(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外套管に対する前記処置具の挿入部の進退移動量が60mm以上であり、かつ前記内視鏡の挿入部に対する前記処置具の挿入部の軸方向の遊び量が10mmから30mmである請求項1に記載の内視鏡手術装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明の内視鏡手術装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係る内視鏡手術装置1の概略構成図である。
【0025】
《第1の実施形態》
内視鏡手術装置1は、患者の体腔内に挿入されて体腔内を観察する内視鏡10と、患者の体腔内に挿入されて所要の処置を行う処置具50と、内視鏡10及び処置具50を患者の体腔内に案内する外套管100とを備える。
図1においてLsは、内視鏡10の直棒状の挿入部12の長さ、Lhは、処置具50の直棒状の挿入部52の長さ、Ltは、外套管100の長さである。
図1の内視鏡手術装置1ではLs、Lh、Ltの関係がLt<Ls<Lhであるが、Lt≦Ls<Lhの関係を備えたものであってもよい。また、
図1のaは、外套管100に対する処置具50の挿入部52の進退移動量を示している。進退移動量aは、実施形態において、60mm以上に設定されている。
【0026】
〔内視鏡10〕
図2は、内視鏡10の一例を示した概略構成図である。
【0027】
内視鏡10は、腹腔鏡等の直視型の硬性内視鏡である。内視鏡10は、患者の体腔内に挿入される直棒状の挿入部12と、挿入部12の基端に接続される可撓性のケーブル22とを備える。
【0028】
挿入部12の先端には、対物レンズ16と撮像手段である撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等)20とを備えた観察手段が内蔵される。撮像素子20の結像面には対物レンズ16からの観察像が結像され、撮像素子20で生成された画像信号は、ケーブル22を介して画像処理装置24に出力される。画像処理装置24は、撮像素子20から取り込んだ画像信号に各種処理を施して、ディスプレイ26に出力可能な映像信号を生成する。この観察手段の視野角は、例えば120度である。
【0029】
画像処理装置24には、液晶ディスプレイ等のディスプレイ26が接続される。画像処理装置24で生成された映像信号はディスプレイ26に出力され、ディスプレイ26の画面に内視鏡撮影画像として表示される。
【0030】
なお、
図2の内視鏡10には、照明手段が備えられていない。照明は別の手段であるニードルライトで行われる。内視鏡に内蔵する照明手段を省くことによって、内視鏡10の挿入部12の外径を細径化できる。これにより、外套管100の外径も細径化でき、患者の体壁に加える侵襲を低減できる。
【0031】
〔ニードルライト30〕
図3は、ニードルライト30の一例を示した概略構成図である。
【0032】
ニードルライト30は、患者の体腔内に挿入されて体腔内を照明する部材である。
【0033】
ニードルライト30は、直棒状の挿入部32を有する。挿入部32の先端には、照明窓(不図示)が備えられ、この照明窓から軸方向に照明光を照射する。挿入部32の内部には、照明窓から照射する照明光を伝達する光ファイバーバンドルが収容される。
【0034】
ニードルライト30の基端には、接続部34が備えられる。接続部34には、可撓性を有するケーブル36を介して光源装置38が接続される。照明窓から出射させる照明光は、光源装置38から供給される。ニードルライト30は、ニードルライト用の細径のトラカール40を介して体腔内に挿入される。
【0035】
〔処置具50〕
図4は、処置具50の一例を示した概略構成図である。
【0036】
処置具50は、体腔内に挿入される直棒状の挿入部52と、挿入部52の先端に配設される処置部54と、挿入部52の基端に配設されるハンドル部56とを備える。
図5に示す処置部54は、ハサミ構造とされており、ハンドル部56の開閉操作によって、処置部54が開閉動作される。なお、処置具50は、これに限らず、鉗子、レーザープローブ、縫合器、電気メス、持針器、超音波吸引器等を処置具として使用できる。
【0037】
〔外套管100〕
図5は、外套管100の一例を示した斜視図である。
【0038】
外套管100は、患者の体腔壁に穿刺され、内視鏡10の挿入部12及び処置具50の挿入部52を患者の体腔内に案内する。
【0039】
図6は、内視鏡10と処置具50が挿入された外套管100の先端面の正面図、
図7は内視鏡10と処置具50が挿入された外套管100の側面部分断面図、
図8は外套管100の基端面の正面図である。
【0040】
外套管100は、円筒状の外套管本体102を有する。外套管本体102の基端には、キャップ104が取り付けられる。キャップ104には、気密を確保する弁部材が収納され、この弁部材によって外套管本体102の基端開口部が閉塞される。外套管本体102の先端には、キャップ106が取り付けられ、このキャップ106によって外套管本体102の先端開口部が閉塞される。
【0041】
図5、
図8に示すように、キャップ104には、処置具50の挿入部52を外套管本体102に挿入するための処置具挿入口108が備えられる。処置具挿入口108は、処置具50の挿入部52の外径に対応した内径で形成される。
【0042】
また、キャップ104には、内視鏡10の挿入部12を外套管本体102に挿入するための内視鏡挿入口112が備えられる。内視鏡挿入口112は、内視鏡10の挿入部12の外径に対応した内径で形成される。
【0043】
図6に示すように、キャップ106には、外套管本体102に挿入された処置具50の挿入部52が繰り出される処置具繰出口114が備えられる。処置具繰出口114は、処置具50の挿入部52の外径に対応した内径で形成される。
図8の処置具挿入口108と
図6の処置具繰出口114とは同軸で、且つ、外套管本体102の軸と平行な軸上に配置される。これにより、
図7の如く、処置具挿入口108(
図8参照)から挿入された処置具50の処置部54が処置具繰出口114(
図6参照)から繰り出される。このとき、処置具50の挿入部52は、外套管本体102の軸と平行な姿勢で繰り出される。なお、外套管本体102において、処置具挿入口108と処置具繰出口114とを連通させる管路が、処置具50の挿入部52を挿入部52の軸方向に進退させる処置具挿通路を構成している。
【0044】
また、
図6のキャップ106には、
図8の内視鏡挿入口112から外套管本体102に挿入された内視鏡10の挿入部12が繰り出される内視鏡繰出口116が備えられる。内視鏡繰出口116は、内視鏡10の挿入部12の外径に対応した内径で形成される。内視鏡挿入口112(
