(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る車両用充電装置の一例を、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0018】
(車両用充電装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用充電装置を示す概略構成図である。
【0019】
この車両用充電装置1は、充電コネクタ11が先端部に設けられた充電ガン12と、充電ガン12の内部にて充電コネクタ11に接続された充電ケーブル13と、充電ケーブル13及び充電コネクタ11を介して車両への充電を行う装置本体10とを備えて構成されている。装置本体10には、例えばAC200Vの商用電源が電源ケーブル14を介して供給されている。車両用充電装置1の各部の仕様は、充電装置側と車両側との通信仕様等を定めた国際規格であるSAEJ1772に準拠している。
【0020】
この車両用充電装置1は、例えば高速道路のサービスエリアや商業施設の駐車場、あるいは集合住宅の駐車場等に設けられ、不特定の利用者に充電サービスを提供する。装置本体10は、駐車場等の地面に自立して設置される。装置本体10には、異常を報知するための異常報知部100が設けられている。異常報知部100は、例えば発光によって異常を報知するランプや、音によって異常を報知するブザーである。
【0021】
充電ガン12には、リリースボタン120及び係止突起120aが設けられている。係止突起120aは、充電ガン12を車両から抜き取る際の利用者によるリリースボタン120の押し込み操作に連動して動作するように構成されている。
【0022】
(車両用充電システムの構成)
図2は、本発明の実施の形態に係る車両用充電装置の使用状態を示す概略構成図である。
【0023】
車両用充電装置1に接続された車両9は、車体90に走行用の駆動源として電動機96を搭載した電気自動車である。車体90には、充電コネクタ11が嵌合される車両側コネクタ91と、車両側コネクタ91の入力端子に接続された充電制御回路92と、充電制御回路92を制御する制御装置93と、蓄電池94と、蓄電池94に蓄えられた電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御によりスイッチングされたモータ電流として電動機96に供給するインバータ95と、電動機96の出力を変速して前輪98に伝達する変速機97とが搭載されている。
【0024】
蓄電池94は、例えば複数のセルを有するリチウムイオン電池又はニッケル水素電池からなる。蓄電池94は、電動機96を駆動するための走行用の電力を蓄える。
【0025】
電動機96は、例えばIPM(Interior Permanent Magnet Motor:埋込磁石型モータ)からなる。なお、車両9は、電動機96に加え、ガソリン等の揮発性の液体を燃料とする内燃機関(エンジン)を駆動源として備えた所謂プラグインハイブリッド車であってもよい。また、変速機97の出力を後輪99に伝達する後輪駆動車であってもよい。
【0026】
充電ガン12の係止突起120a(
図1参照)は、車両側コネクタ91に係合し、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの意図しない離脱を抑止するように構成されている。
【0027】
(車両用充電装置の回路構成)
図3は、車両用充電装置1の回路構成を車両9側の構成と共に示す回路図の一例である。
【0028】
車両用充電装置1の装置本体10には、電源ケーブル14からAC200Vの交流電源が供給される。電源ケーブル14には、L相の電源線141と、N相(中性相)の電源線142と、接地されたGND線143とが含まれる。
【0029】
充電コネクタ11は、車両9に充電電流を供給する一対の充電電流出力端子としてのL端子111及びN端子112と、GND線143に接続されて接地されたGND端子113と、充電制御端子としてのC端子114と、車両側コネクタ91との嵌合を検知するための嵌合検知端子としてのP端子115とを有している。
【0030】
P端子115は、リリースボタン120に連動して作動するスイッチ121の第1接点121a及び第2接点121bのうち、第2接点121bに接続されている。第1接点121aと第2接点121bとの間には、抵抗器122が接続されている。抵抗器122の抵抗値は、例えば330Ωである。スイッチ121は、リリースボタン120が押し込み操作されたとき、第1接点121aと第2接点121bとが非接続状態となり、リリースボタン120が押し込み操作されていないとき、第1接点121aと第2接点121bとが接続状態となる。
【0031】
充電ケーブル13は、第1〜第5の電線131〜135を有している。第1の電線131はL端子111に、第2の電線132はN端子112に、第3の電線133はGND端子113に、第4の電線134はC端子114に、第5の電線135はスイッチ121の第1接点121aに、それぞれの一端が接続されている。
【0032】
装置本体10は、車両9側への充電電流の供給及び遮断等を制御する制御部20を有している。制御部20は、例えば予め記憶されたプログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)、及びその周辺回路からなる。制御部20には、異常報知部100が接続されている。
