(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024950
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/24 20060101AFI20161107BHJP
C09K 19/42 20060101ALI20161107BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20161107BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20161107BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20161107BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20161107BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20161107BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20161107BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
C09K19/24
C09K19/42
C09K19/20
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/34
C09K19/32
C09K19/38
G02F1/13 500
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-149422(P2012-149422)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-9351(P2014-9351A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】川上 正太郎
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04265784(US,A)
【文献】
特開2006−206887(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/086504(WO,A1)
【文献】
特開2002−193852(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0133762(US,A1)
【文献】
特開平10−059918(JP,A)
【文献】
特開平10−330754(JP,A)
【文献】
特開平11−106752(JP,A)
【文献】
特開平11−124578(JP,A)
【文献】
特開2005−132998(JP,A)
【文献】
特開2011−246411(JP,A)
【文献】
特開2000−119653(JP,A)
【文献】
特開2005−213226(JP,A)
【文献】
特開2009−167378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/24
C09K 19/12
C09K 19/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として、一般式(I)
【化1】
(式中、R
11及びR
12はそれぞれ独立的に炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素数2から8のアルケニルオキシル基を表し、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17及びX
18はそれぞれ独立的に水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量は3質量%から45質量%であり、第二成分として、
一般式(II−A)及び(II−B)
【化2】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立的に炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素数2から8のアルケニルオキシル基を表し、R1及びR2中に存在する1個の−CH2−又は隣接していない2個以上の−CH2−はそれぞれ独立的に−O−及び/又は−S−に置換されても良く、また、R1及びR2中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。環A及び環Bはそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表す。p及びqはそれぞれ独立的に0、1又は2を表す。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する液晶組成物。
【請求項2】
25℃における誘電率異方性(Δε)が−2.0から−8.0の範囲であり、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.08から0.14の範囲であり、20℃における粘度(η)が10から30mPa・sの範囲であり、20℃における回転粘性γ1が60から130mPa・sの範囲であり、ネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)が60℃から120℃の範囲である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
第二成分の含有量が10から90質量%である請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
一般式(II−A)及び(II−B)が一般式(II−A1)、(II−A2)及び(II−B1)
【化3】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立的に炭素数1から8のアルキル基又は炭素数2から8のアルケニル基を表し、R
