(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、特許文献1において、インバータで駆動される電動機を動力源として撹拌翼を備えた回転軸を回転することにより反応液の撹拌を行う反応器に設置される反応液の粘度検知装置を提案している。
【0003】
特許文献1では、電動機作動のために供給されている各種測定パラメータを用いて精度高く回転トルクの演算を行う方法、更には該回転トルクの検知値からバラツキの少ない反応液の粘度を検知する方法が示されており、この方法を採用した粘度検知装置は、以下の1)〜5)の各手段を有し、各計測器で計測される値から求められる投入電力(P
I)、損失電力(P
L)、角速度(ω)を基に、
T=(P
I−P
L)/ω
により回転トルク(T)を求め、この回転トルクから反応液の粘度を演算することを特徴としている。
1)電動機に供給されている電力を計測する電力計測器
2)電動機に供給されている電流を計測する電流計測器
3)電動機に供給されている電圧を計測する電圧計測器
4)電動機の回転軸の速度を計測する回転速度計測器
5)インバータ出力周波数を計測する周波数計測器
【0004】
特許文献1の粘度検知は、上記1)〜5)の各手段で得られた計測値に基づき、高い精度で回転トルクが検知でき、その結果として高い精度で反応液の相対的な粘度を知ることができる。
【0005】
特許文献1で検知する撹拌翼の回転トルクには、反応器に充填される反応液がゼロ時に発生する回転トルク成分、即ち、反応液の撹拌に寄与しない減速機や軸受け等の回転機械機構で発生する損失トルク(以下、単に空トルクと記す)が含まれる。そこで当該文献では、この値を予め測定しておいて定数として扱い、検知したトルク値から差し引く、即ち、空トルク補正を行うことによって、反応液の撹拌に使用される正味のトルクを求める手順が示されている。
【0006】
ところが、本発明者が更に鋭意検討の結果、長期に渡って継続的に使用する場合においては、特許文献1に示された方法には改善の必要があることが判明したのである。即ち、一年を通し環境温度の季節変動が大きい場合であって、誘導電動機の回転軸と撹拌翼を備えた回転軸との間に前記誘導電動機の回転速度を低減する潤滑油式減速機が設置されている場合においては、潤滑油の粘性抵抗が環境温度によって変化を来すので、信頼の高い粘度評価が困難である事態に遭遇したのである。
【0007】
上記課題を解決する手段としては、例えば、特許文献2には、前記潤滑油式減速機の潤滑油の温度を熱交換器で一定に調整してから原動機の回転軸にかかる回転トルクを測定し、該回転トルクを基に反応液の粘度を求める装置について記載されている。
【0008】
しかし、この公知慣用装置では、前記潤滑油式減速機の潤滑油の温度を制御するために熱交換器だけでなくポンプ等の付帯設備を設けることが必要不可欠となっており、反応製品を扱う化学工場等ではd2G4等の防爆設備基準を満たすための数々の工夫が要求されるため、大掛かり且つ複雑なものにならざるを得なかった。
以上の状況から、簡便でより精度の高い反応液の粘度検知装置を提供することが望まれる。
【0009】
更に、特許文献1に記載される粘度検知装置は回転速度を知るのに実体としての計測器を必要不可欠としている。回転速度を計測する機器には、計測の仕方に応じて接触式(機械式)と非接触式(光学式、電磁式)、計測信号の処理法に応じてはデジタル式とアナログ式、更には、使用場所に応じては防爆式と非防爆式とにそれぞれ分類され、何れも慣用機器として知られている。
【0010】
例えば、接触式と非接触式を兼ね備えたデジタルハンディタコメータ(小野測器HT−5500)、可視光方式のタコハイテスタ(日置電機FT3405)、電磁式回転計測器(日置電機MP−200)、防爆回転計測器(小野測器RP−200)などが知られており、これらの計測器は用途に応じて適切に選択されることによって何れも高精度かつ安全に使用可能なものである。
【0011】
可燃液体を含む反応液を扱う製造所で用いられる回転速度計測器は、防爆基準を満たす必要がある。防爆基準を満たす回転速度計測器は高価であり、当該粘度計の設置コストを上げるばかりでなく納期も長く、かつ設置時には生産停止も伴うために普及が図りにくいという問題があった。したがって、回転速度計測器を用いることなく、誘導電動機の回転速度を検知することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、前記背景技術に鑑み、公知慣用の前記潤滑油の温度調整装置を用いることなく、高い精度で反応液の粘度を検知する反応液の粘度検知方法と、当該粘度検知方法を備える反応液の粘度検知装置並びに該粘度検知装置を用いた反応液の生成装置を提供することである。
【0014】
また、本発明者は、公知慣用の実体としての回転速度計測器を用いない場合においても、回転速度計測器を用いた場合と同等の精度が得られる上記の方法並びに装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために、
