(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トナー原料粉体中に含まれる金属製異物を、重力を利用して前記トナー原料粉体から分離する異物分離室と、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室に供給する投入管と、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室から排出する排出管とを有する異物分離手段と、
前記異物分離手段の前記排出管に接続された、回転体を有する粉砕手段とを有するトナー製造装置であって、
異物分離室において、排出管と前記異物分離室との接続部が、投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されており、
前記異物分離手段において、前記投入管における前記投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部が、前記一端と反対側の他端の中心部よりも、重力方向側にあり、前記投入管における前記投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部、及び前記一端と反対側の他端の中心部を結ぶ配管中心線と、重力方向と直交する方向とがなす角度が、0°超50°以下であることを特徴とするトナー製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(トナー製造装置、及びトナー製造方法)
本発明のトナー製造装置は、異物分離手段と、粉砕手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明のトナー製造方法は、異物分離工程と、粉砕工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0015】
<異物分離手段、及び異物分離工程>
前記異物分離手段は、異物分離室と、投入管と、排出管とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記異物分離工程としては、前記異物分離手段の前記異物分離室において、重力を利用してトナー原料粉体中に含まれる金属製異物を前記トナー原料粉体から分離する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
前記金属製異物は、前記トナー原料粉体を製造する過程において前記トナー原料粉体に混入することがある。
例えば、前記トナー原料粉体は、結着樹脂、着色剤などを混練し、更に必要に応じて粗粉砕を行って得られる。前記混練は、混練機によって行われる。前記混練機としては、例えば、スクリューを有する混練機が用いられる(例えば、特開平11−77667号公報の
図4参照)。前記スクリューを有する混練機は、例えば、前記スクリューと、前記スクリューの外周に位置するケーシングとを有している。前記スクリューは、その軸に螺旋状の突出部を有している。また、前記スクリュー又は前記ケーシングには、柱状の突起であるピンが設けられている。そして、前記スクリューを有する混練機は、前記スクリューの突出部、及び前記ピンの共同作業によって、混練を行う。前記混練機内では、混練の際、高い圧力が発生する。この高い圧力は、前記スクリューの螺旋状の突出部同士の間、前記ピン同士の間、前記螺旋状の突出部と前記ピンとの間などで発生しやすい。そのため、この高い圧力により前記螺旋状の突出部や前記ピンが疲労、衝撃等により破損し、前記金属製異物が発生する。また、前記混練機において前記スクリューは疲労破壊を起こす。疲労破壊した前記スクリューの破片は前記金属製異物となる。
そのようにして、前記金属製異物が前記トナー原料粉体に混入された場合でも、本発明のトナー製造装置及びトナー製造方法は、前記異物分離手段及び前記異物分離工程が前記金属製異物と前記トナー原料粉体とを分離する。そうすることで、前記金属製異物が前記回転体を有する粉砕手段に入ること、及び前記金属製異物が製造されるトナーに入ることを防ぐことができる。
【0017】
前記金属製異物の材質としては、例えば、ステンレス、スチール、ジュラルミン(アルミ合金)、チタン合金などが挙げられる。
前記金属製異物の大きさとしては、例えば、1mm〜10mmなどが挙げられる。前記金属製異物の形状が不定形の場合、前記大きさは、前記金属製異物を内包する球の直径とする。
【0018】
<<異物分離室、投入管、及び排出管>>
前記異物分離室としては、前記トナー原料粉体中に含まれる前記金属製異物を、重力を利用して前記トナー原料粉体から分離するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記投入管としては、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室に供給するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記排出管としては、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室から排出するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記異物分離室、前記投入管、及び前記排出管は、それらの接続部が接合によって得られたものであってもよいし、それらの接続部が明確になっていないものであってもよい。前記接続部が明確になっていないものとしては、例えば、前記異物分離室、前記投入管、及び前記排出管が、1本の管から内径を変化させるなどして形成されたものであってもよい。
【0020】
前記異物分離室において、前記排出管と前記異物分離室との接続部は、前記投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されていることが好ましい。そうすることにより、重力をより効果的に利用して前記トナー原料粉体と前記金属製異物との分離を行うことができる。
【0021】
前記投入管における前記投入管と前記異物分離室との接続部側の一端の中心部は、前記一端と反対側の他端の中心部よりも、重力方向側にあることが好ましい。そうすることにより、前記異物分離室におけるサイクロンの発生を抑制し、前記金属製異物が前記トナー原料粉体と分離される前に前記排出管から排出されることを防ぐことができる。
前記投入管における前記投入管と前記異物分離室との接続部側の一端の中心部、及び前記一端と反対側の他端の中心部を結ぶ配管中心線と、重力方向と直交する方向とがなす角度は、0°超50°以下が好ましく、3°〜30°がより好ましい。そうすることにより、サイクロンの発生をより抑制できる。
【0022】
