特許第6024612号(P6024612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6024612ファラデー回転子とファラデー回転子におけるファラデー素子の保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024612
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ファラデー回転子とファラデー回転子におけるファラデー素子の保持方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G02B27/28 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-149520(P2013-149520)
(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-22111(P2015-22111A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(72)【発明者】
【氏名】中村 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】大井川 欽哉
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−229802(JP,A)
【文献】 特開2012−068598(JP,A)
【文献】 特開2012−208490(JP,A)
【文献】 特開平05−173091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02F 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、光透過性と常磁性を有し上記貫通孔内に組み込まれるファラデー素子とを備えるファラデー回転子において、
磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第1の磁石と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第2の磁石と、上記第1の磁石と第2の磁石間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第2の磁石から第1の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石とで上記磁石体が構成され、第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、第1、第2、第3の各磁石によって貫通孔内に形成される磁界の磁束密度の最大値が1.0G(ガウス)以上であり、かつ、上記ファラデー素子における光軸方向の長さ寸法が磁束密度の値がゼロとなる貫通孔内における2点間の距離と同一若しくは上記距離より短く設定されており、更に、ファラデー素子の全体が上記磁束密度の値がゼロ以上である条件を満たす貫通孔内の位置に配置されることにより、貫通孔の内壁面に接触することなく上記ファラデー素子が貫通孔内に浮遊した状態で保持されていることを特徴とするファラデー回転子。
【請求項2】
略円形状の開口部を有しその内径がファラデー素子の外径より小さくかつファラデー素子に入射される光の外径より大きい一対の環状緩衝材が、貫通孔内に保持されたファラデー素子の光軸方向両端側の位置に、各端面と隙間を介し設けられていることを特徴とする請求項1に記載のファラデー回転子。
【請求項3】
光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、光透過性と常磁性を有し上記貫通孔内に組み込まれるファラデー素子とを備えるファラデー回転子におけるファラデー素子の保持方法において、
磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第1の磁石と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第2の磁石と、上記第1の磁石と第2の磁石間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第2の磁石から第1の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石とで上記磁石体が構成され、第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、第1、第2、第3の各磁石によって貫通孔内に形成される磁界の磁束密度の最大値が1.0G(ガウス)以上であり、かつ、上記ファラデー素子における光軸方向の長さ寸法を磁束密度の値がゼロとなる貫通孔内における2点間の距離と同一若しくは上記距離より短く設定し、更に、ファラデー素子の全体を上記磁束密度の値がゼロ以上である条件を満たす貫通孔内の位置に配置することにより、貫通孔の内壁面に接触させることなく上記ファラデー素子を貫通孔内に浮遊させた状態で保持することを特徴とするファラデー回転子におけるファラデー素子の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムやレーザー加工システム等に用いられる磁気光学デバイスに係り、特に、光源から出射された光が光学素子の端面で反射し、光源に戻ることを防止する光アイソレータ等に用いられるファラデー回転子とこのファラデー回転子の構成部品であるファラデー素子の保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファラデー回転子は、ファラデー素子とこのファラデー素子へ磁界を加えてファラデー効果を発生させるための磁性体からなる機能素子であり、光通信システムやレーザー加工システム等に用いられる半導体レーザーへの戻り光を遮断し、そのレーザー発振を安定させるために必要な光アイソレータ等の磁気光学デバイスに用いられている。
