特許第6024276号(P6024276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6024276-静電荷像現像用トナー及びその製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024276
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20161107BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G03G9/08 311
   G03G9/08 325
   G03G9/08 331
   G03G9/08 381
【請求項の数】9
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2012-178633(P2012-178633)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-35542(P2014-35542A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕士
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−107366(JP,A)
【文献】 特開2011−053657(JP,A)
【文献】 特開2010−134024(JP,A)
【文献】 特開2010−217269(JP,A)
【文献】 特開2012−118499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記樹脂微粒子(A)が、アニオン性のビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記アニオン性のビニル系樹脂が、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩から成る共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記樹脂微粒子(A)の体積平均粒子径が5〜50nmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記スチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)と前記結着樹脂とが非相溶性であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、該ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が20℃以上50℃未満であり、結着樹脂中の含有量が50質量%以上100質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv)/(Dn)が1.00〜1.30であることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成され、
且つ、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いる画像形成技術の高画質化に対応できる静電荷像現像用トナーとその製造方法に関し、詳しくは、トナー用樹脂、着色剤等を含有するトナー材料液(油相)を水系媒体(水相)中で造粒してトナー粒子とする重合法による静電荷像現像用トナーの製造方法と静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成関連市場では画像の高品質化のためにトナーの小粒径化や、省エネルギーのために低温定着が要求されているほか、特に、省エネルギーのために、画像形成装置を使用可能な状態にしてから画像形成が可能となるまでの待機時間、所謂、装置のウォームアップタイムに要する電力量を可能な限り小さくするために、待機時間の短縮が強く要望されている。
【0003】
しかし、通常の混練粉砕法により得られるトナーは、技術的に小粒径化が限界に近づきつつあり、その形状は不定形で、粒径分布はブロードとなり、定着エネルギーが高いなど様々な問題点があった。粉砕法で作製された混練粉砕型のトナーは、粉砕が離型剤(ワックス)の界面で割れて起こるためにワックスが表面に多く存在する。そのため、特に定着において、離型効果が出やすくなる一方、キャリアや感光体、更にブレードへの付着が起こりやすく、性能としては不満足なものであった。
【0004】
前記混練粉砕法による問題点を克服するために、重合法によるトナーの製造方法が提案されている。この重合法は、トナーの小粒径化が容易であり、粒度分布も、粉砕法によるトナーの粒度分布に比べてシャープな分布である上、ワックスの内包化も可能である。
例えば、乳化重合凝集法についての提案がなされている(特許文献1及び2参照)。
また、前記乳化凝集法の抱える界面活性剤の使用における問題点を改良した技術についての提案もなされている(特許文献3及び4参照)。
【0005】
また、トナーの流動性改良、低温定着性改良、及びホットオフセット性改良を目的としたトナーとして、トナーバインダーとしてウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からなるWadellの実用球形度が0.90〜1.00の乾式トナーが提案されている(特許文献5参照)。
また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性、転写性に優れるとともに、耐熱保存性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れた乾式トナーについての提案もなされている(特許文献6、7及び8参照)。
これらの提案のトナーの製造方法は、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを有機溶媒及び水系媒体中でアミンと重付加反応させる高分子量化工程と、加温等による有機溶媒を除去する工程とを含むものであり、特に特許文献8には、反応開始剤の分解物や残留溶媒などの量を効率よく抑制し、臭気などがなく、粒子径が均一で粒度分布の狭いトナーを得るために有機溶剤除去工程時における有機溶媒の除去方法について詳細に述べられている。
また、重合トナーの製造時における液面コントロールにより、粒度分布をシャープにしたり、効率的に残留重合性単量体を除去する方法が提案されている(特許文献9及び10参照)。
【0006】
しかし、重合トナーの製造方法においては、品質の確保と共に、効率のよい生産性を達成することも重要である。特に、トナー組成物を有機溶媒に溶解又は分散した油相を水系媒体中で乳化分散した乳化分散液を貯槽に溜め、この貯槽中の乳化分散液から、加温下で有機溶媒を除去する工程を有する重合トナーの製造方法においては、槽内の皮張り又は付着は大きな問題となり得る。この問題に対し、一般的に、槽内の洗浄に、高圧水や溶剤を用いたりして対処しているが、貯槽中の乳化分散液面上部に発生する皮張り物又は付着物は固化して除去するのが困難なものになっている。特に、連続式で乳化分散液を得るような工法では、バッチ式とは異なり、得られる乳化分散液が変動する場合が多く見受けられることから熱特性を代表とする品質を安定に保ちながら、効率良く連続生産するのは非常に難しい。また、乳化分散液を加温することにより、乳化分散液の安定性が低下して凝集による粗粉の発生も確認されるため、効率のよい生産性の達成に対して大きな障害となっている。
【0007】
このため、低温での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、低温定着性と耐熱保存性を両立し、長期使用においても高画質が得られる、小粒径かつ粒度分布の狭いトナー、並びに該トナーを用いた現像剤、及び画像形成方法の提供が望まれており、結着樹脂の1/2法による軟化点Taと、トナーの1/2法による軟化点Tbとの差(Tb−Ta)を制御することにより前期課題を克服する方法が提案されている(特許文献11参照)。しかし、この提案に記載されたトナーの製造方法では、低温定着性への効果が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、長期使用においても高画質が得られる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明の静電荷像現像用トナー及びその製造方法においては、高画像品質の確保に必要とされるトナー特性(低温での離型性、フィルミングの発生抑制、小粒径、且つ狭い粒度分布等)を達成することを目標とする。
以降、「静電荷像現像用トナー」を「トナー」と略称することがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に、アニオン性の微粒子(A)を含有する樹脂微粒子層Aと、特定の粒径とガラス転移温度を有するスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有する樹脂微粒子層Bを有する構成(但し、樹脂微粒子層Aは少なくとも層Bの外側に形成された構成)としたトナーによって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
即ち、上記課題は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることを特徴とする静電荷像現像用トナーにより解決される。
【0010】
また、上記課題は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成され、
且つ、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法により解
決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の静電荷像現像用トナー及びその製造方法は、前記(I)〜(V)の工程を含み、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に、アニオン性の微粒子(A)を含有する樹脂微粒子層Aと、体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を有し、樹脂微粒子層Aが少なくとも層Bの外側に形成された構造を有するので、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、長期使用においても高画質が得られる。また、低温での離型性に優れ、フィルミングの発生がなく、粒度分布が狭く小粒径であるトナーが得られるので画像品質が安定して確保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るトナーにおいてトナー母体粒子表面に樹脂微粒子層B(内側)と樹脂微粒子層A(外側)とを有することを示すTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述のように本発明における静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーであって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の樹脂微粒子(A)を含有し、前記樹脂微粒子層Bは体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることを特徴とするものである。
また、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造される。
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を必要に応じて図面を参照にして説明する。なお、いわゆる当業者は上記に示した本発明の態様について適宜変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正は本発明に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の好ましい実施形態における例であって、本発明を限定するものではない。
本発明において、「スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)」を「樹脂微粒子(B)」、「アニオン性の樹脂微粒子(A)」を「樹脂微粒子(A)」、「トナー母体粒子」を「トナー粒子」、と略称することがある。
また、「トナー材料液」を「(油相)」、「水系媒体」を「水相」、「トナー材料液の乳化乃至分散体」を「液滴」と呼称することがある。また、前記(I)〜(V)を含む工程により製造される静電荷像現像用トナーを、「重合法によるトナー」あるいは「重合トナー」と称することがある。
【0015】
上述のように、本発明のトナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー材料を含むトナー母体粒子(トナー粒子)表面に、樹脂微粒子を含有する第1と第2の被覆層を有し、最外殻(第2の被覆層)の被覆層(樹脂微粒子層A)は、樹脂微粒子(A)を含有する。樹脂微粒子(A)の体積平均粒子径としては5nm〜50nmが好ましい。また、第2の被覆層(樹脂微粒子層B)は、体積平均粒子径が10nm〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃である樹脂微粒子(B)から形成されるのが好ましく、前期樹脂微粒子(B)のガラス転移温度は結着樹脂主成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
【0016】
本発明のトナーは、前記(I)〜(V)の工程を含む重合法により製造されるものであり、少なくとも結着樹脂(及び/又は結着樹脂前駆体等)、着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料の溶解又は分散液を作成し、前記トナー材料の溶解又は分散液をアニオン性の樹脂微粒子(A)と、好ましくはアニオン性界面活性剤とを含む水系媒体中に添加して乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を作成し、前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去しトナー母体粒子(トナー粒子)を形成した後、該トナー粒子を水(例えば、イオン交換水)で洗浄して伝導度を調整し、イオン交換水に分散させて分散液を作成し、該分散液を攪拌下で加熱処理して得られるトナーである。なお、有機溶媒の除去前に、樹脂微粒子(B)を樹脂微粒子(A)と同時又は非同時に水系媒体中に添加することが必要である。
