(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱接着性繊維を用いて得られ、繊維の交点が熱接着されていない非熱接着領域と、繊維の交点が熱接着されている熱接着領域とが、不織布の表面において、交互に存在する不織布であって、前記非熱接着領域が、点状に分散して存在するか、または、線状に連続又は断続して存在しており、前記熱接着領域の繊維が圧着扁平化することなくその交点が熱接着されている、不織布。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の不織布は、熱接着性繊維を用いて得られ、繊維の交点が熱接着されていない非熱接着領域と、繊維の交点が熱接着されている熱接着領域とが、不織布の表面において、交互に存在し、前記非熱接着領域が、点状に分散して存在するか、または、線状に連続又は断続して存在し、前記熱接着領域の繊維が圧着扁平化することなくその交点が熱接着されている。
【0012】
本発明の不織布の製法は、熱接着領域の繊維が圧着扁平化することなくその交点が熱接着されていれば、特に限定されない。不織布の製法としては、熱接着性繊維を用いてウェブを作製後、繊維同士を繊維の交点で熱接着させる工程において、輸送コンベアー上にウェブを載せ、更にその上から、充分な通気性を有するメッシュコンベアー等に熱風が貫通しないように部分的にマスキングを複数施したコンベアー(以降、「マスキングコンベアー」と称す。)でウェブを挟み、マスキングコンベアー側から輸送コンベアー側に向けて、例えば循環式熱風熱処理機を用いて、熱風を貫通させる方法などが例示できる。このようにして得られる不織布は、熱風が貫通した部分の繊維の交点で熱接着され、マスキングによって熱風が貫通しなかった部分の繊維の交点は接着されない。
【0013】
本発明において、「熱接着領域」とは、繊維の交点が接着している領域をいい、特には、熱風が貫通し、繊維の交点が接着した領域をいい、「非熱接着領域」とは、繊維の交点が熱接着していない領域をいい、特には、マスキングによって熱風が貫通せず、繊維の交点が熱接着されていない領域をいう。ここで、熱接着領域には、メッシュコンベアーの網目形状に対応する紋様の非熱接着部が形成される場合があるが、本発明においては、このような製法に伴って熱接着領域に生じる非熱接着部の紋様を含む熱接着領域も、「熱接着領域」という。
【0014】
本発明において、「マスキング」とは、熱接着時に、熱接着させる箇所以外を保護するために覆い隠すことをいう。具体的には、マスキングには、熱風を貫通させないための遮断部分(マスク)と、熱風を貫通させるために遮蔽部分がない部分、とを有するメッシュコンベアーなどの装置が好適に利用できる。
【0015】
本発明において、「熱接着領域の繊維が圧着扁平化することなく」とは、不織布の繊維同士の熱接着されている交点の繊維が、不織布の厚み方向に向かって圧縮扁平化されていないことをいう。「圧着扁平化」には、熱圧着により繊維がフィルム化している状態を含む。
【0016】
本発明において、「ウェブ」とは、繊維が少なからず絡んだ状態の繊維集合体をいい、例えば、カード法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などで得られる繊維集合体をいう。
【0017】
本発明において、不織布に非熱接着領域を形成させるためには、上記したように、メッシュコンベアーに熱風が貫通しないように、部分的にマスクを複数施したマスキングコンベアーを使用すればよい。また、不織布に非熱接着領域を、点状に分散して存在させるためには、個々のマスクは、点状に分散して配列するように設ければよい。また、不織布に非熱接着領域を、線状に連続又は断続して存在させるためには、個々のマスクは、線状に連続又は断続して配列するように設ければよい。
【0018】
