特許第6024433号(P6024433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6024433基板処理装置、基板処理システム及び搬送容器の異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024433
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システム及び搬送容器の異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-269601(P2012-269601)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-116464(P2014-116464A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝洋
(72)【発明者】
【氏名】須中 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】榎木田 卓
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−517463(JP,A)
【文献】 特開2011−165719(JP,A)
【文献】 特開2011−091197(JP,A)
【文献】 特開2003−315197(JP,A)
【文献】 特開2003−224182(JP,A)
【文献】 特開2002−164411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の前面の基板取り出し口が蓋体により気密に塞がれ、複数の基板を収納して搬送するための搬送容器から基板を取り出して処理する基板処理装置において、
前記搬送容器が搬入及び搬出されるロードポートと、
前記ロードポートにおける操作を制御する装置コントローラと、を備え、
前記装置コントローラは、
搬送容器の識別符号に基づいて、外部から送られた当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、を対応付けたパラメータ値の推移データを記憶する記憶部と、
当該基板処理装置のロードポートに搬送容器が搬入された後、当該搬送容器の搬入及び搬出のうち少なくとも一方に伴う前記パラメータ値と、当該搬送容器にかかる前記パラメータ値の過去の推移データと、に基づいて当該搬送容器の異常の有無を判定する判定部と、を備え、
前記パラメータ値は、蓋体を取り外すために蓋体のロック状態を解除する操作のやり直し回数を含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記パラメータ値は、搬送容器を載置部に載置した後、搬送容器の蓋体を取り外す位置まで移動させるための駆動に関する値を含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、使用回数が設定値を越えた搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該搬送容器に異常が有る判定を行うことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
容器本体の前面の基板取り出し口が蓋体により気密に塞がれ、複数の基板を収納して搬送するための搬送容器が搬入及び搬出されるロードポートと、このロードポートに搬入された搬送容器から取り出された基板を処理するための基板処理部と、前記ロードポートにおける操作を制御する装置コントローラと、を各々備えた複数の基板処理装置と、
前記複数の基板処理装置の各々と通信を行うホストコンピュータと、を備え、
前記ホストコンピュータは、
搬送容器の識別符号に基づいて、外部から送られた当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、
基板処理装置のロードポートに搬送容器が搬入された後、当該搬送容器の搬入及び搬出のうち少なくとも一方に伴う前記パラメータ値と、当該搬送容器にかかる前記パラメータ値の過去の推移データと、に基づいて当該搬送容器の異常の有無を判定する判定部と、を備え
前記パラメータ値は、蓋体を取り外すために蓋体のロック状態を解除する操作のやり直し回数を含むことを特徴とする基板処理システム。
【請求項5】
前記パラメータ値は、搬送容器を載置部に載置した後、搬送容器の蓋体を取り外す位置まで移動させるための駆動に関する値を含むことを特徴とする請求項4記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記判定部は、使用回数が設定値を越えた搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該搬送容器に異常が有る判定を行うことを特徴とする請求項4または5記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記判定部は、一の基板処理装置のロードポートにおいて使用回数が設定値以下である一の搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該一の搬送容器よりも前に当該ロードポートに搬入された他の搬送容器から取得されたパラメータ値の異常の有無に基づいて、当該ロードポートの異常の有無を判定することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一つに記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記判定部は、一の基板処理装置のロードポートにおいて使用回数が設定値以下である搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該搬送容器が前記一の基板処理装置に搬送される前に搬送された他の基板処理装置にて取得された前記パラメータ値の異常の有無に基づいて、前記搬送容器の異常の有無を判定することを特徴とする請求項4ないし7のいずれか一つに記載の基板処理システム。
【請求項9】
容器本体の前面の基板取り出し口が蓋体により気密に塞がれ、複数の基板を収納して搬送するための搬送容器の異常を検出する方法において、
前記搬送容器から取り出された基板を処理する基板処理装置のロードポートに搬送容器を搬入する工程と、
前記ロードポートから搬送容器を搬出する工程と、
搬送容器の識別符号に基づいて、外部から送られた当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、を対応付けたパラメータ値の推移データを記憶する工程と、