【0033】
また、装置本体10は、制御部20によってオン(継電)又はオフ(遮断)が制御される第1及び第2のリレー21,22を有している。第1のリレー21は、電源線141と第1の電線131との間に介在する接点部211と、電磁力によって接点部211の開状態及び閉状態を切り替えるコイル部210とを有している。コイル部210は、制御部20から電流が供給されると電磁力を発生し、この電磁力によって接点部211を閉状態とする。コイル部210の非通電時には、図略のバネの付勢力によって接点部211が開状態となる。
【0034】
第2のリレー22は、電源線142と第2の電線132との間に介在する接点部221と、電磁力によって接点部221の開状態及び閉状態を切り替えるコイル部220とを有している。接点部221及びコイル部220は、第1のリレー21の接点部211及びコイル部210と同様に構成されている。
【0035】
車両用充電装置1は、第1のリレー21及び第2のリレー22が共にオン状態のとき、充電ケーブル13の第1の電線131及び第2の電線132を介して車両9の蓄電池94へ充電電流を供給する。また、第1のリレー21及び第2のリレー22の少なくとも何れかがオフ状態のとき、この充電電流の供給が遮断される。つまり、第1のリレー21及び第2のリレー22は、充電電流を遮断可能である。
【0036】
第1の電線131には、電流センサ231が設けられている。電流センサ231は、例えばホール素子センサからなり、第1の電線131を流れる電流Ioを検出し、その電流値を示す検出信号を制御部20に出力する。
【0037】
また、第1の電線131と第2の電線132との間には、交流電圧計232及び診断用抵抗器24が接続されている。交流電圧計232は、第1の電線131と第2の電線132との間の電圧を検出し、その電圧値を示す検出信号を制御部20に出力する。診断用抵抗器24は、接点部211及び接点部221が共に閉状態となったとき、例えば15mA以上の電流が流れる抵抗値を有している。
【0038】
また、装置本体10は、制御部20によって接点の接続状態が制御される切替回路25を有している。切替回路25は、第1〜第3接点251〜253と、コイル部250とを有している。そして、切替回路25は、コイル部250が非通電のとき、第1接点251と第2接点252とが接続状態となり、第3接点253と第1接点251及び第2接点252とが絶縁状態となる。また、切替回路25は、制御部20からコイル部250に電流が供給されたとき、第1接点251と第3接点253とが接続状態となり、第2接点252と第1接点251及び第3接点253とが絶縁状態となる。
【0039】
第1接点251には、第5の電線135が接続されている。第2接点252には、装置本体10に設けられた直流電源26の出力側が抵抗器261を介して接続されている。直流電源26は、入力側がL相の電源線141及びN相の電源線142に接続され、AC200Vを例えばDC5Vに変換して出力する。抵抗器261の抵抗値は例えば2700Ωである。
【0040】
第3接点253は、抵抗器27を介して接地電位に接続されている。抵抗器27の抵抗値は、例えば150Ωである。第3接点253と接地電位との間には、直流電圧計28が接続されている。直流電圧計28は、第3接点251の電位を検出し、その電位を示す検出信号を制御部20に出力する。以下、この検出信号を「第1電圧信号」という。
【0041】
また、第2接点252と接地電位との間には、直流電圧計29が接続されている。直流電圧計29は、第2接点252の電位を検出し、その電位を示す検出信号を制御部20に出力する。以下、この検出信号を「第2電圧信号」という。
【0042】
制御部20は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されたパルス信号により、充電電流の許容電流値等の情報を車両9側へ送信する通信機能を有している。制御部20からの送信信号は、通信用抵抗器201及び第4の電線134を介して充電コネクタ11のC端子114に出力される。また制御部20は、通信用抵抗器201の第4の電線134側の電圧をモニタすることが可能である。この通信機能は、SAEJ1772に準拠した車両の制御装置93及び車両側コネクタ91の第4端子914の間に設けられた図略の受信回路を経由して通信を行うためのものである。
【0043】
(車両9側の構成)
車両側コネクタ91は、第1〜第5端子911〜915を有している。車両側コネクタ91が充電コネクタ11に嵌合すると、第1端子911がL端子111に、第2端子912がN端子112に、第3端子913がGND端子113に、第4端子914がC端子114に、第5端子915がP端子115に、それぞれ接続される。第3端子913と第5端子915との間には、抵抗器916が接続されている。抵抗器916の抵抗値は、例えば2700Ωである。
【0044】
充電制御回路92は、整流回路部921と、リレー回路922と、直流電源923と、抵抗器924とを有している。抵抗器924の抵抗値は、例えば330Ωである。直流電源923は、その出力電圧が例えばDC5Vである。抵抗器924は、一端が直流電源923に接続され、他端が第5端子915に接続されている。直流電源923は、制御装置93が充電コネクタ11の離脱を検知するために設けられ、例えば車両用充電装置1から充電電圧が印加されているときに電圧を出力する。