図8参照)と内視鏡繰出口116(
図6参照)とは同軸で、且つ、外套管本体102の軸と平行な軸上に配置される。これにより、
図7の如く、内視鏡挿入口112(
図8参照)から挿入された内視鏡10の先端部が内視鏡繰出口116(
図6参照)から繰り出される。このとき、内視鏡10の挿入部12は、外套管本体102の軸と平行な姿勢で繰り出される。なお、外套管本体102において、内視鏡挿入口112と内視鏡繰出口116とを連通させる管路が、内視鏡10の挿入部12を挿入部12の軸方向に進退させる内視鏡挿通路を構成している。
【0045】
〔外套管100の内部構造〕
図7の如く、外套管本体102の内部には、外套管本体102の軸と平行な方向に移動可能なスライダ(第1の移動体)118が備えられる。
【0046】
スライダ118は、外套管本体102に収容可能な円柱状に構成される。スライダ118は、一対のガイド軸120にガイドされて、外套管本体102の内部を外套管本体102の軸に沿って往復移動可能に設けられる。
【0047】
各ガイド軸120は丸棒状であり、外套管本体102の内部に配置される(
図6参照)。また、各ガイド軸120は、基端がキャップ104に支持され、かつ先端がキャップ106に支持されて、外套管本体102の軸と平行に配置される。
【0048】
スライダ118には、一対のガイド軸120が挿通可能な一対のガイド孔122が備えられる。一対のガイド孔122は、外套管本体102の軸と平行に形成される。スライダ118は、ガイド孔122を介してガイド軸120に移動可能に支持される。
【0049】
スライダ118には、外套管本体102に挿入された処置具50の挿入部52を保持する処置具保持部124と、外套管本体102に挿入された内視鏡10の挿入部12を保持する内視鏡保持部126とが備えられる。
【0050】
内視鏡保持部126は、内視鏡10の挿入部12が挿通される内視鏡保持孔132と、内視鏡保持孔132に配置される一対のOリング134とを備える。
【0051】
内視鏡保持孔132は、スライダ118を貫通して形成される。内視鏡保持孔132は、外套管本体102の軸と平行に形成され、内視鏡挿入口112及び内視鏡繰出口116と同軸上に配置される。
【0052】
一対のOリング134は、内視鏡保持孔132の内側の前後2カ所に取り付けられる。このOリング134の内径は、内視鏡10の挿入部12の外径よりも若干小さく設定される。
【0053】
内視鏡挿入口112から外套管本体102に挿入された内視鏡10の挿入部12は、内視鏡保持孔132を通過して内視鏡繰出口116から繰り出される。内視鏡10は、内視鏡保持孔132を通過する際、Oリング134を通過する。上記のように、Oリング134の内径は、内視鏡10の挿入部12の外径よりも若干小さく設定されている。したがって、内視鏡10の挿入部12は、内視鏡保持孔132を通過すると、Oリング134の弾性力によって内視鏡保持孔132に保持される。
【0054】
なお、ここでの保持はOリング134の弾性力による保持なので、スライダ118に対する内視鏡10の挿入部12の保持位置は任意に調整可能である。
【0055】
また、内視鏡10はOリング134の弾性力によって保持されるが、Oリング134と内視鏡10の挿入部12との間の摩擦力は、ガイド軸120とガイド孔122との間の摩擦力(=外套管本体102とスライダ118との間の摩擦力:F1)よりも大きく設定される。これにより、外套管本体102に対してスライダ118と内視鏡10の挿入部12とが一体に移動する。
【0056】
処置具保持部124は、処置具50の挿入部52が挿通される処置具保持孔128と、処置具保持孔128に配置され、処置具保持孔128に沿って軸方向に移動するスリーブ(第2の移動体)140と、スリーブ140に配置される一対のOリング130とによって構成される。スライダ118とスリーブ140とによって、連結部材が構成される。
【0057】
処置具保持孔128は、スライダ118を貫通して形成される。処置具保持孔128は、外套管本体102の軸と平行に形成され、処置具挿入口108及び処置具繰出口114と同軸上に配置される。
【0058】
処置具保持孔128の両端部には、円環状のストッパリング142が取り付けられる。処置具保持孔128に収容されるスリーブ140は、ストッパリング142、142によって処置具保持孔128からの抜けが防止される。また、スリーブ140は、ストッパリング142、142によって進退方向の遊び量tが設定される。すなわち、スリーブ140は、処置具保持孔128の両端に設けられるストッパリング142、142の間で、スライダ118に対し、遊び量tだけ摺動可能に設けられる。
【0059】
スリーブ140は円筒状に形成され、処置具保持孔128の内側に収容されて、処置具保持孔128と同軸上に配置される。すなわち、スリーブ140は、処置具挿入口108及び処置具繰出口114と同軸上に配置される。これにより、処置具挿入口108から軸方向に沿って処置具50の挿入部52を挿入すると、挿入部52がスリーブ140の内周部に挿入される。
【0060】
一対のOリング130は、スリーブ140の内側の前後2カ所に取り付けられる。このOリング130の内径は、処置具50の挿入部52の外径よりも若干小さく設定される。
【0061】
処置具挿入口108から外套管本体102に挿入された挿入部52は、処置具保持孔128を通過して処置具繰出口114から繰り出される。挿入部52は、処置具保持孔128を通過する際、スリーブ140の内周部に配置されたOリング130を通過する。Oリング130の内径は、処置具50の挿入部52の外径よりも若干小さく設定されている。したがって、挿入部52は、Oリング130を通過すると、Oリング130の弾性力によってスリーブ140に保持される。
【0062】
なお、ここでの保持はOリング130の弾性力による保持なので、スリーブ140に対する処置具50の保持位置は任意に調整可能である。すなわち、スライダ118に対する挿入部52の保持位置を任意に調整できる。なお、
図7のLs1は、内視鏡10の挿入部12の先端を基準とした処置具50の挿入部52の先端の最小突出長である。
【0063】
処置具保持部124では、スリーブ140が処置具50の挿入部52と一体化され、挿入部52の進退動作に連動してスリーブ140が移動する。
【0064】
ここで、スリーブ140と処置具保持孔128との間の摩擦力(F3)が、処置具50の挿入部52とOリング130との間の摩擦力(F2)よりも大きい場合には、挿入部52はOリング130との間で滑り、スライダ118に対してスリーブ140を移動させることができない。このような理由から、スリーブ140と処置具保持孔128との間の摩擦力(F3)は、処置具50とOリング130との間の摩擦力(F2)よりも小さく設定される。