【0003】
図1は、現在、光通信システムで使われている基本的なファラデー回転子の断面図である。図中の符号10は、光軸方向(黒矢印)に磁化した永久磁石(磁性体)であり、一般的にその形状は円筒型で、その貫通孔の中にファラデー素子11が組み込まれている。このファラデー素子11は、貫通孔内において永久磁石10により形成される光軸方向の磁界によってファラデー効果を発生する。
【0004】
ところで、従来、光通信システムで使われる光の波長帯域は主に1.3〜1.7μmであり、光アイソレータの一部を構成するファラデー素子として、希土類鉄ガーネット膜が永久磁石の貫通孔内に組み込まれていた。
【0005】
近年、加工機用ファイバーレーザーの励起に使われる半導体レーザーの保護に使用される光アイソレータの需要が高まっているが、ここで使われる光の波長は、光通信帯域よりも短い波長、主に1μm付近の波長である。
【0006】
そして、1μm付近の波長では、希土類鉄ガーネット膜は光の吸収が大きく使用に耐えられないため、テルビウム・ガリウム・ガーネット(以下、TGGと略記する場合がある)やテルビウムガラス等の常磁性体がファラデー素子として使われている。
【0007】
ここで、ファラデー回転子を上記光アイソレータに使用する場合、ファラデー効果により光の偏光面を回転させる回転角度(以下ファラデー回転角と称する)は45度(以下、45゜と表記する)でなければならない。
【0008】
そして、ファラデー素子の長さをL、ベルデ定数をV、光軸方向の磁界をHとすると、
ファラデー回転角=V×L×Hとなる。
【0009】
尚、ファラデー素子のベルデ定数Vは空間的に一定であるが、永久磁石で作る光軸方向の磁界は空間的に一定とは限らないため、実際のファラデー回転角は、
ファラデー回転角=ΣV・H(L)・ΔL 式(1)
となる。
【0010】
上記式(1)により実際のファラデー回転角は求められるが、TGGやテルビウムガラス等の常磁性体はベルデ定数(V)が小さく、偏光方向を回転させる能力が小さいため大きな磁界が必要とされ、結果として上記常磁性体は光軸方向に長い大きなものが必要となり、同時にこれを磁化する永久磁石(磁性体)も巨大なものとなってしまっていた。
【0011】
そして、常磁性体と永久磁石(磁性体)の巨大化は、大きなコストアップにつながるだけでなく、強力な漏洩磁界のため、光アイソレータの組立、更には光アイソレータのデバイスへの組込みを困難なものとしていた。
【0012】
更に、上記常磁性体の寸法が光軸方向へ長くなると、レーザー光が透過する際に光を吸収して常磁性体の温度が上昇し、ファラデー回転角が45゜からずれて光アイソレータとしての性能を低下させる原因へもつながっている。
【0013】
そこで、特許文献1においては、永久磁石(磁性体)の形状を「外円内角形状」(すなわち、外周部を断面円形状とし、内周部を断面角形状とする)に変更することにより常磁性体に作用する磁力の強度を高め、永久磁石(磁性体)と光アイソレータの小型化を図る方法を提案している。
【0014】
また、特許文献2においては、永久磁石(磁性体)における貫通孔の一部を広げて偏光子とコリメータを上記貫通孔内に挿入配置することにより、光アイソレータの小型化を図る方法を提案している。
【0015】
更に、特許文献3においては、図1に示す単一の磁石10に変えて、図2に示すように、孔部を有し磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第1の磁石1と、孔部を有し磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第2の磁石2と、上記第1の磁石1と第2の磁石2間に配置されかつ孔部を有し磁化方向が光軸と平行で第2の磁石から第1の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石3とを組み合わせて磁石の集合体とし、集合体磁石の貫通孔(各孔部が合体して磁石の貫通孔を構成している)内に形成される磁界の強度を高めることにより、光アイソレータの小型化とファラデー回転角の温度変化を抑制する方法を提案している。
【0016】
そして、特許文献1〜3で提案された各方法により永久磁石(磁性体)と光アイソレータの小型化が図れ、特許文献3の方法によりファラデー回転角の温度変化が抑制された光アイソレータを提供できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2001−174754号公報(段落0004、図1図2参照)
【特許文献2】特開2006−330197号公報(段落0044、段落0063参照)
【特許文献3】特開2009−229802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、貫通孔を有する磁石体と貫通孔内に組み込まれるファラデー素子とを備える従来のファラデー回転子において、上記ファラデー素子を貫通孔内に保持させる手法としては、通常、接着剤や半田等を用いてファラデー素子を貫通孔内に接着固定する方法、あるいは、ファラデー素子を貫通孔内に直接若しくは軟磁性の筒体等を介し貫通孔内に嵌合させる方法等が採られている。
【0019】
例えば、特許文献1に開示されたファラデー回転子においては、公報の図2および段落0004に接着剤や半田等を用いる方法が記載され、また、公報の図1に永久磁石の貫通孔内にファラデー素子を直接嵌合させる方法が記載されている。
【0020】