【0017】
上記のように、樹脂微粒子(B)は、樹脂微粒子(A)と同時又は非同時に水系媒体中に添加されてトナー材料液の乳化乃至分散液が形成される。製造されたトナーの体積平均粒径(Dv)は、1〜6μmであることが好ましい。また、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv)/(Dn)が1.00〜1.30であることが好ましい。ここで、前記樹脂微粒子(A)の体積平均粒子径(5〜50nm)は樹脂微粒子層Bの体積平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
また、後述するように、樹脂微粒子(A)が、アニオン性のビニル系樹脂であることが好ましく、特にスチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルから成る共重合体であることが好ましい。
上記のようにして得られたトナーは、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー材料を核としたトナー粒子本体の表面に、樹脂微粒子(B)が付着した被覆層を形成し、更にその被覆層の外側に樹脂微粒子(A)が付着した層構造を形成している。なお、トナーの体積平均粒子径は、乳化工程における水系媒体の攪拌等の乳化乃至分散条件により調整される。
【0018】
前記トナー材料液の乳化乃至分散液を作成する工程(II)において、水系媒体中に平均粒子径10nm〜200nmの樹脂微粒子(B)を添加する。樹脂微粒子(B)は水系エマルションとして使用し、樹脂微粒子(B)の添加は、アニオン性の樹脂微粒子(A)やアニオン性界面活性剤を添加する前、又は後の水系媒体でもよいし、水系媒体にトナー材料の溶解又は分散液を添加した後、又はさらにこの水系媒体を攪拌等により乳化しながら若しくは乳化後でもよい。つまり、本製造方法によれば、乳化前、もしくは乳化後、に樹脂微粒子(B)が添加される。すなわち、有機溶媒の除去前に樹脂微粒子(B)を樹脂微粒子(A)と同時又は非同時に水系媒体中に添加する。
このタイミングではトナー組成物の液滴に有機溶媒が存在しているため、樹脂微粒子(B)は液滴表面に付着した後に液滴表面からある程度進入し、有機溶媒が除去された後にトナー表面に付着固定化されるといった望ましい形態を実現することができる。
すなわち、次の有機溶媒を除去する工程(III)で、トナー材料を核としたトナー粒子本体の表面に樹脂微粒子(B)が付着するように添加すればよい。
【0019】
トナー母体粒子(トナー粒子)を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)において洗浄されたトナー粒子分散液の伝導度は、後述のように、0.1μS/cm〜1000μS/cmであることが好ましい。これにより、加熱処理を施してもBET比表面積が十分に低下せず、トナーの付着力が増大する。
洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)においては、加熱処理の温度を、後述のように、前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の±10℃以内に設定するのが好ましい。これにより、BET比表面積が十分に低下せずトナーの付着力が増大する。
【0020】
近年、トナーバインダー用ポリエステルでは、定着時の消費電力削減による環境負荷の低減などから、分子量を低くし溶融粘性を低下させたものが使用される傾向にある。しかし、トナーの保存安定性の観点から結着樹脂及びトナーのガラス転移温度は40℃〜60℃である事例が多く見られる。これらの事例ではトナーの保存安定性は確保されるものの、トナーの溶融粘性を十分な低温定着性が発現されるレベルまで低下させることが困難である。一方、本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する構成であるため、結着樹脂のガラス転移温度を低下させることが可能となり、その結果、トナー全体の溶融粘性を下げて低温定着性を発現させると共に、トナー粒子(結着樹脂)の外側に形成された2層を有する被覆層により、トナーの低温定着性を阻害することなく、保存安定性を担保できることを見出した。
【0021】
樹脂微粒子層B(第2の被覆層)は、樹脂微粒子(B)から形成される。前述のように、樹脂微粒子(B)はスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂を含有し、そのTgは40〜80℃であることが好ましく、より好ましくは50〜60℃である。Tgが40℃未満ではトナーの保存温度帯での十分な耐熱保存性が得られず、トナー粒子同士の凝集が発生してしまう。Tgが80℃を超えると耐熱保存性が発現できるもののトナーの低温定着性を阻害する場合がある。
一方、前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上50℃未満が好ましく、より好ましくは20〜35℃である。Tgが20℃未満ではトナーの保存温度帯での十分な耐熱保存性が得られず、トナー粒子同士の凝集が発生してしまう。Tgが50℃以上では耐熱保存性が発現できるもののトナーの低温定着性を阻害する場合がある。
【0022】
一般に、トナーが現像機に充填された場合、主に現像機内部での機械的ストレスによってトナー表面の樹脂微粒子が、トナーの内部に埋め込まれたり、トナー粒子本体の表面の凹部に移動したりして、付着力の低減効果が失われる。また、外添剤が同様のストレスにさらされることによってトナー内部に埋没し、トナーの付着力が増大する。
しかし、本発明の製造方法により得られるトナーは、樹脂微粒子(B)が比較的大きくトナー粒子本体に埋没しにくい。樹脂微粒子(B)としては、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体であることが好まく、特にスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂の微粒子であることが好ましい。このような樹脂微粒子(B)は、架橋されていて比較的硬いことから、現像器内での機械的ストレスによってトナー粒子表面で変形することなく、スペーサ効果も保持するため、外添剤の埋没も防止され、上述の付着力維持にはさらに適している。特に、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体ではスチレン単独での微粒子よりも架橋密度の制御が比較的容易であることや、反応条件/触媒等でブタジエンのcis-trans比率の制御が可能であることから調整弾性の付与/調整も容易となることから好ましい。
【0023】
上記のようにトナーの表面には、少なくとも一次平均粒径が10〜200nmの大微粒子[樹脂微粒子(B)]が付着固体化されていることが好ましく、特に50〜150nmの微粒子が付着固体化されていることが好ましい。樹脂微粒子(B)の一次平均粒径が10nmよりも小さい場合には、スペーサ効果が十分に得られないためトナー粒子の非静電的付着力を低減することができず、さらに、高速機のように経時での機械的ストレスの大きい場合には、トナーの表面に樹脂微粒子(B)や外添剤が埋没しやすくなり、長期に渡り十分な転写効率を維持することができない恐れがある。また、樹脂微粒子(B)の一次平均粒径が200nmよりも大きい場合には、トナーの流動性が悪くなることや被覆層が厚くなることにより低温定着性が阻害される恐れがある。
【0024】
前記樹脂微粒子(B)と前記結着樹脂とが非相溶性であることが好ましく、重要である。この場合、結着樹脂がポリエステル系樹脂であることが好ましい。即ち、結着樹脂がポリエステル系樹脂である場合には、特に樹脂微粒子(B)がスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂を含有する微粒子とほとんど相溶性がない。
つまり、乳化工程(II)において、乳化前又は乳化後に樹脂微粒子(B)が添加された時にトナー材料の液滴に有機溶媒が存在しているため、樹脂微粒子(B)は液滴表面に付着した後に溶解してしまう場合があるが、トナー粒子を構成する結着樹脂成分がポリエステル樹脂であり、樹脂微粒子(B)がスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂を含有する樹脂微粒子である場合、双方の樹脂同士の相溶性が悪いために樹脂微粒子(B)はトナー材料の液滴と相溶せずに付着した状態で存在する。したがって、樹脂微粒子(B)が液滴表面からある程度進入し、有機溶媒が除去された後にトナー表面に付着固定化されるといった望ましい形態を実現することができる。
なお、「相溶性」であるか「非相溶性」であるかは、未変性な結着樹脂を有機溶媒に対して50%の重量比率で溶解させ、その溶液に各種溶液を加えたときに、二層に分離した場合は非相溶性、分離しない場合は相溶性であると目視で判断して行う。
例えば、トナー粒子表面に樹脂微粒子(B)が付着固定化した構造を取るには、トナー材料を有機溶媒に溶解または分散し、このトナー前駆体の溶解または分散液をアニオン性界面活性剤とアニオン性の樹脂微粒子(A)(体積平均粒子径が5〜50nm程度)が含まれる水系媒体中で乳化乃至分散し、有機溶媒を除去した後に加熱処理を施してトナーを製造する際に、有機溶媒を除去前に水系媒体中へ体積平均粒子径が10〜200nmでガラス転移温度が40〜80℃であるスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン樹脂微粒子(B)を添加する。
【0025】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、そのガラス転移温度が20℃以上50℃未満であることが好ましく、結着樹脂中の含有量が50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。前述のようにガラス転移温度(Tg)が上記20℃未満ではトナー保存温度における耐熱保存性が十分得られず、トナー粒子同士の凝集が発生する。ガラス転移温度が50℃を超えるとトナーの低温定着性を阻害する場合がある。
また、ポリエステル系樹脂の結着樹脂中の含有量が50質量%未満であると、加熱定着時にトナーを均一に融解させることが困難であることから、低温定着性を阻害する場合がある。
また、前記結着樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結晶性ポリエステルを含むことにより、低温定着性やトナー画像の光沢性等の向上を図ることができる。
あるいは、前記結着樹脂として活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含むことができる。活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含むことにより、後述のように、樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没を抑制することができ、またトナーの加熱定着時の流動性を調節することができる。
【0026】
前記(I)〜(V)を含む工程により製造された本発明のトナーは、トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有し、樹脂微粒子層Aが少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成された構造を備えている。図1に本発明のトナーの表面構造をTEMで調べた写真を示す。図1の写真はトナー母体粒子表面に樹脂微粒子層B(内側)と樹脂微粒子層A(外側)とを有することを示している。
本発明における製造工程とトナー材料液、水系媒体を用いることにより、樹脂微粒子(B)の添加時期に影響されず図1に示すような構造を形成する。2層構造を形成する詳細理由については明確ではないが、以下のように推定している。
即ち、前記樹脂微粒子Bは、前記アニオン性界面活性剤を含む水系媒体中で凝集体を生成する性質を有することから、本発明の製造方法において樹脂微粒子Bが添加された時に、乳化時又は乳化後に水相側に存在していた樹脂微粒子Bがトナー材料の液滴表面に移動し、容易にトナー材料の液滴表面に付着することができる。すなわち、前記アニオン性界面活性剤を含む水系媒体中では、前記樹脂微粒子Bが不安定で、通常であれば凝集してしまうところ、トナー材料の液滴があるとトナー材料の液滴との引力が強い場合、異種粒子の複合体が形成されると考えられる。
【0027】
本発明における静電荷像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記樹脂微粒子層Aはアニオン性の微粒子(A)を含有し、樹脂微粒子層Bはスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含有すると共に、樹脂微粒子層Aは少なくとも層Bの外側に形成され、
且つ、前記トナーは、結着樹脂及び着色剤を含むトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散してトナー材料液を形成する工程(I)と、
前記トナー材料液、樹脂微粒子(A)およびスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B)を含むトナー材料液の乳化乃至分散液を形成する工程(II)と、
前記トナー材料液の乳化乃至分散液から有機溶媒を除去してトナー母体粒子を形成する工程(III)と、
前記形成され水中に分散したトナー母体粒子を水で洗浄して伝導度を調整する工程(IV)と、
前記洗浄され水中に分散したトナー母体粒子を攪拌下に加熱処理する工程(V)と、
を含む工程により製造されることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法における工程(I)〜(V)に関しては前記本発明のトナーにおいて説明したのと同様であるが、さらに詳細説明を以下に付記する。
本発明のトナー製造方法は、前記工程(IV)で伝導度が調整される。これにより調整され洗浄されたトナー母体粒子分散液の伝導度(工程(V)の分散液)が0.1μS/cm〜1000μS/cmであることが好ましく、特に0.1μS/cm〜50μS/cmが好ましい。伝導度が50μS/cmよりも高い場合には、加熱処理を施してもBET比表面積が十分に低下せず、トナー表面上の凹部に外添剤が移動し、トナーの付着力が増大する。また、伝導度が0.1μS/cmよりも低い場合には、トナー粒子同士の凝集が発生し、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が高くなり、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなる恐れがある。