誘導電動機を動力源として、攪拌翼を備えた回転軸を回転することにより反応液の攪拌を行う反応器であって、かつ、
前記誘導電動機の回転軸と、
前記撹拌翼を備えた回転軸と、の間に
前記誘導電動機の回転速度を低減する潤滑油式減速機が設置される、
反応器において、
前記反応液の粘度を検知する方法であって、
1)誘導電動機トルク(Ts)の検知工程、
2)潤滑油温度(t)を検知する温度検知工程、
の各工程を有し、前記各工程で得られた検知出力の値を基に、特定の演算を行うことで、精度の高い回転トルク(T)が演算できること、更に該回転トルク(T)の検知値を基に反応液の粘度を検知できる方法を見出すことにより、本発明の反応液の粘度検知方法を完成するに至った。
【0016】
本発明における反応液の粘度検知方法の特徴は、前記誘導電動機トルクTs、前記潤滑油温度tから、下記式
T = Ts − F(t)
として回転トルク(T)を求めることができることに着目した点にある。
但し、F(t)は、前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルク検知値を、温度を変化させて複数組検知した値に基づき、温度tで関数回帰させた式。
【0017】
即ち、本発明は、環境温度や運転時間で前記潤滑油の粘性抵抗が大きく変化することがあったとしても、前記潤滑油の粘性抵抗は温度に応じて決まるので、前記誘導電動機トルクTsから前記潤滑油の温度に基づいた前記反応液が空の状態のときのトルクを引くことによって、回転トルク(T)の検知精度が格段に高くなることを見出したことにある。
【0018】
更に、本発明は、実体としての回転速度計測器を用いない場合においても、
誘導電動機トルクTsを求める工程が、以下の工程を含むことを特徴とすることで、回転速度計測器を用いた場合と同等の結果が得られることを見出すに至った。
1)誘導電動機に投入電力Pが供給されているときの損失電力をP
Lとし、
該損失電力P
Lを誘導電動機の回転軸の回転速度に依存しない損失電力Aと回転速度に依存する損失電力Bとに区分し、
前記投入電力Pと前記損失電力Aの差分を前記誘導電動機の機械出力の一次近似値PM
1とみなし、前記誘導電動機について既知である出力PMとすべりSとの関係式PM
1=αS
1(αは電動機定数)から前記回転軸の回転速度の一次近似値N
1=N
S(1−S
1)(N
Sは同期速度)を求めるステップIと、
前記一次近似値N
1に基づいて、前記損失電力B
1を求めるステップIIと、
前記誘導電動機の出力の二次近似値PM
2をP−(A+B
1)とみなし、
前記誘導電動機について前記既知である出力PMとすべりSとの関係式PM
2=αS
2(αは電動機定数)から回転軸の回転速度の二次近似値N
2=N
S(1−S
2)(N
Sは電動機定数)を求めるステップIIIを含む回転速度検知工程。
2)前記投入電力P、前記損失電力A、前記回転速度検知工程のステップIで得られた前記損失電力B
1、前記ステップIIIで得られた前記回転速度の二次近似値N
2を基に、下記式
Ts=(P−(A+B
1))/(2π×N
2/60)
により前記誘導電動機トルクTsを求める回転トルク検知工程。
【0019】
また、本発明は、反応液の粘度を検知する装置に関し、
誘導電動機を動力源として、攪拌翼を備えた回転軸を回転することにより反応液の攪拌を行う反応器に設置され、かつ、
前記誘導電動機の回転軸と、
前記撹拌翼を備えた回転軸と、の間に
前記誘導電動機の回転速度を低減する潤滑油式減速機が設置される、
前記反応液の粘度を検知する装置であって、
前記装置は
1)前記誘導電動機トルク(Ts)の検知手段
2)潤滑油温度(t)を検知する温度検知手段
の各手段を有し、
前記反応液の粘度を、
前記誘導電動機トルクTsから、下記式
T = Ts − F(t)
により回転トルク(T)を求め、更に、該回転トルクから前記反応液の粘度を演算により求める演算手段を備えることを特徴とする反応液の粘度検知装置を作出するに至った。
但し、F(t)は、前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルク検知値を、温度を変化させて複数組検知した値に基づき、温度tで関数回帰させた式。
【0020】
また、本発明は反応液を生成する装置に関し、該反応液の粘度検知装置を用いることを特徴とする反応液の生成装置を作出するに至った。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、化学工場等の防爆区域に大掛かりな前記公知慣用装置を設けることなく、環境温度や運転時間で前記潤滑油式減速機の潤滑油の粘性抵抗が大きく変化しても高い精度で回転トルク(T)を検知でき、かつ、該回転トルク検出値を基に反応液の粘度を検知できる。また、実体としての速度計測器を設けることなく回転速度が検知できるので、前記速度計測器を用いる必要がない。従って、簡便でコストを低く抑えた反応液の粘度検知装置、並びにその装置を用いた反応液の生成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面をも参照しながら本発明を詳細に説明する。