前記投入管は、前記投入管の内面の重力方向と反対方向側に、前記投入管における前記トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくする遮蔽部分を有することが好ましい。そうすることにより、前記異物分離室に堆積して損失となる前記トナー原料粉体の量を低減できる。また、前記異物分離室におけるサイクロンの発生を抑制する点でも、前記投入管が前記遮蔽部分を有することが好ましい。
前記遮蔽部分は、前記投入管における前記トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくするものであれば、その形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記遮蔽部分は、前記投入管の内面の重力方向と反対方向側から重力方向に向かって順次前記投入管の内面を遮蔽する構造であることが好ましい。
前記遮蔽部分は、前記投入管における前記トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を0%超60%以下に小さくすることが好ましく、20%〜30%小さくすることがより好ましい。言い換えれば、前記投入管における前記トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面における前記遮蔽部分の面積は、前記トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面における前記投入管の面積に対して、0%超60%以下が好ましく、20%〜30%がより好ましい。そうすることにより、前記異物分離室に沈降する前記トナー原料粉体の量をより低減できる。また、前記異物分離室におけるサイクロンの発生をより抑制できる。
【0023】
前記排出管は、前記異物分離室の重力方向と反対方向側の面に接続されていることが好ましい。そうすることにより、より効果的に前記トナー原料粉体と、前記金属製異物とを分離できる。
【0024】
前記異物分離室は、前記排出管と前記異物分離室との接続部に、前記異物分離室の内側に突出した突出部を有することが好ましい。そうすることにより、たとえ前記異物分離室内にサイクロンが発生しても、前記金属製異物が、前記排出管に入ることを防ぐことができる。
前記突出部の突出長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記異物分離室の重力方向の長さに対して、1%〜5%が好ましく、2%〜4%がより好ましい。前記突出長さが、1%未満であると、前記異物分離室内にサイクロンが発生しやすくなり、そのうず流により遠心力で前記金属製異物が前記排出管に流入することがあり、5%を超えると、前記投入管の断面積が小さくなることにより、吸引圧力損失が増大することで、吸引風量が低下し、粉砕処理能力を損なうことがある。前記突出長さが、前記より好ましい範囲内であると、前記金属製異物混入防止と粉砕処理能力確保の点で有利である。
ここで、前記異物分離室の重力方向の長さとは、例えば、
図1に示す異物分離室2においては、高さ方向の長さである。
【0025】
前記異物分離室において、前記排出管と前記異物分離室との接続部は、前記投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されており、前記排出管と前記異物分離室との接続部と、前記投入管と前記異物分離室との接続部との距離(L)は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
m×g×L
h>(1/2)×m×v
2 ・・・式(1)
ただし、上記式(1)中、L
hは、前記距離(L)の重力方向の成分〔m〕を表し、mは、前記金属製異物の質量〔g〕を表し、gは、重量加速度〔m/s
2〕を表し、vは、前記投入管と前記異物分離室との接続部における前記金属製異物の速度〔m/s〕を表す。
そうすることにより、前記投入管から前記異物分離室に入った前記金属製異物の運動エネルギー〔(1/2)mv
2〕よりも、前記投入管から前記排出管まで前記金属製異物を移動させる位置エネルギー(mgL
h)の方が大きくなるため、前記異物分離室内で前記金属製異物が前記異物分離室内の内壁などに当たり、突発的に前記排出管に向かって飛んでいっても、前記金属製異物は、前記排出管のある高さまで届かない。
ここで、例えば、前記金属製異物の質量mとしては、例えば、0.004g〜4.0gが挙げられる。前記投入管と前記異物分離室との接続部における前記金属製異物の速度vとしては、17.5m/s〜28.0m/sが好ましく、19.2m/s〜25.4m/sがより好ましい。
【0026】
前記異物分離室、前記投入管、前記排出管、前記遮蔽部分、及び前記突出部の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレスなどが挙げられる。
【0027】
前記異物分離室の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円筒形状などが挙げられる。
前記投入管の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記投入管の断面積が最小となる断面(ただし、前記遮蔽部分を含む断面を除く)において円形、楕円形などが挙げられる。
前記排出管の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記排出管の断面積が最小となる断面において円形、楕円形などが挙げられる。
【0028】
前記異物分離室の断面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.14m
2〜0.30m
2が好ましく、0.16m
2〜0.28m
2がより好ましく、0.17m
2〜0.25m
2が特に好ましい。
ここで、前記異物分離室の断面積とは、例えば、
図1に示す異物分離室2においては、重力方向に直交する方向の断面における、前記異物分室内の空間の断面積である。
【0029】
前記投入管の断面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.017m
2〜0.042m
2が好ましく、0.018m
2〜0.039m
2がより好ましく、0.020m
2〜0.035m
2が特に好ましい。
ここで、前記投入管の断面積とは、例えば、
図1に示す投入管3においては、トナー原料粉体の搬送方向(中心部23と中心部33とを結ぶ配管中心線と平行方向)に直交する方向の断面における、前記投入管内の空間の断面積である。
【0030】
前記排出管の断面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.020m
2〜0.059m
2が好ましく、0.022m
2〜0.054m
2がより好ましく、0.024m