【0029】
本発明のトナー製造における上記工程(V)において、加熱処理の温度が前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の±10℃以内であることが好ましい。なお前述のように、結着樹脂(好ましくはポリエステル系樹脂)のTgは20℃以上50℃未満が好ましい。
加熱温度が結着樹脂のTgよりも10℃を超える場合には、BET比表面積が十分に低下せず、トナー表面上の凹部に外添剤が移動し、トナーの付着力が増大する。また、加熱温度が結着樹脂のTgよりも15℃以上高い場合には、トナー粒子同士の凝集が著しく、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が高くなり、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなる。
例えば、有機溶媒を除去してトナー粒子を形成した後、該トナー粒子を含む水を40〜60℃で加熱処理し、樹脂微粒子(B)を付着固定化する。乳化ないし分散においては、必要に応じて、油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
【0030】
本発明のトナー製造方法は、前記工程(V)における加熱時間が10分から600分であることが好ましく、特に30分から120分が好ましい。加熱時間が10分よりも短い場合には、BET比表面積が十分に低下せず、トナー表面上の凹部に外添剤が移動し、トナーの付着力が増大する。また、加熱時間が600分よりも長い場合には、トナー粒子同士の凝集が発生し、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が高くなり、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなる恐れがある。
【0031】
樹脂微粒子(B)はアニオン性界面活性剤を含む水系媒体中で凝集体を生成する性質を有すことが好ましい。本発明の製造方法におけるトナー材料液の乳化乃至分散液(液滴)を形成する工程(略称、乳化工程)(II)で、乳化前又は乳化後に樹脂微粒子(B)が添加された時に、樹脂微粒子(B)がトナー材料の液滴に付着せずに独立して安定に存在することは好ましくない。分散剤(例えば、アニオン性界面活性剤)を含む水系媒体中で樹脂微粒子(B)が凝集体を作る性質を有すことによって、乳化時、もしくは乳化後に水相側に存在していた樹脂微粒子(B)がトナー材料の液滴表面に移動し、容易にトナー材料の液滴表面に付着することができる。すなわち、分散剤(例えば、アニオン性界面活性剤)を含む水系媒体中では、樹脂微粒子(B)が不安定で、通常であれば凝集してしまうところ、トナー材料の液滴があるとトナー材料の液滴との引力が強い場合異種粒子の複合体が形成される。
得られた複合体はそのままでも強固な接着力を示すが、乳化後樹脂微粒子がトナー材料の液滴表面に移動し、トナー材料の液滴表面に付着した後に加熱工程を経ることによってより強固にトナー表面に固定化できる。固定化させる温度はトナー材料に用いた結着樹脂のガラス転移点よりも高い温度が好ましい。
【0032】
上記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセリールボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0033】
本発明におけるトナー材料の組成分である結着樹脂としては、未変性の結着樹脂(例えば、未変性ポリエステル樹脂)、結着樹脂前駆体(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂)、結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を用いることができ、これらを適宜混合して使用することができる。
トナー材料として、例えば、未変性ポリエステル樹脂と結着樹脂前駆体(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂)を含むことができる。工程(II)においてトナー材料の液滴中に活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まり樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没を抑制することができる。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合には樹脂微粒子(B)を静電的に引き寄せることもできる。またトナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることもできる。
活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂中30質量%以下であることが好ましい。含有量が30質量%を超えると、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応させた際に生じる3次元網目構造の含有量が多くなる。即ち、架橋密度が高くなりすぎてしまう。これにより加熱圧着定着時にトナーの溶融粘度が上がりすぎてしまい、低温定着性の発現が困難となる。
また、結着樹脂成分として結晶性ポリエステル樹脂を含むことができる。後述のように、トナー材料中に結晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、低温定着性が向上する。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、帯電性、解像度等のトナー特性を高いレベルで維持することができる点から、結着樹脂中で1質量%以上20質量%未満であることが好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、低温定着性に劣ることがあり、20質量%以上であると、トナー表面における前記定着助剤の面積が増大し、流動性に劣ることがある。
【0034】
樹脂微粒子(B)の添加量は、トナー粒子100質量%に対して0.5〜5質量%であることが好ましく、特に1〜4質量%であることが好ましい。添加される割合が0.5質量%よりも少ない場合には、スペーサ効果が十分に得られないためにトナー粒子の非静電的付着力を低減することができず、5質量%よりも多い場合には、トナーの流動性が悪くなり、均一転写性を阻害したり、微粒子がトナー粒子に充分固定化できずに離脱しやすくなり、キャリアや感光体などに付着し、感光体などを汚染してしまう恐れがある。
【0035】
トナー1粒子表面の硬さの値は、ナノインデンテーション法で1〜3GPa、特に1.2〜2.6GPaであることが好ましく、且つ、マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が40〜120N/mm、特に60〜110N/mm、であることが好ましい。ナノインデンテーション法はミクロ的な硬さを測定するための手法でトナー最表面の硬さを表し、マイクロインデンテーション法はマクロ的な硬さを測定するための手法でトナー全体の硬さを表している。したがって、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値は、トナー粒子表面に付着した樹脂微粒子の埋没しにくさを表す指標となる。
【0036】
すなわち、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1GPaよりも小さいと、トナー表面に添加された微粒子が機械的ストレスを受けると埋没しやすい恐れがある。ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が3GPaよりも大きいと、トナーが機械的ストレスを受けてもトナー表面に添加された微粒子は埋没しにくいが、トナー表面が硬すぎるため定着においてトナーが十分に溶融できずに定着性が悪化する恐れがある。さらに、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1〜3GPaであると、トナー1粒子表面の粘着性が適度であるためか、あるいは弾性が適度であるためかは定かではないが、大粒径微粒子が添加されていない場合でもトナー粒子の非静電的付着力が低減される傾向にある。この特性と大粒径微粒子によるスペーサ効果が相まって、トナー粒子の非静電的付着力をより低減することができる。なお、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1〜3GPa以外だと、大粒径微粒子が添加されていない場合のトナー粒子の非静電的付着力の低減の傾向は見られない。
【0037】
また、マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値は、トナーの定着での溶融しにくさを表す指標となる。マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が40N/mmよりも小さいと、トナー1粒子全体としては軟らかいため定着性は良好であるが、現像部での攪拌や転写部での転写圧等によりトナーが変形しやすくなり画像品質が乱れる恐れがあり、トナー粒子中にWAXなどの離型剤が含有されている場合は、離型剤が析出してキャリアや感光体などにスペントし汚染してしまう恐れがある。一方、マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が120N/mmよりも大きいと、トナー1粒子全体としては硬いためにトナーが機械的ストレスを受けてもトナー表面に添加された微粒子は埋没しにくいが、トナー表面が硬すぎるため、定着においてトナーが十分に溶融できずに定着性が悪化する恐れがある。
【0038】
このように、機械的ストレスによるトナー表面に添加された樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没と、定着性の悪化とを抑制するためには、トナーはナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値の範囲と、マイクロインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値の範囲の双方を満たすように制御されることが好ましい。実際に双方の値の範囲を満たすためには、本発明のように、トナー粒子は表面に樹脂微粒子(B)によるスペーサ部分を設け、トナー粒子本体は比較的軟らかくして機能分離を達成させるような構造が好ましい。
【0039】
本発明の製造方法により得られるトナーの平均円形度は、0.950〜0.990であることが好ましい。平均円形度が0.950よりも低い場合には、現像時の画像均一性が悪化したり、電子写真感光体から中間転写体もしくは中間転写体から記録材へのトナー転写効率が低下し均一転写が得られなくなる。また、本発明の製造方法により得られるトナーは、水系媒体中で乳化処理をして作成されたものであり、特にカラートナーにおける小粒径化や、平均円形度が上記の範囲の形状を得るために効果的である。
【0040】
本発明の製造方法において製造したトナーにおける体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]としては、例えば、1.30以下が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力の低下や、クリーニング性の悪化につながり易い。一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがある。また、(Dv)/(Dn)が1.30を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0041】
また、トナーの体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比[(Dv)/(Dn)]が、1.00〜1.30であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れたトナーとなりやすい。特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても良好で安定した現像性が得られ、高画質の画像を得ることが可能となる。
【0042】
本発明の製造方法により得られるトナーのBET比表面積は、0.5m/g〜4.0m/gであることが好ましく、特に0.5m/g〜2.0m/gが好ましい。BET比表面積が0.5m/gよりも小さい場合には、トナー粒子の表面全体を密に覆う状態となり、前記樹脂微粒子(A)及び(B)がトナー内部の結着樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。また、樹脂微粒子(A)及び(B)がワックスの染み出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。BET比表面積が4.0m/gよりも大きい場合には、トナー粒子の表面上に残存する有機微粒子が凸部として大きく突出したり、粗状態の多重層として樹脂微粒子(A)及び(B)が残存し、やはり樹脂微粒子(A)及び(B)がトナー内部の結着樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。また、樹脂微粒子(A)及び(B)がワックスの染み出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。また、添加剤が浮出し、表面の凹凸により画質に影響が現れやすい。
【0043】
本発明によって製造されたトナーは、単独あるいはキャリアと組み合わせて現像剤とすることができる。
本発明によって製造されたトナーと共に用いるキャリアの粒径は、重量平均粒径が15〜40μmであることが好ましく、15μmよりも小さい場合には、転写工程においてキャリアも一緒に転写されてしまうキャリア付着が起こりやすくなり、逆に40μmよりも大きい場合には、キャリア付着は起りにくいものの、高画像濃度を得るためにトナー濃度を高くした場合、地汚れが発生しやすくなる恐れがある。また、潜像のドット径が小さい場合、ドット再現性のバラツキが大きくなり、ハイライト部の粒状性が悪くなる恐れもある。