前記パラメータ値の推移データに基づいて搬送容器の異常の有無を判定する工程と、を含み、
前記パラメータ値は、蓋体を取り外すために蓋体のロック状態を解除する操作のやり直し回数を含むことを特徴とする搬送容器の異常検出方法。
【請求項10】
前記パラメータ値は、搬送容器を載置部に載置した後、搬送容器の蓋体を取り外す位置まで移動させるための駆動に関する値を含むことを特徴とする請求項9記載の搬送容器の異常検出方法。
【請求項11】
前記搬送容器の異常の有無を判定する工程は、
使用回数が設定値を越えた搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該搬送容器に異常が有る判定を行うことを特徴とする請求項9または10記載の搬送容器の異常検出方法。
【請求項12】
一の基板処理装置のロードポートにおいて使用回数が設定値以下である一の搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該一の搬送容器よりも前に当該ロードポートに搬入された他の搬送容器から取得されたパラメータ値の異常の有無に基づいて、当該ロードポートの異常の有無を判定する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか一つに記載の搬送容器の異常検出方法。
【請求項13】
前記搬送容器の異常の有無を判定する工程は、
一の基板処理装置のロードポートにおいて、使用回数が設定値以下である搬送容器について取得された前記パラメータ値が異常であるときに、当該搬送容器が前記一の基板処理装置に搬送される前に搬送された他の基板処理装置にて取得された前記パラメータ値の異常の有無に基づいて、前記搬送容器の異常の有無を判定する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか一つに記載の搬送容器の異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送容器により搬入された基板を処理する装置において、搬送容器の異常を監視する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場においては、半導体基板を搬送容器内に収納し、搬送容器を自動搬送ロボット(AGV)や天井搬送装置(OHT)により半導体製造装置に搬送するようにしている。半導体製造装置は、搬送容器の搬入搬出ポートと、半導体基板に対して処理を行う処理ブロックと、を備えている。搬送容器としては蓋体を前面に備えた密閉型のものが主流であり、12インチ半導体ウエハの場合には、FOUPと略称されているものが使用されている。
【0003】
FOUPは、樹脂からなる搬送容器(容器本体)の前面に蓋体が設けられ、当該蓋体は2個の鍵穴を備えている。特許文献1にはその構成の一例が示されている。前記搬入搬出ポートは通常ロードポートと呼ばれ、FOUPが外部から載置されるステージを備えている。より詳しくはロードポートは、ステージをモータやエアシリンダなどの駆動機構により隔壁に押し付け、隔壁に形成された開口部を介して装置側から蓋体の鍵穴にキー(開閉機構)を差し込んで回し、キーを後退させて蓋体を取り外すように構成されている。
【0004】
半導体製造装置としては、半導体製造工程の各プロセスに応じた装置が用いられ、成膜装置、マスクパターンを形成する装置、エッチング装置、洗浄装置などがあり、半導体基板は搬送容器によりこれらの間を順次搬送される。そして最近は益々単位時間当たりの処理枚数が増加していることから、FOUPの使用頻度がかなり高く、このためFOUPの不具合が発生する確率が高くなっている。
【0005】
FOUPに異常が起こると(不具合が発生すると)、蓋体などの部品が落下したりするトラブルが起こる懸念がある。そしてロードポートにて、そのようなトラブルが起こると、半導体製造装置のラインを一旦中断せざる得ない場合も想定され、従ってFOUPが異常に至る前に事前にFOUPの状態を把握できることが望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−119427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情においてなされたものであり、その目的は、基板を収納して基板処理装置に搬入するための搬送容器についていち早く異常を検出できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理装置は、容器本体の前面の基板取り出し口が蓋体により気密に塞がれ、複数の基板を収納して搬送するための搬送容器から基板を取り出して処理する基板処理装置において、
前記搬送容器が搬入及び搬出されるロードポートと、
前記ロードポートにおける操作を制御する装置コントローラと、を備え、
前記装置コントローラは、
搬送容器の識別符号に基づいて、外部から送られた当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、を対応付けたパラメータ値の推移データを記憶する記憶部と、
当該基板処理装置のロードポートに搬送容器が搬入された後、当該搬送容器の搬入及び搬出のうち少なくとも一方に伴う前記パラメータ値と、当該搬送容器にかかる前記パラメータ値の過去の推移データと、に基づいて当該搬送容器の異常の有無を判定する判定部と、を備え、
前記パラメータ値は、蓋体を取り外すために蓋体のロック状態を解除する操作のやり直し回数を含むことを特徴とする。
【0009】
他の発明にかかる基板処理システムは、容器本体の前面の基板取り出し口が蓋体により気密に塞がれ、複数の基板を収納して搬送するための搬送容器が搬入及び搬出されるロードポートと、このロードポートに搬入された搬送容器から取り出された基板を処理するための基板処理部と、前記ロードポートにおける操作を制御する装置コントローラと、を各々備えた複数の基板処理装置と、
前記複数の基板処理装置の各々と通信を行うホストコンピュータと、を備え、
前記ホストコンピュータは、
搬送容器の識別符号に基づいて、外部から送られた当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、
基板処理装置のロードポートに搬送容器が搬入された後、当該搬送容器の搬入及び搬出のうち少なくとも一方に伴う前記パラメータ値と、当該搬送容器にかかる前記パラメータ値の過去の推移データと、に基づいて当該搬送容器の異常の有無を判定する判定部と、を備え
前記パラメータ値は、蓋体を取り外すために蓋体のロック状態を解除する操作のやり直し回数を含むことを特徴とする。
【0010】
更に他の発明は、容器本体の前面の基板取り出し口が蓋体により気密に塞がれ、複数の基板を収納して搬送するための搬送容器の異常を検出する方法において、