同様に、特許文献2に開示されたファラデー回転子においても、公報の図1(b)および段落0044と段落0063においてスペーサー(エポキシ樹脂等)によりファラデー素子を接着・固定する方法が記載されており、また、特許文献3に開示されたファラデー回転子でも、公報に具体的に記載されてはいないが、接着剤や軟磁性の筒体等を用いて接着・固定する方法が採られている。
【0021】
しかし、接着剤や半田等を用いてファラデー素子を接着固定する方法は、接着剤や半田等による外的な圧力がファラデー素子に作用して歪を発生させるため、ファラデー素子の光学特性に影響を及ぼして、光アイソレータに求められる戻り光の高い遮蔽特性が得られなくなる新たな問題を引き起こす。
【0022】
また、直接若しくは軟磁性の筒体等を介し貫通孔内にファラデー素子を嵌合させる方法も、永久磁石や筒体等による外的な圧力がファラデー素子に作用して歪を発生させ易いため、接着剤や半田等を用いる方法と同様、ファラデー素子の光学特性に影響を及ぼして光アイソレータに求められる戻り光の高い遮蔽特性が得られなくなる問題を引き起こす。
【0023】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、ファラデー素子に加わる外的な圧力、特に局所的に加わる高い圧力を排除して優れた光学特性を有する小型のファラデー回転子を提供し、合わせてファラデー回転子におけるファラデー素子の保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、本発明者等は、わずかな加圧で光学特性が劣化するファラデー素子について外的な圧力がかからない保持方法を検討した結果、ファラデー素子が持つ常磁性とファラデー素子が組み込まれる磁石体の磁力を利用して保持する方法を発見するに至った。
【0025】
すなわち、請求項1に係る発明は、
光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、光透過性と常磁性を有し上記貫通孔内に組み込まれるファラデー素子とを備えるファラデー回転子において、
磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第1の磁石と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第2の磁石と、上記第1の磁石と第2の磁石間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第2の磁石から第1の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石とで上記磁石体が構成され、第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、第1、第2、第3の各磁石によって貫通孔内に形成される磁界の磁束密度の最大値が1.0G(ガウス)以上であり、かつ、上記ファラデー素子における光軸方向の長さ寸法が磁束密度の値がゼロとなる貫通孔内における2点間の距離と同一若しくは上記距離より短く設定されており、更に、ファラデー素子の全体が上記磁束密度の値がゼロ以上である条件を満たす貫通孔内の位置に配置されることにより、貫通孔の内壁面に接触することなく上記ファラデー素子が貫通孔内に浮遊した状態で保持されていることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載のファラデー回転子において、
略円形状の開口部を有しその内径がファラデー素子の外径より小さくかつファラデー素子に入射される光の外径より大きい一対の環状緩衝材が、貫通孔内に保持されたファラデー素子の光軸方向両端側の位置に各端面と隙間を介し設けられていることを特徴とする。
【0026】
次に、請求項3に係る発明は、
光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、光透過性と常磁性を有し上記貫通孔内に組み込まれるファラデー素子とを備えるファラデー回転子におけるファラデー素子の保持方法において、
磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第1の磁石と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第2の磁石と、上記第1の磁石と第2の磁石間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第2の磁石から第1の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石とで上記磁石体が構成され、第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、第1、第2、第3の各磁石によって貫通孔内に形成される磁界の磁束密度の最大値が1.0G(ガウス)以上であり、かつ、上記ファラデー素子における光軸方向の長さ寸法を磁束密度の値がゼロとなる貫通孔内における2点間の距離と同一若しくは上記距離より短く設定し、更に、ファラデー素子の全体を上記磁束密度の値がゼロ以上である条件を満たす貫通孔内の位置に配置することにより、貫通孔の内壁面に接触させることなく上記ファラデー素子を貫通孔内に浮遊させた状態で保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るファラデー回転子並びにファラデー素子の保持方法によれば、
第1、第2、第3の各磁石により貫通孔内に形成される磁界の磁束密度の最大値が1.0G(ガウス)以上であり、ファラデー素子における光軸方向の長さ寸法が磁束密度の値がゼロとなる貫通孔内における2点間の距離と同一若しくは上記距離より短く設定されており、ファラデー素子の全体が上記磁束密度の値がゼロ以上である条件を満たす貫通孔内の位置に配置されることで貫通孔の内壁面に接触することなく上記ファラデー素子が貫通孔内に浮遊した状態で保持されることから、接着剤等を用いる従来の保持方法と較べてファラデー素子に局所的な外圧が加わらなくなるため、優れた光学特性を維持した状態でファラデー素子をファラデー回転子内に保持できる効果を有する。