マスキングにおいて、マスクが、「線状に連続又は断続して配列」するとは、マスクが、直線状または曲線状に一定の周期性や規則性をもって、連続または断続して延びている態様をいう。そのため、非熱接着領域が、「線状に連続又は断続して存在」するとは、上記のマスキングよって得られる、非熱接着領域をいう。本発明において、マスクの線の幅は、特に限定されない。マスクが、不織布のMD(Machine Directionの略)やCD(Crcss Machine Directionの略)に対応して直線状または曲線状に連続して延びている態様であることが好ましい。また、マスクの個々の線の幅は、得られる不織布の風合いの点で、0.5〜30mmであることが好ましく、1〜20mmであることがより好ましい。また、マスクの個々の線の間隔は、強度の点で、0.5〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましい。
【0019】
また、マスキングにおいて、マスクが、「点状に分散」するとは、マスクが、点状に存在する態様をいい、その存在は、不規則的(ばらばらに)であっても規則的であってもよい。そのため、非熱接着領域が、「点状に分散して存在」するとは、上記のマスキングによって得られる、非熱接着領域をいう。マスキングのマスクの個々の形状は特に限定されず、円形、楕円形、四角形および菱形等、目的に応じた所望の形状であればよく、個々の大きさも特に限定されない。互いに独立して、異なる形状、大きさであってよい。
【0020】
個々のマスキングのマスクは、不織布面上に非熱接着領域が互いに連結して存在しないように配置すれば特に限定されないが、不織布強度や風合いを良好にするという点から、目的に応じて、規則的に配置されても、不規則(ランダム状)に配置されても構わない。個々の「点状」は、個々の面積に基づき、点状の面積と同じ面積の円に換算した場合、その直径が、風合いの点で、0.5〜30mmとなることが好ましく、1〜10mmとなることがより好ましい。また、個々の「点状」の間隔は、不織布強度の点で、1〜20mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。マスクを設けるメッシュコンベアーには、熱風が効果的に貫通する程度のメッシュサイズを持つメッシュコンベアーを採用すればよく、前記大きさのマスクを取り付けることが可能なメッシュサイズのものから選択すればよい。
【0021】
不織布の片面において、その表面積に対する熱接着領域の総面積の割合は、40%〜95%が好ましく、60%〜90%がより好ましく、60〜70%が特に好ましい。熱接着領域が40%以上であると、不織布強度が充分となり、更には、熱接着によって形成される熱接着領域が互いに連結し合うことによって構成される3次元ネットワーク構造によって、繊維間の空隙が固定(確保)されて、不織布の嵩が維持できることから、液体が液戻りし難くなることが期待される。一方、熱接着領域が95%以下であると、非熱接着領域が5%以上となり、不織布に占める一定量以上の非熱接着領域が確保される。非熱接着領域の繊維は、互いが接合されることなく存在しているので、例えば軟便等の高粘度の流体が一定の流速で当該非熱接着領域に押掛けた場合、自由度をもって存在する当該非熱接着領域の繊維は、その流体の圧に押されるように、そして、その流体の流路が確保されるように、空隙を広げ、または、空隙の形を変えることができる。本発明の不織布は、このように、特に粘性の高い流体の良好な通液性も期待される。
【0022】
上記面積の割合の測定は、次のとおりである。不織布の表面を観察して、構成繊維が部分的に集中して熱接着されている熱接着領域の面積を測定し、測定サンプル全面積に対する面積率を算出する。測定サンプルは、100mm×100mmにカットしたものを使用する(測定サンプル全面積は10000mm
2とする。)。OMRON社「3D Digital Fine Scope VC2400−IMU Ver.2.3」を使用して、測定サンプルの表裏を観察し、熱接着領域の面積を各10か所測定する。表裏の平均値(%)を算出することによって決定できる。
【0023】
