【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
【0038】
[実施例1]
図4(A)は実施例1に係るファラデー回転子の側面図、
図4(B)は実施例1に係るファラデー回転子の概略断面図を示したものである。
図4中、符号21、22および23は、第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石を示し、その磁化方向を黒矢印で示してある。また、各磁石の中心には孔部(各孔部が合体して集合体磁石の貫通孔を構成している)が設けられている。
【0039】
そして、第1の磁石21は、光の進行する光軸に垂直でかつ外側から光軸に向かって磁化している。一方、第2の磁石22の磁化方向は、光軸に垂直ではあるが第1の磁石21とは逆に光軸から外側に向かった方向に磁化している。また、第3の磁石23は、第1の磁石21と第2の磁石22の間に配置され、磁化方向が光軸と平行でかつ第2の磁石22から第1の磁石21に向かう方向に磁化されている。
【0040】
また、ファラデー素子25は、第1の磁石21、第2の磁石22、第3の磁石23に設けられた孔部(貫通孔)の長さ方向中央部に浮遊した状態で保持されている。
【0041】
尚、第1、第2、第3の各磁石21、22、23には、1.3Tの残留磁束密度および1800kA/mの保磁力を有するNd−Fe−B焼結磁石が用いられ、ファラデー素子には、直径が3mmで円柱状のTGG(テルビウム・ガリウム・ガーネット)が適用されていると共に、波長1060nmの光に対してファラデー回転角が45°±1°となるように加工されている。
【0042】
また、上記第1の磁石21は、
図9に示すように6個の磁石片(厚み寸法L
1=30mm)からなり、擬似的に光軸と垂直方向に磁化した形となっている。また、第2の磁石22も、第1の磁石21と同じ厚みの6個の磁石片からなり、磁化の方向は第1の磁石と反平行になっている。
【0043】
尚、第1の磁石21、第2の磁石22、第3の磁石23の中心には、上記ファラデー素子が収容されるよう3.3mmの孔部(貫通孔)が設けられており、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2は共に19.2mm、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3は7.9mmに設定されている。
【0044】
また、第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内における磁束密度の分布状態についてはホール素子を用いて計測され、計測された磁束密度の分布状態を示す
図3のグラフ図に基づき、実施例1に係る集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]と磁束密度の値がゼロになる2点間の距離[(b2−b1)mm]の数値を以下の表1に示し、更に、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3も表1に示す。また、直径が3mmの実施例1に係るファラデー素子の長さ寸法L(mm)、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)についても以下の表1に示す。
【0045】
尚、上記「ファラデー素子の保持状態」はファラデー素子が集合体磁石の貫通孔内壁面に接触することなく(すなわち、浮遊した状態)保持できた場合を「○」、ファラデー素子が貫通孔の内壁面に接触しあるいは貫通孔から飛び出た場合を「×」で表記している。更に、貫通孔の光軸方向に980m/s
2の重力加速度を与えたときに上記貫通孔からファラデー素子が飛び出なかった場合を「◎」で表記している。
【0046】
また、上記「逆方向損失(dB)」は、
図6に示すように、ファラデー回転子(但し、
図6は環状緩衝材26が設けられた実施例6に係るファラデー回転子を図示している)のレーザー光の入口側と出口側にそれぞれ偏光子27、28が設置された光アイソレータ構造体にして評価している。また、各偏光子には波長1060nm用の偏光ビームスプリッタを使用し、出口側偏光子の偏光方向は、入口側偏光子の偏光方向に対して45°ずらしている。尚、波長可変領域は1060±20nmとした。
【0047】
[実施例2]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が1.5G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が21mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に13.0mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が5.3mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が20.3mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、実施例2に係るファラデー回転子を製造した。
【0048】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が2.0G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が16mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に9.9mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が4.1mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が15.3mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、実施例3に係るファラデー回転子を製造した。
【0050】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が2.5G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が13mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に8.0mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が3.4mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が12.4mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、実施例4に係るファラデー回転子を製造した。
【0052】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0053】
[実施例5]
貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が26mm(実施例2は21mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に16.1mm(実施例2では共に13.0mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が6.6mm(実施例2では5.3mm)である点を除き実施例2と同様にして、実施例5に係るファラデー回転子を製造した。
【0054】
そして、実施例2と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0055】
[実施例6]
図5に示すように環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26を使用し、第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内にエポキシ系接着剤を用いて環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26が接着、固定された点を除き実施例1と同様にして、実施例6に係るファラデー回転子を製造した。