【0065】
一方、ガイド軸120とガイド孔122との間の摩擦力(=外套管本体102とスライダ118との間の摩擦力:F1)よりもスリーブ140と処置具保持孔128との間の摩擦力(F3)が大きいと、処置具50を移動させたときに、スリーブ140ではなく、外套管本体102に対してスライダ118が移動してしまう。このような理由から、ガイド軸120とガイド孔122との間の摩擦力(F1)は、スリーブ140と処置具保持孔128との間の摩擦力(F3)よりも大きく設定される。また、処置具50とOリング130との間の摩擦力(F2)が、ガイド軸120とガイド孔122との間の摩擦力(F1)よりも大きく設定される。
【0066】
すなわち、ガイド軸120とガイド孔122との間の摩擦力(F1)と、処置具50とOリング130との間の摩擦力(F2)と、スリーブ140と処置具保持孔128との間の摩擦力(F3)との関係が、F2>F1>F3に設定される。
【0067】
これにより、処置具50の挿入部52を進退方向に移動させたとき、一対のストッパリング142、142によって設定される遊び量t以下の移動であれば、スライダ118は移動せず、内視鏡10も進退方向に連動しない。
【0068】
このような遊び量tを備えることにより、例えば、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に、ディスプレイ26に表示された内視鏡撮影画像が揺れるのを防止できる。よって、揺れのない見やすい内視鏡撮影画像を提供することができる。
【0069】
なお、上記例では、内視鏡10の挿入部(一方の挿入部)12をスライダ118に保持させ、処置具50の挿入部(他方の挿入部)52をスリーブ140に保持させたが、内視鏡10の挿入部12をスリーブ140に保持させ、処置具50の挿入部52をスライダ118に保持させても同様の作用、効果が得られる。
【0070】
《内視鏡手術装置1の作用》
図9は、内視鏡手術装置1の使用時の形態を示す図である。
【0071】
外套管100に挿入された内視鏡10の挿入部12と処置具50の挿入部52とは、互いに平行に保持され、かつ、外套管100の軸と平行に保持される。
【0072】
ここで、処置具50の挿入部52は、スリーブ140に保持されており、スリーブ140は、スライダ118に対して軸方向に移動可能に設けられている。そして、スリーブ140と処置具保持孔128との間の摩擦力(F3)と、ガイド軸120とガイド孔122との間の摩擦力(F1)とは、F3<F1に設定されている。
【0073】
この結果、処置具50の挿入部52を進退方向に移動させると、一対のストッパリング142、142で規定されるスリーブ140の遊び量tの範囲では、内視鏡10は進退方向に移動せず処置具50のみが進退方向に移動する。
【0074】
一方、遊び量tの範囲を超えて処置具50の挿入部52が進退方向(軸方向)に移動すると、F2>F1に設定されているので、スライダ118がスリーブ140に押されて処置具50と一体となって進退方向に移動する。この結果、内視鏡10の挿入部12が処置具50の挿入部52に連動して進退方向に移動する。
【0075】
具体的には、スリーブ140の遊び量tの範囲を超えて挿入部52が進出方向(先端方向)に移動すると、スリーブ140の先端が、処置具保持孔128の先端側の端部に設けられたストッパリング142に当接し、スライダ118が挿入部52と一体となって進出方向に移動する。この結果、内視鏡10の挿入部12が挿入部52と共に進出方向に移動する。
【0076】
一方、スリーブ140の遊び量tの範囲を超えて挿入部52が退避方向(基端方向)に移動すると、スリーブ140の基端が、処置具保持孔128の基端側の端部に設けられたストッパリング142に当接し、スライダ118が挿入部52と一体となって退避方向に移動する。この結果、挿入部12が挿入部52と共に退避方向に移動する。
【0077】
このように、内視鏡手術装置1によれば、処置具50を遊び量tの範囲を超えて進退移動させたときにのみ内視鏡10が処置具50に連動して同方向に進退移動する。また、遊び量tの範囲内での細かな揺れのような処置具50の小振幅の進退移動については、内視鏡10にその動きが伝達しないので、揺れのない良好な内視鏡撮影画像を提供できる。
【0078】
なお、
図9の(A)部及び(B)部に示すように、Ls1は、遊び量tによって変動する。つまり、
図9の(A)部で示したLs1は、Ls1の最大長であり、
図9の(B)部で示したLs1は、Ls1の最小長である。
【0079】
《内視鏡手術装置1の使用例》
図10は、内視鏡手術装置1を用いた手術方法の一例を示す概略図である。
【0080】
本例は一人の術者が処置を行う場合の例を示している。
【0081】
内視鏡10と処置具50とは、患者の体腔壁2に穿刺された外套管100を介して体腔3に挿入される。内視鏡10は、処置具50の進退移動に連動して進退移動する。これにより、常に処置部分の映像が、ディスプレイ26に表示される。また、処置具50の移動によって視野を移動させることができる。
【0082】
内視鏡10には、照明手段が備えられていないので、照明手段として、ニードルライト30がトラカール40を介して体腔3に挿入される。体腔3は、ニードルライト30の先端からの照明光によって照明される。なお、本例では1本のニードルライト30を例示したが、必要に応じて複数本のニードルライト30を使用してもよい。上記のように、処置具50の操作によって内視鏡10も操作されるので、スコピストが不要となる。
【0083】
《第1の実施形態の内視鏡手術装置1の特徴》
内視鏡10の挿入部12と処置具50の挿入部52を、外套管本体102の内部に配置された、スライダ118とスリーブ140とからなる連結部材によって連結したことにある。
【0084】
これにより、処置具50の挿入部52の進退方向の移動に連動して、内視鏡10の挿入部12が進退方向に移動するので、外套管100に挿入された内視鏡10の挿入部12と処置具50の挿入部52とを進退方向に連動させることができる。これにより、処置部54の処置部分の映像が、ディスプレイ26に常に表示される。
【0085】
また、処置具50の挿入部52を、内視鏡10の挿入部12に対し、遊び量tをもって外套管100の軸方向に移動するように連結部材に連結したことにある。
【0086】
これにより、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に観察対象の大きさが変動してしまうのを防止でき、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を提供できる。また、挿入部52が進退方向に大きく変動した場合(大振幅の進退動作を行った場合)には、それに連動して観察画像の範囲が連続的に変更されるので、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化し、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となり、操作性が向上する。