3及びR
4中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されてもよい。)である
請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
第三成分として、一般式(III−A)から(III−J)
【化4】
(式中、R
5は炭素数1から5のアルキル基又は炭素数2から5のアルケニル基、R
6は炭素数1から5のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシル基、炭素数2から5のアルケニル基又は炭素数2から5のアルケニルオキシル基を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有する請求項1から
4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
式(I)、一般式(II−A1)及び一般式(II−A2)で表される化合物を同時に含有する請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)及び一般式(III−A)で表される化合物を同時に含有する請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)、一般式(II−B1)及び一般式(III−A)で表される化合物を同時に含有する請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
一般式(V)
【化5】
(式中、R
21及びR
22はそれぞれ独立して炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から8のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項1から
8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)、一般式(V)及び一般式(III−A)で表される化合物を同時に含有する請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
重合性化合物を含有する請求項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項12】
重合
性化合物として、一般式(IV)
【化6】
(式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して以下の式(R−1)から式(R−15)
【化7】
の何れかを表し、X
1からX
8はそれぞれ独立してトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、フッ素原子又は水素原子を表す。)で表される重合性モノマーを1種又は2種以上含有する請求項
11に記載の液晶組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたVAモード、PSAモード、PSVAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示材料として有用な誘電率異方性(Δε)が負の値を示すネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としてもスタティック駆動、マルチプレックス駆動、単純マトリックス方式、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)等により駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式を挙げることができる。
【0003】
これらの表示方式において、IPS型、ECB型、VA型、あるいはCSH型等は、Δεが負の値を示す液晶組成物を用いるという特徴を有する。これらの中で特にAM駆動によるVA型表示方式は、高速応答で広視野角の要求される表示素子、例えばテレビ等の用途に使用されている。
【0004】
Δεが負の液晶組成物として、以下のような2,3−ジフルオロフェニレン骨格を有する液晶化合物(A)及び(B)(特許文献1参照)を用いた液晶組成物が開示されている。
【0005】
【化1】
【0006】
この液晶組成物は、Δεがほぼ0である液晶化合物として液晶化合物(C)及び(D)を用いているが、液晶テレビ等の高速応答が要求される液晶組成物においては十分に低い粘性を実現するに至っていない。
【0007】
【化2】
【0008】
一方、液晶化合物(E)を用いた液晶組成物も既に開示されているが、上記の液晶化合物(D)を組み合わせた屈折率異方性Δnが小さい液晶組成物(特許文献2参照)や応答速度の改善のために液晶化合物(F)を添加した液晶組成物(特許文献3参照)が紹介されている。
【0009】
【化3】
【0010】
また、液晶化合物(G)及び液晶化合物(F)を用いた液晶組成物も既に開示されている(特許文献4参照)が、更なる高速応答化が求められている。
【0011】
【化4】
【0012】
液晶化合物(A)及び液晶化合物(G)にΔεがほぼゼロである式(I)で表される液晶化合物を組み合わせた液晶組成物(特許文献5参照)が開示されている。しかし液晶表示素子の製造工程では液晶組成物を液晶セルに注入する際に極低圧とするため蒸気圧が低い化合物は揮発してしまうため、その含有量を増やすことが出来ないと考えられていた。このため、該液晶組成物は式(I)で表される液晶化合物の含有量を限定してしまっており、大きなΔnを示すものの、粘度が著しく高いという問題があった。
【0013】
【化5】
【0014】
更に、特許文献6や特許文献7において、フッ素置換されたターフェニル構造を有する化合物を用いた液晶組成物も既に開示されている。
一方、特許文献8において、(式1)で示される指数が大きい液晶材料を使用することでホメオトロピック液晶セルの応答速度を向上させることが開示されているが、十分とは言えなかった。
【0015】
【数1】
【0016】