2〜0.049m
2が特に好ましい。
ここで、前記排出管の断面積とは、例えば、
図1に示す排出管4においては、トナー原料粉体の搬送方向に直交する方向の断面における、前記排出管内の空間の断面積である。
【0031】
前記投入管の断面積(S1)と、前記異物分離室の断面積(S0)との比(S1/S0×100(%))としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%〜50%が好ましく、20%〜40%がより好ましい。
【0032】
前記排出管の断面積(S2)と、前記異物分離室の断面積(S0)との比(S2/S0×100(%))としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%〜50%が好ましく、20%〜40%がより好ましい。
【0033】
前記投入管における前記トナー原料粉体の搬送気体の速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、16.0m/s〜31.0m/sが好ましく、19.2m/s〜25.4m/sがより好ましい。前記速度が、16.0m/s未満であると、前記投入管内に前記トナー原料粉体が付着し、製造量を低下させること、及び配管詰まりにより、前記投入管内を前記トナー原料粉体で閉塞させることがあり、31.0m/sを超えると、風量が大きくなることで、圧力損失が増加し、この圧力損失を低下させるための設備スケールアップが必要になり、より多くの設備投資、設置スペース、及び付帯設備の追加を要することがある。前記速度が、前記より好ましい範囲内であると、投資コスト及びスペースミニマムで安定的な生産稼動の点で有利である。
【0034】
前記異物分離室における前記トナー原料粉体の搬送気体の速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0m/s以下が好ましく、2.1m/s〜2.9m/sがより好ましい。前記速度が、3.0m/sを超えると、旋回している沈降物が、前記異物分離室内の側面に生じた突起部に当って跳ね上がることがある。前記速度が、前記より好ましい範囲内であると、前記金属製異物の跳ね上がり抑制の点で有利である。
前記異物分離室における前記速度は、前記異物分離室において直接測定する必要はなく、例えば、前記トナー原料粉体を搬送するために用いる送風機の送風量と、前記異物分離室の断面積とから計算により求めることができる。
【0035】
前記投入管における前記トナー原料粉体の搬送気体の速度(Vin)と、前記異物分離室における前記トナー原料粉体の搬送気体の速度(Vout)との関係としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、次式Vin≧8×Voutを満たすことが、前記トナー原料粉体と前記金属製異物との分離の点で好ましい。
【0036】
前記異物分離室は、その室内に、前記粉体の搬送気体の流れを前記排出管へ誘導する案内板を有しないことが好ましい。前記案内板を有することにより、前記トナー原料粉体と前記金属製異物とが分離する前に、前記金属製異物を含んだ前記トナー原料粉体が前記排出管に達することがある。前記案内板としては、例えば、板状部材であって、前記板状部材の表面における前記表面と平行な一の方向が、前記排出管と前記異物分離室との接続部である排出口に向くように配置された板状部材などが挙げられる。
【0037】
ここで、図を用いて前記異物分離手段の一例を説明する。
図1は、異物分離手段の一例を示す概略断面図である。
図1の異物分離手段1は、異物分離室2と、投入管3と、排出管4とを有する。異物分離室2は、中空で円筒形状をしている。投入管3及び排出管4は、中空で円筒形状をしている。投入管3は、異物分離室2の側面(周面)の下方側(重力方向側)に接続されている。投入管3と異物分離室2との接続部は、投入口13を有している。排出管4は、異物分離室2の重力方向と反対方向側の面(上面)に接続されている。排出管4と異物分離室2との接続部は、排出口14を有している。
【0038】
図1において、投入管3における投入管3と異物分離室2との接続部側の一端の中心部23は、前記一端と反対側の他端の中心部33よりも、重力方向側(下方側)にある。そうすることにより、異物分離室2内において気流に乱れを生じさせ、サイクロンの発生を抑制し、前記金属製異物が前記トナー原料粉体と分離される前に排出管4から排出されることを防ぐことができる。
具体的には、
図1において、投入管3における投入管3と異物分離室2との接続部側の一端の中心部23、及び前記一端と反対側の他端の中心部33を結ぶ配管中心線43と、重力方向と直交する方向とがなす角度(θ)は、6°となっている。
【0039】
投入管3は、投入管3の内面の重力方向と反対方向側に、投入管3におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくする遮蔽部分5を有する。
図2は、
図1におけるA−A断面図である。
図2において、遮蔽部分5は、投入管3の内周上の2点X1及びX2を結ぶ弧(劣弧)X1X2と弦X1X2とで囲まれた弓形をしている。遮蔽部分5は、投入管3におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくしている。
図2に示す遮蔽部分5は、投入管3の内面の重力方向と反対方向側から重力方向に向かって順次投入管3の内面を遮蔽する構造となっている。
投入管3が遮蔽部分5を有さない場合、異物分離室2における投入管3の下部に定常的な渦が発生することがあり、この定常的な渦により、異物分離室2の重力方向の面(底面)にトナー原料粉体が堆積することがある。
投入管3が遮蔽部分5を有することで、非定常な渦を発生させることができ、前記定常的な渦によるトナー原料粉体の堆積を防ぐことができる。
また、投入管3が遮蔽部分5を有することで、異物分離室2におけるサイクロンの発生を抑制することもできる。
【0040】
なお、投入管3が遮蔽部分5を有することに加え、投入管3における投入管3と異物分離室2との接続部側の一端の中心部23が、前記一端と反対側の他端の中心部33よりも、重力方向側にあることを併用することにより、前記定常的な渦の領域を狭くでき、異物分離室2の重力方向の面(底面)へのトナー原料粉体の堆積を防ぐ効果は、より顕著になる。
【0041】
遮蔽部分5は、投入管3におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくするものであれば、その形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。遮蔽部分5は、
図1に示すような板状であってもよいし、
図3に示すような、断面において突起状であってもよい。また、遮蔽部分5は、