【0044】
[トナーの特性測定方法]
<重量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)>
トナーの重量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行なった。具体的にはガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用いて、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いて測定を行なった。測定は装置が示す濃度が8±2%に成るように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0045】
本発明の静電荷像現像用トナーとその製造に用いる原料を以下に説明する。
[本発明のトナー及びその製造に用いる原料]
〔樹脂微粒子(A)〕
本発明で用いられる樹脂微粒子(A)用の樹脂としては、アニオン性の樹脂で水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。
アニオン性の樹脂微粒子(A)用の樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂(ビニル系樹脂)、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されるのが好ましい。なお、ビニル系樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。特に、ビニル系樹脂として、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルから成る共重合体は好ましく用いられる。
【0046】
上記のように樹脂微粒子(A)は、アニオン性であることが必要である。先に示したアニオン性界面活性剤とともに用いた際に凝集させないためである。樹脂微粒子(A)は、後に述べる製法でアニオン活性剤を用いたり、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基などのアニオン性基を導入することによっても作成できる。粒子径としては一次粒子の平均粒子径として5〜50nmが乳化粒子の粒子径と粒子径分布を制御するのに重要であり、さらに好ましくは10〜25nmの粒子径である。
なお、粒子径はSEM、TEM、光散乱法などによって測定できる。好ましくはレーザー散乱測定法による堀場製作所製LA−920によって、測定レンジにはいるように適切な濃度に希釈して測定すればよい。粒子径は体積平均径として求められる。
【0047】
樹脂微粒子(A)は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、樹脂微粒子(A)の水性分散液として得ることが好ましい。樹脂微粒子(A)の水性分散液の調製方法としては、例えば、以下の方法が好適に挙げられる。
(1)ビニル樹脂(ビニル系樹脂)の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子(A)の水性分散液を製造する方法
(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子(A)の水性分散液を製造する方法
(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加ないし縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子(A)を得た後、適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子(A)を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子(A)を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子(A)を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
【0048】
〔樹脂微粒子(B)〕
樹脂微粒子(B)は樹脂微粒子(A)と同様な方法で作成できる。樹脂微粒子(B)の一次粒子の体積平均粒子径が10〜200nmであることは乳化粒子(トナー材料液の液滴)の粒子径と粒子径分布を制御するのに重要であり、さらに好ましくは50〜150nmの粒子径である。なお、樹脂微粒子(B)の粒子径と粒子径分布は樹脂微粒子(A)と同様な方法で測定でき、粒子径は体積平均径として求められる。
樹脂微粒子(B)としては、先に挙げたアニオン性界面活性剤溶液と混合されたときに不安定で凝集する性質を持つものの方が、トナー材料の液滴表面に付着しやすくなる。そのためには、先に述べた製法でノニオン界面活性剤や両性界面活性剤、カチオン界面活性剤を用いたり、樹脂中にアミン基、アンモニウム塩基などのカチオン性基を導入することによっても作成できるが、これに限定されるものではない。
【0049】
カチオン界面活性剤としてはアミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。また、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが好ましい。
【0050】
カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ株式会社製);フタージェントF−300(ネオス株式会社製)、等が挙げられる。
【0051】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0052】
本発明において好ましく用いられる樹脂微粒子(B)は、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体であることが好まく、特にスチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂の微粒子であって、結着樹脂と非相溶性を示す白色エマルションとして得られるものであり、架橋密度の違いにより有機溶媒に対する膨潤性の程度が異なる。膨潤性の制御方法として、架橋密度や構成モノマーがあるが、構成モノマーは樹脂微粒子(B)の膨潤性以外の物性をコントロールするために変更する場合があるため、架橋密度で制御するのが好ましい。
樹脂微粒子(B)のエマルションとしては、合成したものを用いることもできるし、市販品[例えば、東ソー社製 Nipol 433C(スチレン・ブタジエンラテックス;体積平均粒子径100nm、Tg50℃)等]を用いてもよい。
但し、前述のように樹脂微粒子(B)の体積平均粒子径は0〜200nmで、ガラス転移温度(Tg)は40〜80℃であるものである。
【0053】
樹脂微粒子(B)が乳化液滴に付着した際に溶解せず、表面に固定化されるためには、樹脂微粒子(B)は架橋重合体であることが好ましく、少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体と共重合させたものが好ましい。即ち、スチレン−アクリル共重合体又はスチレン−ブタジエン共重合体を含む架橋樹脂の微粒子における少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業製)、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどのジアクリレート化合物が挙げられる。
【0054】
〔アニオン性界面活性剤〕
本発明のトナーの製造で用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が好適に挙げられる。
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0055】
フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)、等が挙げられる。
【0056】
〔結着樹脂〕
本発明のトナーの製造方法に用いるトナー材料に含まれる結着樹脂としては、特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等、公知の結着樹脂を用いることができる。
【0057】
これらの中でも本発明のトナーの製造方法に用いる結着樹脂としては、定着時にシャープメルトし、画像表面を平滑化できる点で、低分子量化しても十分な可とう性を有しているポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂にさらに他の樹脂を組み合せて用いてもよい。
本発明で用いるポリエステル系樹脂としては、下記一般式(1)で表される1種若しくは2種以上のポリオールと、下記一般式(2)で表される1種若しくは2種以上のポリカルボン酸との反応により得られるものが挙げられる。
A−(OH)m ・・・(1)
[式中、Aは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。mは2〜4の整数を表す。]
B−(COOH)n ・・・(2)
[式中、Bは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。nは2〜4の整数を表す。]
【0058】
一般式(1)で表される具体的なポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物等が挙げられる。
【0059】
一般式(2)で表される具体的なポリカルボン酸としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)等が挙げられる。
【0060】
本発明におけるトナー材料の組成分である結着樹脂成分としては、前述のように未変性の結着樹脂(例えば、未変性ポリエステル樹脂)、結着樹脂前駆体(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂)、結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)等を用いることができるが、通常、未変性の結着樹脂(例えば、未変性ポリエステル樹脂)と未変性の結着樹脂及び/又は結晶性樹脂を組み合わせて用いる。結着樹脂前駆体(プレポリマー)を組み合わせて用いた場合には最終的には結着樹脂前駆体が反応したものと未変性の結着樹脂との混合物が結着樹脂となるが、樹脂粒子(B)が非相溶であるのは概ね未変性の結着樹脂に対してである。
【0061】
(結晶性ポリエステル樹脂)
トナー材料の組成分である結着樹脂として、結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を含有することができる。結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を含有することにより、加熱定着時に結晶性樹脂を融解させトナーの粘弾性を一気に低下させることが可能となる。これによりトナーの定着下限温度を低下させることができる。
このような結晶性ポリエステル樹脂は、例として、アルコール成分として炭素数2〜12の飽和脂肪族ジオール化合物、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、−8オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12ドデカンジオール、及びこれらの誘導体と、少なくとも酸性分として二重結合(C=C結合)を有する炭素数2〜12のジカルボン酸、もしくは、炭素数2〜12の飽和ジカルボン酸、特にフマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1、−8オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12ドデカン二酸及びこれらの誘導体を用いて合成される結晶性ポリエステルが好ましい。
中でも、吸熱ピーク温度と吸熱ショルダー温度の差をより小さくする点で、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、−8オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12ドデカンジオールのいずれか一種類のアルコール成分と、フマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1、−8オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸のいずれか一種類のジカルボン酸成分のみで構成されることが好ましい。
【0062】
(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂)
〈活性水素基含有化合物〉
本発明のトナー材料中に活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まり、樹脂微粒子(B)や外添剤の埋没を抑制することができる。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合には、樹脂微粒子(B)を静電的に引き寄せることもできる。また、トナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることもできる。なお、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂は、結着樹脂前駆体であるとも言える。
【0063】
活性水素基含有化合物は、水系媒体中で、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有していれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体がイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、アミン類(B)が好適である。
【0064】
活性水素基としては、活性水素基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
【0066】
ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4'−ジアミノ−3,3'ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0067】