【0045】
整流回路部921は、車両側コネクタ91の第1端子911及び第2端子912に接続されている。整流回路部921は、第1端子911及び第2端子912から入力される交流電流を整流してリレー回路922に出力する。整流回路部921は、例えばダイオードブリッジ回路からなる。なお、整流回路部921とリレー回路922との間には、充電開始時における突入電流を制限する突入電流制限回路等をさらに設けてもよい。
【0046】
リレー回路922は、制御装置93によってオン(閉状態)又はオフ(開状態)が制御される。リレー回路922がオンすると、第1端子911及び第2端子912から供給される電力によって蓄電池94が充電される。
【0047】
抵抗器924はまた、その一端が制御装置93に接続されている。制御装置93は、抵抗器924の一端の電圧(基準電位との電位差)を検出可能である。
【0048】
なお、本実施の形態では、車両9がSAEJ1772に準拠しておらず、車両用充電装置1との通信機能を有していない場合について説明する。そのため、車両9側には、車両用充電装置1の制御部20からC端子114に出力される送信信号を受信する受信回路が設けられていない。車両が通信機能を有している場合には、制御部20は、車両側との通信が成立したことを以って充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合されたことを検知できるが、車両が通信機能を有していない場合には、他の方法によって充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検出する必要がある。
【0049】
本実施の形態では、制御部20が、直流電圧計29によって検出した電圧に基づいて、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知する。次に、この嵌合検知の手順について説明する。
【0050】
制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91とが嵌合されていない初期状態において、切替回路25のコイル部250に通電せず、第1接点251と第2接点252とを接続状態とする。この場合、直流電源26の出力電圧がスイッチ121を介してP端子115に現れるが、P端子115は第5端子915に接続されていないため、抵抗器261には電流が流れない。
【0051】
一方、充電コネクタ11と車両側コネクタ91とが嵌合されると、P端子115が第5端子915及び抵抗器916を介して接地電位に接続されるため、抵抗器261に電流I
1が流れる。これにより、抵抗器261において電圧降下が発生し、直流電圧計29によって検出される電圧が変化する。これにより、制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91とが嵌合したことを検知できる。
【0052】
また、制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91とが嵌合したことを検知すると、切替回路25のコイル部250に通電し、第1接点251と第3接点253とを接続状態とする。これにより、直流電源923から電圧が出力されると、抵抗器924、第5端子915、P端子115、スイッチ121、及び抵抗器27を介して接地電位に流れ、抵抗器27の両端に電位差が発生する。
【0053】
一方、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱すると、抵抗器27に電流が流れなくなるので、抵抗器27の両端の電位差に変化が生じる。制御部20は、この電位差の変化を直流電圧計28によって検出し、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱したことを検知する。なお、リリースボタン120が押されたことによってスイッチ121の第1接点121aと第2接点121bとが非接続状態となることによっても、抵抗器27に流れる電流が変化し、抵抗器27の両端の電位差が変化する。これにより、制御部20は、リリースボタン120が押されたことを検知することも可能である。
【0054】
また、車両9の制御装置93は、抵抗器924に流れる電流I
2の変化に伴う抵抗器924の一端の電圧の変化を検出することにより、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱、及びリリースボタン120が押されたことを検知することが可能である。
【0055】
(車両用充電装置の自己診断機能)
車両用充電装置1は、第1及び第2のリレー21,22に固着による故障が発生していないかを診断する自己診断機能を有している。本実施の形態では、この自己診断機能が、制御部20によって実現される。すなわち、本実施の形態では、制御部20が、第1及び第2のリレー21,22の故障を診断可能な故障診断手段として機能する。なお、第1及び第2のリレー21,22の固着とは、接点部211,221が、コイル部210,220への非通電時にも閉状態となったままになることをいう。
【0056】