【0087】
第1の実施形態では、外套管100に対する処置具50の挿入部52の進退移動量aを70mmに設定している。つまり、
図11に示す挿入部52の進退移動の開始位置から
図13に示す挿入部52の進退移動の終端位置までの進退移動量aが60mm以上に設定されている。また、第1の実施形態では、内視鏡10の挿入部12に対する処置具50の挿入部52の軸方向の遊び量tが10mmから30mmに設定されている。
【0088】
第1の実施形態によれば、外套管100に対する処置具50の挿入部52の進退移動量aにおいて、遊び量10mmから30mmを加えた60mm以上の移動量は、術者が通常使用する実質的な使用範囲なので、術者は違和感なく処置具を操作できる。
【0089】
なお、進退移動量aは、80mm以下が好ましく、70mmであることが更に好ましい。
【0090】
また、遊び量tは15mmから25mmが更に好ましく、20mmがより一層好ましい。
【0091】
更に、最小突出長Ls1=50mm、かつ遊び量t=20mmに設定することが好ましい。最小突出長Ls1=50mmに、遊び量t=20mmを加えた50mm〜70mmの範囲は、術者が通常使用する実質的な使用範囲なので、術者は違和感なく処置具を操作できる。
【0092】
〔内視鏡手術装置1の長さの一例〕
外套管100の長さ :Lt=160mm
内視鏡10の挿入部12の長さ:Ls=250mm
処置具50の挿入部52の長さ:Lh=360mm
内視鏡10の視野角 :120度
進退移動量 :a=70mm
遊び量 :t=20mm
最小突出長 :Ls1=50mm
この内視鏡手術装置1によれば、通常の使用範囲で処置具50の挿入部52を進退方向に移動した場合、内視鏡10の挿入部12を挿入部52に対して個別に軸方向に移動させることなく、内視鏡10の観察手段の視野範囲に処置部54を収めることができる。よって、処置部54を追尾することなく処置部54の処置部分の映像がディスプレイ26に常に表示される。
【0093】
〔外套管100に対する内視鏡10及び処置具50の挿入方法〕
図12は、内視鏡10の挿入部12を外套管100に挿入した部分断面図、
図13は、処置具50の挿入部52を外套管100に挿入した部分断面図である。
【0094】
まず、
図12に示すように、内視鏡10の挿入部12を、内視鏡挿入口112(
図8参照)から挿入する。内視鏡挿入口112に挿入された挿入部12は、外套管本体102を通過して内視鏡繰出口116から繰り出される。この際、挿入部12は、外套管本体内のスライダ118に形成された内視鏡保持孔132を通過して内視鏡繰出口116から繰り出される。内視鏡保持孔132にはOリング134が備えられており、内視鏡保持孔132を通過した挿入部12は、Oリング134の弾性力によってスライダ118に保持される。
【0095】
次に、
図13に示すように、処置具50の挿入部52を、処置具挿入口108から挿入する。処置具挿入口108に挿入された挿入部52は、外套管本体102を通過して処置具繰出口114から繰り出される。この際、挿入部52は、スリーブ140にOリング130の弾性力によって保持される。このとき、最小突出長Ls1を50mmに設定すればよい。この後、処置具50を抜去方向に移動させ、
図7の使用位置に内視鏡10と処置具50を位置させる。
【0096】
〔外套管100に対する内視鏡及び処置具の抜去方法〕
まず、
図7の状態から処置具50の挿入部52を抜去方向に移動する。そうすると、スリーブ140がまず基端側のストッパリング142に当接し、この後、スライダ118が挿入部52と共に外套管100の基端側に移動する。そして、スライダ118が外套管100の基端に当接して、スライダ118の移動が規制されると、挿入部52がスライダ118から抜去されていき、最終的に挿入部52が外套管100から抜去される。
【0097】
次に、内視鏡10の挿入部12を抜去方向に移動すると、挿入部12がスライダ118から抜去されていき、最終的に挿入部12が外套管100から抜去される。
【0098】
《第2の実施形態》
図14は、第2の実施形態の内視鏡手術装置に適用される外套管200の内部構造を示した概略図である。また、
図15は、外套管200の構成要素であるスライダ208及びスリーブ232の構造を示した構成図である。
【0099】
図14に示すように、外套管200は、外套管本体202と、内視鏡挿通路204と、処置具挿通路206と、スライダ208と、位置センサ210と、内視鏡駆動部212と、制御部214と、を備える。
【0100】
外套管本体202は、患者の体壁を貫通して体腔内に刺入されるガイド部材である。外套管本体202の内部には内視鏡挿通路204及び処置具挿通路206が設けられる。
【0101】
内視鏡挿通路204は、外套管本体202の軸方向に沿って貫通形成され、挿入部12を進退自在に挿通可能な挿通路として構成される。内視鏡挿通路204は、外套管本体202の基端面216に開口する内視鏡挿入口218に連通するとともに、外套管本体202の先端面220に開口する内視鏡導出口222に連通する。これにより、内視鏡挿入口218に挿入された挿入部12の先端部は、内視鏡挿通路204を通じて内視鏡導出口222から導出される。
【0102】
処置具挿通路206は、外套管本体202の軸方向に沿って貫通形成され、挿入部52を進退自在に挿通可能に構成される。処置具挿通路206は、外套管本体202の基端面216に開口する処置具挿入口224に連通するとともに、外套管本体202の先端面220に開口する処置具導出口226に連通する。これにより、処置具挿入口224に挿入された挿入部52の先端部である処置部は、処置具挿通路206を通じて処置具導出口226から導出される。
【0103】
なお、図示は省略するが、内視鏡挿通路204及び処置具挿通路206には、それぞれ体腔内の気密性を確保するために逆止弁やシール部材が配設されている。これにより、体腔内に導入された炭酸ガスが内視鏡挿通路204及び処置具挿通路206を通じて体腔
外に流出してしまうのを防ぐことができる。また、図示は省略するが、処置具挿通路206の先端側及び基端側の端部には、後述するスライダ208の脱落を防ぐためのストッパ部が設けられている。
【0104】
スライダ208は、処置具挿通路206の内部で挿入部52の進退移動に遊びをもって連動して移動可能な連動部材である。スライダ208は円筒状に構成され、その内部には遊び部209を構成するガイド孔230を備える。このガイド孔230は軸方向に沿って形成され、その内部にはスリーブ232が収容される。