3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。また、アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。また、アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。また、アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
【0068】
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、B1からB5のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
【0069】
活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などを用いることができる。
【0070】
アミン類(B)と、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であることが好ましく、1/2〜2/1であることがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であることが特に好ましい。何故なら、混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0071】
〈活性水素基含有化合物と反応可能な重合体〉
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」)としては、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体樹脂、等を用いることができる。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。なお、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
プレポリマーにおける活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)が特に好ましい。
【0073】
ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)における該ウレア結合生成基が該イソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としては、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適である。イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール(DIO)単独、又はジオール(DIO)と少量の3価以上のポリオール(TO)との混合物、が好ましい。
【0074】
ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
【0075】
アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。また、脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。また、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物としたもの等が挙げられる。また、ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。また、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物としたもの等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0076】
3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。また、3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノール体(本州化学工業株式会社製のトリスフェノールPAなど)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0077】
ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物におけるジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0078】
ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はジカルボン酸(DIC)と少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
【0079】
ジカルボン酸(DIC)としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。また、アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。また、アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0080】
3価以上のポリカルボン酸(TC)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。また、芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0081】
ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0082】
ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物におけるジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0083】
ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
【0084】
ポリオール(PO)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。何故なら、含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0085】
ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
【0086】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。また、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独でも使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
ポリイソシアネート(PIC)と、活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1でるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。何故なら、イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがあるからである。
【0088】
ポリイソシアネート(PIC)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。何故なら、含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化するからである。
【0089】
イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がより好ましい。何故なら、イソシアネート基の平均数が1未満であると、ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化するからである。
【0090】
活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、3,000〜40,000が好ましく、4,000〜30,000がより好ましい。何故なら、重量平均分子量(Mw)が、3,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、40,000を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0091】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.又は東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、及び4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0092】
(その他の成分)
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0093】
〔着色剤〕
本発明に使用するトナー用の着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
着色剤のトナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。着色剤の含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0095】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレンービニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレンーアクリロニトリルーインデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
【0097】
マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と、着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練して製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶媒成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。着色剤は2樹脂に対する親和性の差を利用することで、第一の樹脂相、第二の樹脂相いずれにも任意に含有させることができる。着色剤はトナー表面に存在した際にトナーの帯電性能を悪化させることが良く知られている。そのため内層に存在する第一の樹脂相に選択的に着色剤を含有させることで、トナーの帯電性能(環境安定性、電荷保持能、帯電量等)を向上させることができる。
【0098】
〔離型剤〕
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50〜120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好である。
【0099】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がより好ましい。融点が、50℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、120℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0101】
離型剤は2樹脂に対する親和性の差を利用することで、トナー粒子本体中の樹脂(第一の樹脂相)及び樹脂微粒子(B)の樹脂(第二の樹脂相)のいずれにも任意に含有させることができる。トナー外層に存在する第二の樹脂相に選択的に含有させることで、離型剤の染み出しが定着時の短い加熱時間でも充分生じるため、充分な離型性を得ることができる。また、離型剤を内層に存在する第一の樹脂相に選択的に含有させることで、感光体、キャリア等の他の部材への離型剤のスペントを抑制させることができる。本発明では、離型剤の配置を比較的自由に設計することがあり、各々の画像形成プロセスに応じて任意の配置を取ることができる。
【0102】
〔帯電制御剤〕
帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
【0104】
帯電制御剤はトナー粒子本体中の樹脂と樹脂微粒子(B)の樹脂に対する親和性の差を利用することで、トナー粒子本体中の樹脂相、樹脂微粒子(B)の樹脂相いずれにも任意に含有させることができる。トナー表面に存在する樹脂微粒子(B)の樹脂相に選択的に含有させることで、より少量の帯電制御剤によって停電に対する効果を得やすくなる。また、帯電制御剤を内層に存在するトナー粒子本体中の樹脂相に選択的に含有させることで、感光体、キャリア等の他の部材への帯電制御剤のスペントを抑制させることができる。本発明のトナーの製造方法では、帯電制御剤の配置を比較的自由に設計することがあり、各々の画像形成プロセスに応じて任意の配置を取ることができる。
【0105】
帯電制御剤のトナーに対する含有量としては、前記樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。帯電制御剤の含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0106】
〔無機微粒子〕
無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用する。この無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
本発明で得られたトナー粒子(着色粒子)の流動性や現像性、帯電性を補助するための無機微粒子としては、80〜500nmの一次体積平均粒径を有する大粒径の無機微粒子の他にも、小粒径の無機微粒子を好ましく用いることができる。特に、疎水性シリカ及びまたは疎水性酸化チタンが好ましい。この無機微粒子の一次体積平均粒径は、5〜50nmであることが好ましく、特に10〜30nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、大粒径のもの及び小粒径のものそれぞれがトナーの0.01〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0質量%であることが好ましい。
【0108】
〔流動性向上剤〕