以上のことから、液晶テレビ等の高速応答が要求される液晶組成物においては、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)を十分に小さく、回転粘性(γ1)を十分に小さく、弾性定数(K
33)を大きくすることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平8−104869号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0474062号
【特許文献3】特開2006−37054号
【特許文献4】特開2001−354967号
【特許文献5】WO2007/077872
【特許文献6】特開2003−327965号
【特許文献7】WO2007/077872−301643
【特許文献8】特開2006−301643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、屈折率異方性(Δn)及びネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)を低下させることなく、粘度(η)が十分に小さく、回転粘性(γ1)が十分に小さく、弾性定数(K
33)が大きく、絶対値が大きな負のΔεを有する液晶組成物を提供し、更にこれを用いたVA型等の表示品位の優れた応答速度の速い液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、種々のアジン誘導体及びフルオロベンゼン誘導体を検討し、特定の化合物を組み合わせることにより前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明は、第一成分として、一般式(I)
【0021】
【化6】
【0022】
(式中、R
11及びR
12はそれぞれ独立的に炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素数2から8のアルケニルオキシル基を表し、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16、X
17及びX
18はそれぞれ独立的に水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量は3質量%から45質量%であり、第二成分として、絶対値が3以上である負のΔεを有する液晶化合物を1種又は2種以上含有する液晶組成物を提供し、また、これを用いた液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液晶組成物は、Δn及びT
niを低下させることなく、ηが十分に小さく、γ1が十分に小さく、K
33が大きいものであり、これを用いることによりVA型等の表示品位の優れた応答速度の速い液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の液晶組成物は、第一成分として、アジン誘導体である一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量は3質量%から45%質量であるが、5質量%から30%質量であることが更に好ましく、10質量%から25質量%であることが特に好ましい。更に詳述すると、高Δnを得るにはその含有量は20質量%から45質量%であることが好ましいが、低温における析出の抑制を重視する場合にはその含有量は3質量%から20質量%が好ましい。
【0025】
一般式(I)は一般式(I−A)であることが好ましい。
【0027】
式中、R
13は炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素数2から8のアルケニルオキシル基を表すが、R
13は炭素数2から8のアルケニル基がより好ましい。更に具体的には、式(I−A1)又は(I−A2)で表される化合物が特に好ましい。
【0029】
本発明の液晶組成物は、第二成分として、絶対値が3以上である負のΔεを有する液晶化合物を1種又は2種以上含有するが、絶対値が4以上である負の誘電率異方性を有する液晶化合物を含有することが更に好ましく、絶対値が5以上である負の誘電率異方性を有する液晶化合物を含有することが特に好ましい。尚、液晶化合物の誘電率異方性(Δε)は、25℃において誘電率異方性が約0である液晶組成物に対し、液晶化合物を10質量%添加した組成物を調製し、その組成物の誘電率異方性(Δε)の測定値から、外挿して求めるものとした。
【0030】
本発明の液晶組成物は、第二成分を1種又は2種以上含有するが、1種から15種含有することが好ましく、2種から10種含有することが更に好ましい。
【0031】
第二成分の含有量は10質量%から90質量%であることが好ましく、20質量%から80質量%であることが更に好ましく、30質量%から70質量%であることが特に好ましい。
【0032】
第二成分は、一般式(II−A)及び(II−B)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立的に炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素数2から8のアルケニルオキシル基を表し、R
1及びR
2中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−はそれぞれ独立的に−O−及び/又は−S−に置換されても良く、また、R
1及びR
2中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子又は塩素原子に置換されても良い。環A及び環Bはそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表す。p及びqはそれぞれ独立的に0、1又は2を表す。
【0035】
式中のR
1及びR
2はそれぞれ独立的に直鎖状の炭素数1から5のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシル基、炭素数2から5のアルケニル基又は炭素数2から5のアルケニルオキシル基であることがより好ましい。更に詳述すると、弾性定数(K