前記搬送容器から取り出された基板を処理する基板処理装置のロードポートに搬送容器を搬入する工程と、
前記ロードポートから搬送容器を搬出する工程と、
搬送容器の識別符号に基づいて、外部から送られた当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、を対応付けたパラメータ値の推移データを記憶する工程と、
前記パラメータ値の推移データに基づいて搬送容器の異常の有無を判定する工程と、を含み、
前記パラメータ値は、蓋体を取り外すために蓋体のロック状態を解除する操作のやり直し回数を含むことを特徴とする。


【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送容器の識別符号に基づいて、当該搬送容器の使用回数と、ロードポートに前記搬送容器を搬入して蓋体を取り外すために行った操作及び前記蓋体を容器本体に取り付けて当該搬送容器をロードポートから搬出するために行った操作のうち少なくとも一方の操作の結果を数値化したパラメータ値と、を対応付けたパラメータ値の推移データを記憶する。そして、搬送容器をロードポートに搬入した後、この搬送容器の当該ロードポートに対する搬入及び搬出のうち少なくとも一方により得られたパラメータ値と、前記推移データに基づいて当該搬送容器の異常の有無を判定する。このようにすることで、搬送容器についていち早く異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用される基板処理装置である塗布、現像装置の斜視図である。
図2】前記塗布、現像装置及びホストコンピュータを含むシステムの構成図である。
図3】前記塗布、現像装置のキャリアブロックの側面図である。
図4】前記塗布、現像装置のキャリアブロックの側面図である。
図5】前記キャリアブロックの開閉ドア及びキャリアの斜視図である。
図6】前記開閉ドアの開閉動作を示す説明図である。
図7】前記開閉ドアの開閉動作を示す説明図である。
図8】前記開閉ドアの開閉動作を示す説明図である。
図9】前記キャリアの回転部の回転を示す説明図である。
図10】装置コントローラの構成を示すブロック図である。
図11】キャリアの使用回数の一例とトルク値との関係の一例を示すグラフ図である。
図12】クランプ時間と、キャリアの使用回数との関係の一例を示すグラフ図である。
図13】クランプ時間と、キャリアの使用回数との関係の一例を示すグラフ図である。
図14】前記装置コントローラの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置の一例である塗布、現像装置1について、図1を参照しながら説明する。図1は前記塗布、現像装置1の斜視図である。塗布、現像装置1は半導体製造工場内のクリーンルーム内に設置され、キャリアブロックE1と、処理ブロックE2と、インターフェイスブロックE3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックE3には、処理ブロックE2の反対側に露光装置E4が接続されている。塗布、現像装置1の外側は、複数の基板であるウエハWが収納されたキャリアCの搬送領域11である。後述の搬送機構12が当該搬送領域11においてキャリアCを搬送する。キャリアCは、例えばFOUPと呼ばれる搬送容器である。
【0014】
各ブロックの役割を簡単に説明しておくと、キャリアブロックE1は搬送機構12との間でキャリアCを受け渡すためのブロックである。また、キャリアブロックE1は当該キャリアブロックE1に搬送されたキャリアCと処理ブロックE2との間でウエハWの受け渡しを行う。キャリアブロックE1については、後に詳述する。
【0015】
処理ブロックE2は、ウエハWにレジスト塗布処理、現像処理などの各種の液処理や加熱処理を行うためのブロックである。露光装置E4は、処理ブロックE2にてウエハWに形成されたレジスト膜を露光する。インターフェイスブロックE3は、処理ブロックE2と露光装置E4との間でウエハWの受け渡しを行う。キャリアCから搬出されたウエハWは、処理ブロックE2にてレジスト塗布処理、加熱処理を順次受けた後、露光装置E4にて露光され、処理ブロックE2にて加熱処理、現像処理を順次受けた後、前記キャリアCに戻される。
【0016】
例えばキャリアブロックE1の側面には、塗布、現像装置1の各部の動作を制御する装置コントローラ2が設けられている。装置コントローラ2はコンピュータであり、各部に制御信号を送信する。キャリアブロックE1の各部がこの制御信号を受信して、後述するウエハWの搬入動作及びキャリアCからのウエハWの搬出動作が行われるように制御される。また、各ブロックE1〜E3がこの制御信号を受けることにより、上記のように各ブロック間でウエハWの搬送が行われると共にウエハWの処理が行われるように制御される。
【0017】
前記クリーンルーム内には図2に示すように複数の塗布、現像装置1が設置されており、各塗布、現像装置1の装置コントローラ2は、ホストコンピュータ20に接続され、基板処理システム200を構成している。前記装置コントローラ2については後に詳述する。
【0018】
前記ホストコンピュータ20は、搬送機構12に制御信号を送信してクリーンルーム内でのキャリアCの搬送を制御する。また、各キャリアCと、当該キャリアCに含まれる各ウエハWに夫々識別符号であるID番号を割り振り、このID番号を各装置コントローラ2に送信する。
【0019】
図2では上記の塗布、現像装置1しか示していないが、ドライエッチングを行うエッチングユニットやCVDあるいはPVDなどにより成膜を行う成膜ユニットを備えたクラスター装置や、多数枚のウエハWを一括して加熱処理する縦型熱処理装置などのウエハWに処理を行う各種の基板処理装置が、前記クリーンルームに設けられる。この基板処理装置としてはウエハWについて所定の検査を行う検査装置も含まれる。これらの塗布、現像装置1以外の各種の処理装置もキャリアブロックE1に相当するブロックを備え、塗布、現像装置1と同様にキャリアCの受け渡し及びキャリアCとの間でのウエハWの受け渡しが行われる。また、これらの各種の処理装置も塗布、現像装置1と同様にホストコンピュータ20に接続される装置コントローラ2を備えている。
【0020】
前記クリーンルーム内を多数のキャリアCが搬送される。各キャリアCは、このクリーンルーム内においてホストコンピュータ20によって設定された順番で装置間を搬送され、一の装置に搬入されてから多数の他の装置に搬入された後に再度一の装置に搬入されるように用いられる。つまり、キャリアCは同じ装置及び異なる装置間で繰り返し使い回される。
【0021】