【0028】
特に、請求項2に係るファラデー回転子によれば、一対の環状緩衝材が、貫通孔内に保持されたファラデー素子の光軸方向両端側の位置に各端面と隙間を介し設けられているため、ファラデー回転子の輸送中等、比較的大きな加速度がファラデー回転子に加わった場合でも磁力に抗してファラデー素子が上記貫通孔から飛び出す現象を回避でき、かつ、一対の上記環状緩衝材は略円形状の開口部を有し、その内径がファラデー素子の外径より小さくファラデー素子に入射される光の外径より大きいため、ファラデー回転子の光学特性が損なわれない効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】光通信システムで使用されている従来例に係るファラデー回転子の概略断面図。
図2】特許文献3に記載されたファラデー回転子の概略断面図。
図3】本発明に係る磁石体の貫通孔内における磁束密度の分布を示すグラフ図。
図4図4(A)は本発明に係るファラデー回転子の側面図、図4(B)は本発明に係るファラデー回転子の概略断面図。
図5】一対の環状緩衝材が組み込まれた本発明に係るファラデー回転子の概略断面図。
図6】逆方向損失評価時における本発明に係るファラデー回転子の概略断面図。
図7】実施例4に係る光アイソレータの逆方向損失特性を示すグラフ図。
図8】比較例4に係る光アイソレータの逆方向損失特性を示すグラフ図。
図9】実施例1に係るファラデー回転子の構成部材である第1の磁石の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
上述したように、わずかな加圧で光学特性が劣化するファラデー素子について外的な圧力がかからない保持方法を本発明者等が検討した結果、ファラデー素子が持つ常磁性とファラデー素子を貫通孔内に組み込む磁石体の磁力を利用して、上記貫通孔内においてファラデー素子を浮遊した状態で保持する方法を発見するに至っている。
【0032】
ところで、上記貫通孔を有する磁石体の磁力を利用する上述の方法以外に、本発明者等は、流動する気体や液体等流体の圧力で貫通孔内におけるファラデー素子の位置を定める方法も検討したが、小型のファラデー回転子に流体の供給装置を併設することは現実的でなく、流体から受ける圧力でもファラデー素子の光学特性が低下してしまうため好ましい方法ではなかった。
【0033】
これに対し、貫通孔内において磁石体の磁力を利用してファラデー素子を浮遊した状態で保持する上述の方法においては、磁石体における貫通孔の中心から軸方向に左右対称な磁束密度分布を有することがより好ましく、この場合、ファラデー素子は、貫通孔内における軸方向中心に自動的に位置決めされる。
【0034】
但し、左右対称な磁束密度分布を有する貫通孔内において浮遊した状態で保持されるファラデー素子が何らかの原因で軸方向に移動した場合、当初の設定保持位置に戻ることができるために満たすべき寸法の範囲が存在する。貫通孔内における磁束密度の分布を示す図3のグラフ図に示すように、第1、第2、第3の各磁石により構成される磁石体により生ずる磁束密度の値がゼロになる貫通孔内における2点の位置をb1、b2とした場合、ファラデー素子における軸方向の長さ寸法Lについては、L≦(b2−b1)の条件を満たすこと、すなわち、ファラデー素子における光軸方向の長さ寸法Lは、磁束密度の値がゼロとなる貫通孔内における2点間の距離と同一若しくは上記距離より短く設定されることを要する。この条件を満たさない場合(すなわち、貫通孔内における磁束密度の値が負である位置にファラデー素子の両端部が食み出る場合)、ファラデー素子の両端部に中心部とは異なる方向の磁界が加わってしまう結果、ファラデー素子が当初の設定保持位置に戻るための復元力が低下してしまう。このため、ファラデー素子における軸方向の長さ寸法Lは、L≦(b2−b1)の条件を満たすことを要し、特に、L≦(b2−b1)×0.80である条件を満たす場合、より安定して保持することができることから好ましい。
【0035】
また、上記貫通孔内に形成される磁界の磁束密度についてはその最大値が1.0G(ガウス)以上であることを要し、好ましくは2.0G(ガウス)以上である。第1、第2、第3の各磁石によって貫通孔内に形成される磁界の磁束密度が1.0G(ガウス)未満の場合、貫通孔内におけるファラデー素子の保持力が不十分となりファラデー素子の保持位置が不安定になってしまう。尚、磁束密度が2.0G(ガウス)以上であれば、ファラデー回転子自体が破損しない程度の地震等の外力が加わった場合でも、貫通孔内において浮遊した状態で保持されるファラデー素子の位置ずれは発生し難い。
【0036】
ところで、ファラデー回転子は設備内に固定して使用されるが、設備内に固定するまでにファラデー回転子を輸送しなければならない場合がある。そして、ファラデー回転子を輸送する際に、設備内で固定して使用される場合を上回る加速度がファラデー回転子内のファラデー素子に加わる可能性があり、磁力による復元の範囲を越えてしまうと、ファラデー素子が第1、第2、第3の各磁石により構成された磁石体の貫通孔から軸方向に飛び出すことが考えられる。そこで、ファラデー素子が飛び出る現象を防止するため、貫通孔内に保持されたファラデー素子の光軸方向両端側の位置に、ファラデー素子の各端面と隙間を介して一対の環状緩衝材を設置することが好ましい。この環状緩衝材については、光が通過する略円形状の開口部を有しその内径がファラデー素子の外径より小さくファラデー素子に入射される光の外径より大きく設定しておけば、ファラデー回転子の輸送が終りファラデー回転子を設置した後においても環状緩衝材を貫通孔から取り外す必要は無い。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