図15に示すように、スリーブ232の外径D3は、ガイド孔230の内径D5よりも小さく形成される。これにより、スリーブ232は、ガイド孔230の軸方向に沿って移動可能に構成される。
【0105】
スリーブ232の内部には、軸方向に沿って貫通形成された処置具保持孔234が設けられる。処置具保持孔234の内壁部は円筒状の弾性部材236により構成される。処置具保持孔234の内径D1は、挿入部52の外径(処置具保持孔234で保持される部分の外径)D2(
図14参照)よりも若干小さく形成される。したがって、処置具保持孔234に挿入部52を挿通させることによって、弾性部材236の弾性力によってスリーブ232は挿入部52の外周面に密着された状態で保持される。これにより、スリーブ232は挿入部52と一体的に移動可能となる。なお、ここでの保持は弾性部材236の弾性力による保持なので、挿入部52は、スリーブ232に対して保持位置を任意に調整することができる。
【0106】
スライダ208の軸方向の両端部には、ガイド孔230からスリーブ232が脱落するのを防ぐとともに、スリーブ232の可動範囲を規制するストッパ部238A、238Bが設けられる。各ストッパ部238A、238Bには、挿入部52を挿通可能な開口部240A、240Bが設けられる。すなわち、各開口部240A、240Bの内径D4は、挿入部52の外径D2よりも大きく、かつ、スリーブ232の外径D3より小さく形成される。したがって、挿入部52の外周部にスリーブ232が保持された状態で挿入部52が進退移動すると、挿入部52の進退移動がスライダ208の遊び範囲(ストッパ部238A、238Bで規定される可動範囲)ではスライダ208は進退移動しない。一方、挿入部52がスライダ208の遊び範囲を超えて進退移動した場合には、挿入部52に保持されたスリーブ232がストッパ部238A又は238Bに当接して、スライダ208が挿入部52と一体となって進退移動する。
【0107】
図14に示す位置センサ210は、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって連動して移動可能なスライダ208の移動量を検出する。すなわち、位置センサ210は、挿入部52が進退移動しても挿入部12に対する挿入部52の相対位置の変化が検出されない不感帯領域と、挿入部12が進退移動したときに挿入部52の相対位置の変化が検出される感帯領域とを有し、感帯領域において外套管本体202に対する挿入部52の移動量を検出する検出手段として構成される。位置センサ210としては、ポテンショメータ、エンコーダ、MR(Magnetic Resistance)センサなどの位置センサを用いることができる。例えば、スライダ208の進退移動に対して回転自在に構成された回転体(ローラ)の回転量をロータリエンコーダやポテンショメータなどで検出することによって、スライダ208の移動量を検出することができる。位置センサ210の検出結果は制御部214に出力される。
【0108】
なお、位置センサ210によって検出されるスライダ208の移動量は移動方向に応じて正負の値を有するものとする。具体的には、スライダ208が体腔内の患部側(先端側、前方側)に移動した場合のスライダ208の移動量を正の値とし、その反対側となる手元側(基端側、後方側)に移動した場合のスライダ208の移動量を負の値とする。
【0109】
内視鏡駆動部212は、内視鏡挿通路204に挿通された挿入部12を進退移動させる駆動手段であり、例えばモータやギアなどで構成される。内視鏡駆動部212は、制御部214から出力される制御信号に基づいて挿入部12を進退移動させる。本例では、内視鏡駆動部212は、外套管本体202に内蔵されているが、これに限らず、外套管本体202の外部で挿入部12を進退移動させるものであってもよい。
【0110】
制御部214は、位置センサ210の検出結果に基づき、内視鏡駆動部212を通じて挿入部12の進退移動を制御する内視鏡移動制御手段である。すなわち、制御部214は、スライダ208の移動量に応じて挿入部12の進退移動を制御するものであり、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部12を連動して進退移動させる。制御部214は、外套管本体202に内蔵されていてもよいし、外套管本体202の外部に配線を介して接続されていてもよい。
【0111】
図16は、制御部214で行われる処理の一例を示したフローチャート図である。
【0112】
まず、制御部214は、位置センサ210によって検出されたスライダ208の移動量を取得する(ステップS10)。
【0113】
次に、制御部214は、位置センサ210から取得したスライダ208の移動量に基づき、内視鏡駆動部212を通じて挿入部12を進退移動させる制御を行う(ステップS12)。具体的には、スライダ208の移動量と同一の移動量だけ挿入部12を進退移動させるための制御信号を内視鏡駆動部212に出力する。そして、内視鏡駆動部212は、制御部214から与えられた制御信号に基づき、挿入部12を進退移動させる。これにより、挿入部12は、スライダ208の移動量と同一の移動量、すなわち、挿入部52の移動量に対して遊びをもって連動して進退移動する。
【0114】
図17は、第2の実施形態の内視鏡手術装置が操作されるときの様子を示した説明図である。
図17は、挿入部52が手元側から体腔内の患部側に押し込まれるときの様子を示した図である。
【0115】
まず、
図17の(A)部に示す状態から
図17の(B)部に示す状態のように、挿入部52が軸方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作が行われた場合)には、挿入部52のみが進退移動してスライダ208は進退移動しないので、スライダ208の移動量を検出する位置センサ210の出力は0となる。この場合、挿入部12は進退移動しないので、ディスプレイ26(
図2参照)に表示される観察画像の範囲は変化しない。このため、挿入部52の微小変位に応じて観察対象の大きさが変動してしまうのを防止することができ、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を得ることができる。
【0116】
これに対し、
図17の(A)部に示す状態から