流動性向上剤とは、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止する剤のことであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0109】
〔クリーニング性向上剤〕
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加される剤のことであり、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好適である。
【0110】
〔磁性材料〕
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等を用いることができる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0111】
以下、本発明のトナーの製造方法例について具体的に説明する。なお、本発明は、ここに例示されるトナーの製造方法に限定されるものではない。
[本発明のトナー製造方法の例]
本発明のトナーの製造方法においては、結着樹脂及び/又は結着樹脂前駆体と、着色剤とを主成分としたトナー材料を有機溶媒中に溶解又は分散させて形成した溶解物又は分散物を、樹脂微粒子(A)及び樹脂微粒子(B)を同時又は非同時に含む水系媒体中で乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製して造粒(液滴化)し、乳化乃至分散したトナー材料を含む液滴状のトナー前駆体に樹脂微粒子(B)を付着させた後に有機溶媒を除去し、トナー粒子を形成した後に該トナー粒子を含む水を加熱処理することにより所望のトナーを製造する。前述のように、結着樹脂成分としては、未変性の結着樹脂(例えば、未変性ポリエステル樹脂)、結着樹脂前駆体(活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂、結晶性樹脂(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)を選択することができる。
例えば、結着樹脂として、未変性の結着樹脂と、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを含むトナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に乳化ないし分散させ、水系媒体中で活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを反応させた接着性基材を含むトナー前駆体粒子を生成させて、樹脂微粒子(B)を付着させることにより所望のトナーを製造することができる。
以下に例示するプロセスは結着樹脂として、未変性の結着樹脂と、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを含むトナー材料を例として説明する。
もちろん、未変性の結着樹脂と結晶性樹脂を結着樹脂成分として用いることもでき、この場合に、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体を含んでも、含まなくてもよい。
【0112】
(トナー材料の溶解ないし分散液)
トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を溶媒に溶解ないし分散させて調製する。トナー材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂もしくは活性水素基含有化合物、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)と着色剤を含み、さらに必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等の上記その他の成分を含んでいてもよい。トナー材料の溶解ないし分散液は、トナー材料を有機溶媒に溶解ないし分散させて調製することが好ましい。なお、有機溶媒は、トナーの造粒時ないし造粒後に除去することが好ましい。
【0113】
(有機溶媒)
トナー材料を溶解ないし分散する有機溶媒としては、トナー材料を溶解ないし分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーの造粒時ないし造粒後の除去の容易性の点で沸点が150℃未満のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。また、エステル系溶剤が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対し40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部がさらに好ましい。なお、トナー材料の溶解ないし分散液の調製は、有機溶媒中に、活性水素基含有化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、未変性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、帯電制御剤、等のトナー材料を、溶解ないし分散させることにより行うことができる。また、トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、後述する水系媒体の調製において、水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体に添加する際に、溶解ないし分散液と共に水系媒体に添加してもよい。
【0114】
(水系媒体)
水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などを用いることができるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などを用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。また、低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
水系媒体の調製は、例えば、アニオン性界面活性剤の存在下で樹脂微粒子(A)を水系媒体に分散させることにより行う。アニオン性界面活性剤と樹脂微粒子(A)の水系媒体中への添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、それぞれ0.5〜10質量%が好ましい。樹脂微粒子(B)は、その後水系媒体に加えられてもよい。樹脂微粒子(B)がアニオン性界面活性剤と凝集性を有す場合は、水系媒体を乳化前に高速せん断分散機にて分散させておくことが好ましい。
【0116】
(乳化ないし分散)
トナー材料の溶解ないし分散液の水系媒体中への乳化ないし分散は、トナー材料の溶解ないし分散液を水系媒体中で攪拌しながら分散させることが好ましい。分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の分散機などを用いて行うことができる。分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機などが挙げられる。このトナーの製造方法においては、乳化ないし分散の際、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と、を伸長反応ないし架橋反応させると、接着性基材が生成する。樹脂微粒子(B)は乳化中または乳化後に水系媒体に加えても良い。高速せん断分散機にて分散させながら行うか乳化後低速攪拌に切り替えて添加するか適宜トナーへの樹脂微粒子(B)の付着性、固定化状況を見ながら行われる。
【0117】
(結着樹脂成分中の接着性基材)
結着樹脂成分中には紙等の記録材に対し接着性を示す接着性基材が含まれることが必要であり、このような接着性基材として活性水素基含有化合物及び活性水素基含有化合物と反応可能な重合体とを水系媒体中で反応させて成る接着性ポリマーを含むことが好ましい。接着性基材の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が特に好ましい。何故なら、重量平均分子量が、3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0118】
原料として用いる結着樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、20℃以上50℃未満が好ましく、より好ましくは20〜35℃である。何故なら、ガラス転移温度(Tg)が20℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、50℃以上であると、低温定着性が十分でないことがあるからである。本実施形態の静電荷像現像用トナーでは、架橋反応、伸長反応したポリエステル樹脂が共存しているので、従来のポリエステル系トナーと比較してガラス転移温度が低くても良好な保存性を示す。
【0119】
ここで、本発明におけるガラス転移点(Tg)とは、具体的に次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。
測定条件
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
【0120】
測定した結果は前記島津製作所製データ解析ソフト(TA−60、バージョン1.52)を用いて解析を行った。解析方法は2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。次にDSC曲線で前記ピーク温度+5℃、及び−5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能をもちいてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。ここで示された温度がトナーのTgに相当する。
【0121】
前述のように、トナーに含有される結着樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂などが特に好適である。ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ウレア変性ポリエステル系樹脂と未変性ポリエステル樹脂、などが特に好適なものとして挙げられる。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを水系媒体中で反応させて得られる。ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよい。この場合、該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。何故なら、ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0122】
ウレア変性ポリエステル樹脂と未変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
【0123】
ウレア変性ポリエステル樹脂は、例えば、[1]活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含むトナー材料の溶解ないし分散液を、活性水素基含有化合物(例えば、アミン類(B))と共に、水系媒体中に乳化ないし分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよく、[2]トナー材料の溶解ないし分散液を、予め活性水素基含有化合物を添加した水系媒体中に乳化ないし分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよい。あるいは[3]トナー材料の溶解ないし分散液を、水系媒体中に添加混合させた後で、活性水素基含有化合物を添加し、油滴を形成し、該水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応ないし架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、[3]の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子に濃度勾配を設けることが可能となる。
【0124】
前記乳化ないし分散により、接着性基材を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と活性水素基含有化合物との組み合わせに応じて適宜選択することができる。なお、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0125】
水系媒体中において、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む分散体を安定に形成する方法としては、例えば、水系媒体中に、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、着色剤、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を有機溶媒に溶解ないし分散させて調製したトナー材料の溶解ないし分散液を添加し、せん断力により分散させる方法、等が挙げられる。
【0126】
乳化ないし分散において、水系媒体の使用量としては、トナー材料100質量部に対し、50〜2,000質量部が好ましく、100〜1,000質量部がより好ましい。何故なら、使用量が50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなるからである。
【0127】
水系媒体には先に説明したアニオン性界面活性剤、樹脂微粒子(A)の他に以下の無機化合物分散剤や高分子系保護コロイドを併用することができる。難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
【0128】
高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0129】
ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。また、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。また、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。
【0130】
クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。また、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