【0038】
[実施例1]
図4(A)は実施例1に係るファラデー回転子の側面図、図4(B)は実施例1に係るファラデー回転子の概略断面図を示したものである。図4中、符号21、22および23は、第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石を示し、その磁化方向を黒矢印で示してある。また、各磁石の中心には孔部(各孔部が合体して集合体磁石の貫通孔を構成している)が設けられている。
【0039】
そして、第1の磁石21は、光の進行する光軸に垂直でかつ外側から光軸に向かって磁化している。一方、第2の磁石22の磁化方向は、光軸に垂直ではあるが第1の磁石21とは逆に光軸から外側に向かった方向に磁化している。また、第3の磁石23は、第1の磁石21と第2の磁石22の間に配置され、磁化方向が光軸と平行でかつ第2の磁石22から第1の磁石21に向かう方向に磁化されている。
【0040】
また、ファラデー素子25は、第1の磁石21、第2の磁石22、第3の磁石23に設けられた孔部(貫通孔)の長さ方向中央部に浮遊した状態で保持されている。
【0041】
尚、第1、第2、第3の各磁石21、22、23には、1.3Tの残留磁束密度および1800kA/mの保磁力を有するNd−Fe−B焼結磁石が用いられ、ファラデー素子には、直径が3mmで円柱状のTGG(テルビウム・ガリウム・ガーネット)が適用されていると共に、波長1060nmの光に対してファラデー回転角が45°±1°となるように加工されている。
【0042】
また、上記第1の磁石21は、図9に示すように6個の磁石片(厚み寸法L1=30mm)からなり、擬似的に光軸と垂直方向に磁化した形となっている。また、第2の磁石22も、第1の磁石21と同じ厚みの6個の磁石片からなり、磁化の方向は第1の磁石と反平行になっている。
【0043】
尚、第1の磁石21、第2の磁石22、第3の磁石23の中心には、上記ファラデー素子が収容されるよう3.3mmの孔部(貫通孔)が設けられており、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2は共に19.2mm、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3は7.9mmに設定されている。
【0044】
また、第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内における磁束密度の分布状態についてはホール素子を用いて計測され、計測された磁束密度の分布状態を示す図3のグラフ図に基づき、実施例1に係る集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]と磁束密度の値がゼロになる2点間の距離[(b2−b1)mm]の数値を以下の表1に示し、更に、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3も表1に示す。また、直径が3mmの実施例1に係るファラデー素子の長さ寸法L(mm)、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)についても以下の表1に示す。
【0045】
尚、上記「ファラデー素子の保持状態」はファラデー素子が集合体磁石の貫通孔内壁面に接触することなく(すなわち、浮遊した状態)保持できた場合を「○」、ファラデー素子が貫通孔の内壁面に接触しあるいは貫通孔から飛び出た場合を「×」で表記している。更に、貫通孔の光軸方向に980m/s2の重力加速度を与えたときに上記貫通孔からファラデー素子が飛び出なかった場合を「◎」で表記している。
【0046】
また、上記「逆方向損失(dB)」は、図6に示すように、ファラデー回転子(但し、図6は環状緩衝材26が設けられた実施例6に係るファラデー回転子を図示している)のレーザー光の入口側と出口側にそれぞれ偏光子27、28が設置された光アイソレータ構造体にして評価している。また、各偏光子には波長1060nm用の偏光ビームスプリッタを使用し、出口側偏光子の偏光方向は、入口側偏光子の偏光方向に対して45°ずらしている。尚、波長可変領域は1060±20nmとした。
【0047】
[実施例2]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が1.5G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が21mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に13.0mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が5.3mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が20.3mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、実施例2に係るファラデー回転子を製造した。
【0048】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が2.0G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が16mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に9.9mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が4.1mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が15.3mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、実施例3に係るファラデー回転子を製造した。