図1に示すキャリア搬送機構12について説明すると、このキャリア搬送機構12はいわゆる天井搬送装置であり、クリーンルームの天井に形成される線路13を移動する移動部14と、把持部15とを備えている。把持部15は移動部14に対して昇降すると共にキャリアCを把持し、上記のクリーンルーム内の各装置間で当該キャリアCを搬送することができる。
【0022】
続いてキャリアブロックE1について図3図4の縦断側面図も参照しながら詳述する。説明の便宜上、キャリアブロックE1側、インターフェイスブロックE3側を夫々後方側、前方側として説明する。キャリアブロックE1は筐体31を備えており、筐体31はキャリア搬送機構12との間でキャリアCを受け渡すと共にキャリアC内と塗布、現像装置1内との間でウエハWを受け渡すためのロードポート3を構成している。
【0023】
ロードポート3は前記筐体31に加えて、キャリアCを載置するステージ32と、ウエハWの搬送口33と、このウエハ搬送口33を開閉する開閉ドア4とにより構成される。このキャリアブロックE1には4つのロードポート3が設けられている。筐体31の下部は、後方側に突き出て、段部34を形成している。この段部34上において、横方向に各ロードポート3の前記ステージ32が配列されている。各ステージ32から後方側に向かって見た筐体31の壁面に各ウエハ搬送口33が開口している。
【0024】
前記ステージ32は進退し、キャリアCを後退位置(アンロード位置)と前進位置(ロード位置)との間で移動させる。図3では鎖線でアンロード位置に位置するキャリアCを示しており、図4ではロード位置に位置するキャリアCを示している。キャリアCは、キャリア搬送機構12により前記アンロード位置に搬送される。そして、前記ロード位置において、キャリアブロックE1に対してウエハWの受け渡しが行われる。ステージ32は、モータを備えたステージ移動機構35に接続されており、このステージ移動機構35によって上記の前進動作及び後退動作を行うことができる。
【0025】
ステージ32の表面からは上方へ向けて3本のピン36が突き出ている。これらのピン36は、キャリアCがステージ32に載置されたときに、当該キャリアCの下方に形成される凹部51に差し込まれて嵌合し、ステージ32上にてキャリアCの位置ずれを防ぐ。また、ステージ32にはクランプ機構37が設けられている。図4の鎖線の矢印の先の点線の枠内に、キャリアCの下部側の断面とクランプ機構37とを示している。図中52はキャリアCに設けられる係合部である。
【0026】
クランプ機構37に設けられるかぎ爪38は、モータにより構成される回動機構39により回動する。それによって、枠内に実線で示すように係合部52に係合する状態と、鎖線で示すように係合が解除された状態とを切り替えることができ、前記係合が形成されたときにはキャリアCはステージ32に固定される。前記実線で示した係合が形成されるかぎ爪38の位置をロック位置とし、鎖線で示した前記係合が形成されない位置をアンロック位置とする。
【0027】
図5も参照してキャリアCについて説明する。キャリアCは容器本体である容器本体5と、当該容器本体5に着脱自在な蓋体50とからなる。容器本体5内の左右には、ウエハWの裏面側周縁部を支持する支持部53が多段に設けられる。容器本体50の前面にはウエハWの取り出し口54が形成され、前記蓋体50により当該取り出し口54が塞がれることにより、容器本体5内が気密に保たれる。前記取り出し口54の開口縁部55の内周側の左右の上下には各々係合溝55aが形成されている(上側の係合溝55aの図示は省略している。)キャリアCが前記ロード位置に位置するときには、この開口縁部55が、ウエハ搬送口33の開口縁部に密着し、筐体31内と搬送領域11とが区画される。容器本体5の上部には、既述のキャリア搬送機構12がキャリアCを搬送するために把持する把持部501が設けられる。
【0028】
蓋体50について説明すると、蓋体50の内部には左右に回転部56が設けられている。回転部56の上下には垂直方向に伸びる直動部57が設けられる。この直動部57は、回転部56の回転量に応じた距離を移動し、その先端が蓋体50の上側及び下側から突出した状態と、蓋体50内に引き込んだ状態とで切り替わる。この直動部57の先端は前記容器本体5の係合溝55aに係合し、それによって蓋体50が容器本体5に係合されてロック状態となる。前記回転部56には後述のラッチキー44が差し込まれ、係合される鍵穴56aが設けられており、そのように係合したラッチキー44の回転により、回転部56の回動が行われる。蓋体50の前面には、このようにラッチキー44を回転部56に差し込むことができるように、前記鍵穴56aに重なる位置に開口部が形成されている。
【0029】
続いて開閉ドア4について説明する。開閉ドア4は筐体31の内側から前記搬送口33を塞ぐドア本体40を備えている。図4において、そのようにドア本体40が搬送口33を塞ぐ位置を実線で示しており、この位置を閉鎖位置とする。このドア本体40にはドア開閉機構41が接続されており、搬送口33を開放するときには、当該ドア開閉機構41によりドア本体40は前記閉鎖位置から前進した離間位置に移動する。そして、同ドア開閉機構41により、その離間位置から図4に鎖線で示す開放位置へ下降して搬送口33の開放が行われる。
【0030】
図3に示すように、筐体31内には各ロードポート2で共用される移載機構16が設けられている。この移載機構16により、開放された搬送口33を介してキャリアC内と、処理ブロックE2との間でウエハWを受け渡すことができる。
【0031】
開閉ドア4は、前記ドア本体40の後方側に蓋体開閉機構43を備えており、蓋体開閉機構43は、その後方側にラッチキー44を備えている。ラッチキー44は、前記蓋体開閉機構43に設けられるモータ(不図示)によって、水平軸周りに回転する。ステージ32に載置されたキャリアCが当該ステージ32により進退移動することで、蓋体50の回転部56の鍵穴56aに対して、ラッチキー44の差し込み及び引き抜きが行われる。
【0032】
キャリアCをステージ32に載置し、キャリアC内のウエハWを装置に搬入するまでの一連の動作をキャリアCのロード処理と呼ぶことにする。このキャリアCのロード処理について図6図8を参照して順を追って説明する。キャリア搬送機構12からアンロード位置に位置するようにステージ32にキャリアCが受け渡され、クランプ機構37のかぎ爪38がアンロック位置からロック位置へ移動して、キャリアCがステージ32に固定される(図6)。そして、ステージ32が前進し、ロード位置に向けてキャリアCが移動する。
【0033】
ラッチキー44が回転部56の鍵穴56aに差し込まれ、図7に示すようにキャリアCがロード位置に位置する。そして、ラッチキー44が回転して蓋体50と容器本体5との係合が解除されると共に蓋体50が蓋体開閉機構43に保持される。然る後、ドア本体40が前進して筐体31から離れた離間位置に移動し、さらに下降して開放位置に移動することで図8に示すように搬送口33が開放される。然る後、容器本体5のウエハWが処理ブロックE2に搬送される。