図4に示すように、投入管3の管壁を変形させて形成したものであってもよい。
【0042】
図1において、異物分離室2は、排出管4と異物分離室2との接続部に、異物分離室2の内側に突出した突出部6を有する。異物分離室2内にサイクロンが発生した場合でも、突出部6は、金属製異物が排出管4に入ることを防ぐ。
突出部6の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
図5に示すような、断面において突起状であってもよい。
図1において、突出部6の突出長さ(L
6)は、異物分離室2の重力方向の長さの3%である。
【0043】
図1に示す異物分離室2において、排出管4と異物分離室2との接続部と、投入管3と異物分離室2との接続部との距離(L)は、下記式(1)を満たすようになっている。
m×g×L
h>(1/2)×m×v
2 ・・・式(1)
ただし、上記式(1)中、L
hは、前記距離(L)の重力方向の成分〔m〕を表し、mは、前記金属製異物の質量〔g〕を表し、gは、重量加速度〔m/s
2〕を表し、vは、前記投入管と前記異物分離室との接続部における前記金属製異物の速度〔m/s〕を表す。
前記距離(L)とは、投入口13と排出口14との最短距離ということもできる。
前記式(1)を満たすことにより、投入管3から入った金属製異物の運動エネルギー〔(1/2)mv
2〕よりも、投入管3から排出管4まで前記金属製異物を移動させる位置エネルギー(mgL
h)の方が大きくなるため、異物分離室2内で前記金属製異物が異物分離室2内の内壁などに当たり、突発的に排出管4に向かって飛んでいっても、前記金属製異物は、排出管4がある高さまで届かない。
【0044】
なお、
図1に示す異物分離手段において遮蔽部分5、突出部6などを除いた異物分離手段についても、本発明では用いることができる。
図1に示す異物分離手段に類似した異物分離手段の一例を以下に示す。
図6に示す異物分離手段は、遮蔽部分及び突出部を有さない以外は、
図1に示す異物分離手段と同様の構成を有する異物分離手段の一例である。
図7に示す異物分離手段は、遮蔽部分を有さない以外は、
図1に示す異物分離手段と同様の構成を有する異物分離手段の一例である。
図8に示す異物分離手段は、突出部を有さない以外は、
図1に示す異物分離手段と同様の構成を有する異物分離手段の一例である。
図9に示す異物分離装置は、
図1における投入管3における投入管3と異物分離室2との接続部側の一端の中心部23、及び前記一端と反対側の他端の中心部33を結ぶ配管中心線43と、重力方向と直交する方向とがなす角度(θ)が、0°である以外は、
図1に示す異物分離装置と同様の構成を有する異物分離装置の一例である。
【0045】
本発明における異物分離手段は、
図1〜9に示す形状に限定されず、前記トナー原料粉体中に含まれる前記金属製異物を、重力を利用して前記トナー原料粉体から分離できる前記異物分離室を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2000−416号公報、特開平10−249120号公報、特開平9−276634号公報、特開平6−55022号公報などに記載の重力を利用した異物分離手段などを用いることもできる。
【0046】
これらの一例を、図を用いて簡単に説明する。
図10に示す異物分離手段201は、特開2000−416号公報に記載の異物分離手段と同様の異物分離手段の一例である。
図10に示す異物分離手段201は、異物分離室202と、投入管203と、排出管204とを有する。異物分離室202には、上方部に設けられた衝突板212により形成された沈降分離部213が設けられている。異物分離室202の下方部には、複数立設した格子板215により気体溜り部214が形成されている。
異物分離手段201の異物分離室202、投入管203、及び排出管204は、単一の配管を用い、衝突板212、及び格子板215により異物分離室202を区画することで、形成されている。
図10に示す異物分離手段201において、前記金属製異物が混入した前記トナー原料粉体が投入管203から異物分離室202に供給されると、前記トナー原料粉体が衝突板212にぶつかり、前記金属製異物は、重力により下部の気体溜り部214に落下し堆積していく。前記トナー原料粉体が複数の衝突板212にぶつかることで、前記トナー原料粉体に混入された前記金属製異物は、排出管204に達することなく気体溜り部214に落下し堆積していく。
一方、前記金属製異物が分離された前記トナー原料粉体は、衝突板212と格子板215との間を通過して排出管204から排出されていく。
【0047】
次に、
図11に示す異物分離手段301は、特開平10−249120号公報に記載の異物分離手段と同様の異物分離手段の一例である。
図11に示す異物分離手段301は、異物分離室302と、投入管303と、排出管304とを有する。投入管303は、異物分離室302の中程の側面に接続されている。排出管304は、異物分離室302の上方に接続されている。異物分離室302、投入管303、及び排出管304には、気体整流板311、312、313、314が設けられている。また、異物分離室302と排出管304との接続部には、トナー原料粉体は通過するが、トナー原料粉体より大きな金属製異物は通過しないフィルター315が設けられている。
投入管303から異物分離室302に供給された前記金属製異物が混入された前記トナー原料粉体は、異物分離室302において、重力を利用して前記金属製異物と分離される。前記トナー原料粉体から分離された前記金属製異物は、異物分離室302の下方の捕集部316に捕集される。前記金属製異物と分離された前記トナー原料粉体は、排出管304から排出される。
【0048】
次に、
図12に示す異物分離手段401は、特開平6−55022号公報に記載の異物分離手段と同様の異物分離手段の一例である。
図12に示す異物分離手段401は、異物分離室402と、投入管403と、排出管404とを有する。投入管403は、異物分離室402の側面に接続されている。排出管404は、異物分離室402の側面であって投入管403に対向する位置に接続されている。異物分離室402の下方には、捕集部411が設けられている。また、異物分離室402には、投入管403と、排出管404とを横断する方向に延びる山形三角形断面を有する気流案内板412が設けられている。
投入管403から異物分離室402に供給された前記金属製異物が混入された前記トナー原料粉体は、異物分離室402において、重力を利用して前記金属製異物と分離される。前記トナー原料粉体から分離された前記金属製異物は、異物分離室402の下方の捕集部411に捕集される。前記金属製異物と分離された前記トナー原料粉体は、排出管404から排出される。
【0049】
<<トナー原料粉体>>