【0050】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が2.5G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が13mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に8.0mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が3.4mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が12.4mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、実施例4に係るファラデー回転子を製造した。
【0052】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0053】
[実施例5]
貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が26mm(実施例2は21mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に16.1mm(実施例2では共に13.0mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が6.6mm(実施例2では5.3mm)である点を除き実施例2と同様にして、実施例5に係るファラデー回転子を製造した。
【0054】
そして、実施例2と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0055】
[実施例6]
図5に示すように環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26を使用し、第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内にエポキシ系接着剤を用いて環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26が接着、固定された点を除き実施例1と同様にして、実施例6に係るファラデー回転子を製造した。
【0056】
そして、実施例1と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0057】
[実施例7]
図5に示すように環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26を使用し、第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内にエポキシ系接着剤を用いて環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26が接着、固定された点を除き実施例2と同様にして、実施例7に係るファラデー回転子を製造した。
【0058】
そして、実施例2と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が0.8G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が39mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に24.1mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が10.0mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が38.7mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、比較例1に係るファラデー回転子を製造した。
【0060】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
集合体磁石の最大磁束密度[G(ガウス)]が0.4G(実施例1は1.0G)、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]が78mm(実施例1は31mm)、第1の磁石21と第2の磁石22の光軸方向の寸法a1,a2が共に48.2mm(実施例1では共に19.2mm)、第3の磁石23の光軸方向の寸法a3が20.0mm(実施例1では7.9mm)、および、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が77.9mm(実施例1は30.8mm)である点を除き実施例1と同様にして、比較例2に係るファラデー回転子を製造した。
【0062】
そして、実施例1と同様、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(測定困難)を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
ファラデー素子の長さ寸法L(mm)が16.7mm(実施例3は15.3mm)である点を除き実施例3と同様にして、比較例3に係るファラデー回転子を製造した。
【0064】
そして、実施例3と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態、逆方向損失(測定困難)を表1に示す。
【0065】
[比較例4]
第1、第2、第3の各磁石21、22、23で構成される集合体磁石の貫通孔内に、エポキシ系接着剤を用いてファラデー素子を接着、固定した点を除き実施例4と同様にして、比較例4に係るファラデー回転子を製造した。
【0066】