本発明における反応液の粘度検知方法の特徴は、
誘導電動機を動力源として、攪拌翼を備えた回転軸を回転することにより反応液の攪拌を行う反応器であって、かつ、
前記誘導電動機の回転軸と、前記撹拌翼を備えた回転軸と、の間に前記誘導電動機の回転速度を低減する潤滑油式減速機が設置される反応器において、
前記反応液の粘度を検知する方法であって、
1)誘導電動機トルク(Ts)の検知工程、
2)潤滑油温度(t)を検知する温度検知工程、
の各工程を有し、前記各工程で得られた検知出力の値を基に、
T = Ts − F(t)
として回転トルク(T)を求め、更に該回転トルク(T)から反応液の粘度を演算により求めることができることにある。
つまり、式(1)により、前記攪拌翼の回転トルクを求める際に、前記潤滑油の温度の変化を加味する事で正確な回転トルクが得られるようになり、より高精度で粘度が検知できるようになることである。
但し、F(t)は、前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルク検知値を、温度を変化させて複数組検知した値に基づき、温度tで関数回帰させた式。
【0024】
前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルクを表す関係式T=F(t)について言及する。関数式F(t)は、前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルク検知値を、温度を変化させて複数組検知した値に基づき、温度tで関数回帰させた式である。回帰精度が高ければ多項式に限定する必要はなく、例えば、指数関数や、有理関数であっても良い。何れにせよ、この関数式は一般には
図5に示すような形をとり、曲線の形は誘導電動機容量、攪拌翼形状、回転速度及び減速機の潤滑油の種類によって変わるので、データ採りをする際には、実際に製造するときの攪拌翼回転速度で、かつ、実際に使用している減速機の潤滑油を用いて行うことで上記換算誤差を最小限に押さえることができる。
【0025】
次に、実体としての回転速度計測器を用いない場合において、
本発明の誘導電動機トルクTsを検知する工程における1)の工程は、誘導電動機を動力源として攪拌翼を供えた回転軸の回転速度を検知する工程である。この工程は以下のステップI〜IIIの工程を含む。
【0026】
ステップI:投入電力Pが供給されているときの損失電力をP
Lとし、かつ、前記損失電力P
Lが回転速度に依存しない損失電力Aと回転速度に依存する損失電力Bとからなる、誘導電動機における回転速度を検知する工程であって、前記電力Pと前記損失電力Aの差分[P−A]を前記誘導電動機の機械出力の一次近似値PM
1とみなし、前記誘導電動機について既知である出力PMとすべりSとの関係式PM
1=κS
1(κは電動機定数)から前記回転速度の一次近似値N
1=N
S(1−S
1)(N
Sは電動機定数)を求めるステップ。なお、N
Sは同期速度と呼ばれる電動機定数である。
【0027】
ステップII:ステップIで得た一次近似値N
1に基づいて、損失電力B
1を求めるステップ。
【0028】
ステップIII:前記電動機の出力の二次近似値PM
2をP−(A+B
1)とみなし、前記電動機について前記既知である出力PMとすべりSとの関係式PM
2=κS
2(κは電動機定数)から回転速度の二次近似値N
2=N
S(1−S
2)(N
Sは電動機定数)を求めるステップ。ここで、得られるN
2が、検知された回転速度の二次近似値として扱われる。
【0029】
[すべりSと機械出力PMについて]
以下、上記ステップIを詳細に説明する。
【0030】
すべりSは、よく知られているように、同期速度をN
S、回転子の回転速度(誘導電動機の実回転速度)Nとすると、下記式(1)により特定される。
【0031】
S=(N
S―N)/N
S …式(1)
なお、式(1)をNで解くと式(1’)の通りである。
N=N
S(1−S) …式(1')
つまり、すべりSが特定できれば、誘導電動機の回転速度を得ることができる。そこで、本発明者は誘導電動機の回転速度を求めるのにすべりSを利用することにした。なお、すべりSは誘導電動機に伴って提供される基本的な特性である。
【0032】
このすべりSと機械出力PMの関係が
図1に示されているが、定格機械出力PM
0、定格すべりS
0の範囲まで、つまり実用的な定格速度以下の運転においてではすべりSと機械出力PMはほぼ比例し直線的な関係にあり、以下の式(2)の関係が成立する。