前記トナー原料粉体は、トナーを製造するための原料粉体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記トナー原料粉体は、例えば、結着樹脂と着色剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0050】
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、エポキシ樹脂、COC(環状オレフィン樹脂(例えば、TOPAS−COC、Ticona社製))などが挙げられる。これらの中でも、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料などが挙げられる。
前記黒色顔料は、例えば、ブラックトナーに用いられる。前記黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト、ニグロシン染料、鉄黒などが挙げられる。
前記イエロー顔料は、例えば、イエロートナーに用いられる。前記イエロー顔料としては、例えば、シイ・アイ・ピグメントイエロー(C.I.Pigment Yellow)74、93、97、109、128、151、154、155、166、168、180、185、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエローなどが挙げられる。
前記マゼンタ顔料は、例えば、マゼンタトナーに用いられる。前記マゼンタ顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、シイ・アイ・ピグメントレッド(C.I.Pigment Red)48:2、57:1、58:2、5、31、146、147、150、176、184、269等のモノアゾ顔料などが挙げられる。
前記シアン顔料は、例えば、シアントナーに用いられる。前記シアン顔料としては、例えば、Cu−フタロシアニン顔料、Zn−フタロシアニン顔料、Al−フタロシアニン顔料などが挙げられる。
【0052】
前記トナー原料粉体の重量平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm〜500μmが好ましい。
前記重量平均粒子径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、SALD−3000J、株式会社島津製作所製)により測定できる。
【0053】
<粉砕手段、及び粉砕工程>
前記粉砕手段としては、回転体を有する粉砕手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記粉砕工程としては、前記異物分離工程において前記排出管から排出された前記トナー原料粉体を、回転体を有する粉砕手段により粉砕する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
前記回転体を有する粉砕手段としては、例えば、回転体を有し、回転体と前記トナー原料粉体との衝突、前記トナー原料粉体同士の衝突、及び前記回転体と、前記回転体の外周面の外側に間隙を設けて配置された固定子との作用の少なくともいずれかにより前記トナー原料粉体を粉砕する手段などが挙げられる。
【0055】
前記回転体を有する粉砕手段としては、回転体と、前記回転体の外周面の外側に間隙を設けて配置された固定子とを有する粉砕手段が、微粉砕が可能で前記トナー原料粉体の粉砕に適しており好ましい。
前記回転体は、前記回転体の外周面に、回転軸と平行な多数の凹凸を周方向に連続して有することが好ましい。
前記固定子は、前記固定子の内周面に、前記回転体の回転軸と平行な多数の凹凸を前記回転体の周方向に連続して有することが好ましい。
前記回転体及び前記固定子における凹凸の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
前記回転体を有する粉砕手段としては、例えば、特開2005−21768号公報、特開平11−319601号公報、特開2004−330062号公報、特開平11−276916号公報、特開2007−041496号公報に記載の回転体を有する粉砕手段などが挙げられる。
【0057】
前記回転体を有する粉砕手段としては、具体的には、例えば、ターボミル(例えば、フロイント・ターボ工業株式会社製)、ファインミル(例えば、日本コークス株式会社製)、クリプトロン(川崎重工業株式会社製)、ACMパルベライザー、APパルベライザー(ホソカワミクロン株式会社製)、アトマイザー(東京アトマイザー製造株式会社製)、トルネードミル(三庄インダストリー株式会社製)などが挙げられる。
【0058】
ここで、回転体を有する粉砕手段の一例を図を用いて説明する。
図13は、回転体を有する粉砕手段(粉砕機)の一例を示す概略断面である。
図13に示す粉砕機120は、基台121の上に横置きに設置された円筒形状のケーシング122を有する。ケーシング122の中には、円筒形状の回転体(ロータ)123が横置き配置され、この回転体123の軸124はケーシング122と同軸に配置されて、その一端がモータ125の出力軸に連結されている。ケーシング122は、その一端(
図13の左側端)に、トナー原料粉体を搬送気体と共に機内に供給する供給口126を有し、右端(
図13の右側端)には、図外の吸引送風機に連なる排出口127を有する。回転体123の回りには、ケーシング122と一体構造の固定子(ステータ)128を有し、固定子128と回転体123との間には間隙129が設けられている。回転体123及び固定子128には、その一方または両方に、チタンなどの耐摩耗性に優れた材料でライニング処理するのが好ましい。
【0059】
図14に、
図13のIV−IV部分断面図であり、粉砕機の回転体及び固定子の形状の一例を示す。
回転体123には、
図14に示すように、その外側表面に軸線方向に延びる複数の凹部130が円周方向に数mmの間隔を隔てて並設されて、隣接する凹部130と凹部130との間に軸線方向に延びる凸部131が形成され、凸部131の頂面131aは、回転体123の軸線を曲率中心とする円弧面で構成されている。回転体123の凹部130は、その深部から回転体123の回転方向Xの進み側に向けて傾斜して延びている。即ち、回転体123の凹部130は、深部の半円形の壁130aと、この深部壁130aの一端(回転体123の回転方向Xの遅れ側端)から接線方向に回転方向Xの進み側に向けて傾斜して延びる遅れ側壁130bと、深部壁130aの他端(回転体123の回転方向Xの進み側端)から接線方向に回転方向Xの進み側に向けて傾斜して延びる進み側壁130cとで形成されている。より具体的には、遅れ側壁130bは、回転体123の外周面と角度θ
2で交差し、また、進み側壁130cは、回転体123の外周面と角度θ
3で交差している。遅れ側壁130bの交差角度θ
2は30゜〜80゜から選択され、進み側壁130cの交差角度θ