制御部20は、車両9への充電電流の供給の開始時及び停止時の少なくとも何れかにおいて、所定の条件を満たしているときに故障の診断を実行し、この所定の条件を満たしていないときには故障の診断を実行しない。本実施の形態では、車両用充電装置1の稼働状態の履歴情報が予め定められた条件を満たしている場合に、所定の条件が満たされる。
【0057】
なお、充電電流の供給の開始時とは、必ずしも車両用充電装置1から充電電流が出力される瞬間を指すのではなく、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合された後、充電コネクタ11から蓄電池94の充電のための電流が出力されるまでの間をいう。また、充電電流の供給の停止時とは、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱し、もしくは充電の終了を示す信号を車両9側もしくは外部から受け取ったこと等によって充電電流の出力が停止された際、この充電電流の出力の停止後における所定の時間内(例えば1分以内)をいう。
【0058】
以下、故障診断手段としての制御部20の動作について、
図4乃至
図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0059】
図4乃至
図7は、制御部20が実行する処理の具体例を示すフローチャートである。この処理は、制御部20のCPUが、制御部20の記憶素子に予め記憶されたプログラムに基づいて実行する処理である。制御部20は、
図4乃至
図7に示す処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0060】
制御部20は、まずリセット信号を受信しているか否かを判定する(ステップS10)。リセット信号は、例えば第1のリレー21又は第2のリレー22を交換した場合などに、作業者や使用者等によるスイッチ操作によってオン状態となる信号である。
【0061】
リセット信号がオン状態である場合、すなわちリセット信号を受信していると判定した場合(ステップS10:Yes)、制御部20は、経時タイマ値T及び充電電流の積算値Wを0に初期化する(ステップS11)。経時タイマ値Tは、例えば一定の時間間隔(例えば100ms)で発生するタイマ割り込みによってインクリメントされる数値データとして得ることができる。
【0062】
次に、制御部20は、経時タイマ値Tが0であるか否かを判定する(ステップS12)。ここで、経時タイマ値Tが0である場合とは、ステップS11の処理で経時タイマTが0に初期化された場合である。経時タイマ値Tが0である場合(ステップS12:Yes)、制御部20は、後述する自己診断処理(ステップS26)を実行する。
【0063】
経時タイマ値Tが0でない場合(ステップS12:No)、制御部20は、経時タイマを起動する(ステップS13)。ステップS11の処理で経時タイマTが0に初期化された場合には、その初期化後の最初のステップS13の処理実行時からの経過時間が経時タイマ値Tとして得られる。なお、既に経時タイマが起動されているときにステップS13の処理が実行された場合には、その処理によって経時タイマ値Tが変化することなく、継続して経時動作が行われるものとする。
【0064】
次に、制御部20は、嵌合判定処理を実行する(ステップS14)。嵌合判定処理は、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合しているか否かを判定する処理である。この嵌合判定処理の詳細については後述する。
【0065】
嵌合判定処理で嵌合していないと判断された場合(S15:No)、制御部20は、再度嵌合判定処理を実行する(ステップS14)。嵌合判定処理で嵌合していると判断された場合(S15:Yes)、制御部20は、自己診断フラグSが1であるか否かを判定する(ステップS16)。自己診断フラグSが1でない場合(S16:No)、制御部20は、経時タイマ値Tが所定の閾値SH
0以上であるか否かを判定する(ステップS17)。この閾値SH
0は、例えば720時間とすることができる。経時タイマ値Tが閾値SH
0以上である場合(ステップS17:Yes)、制御部20は、自己診断処理(ステップS26)を実行する。経時タイマ値Tが閾値SH
0以上でない場合(S17:No)には、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0066】
一方、自己診断フラグSが1である場合(S16:Yes)、制御部20は、第1のリレー21をオン状態とするための第1のオン信号、及び第2のリレー22をオン状態とするための第2のオン信号を出力する(ステップS18)。この第1及び第2のオン信号により、第1のリレー21のコイル部210及び第2のリレー22のコイル部220に電流が供給される。次に、制御部20は、自己診断フラグSを0とする(ステップS19)。この自己診断フラグSは、後述する自己診断処理(ステップS26)の処理で正常状態であると判定された場合に1となる。したがって、自己診断処理が行われることなく再度ステップS16の処理が実行された場合には、その判定結果が否(No)となる。
【0067】
次に、制御部20は、電流センサ231の検出信号に基づいて充電電流をサンプリングし、このサンプリングした電流を積算する(ステップS20)。ここで、積算とは、前回までのサンプリング結果を累積的に加算した積算値に、今回新たにサンプリングした値を加算して新たな積算値(充電電流の積算値W)を算出する処理をいう。