【0131】
ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。また、セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0132】
リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能な分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することが可能となる。
【0133】
(有機溶媒の除去)
乳化ないし分散により得られた乳化スラリーから、有機溶媒を除去する[前記工程(III)]。有機溶媒の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。有機溶媒の除去が行われるとトナー粒子が形成される。
【0134】
(洗浄)
有機溶媒を除去しトナー粒子を形成した後、形成されたトナー粒子に対しイオン交換水で洗浄を行い、所望の伝導度を有する分散液を作成する[前記工程(IV)]。
【0135】
(加熱処理)
前記分散液を加熱処理する[前記工程(V)]。加熱処理は、(1)静止状態で加熱処理する方法、(2)攪拌下で加熱処理する方法、等が挙げられ、加熱処理が行われると表面が平滑なトナー粒子が形成される。また、加熱処理はトナー粒子がイオン交換水で分散されている場合は、洗浄前に実施しても洗浄後に実施してもよい。
【0136】
(乾燥)
形成されたトナー粒子に対し乾燥等を行い、さらにその後、所望により分級等を行う。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行う。なお、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0137】
こうして得られたトナー粒子を、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、さらに機械的衝撃力を印加したりすることにより、トナー粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所株式会社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0138】
前記本発明の静電荷像現像用トナーを用いて電子写真プロセスにより画像を形成することができる。
例えば、電子写真感光体を帯電手段により帯電させる帯電工程と、前記帯電された電子写真感光体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を形成された電子写真感光体上に本発明のトナーを含む現像手段によりトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体上に転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を二次転写手段により記録材上に転写する二次転写工程と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材を含む定着手段により記録材上に定着させる定着工程と、前記一次転写手段によりトナー像を中間転写体上に転写した電子写真感光体の表面に付着している転写残トナーをクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを備えたプロセスにより画像形成(フルカラー)が実施できる。このフルカラー画像形成方法においては、二次転写工程におけるトナー像の記録材への転写の線速度、所謂印字速度は100〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5〜60msecであることが好ましい。
【0139】
上記例示のフルカラー画像形成方法においては、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、一次転写手段、及びクリーニング手段のセットを複数有するタンデム型であることが好ましい。電子写真感光体を複数個配備して、各々の回転時に1色ずつ現像するいわゆるタンデム型では、潜像形成工程と現像・転写工程とが各色毎に行なわれて各色のトナー像が形成されるため、単色の画像形成速度とフルカラーの画像形成速度との差が小さく、高速印字に対応できる利点を有している。しかし、各色のトナー像を別々の電子写真感光体に形成し、各色トナー層の積層(色重ね)を行なうことによりフルカラー画像を形成するため、各色のトナー粒子間での帯電性等が異なるなど、特性にばらつきがあると各色のトナー粒子による現像トナー量に差が生じ、色重ねによる二次色の色相の変化が大きくなり、色再現性が低下する。
【0140】
タンデム型による画像形成方法に使用されるトナーにおいては、各色のバランスを制御するための現像トナー量を安定化すること(各色のトナー粒子間でばらつきがないこと)、各色のトナー粒子間で電子写真感光体及び記録材に対する付着性が均一であることが必要である。この点に関しては、本発明のトナーは好適である。
【0141】
帯電手段は、少なくとも交番電圧を重畳した直流電圧を印加するのが好ましい。交番電圧を重畳した直流電圧を印加することにより、直流電圧のみを印加する場合に比べて電子写真感光体の表面電圧を所望の値に安定化させることができるため、より均一帯電させることが可能となる。さらに、帯電手段は、電子写真感光体に帯電部材を接触させ、帯電部材に電圧を印加することによって帯電を行なうのが好ましい。電子写真感光体に帯電部材を接触させ、帯電部材に電圧を印加して帯電を行なうことによって、特に交番電圧を重畳した直流電圧を印加することで得られる均一帯電性の効果をさらに向上させることが可能となる。
【0142】
定着手段は、磁性金属から構成されて電磁誘導により加熱される加熱ローラと、加熱ローラと平行に配置された定着ローラと、加熱ローラと定着ローラとに張り渡され、加熱ローラにより加熱されるとともにこれらのローラによって回転される無端帯状のトナー加熱媒体(加熱ベルト)と、加熱ベルトを介して定着ローラに圧接されるとともに、加熱ベルトに対して順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧ローラとを有することにより、定着ベルトの温度が短時間で上昇し、かつ安定した温度制御が可能となる。また、表面の粗い記録材を使用した場合にも、定着時にある程度転写紙の表面に応じた状態で定着ベルトが作用するため、十分な定着性が得られるようになる。
【0143】
定着手段は、オイルレスあるいはオイル微量塗布タイプであることが好ましい。これを達成するために、トナー粒子中に離型剤(WAX)を含有し、さらにそれがトナー粒子中に微分散しているものを定着することが好ましい。離型剤がトナー粒子中に微量分散しているトナーにより、定着時に離型剤が浸み出しやすく、オイルレス定着装置において、あるいは微量オイル塗布定着装置でオイル塗布効果が少なくなってきた場合においても、トナーのベルト側への転移を抑制することができる。離型剤がトナー粒子中に分散した状態で存在するためには、離型剤と結着樹脂とは相溶しないことが好ましい。また、離型剤がトナー粒子中に微分散するためには、例えばトナー製造時の混練の剪断力を利用する方法がある。離型剤の分散状態は、トナー粒子の薄膜切片をTEMで観察することにより判断できる。離型剤の分散径は小さい方が好ましいが、小さすぎると定着時の染み出しが不十分な場合がある。従って、倍率1万倍で離型剤が確認できれば、離型剤が分散した状態で存在していると判断する。1万倍で離型剤が確認できない大きさでは、微分散していたとしても、定着時の染み出しが不十分な場合がある。
【実施例】
【0144】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
なお、以下、実施例6とあるのは本発明に含まれない参考例6を示す。
【0145】
−樹脂微粒子(A1)の合成−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)16質量部、スチレン83質量部、メタクリル酸83質量部、アクリル酸ブチル110質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)である[樹脂微粒子(A1)]の水性分散液を得た。[樹脂微粒子(A1)]は、体積平均粒径(堀場製作所製:LA−920で測定)が38nm、重量平均分子量が420,000、Tgが63℃であった。
【0146】
−樹脂微粒子(B1)の合成−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(カチオンDS、花王製)10質量部、スチレン144質量部、アクリル酸ブチル50質量部及び過硫酸アンモニウム1.0質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度65℃まで昇温し10時間反応させた。さらに、0.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−アクリル酸ブチルの共重合体)[樹脂組成略称:スチレン/アクリル]である[樹脂微粒子(B1)]の水性分散液を得た。[樹脂微粒子(B1)]は、体積平均粒径(堀場製作所製 LA−920で測定)が60nm、Tgが63.0℃であった。下記表1に樹脂微粒子(B1)の粒径とTg及び樹脂組成略称を示す。
【0147】
樹脂微粒子(B2)〜(B5)として下記市販品を購入し使用した。
−樹脂微粒子(B2)−
樹脂微粒子(B2):東ソー社製Nipol433C(スチレン・ブタジエンラテックス[樹脂組成略称:スチレン/ブタジエン]、体積平均粒子径100nm、Tg150℃)
−樹脂微粒子(B3)−
樹脂微粒子(B3):東ソー社製Nipol LX415A(スチレン・ブタジエンラテックス[樹脂組成略称:スチレン/ブタジエン]、体積平均粒子径40nm、Tg27℃)
−樹脂微粒子(B4)−
樹脂微粒子(B4):東ソー社製Nipol 2507H(スチレン・ブタジエンラテックス[樹脂組成略称:スチレン/ブタジエン]、体積平均粒子径250nm、Tg58℃)
−樹脂微粒子(B5)−
樹脂微粒子(B5):東ソー社製Nipol LX303A(ポリスチレンラテックス[樹脂組成略称:ポリスチレン]、体積平均粒子径160nm、Tg100℃)
下記表1に樹脂微粒子(B2)〜(B5)の粒径とTg及び樹脂組成略称を示す。
【0148】
−樹脂微粒子(B6)の合成−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(カチオンDS、花王製)10質量部、スチレン160質量部、アクリル酸ブチル20質量部及び過硫酸アンモニウム0.5質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度65℃まで昇温し10時間反応させた。さらに、0.2質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−アクリル酸ブチルの共重合体)[樹脂組成略称:スチレン/アクリル]である[樹脂微粒子(B6)]の水性分散液を得た。[樹脂微粒子(B1)]は、体積平均粒径(堀場製作所製:LA−920で測定)が50nm、Tgが93.0℃であった。下記表1に樹脂微粒子(B6)の粒径とTg及び樹脂組成略称を示す。
【0149】
【表1】
【0150】
−結晶性ポリエステル樹脂の合成−
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、1,10−デカン二酸2,300g、1、8−オクタンジオール2,530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂]を得た。
【0151】
−ポリエステル樹脂C1の合成−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物66.0質量部、プロピレングリコール2.3質量部、無水トリメリット酸2.4質量部、及びジブチルスズオキシド0.2質量部を投入し、常圧下、170℃で1時間反応させた。次に、アジピン酸31.5質量部を投入し常圧下、230℃で4時間反応させた後に10mmHg〜15mmHgの減圧下、5時間反応させ、ポリエステル樹脂C1を得た。得られたポリエステル樹脂C1のガラス転移点は、28.9℃であった。下記表2にポリエステル樹脂C1の組成分を、下記表3にガラス転移温度(Tg)を示す。なお、ポリエステル樹脂C1は前記樹脂微粒子(B2)〜(B6)と非相溶性である。
【0152】
−ポリエステル樹脂C2〜C5の合成−
ポリエステル樹脂C1の合成において、下記表2に示す通り、ポリエステル樹脂組成分の配合量を変更した以外は、ポリエステル樹脂C1と同様にして、ポリエステル樹脂C2〜C5をそれぞれ合成した。得られたポリエステル樹脂C2〜C5について、ポリエステル樹脂C1と同様にして、ガラス転移点について測定した。下記表2にポリエステル樹脂C2〜C5の組成分を、下記表3にそれぞれのガラス転移温度(Tg)を示す。なお、ポリエステル樹脂C2〜C5は前記樹脂微粒子(B2)〜(B6)と非相溶性である。
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
−マスターバッチ用樹脂の合成−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物64.9質量部、ビスフェノールAプロピレンエチレンオキシド2モル付加物10.8質量部及びジブチルスズオキシド0.2質量部、アジピン酸3.8質量部、イソフタル酸21.0質量部を投入し常圧下、230℃で4時間反応させた後に10mmHg〜15mmHgの減圧下、5時間反応させ、マスターバッチ用樹脂を得た。
【0156】
−マスターバッチ(MB)の調製−
水1000質量部、及びカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記マスターバッチ用樹脂1200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、[マスターバッチ]を調製した。
【0157】
<プレポリマーの合成>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10mHg〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、[プレポリマー](前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。得られた[プレポリマー]は、遊離イソシアネート含有量が1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)が50質量%であった。