3は30゜〜80゜から選択される。
【0060】
固定子128の内側表面には、
図14に示すように、軸線方向に延びる複数の凹部140が円周方向に数mmの間隔を隔てて並設されて、隣接する凹部140と凹部140との間に軸線方向に延びる凸部141が形成され、凸部141の頂面141aは、回転体123の軸線を曲率中心とする円弧面で構成されている。固定子128の凹部140は、その深部から回転方向Xの遅れ側に向けて傾斜して延びている。即ち、固定子128の凹部140は、深部の半円形の壁140aと、この深部壁140aの一端(回転方向Xの遅れ側端)から接線方向に回転方向Xの遅れ側に向けて傾斜して延びる遅れ側壁140bと、深部壁140aの他端(回転方向Xの進み側端)から接線方向に回転方向Xの遅れ側に向けて傾斜して延びる進み側壁140cとで形成されている。より具体的には、遅れ側壁140bは、固定子128の内周面と角度θ
4で交差し、また、進み側壁140cは、固定子128の内周面と角度θ
5で交差している。遅れ側壁140bの交差角度θ
4は30゜〜80゜から選択され、進み側壁140cの交差角度θ
5は30゜〜80゜から選択される。
【0061】
上記の粉砕機120によれば、排出口127に連結された送風機による吸引力によって、供給口126からのトナー原料粉体が搬送気体と共に機内を通過し、その際に粉砕作用を受けて粉砕され排出口127から外部に出る。
粉砕機120の機内で行われる粉砕は、回転体123と固定子128との間の間隙129に安定した螺旋状の気流が得られ、また、固定子128のU字形状の凹部140の中に渦度が高く且つ複数の渦が定常的に発生するため、ミクロンオーダーの比較的粒度分布の狭い製品を作ることができる。
【0062】
なお、
図13において、回転体及び固定子は、横置きに配置されていたが、縦置きに配置されてもよい。
【0063】
回転体を有する粉砕手段の他の一例を図を用いて説明する。
図15は、回転体を有する粉砕手段(粉砕機)の他の一例を示す概略断面である。
図15に示す粉砕機は、下方に気体導入口515を設け上方に気体及びトナー原料粉体の排出口516を設けた本体517を有している。本体517の内部は、筒状部材518によって外側の粉砕室Aと内側の分級室Bとに区分されている。粉砕室Aは、粉砕部材519を備えたロータ519Aを内蔵するとともに、下方側で気体導入口515に連通している。分級室Bは、粗粉と微粉を分級して微粉のみを通過させる分級機構520を経由して排出口516に連通している。尚、トナー原料粉体は、本体517の横側部に設けた投入口517Aから粉砕室Aに投入される。また、排出口516は図示しないバグフィルター内蔵の集塵機を通して外部に向けて吸引排気されている。ロータ519Aは、上下軸心周りに回転自在であり、ロータ519Aの外周部に、縦型ハンマータイプの粉砕部材519が粉砕室Aの内壁部に装着されたライナ521と間隙を隔てる状態で複数取付けられている。そして、粉砕室Aにおいて投入物が粉砕部材519から機械的衝撃力を受けて粉砕される。尚、過粉砕を避けるために、上記ロータ519Aの回転周速は150m/秒間以下に制限することが好ましい。
【0064】
分級機構520は、上下軸心周りに回転自在な回転体522の外周部に複数の分級羽根523を立設させた構造であり、粉砕物に作用する分級室Bから排出口516に向かう気流の搬送力と回転体522によって付与される遠心力の差によって微粉と粗粉を分離する。即ち、粉砕室Aから分級室Bに流入した粉砕物のうち、気流による搬送力の方が大きく作用する微粉は分級羽根523を通過して排出口516から排出され、遠心力の方が大きく作用する粗粉は分級羽根523を通過せずに筒状部材518の下方から粉砕室Aに戻る。
【0065】
次に、本発明におけるトナー製造方法の一例について図を用いて説明する。
図16は、本発明のトナー製造方法の一例の概略流れ図である。機械式粉砕機101を用いたトナーの製造において、第1温調機115に供給(流入)された気体(例えば、空気)は一定温度まで冷却され、除湿機116に供給される。除湿機116へ供給された気体は、あらかじめ決められている露点温度まで除湿され、第2温調機117へ供給される。第2温調機117へ供給された気体はあらかじめ決められている機械式粉砕機入口エアー温度まで冷却される。供給口106から供給されるトナー原料粉体105は、調温及び調湿された気体とともに、異物分離手段107に供給され、混入した金属製異物と分離される。金属製異物と分離されたトナー原料粉体105は、機械式粉砕機101に供給され、粉砕される。粉砕室104で処理された粉砕物108は、サイクロン109で捕集され、次工程で更に加工される。サイクロン109で捕集されないトナーはバグフィルター110で捕集され、再利用又は廃棄される。
図16において、111はブロワーである。ブロワー111から排気された気体は機械式粉砕機101の負荷にもよるが、その大半は第1温調機115の流入部へ供給される。この場合、気体を循環利用するため、特に調湿にかかるエネルギーを節約することができる。なお、
図16において、102は回転体、103は固定子、104aは粉砕機入口、104bは、粉砕機出口である。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
<トナー製造>
図16に示す装置構成により、トナー製造を行った。
【0068】
−トナー原料粉体の製造−
下記配合の混合物を溶融混練して冷却した後、更に粗粉砕して、重量平均粒子径が400μmの粗粉砕物(トナー原料粉体)を得た。
〔配合〕
スチレン−アクリル共重合体 100質量部
カーボンブラック 10質量部
ポリプロピレン 5質量部
サリチル酸亜鉛 2質量部
【0069】
−異物分離工程−
得られたトナー原料粉体を用い、
図17に示す異物分離手段を用いて異物分離工程を行った。評価のため、金属製異物として、直径1mmのステンレス製ボールを用いた。これは、混練機において発生する金属製異物の平均的な大きさを想定したものである。
前記トナー原料粉体100質量部に前記金属製異物0.1質量部(前記トナー原料粉体10kg当たり前記金属製異物を約2,500個)を混合したものを、送風機を用いて、前記トナー原料粉体としての供給量は10kg/hで異物分離手段に搬送し、異物分離工程を行った。
用いた異物分離手段の装置構成、及び異物分離工程の各条件について以下に示す。
【0070】
〔異物分離手段の装置構成〕
異物分離室2は、直径470mm×高さ627mmの円筒形状である。
投入管3は、直径160mmの円筒形状である。
排出管4は、長軸210mm、短軸150mmの楕円形円筒形状である。
投入管3は、異物分離室2下方側面に接続されている。
排出管4は、異物分離室2上面に接続されている。
投入管3における投入管3と異物分離室2との接続部側の一端の中心部23、及び前記一端と反対側の他端の中心部33を結ぶ配管中心線43と、重力方向と直交する方向とがなす角度(θ)は、6°である。