【0068】
次に、制御部20は、離脱判定処理(ステップS21)を実行する。離脱判定処理は、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱したか否かを判定する処理である。この離脱判定処理の詳細については後述する。離脱判定処理で離脱したと判定された場合(ステップS22:Yes)、制御部20は、第1及び第2のオン信号の出力を停止する(ステップS24)。これにより、第1のリレー21のコイル部210及び第2のリレー22のコイル部220への電流供給が遮断され、第1のリレー21及び第2のリレー22がオフ状態となる。
【0069】
一方、離脱判定処理で離脱していないと判定された場合(ステップS22:No)、制御部20は、充電が終了したか否か、すなわち車両9側もしくは外部から充電の終了を示す信号を受け取ったか否かを判定する(ステップS23)。充電が終了したと判定した場合(ステップS23:Yes)、制御部20は、ステップS24の処理を実行し、第1のリレー21及び第2のリレー22をオフ状態とする。一方、充電が終了していないと判定した場合(ステップS23:No)、制御部20は、ステップS20〜S23の処理を再度実行する。
【0070】
また、制御部20は、ステップS24の処理の後、ステップS20の処理で算出した充電電流の積算値Wが所定の閾値SH
1以上であるか否かを判定する(ステップS25)。充電電流の積算値Wが所定の閾値SH
1以上である場合(ステップS25:Yes)、制御部20は、自己診断処理(ステップS26)を実行する。この閾値SH
1は、例えば90Ah(15A×8時間×75%相当)とすることができる。一方、充電電流の積算値Wが所定の閾値SH
1以上でない場合(ステップS25:No)、制御部20は、自己診断処理を行うことなく
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0071】
図5は、
図4におけるステップS14の嵌合判定処理の処理内容を詳細に示すフローチャートである。
【0072】
この嵌合判定処理において、制御部20は、通信用抵抗器201の第4の電線134側(C端子114側)の電圧(モニタリング信号)をモニタし、この電圧が+12Vから+9Vに変化しているか否かを判定する(ステップS30)。この処理は、車両9がSAEJ1772の規格に準拠している場合に、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合したことを検出するための処理である。つまり、車両9がSAEJ1772の規格に準拠している場合には、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合すると、車両9側の電気回路によって充電コネクタ11のC端子114の電圧が+12Vから+9Vに変化する。ステップ30の処理では、この電圧の変化によって充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合したことを検出する。
【0073】
ステップS30の判定結果が否(No)である場合、すなわちモニタリング信号が+12Vである場合、制御部20は、直流電圧計29によって検出される第2電圧信号の変化によって、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合したか否かを判定する(ステップS31)。なお、ステップS30の判定結果が否である場合とは、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱している場合、又は車両9がSAEJ1772の規格に準拠していない場合である。
【0074】
ステップS30又はステップS31の判定結果が是(Yes)である場合、制御部20は、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合したと判断し(ステップS32)、通信用抵抗器201を介して車両9側にパルス信号を出力する(ステップS33)。このパルス信号は、SAEJ1772の規格に準拠した車両との通信を行うためのものである。制御部20は、このパルス信号によって、充電電流の定格値等の情報を車両側に伝達可能である。
【0075】
一方、ステップS31の処理において充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合していないと判定した場合(S31:No)、制御部20は、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱した状態であると判断し(ステップS34)、パルス信号の出力を停止する(ステップS35)。
【0076】
図6は、
図4におけるステップS21の離脱判断処理の処理内容を詳細に示すフローチャートである。
【0077】
この離脱判断処理において、制御部20は、直流電圧計28によって検出される第1電圧信号の変化によって、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱したか否かを判定する(ステップS40)。前述のように、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱すると、抵抗器27に電流が流れなくなるので、直流電圧計28によって検出される抵抗器27の一端の電圧が変化し、直流電圧計28から出力される第1の電圧信号に変化が生じる。また、リリースボタン120が押されたことによってスイッチ121の第1接点121aと第2接点121bとが非接続状態となることによっても、抵抗器27に流れる電流が変化し、第1の電圧信号に変化が生じる。