この式(2)におけるκは誘導電動機に固有の定数であり、定格すべりS
0に対する定格機械出力PM
0の比PM
0/S
0として与えられる。
したがって、機械出力PMが判れば、すべりSが求められ、さらに回転速度(あるいは角速度)を求めることができる。
PM=κ×S …式(2)
【0033】
ところで、誘導電動機への投入電力Pは誘導電動機による機械出力PMのほかに損失(損失電力)として消費されるので、以下の式(3)が成り立つ。
PM=P−P
L …式(3)
ここで、誘導電動機の損失P
Lは、一次銅損、二次銅損、鉄損、機械損、及び浮遊損からなることが知られている。そして、一次銅損は固定子巻線の電気抵抗によるジュール熱、二次銅損は回転子巻線の電気抵抗によるジュール熱、に起因してそれぞれ発生する損失である。また、鉄損はヒステリシ損と渦電流損とから成り何れも回転磁界発生に起因する損失である。さらに、機械損は軸の回転によって生ずる摩擦や空気抵抗に起因する損失であり、浮遊損は誘導電機によって決まる固有損失であり定数として扱われる。浮遊損以外の損失は、誘導電導機を運転している時の電圧、電流、電源周波数、回転速度、及び電導機回路定数を使って演算で求めることができる(特許文献1 段落[0028]〜[0040])。なお、各損失の要素を以下に示しておく。
【0034】
[損失P
Lの要素]
一次銅損:∝ (一次電流I
1)
2
渦電流損:∝ (一次電圧V)
2
ヒステリシス損:∝ (一次電圧V)
2/ (周波数f)
二次銅損:∝ (二次電流I
2)
2 → φ(I
1,V,ω)
機械損:∝ (角速度ω)
浮遊損:一定
【0035】
以上の損失P
Lの各成分は、回転速度(角速度ω)に依存しないもの(非依存損失成分A)と依存するもの(依存損失成分B)とに区分できる。そして、非依存損失成分Aは、特許文献1が備えている電流計測器、電圧計測器により特定することができる。したがって、式(3)は式(3’)と示すことができる。
【0036】
PM=P−(A+B) …式(3’)
[非依存損失成分A] 一次銅損,渦電流損,ヒステリシス損,浮遊損
[依存損失成分B] 二次銅損,機械損
【0037】
したがって、依存損失成分Bを除外(B=B
0=0)し、損失電力として非依存損失成分Aだけを考慮して機械出力PMの一次近似値PM
1を下記の式(4)により求めることができる。
PM
1=P−A …式(4)
こうして、機械出力(一次近似値)が求められたので、上記の式(2)を適用することによりすべりの一次近似値S
1は下記の式(5)により求められる。
S
1=PM
1/κ=PM
1×S
0/P
0 …式(5)
さらに式(1')を適用することにより、下記の式(6)により、すべりの一次近似値S
1に対応する回転速度の一次近似値N
1を求めることができるのである。ここで、N
Sは同期速度である。
N
1=N
S(1−S
1) …式(6)
【0038】
以上までが、本発明のステップIに対応する説明であり、以下では本発明のステップII、IIIに関して説明する。なお、ステップIで得られる回転速度の一次近似値N
1は、使用目的によっては、回転速度の検知結果として扱うこともできる。
【0039】
ステップIIは、ステップIで得られた回転速度の一次近似値N
1に対応する依存損失成分の一次近似値B
1を、誘導電動機の等価回路の解析で得られる公知の関係式から、φ(N
1)として求める。
【0040】
続くステップIIIでは、非依存損失成分A及び依存損失成分の一次近似値B
1を式(3)に代入することにより得られる機械出力の二次近似値PM
2が以下の式(7)により与えられる。さらに一次近似の処理と同様にして、式(8)及び式(9)を経て、回転速度の二次近似値N
2を求めることができる。この二次近似値N
2は、二次近似値B
1ではあるものの依存損失成分が考慮されているので、一次近似値N
1よりも実回転速度に対する精度が高い。
PM
2=P−(A+B
1) …式(7)
S
2=PM
2/κ=PM
2×S
0/P
0 …式(8)
N
2=N
S(1−S
2) …式(9)
【0041】
以上のようにして、ステップIで一次近似速度を得、ステップIIではその速度に対応する回転速度に依存する損失電力を求め、ステップIIIではその損失分を全体の損失電力に組み入れることによって二次近似速度を求める。
【0042】
二次近似速度から三次近似速度を得るには、ステップIIに戻り前回の一次近似速度N
1を二次近似速度N
2に置き換え、このときの速度に対応する損失電力B
2を求める。次のステップIIIではステップIIで得た依存損失成分B
2を全体の損失電力に組み入れ、それに対応する回転速度を求めればよい。
【0043】
三次から四次に進む手順もステップII、ステップIIIを順次同様に繰り返すことで行うことができる。
本発明においては前記繰り返しの回数を多くするほど、損失電力P