本発明の不織布は、熱処理工程において、ウェブ搬送コンベアーとマスキングコンベアーとの間にウェブを挟みながら熱風を用いて加熱処理を行うことで好適に得ることができる。このとき、搬送コンベアーとマスキングコンベアーとのクリアランスは、用いるウェブの厚みに応じて変更するとよい。得られる不織布について所望する嵩の高さが損なわれず、かつ、熱風が、マスクで覆われた部分とウェブの隙間に多く侵入して、非熱接着領域に弱い接着が形成されることのないように、すなわち、マスキングの機能を十分発揮できるように、コンベアー間のクリアランスは、適宜調整すればよい。このとき、マスクは、マスキングコンベアーの、ウェブ側を向いた面に設けてもよいし、ウェブ側とは反対側を向いた面に設けてもよいが、マスクによる熱風の遮断効果を高めるためには、マスクが、ウェブ側を向いた面に設けられているのが好ましい。マスク部が直接ウェブに接触することで、マスキング効果がより高まるからである。また、さらに、マスキングの効果を増すために、マスキングコンベアーのマスクで覆われた部分を、ウェブ側に向かって特に厚みを増した構造としてもよい。これにより、熱風が、マスクで覆われた部分とウェブの間隙へと侵入することを、更に効果的に抑制することが可能となる。このときのマスクの厚みは、本来の目的を達するとともに、熱風がウェブに効率的に到達する範囲で、また、工業的に不利にならない範囲で、適宜適当な範囲に設定すればよい。
【0024】
マスキングコンベアーの材質は、PETネット、金属ネット等が例示できる。また、マスキングコンベアーは、工業的には、無端であるのが好ましく、搬送コンベアーと同速度で回転するのが好ましい。マスキングの部分はシリコン樹脂等で穴埋めして構成される。
【0025】
本発明に用いる熱接着性繊維は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、各種エラストマー樹脂などからなる繊維が例示できる。それらの繊維は、混合して使用してもよい。また、熱接着性繊維が、互いに異なる樹脂からなる複合繊維である場合には、低融点成分と高融点成分との組み合わせからなる複合繊維が例示できる。具体的には、低融点成分/高融点成分の組み合わせとしては、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー/ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートが例示できるが、これらに限定されない。本発明において、ポリエチレンとしては、ポリエチレンホモポリマー、エチレンを主成分とするエチレンとプロピレンもしくは他のオレフィンとのコポリマー、エチレンを主成分とするエチレンとその他の共重合成分とのコポリマーが利用できる。また、ポリプロピレンとは、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンを主成分とするプロピレンとエチレンもしくは他のオレフィンとのコポリマー、プロピレンを主成分とするプロピレンとその他の成分との共重合体が利用できる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、それらの共重合体が利用できる。
【0026】
複合繊維において、高融点成分の融点は、低融点成分の融点よりも10℃以上高いことが好ましい。複合繊維が、互いに異なる樹脂、特に、お互いに融点の異なる2種類の樹脂(低融点成分と高融点成分)で構成される場合、複合繊維の長さ方向と直角する方向における繊維断面に占める面積比(低融点成分/高融点成分)は、10/90〜90/10であることが好ましく、40/60〜60/40であることが更に好ましい。
【0027】
熱風を用いた加熱処理の条件は、用いる熱接着性繊維を構成する樹脂の種類に応じて、適宜、設定すればよい。例えば、熱風の温度は、熱接着性繊維の表面が熱溶融して、熱接着性繊維同士の交点が熱接着するような温度で行えばよい。また、熱風の風速等は特に限定されず、通常、循環式熱風加熱処理機等を用いて行う加熱処理条件から適宜採用することができる。
【0028】
