名:Purisol)15.87重量部;
中空シリカが分散したコロイド溶液(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分含量20重量%、中空シリカの数平均粒径:50nm、製造社:触媒化成工業、製品名:MIBK−sol)約11.33重量部;
光重合開始剤約10.85重量部(具体的に、ダロキュア−1173約1.11重量部、イルガキュア−184約6.48重量部、イルガキュア−819約2.15重量部及びイルガキュア−907約1.11重量部);及び
溶媒約251.85重量部(具体的に、メチルイソブチルケトン約125.91重量部、エタノール約41.98重量部、n−ブチルアルコール約41.98重量部及びアセチルアセトン約41.98重量部)を混合して反射防止コーティング用組成物を製造した。
【0138】
(反射防止フィルムの製造)
前記反射防止コーティング用組成物を使用したことを除いて、実施例1と同一な条件及び方法で反射防止フィルムを製造した。そして、前記反射防止フィルムの断面写真を
図6の(a)に、その一部分を拡大観察した写真を
図6の(b)に示した。
【0139】
図6から分かるように、比較例1による反射防止フィルムは組成物の相分離がろくに起こらず(
図6(a)のサークルの部分参照)、特に低屈折率層内の中空粒子4が過度に拡散して含まれることによって(
図6(b)のサークルの部分参照)、フィルムの外形が不透明であり、耐擦傷性及び反射防止効果も落ちると確認された(実験例参照)。このような比較例1の反射防止フィルムで、中空粒子が分布する全体面積で任意の断面面積に対する中空粒子の断面面積比率は約30〜60%であると確認された。特に、比較例1の反射防止フィルムでは中空粒子4が拡散して中空粒子層をろくに形成していないのが確認され、一部の中空粒子列さえ互いに隣接して稠密に形成されず散開して形成されているのが確認された。
【0140】
[実験例]
前記実施例及び比較例を通じて製造した反射防止フィルムに対して次のような項目を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0141】
1)反射率測定:反射防止フィルムの裏面を黒色処理した後、最小反射率値で低反射特性を評価した。この時、測定装備としては株式会社島津製作所のSolid Spec.3700分光光度計を用いた。
【0142】
2)透過率及びヘイズ(Haze)測定:村上色彩技術研究所のHR−100を用いて透過率とヘイズを評価した。
【0143】
3)耐スクラッチ性評価:反射防止フィルムに500g/cm
2の荷重になる鋼綿(steel wool)を24m/minの速度で10回往復した後、表面に長さ1cm以上の傷個数を調査した。この時、フィルム表面に傷がない場合、非常に優秀(◎)、長さ1cm以上の傷個数が1つ以上5つ未満であれば優秀(○)、5つ以上15個未満であれば普通(△)、15個以上であれば不良(X)と評価した。
【0144】
4)フィルムの断面拡大観察:透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、モデル名:H−7650、製造社:日立)を用いてマイクロトーミングによる試片の薄片製作を通じて各フィルムの断面を拡大観察した。
【0145】
5)付着力評価:ニチバンテープ(Nichiban tape)を用いたクロスカットテスト(cross cut test、ASTMD−3359)を通じて各フィルムに対する付着力を評価した。
【0146】
【表1】
【0147】
上記表1から分かるように、実施例による反射防止フィルムは比較例のフィルムに比べて反射率はさらに低いながらも、透過率はさらに高く、耐スクラッチ性及び付着力が優れていた。