(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ノズル孔を一方の壁面に有したインク液室を備えたアクチュエータ基板と、前記インク液室の一方の壁面と対向する前記アクチュエータ基板外面に積層された多層膜から成る積層振動板と、該積層振動板に変位をもたらす圧電素子と、前記積層振動板を貫通して形成され、前記インク液室に外部よりインクを供給するためのインク供給孔と、を有したアクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
前記積層振動板の前記多層膜はポリシリコン膜と該ポリシリコン膜以外の他の膜とを含み、前記インクと接触する前記インク供給孔の内壁面には前記他の膜のみが露出していることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の一つとして、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に往復移動させながらインクジェットヘッドからインクの微小液滴を吐出し、記録媒体上に着弾させることにより画像パターンを形成するインクジェットプリンタが知られている。
カラー印刷用のインクジェットヘッドにあっては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクタンクから各色のインクを、インク供給孔を経由して各色毎の共通液室に供給し、各共通液室から各個別液室を経由してノズルに供給している。
最近では、記録が必要な時にのみインクの微小液滴を吐出するように構成されたオン・デマンド方式のインクジェットプリンタが主流になっており、これに装備されるインクジェットヘッドには、個別液室(圧力室)内に設けた圧力発生源としての圧電素子の変位により個別液室内の圧力を高めてノズルからインクを吐出させる圧電式と、ヒータにより液室内のインク中に気泡を発生させることによりインクを吐出させるサーマル方式とに区別される。いずれの方式においても、インクジェットヘッドを駆動させるための駆動ICチップからの駆動信号で圧力発生源を作動させ、ノズルからインク液滴を吐出して記録媒体上に着弾させている。
【0003】
インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドは、インクに接液することから、ヘッドの動作特性、及び長期信頼性を確保するためにインク耐性が求められる。そこでインク耐性を得るために、インクに接触する部位に接液膜を形成することで、インク耐性を確保する方法が採られている。一般にインク耐性を有したインク接液膜としては、二酸化ケイ素(SiO
2膜)、ポリイミド等の樹脂膜、Ta
2O
5またはZrO
2等の金属酸化物などが用いられている。
インクジェットヘッドのインクと接触する部位にこれらのインク接液膜を形成する方法としては、熱酸化法、塗布法、スパッタ法、或いは、蒸着法などが用いられるが、微細でかつ複雑な構造体であるインクジェットヘッドに対して、所望の部分に均質に接液膜を形成することは困難となっている。特に個別液室、或いは個別液室へインクを導入するためのインク供給路内に接液膜を均質に形成することが困難である。
【0004】
特許文献1には、振動板を貫通して形成された液体供給路から振動板に対する液体の浸漬を防止するために、保護膜によって液体供給路の内周面を被覆する構成が開示されている。保護膜として、SiO
2膜を多層に形成する構成が記載されている。
特許文献2は、振動板を貫通して形成されるインク供給路に関連した内容ではないが、流路形成部材とアクチュエータ形成部材の接合信頼性を向上させる目的で、流路形成部材とアクチュエータ形成部材の接合に際して、それぞれの接合面に耐腐食性膜を形成し、接合することによって、接合性を確保する構成が開示されている。耐腐食性膜としては、一方に酸化シリコン膜、他方に有機樹脂薄膜であるポリペンゾオキサゾール膜を形成する構成が記載されている。
【0005】
しかし、何れの従来例においても、微細でかつ複雑な構造体であるインクジェットヘッドに対して、所望の部分に均質に接液膜を形成することは困難である。特に、インク供給路内に接液膜を均質に形成することは困難である。
また、圧電素子を用いたインクジェットヘッドでは、圧電素子の変位をインク液室へ作用させるために、振動板が用いられるが、インク供給孔は振動板を貫通して形成する必要がある。この場合、振動板の貫通断面がインクと接触するために、貫通断面にはインクへの耐性が求められる。
振動板は、剛性、硬度等の所望の特性を得るために異種の膜を積層して構成される場合が多い。この場合、インク耐性が十分にない膜層がインクによって侵食されるという問題が生じる。例えば、振動板の構成材料として、ポリシリコン膜を用いた場合、振動板として所望のヤング率は得られるものの、特にアルカリ系インクに対する耐性が劣ることから、侵食による振動板の剥がれ、或いはインクのリークなどの課題が生じている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)のアクチュエータ部分の構成を示す分解斜視図であり、
図2は組立状態のA−A断面図である。
アクチュエータ1は、サブフレーム基板10の下面に、アクチュエータ基板20とノズル基板30を順次積層状態で接着接合して構成されている。
サブフレーム基板10はシリコン基板により形成されており、外部(インクタンク)からインクを供給するためのインク供給用開口11が貫通形成されると共に、アクチュエータ保護キャビティ12が下面に形成されている。上記以外にも外部への電気配線の取り回し用開口、及びアクチュエータ基板20との接合アライメント用マーク等が形成されているが、本発明とは直接的な関連性がないため説明は省略する。
【0011】