投入管3には、遮蔽部分5が形成されている。遮蔽部分5は、
図2に示すような、投入管3の内面の重力方向と反対方向側から重力方向に向かって順次投入管3の内面を遮蔽する構造をしている。遮蔽部分5は、投入管3におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を25%小さくしている。遮蔽部分5の厚みは3mmとした。
異物分離室2は、排出管4と異物分離室2との接続部に、異物分離室2の内側に突出した突出部6を有する。突出部6の突出長さ(L
6)は、20mmであり、異物分離室2の高さ627mmの3%である。突出部6の厚みは2mmとした。
排出管4と異物分離室2との接続部と、投入管3と異物分離室4との接続部との距離(L)は、前記式(1)を満たすようにした。
【0071】
投入管3における前記トナー原料粉体の搬送気体の速度(Vin)を25.0m/sとした。
異物分離室2における前記トナー原料粉体の搬送気体の速度(Vout)を2.5m/sとした。
【0072】
−粉砕工程−
異物分離工程に続いて、粉砕工程を行った。
図13に示す粉砕機(機械式粉砕機)を用いて粉砕を行った。回転体123と固定子128との間隙129は、1mmとした。回転体123の周速は、94.2m/s(3,000rpm)とした。粉砕機への前記トナー原料粉体の供給量は、10kg/hとした。
【0073】
粉砕機による粉砕後の粉砕物は、サイクロンにより微粉末を除去し、更に外添剤を添加してトナーを得た。
得られたトナーの体積平均粒子径は、9.5μmであった。
【0074】
〔評価〕
以下の評価を行った。結果を表1−1に示す。
【0075】
<異物分離率>
トナー製造を1時間行った後、異物分離室に残った金属製異物の質量を測定し、異物分離工程におけるトナー原料粉体からの異物分離率(%)を下記計算式から求めた。
異物分離率(%)=100×M1/M0
M0:評価中に異物分離室に入った金属製異物の質量
M1:評価後に異物分離室に残った金属製異物の質量
【0076】
<トナー帯電量>
トナー及びキャリアをトナー濃度7質量%の現像剤として温度40℃で湿度70%の環境下に2時間放置した。続いて、前記現像剤を金属ゲージに入れ、回転数285rpmの攪拌装置で所定時間攪拌混合した6gの初期剤から、1gの現像剤を計量した。計量した1gの現像剤を、東芝ケミカル株式会社製のブローオフ帯電量測定器を用いてトナーの帯電量を測定した。
【0077】
<感光体の損傷>
得られたトナーについて、株式会社リコー製のAficio MP301 SPFを用いて、画像面積率8%のチャートを用いて1万枚画像形成を行い、画像形成後の感光体の状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:感光体にキズの発生無し
×:感光体にキズの発生有り(1箇所〜4箇所)
××:感光体にキズの発生有り(5箇所以上)
【0078】
(実施例2〜6)
実施例1において、トナー原料粉体の供給量、及び粉砕機の条件を表1−1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー製造を行い、評価を行った。結果を表1−1に示す。
【0079】
(比較例1)
実施例1において、異物分離手段を用いず、異物分離工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてトナー製造を行い、評価を行った。結果を表1−2に示す。
【0080】
(比較例2〜6)
比較例1において、トナー原料粉体の供給量、及び粉砕機の条件を表1−2に記載の条件に変更した以外は、比較例1と同様にしてトナー製造を行い、評価を行った。結果を表1−2に示す。
【0081】
(実施例7〜21)
実施例1において、異物分離手段における各種条件を表1−3、及び表1−4に記載の条件に変えた以外は、実施例1と同様にしてトナー製造を行い、評価を行った。結果を表1−3、及び表1−4に示す。
【0082】
【表1-1】
【0083】
【表1-2】
【0084】
【表1-3】
【0085】
【表1-4】
表1−3、及び表1−4において、「重力方向と直交する方向とがなす角度θ」とは、「投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部、及び前記一端と反対側の他端の中心部を結ぶ配管中心線と、重力方向と直交する方向とがなす角度」を表す。「遮蔽部分面積率」とは、トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面における投入管の面積に対する遮蔽部分の面積(%)を表す。
【0086】
トナーの製造の際に異物分離手段を設けない比較例1〜6では、金属製異物がトナーに混入したことによると考えられる感光体の損傷が見られた。
また、比較例1〜6では、粉砕機の損傷、及び停止が起こった。
一方、異物分離手段を設けた実施例1〜21では、金属製異物による感光体の損傷は見られなかった。
投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部、及び前記一端と反対側の他端の中心部を結ぶ配管中心線と、重力方向と直交する方向とがなす角度が0°超50°以下であることにより、異物分離率は、98%以上となり、優れていた(例えば、実施例1、8〜13)。更に、前記角度が、3°〜30°であることにより、異物分離率は、100%となった(例えば、実施例1、9〜11)。
トナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面における投入管の面積に対する遮蔽部分の面積(遮蔽部分面積率)が0%超60%以下であることにより、異物分離率は、98%以上となり、優れていた(例えば、実施例1、14〜21)。更に、前記遮蔽部分面積率が、20%〜30%であることにより、異物分離率は、100%となった(例えば、実施例1、17〜18)。
実施例1〜21においては、粉砕機の損傷、及び停止は生じなかった。
なお、異物分離率が80%でも、感光体の損傷は生じなかった。これは、異物分離率が80%あると、分離されなかった金属製異物は、感光体を損傷させるまでの数量及びエネルギーを有していなかったためと考えられる。
【0087】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> トナー原料粉体中に含まれる金属製異物を、重力を利用して前記トナー原料粉体から分離する異物分離室と、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室に供給する投入管と、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室から排出する排出管とを有する異物分離手段と、