図17の(C)部に示す状態のように、挿入部52が軸方向に大きく変位した場合(大振幅の進退動作が行われた場合)には、挿入部52の進退移動に連動してスライダ208が進退移動する。この場合、挿入部12は進退移動するので、ディスプレイ26に表示される観察画像の範囲が挿入部52の進退移動に追従するように連続的に変更される。これにより、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化するので、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となる。
【0117】
また、図示は省略するが、挿入部52が体腔内の患部側から手元側に引き込まれる場合についても同様である。
【0118】
なお、挿入部52を進退移動させてもディスプレイ26に表示される観察画像の範囲が常に一定となるように挿入部12を進退移動させるように制御することが好ましい。
【0119】
以上のとおり、第2の実施形態では、位置センサ210によって、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部12が進退移動する。
【0120】
これにより、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に観察対象の大きさが変動してしまうのを防止でき、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を提供できる。また、挿入部52が進退方向に大きく変動した場合(大振幅の進退動作を行った場合)には、それに連動して観察画像の範囲が連続的に変更されるので、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化し、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となり、操作性が向上する。
【0121】
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態について説明する。以下、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、第3の実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0122】
図18は、第3の実施形態に係る内視鏡装置の要部構成を示した概略構成図である。
図18において、これまでに示した図の構成要素と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付している。
【0123】
第3の実施形態では、
図18に示すように、挿入部52の外周面には、後述する検出センサ242によって外套管本体202に対する挿入部52の移動量を検出可能な目盛領域260と、上記移動量が検出されない非目盛領域262とが設けられる。
【0124】
目盛領域260は、挿入部52の軸方向に沿って交互に繰り返される高濃度部及び低濃度部によって構成される。
【0125】
非目盛領域262は、挿入部52の軸方向に沿って均一の濃度からなる均一濃度部からなり、目盛領域260の両側(すなわち、挿入部52の軸方向の先端側及び基端側)に形成される。
【0126】
外套管本体202の内部には、挿入部52が進退移動したときにおける挿入部12に対する挿入部52の相対位置の変化を検出する検出手段としての検出センサ242が設けられる。この検出センサ242は、挿入部52に形成された目盛領域260の高濃度部及び低濃度部を光学的に読み取る光学式読取手段であり、例えば発光素子及び受光素子により構成される。例えば、挿入部52が進退移動したときに検出センサ242に対面する位置を目盛領域260が通過すると、検出センサ242によって挿入部52の移動量が検出される。一方、検出センサ242に対面する位置を非目盛領域262が通過する場合には、検出センサ242によって挿入部52の移動量は検出されない。検出センサ242の検出結果は制御部214に出力される。
【0127】
なお、検出センサ242としては、光学式読み取り手段に限らず、例えば、磁気的もしくは電子的に読み取り可能な読み取り手段で構成されていてもよい。この場合、挿入部52の外周面には読み取り手段に対応した目盛情報が形成される。
【0128】
制御部214は、検出センサ242の検出結果に基づき、内視鏡駆動部212を制御する。すなわち、制御部214は、検出センサ242によって検出された挿入部52の移動量に応じて内視鏡駆動部212を通じて挿入部12を移動させる制御を行う。
【0129】
第3の実施形態によれば、検出センサ242によって挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部52の移動量を検出することができる。これにより、挿入部12を、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって連動して進退移動させることが可能となる。
【0130】
これにより、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に観察対象の大きさが変動してしまうのを防止でき、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を提供できる。また、挿入部52が進退方向に大きく変動した場合(大振幅の進退動作を行った場合)には、それに連動して観察画像の範囲が連続的に変更されるので、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化し、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となり、操作性が向上する。
【0131】
《第4の実施形態》
次に、第4の実施形態について説明する。以下、第2、第3の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0132】
図19は、第4の実施形態に係る内視鏡手術装置の要部構成を示した機能ブロック図である。
図19において、これまでに示した図の構成要素と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付している。
【0133】
第4の実施形態では、画像処理装置24の画像データ生成部266で生成された画像データに基づき、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部52の移動量を検出する検出手段としての処置具移動量検出部244を備える。処置具移動量検出部244は、制御部214と同様に、外套管本体202に内蔵されていてもよいし、外套管本体202の外部に配線を介して接続されていてもよい。
【0134】
処置具移動量検出部244は、移動量算出部246、第1変換処理部248、及び第2変換処理部250を備える。
【0135】