ウェブには、本発明の効果を著しく妨げない範囲であれば、熱接着性繊維に、他の繊維が混綿されていてもよい。他の繊維としては、木質繊維などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、アクリル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの合成繊維が例示できる。これら、他の繊維が、熱接着に関与しない繊維であれば、ウェブから得られる不織布内の繊維間の接着点数を減少させることができ、これによって、得られる不織布にさらに柔軟性を付与することが可能になる。
【0029】
熱接着性繊維および他の繊維など本発明に用いられる繊維の繊度は1.0〜11dtexが好ましく、より好ましくは1.5〜5.5dtexである。また、繊維は、連続繊維(長繊維)もしくは短繊維が利用できるが、繊維長が10〜120mmの短繊維が好ましく、より好ましくは30〜60mmである。不織布の柔軟性を考慮すると、比較的、低繊度の繊維を選択することがよい。また、繊維が、複合繊維である場合、その断面は、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型等が例示できるが、本発明の効果を著しく妨げない範囲であれば特に限定されない。
【0030】
本発明の不織布において、熱接着領域を構成する繊維は、圧着扁平化することなく、繊維間の交点が熱接着されている。この構成を得るための製造方法は特に限定されないが、加熱エンボスロールによる熱圧着などに依らない、熱風接着などの方法によって、好適に得ることができる。
【0031】
本発明で得られる不織布は、経血や軟便など比較的粘性の高い液体を通液させるために良好に利用できる。これに対して、例えば、循環式熱風熱処理機等で熱接着された不織布は、嵩高な不織布となるが、不織布全体が繊維同士の交点において熱接着され、3次元的に固定されるために、繊維が自由に動くことができない。このような不織布は、その厚み方向へ粘性の高い液体を通液させるには、3次元網目状にはりめぐらされた繊維間を液体が通過することになり、熱接着性繊維が液の流れを阻害するため、特に粘度が高い液体は通液しにくくなる。
【0032】
また、例えば、エンボスロールなどの加熱ロールで熱圧着して得られた不織布の通液は、全体として、不織布の厚みが薄くなるために、通液時間は前記記載の循環式熱風熱処理機で熱接着された不織布よりは短縮されるものの、熱圧着による接着部は、繊維が圧着扁平化されてフィルム状となるために通液しない。また、この熱圧着による接着部以外の領域においても、加熱ロールの通過の過程で熱接着性繊維全体が熱を帯びて、接着状態を若干形成するため、繊維が自由に動くことができずに、前記同様、通液を阻害する要因となる。また、更には、エンボスロールの隣り合う凸部で押圧されることによって、両凸部に挟まれた凹部に対応する位置の不織布は、両サイドが押し下げられる結果、その厚みも減じられる。このため、得られた不織布の厚みは一般に薄く、全体として、保水性に欠け、一旦吸収した液体が戻り易い(液戻りが大きい)。
【0033】
一方、本発明の不織布においては、繊維同士の交点が熱接着された熱接着領域と、繊維同士が熱接着しておらず、繊維同士の交絡のみで自由に動くことができる非熱接着領域が混在するため、粘性の高い液体の一部は、3次元網目状にはりめぐらされた熱接着性繊維を避けながら通過するが、一部は、非熱接着領域、即ち、熱接着性繊維が自由に動くことのできる領域を通過することになる。この非熱接着領域では、熱接着性繊維が自由に動くことが可能であるため、通液を阻害しないことから、特に粘性の高い液体の通液性に優れている。更に、非熱接着領域を液体が通過することによって、熱接着性繊維が液体で濡れ、しなり(へたり)、不織布の厚み方向の嵩が低下するため、より下層へ流れやすくなる。このことは、通液時間を短縮できることはもとより、一旦通液した液体の逆戻りを阻止する役目もある。何故なら、液逆戻りにおいては、熱接着領域となる部位が、繊維接着により嵩を維持することから、液戻りを嵩(空壁)により阻害するためである。よって、使用する分野に応じ、熱接着領域と非熱接着領域の範囲を本明細書に示す範囲内で調整することで吸収性能を調整することができる。
【0034】