【0078】
制御部20は、第1の電圧信号が変化した場合に離脱状態と判断し(ステップS41)、第1の電圧信号が変化していない場合には嵌合状態と判断する(ステップS42)。
【0079】
図7は、
図4におけるステップS26の自己診断処理の処理内容を詳細に示すフローチャートである。制御部20は、第1のリレー21及び第2のリレー22の動作状態(オン状態及びオフ状態)を個別に切り替えることにより、第1のリレー21又は第2のリレー22が固着していないかを診断する。
【0080】
この自己診断処理において、制御部20は、第1のオン信号を出力して第1のリレー21のコイル部210に電流を供給する一方、第2のオン信号は出力せず、第2のリレー22のコイル部220には電流が供給されない状態とする(ステップS50)。
【0081】
次に、制御部20は、この状態で電流センサ231が出力する電流Ioを示す信号(電流信号)が所定の閾値SH
2を超えているか否かを判定する(ステップS51)。この閾値SH
2は、例えば電流Ioが15mAである場合の電流信号の値である。
【0082】
電流信号が閾値SH
2を超えている場合(S51:Yes)、オフ状態であるべき第2のリレー22が固着していることにより、診断用抵抗器24を介して電流が流れていると判断できるので、制御部20は、異常状態と判断し(ステップS57)、異常報知部100へ異常報知信号を出力することによって異常の発生を報知する(ステップS58)。
【0083】
一方、電流信号が閾値SH
2以下である場合(S51:No)、制御部20は、第2のオン信号を出力して第2のリレー22のコイル部220に電流を供給する一方、第1のオン信号は出力せず、第1のリレー21のコイル部210には電流が供給されない状態とする(ステップS52)。
【0084】
次に、制御部20は、この状態で電流信号が閾値SH
2を超えているか否かを判定する(ステップS53)。電流信号が閾値SH
2を超えている場合(S53:Yes)、オフ状態であるべき第1のリレー21が固着していることにより、診断用抵抗器24を介して電流が流れていると判断できるので、制御部20は、異常状態と判断し(ステップS57)、異常報知部100へ異常報知信号を出力することによって異常の発生を報知する(ステップS58)。
【0085】
一方、電流信号が閾値SH
2以下である場合(S33:No)、制御部20は、正常状態と判断し、自己診断を実行する条件となる指標値である経時タイマ値T及び充電電流の積算値Wを0とする(ステップS55)。また、制御部20は、自己診断フラグSを1とする。
【0086】
以上、説明したように、本実施の形態では、車両用充電装置1の稼働状態の履歴情報として経時タイマ値T及び充電電流の積算値Wを用い、これらの指標値が予め定められた閾値SH
0,SH
1以上である場合に、制御部20が自己診断を実行する。ここで、ステップS17で比較の対象となる経時タイマ値Tは、前回の自己診断実行時又はリセット信号受信時からの経過時間である。また、ステップS25で比較の対象となる充電電流の積算値Wは、前回の自己診断実行時又はリセット信号受信時からの充電電流の積算値である。
【0087】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
【0088】
(1)充電電流の開始時及び停止時に毎回自己診断を行うのではなく、所定の条件を満たしている場合に限って自己診断を行うので、毎回自己診断を行う場合に比較して、第1のリレー21及び第2のリレー22の動作頻度が低下する。このため、第1のリレー21及び第2のリレー22における接点部211,221の接点性能の劣化が抑制され、車両用充電装置1の耐久性が高まる。
【0089】
(2)自己診断を実行するか否かの判断の条件として、充電電流の積算値を用いるので、この判断を適切に行うことができる。つまり、第1のリレー21及び第2のリレー22の接点部211,221の接点性能は、通電した電流量が多いほど劣化しやすいので、充電電流の積算値を用いて自己診断を実行するか否かを判断することにより、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0090】
(3)また、本実施の形態では、自己診断を実行するか否かの判断の条件として、前回の自己診断実行時からの経過時間を用いるので、この判断を適切に行うことができる。つまり、例えば水分の浸入等による第1のリレー21及び第2のリレー22の接点部211,221の接点性能の劣化は、長時間に亘る使用による経時変化によって進行する可能性があるので、前回の自己診断実行時からの経過時間を用いて自己診断を実行するか否かを判断することにより、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0091】
(第1の実施の形態の変形例)
図4に示す例では、ステップS20において、電流センサ231の検出信号に基づいて検出した充電電流を積算したが、これに替えて、検出した充電電流の電流値が所定値を超えている場合に、この超えた分の電流値を積算してもよい。この所定値としては、例えば車両用充電装置1の定格出力電流を用いることができる。