そして、実施例4と同様、最大磁束密度[G(ガウス)]、貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]、第1の磁石21と第2の磁石22と第3の磁石23の光軸方向の寸法a1,a2,a3、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)、貫通孔内における環状緩衝材(シリコーン製Oリング)の有無、ファラデー素子の保持状態(貫通孔内に接着、固定しているため評価不可)、逆方向損失(dB)を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
「評価」
(1)各実施例に係るファラデー回転子は、逆方向損失(dB)に関し、30dB以上と良好であることが確認された。
【0069】
(2)実施例1〜2に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度がそれぞれ1.0G(ガウス)、1.5Gであることから静止での保持状態は良好で、通常の状態で使用するには十分であったが、貫通孔の光軸方向に980m/s2の重力加速度がかかった場合、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出る可能性が若干あった。
【0070】
(3)実施例3〜4に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度が2.0G(ガウス)を超え貫通孔内においてファラデー素子を保持する力が強いため、貫通孔の光軸方向に980m/s2の重力加速度がかかった場合でも、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出ることがなかった。
【0071】
特に、実施例4に係るファラデー回転子における最大磁束密度が2.5G(ガウス)と高い数値のため、図7のグラフ図に示すように優れた逆方向損失特性が得られている。
【0072】
(4)実施例5に係るファラデー回転子において、上記最大磁束密度[G(ガウス)]とファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関しては実施例2に係るファラデー回転子と同一に設定されているが、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関しては実施例2に係るファラデー回転子と異なり(b2−b1)の80%未満に設定され、貫通孔内においてファラデー素子を保持する力が強いため、貫通孔の光軸方向に980m/s2の重力加速度がかかった場合でも、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出ることがなかった。
【0073】
(5)実施例6〜7に係るファラデー回転子は、上記最大磁束密度[G(ガウス)]と貫通孔内における磁束密度の値がゼロになる2点間距離[(b2−b1)mm]およびファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関して実施例1〜2に係るファラデー回転子とそれぞれ同一に設定されているが、集合体磁石の貫通孔内に環状緩衝材(シリコーン製Oリング)26が接着配置されているため、貫通孔の光軸方向に980m/s2の重力加速度がかかった場合でも集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出ることがなかった。
【0074】
(6)一方、比較例1に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度が0.8G(ガウス)と1.0G未満であるため、集合体磁石の貫通孔内においてファラデー素子を浮遊させた状態で保持することは可能であったが、ファラデー素子の保持力が弱くファラデー素子の中心軸がずれて逆方向損失(12.3dB)が著しく低下した。
【0075】
(7)比較例2に係るファラデー回転子は、集合体磁石の最大磁束密度が0.4G(ガウス)と極めて低い値のため、集合体磁石の貫通孔内においてファラデー素子を浮遊させた状態で保持することが困難で、ファラデー素子が貫通孔の内壁面に接触してしまうことから逆方向損失を測定することはできなかった。
【0076】
(8)比較例3に係るファラデー回転子は、ファラデー素子の長さ寸法L(mm)に関して、L>(b2−b1)と(b2−b1)より長く設定したため、保持できる磁界の範囲を超えてしまい、集合体磁石の貫通孔からファラデー素子が飛び出してしまった。
【0077】
(9)比較例4に係るファラデー回転子は、集合体磁石の貫通孔内にエポキシ系接着剤を用いてファラデー素子を接着、固定していることから、エポキシ系接着剤による外的な圧力がファラデー素子に作用して歪を発生させるため、図7のグラフ図に示す実施例4と比較して、図8のグラフ図から逆方向損失が著しく低下していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るファラデー回転子並びにファラデー素子の保持方法によれば、接着剤等を用いた従来の保持方法と較べてファラデー素子に局所的な外圧が加わらなくなり優れた光学特性を維持した状態でファラデー素子をファラデー回転子内に保持できるため、電子、精密機械分野等に適用される産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0079】
1 第1の磁石
2 第2の磁石
3 第3の磁石
5 ファラデー素子
10 永久磁石(磁性体)
11 ファラデー素子
21 第1の磁石
22 第2の磁石
23 第3の磁石
25 ファラデー素子
26 環状緩衝材(シリコーン製Oリング)
27 偏光子
28 偏光子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9