Lの値が真の値に近づいていくことになるので、それによって得られる回転速度もより正確な値に近づいて行く。ただし、本発明は、次数を高くすることを必須な要件とするものではない。後述する実施例に示されるように、二次近似速度により、回転速度検知の目的を十分に達成することができる。
【0044】
なお、n次近似機械出力、n次近似回転速度及びn次近似依存損失成分の一般式を示すと以下の通りである。
PM
n=P−(A+B
(n−1)) …n次近似機械出力
N
n=N
S(1−S
n) …n次近似回転速度
B
n=φ(N
n) …n次近似依存損失成分
なお、以上の一般式のnは1以上の整数であり、B
0はゼロと見做す。
【0045】
本発明の誘導電動機トルクTsを検知する工程における2)工程は、誘導電動機を動力源とした攪拌翼の回転トルク検知工程である。
ここで、誘導電動機トルクTsは、投入電力Pと損失電力P
Lと誘導発電機の回転軸の角速度(ω)を用いて、以下の式により求めることができる。
Ts=(P−P
L)/ω…式(10)
更に、式(10)を、1)工程における二次近似値を用いて表すと
Ts=(P−(A+B
1))/(2π×N
2/60)…式(10−1)となる。
【0046】
[粘度測定]
本実施形態の粘度検知方法は、前記誘導電動機トルクTs、前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルクを表す関係式F(t)を基に、下記式
T = Ts − F(t)
により回転トルクTを求め、式(11)
η=αT/N (単位Pa・S) …式(11)
により粘度ηを求める。
ここで、κは反応釜や攪拌翼等によって決まる比例定数である。尚、粘度の検知目的が相対的な変化(絶対値でなく)である場合はκ=1として扱ってもよい。
【0047】
[投入電力P(W)]
本実施形態において、誘導電動機の回転トルクTsを求めるために投入電力Pが必要である。
投入電力Pとしては、投入電力計測値を用いる。計測には公知の電力計測器を用いることができる。電力計測器は、用いられる誘導電動機の種類によって、使い分けを行うことが必要で、例えば、誘導電動機が単相回路である場合は単相用電力計、3相誘導電動機である場合は3相用電力計を用いる。
【0048】
[損失電力P
L(W)]
また、誘導電動機の回転トルクTsを求めるために損失電力P
Lが必要である。
損失電力P
Lは、前述したように、一次銅損(∝(一次電流I
1)
2)、渦電流損(∝ (一次電圧V)
2)、ヒステリシス損(∝ (一次電圧V)
2/(周波数f))、二次銅損(∝ φ(I
1,V,ω))、機械損(∝ (角速度ω))及び浮遊損(一定)を含んでいる。
[非依存損失成分A(W)]
これらの中で、一次銅損、渦電流損及びヒステリシス損は、電流を計測する電流計測器、電圧を計測する電圧計測器及びインバータ出力周波数を計測するための周波数計測器から得られる計測値によって算出される。より具体的には、回転駆動中の電圧値、電流値及び周波数と、誘導電動機に固有の回路定数を用い、所定演算を行うことにより求めることができる。ここで回路定数は、電動機メーカーから提供される試験表によっても、又は、誘電電動機の負荷試験による計測値によっても得ることができる。また、浮遊損は、誘電電動機に固有の値(固定損(単位W)として提供される。
【0049】
一次銅損、渦電流損及びヒステリシス損は、各々以下の一般式で表される。
一次銅損=一次巻線抵抗×(一相電流)
2×誘電電動機の相数式
渦電流損=定格電圧で運転時の渦電流損×(一相電圧計測値/定格相電圧)
2(単位W)
ヒステリシス損=定格電圧及び定格周波数で運転時のヒステリシス損×(一相電圧計測値 / 定格相電圧)
2/(インバータ出力周波数計測値/定格周波数)(単位Hz)
【0050】
[依存損失成分B
n(W)]
これに対して、二次銅損及び機械損は、誘電電動機の回転速度に依存する成分であり、前述した依存損失成分B
nを用いることができる。ただし、一次近似回転速度N
1を求める段階では依存損失成分B
nは得られていないので、損失電力P
Lは非依存損失成分Aだけを含むが、二次近似以降になると、損失電力P
Lは非依存損失成分Aに加えて依存損失成分B
1、B
2…を含むことになる。
【0051】
依存損失成分B
nである二次銅損及び機械損については、以上の他に、n次近似回転速度N
nから求めることもできる。つまり、二次銅損及び機械損は角速度ωを変数としているところ、角速度ωは回転速度Nとω=2πN( rad/s )の関係にあるので、n次近似回転速度N
nを二次銅損及び機械損の各々関係式に代入すれば、二次銅損及び機械損を求めることができる。
【0052】
[機械出力PM(W),回転トルクTs(N・m)]
機械出力PMは、投入電力Pから各損失電力を差し引いた値であるが、本実施形態では、前述のように、一般式:PM
n=P−(A+B
(n−1))で求められる。
【0053】
従って、誘電電動機の回転トルクTsは、前述したn次近似回転速度Nnをも用いて前述した式(10)により求め、得られた回転トルクT