【0092】
例えば、車両用充電装置1の定格出力電流が15Aである場合、実際の充電電流が16Aであれば、この差分にあたる1Aを積算する。この他のステップにおける処理は、
図4乃至
図7に示したものと共通の処理とすることができる。ただし、ステップS25における閾値SH
1は、上記の値よりも小さくすることが望ましい。本変形例における閾値SH
1は、例えば9.0Ah(18A×0.5時間相当)とすることができる。
【0093】
この変形例によれば、特に接点性能の劣化が激しい大電流の通電時において、所定値を超えた分の電流の積算値に基づいて自己診断を実行するので、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0094】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について
図8を参照して説明する。
【0095】
図8は、本実施の形態における制御部20が実行する処理の具体例を示すフローチャートである。第1の実施の形態では、ステップS20において、電流センサ231の検出信号に基づいて検出した充電電流を積算したが、本実施の形態では、ステップS20Aにおいて、充電電流を検出すると共に第1の電線131と第2の電線132との電位差(充電電圧)を交流電圧計232によって検出し、充電電流と充電電圧との積である充電電力を求め、さらにこの充電電力を積算して充電電力の積算値Pを演算する。そして、ステップS25Aにおいて、充電電力の積算値Pと閾値SH
3とを比較し、充電電力の積算値Pが閾値SH
3以上であれば、自己診断を実行する。この他のステップにおける処理は、第1の実施の形態と同様である。
【0096】
ステップS25Aにおける閾値SH
3は、例えば21kWh(15A×8時間×220V×75%相当)とすることができる。この場合、充電電力の積算値Pは、自己診断を実行した際、ステップS55の処理でクリアされる。したがって、ステップS25Aにおいて比較の対象となる充電電流の積算値は、前回の自己診断実行時からの出力電力(車両用充電装置1が出力した充電電力)の積算値である。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態では、車両用充電装置1の稼働状態の履歴情報として充電電力の積算値を用い、この充電電力の積算値が予め定められた閾値SH
3以上である場合に、制御部20が自己診断を実行する。第1のリレー21及び第2のリレー22の接点部211,221の接点性能は、車両9側に出力した電力量が多いほど劣化しやすいので、充電電力の積算値を用いて自己診断を実行するか否かを判断することにより、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0098】
(第2の実施の形態の変形例)
図8に示す例では、ステップS20Aにおいて、検出した充電電流及び充電電圧に基づいて得られた充電電力を積算したが、これに替えて、充電電力が所定値を超えている場合に、この超えた分の充電電力を積算してもよい。この所定値としては、例えば車両用充電装置1の定格出力電力を用いることができる。
【0099】
この他のステップにおける処理は、
図8に示したものと共通の処理とすることができる。ただし、ステップS25Aにおける閾値SH
3は、上記の値よりも小さくすることが望ましい。本変形例における閾値SH
3は、例えば2.0kWh(18A×0.5時間×220V相当)とすることができる。
【0100】
この変形例によれば、特に接点性能の劣化が激しい大電力の出力時において、所定値を超えた分の充電電力に基づいて自己診断を実行するので、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0101】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について
図9を参照して説明する。
【0102】
図9は、本実施の形態における制御部20が実行する処理の具体例を示すフローチャートである。
【0103】
制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91とが嵌合したか否かを、直流電圧計29によって検出される電圧の変化によって判断する(ステップS100)。嵌合が検知されない場合(S100:No)、制御部20は、例えば所定の時間ごとにステップS100の判定を繰り返し実行する。
【0104】
ステップS100で充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合が検知された場合(S100:Yes)、制御部20は、第1のリレー21をオン状態とするための第1のオン信号、及び第2のリレー22をオン状態とするための第2のオン信号を出力し、第1のリレー21及び第2のリレー22を共にオン状態とする(ステップS101)。これにより、車両9側に充電電流が出力される。
【0105】
次に、制御部20は、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱したか否かを、直流電圧計28によって検出される電圧の変化によって判断する(ステップS102)。また、制御部20は、車両9側もしくは外部から、充電の終了を示す信号を受け取ったか否かを判断する(ステップS103)。