【0056】
そして、実施例1と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0057】
[実施例7]
図5に示すように環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26を使用し、第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内にエポキシ系接着剤を用いて環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26が接着、固定された点を除き実施例2と同様にして、実施例7に係るファラデー回転子を製造した。
【0058】
そして、実施例2と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が0.8G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が39mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に24.1mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が10.0mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が38.7mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、比較例1に係るファラデー回転子を製造した。
【0060】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が0.4G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が78mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に48.2mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が20.0mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が77.9mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、比較例2に係るファラデー回転子を製造した。
【0062】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(測定困難)を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が16.7mm(実施例3は15.3mm)である点を除き実施例3と同様にして、比較例3に係るファラデー回転子を製造した。
【0064】
そして、実施例3と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(測定困難)を表1に示す。
【0065】
[比較例4]
第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内に、エポキシ系接着剤を用いてファラデー素子を接着、固定した点を除き実施例4と同様にして、比較例4に係るファラデー回転子を製造した。
【0066】
そして、実施例4と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態(貫通孔内に接着、固定しているため評価不可)、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
「評価」
(1)各実施例に係るファラデー回転子は、逆方向損失(dB)に関し、30dB以上と良好であることが確認された。
【0069】
(2)実施例1〜2に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度がそれぞれ1.0G(ガウス)、1.5Gであることから静止での保持状態は良好で、通常の状態で使用するには十分であったが、貫通孔の光軸方向に980m/s
2の重力加速度がかかった場合、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出る可能性が若干あった。
【0070】
(3)実施例3〜4に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度が2.0G(ガウス)を超え貫通孔内においてファラデー素子を保持する力が強いため、貫通孔の光軸方向に980m/s
2の重力加速度がかかった場合でも、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出ることがなかった。
【0071】
特に、実施例4に係るファラデー回転子における最大磁束密度が2.5G(ガウス)と高い数値のため、
図7のグラフ図に示すように優れた逆方向損失特性が得られている。
【0072】
(4)実施例5に係るファラデー回転子において、上記最大磁束密度[G(ガウス)]とファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関しては実施例2に係るファラデー回転子と同一に設定されているが、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関しては実施例2に係るファラデー回転子と異なり(b2−b1)の80%未満に設定され、貫通孔内においてファラデー素子を保持する力が強いため、貫通孔の光軸方向に980m/s
2の重力加速度がかかった場合でも、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出ることがなかった。
【0073】
(5)実施例6〜7に係るファラデー回転子は、上記最大磁束密度[G(ガウス)]と貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]およびファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関して実施例1〜2に係るファラデー回転子とそれぞれ同一に設定されているが、集合体磁石の貫通孔内に環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26が接着配置されているため、貫通孔の光軸方向に980m/s
2の重力加速度がかかった場合でも集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出ることがなかった。
【0074】
(6)一方、比較例1に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度が0.8G(ガウス)と1.0G未満であるため、集合体磁石の貫通孔内においてファラデー素子を浮遊させた状態で保持することは可能であったが、ファラデー素子の保持力が弱くファラデー素子の中心軸がずれて逆方向損失(12.3dB)が著しく低下した。
【0075】
(7)比較例2に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度が0.4G(ガウス)と極めて低い値のため、集合体磁石の貫通孔内においてファラデー素子を浮遊させた状態で保持することが困難で、ファラデー素子が貫通孔の内壁面に接触してしまうことから逆方向損失を測定することはできなかった。
【0076】
(8)比較例3に係るファラデー回転子は、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関して、L>(b2−b1)と(b2−b1)より長く設定したため、保持できる磁界の範囲を超えてしまい、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出してしまった。
【0077】
(9)比較例4に係るファラデー回転子は、集合体磁石の貫通孔内にエポキシ系接着剤を用いてファラデー素子を接着、固定していることから、エポキシ系接着剤による外的な圧力がファラデー素子に作用して歪を発生させるため、
図7のグラフ図に示す実施例4と比較して、
図8のグラフ図から逆方向損失が著しく低下していることが確認された。