【0034】
塗布、現像装置1からキャリアCにウエハWを戻し、搬送口33を閉鎖してキャリアCをステージ32から搬出するまでの一連の動作をキャリアCのアンロード処理と呼ぶことにする。このアンロード処理では、前記ロード処理と逆の動作が行われる。具体的にはウエハWがキャリアCに戻された後にドア本体40の前記離間位置への上昇、前記閉鎖位置への移動が順次行われて搬送口33が閉鎖されると共に、蓋体50が容器本体5に押し付けられる。そして、ラッチキー44が回転し、蓋体50と容器本体5との係合の形成及び蓋体開閉機構43による蓋体50の保持の解除が行われ、キャリアCがアンロード位置へ移動する。その後、かぎ爪38がロック位置からアンロック位置へ移動してキャリアCのステージ32に対する固定が解除され、キャリア搬送機構12により当該キャリアCが他の装置に搬送される。
【0035】
装置コントローラ2は、上記のキャリアCのロード処理時及びアンロード処理時におけるステージ移動機構35、クランプ機構37、蓋体開閉機構43、ドア本体40に各々設けられるモータのトルクをモニターし、後述するようにその値を取得する。また、これらのモータが所定の位置から所定の量、回転するまでの時間をモニターし、後述する各種の時間のパラメータを取得する。
【0036】
ところで前記キャリアCのロード処理において、蓋体50と容器本体5との係合を解除するときに、直動部57が係合溝55aに差し込まれて係合が形成されている状態と、前記直動部57が前記係合溝55aから引き抜かれて前記係合が解除された状態とでは、直動部57と係合溝55aとの間の摩擦の有無により、蓋体開閉機構43のモータのトルクが変化する。このトルクの変化によって装置コントローラ2は前記係合が解除されたか否かを検出することができる。
【0037】
前記係合の解除について図9を用いて詳しく説明する。図中左上に示すように前記回転部56の鍵穴56aが正常に形成されていると、ラッチキー44にこの鍵穴56aが係合し、ラッチキー44が90度回転すると、図中左下に示すようにその回転に合わせて回転部56も90度回転する。そして、上記のように係合の解除がなされる。
【0038】
ところが、キャリアCの使用を続けると、図中右上に示すように鍵穴56aが摩耗して拡大する。そうなると鍵穴56aとラッチキー44との間に係合が形成され難くなり、図中右下に示すようにラッチキー44を90度回転させても回転部56の回転が90°未満になる場合がある。そうなると、直動部57の容器本体5の係合溝55aからの引き抜きが不十分となり、前記係合の解除が行われない場合がある。
【0039】
装置コントローラ2は、このように係合が解除されていないことを検出すると、ラッチキー44を逆回転させて鍵穴56aに差し込んだときの位置に戻した後、再度前記係合が解除されるようにラッチキー44を90°回転させるラッチリトライを行うように蓋体開閉機構43を制御する。鍵穴56aの摩耗が進行し、ラッチキー44との間に係合が形成され難くなるほど、回転部56はラッチキー44に合わせて回動し難くなり、前記ラッチリトライを行う回数が増えることになる。
【0040】
また、使用を続けることでかぎ爪38から応力を受ける結果、キャリアCの係合部52は変形する。そうなると、かぎ爪38と係合部52との係合の形成時及び前記係合の解除時に、これらの間に働く摩擦力が変化する。その影響により、かぎ爪38が前記アンロック位置からロック位置に移動するまでのクランプ時間及びかぎ爪38が前記ロック位置からアンロック位置に移動するまでのアンクランプ時間が変化する。上記のように装置コントローラは、モータの所定の回転に要する時間をモニターするため、これらクランプ時間及びアンクランプ時間を取得することができる。
【0041】
また、キャリアCのロード時において、キャリアCを上記のようにロード位置へ移動させるにあたりステージ32を移動させるが、キャリアCが筐体31に当接してステージ移動機構35のモータの負荷が大きくなり、そのトルク値が変化するまで前記ステージ32の移動が行われる。キャリアCがロード位置からアンロード位置へ移動する時間をアンドック時間、アンロード位置からロード位置へ移動する時間をドック時間とする。ここで、キャリアCの使用が続けられると、キャリアCの凹部51が摩耗して拡大されることにより、ステージ32のピン36に対して嵌合され難くなり、ステージ32上において前記クランプ機構37によりキャリアCが固定される位置が変化する。つまり、キャリアCのステージ32上の位置が変化するので、上記ドック時間及びアンドック時間が変化する。これらドック時間及びアンドック時間についても装置コントローラ2により取得される。
【0042】
続いて、装置コントローラ2について図10を用いて説明する。装置コントローラ2は、プログラム格納部21、CPU22、メモリ23を備えており、これらがバス24に接続されている。前記ロードポート3もバス24に接続されている。プログラム格納部21は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体などにより構成されている。このような記憶媒体に格納された状態で、当該記憶媒体に格納されたプログラム25が、装置コントローラ2にインストールされる。
【0043】
判定部をなすプログラム25は、塗布、現像装置1の各部に制御信号を送信してその動作を制御し、ウエハWの搬送、各ブロックE1〜E4でのウエハWの処理、キャリアCからのウエハWの搬出、及びキャリアCへのウエハWの搬入の各動作が行えるように命令(各ステップ)が組み込まれている。CPU22は、そのように制御信号を出力するために各種の演算を実行する。
【0044】
メモリ23には、図中に模式的に示すようにキャリアCのID番号(識別情報)が記憶されており、図の例では1〜n(nは自然数)で表している。また、メモリ23には、当該装置コントローラ2が設けられる塗布、現像装置1についてキャリアCのロード処理及びアンロード処理が行われたときに前記キャリアCについて取得された時間のパラメータであるクランプ時間、アンクランプ時間、ドック時間、アンドック時間が前記キャリアCのID番号と対応づけられて記憶される。また、上記のラッチリトライ回数も、このID番号と対応付けられて記憶される。
【0045】
図示はしていないが、このクランプ時間、アンクランプ時間、ドック時間、アンドック時間及びラッチリトライ回数について、夫々許容値が設定されており、この許容値がメモリ23に記憶されている。また、同じく図示を省略しているが、キャリアCのロード処理時及びアンロード処理時に検出されるパラメータであるステージ移動機構35、クランプ機構37、蓋体開閉機構43の各モータのトルクが、前記ラッチリトライ回数などと同様にキャリアCのIDに対応付けられてメモリ23に記憶される。