【0106】
充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱を検知した場合(S102:Yes)、又は充電の終了を検知した場合(S103:Yes)、制御部20は、第1及び第2のオン信号の出力を停止し、第1のリレー21及び第2のリレー22を共にオフ状態とする(ステップS104)。これにより、L相の電源線141と第1の電線131との接続、及びN相の電源線142と第2の電線132との接続が遮断される。
【0107】
次に、制御部20は、第1のリレー21及び第2のリレー22の動作回数をインクリメントする(ステップS105)。すなわち、制御部20が記憶している第1のリレー21及び第2のリレー22の動作回数に1を加算する。
【0108】
次に、制御部20は、ステップS105でインクリメントした動作回数が所定値の閾値SH
4以上であるかを判定する(ステップS106)。動作回数が所定値の閾値SH
4以上である場合(S106:Yes)、制御部20は、自己診断を実行する(ステップS107)。この閾値SH
4は、例えば10回とすることができる。
【0109】
ステップS107の自己診断が完了すると、制御部20は、処理を終了する。一方、制御部20は、ステップS106の判定の結果がNoである場合、自己診断を行うことなく処理を終了する。
【0110】
この場合、第1のリレー21及び第2のリレー22の動作回数は、自己診断を実行した際、ステップS55の処理でクリアされる。従って、ステップS106において比較の対象となる動作回数は、前回の自己診断実行時からの第1のリレー21及び第2のリレー22の動作回数のカウント値である。
【0111】
以上説明したように、本実施の形態では、車両用充電装置1の稼働状態の履歴情報として第1のリレー21及び第2のリレー22の動作回数のカウント値を用い、この動作回数のカウント値が予め定められた閾値SH
4以上である場合に、制御部20が自己診断を実行する。第1のリレー21及び第2のリレー22の接点部211,221の接点性能は、動作回数(オン状態からオフ状態に切り替わった回数)が多いほど劣化しやすいので、動作回数のカウント値を用いて自己診断を実行するか否かを判断することにより、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0112】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について
図10を参照して説明する。
【0113】
図10は、本実施の形態における制御部20が実行する処理の具体例を示すフローチャートである。
【0114】
図10に示すフローチャートでは、第1のリレー21をオン状態とするための第1のオン信号、及び第2のリレー22をオン状態とするための第2のオン信号を出力し、第1のリレー21及び第2のリレー22を共にオン状態とした後(ステップS201)、充電時間タイマを起動する(ステップS202)。また、第1のリレー21及び第2のリレー22を共にオフ状態とした後(ステップS205)、充電時間タイマを停止し(ステップS206)、充電時間の累積値(充電時間タイマのタイマ値)が閾値SH
5以上であるか否かを判定する(ステップS207)。
【0115】
この判定の結果、充電時間の累積値が閾値SH
5以上であれば(S207:Yes)、自己診断を実行し(ステップS208)、ステップS200に処理を戻す。一方、充電時間の累積値が閾値SH
5未満であれば(S207:No)、自己診断を実行することなく、ステップS200に処理を戻す。
【0116】
図10のフローチャートにおけるステップS200,S201,S203,S204,S205の処理内容は、
図9のフローチャートにおけるステップS100〜S104の処理内容と同じである。
【0117】
なお、充電時間のタイマ値は、ステップS206で充電時間タイマを停止してもクリアされず、次回の充電サイクルにおけるステップS202で充電時間タイマが起動された際には、充電時間タイマを停止した際のタイマ値から計時が再開される。
【0118】
この充電時間のタイマ値は、自己診断を実行した際、ステップS55の処理でクリアされる。従って、ステップS207において比較の対象となる充電時間は、前回の自己診断実行時からの充電時間の累積値である。
【0119】
以上説明したように、本実施の形態では、車両用充電装置1の稼働状態の履歴情報として充電時間の累積値を用い、この充電時間の累積値が予め定められた閾値SH
5以上である場合に、制御部20が自己診断を実行する。第1のリレー21及び第2のリレー22の接点部211,221の接点性能は、充電時間が長いほど劣化しやすいので、充電時間の累積値を用いて自己診断を実行するか否かを判断することにより、自己診断を行う頻度を適正化できる。
【0120】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0121】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、第1乃至第4の実施の形態及びその変形例に記載した複数の条件(自己診断を行うか否かの条件)を論理和によって組み合わせて自己診断を行うか否かを判断してもよい。