アクチュエータ基板20はシリコン基板により形成されており、シリコン基板上に形成された薄肉部分である振動板(積層振動板)24の上面であって、各インク液室22と対向する部位には、夫々電極膜、ピエゾ膜、電極膜のサンドイッチ構成から成るアクチュエータ素子21が形成されている。また、各アクチュエータ素子21を絶縁保護するためのアクチュエータ保護膜25、及び外部駆動回路への信号を伝達するためのメタル配線26、及びメタル配線26を絶縁保護するための配線保護膜27が形成されている。またアクチュエータ素子21の他方の面には、振動板24を介してインク液室22が形成されている。インク液室22には個々のビットに形成されたインク供給孔23を通じて、外部よりインクがインク液室22内に供給される。インク液室22は、流路隔壁22aにより区画されることにより複数個隣接して形成されている。
このように構成されたアクチュエータ基板20の下面に、個々のビットに応じたノズル孔31が形成されたノズル基板30が接合される。ノズル基板30としては、SUS材にプレス加工でノズル孔31を形成したもの、或いはNi電鋳工法によって、Ni基板上にノズル孔31を形成したものを用いる。
【0012】
次にインク及びインク流路に関して説明する。インクジェットではアルカリ系のインクが広く用いられており、インクに接触する部位ではインク耐性を確保する必要があり、各接触部位には相応のインク接液膜が形成されている。本実施形態においてもサブフレーム基板10のインク供給用開口11、及びアクチュエータ基板20のインク液室22内壁には、夫々相応のインク接液膜が形成されているが、前述したように微細なインク供給孔23の内壁に接液膜を均質厚に形成することは困難となっている。上記のように構成されたアクチュエータにおいては、インク供給孔23は振動板24を貫通して形成されるため、貫通断面がインクの接触することになる。その際に振動板を構成する材料、膜がインク耐性を有していないと、側面より侵食されることとなる。本実施形態では、このような不具合に対処するために、インクジェットヘッドの製造工程中において振動板24を製造する際に、インク供給孔23と対応した領域(貫通領域)のインク耐性が弱い膜を取り除くようにした点が特徴的である。
【0013】
次に、本発明の第一の実施形態としてのアクチュエータ1の形成方法(アクチュエータ基板上に積層振動板を形成する方法)について説明する。
図3は本発明における振動板24を含むアクチュエータ1の形成方法(製造工程)を示す図である。
まず、
図3(a)に示すように、シリコン基板であるアクチュエータ基板20の面上にシリコン酸化膜25−1を形成する。ここではシリコン酸化膜25−1は熱酸化法によって形成されている。次に振動板としての剛性及び強度を得るためにポリシリコン膜25−2をシリコン酸化膜25−1の上に積層形成する。ポリシリコン膜25−2は周知のCVD法によって形成する。ポリシリコン膜25−2はアルカリ系インクに対して耐性を有しないため、インクに接触した場合に侵食される課題がある。
そのため
図3(b)に示すように、インク供給孔23を形成する領域(貫通領域)Bにあるポリシリコン膜25−2を部分的に除去する。除去方法はリソグラフィ及びエッチングによるものである。
【0014】
次に
図3(c)に示すように、ポリシリコン膜25−2の上に、シリコン酸化膜25−3を形成する。次いで
図3(d)に示すように、シリコン窒化膜25−4、シリコン酸化膜25−5を順次積層形成し、その上にポリシリコン膜25−6を形成する。シリコン窒化膜25−4、及びシリコン酸化膜25−5もCVD法によって形成する。
次に
図3(e)に示すように、形成されたポリシリコン膜25−6をインク供給孔領域Bに相当する部分のみ、
図3(b)と同様にリソグラフィ、エッチングによって除去し、パターンを形成する。
最後に
図3(f)に示すように、ポリシリコン膜25−6上に最上層のシリコン酸化膜25−7を形成し、インク供給孔23が形成される領域Bのみ、ポリシリコン膜25−2、25−6が除去された振動板24が形成される。これによってインク供給孔23が形成される領域Bの振動板24からポリシリコン膜25−2、25−6が除去され、その結果、シリコン酸化膜25−1、25−3、25−5、25−7と、シリコン窒化膜25−4のみで構成されるため、インク耐性が確保される。
【0015】
図3に示した製造工程によって製造されたアクチュエータ1を備えたインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)は、次の如き特徴を有している。
即ち、シリコン基板(アクチュエータ基板)20に形成されたインク液室22及び該インク液室の壁面の一部を構成する振動板24と、該振動板に変位をもたらす圧電素子、及びインク液室にインクを外部より供給するためのインク供給孔23が備えられたアクチュエータ1を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、振動板24が多層膜より形成される積層振動板であって、かつインク供給孔23が振動板を貫通して形成される場合に、インク供給孔が貫通形成される積層振動板の領域の積層構成と、該領域以外の他の振動板領域の積層構成が異なる構成であることが特徴的である。
これを換言すれば、本発明の液滴吐出ヘッドは、ノズル孔31を一方の壁面に有したインク液室22を備えたアクチュエータ基板20と、インク液室の一方の壁面と対向するアクチュエータ基板外面に積層された積層振動板24と、該積層振動板に変位をもたらす圧電素子と、積層振動板を貫通して形成され、インク液室22に外部よりインクを供給するためのインク供給孔23と、を有したアクチュエータ1を備え、積層振動板24の積層構成は、インク供給孔が貫通する領域(貫通領域)Bと、それ以外の領域とで異なっていることを特徴とする。
具体的には、インク供給孔23が形成される領域Bにのみ振動板を構成する積層膜の一部膜層が取り除かれている。取り除かれている一部膜層は、インクに対する耐性の低い材質である。
また、一部取り除かれる膜層は、リソグラフィ、エッチングによって、パターン形成されている。
【0016】
次に振動板24を形成した以降のアクチュエータ部分の形成方法について
図4乃至
図6を用いて説明する。
まず
図4(a)に示すように、アクチュエータ基板20を構成するシリコン基板上に、
図3に示した工程によって振動板24を形成する。振動板24は、インク供給孔領域Bに相当する部分に凹所を有し、この凹所内はインクに対する耐性が低いポリシリコン膜25−2、25−6が除去された構成となっている。