【0046】
これらの各パラメータは、キャリアCの使用回数ごとに記憶される。この使用回数が1回とは、基板処理システム200のいずれかの装置において前記ロード処理及びアンロード処理が各々1回行われたということである。つまり、m回目(mは整数)のロード処理及びアンロード処理が塗布、現像装置1で行われるとすると、m−1回目及びm+1回目のアンロード処理時の各パラメータは塗布、現像装置1の1つ前、1つ後に夫々前記キャリアCが搬送された装置により取得されることになる。即ち、塗布、現像装置1以外の他の装置で取得されたパラメータについては、ホストコンピュータ20を介して当該塗布、現像装置1に送信され、当該装置1のメモリ23に記憶される。そして、当該塗布、現像装置1で取得された各パラメータ値については、ホストコンピュータ20を介して他の装置に出力される。つまり、基板処理システム200を構成する装置間でキャリアCのロード処理及びアンロード処理により取得されたパラメータ値が共有される。
【0047】
また、この使用回数については、基板処理システム200のどの装置のどのロードポート3で行われた処理であるかというデータも、当該使用回数に対応付けられてメモリ23に記憶される。つまり、一の装置において一のキャリアCにロード処理及びアンロード処理が行われると、当該装置のコントローラ2は、取得した各パラメータ値と、この処理を行ったロードポート3を特定するデータと、このロード処理及びアンロード処理がキャリアCの何回目の使用に該当するかというデータとを他の装置に対して出力する。この使用回数については、当該装置にA回目までの使用回数のデータが取得されていれば、当該装置の使用はA+1回目であるものとして出力する。
【0048】
バス24には、アラーム出力部26が設けられている。このアラーム出力部26は、後述のフローに従ってキャリアCについて異常が有ると判定された場合、当該キャリアCのIDを画面表示したり、音声出力することによりユーザに報知する。また、ロードポート3について異常が有ると判定された場合も、同様に当該ロードポート3を特定する情報を画面表示や音声出力によりユーザに報知する。
【0049】
ロードポート2の異常及びキャリアCについて、装置コントローラ2による異常の判定手法の一例について説明する。図11中の縦軸は蓋体開閉機構43に設けられるモータのトルクを示しており、ラッチキー44を回転させて蓋体50と容器本体5との間の係合の解除中に発生するトルクを示している。前記ラッチリトライが行われればこの解除動作は複数回行われるが、ここでは係合の解除に成功したときに取得されたトルクである。縦軸を上側に向かうほどトルクの値が大きいことを示す。図中の横軸は一のキャリアCの使用回数である。グラフのプロットは実際には各使用回ごとに取得されるが、ここではグラフを見やすくするために、十数回分のみ示している。
【0050】
キャリアCを継続して使用した結果、前記回転部56が劣化して破損し、当該回転部56を回転させるために前記トルクが大きくなったり、直動部57が劣化して破損し、前記係合が容易に解除されるようになる結果、前記トルクが小さくなる場合がある。このような異常の発生をトルクから判定する。
【0051】
ところで、キャリアCが異なればその個体差により、係合を解除するにあたり発生する前記トルクは異なる。そこで、キャリアCごとにこの異常の有無を判定するための許容値が設定される。キャリアCの使用回数が50回以下であれば、上記のキャリアCの劣化が起きないものとし、この50回の前記トルクの平均値が演算される。そして、その平均値から予め設定した値を加算した演算値を上限値、予め設定した値を減算した演算値を下限値とし、上限値から下限値までの範囲は許容範囲とする。
【0052】
この平均値、上限値及び下限値の演算は、上記のように基板処理システム200の各装置間でパラメータが共有されているので、例えば50回目のロード処理を行った装置が行い、その演算値を他の各装置に送信する。つまり、前記塗布、現像装置1の装置コントローラ2は、このような各演算値を他の装置から受け取るか、自ら演算することにより取得し、取得された演算値が既述のメモリ23に記憶される。
【0053】
このように許容値である上限値及び下限値が取得された後、塗布、現像装置1のロードポート3にそのように平均値、上限値及び下限値が設定された前記キャリアC(便宜上、キャリアC1とする)が搬送され、検出された上記のトルクが許容範囲から外れた異常値であったものとする。
【0054】
このように異常値が検出されたときのキャリアC1の使用回数がs(sは整数)であったものとする。キャリアCの使用回数が比較的高いほど、キャリアCの変形及び破損が起こりやすいことから、装置コントローラ2は、使用回数が予め設定された基準回数であるk(kは整数、k>50)を越えているか否かを判定する。つまり、使用回数sが基準回数kを越えていれば、キャリアC1に異常があるものと判定する。なお、グラフでは基準回数kを1万回以上としているが、これは一例である。
【0055】
使用回数sが前記k回以下である場合、キャリアCの劣化が急激に進行した可能性と、当該塗布、現像装置1にて使用されたロードポート3に異常が発生している可能性との両方が考えられる。そこで、装置コントローラ2は、キャリアC1について使用回数がs回より前のs−1回、s−2回・・・s−p回であるとき、前記トルクが異常値となっているか否かを判定する。前記pは予め設定された整数である。つまり、塗布、現像装置1以外の装置に搬送されたときにも前記トルクが異常になっていたか否かを判定する。前記s−1回〜s−p回の前記トルクが全て異常値となっていれば、キャリアC1に異常が有るものと判定する。
【0056】
また、塗布、現像装置1の前記ロードポート3において、キャリアC1より前の直近に搬送された複数のq個のキャリアC(説明の便宜上キャリアC2とする)のロード処理及びアンロード処理を行ったときに、前記トルクがいずれも異常値となっているか否かを判定する。前記qは予め設定された整数である。つまり、当該ロードポート3において、他のキャリアを扱ったときにも前記トルクが異常になっていたか否かを判定する。これらq個のキャリアC2についてもクランプ時間が許容値を越えている場合、装置コントローラ2は、当該ロードポート3に異常があるものと判定する。
【0057】
前記s−1回〜s−p回のいずれかのキャリアC1の前記トルクが正常である場合にはキャリアC1の異常の判定は行わない。また、q個のキャリアC2のうち、いずれかのトルクが正常である場合には、ロードポート3の異常の判定は行わない。
【0058】