【0158】
[実施例1]
<トナーaの製造>
−水系媒体相の調製−
水660質量部、前記[樹脂微粒子(A1)]の水性分散液25質量部、48.5質量%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(「エレミノールMON−7」;三洋化成工業製)25質量部、及び酢酸エチル60質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水相)を得た。さらに[樹脂微粒子(B2)]を50質量部加えて[水系媒体相]を得た。[水系媒体相]を光学顕微鏡で観察すると数百μmの凝集体が見られた。[水系媒体相]を、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数8,000rpmで攪拌すると該凝集体がほぐれ、数μmの小凝集体に分散できることを光学顕微鏡によって確認した。したがって、この後行われるトナー材料の乳化工程においても[樹脂微粒子(B2)]は、分散してトナー材料成分の液滴に付着することが期待できた。このように[樹脂微粒子(B2)]は、凝集を生じるがせん断によってほぐれることがトナー表面に均一に付着させる上で重要である。
【0159】
−結晶性ポリエステルの分散液作製−
金属製2L容器に[結晶性ポリエステル樹脂]100g、及び酢酸エチル400gを入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行ない、[結晶性ポリエステル分散液]を得た。
【0160】
−トナー材料相の調製−
ビーカー内に[ポリエステル樹脂C1]100質量部、酢酸エチル130質量部を、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))10質量部、及び[マスターバッチ]10質量部、[結晶性ポリエステル分散液]10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、[トナー材料相](トナー材料の溶解乃至分散液)を調製した。
【0161】
−乳化乃至分散液の調製−
[水系媒体相]150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに[トナー材料相]100質量部を添加し、10分間混合して[乳化乃至分散液](乳化スラリー)を調製した。
【0162】
−有機溶媒の除去−
脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、[乳化乃至分散液]100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤し[脱溶剤スラリー]とした。
【0163】
−洗浄−
[脱溶剤スラリー]全量を減圧濾過した後、得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合、再分散(回転数12,000rpmにて10分間)した後、濾過した。更に、得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後、濾過する操作を3回行い、再分散したスラリーの伝導度が0.1μS/cm以上且つ10μS/cm以下になったところで[洗浄スラリー]とした。
【0164】
−加熱処理−
攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、得られた[洗浄スラリー]を攪拌周速20m/分で60分間攪拌しながら40℃で加熱処理し、[ポリエステル樹脂C1]表面に付着した[樹脂微粒子(B1)]を固定化処理した後、濾過して[濾過ケーキ]を得た。
【0165】
−乾燥−
得られた[濾過ケーキ]を順風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子a]を得た。
得られたトナー母体粒子の薄膜切片をTEMで調べた結果、図1に示すように、樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bが形成されており、樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側に形成されていることが確認された。
【0166】
−外添処理−
[トナー母体粒子a]100質量部に対して、体積平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、体積平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、体積平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、[トナーa]を得た。下記表4にトナーaに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をまとめて示す。
【0167】
[実施例2〜実施例6]
<トナーb〜トナーfの製造>
実施例1において、下記表4に示す通りにトナー材料の組合せを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6の[トナーb]〜[トナーf]を作製した。下記表4にトナーb〜トナーfに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をそれぞれまとめて示す。
【0168】
[実施例7]
<トナーgの製造>
実施例4のトナー材料相の調製時において[プレポリマー]10質量部を更に添加した以外は、実施例4と同様にして、実施例7の[トナーg]を作製した。下記表4にトナーgに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をそれぞれまとめて示す。
【0169】
[比較例1〜比較例6]
<トナーh〜トナーmの製造>
実施例1において、下記表に示す通り、トナー材料の組合せを変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜6の[トナーh]〜[トナーm]を作製した。下記表4にトナーh〜トナーmに用いた樹脂微粒子(A)、樹脂微粒子(B)及び結着樹脂に用いたポリエステル樹脂Cの種類をそれぞれまとめて示す。
【0170】
【表4】
【0171】
<評価>
次に、上記作製した実施例1〜7([トナーa]〜[トナーg])及び比較例1〜6([トナーh]〜[トナーm])の各トナーから成る[現像剤](二成分現像剤)を用いて、下記評価方法と評価基準に則って低温定着性、耐熱保存性の評価を行った。結果を下記表5に示す。なお、トナー粒子の体積平均粒径(Dv)及び体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv/Dn)の測定結果を併せて表5に示す。
【0172】
<<低温定着性>>
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機(MF−200、株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(株式会社リコー製)をセットし、定着ローラの温度を5℃刻みで変化させて、複写テストを行った。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ローラの温度の最小値を定着下限温度とした。
定着下限温度は、消費電力が抑えられることから、低いことが好ましく、140℃以上では問題の発生する可能性が高いので140℃以上を×として判定した。
〔評価基準〕
◎:低温定着性が120℃未満
〇:低温定着性が120以上130未満
△:低温定着性が130℃以上140未満
×:低温定着性が140℃以上
【0173】
<<耐熱保存性>>
50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により、針入度を測定し、下記基準により耐熱保存性を評価した。なお、針入度が大きい程、耐熱保存性が優れていることを意味し、針入度が5mm未満であるもの(×)は、使用上、問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
◎:針入度が12mm以上
○:針入度が8mm以上12mm未満
△:針入度が5mm以上8mm未満
×:針入度が5mm未満
【0174】
<<トナー粒子の(Dv)及び(Dv/Dn)の測定>>
各トナー粒子の体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)及び体積平均粒径(Dv)と数平均粒経(Dn)の比(Dv/Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer3 Version3.51)にて解析を行った。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10質量%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩、ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)を0.5mL添加し、各トナー0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜ、次いで、イオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II、本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記「マルチサイザーIII」により、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。装置が示す濃度が8%±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は、粒径の測定再現性の点から前記濃度を8%±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0175】
【表5】
【0176】
表5に示す評価結果から、トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと、体積平均粒子径が100nmでガラス転移温度が50℃であるスチレン−ブタジエン共重合体樹脂微粒子(B2)を含有する樹脂微粒子層Bとを有する本発明のトナー(実施例1〜5、実施例7)、及び体積平均粒子径が60nmでガラス転移温度が63℃であるスチレン−アクリル共重合体(B1)を含有する樹脂微粒子層Bとを有する本発明のトナー(実施例6)は、いずれも低温定着性と耐熱保存性とを両立することが分かる。
一方、体積平均粒子径が40nmでガラス転移温度が27℃であるスチレン−ブタジエン樹脂微粒子(B3)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例1では、低温定着性は120℃未満で優れているのに対して、耐熱保存性は針入度が5mm未満で実用に供しないレベルである。
また、体積平均粒子径が250nmでガラス転移温度が58℃であるスチレン−ブタジエン樹脂微粒子(B4)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例2では、耐熱保存性は針入度が12mm以上で優れているのに対して、低温定着性は140℃以上で実用に供しないレベルである。
また、体積平均粒子径が160nmでガラス転移温度が100℃であるポリスチレン樹脂微粒子(B5)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例3では耐熱保存性は針入度が12mm以上で優れているのに対して、低温定着性は140℃以上で実用に供しないレベルである。
また、体積平均粒子径が60nmでガラス転移温度が90℃であるスチレン−アクリル共重合体(B1)を含有する樹脂微粒子層Bを有する比較例4では耐熱保存性は針入度が12mm以上で優れているのに対して、低温定着性は140℃以上で実用に供しないレベルである。
また、樹脂微粒子A(A1)のみを用いた比較例5、及び樹脂微粒子B(B2)のみを用いた比較例6の場合には、いずれも低温定着性は120℃未満で優れているのに対して、耐熱保存性は針入度が5mm未満で実用に供しないレベルである。
低温定着性と耐熱保存性とを両立する本発明のトナー(実施例1〜7)は、小粒径でDv/Dnが(1.00〜1.30)の範囲にあることから、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れたトナーとなりやすく、トナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層B(樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側)を有するトナーであることから、フィルミングの発生等を抑制することができる。
【0177】
上記評価結果から、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子の表面に樹脂微粒子層Aと樹脂微粒子層Bを有する((樹脂微粒子層Aは少なくとも樹脂微粒子層Bの外側)を)トナーは、低温定着性と耐熱保存性とを両立すると共に、感光体、現像ローラ等に対するフィルミング汚染が防止され、またキャリアや帯電ブレードなどの帯電部材への汚染がないため、初期における良好な印字品質に加えて、連続印字での画質の安定性にも優れている。このようなトナーを用いれば、複写機、レーザープリンターあるいは普通ファクシミリ等の画像形成装置や画像形成方法において強く要請されている高速化、小型化、カラー化、高画質化に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0178】
【特許文献1】特開昭63−282752号公報
【特許文献2】特開平6−250439号公報
【特許文献3】特開2000−275907号公報
【特許文献4】特開2001−305797号公報
【特許文献5】特開平11−133665号公報
【特許文献6】特開2002−287400号公報
【特許文献7】特開2002−351143号公報
【特許文献8】特開2005−77776号公報
【特許文献9】特開2001−242663号公報
【特許文献10】特開2005−156586号公報
【特許文献11】特開2010−061071号公報
図1