移動量算出部246は、画像データ生成部266で生成された画像データに基づいて、挿入部52の移動量を算出する。このとき算出される移動量は、
図20の(A)部に示すように観察画像上での移動量X
1であり、
図20の(B)部に示す実際の移動量X
2とは異なるものである。なお、符号Pは、挿入部52の移動開始位置を示す。
【0136】
第1変換処理部248は、移動量算出部246により算出された観察画像上での移動量X
1を実際の移動量X
2に変換する。具体的には、ルックアップテーブルを参照して、観察画像上での移動量X
1を実際の移動量X
2に変換する。なお、観察画像上での移動量X
1と実際の移動量X
2との対応関係については、挿入部52と挿入部12との離間距離や内視鏡10の撮像素子20の画角などから一意に決まるものであり、これらの対応関係を示すデータがルックアップテーブルとして不図示のメモリに格納されている。
【0137】
第2変換処理部250は、第1変換処理部248で求められた挿入部52の移動量(実際の移動量)X
2を一定の遊び量が付与された移動量X
3に変換する。具体的には、
図21に示したグラフに従って挿入部52の移動量の変換処理を行う。すなわち、挿入部52の移動量X
2が遊び範囲内の場合には挿入部52の移動量X
3を0とする。一方、挿入部52の移動量X
2が上記遊び範囲内でない場合には挿入部52の移動量X
2から一定値を減算又は加算した値を移動量X
3とする。このようにして求められた挿入部52の移動量X
3は、処置具移動量検出部244の検出結果として制御部214に出力される。
【0138】
制御部214は、処置具移動量検出部244の検出結果に基づき、内視鏡駆動部212を通じて挿入部12の進退移動を制御する。
【0139】
第4の実施形態によれば、画像データに基づき挿入部52を進退移動させたときの移動量が遊びをもって検出される。したがって、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部12を進退移動させることが可能となる。
【0140】
これにより、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に観察対象の大きさが変動してしまうのを防止でき、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を提供できる。また、挿入部52が進退方向に大きく変動した場合(大振幅の進退動作を行った場合)には、それに連動して観察画像の範囲が連続的に変更されるので、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化し、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となり、操作性が向上する。
【0141】
《第5の実施形態》
次に、第5の実施形態について説明する。以下、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、第3の実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0142】
図22は、外套管200の内部構造を示した概略図である。
【0143】
第5の実施形態の制御部214は、位置センサ210の検出結果に基づき、内視鏡駆動部212を通じて挿入部12の進退移動を制御する内視鏡移動制御手段である。具体的には、制御部214は、
図23に示すグラフに従って制御を行う。
【0144】
位置センサ210は、処置具挿通路206に挿通された挿入部52の移動量を検出する。すなわち、位置センサ210は、挿入部52が進退移動したときにおける外套管本体202に対する挿入部52の移動量を検出する検出手段として構成される。
【0145】
図23は、挿入部52の移動量Xと挿入部12の移動量Yとの関係を示したグラフである。
図23に示すように、制御部214では、挿入部52の移動量Xが0を中心とした所定の遊び範囲内の場合には挿入部12の移動量Yを0とする制御を行う。すなわち、挿入部52の移動量Xが−t≦X≦t(但し、t>0とする。)を満たす場合には挿入部12を進退移動させない。
【0146】
一方、挿入部52の移動量Xが上記遊び範囲内でない場合には挿入部52の進退移動に連動して挿入部12を進退移動させる制御を行う。具体的には、挿入部52の移動量Xから遊び量tを加算又は減算した値を挿入部12の移動量Yとする制御を行う。
【0147】
これにより、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部12を連動して進退移動させることが可能となる。
【0148】
図24は、制御部214で行われる処理の一例を示したフローチャート図である。
【0149】
まず、制御部214は、位置センサ210によって検出された挿入部52の移動量を取得する(ステップS100)。
【0150】
次に、制御部214は、位置センサ210から取得した挿入部52の移動量があらかじめ設定された遊び範囲内であるか否かを判断する(ステップS120)。挿入部52の移動量が遊び範囲内である場合にはステップS140をスキップして、ステップS160に進む。
【0151】
一方、挿入部52の移動量が遊び範囲内でない場合には、上述のとおり、
図23に示したグラフに従って、挿入部52の進退移動に連動して挿入部12を進退移動させる制御を行う(ステップS140)。
【0152】
次に、制御部214は、操作が終了したか否かを判断する(ステップS160)。操作が終了していないと判断された場合には、ステップS100に戻って同様の処理を行う。一方、操作が終了したと判断された場合には、制御部214による制御は終了となる。
【0153】
操作が終了したか否かの判断方法としては、例えば、外套管本体202に対して挿入部12又は挿入部52が挿通されているか否かを検出するセンサを設け、このセンサの検出結果に応じて操作の終了を判断してもよい。また、手動で操作可能なON/OFFスイッチを設け、このON/OFFスイッチの操作状態に応じて操作の終了を判断してもよい。
【0154】
以上の構成により、制御部214に遊びを設けたので、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部12が進退移動する。
【0155】
これにより、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に観察対象の大きさが変動してしまうのを防止でき、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を提供できる。また、挿入部52が進退方向に大きく変動した場合(大振幅の進退動作を行った場合)には、それに連動して観察画像の範囲が連続的に変更されるので、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化し、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となり、操作性が向上する。