蓋体開閉機構43のモータのトルクに基づいてキャリアCの異常の判定及びロードポート3の異常の判定を行う例について説明したが、ステージ移動機構35、クランプ機構37及び開閉ドア4のモータのトルクについても同様に平均値が演算され、それに基づいて許容値である上限値及び下限値が設定される。そして、この許容値に基づいて、ロードポート3に異常があるか否かという判定、キャリアCに何らかの異常が発生しているか否かという判定が行われる。
【0059】
例えば、既述のように蓋体50の側面と、容器本体5の開口縁部55との形状が変化すれば、開閉ドア4のモータのトルクは変化し得るし、容器本体50の係合部52が変形すればクランプ機構37のモータのトルクは変化し得る。また、例えば容器本体5の開口縁部55が大きく変形し、ステージ32の移動中に床面に接触するような場合、ステージ移動機構35のモータのトルク値が変化し得る。つまり、キャリアCの各部の異常は、これらモータのトルクとして反映されることになるので、これらモータのトルクを取得し、取得したトルクを上記のように許容値に対して比較することで、キャリアCの異常の判定を行うことができる。
【0060】
この他に塗布、現像装置1にて行われる異常の判定方法について、図12のグラフを参照しながら説明する。図12は、一のキャリアCの使用回数とクランプ時間との関係の一例を示すグラフである。グラフの縦軸にクランプ時間(単位:秒)、横軸に前記前記キャリアCの使用回数を夫々設定している。トルクに基づいて異常を判定するときと同様、このキャリアCの使用回数t(tは整数)が基準回数kを越え、且つクランプ時間の許容値を越えたとき、当該キャリアCは異常があるキャリアCと判定される。前記許容値は、既述のトルクについての上限値と同様、例えば一のキャリアCの50回分のクランプ時間の平均値を算出し、この平均値に所定の値を加算することによって設定される。
【0061】
使用回数tが前記k回以下である場合、装置コントローラ2は、このキャリアC(便宜上キャリアC3とする)の使用回数がt回より前のt−1回〜t−p回であるときに、クランプ時間が許容値を越えているか否かを判定する。図13に示すようにこれらの使用回数における処理で、いずれも前記クランプ時間が許容値を越えている場合、装置コントローラ2は、当該キャリアC3に異常があるものと判定する。いずれかが許容値を越えていない場合にはキャリアC3の異常の判定は行わない。
【0062】
また、塗布、現像装置1の前記ロードポート3において、キャリアC1の前の直近に搬送された複数のq個のキャリアC(説明の便宜上キャリアC4とする)のロード処理及びアンロード処理を行ったときに、これらのクランプ時間がいずれも許容値を越えているか否かを判定する。これらq個のキャリアC4についてもクランプ時間が許容値を越えている場合、装置コントローラ2は、当該ロードポート3に異常があるものと判定する。q個のキャリアC4のうち、いずれかのクランプ時間が正常である場合には、ロードポート3の異常の判定は行わない。
【0063】
クランプ時間に基づいて異常の判定を行う例について説明したが、当該クランプ時間に基づく代わりにアンクランプ時間、ドック時間、アンドック時間、ラッチリトライの各々に基づいても、同様にキャリアCの異常及びロードポート3の異常の判定が行われる。
【0064】
これまで説明してきた装置コントローラ2の判定は、既にメモリ23に取得されたパラメータ値の過去の推移データを用いて行われる。パラメータ値の過去の推移データとは、ここまでで説明しているように、パラメータ値の時系列データのみならず、今までの使用回数やパラメータ値の過去の平均値などが含まれる。
【0065】
続いて、図14のフローを参照しながら塗布、現像装置1により行われるプロセスについて順を追って説明する。先ず、当該装置1の装置コントローラ2が、ホストコンピュータ20より送信された、塗布、現像装置1に搬送されるキャリアCのIDを取得し(ステップS1)、然る後、当該IDを持つキャリアCが、キャリア搬送機構12によりアンロード位置に搬送される。図6で説明したようにクランプ機構37のかぎ爪38がアンロック位置からロック位置へ移動してキャリアCのステージ32への固定が行われる。この移動に要したクランプ時間及び当該クランプ機構37のモータのトルクが取得される(ステップS2)。
【0066】
続いて、ステージ移動機構35によりキャリアCが図7に示すようにロード位置に移動し、当該ステージ移動機構35のモータのトルクと、この移動に要したドック時間とが取得される(ステップS3)。そして、待機位置から蓋体受け渡し位置に蓋体開閉機構43が移動して、蓋体50の回転部56の鍵穴56aにラッチキー44が差し込まれ、当該ラッチキー44が回転し、容器本体5と蓋体50との係合の解除が行われる。係合の解除に失敗した場合はラッチリトライが行われ、前記係合が解除されるまでこのラッチリトライが繰り返される。このリトライの回数と、係合が解除されたときの蓋体開閉機構43のモータのトルクとが取得される(ステップS4)。
【0067】
続いて、図8に示したように搬送口33が開放され、移載機構16によりキャリアC内のウエハWが処理ブロックE2へ搬送される。キャリアCから搬出されたウエハWに塗布、現像処理が行われ、前記ウエハWが全て前記キャリアCに戻されると、開閉ドア4が前記開放位置から閉鎖位置に戻り、搬送口33が閉鎖される。続いて、ラッチキー44が回転して蓋体50と容器本体5とが係合すると共に、蓋体開閉機構43のモータのトルクが取得される。ステージ移動機構35によりキャリアCがアンロード位置に移動し、この移動に要したアンドック時間及び当該ステージ移動機構35のモータのトルクが取得される(ステップS5)。
【0068】
然る後、クランプ機構37によりクランプ機構37のかぎ爪38がアンロック位置へ移動し、この移動に要した時間であるアンクランプ時間及びクランプ機構37のモータのトルクが取得される(ステップS6)。その後、キャリアCはキャリア搬送機構12により、次の装置へ搬送される。以上のプロセスにおいて、各種時間のパラメータの取得、トルクの取得、ラッチリトライ回数の取得は、既述のように装置コントローラ2により行われる。また、これら取得したパラメータが、ホストコンピュータ20を介して他の装置に送信される。
【0069】
そして、装置コントローラ2は、前記キャリアCについて取得されたクランプ時間、アンクランプ時間、ドック時間、アンドック時間のうちのいずれかが、これら時間のパラメータについて各々設定された許容値を越えているか否か判定する(ステップS7)。時間のパラメータについて許容値を越えているものが無いと判定した場合、ラッチリトライ回数が許容値を越えているか否かを判定する(ステップS8)。ラッチリトライ回数が許容値を越えていないと判定した場合、取得したトルク値のうち異常値となったものがあるか否かを判定する(ステップS9)。トルク値のうちいずれも異常値になっていないと判定した場合、キャリアC及びロードポート3も正常であると判定する(ステップS10)。