本発明の不織布は、上記の点から、不織布の厚み方向において、非熱接着領域の厚みが、熱接着領域の厚みよりも薄いことが好ましい。輸送コンベアー上にウェブを載せ、更にその上からマスキングコンベアーでウェブを挟み、マスキングコンベアー側から熱風を吹き付けて本発明の不織布を製造する場合、マスキングコンベアーのマスク部で覆われた領域のウェブは、当該領域のウェブを構成する繊維同士が互いに接合されておらず繊維間の3次元網目構造が固定されていないために、マスク部材へ掛かる熱風の風圧とマスキングコンベアー自体の重みを受けて、ウェブの厚み方向に圧縮される。そして、それらの負荷が取り除かれた後も、元々繊維間の関係が、三次元網目構造が固定されていないため、圧縮されたまま、元の嵩まで充分に復元しない。一方、非マスキング部は直接熱風を受けるものの、繊維間の関係が熱接着によって三次元的に固定されるため、熱風で押されていたウェブには、その風圧が取り除かれたのちに、嵩が復元しようとする力が働く。これらの現象によって、非熱接着領域の厚みは、熱接着領域の厚みよりも薄くなるものと考えられる。このような不織布は、加工温度、循環風速、コンベアー間のクリアランスを適宜設定することによって好適に、その厚み差を制御することができる。
【0035】
本発明の不織布は単層であってもよいし、複数の層であってもよい。複数の層とする場合、本発明の不織布以外の他の層を積層して使用してもよい。他の層としては、エアレイドやスパンボンド層を例示できる。
【0036】
本発明は、熱接着性繊維を用いて得られ、繊維の交点が熱接着されていない非熱接着領域と、繊維の交点が熱接着されている熱接着領域とが、不織布の表面において、交互に存在し、前記非熱接着領域が、点状に分散して存在するか、または、線状に連続して存在し、前記熱接着領域の繊維が圧着扁平化することなくその交点が熱接着されている不織布を用いて得られる製品にも関する。
【0037】
本発明の前記不織布を用いて得られる製品としては、使い捨ての紙おむつや生理用品、吸収シートなどの衛生材料としての製品が例示できる。更に、使い捨てワイパーなどにも好適に使用できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0039】
<繊維>
以下の熱接着性繊維を実施例、比較例に用いた。
繊維A:芯成分としてポリエステル(中興紡製SP1912SD:IV値0.63)を用い、鞘成分としてHDPE(高密度ポリエチレン、京葉ポリエチレン(株)製S6900:MI16)を用いたジグザグ捲縮の繊度2.2dtexでカット長51mmの同心鞘芯型複合繊維。
繊維B:芯成分としてポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製SA2E:MFR15)を用い、鞘成分としてHDPE(高密度ポリエチレン、京葉ポリエチレン(株)製S6900:MI16)を用いた螺旋捲縮の繊度3.3dtexでカット長51mmの偏心鞘芯型複合繊維。
【0040】
<ウェブ作製>
上記繊維を原料として、大和機工製ミニチュアカード機により、目付25g/m
2のウェブを作製した。
【0041】
<不織布加工>
熱風循環式熱処理機を熱風温度130℃、風速0.5m/s、コンベアー速度8.5m/minの加工条件で、上記方法で作製したウェブ上にマスキングコンベアーを載せた後、熱処理を行った。下記a、bのマスキングコンベアーを使用した。また、同条件でパンチングプレートcを載せ熱処理を行なった。
a.一つの円形状のマスクの直径が5mmで厚みが2mmであり、当該マスクが5mmのピッチで千鳥状に配列した
図1の態様のマスキングコンベアー
b.一つの直線状のマスクの幅が2mmで厚みが2mmであり、当該マスクが1mmのピッチでMD方向に伸びるように配列した
図2の態様のマスキングコンベアー
c.一つの円形状の穴の直径が3mmであり、5mmのピッチで千鳥状に配列した
図3の態様のパンチングプレート
【0042】
<不織布断面観察>
熱接着領域と非熱接着領域の両方を通るように表面から垂直に不織布を切断し、不織布の断面をキーエンス社製 マイクロスコープ(VHX−600)によって観察した。
【0043】
<不織布柔軟性評価>