【0156】
《第6の実施形態》
次に、第6の実施形態について説明する。以下、第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、第6の実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0157】
図25は、外套管200の内部構造を示した概略図である。また、
図26はスライダ208及びスリーブ232の構造を示した図である。
【0158】
第6の実施形態では、内視鏡駆動部212は、内視鏡挿通路204に挿通された挿入部12を遊びをもって進退移動させる。すなわち、内視鏡駆動部212は、挿入部12を進退移動させない非動作領域と、非動作領域以外の領域であって挿入部12を進退移動させる動作領域とを有する内視鏡駆動手段として構成される。内視鏡駆動部212は、後述するスライダ208の他に、例えばモータやギアなどで構成される。内視鏡駆動部212は、制御部214から出力される制御信号に基づいて挿入部12を進退移動させる。本例では、内視鏡駆動部212は、外套管本体202に内蔵されているが、これに限らず、外套管本体202の外部で挿入部12を進退移動させるものであってもよい。
【0159】
スライダ208は、内視鏡挿通路204の内部で進退移動可能な駆動部材である。このスライダ208は、内視鏡挿通路204の内部で進退移動することにより挿入部12を遊びをもって連動して進退移動させる。スライダ208は円筒状に構成され、その内部には遊び部209を構成するガイド孔230を備える。このガイド孔230は軸方向に沿って形成され、その内部にはスリーブ232が収容される。
図26に示すように、スリーブ232の外径D3は、ガイド孔230の内径D5よりも小さく形成される。これにより、スリーブ232は、ガイド孔230の軸方向に沿って移動可能に構成される。
【0160】
スリーブ232の内部には、軸方向に沿って貫通形成された内視鏡保持孔234が設けられる。内視鏡保持孔234の内壁部は円筒状の弾性部材236により構成される。内視鏡保持孔234の内径D1は、挿入部12の外径(内視鏡保持孔234で保持される部分の外径)D2(
図25参照)よりも若干小さく形成される。したがって、内視鏡保持孔234に挿入部12を挿通させることによって、弾性部材236の弾性力によってスリーブ232は挿入部12の外周面に密着された状態で保持される。これにより、スリーブ232は挿入部12と一体的に移動可能となる。
【0161】
スライダ208の軸方向の両端部には、ガイド孔230からスリーブ232が脱落するのを防ぐとともに、スリーブ232の可動範囲を規制するストッパ部238A、238Bが設けられる。各ストッパ部238A、238Bには、挿入部12を挿通可能な開口部240A、240Bが設けられる。すなわち、各開口部240A、240Bの内径D4は、挿入部12の外径D2よりも大きく、かつ、スリーブ232の外径D3より小さく形成される。したがって、挿入部12の外周部にスリーブ232が保持された状態でスライダ208が進退移動すると、挿入部52の進退移動がスライダ208の遊び範囲(ストッパ部238A、238Bで規定される可動範囲)では挿入部12は進退移動しない。一方、スライダ208の遊び範囲を超えて進退移動した場合には、挿入部12に保持されたスリーブ232がストッパ部238A又は238Bに当接して、挿入部12がスライダ208と一体となって進退移動する。
【0162】
図25に示す制御部214は、位置センサ210の検出結果に基づき、内視鏡駆動部212を制御する制御手段である。すなわち、制御部214は、挿入部52の移動量に比例して内視鏡駆動部212におけるスライダ208の進退移動を制御するものである。この制御部214による制御によって、挿入部12は、上記動作領域では挿入部52の移動量に比例して進退移動する。
【0163】
図27は、第6の実施形態の内視鏡装置が操作されるときの様子を示した説明図である。
図27は、挿入部52が手元側から体腔内の患部側に押し込まれるときの様子を示した図である。
【0164】
まず、
図27の(A)部に示す状態から
図27の(B)部に示す状態のように、挿入部52が軸方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作が行われた場合)には、スライダ208のみが進退移動して挿入部12は進退移動しないので、ディスプレイ26に表示される観察画像の範囲は変化しない。このため、挿入部52の微小変位に応じて観察対象の大きさが変動してしまうのを防止することができ、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を得ることができる。
【0165】
これに対し、
図27の(A)部に示す状態から
図27の(C)部に示す状態のように、挿入部52が軸方向に大きく変位した場合(大振幅の進退動作が行われた場合)には、スライダ208の進退移動に連動して挿入部12が進退移動する。これにより、ディスプレイ26に表示される観察画像の範囲が挿入部52の進退移動に追従するように連続的に変更される。これにより、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化するので、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となる。
【0166】
また、図示は省略するが、挿入部52が体腔内の患部側から手元側に引き込まれる場合についても同様である。
【0167】
なお、挿入部52を進退移動させてもディスプレイ26に表示される観察画像の範囲が常に一定となるように挿入部12を進退移動させるように制御することが好ましい。
【0168】
以上の構成によれば、内視鏡挿通路204の内部でスライダ208を進退移動させることにより、挿入部52の進退移動に対して遊びをもって挿入部12が進退移動する。
【0169】
これにより、挿入部52が進退方向に微小変位した場合(小振幅の進退動作を行った場合)に観察対象の大きさが変動してしまうのを防止でき、遠近感を適切に保つことができ、安定した観察画像を提供できる。また、挿入部52が進退方向に大きく変動した場合(大振幅の進退動作を行った場合)には、それに連動して観察画像の範囲が連続的に変更されるので、処置具50の操作に応じて観察対象の大きさが変化し、術者が望む画像を簡単に得ることが可能となり、操作性が向上する。