n、n次近似回転速度N
nを用いて前述した式(11)により液状物の粘度ηを以下のように求めることができる。
Ts
n=(P−P
L)/ω=PM
n/ω
n=PM
n/(2π×N
n/60)…式(10−2)
【0054】
ところで、このようにして求めたトルクは、環境温度や運転時間で前記潤滑油式減速機の潤滑油の粘性抵抗が大きく変化することによって値が当然変るものなので、普遍性のある物性表現とするには甚だ不都合である。そこで当該製造装置で製造する反応器毎に前記潤滑油式減速機の潤滑油の温度を測定し、環境温度や運転時間で前記潤滑油式減速機の潤滑油の粘性抵抗が大きく変化したとしても、前記潤滑油の温度に基づいた値に換算する必要がある。
【0055】
そこで前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルクを表す関係式T=F(t)を導入し、運転時の潤滑油の温度がtである時の値に換算したものとするために、式(10−2)を改めて次のように書きなおす。
T
n=Ts
n− F(t) …式(10−3)
T
n=PM
n/(2π×N
n/60)− F(t) …式(10−4)
このようにした求めたトルクから反応生成物粘度は以下のように求めることができる。
η
n=αT
n/N
n(単位Pa・S) …式(11)
ここでαは前記攪拌翼の構造等で決定される定数である。
【0056】
以下、式(11)について言及しておく。
ニュートンの式によれば、厚さhの液体を間に挟んだ2枚の面積Aの平面が相対速度Uで運動する時発生する力Fは、ηが粘度を表すとして、以下の式(12)で表される。
F=ηAU/h(単位N) …式(12)
ここで、
図2に表される反応容器において、rは撹拌翼半径、Lは撹拌翼が撹拌対象である液状物に没している長さ、Nは回転数、Fは距離rにおいて撹拌翼に発生する力、gは撹拌翼と反応釜との距離を表すとすると、上記式(12)式は以下の式(13)のように表される。
【0057】
F=η(2πrL・2πrN)/g …式(13)
従って、
回転トルク(T)=F・r=η(2πrl・2πrN)/g・r(単位N・m)
であるので、
η=T・g/(2πrl・2πrN・r)となる。
【0058】
しかるに、T、N以外は反応容器及び撹拌翼の寸法によって決定される定数なので、これをαと表記することにすると、粘度ηは式(11)のように表され、本実施形態により、相対的に液状物の粘度を求めることができる。
η=αT/N …式(11)
【0059】
本実施形態は、その実施にあたっては、その出力周波数を他の計測量である電力、電圧、電流等と共に同期的に計測し、損失を求める各種変数に組み込めばよい。本実施形態においては、ヒステリシス損の検知にインバータ出力周波数を検知するための周波数計測値を組み込むことにより、検知される反応液粘度の変動(バラツキ)を小さくすることが可能となり、反応工程管理上好ましいものとなる。
【0060】
[同期計測]
本実施形態において、負荷の時間変動が速い場合は、各計測器における計測タイミングのズレがエネルギーの入出力の総和がゼロになるというエネルギー保存則の前提を崩してしまうため、各計測器における計測は同期的に行われることが望ましい。但し、負荷の変動が緩やかであって、全ての計測値を採取し終えるまでの間に計測値が実質的に変化しないと言えるような場合はこの限りではない。
【0061】
さらに負荷の時間変動が激しい場合には、計測器の他に、各計測器に対して一斉に計測指令を出すための同期信号発生手段が設けられて、各計測器による計測が同期的に行われるようにすることもできる。
【0062】
以上の本実施形態による回転速度及び回転トルクの検知方法は、適用される具体的な用途は限定されるものでなく、その一例として反応液の粘度検知が掲げられる。反応の進行に応じて反応液の粘度が変動するので、粘度を検知することにより、反応の進行状況を把握することができる。この場合、誘電電動機を動力源とする軸の回転速度、回転トルクを検知し、更に反応液粘度を検知するための装置であって、誘電電動機に供給されている電力を計測する電力計測器、電流を計測する電流計測器、電圧を計測する電圧計測器、及びインバータ出力周波数を計測するための周波数計測器を備える。そして、各手段で得られた計測情報に基づき所定の演算を行うことにより回転速度、回転トルクを求め、さらに液状物の粘度を演算により求める演算処理部を備えるものである。電力、電圧、電流及び周波数の各計測器としては公知慣用の計測器を用いることができる。
【0063】
この演算処理部には、ノート型、ディスクトップ型等の各種パーソナルコンピュータ、或いはプロセスコンピュータ等の公知慣用の演算処理機能を有する手段を用いることができる。これら演算処理部並び各計測器との間にはRS−232C、GP−IP、USB、ISA、PCI等の公知慣用のデータ通信機能があってもよいし、また前述した同期信号発生手段がコンピュータ等からの命令で代用されるものであってもよい。