次に
図4(b)に示すように、振動板24上にアクチュエータ素子21を形成する。アクチュエータ素子21は下部電極を構成するTi層、Pt層、SRO層によって形成されている。ついで圧電素子となるPZT膜をゾルゲル法によって所望の厚みに形成する。さらにPZT膜上に上部電極を構成するSRO層、Pt層を形成する。
【0017】
次に
図4(c)に示すように、積層されたこれらのアクチュエータ素子21を、リソグラフィ及びエッチングによって所望のパターンサイズに加工形成する。本例では、アクチュエータ素子21を構成する層を所要サイズの凸部状に構成する。ついでアクチュエータ素子21の絶縁保護膜としてのアクチュエータ保護膜25を、振動板24の上面と凸状のアクチュエータ素子21の外面にかけて積層形成する。アクチュエータ保護膜25にはAl2O3膜或いはシリコン酸化膜等を用いている。
次に
図4(d)に示すように、外部回路へ電気信号を伝達するためのメタル配線26を構成する膜をアクチュエータ保護膜25上に均一に積層形成する。メタル配線はスパッタ法によりAL膜を形成している。
次に
図4(e)に示すように、メタル配線を構成する膜をリソグラフィ、及びエッチングによって所望のパターンサイズに加工してメタル配線26を形成する。
【0018】
次に
図5(f)に示すように、メタル配線26の絶縁保護膜としての配線保護膜27をアクチュエータ保護膜25とメタル配線26の外面に積層形成する。配線保護膜27はプラズマCVD法によりシリコン窒化膜を形成している。ここで、メタル配線26及び配線保護膜27は駆動用電気信号の伝達機能に加えて、サブフレーム基板10との接合領域として用いている。
図5(g)では、配線保護膜27を図示しないマスクを用いてエッチングすることにより選択的に除去する。この結果、アクチュエータ素子21に相当するアクチュエータ保護膜25部分と、インク供給孔23に相当するアクチュエータ保護膜25の部分が露出される。
アクチュエータ基板20の接合領域の構成としては、下部より振動板24、アクチュエータ保護膜25、メタル配線26、配線保護膜27が積層された構造となっており、配線保護膜27の高さはアクチュエータ素子21よりも高くなっている。
次に
図5(h)、(i)に示すように、インク供給孔23を形成するために(g)までの工程で積層された膜の上面にレジストパターン28を形成する。さらにドライエッチング法によって、
図3においてポリシリコン層の除去された領域Bに相当する振動板24部分を貫通開口し、インク供給孔23が形成される。
【0019】
次に
図6(j)に示すように、アクチュエータ素子21と反対側の面にインク液室22を形成するためのレジストパターン28を形成し、次いで(k)に示すように、インク液室(インク供給孔23)に対応するレジストパターン28部分にエッチングによって開口を形成する。
次に
図6(l)に示すように、レジストパターン28をマスクとしてドライエッチングによってアクチュエータ基板20に、インク供給孔23と連通したインク液室22を形成する。ドライエッチングは誘導結合型(ICP)方式によるドライエッチングを用いている。
アクチュエータ基板にはインク液室22を2つに仕切る壁22Aを形成し、この壁22Aには壁の両側を連通させるために流体抵抗部29を形成する。
図6(m)に示すように、このようにして形成した積層体の上面のアクチュエータ基板20にサブフレーム基板10を積層し、下面にノズル基板30を接着接合することで、インクジェットヘッドのアクチュエータ部分1が形成される。
【0020】
本発明によれば、圧電素子と、積層振動板と、積層振動板を貫通して形成されるインク供給孔を有した液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)において、インク供給孔内のインク耐性確保と、振動板の特性確保の両立を実現できる。
即ち、積層振動板を形成する段階で、インク供給孔が形成される積層振動板の一部領域のみ、インク耐性が弱い材料を取り除いた積層構成とすることで、インク供給孔内壁にインク耐性が弱い材料が露出することが防止される。それによってインク供給孔内壁のインク耐性を確保できることになる。
【0021】
従来、例えば、積層振動板を構成する材料の一つとしてポリシリコン膜が知られているが、ポリシリコン膜は振動板としての剛性或いは強度は優れるものの、インク耐性が弱いという課題がある。単にポリシリコン膜を用いた場合にはインク供給孔内壁に露出することとなり、インクに侵食され、振動板としての信頼性を損なうこととなる。特にポリシリコン膜等のシリコン材料は、インクジェット用インクとして広く用いられるアルカリ系インクに対して、耐性が弱く、課題となっている。
本発明では、振動板を形成する過程で、ポリシリコン膜を形成した後に、インク供給孔が形成される領域のポリシリコン膜を取り除き、さらにポリシリコン膜上に所望の振動板膜を形成して積層振動板を構成する。これによって、インク供給孔を貫通形成する際に、供給孔の内壁にポリシリコン膜が露出せず、インク供給孔内壁のインク耐性が確保されるものである。
この結果、振動板特性を維持しつつ、インク供給孔のインク耐性を確保できる。またインク供給孔のインク耐性が向上することでインクの適用性が広がる。
なお、前記実施形態では、取り除かれる膜としてポリシリコン膜を示したが、これは一例に過ぎない。
【0022】
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッド或いは液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置の一例について
図7及び
図8を参照して説明する。なお、
図7は同装置の全体構成を説明する側面図、
図8は同装置の要部平面図である。