【0070】
ステップS7で、取得した時間のパラメータのうち許容値を越えているものがあると判定された場合、図12図13で説明したようにキャリアCの使用回数が設定した基準回数を越えているか否かを判定する。そして、基準回数を越えていないのであれば、このキャリアCの当該時間のパラメータについて、最近搬送された他の複数のロードポートでも続けて許容値を越えているか、このキャリアCを扱ったロードポート3において、最近、他のキャリアCを扱ったときにも続けて当該時間のパラメータが許容値を越えているかという判定が行われる(ステップS11)。
【0071】
既述のように、キャリアCの使用回数が基準回数を越えていると判定した場合、及び他の複数のロードポート3でも前記時間のパラメータが続けて許容値を越えていると判定したときは、当該キャリアCについて異常が有るという判定が行われる。また、このキャリアCを扱ったロードポート3において他のキャリアCを扱ったときにも前記時間のパラメータが続けて許容値を越えていると判定されたときには、ロードポート3に異常があるものという判定が行われる(ステップS12)。そして、キャリアCあるいはロードポート3がそのように異常であると判定された場合は、その旨を示すアラームが出力される(ステップS13)。処理システム200のユーザはそのアラームを元に、ロードポート3の修理やキャリアCの廃棄を行う。
【0072】
ステップS11で、キャリアCの使用回数が基準回数を越えておらず、さらに当該キャリアCについては前記時間のパラメータが続けて前記許容値を越えておらず、他のキャリアCを扱ったときには前記時間のパラメータが続けて許容値を越えていないと判定されたときは、ステップS10に従って、キャリアCもロードポート3も異常が無いという判定が行われる。
【0073】
ステップS8でラッチリトライ回数が許容値を越えた場合、ステップS9で取得したトルクのいずれかが許容範囲を越えた場合も時間のパラメータが許容値を越えた場合と同様にステップS11が実行される。即ち、このようにパラメータが異常となったキャリアCの使用回数が基準回数を越えているか否か、このキャリアCが最近搬送された他の装置においても同じ異常が続けて検出されているか否か、及びこのキャリアCを扱った塗布、現像装置1のロードポート3で最近他のキャリアCを扱ったときにも同じ異常が続けて検出されているか否か、という判定が行われる。その判定に基づいて、キャリアCの異常の有無の判定が行われ(ステップS11、S12)、異常があると判定された場合はアラームが出力される(ステップS13)。
上記のフローでは、一つの塗布、現像装置1の動作を説明しているが、基板処理システム200を構成する他の装置でも当該塗布、現像装置1と同様の動作が行われ、これらの動作は例えば並行して行われる。
【0074】
この基板処理システム200によれば、キャリアCのID番号に基づいて、キャリアCごとに、当該キャリアCを装置に搬入するロード処理時及びキャリアCを装置から搬出するアンロード処理時における、ロードポート3を構成するモータのトルク、ステージ32などの各部の動作時間、蓋体50の取り外し時におけるリトライ回数、及びキャリアCの使用回数が互いに対応付けられてメモリ23に記憶される。そして、キャリアCを新たにロード及びアンロード処理したときには、そのときに得られる各種のパラメータと、既にメモリ23に取得されたデータとに基づいて、キャリアCの異常の判定が行われる。これにより早期にキャリアCの異常を検出し、キャリアCの不具合が原因で半導体の製造処理が停止するような事態が発生することを防ぐことができる。
【0075】
また、この基板処理システム200では、装置間で各パラメータを共有しているので、一の装置のロード及びアンロード処理時に取得されたパラメータを、他の装置のロード及びアンロード処理時に取得されたパラメータと対比させることができる。従って、一の装置のロード及びアンロード処理時に取得されたパラメータが異常であった場合、それがキャリアCの異常によるものか、ロードポート3の異常によるものかを識別することができる。それによって、キャリアCの異常の有無を精度高く判定することができ、さらにロードポート3の異常を早期に行えるため、ウエハWの搬送異常による半導体装置の歩留りの低下を防ぐことができる。
【0076】
上記のフローにおける各判定は、装置コントローラ2が行うものとして説明したが、ホストコンピュータ20が行ってもよい。また、上記のフローにおいて、ある判定工程を装置コントローラ2が行い、他の判定工程をホストコンピュータ20が行うように、判定工程を分担して行うようにしてもよい。パラメータ値の推移データを記憶するメモリ23も装置コントローラ2に設ける代わりにホストコンピュータ20に設けてもよい。
【0077】
また、上記の例では装置コントローラ2が制御信号を送信してキャリアブロックE1の各部が自動で動作し、上記のようにパラメータが取得されるが、装置のユーザが装置コントローラ2から、キャリアブロックE1の各部を手動で操作し、この操作によって各部が動作するときに上記のパラメータが取得されるようになっていてもよい。
【0078】
上記のように各装置間でパラメータが共有されなくてもよい。その場合、例えばホストコンピュータ20が、キャリアCの使用回数について塗布、現像装置1にデータを送信する。そして、塗布、現像装置1の装置コントローラ2は、上記の実施形態のように、この使用回数とロード及びアンロード処理時に取得された各モータのトルクとを対応付けてメモリ23に記憶する。そして、既述の実施形態のように一のキャリアCについてトルクの平均値を算出し、許容範囲を設定する。この平均値の算出は、メモリ23に記憶される前記キャリアCの使用回数が例えば上記の例と同様に50回以下であるときに取得されたデータから行う。その許容範囲の設定後は上記実施形態と同様に、使用回数が基準回数kを越え、且つ当該キャリアCについて当該塗布、現像装置1で測定されるトルクが許容範囲から外れると、キャリアCが異常であるものという判定が行われるようにする。
【0079】
また、ロードポート3の各部を駆動させるための駆動機構はモータであることに限られない。例えば、モータの代わりにエアシリンダなどにより構成し、トルクの代わりに当該エアシリンダの圧力を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
E1 キャリアブロック
E2 処理ブロック
C キャリア
W ウエハ
1 塗布、現像装置
2 装置コントローラ
20 ホストコンピュータ
200 基板処理システム
3 ロードポート
32 ステージ
4 開閉ドア
43 蓋体開閉機構
44 ラッチキー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14