柔軟性は、サンプル幅50mm(JISは20mm)とした以外は、JIS L1096 剛軟度−A法(45℃カンチレバー法)に準じて測定した。測定した剛軟度の数値が小さいほど、ドレープ性が高く、柔軟な不織布であると評価した。評価を、MD、CDの方向共に非常に柔軟であるか、いずれか方向に非常に柔軟であるものを◎、柔軟であるものを○、接着点が多いために柔軟性に劣っているものを×とした。
【0044】
<不織布強度評価>
不織布強度は、サンプル幅50mm、サンプル長150mmのサンプルを10名のモニターが、引っ張り、引き裂きを行い、非常に強度があると判断したものを◎、強度があると判断したものを○、接着点が少なく強度がないと判断したものを×とした。
【0045】
[実施例1]
繊維Aを用い、上記ウェブ作製の方法で得た目付25g/m
2のウェブを用いた。ウェブ上に、マスクを施した面側がウェブ側となるようにマスキングコンベアーaを置き、熱風循環熱処理機によって不織布を製造した。
得られた不織布のマスキングした部分(これはマスクで被覆した部分ともいう。)は、熱接着されておらず、非熱接着領域が形成されていた。それ以外の熱風が貫通した部分は、繊維同士の交点で繊維同士が熱接着し、熱接着領域が形成されていた。不織布断面観察によって、非熱接着領域の厚みは、熱接着領域の厚みより薄いことを確認した(それぞれ0.7mmと、1.8mmであった)。不織布は、非熱接着領域が不織布全体に均等に点在しているため、MD、CDの方向共に非常に柔軟であった。
【0046】
[実施例2]
繊維Bを用い、上記ウェブ作製の方法で得た目付25g/m
2のウェブを用いた。ウェブ上に、マスクを施した面側がウェブ側となるようにマスキングコンベアーbを置き、熱風循環熱処理機によって不織布を得た。
得られた不織布のマスキングした部分は、熱接着されておらず、非熱接着領域が形成されていた。それ以外の熱風が貫通した部分は、繊維同士の交点で繊維同士が熱接着し、熱接着領域が形成されていた。非熱接着領域の厚みは、熱接着領域の厚みより薄いことを確認した(それぞれ0.7mmと、1.4mmであった)。不織布は、非熱接着領域がMDに向かい直進しているため、特にCDにおいて非常に柔軟であった。
【0047】
[比較例1]
繊維Aを用い、上記ウェブ作製の方法で得た目付25g/m
2のウェブを用いた。ウェブ上に、マスキングコンベアーを使用せずに、熱風循環熱処理機によって不織布を製造した。得られた不織布は、ウェブ全体に熱風が貫通したことにより繊維同士の交点で熱接着し、不織布の厚みはすべて均一であった(1.3mmであった)。不織布は、熱接着領域のみで構成されているため、柔軟性に劣っていた。
【0048】
[比較例2]
繊維Bを用い、上記ウェブ作製の方法で得た目付25g/m
2のウェブを用いた。ウェブ上に、マスキングコンベアーを使用せずに、熱風循環熱処理機によって不織布を製造した。得られた不織布は、ウェブ全体に熱風が貫通したことにより繊維同士の交点で熱接着し、不織布の厚みはすべて均一であった。不織布は、熱接着領域のみで構成され、且つ、熱風により繊維Bが螺旋綣縮を発生したことによって、非常に嵩が高くなり柔軟性に劣っていた。
【0049】
[比較例3]
繊維Aを用い、上記ウェブ作製の方法で得た目付25g/m
2のウェブを用い、120℃に加熱されたエンボス面積率25%のエンボスロールとフラットロールにて加熱圧着し、不織布を製造した。エンボス圧着部は繊維同士の熱圧着によりフィルム化され、エンボス点間は、繊維形状を残しているものの、上下のロール熱により軽い接着状態であった。
【0050】
[比較例4]
繊維Aを用い、上記ウェブ作製の方法で得た目付25g/m
2のウェブを用い、ウェブ上にパンチングプレートcを置き、熱風循環熱処理機によって不織布を得た。得られた不織布のパンチング部分は、熱風が貫通し、繊維同士の交点で繊維同士が熱接着し、熱接着領域が形成されていた。その他の部分は非熱接着領域となり、厚みは熱接着領域の厚みより薄いことを確認した(それぞれ1.2mmと、0.7mmであった)。不織布は、非熱接着領域がMDに向かい直進しているため、特にCDにおいて非常に柔軟であったが強度が非常に弱かった。
【0051】
【表1】