前記異物分離手段の前記排出管に接続された、回転体を有する粉砕手段とを有することを特徴とするトナー製造装置である。
<2> 異物分離室において、排出管と前記異物分離室との接続部が、投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されている前記<1>に記載のトナー製造装置である。
<3> 投入管における前記投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部が、前記一端と反対側の他端の中心部よりも、重力方向側にある前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナー製造装置である。
<4> 投入管における前記投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部、及び前記一端と反対側の他端の中心部を結ぶ配管中心線と、重力方向と直交する方向とがなす角度が、0°超50°以下である前記<3>に記載のトナー製造装置である。
<5> 投入管が、前記投入管の内面の重力方向と反対方向側に、前記投入管におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくする遮蔽部分を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナー製造装置である。
<6> 遮蔽部分が、投入管におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を20%〜30%小さくする前記<5>に記載のトナー製造装置である。
<7> 排出管が、異物分離室の重力方向と反対方向側の面に接続されている前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナー製造装置である。
<8> 異物分離室が、排出管と前記異物分離室との接続部に、前記異物分離室の内側に突出した突出部を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナー製造装置である。
<9> 粉砕手段が、回転体と、前記回転体の外周面の外側に間隙を設けて配置された固定子とを有する前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナー製造装置である。
<10> 異物分離室において、排出管と前記異物分離室との接続部が、投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されており、前記排出管と前記異物分離室との接続部と、前記投入管と前記異物分離室との接続部との距離(L)が、下記式(1)を満たす前記<1>から<9>のいずれかに記載のトナー製造装置である。
m×g×L
h>(1/2)×m×v
2 ・・・式(1)
ただし、上記式(1)中、L
hは、前記距離(L)の重力方向の成分〔m〕を表し、mは、金属製異物の質量〔g〕を表し、gは、重量加速度〔m/s
2〕を表し、vは、前記投入管と前記異物分離室との接続部における前記金属製異物の速度〔m/s〕を表す。
<11> トナー原料粉体中に含まれる金属製異物を、重力を利用して前記トナー原料粉体から分離する異物分離室と、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室に供給する投入管と、前記異物分離室に接続され、前記トナー原料粉体を前記異物分離室から排出する排出管とを有する異物分離手段の前記異物分離室において、重力を利用して前記トナー原料粉体中に含まれる前記金属製異物を前記トナー原料粉体から分離する異物分離工程と、
前記異物分離工程において前記排出管から排出された前記トナー原料粉体を、回転体を有する粉砕手段により粉砕する粉砕工程とを含むことを特徴とするトナー製造方法である。
<12> 異物分離室において、排出管と前記異物分離室との接続部が、投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されている前記<11>に記載のトナー製造方法である。
<13> 投入管における前記投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部が、前記一端と反対側の他端の中心部よりも、重力方向側にある前記<11>から<12>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<14> 投入管における前記投入管と異物分離室との接続部側の一端の中心部、及び前記一端と反対側の他端の中心部を結ぶ配管中心線と、重力方向と直交する方向とがなす角度が、0°超50°以下である前記<13>に記載のトナー製造方法である。
<15> 投入管が、前記投入管の内面の重力方向と反対方向側に、前記投入管におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を部分的に小さくする遮蔽部分を有する前記<11>から<14>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<16> 遮蔽部分が、投入管におけるトナー原料粉体の搬送方向と直交する方向の断面の面積を20%〜30%小さくする前記<15>に記載のトナー製造方法である。
<17> 排出管が、異物分離室の重力方向と反対方向側の面に接続されている前記<11>から<16>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<18> 異物分離室が、排出管と前記異物分離室との接続部に、前記異物分離室の内側に突出した突出部を有する前記<11>から<17>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<19> 粉砕手段が、回転体と、前記回転体の外周面の外側に間隙を設けて配置された固定子とを有する前記<11>から<18>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
<20> 異物分離室において、排出管と前記異物分離室との接続部が、投入管と前記異物分離室との接続部よりも、重力方向と反対方向側に配置されており、前記排出管と前記異物分離室との接続部と、前記投入管と前記異物分離室との接続部との距離(L)が、下記式(1)を満たす前記<11>から<19>のいずれかに記載のトナー製造方法である。
m×g×L
h>(1/2)×m×v
2 ・・・式(1)
ただし、上記式(1)中、L
hは、前記距離(L)の重力方向の成分〔m〕を表し、mは、金属製異物の質量〔g〕を表し、gは、重量加速度〔m/s
2〕を表し、vは、前記投入管と前記異物分離室との接続部における前記金属製異物の速度〔m/s〕を表す。