【0064】
以下、本実施形態による回転速度(回転トルク,粘度)検知方法を実行する検知装置1の一例について、
図3を参照しながら説明する。
検知装置1は、反応釜12内に投入された液状物、例えば化学反応製品を誘導電動機9により回転駆動される撹拌翼13の回転速度を検知するものである。
検知装置1は、計測部2と演算処理部5を備えている。
【0065】
計測部2は、三相交流回路の電力計、電圧計4チャンネル、電流計4チャンネル及び周波数計の、合わせて4つの機能を一つのユニットに組み込んでパッケージ化されたものであり、電圧引き込み線6及び電流引き込み線7により三相交流回路と接続されている。なお、計測部2は各計測器が個別に設けられていてもよいことはいうまでもない。
【0066】
なお、
図3は撹拌翼13の動力源である誘導電動機9が三相回路であることを想定したものであり、公知慣用の三相用の電力計が用いられるべきこと、また、その場合、電圧及び電流共に相毎に計測され、回転速度を算出する演算も相毎に行われて合成されるべきことは言うまでもない。また対象とする誘導電動機が単層回路の場合、又は直流電源で駆動する直流電動機であっても本発明を同様に適用することができる。
【0067】
演算処理部5は、例えばパーソナルコンピュータから構成され、計測部2の動作を制御するとともに、計測部2で計測された電力値、電圧値、電流値及び周波数を取得して、上述した誘導電動機9の回転速度、回転トルクを求めるための演算処理を行うとともに、その結果に基づいて液状物の粘度を求める演算処理を行う。
【0068】
計測部2において、各計測器における計測は、通信ケーブル8を介して、演算処理部5からの命令で一斉に同期的に行われる。演算処理部5は、回転速度、回転トルク、反応液の粘度を求めるための演算処理を実行するプログラム及び誘導電動機9の固定損失等の演算処理に必要な情報を保持しており、計測情報に基づいて回転速度を算出するための演算を行い、結果を画面や内部の情報記録手段等に出力する。
【0069】
誘導電動機9は、減速機10を介して撹拌軸11と接続され、この撹拌軸11には撹拌翼13が取り付けられる。更に、誘導電動機9の回転軸と撹拌軸11を備えた回転軸との間に潤滑油式減速機16が取り付けられる。撹拌翼13は反応釜12内に配置され、反応釜12に投入される被反応物を誘導電動機9の回転にしたがって撹拌する。誘導電動機9は、三相電源15からの電力がインバータ14を介して供給される。
【0070】
以上の構成を有する検知装置1によると、オペレータは演算処理部5のモニタ画面上に表示された回転速度値、回転トルク値及び反応液の粘度をリアルタイムで知ることができる。
なお、本発明における回転速度検知は、電動機出力とすべりの高い直線性を利用して行うので直線性が崩れる大出力領域(定格出力を超える)では誤差が大きくなる。しかしながら産業界における誘電電動機の使用実態、特に、化学反応を伴う樹脂製造の工程においては、誘電電動機の大多数が定格出力以下、更には定格出力の50%前後で使用されているので上記誤差が問題になることは殆どない。
【0071】
[巻線抵抗の温度補正]
ところで、一次銅損を求める際に巻線抵抗の値を用いるが、巻線抵抗は、通常基準温度(20℃)での値が提供される。したがって、一次銅損を求めるにあたっては、実際の運転温度で補正した値を用いると回転速度、ひいては回転トルク及び反応液の粘度の検知精度をより高めることができる。
この温度補正については、特許文献1に記載された手順に準じて行えばよいので、ここでの再掲は省略する。以下に示す空トルク補正、粘度の温度補正、粘度の仕込み量の補正についても同様であり、ここでの再掲は省略する。
【0072】
[空トルク補正]
式(10)によって求められるトルクは、反応釜の内容物が空の場合であっても減速機や軸受けの機械摩擦など発生している成分である空トルクを含む。当該空トルクには環境温度や運転時間で大きく変化する減速機の潤滑油の粘性抵抗が含まれており、製造時の潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルクを予め検知しておいてこれを変数として扱い、粘度を求める際に誘導電動機トルクTsから当該変数を式(1)のように差し引くことで粘度の検知精度をより高めることができる。
【0073】
[粘度の温度補正]
一般に反応温度は製品毎によって決められるので反応釜には温度制御機能が備えられる。温度制御誤差の粘度影響が無視できる場合にはこの補正は不要であるが現実には±1〜3℃程度の誤差は避けられないので、予め定められる温度(標準反応温度)での値に補正した値を用いると検知精度を高めることができる。
【0074】
[粘度の仕込み量の補正]
また、本実施形態において、予め定められた反応釜での製造単位あたりの標準仕込み量と、当該製造単位における実仕込み量が異なる場合に、両者の仕込み量の差に基づいて反応液粘度値を補正することで検知精度を高めることができる。