この画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ104でタイミングベルト105を介して矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ103には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド107を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、記録ヘッド107を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータを用いたものを使用している。
また、キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色のインクを供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108には図示しないインク供給チューブを介してメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
この実施形態では、サブタンク108と記録ヘッド107で本発明に係る液滴吐出ヘッドを構成しているが、記録ヘッド107を本発明に係る液滴吐出ヘッドで構成し、別途サブタンク108を設ける構成とすることもできるし、或いは、サブタンクを用いないでインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
【0023】
一方、給紙カセット110などの用紙積載部(圧板)111上に積載した用紙112を給紙するための給紙部として、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)113及び給紙ローラ113に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114を備え、この分離パッド114は給紙ローラ113側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙112を記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部として、用紙112を静電吸着して搬送するための搬送ベルト121と、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ122と、略鉛直上方に送られる用紙112を略90°方向転換させて搬送ベルト121上に倣わせるための搬送ガイド123と、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢された先端加圧コロ125とを備えている。また、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ126を備えている。
【0024】
ここで、搬送ベルト121は、無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ127が回転されることで、
図8のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト121の裏面側には記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。
また、
図7に示すように、搬送ローラ127の軸には、スリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134及びセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
【0025】
また、キャリッジ103の前方側には、
図7に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール142を設け、キャリッジ103の前面側にはエンコーダスケール142のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ143を設け、これらによって、キャリッジ103の主走査方向位置(ホーム位置に対する位置)を検知するためのエンコーダ144を構成している。
さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部と、排紙ローラ152及び排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154とを備えている。
また、背部には両面給紙ユニット161が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット161は搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト121との間に給紙する。
【0026】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙112が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙112はガイド115で案内され、搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125で搬送ベルト121に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
【0027】
そこで、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト121を逆回転させることで、記録済みの用紙112を両面給紙ユニット161内に送り込み、用紙112を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベルト121上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ154に排紙する。
なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、これらの複合機などにも適用することができる。また、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液滴吐出ヘッド、或いはこれらを備える画像形成装置にも適用することができる。