33)を大きくするためには、R
1は炭素数2から5のアルケニル基であることがより好ましい。
【0036】
式中の環A及び環Bはそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基であることがより好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基であることが特に好ましい。
【0037】
式中のp及びqはそれぞれ独立的に0又は1であることがより好ましい。
【0038】
一般式(II−A)で表される化合物は、一般式(II−A1)及び(II−A2)で表される化合物であることが更に好ましく、一般式(II−B)で表される化合物は、一般式(II−B1)であることが更に好ましい。
【0040】
式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立的に炭素数1から8のアルキル基又は炭素数2から8のアルケニル基を表し、R
3及びR
4中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されてもよい。
【0041】
式中のR
3及びR
4はそれぞれ独立的に直鎖状の炭素数1から5のアルキル基又は炭素数2から5のアルケニル基であることが更に好ましい。更に詳述すると、弾性定数(K
33)を大きくするためには、R
3及びR
4のどちらか一方は炭素数2から5のアルケニル基であることが特に好ましい。
【0042】
本発明の液晶組成物は、更に、第三成分として、一般式(III−A)から一般式(III−J)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有しても良いが、一般式(III−A)、(III−D)、(III−F)、(III−G)及び(III−H)から選ばれる化合物を1種から10種含有することが更に好ましい。
【0044】
式中、R
5は炭素数1から5のアルキル基又は炭素数2から5のアルケニル基、R
6は炭素数1から5のアルキル基、炭素数1から5のアルコキシル基、炭素数2から5のアルケニル基又は炭素数2から5のアルケニルオキシル基を表す。なお、一般式(III−A)においては、R
5は炭素原子数2から5のアルケニル基、R
6は炭素原子数1から5のアルキル基であることが更に好ましい。
【0045】
更なる成分として、一般式(V)で表される化合物を1種又は2種以上含有しても良い。
【0047】
式中、R
21及びR
22はそれぞれ独立して炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシル基、炭素数2から8のアルケニル基又は炭素数2から8のアルケニルオキシル基を表すが、炭素数1から5のアルキル基、炭素数4から8のアルケニル基が更に好ましい。
【0048】
本発明の液晶組成物は、一般式(I)、一般式(II−A1)及び一般式(II−A2)で表される化合物を同時に含有することが好ましく、一般式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)及び一般式(III−A)で表される化合物を同時に含有することが更に好ましい。一般式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)及び一般式(II−B1)で表される化合物を同時に含有することも好ましく、一般式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)、一般式(II−B1)及び一般式(III−A)で表される化合物を同時に含有することも更に好ましい。また、一般式(I)、一般式(II−A1)、一般式(II−A2)、一般式(III−A)及び一般式(V)で表される化合物を同時に含有することも特に好ましい。
【0049】
本発明の液晶組成物は、25℃における誘電率異方性(Δε)が−2.0から−8.0であるが、−2.0から−6.0が好ましく、−2.0から−5.0がより好ましく、−2.5から−4.0が特に好ましい。
【0050】
本発明の液晶組成物は、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.08から0.14であるが、0.09から0.13がより好ましく、0.09から0.12が特に好ましい。更に詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合は0.10から0.13であることが好ましく、厚いセルギャップに対応する場合は0.08から0.10であることが好ましい。
【0051】
本発明の液晶組成物は、20℃における粘度(η)が10から30mPa・sであるが、10から25mPa・sであることがより好ましく、10から22mPa・sであることが特に好ましい。
【0052】
本発明の液晶組成物は、20℃における回転粘性(γ1)が60から130mPa・sであるが、60から110mPa・sであることがより好ましく、60から100mPa・sであることが特に好ましい。
【0053】
本発明の液晶組成物は、ネマチック相−等方性液体相転移温度(T
ni)が60℃から120℃であるが、70℃から100℃がより好ましく、70℃から85℃が特に好ましい。
【0054】
本発明の液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合性モノマーなどを含有してもよい。
【0055】
例えば、重合性モノマーとしてビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体などの重合性化合物を含有し、その含有量は0.01%から2%であることが好ましい。更に詳述すると、本発明の液晶組成物に、一般式(IV)
【0057】
で表される重合性モノマーを一種又は二種以上含有することが好ましい。
式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立して以下の式(R−1)から式(R−15)
【0059】