【実施例】
【0075】
以下、ポリウレタン樹脂を含む反応液の製造に本発明を適用した例を説明する。なお、この反応液の製造には、
図3に示す装置を用いた。誘導電動機9の仕様は以下の通りである。
三相誘導電動機(Y結線)の仕様
容量:22kW 定格速度:毎分975回転(定格すべり0.025)
定格電圧:200V 定格電流:79A 定格周波数:50Hz
極数:6
一次巻線抵抗:0.0358Ω
一次巻線リアクタンス:0.2010Ω(定格周波数時)
二次巻線抵抗:0.0310Ω
二次巻線リアクタンス:0.1797Ω(定格周波数時)
抵抗計測基準温度:20℃ 抵抗温度係数:234.5
機械損:130W(定格速度時)
鉄損:650W(設計値:ヒステリシス損350W、渦電流損300W)
浮遊損:110W 撹拌軸減速比:16.7:1
【0076】
本実施例における製品はジエチレングリコールに、トルエンジイソシアネート(2,4体:2,6体=95以上:5以下)を分割的に投入することによって重合反応を促進して得られるポリウレタン樹脂製品である。本実施例での反応温度は80℃であり、仕込み量は4500kgである。
【0077】
比較例は、上記と同様の原料と反応条件を用い、前記特許文献1に示す方法にてウポリウレタン樹脂を製造した。
【0078】
実施例で用いた
図3に示す計測部2は、遠隔計測監視システム2300(日置電機)を用いた。この計測器は、計測モジュールを適宜選択することによって三相交流回路の電力計、電圧計、電流計及び周波数計の、合わせて4つの機能を一つのユニットに組み込んだものである。同様の計測機能であればこれ以外の計測器であっても用いることができる。
【0079】
演算処理部(PC)5は、計測部2から通信手段を通じてデータを入手し、所定演算を行って回転速度、回転トルクを算出する演算機能と、各計測手段に対して一斉に計測タイミング信号を発する同期信号発生手段を兼ねる。各計測手段は演算処理部5からの指令で一斉に、単位時間あたり所定回数の計測を行い、その平均値を演算処理部5が取り込んで回転速度、回転トルク、粘度を算出する。
【0080】
図4は、誘導電動機トルクTsを求める工程における1)の工程で得られる回転速度(二次近似値N
2 図中の「1」)と実回転速度(図中の「2」)を併記した回転速度チャートを示す。この図から、本実施例において検知された回転速度は、実回転速度との差異が小さく、実回転速度を反映していることがわかる。
【0081】
また、本実施例において、本発明の反応液の粘度を検知する方法における前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルクを表す関係式T=F(t)は、
図5における前記潤滑油の温度がtである時の前記反応液が空の状態のときのトルクの関係を表すグラフから回帰させて得た。
【0082】
T=690.38*EXP(−0.010*t)である。
尚、この関数式において、例えば潤滑油の温度がt=30℃であるときの前記空トルクは511Nmである。
【0083】
図6は特許文献1を適用して検知された反応液の粘度との相関分析を示す。
図6が示すように、特許文献1の手順で検知された粘度では、前記潤滑油の温度が低下するにつれ粘度が上昇する傾向を示しており、前記潤滑油の温度変化が大きくなると粘度のバラツキが大きくなることが読み取れる(寄与率0.53)。一方、
図7は本発明を適用して検知された反応液の粘度との相関分析を示しており、環境温度や運転時間によって変化する前記潤滑油の粘性抵抗を考慮に入れているので、前記潤滑油の温度変化が大きくなったとして粘度のバラツキは小さくなっていることが読み取れる(寄与率0.91)。
【0084】
尚、
図6における粘度単位の表記は、校正された一般の粘度計が出力するものと区別するために、接頭語rを付加して便宜的にrPa.Sを用いている。rPa.Sで表される相対粘度は、数値上は電動機、減速機及び攪拌翼から成る攪拌系固有のものとなり、従って、攪拌系が変わればその値も全体的に大きくなったり小さくなったりすることはある。しかしながら当該系内における粘度の相対的変化を検知する上での支障はない。
【0085】
以上、本発明は、化学工場等の防爆区域に大掛かりな前記公知慣用装置を設けることなく、環境温度や運転時間によって変化する前記潤滑油の粘性抵抗を考慮に入れているので、より高精度の回転トルクTから粘度を求めることができるようになり、不偏性のある粘度評価ができるようになる。
また、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、本発明は前記潤滑油の温度を検知して適用することに限定されるものではなく、周囲の外気温度或いは減速機の表面温度を検知し、本発明に前記潤滑油の温度の代わりにその温度を適用することでも同様の効果が得られることから、周囲の外気温度及び減速機の表面温度も許容する。