の何れかを表し、X
1からX
8はそれぞれ独立してトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、フッ素原子又は水素原子を表す。
【0060】
一般式(IV)におけるビフェニル骨格の構造は、式(IV−11)から式(IV−14)であることがより好ましく、式(IV−11)であることが特に好ましい。
【0062】
式(IV−11)から式(IV−14)で表される骨格を含む重合性化合物は重合後の配向規制力が最適であり、良好な配向状態が得られる。
【0063】
例えば、式(I)、一般式(II−A1)、(II−A2)、一般式(III−A)及び一般式(IV)を同時に含有する重合性化合物含有液晶組成物は低い粘度(η)、低い回転粘性(γ1)及び大きな弾性定数(K
33)を達成しているため、これを用いたPSAモード又はPSVAモードの液晶表示素子は高速応答が実現できる。
【0064】
本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は高速応答という顕著な特徴を有用しており、特に、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、PSVAモード、PSAモード、IPSモード又はECBモード用に適用できる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
(側鎖)
-n -C
nH
2n+1 炭素数nの直鎖状アルキル基
n- C
nH
2n+1- 炭素数nの直鎖状アルキル基
-On -OC
nH
2n+1 炭素数nの直鎖状アルコキシル基
nO- C
nH
2n+1O- 炭素数nの直鎖状アルコキシル基
-V -CH=CH
2
V- CH
2=CH-
-V1 -CH=CH-CH
3
1V- CH
3-CH=CH-
-2V -CH
2-CH
2-CH=CH
3
V2- CH
3=CH-CH
2-CH
2-
-2V1 -CH
2-CH
2-CH=CH-CH
3
1V2- CH
3-CH=CH-CH
2-CH
2-
-T- -C≡C-
-Az- -C=N-N=C-
(環構造)
【0066】
【化16】
【0067】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0068】
T
ni :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
Δn :20℃における屈折率異方性
Δε :25℃における誘電率異方性
η :20℃における粘度(mPa・s)
γ1 :20℃における回転粘性(mPa・s)
K
33 :20℃における弾性定数K
33(pN)
(比較例1、2及び実施例1、2、3)
表1に記載の組成から成るLC−A(比較例1)、LC−B(比較例2)、LC−1(実施例1)、LC−2(実施例2)及びLC−3(実施例3)を調製し、その物性値を測定した。結果は以下のとおりであった。
【0069】
【表1】
【0070】
本発明の液晶組成物LC−1、LC−2及びLC−3は、粘度(η)が小さく、回転粘性(γ1)が小さく、弾性定数(K
33)が大きいため、γ1/K
33が5.9、5.7、5.5であり、比較例であるLC−A及びLC−Bのそれよりも顕著に小さな値であった。これらを使用した液晶表示素子の応答速度を測定したところ、LC−1、LC−2及びLC−3は3.3〜3.5msecと十分に高速応答であったのに対して、LC−Aは4.2msec、LC−Bは4.1msecであった。更に、電圧保持率(VHR)を測定し、高いVHRを有していることが確認された。なお、セル厚は3.5um、配向膜はJALS2096であり、応答速度の測定条件は、Vonは5.5V、Voffは1.0V、測定温度は20℃で、AUTRONIC−MELCHERS社のDMS301を用いた。VHRの測定条件は電圧5V、周波数60Hz、温度60℃で、東陽テクニカ株式会社のVHR−1を用いた。
【0071】
また、液晶セル注入の条件(圧力及びODF法)を変えても物性値に変化は見られなかった。
(比較例3及び実施例4)
表2に記載の組成から成るLC−C(比較例3)及びLC−4(実施例4)を調製し、その物性値の測定したところ以下のとおりであった。
【0072】
【表2】
【0073】
本発明の液晶組成物であるLC−4は、粘度(η)が小さく、回転粘性(γ1)が小さく、弾性定数(K
33)が大きいため、γ1/K
33は5.8であり、比較例であるLC−C3のそれよりも顕著に小さな値であった。これらを使用した液晶表示素子の応答速度を測定したところ、実施例4は3.5msecと十分に高速応答であったのに対して、比較例3は4.3msecであった。更に、電圧保持率(VHR)を測定し、高いVHRを有していることが確認された。なお、セル厚は3.5um、配向膜はJALS2096であり、応答速度の測定条件は、Vonは5.5V、Voffは1.0V、測定温度は20℃で、AUTRONIC−MELCHERS社のDMS301を用いた。VHRの測定条件は電圧5V、周波数60Hz、温度60℃で、東陽テクニカ株式会社のVHR−1を用いた。
【0074】
また、液晶セル注入の条件(圧力及びODF法)を変えても物性値に変化は見られなかった。
(比較例4、実施例5、実施例6、実施例7及び実施例8)
表2に記載の組成から成るLC−D(比較例4)、LC−5(実施例5)、LC−6(実施例6)、LC−7(実施例7)及びLC−8(実施例8)を調製し、その物性値の測定したところ以下のとおりであった。
【0075】
【表3】
【0076】
本発明の液晶組成物であるLC−5、LC−6、LC−7及びLC−8は、粘度(η)が小さく、回転粘性(γ1)が小さく、弾性定数(K
33)が大きいため、γ1/K
33は比較例であるLC−Dのそれよりも顕著に小さな値であった。
以上のことから、本発明の液晶組成物はΔn及びT
niを低下させることなく、ηが十分に小さく、回転粘性γ1が十分に小さく、弾性定数K
33が大きな、絶対値が大きな負の誘電率異方性(Δε)を有するものであり、これを用いたVA型液晶表示素子は表示品位の優れた応答速度の速いものであることが確認された。