特許第6025025号(P6025025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6025025潤滑剤供給装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025025
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】潤滑剤供給装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G03G21/00
   G03G21/00 512
【請求項の数】19
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-169873(P2012-169873)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29404(P2014-29404A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】上西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】新谷 剛史
(72)【発明者】
【氏名】本城 賢二
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 信哉
(72)【発明者】
【氏名】富田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸輔
(72)【発明者】
【氏名】工藤 経生
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−146842(JP,A)
【文献】 特開2010−076883(JP,A)
【文献】 特開2012−103531(JP,A)
【文献】 特開平02−020887(JP,A)
【文献】 特開2011−242523(JP,A)
【文献】 特開2008−299067(JP,A)
【文献】 特開2010−271665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤と、
上記潤滑剤を潤滑剤供給対象に供給する供給部材と、
回転部材と、
上記潤滑剤の消費に伴い移動し、上記回転部材に当接して上記回転部材を回転させる当接部材と、
上記回転部材の回転を検知する検知部とを備え、
上記検知部による検知結果に基づき潤滑剤の量が判定される潤滑剤供給装置であって、
上記回転部材の上記検知部に検知される被検知箇所が、上記回転部材の回転の支点を挟んで上記当接部材が当接する当接箇所と反対側に配置されていることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
潤滑剤と、
上記潤滑剤を潤滑剤供給対象に供給する供給部材と、
回転部材と、
上記潤滑剤の消費に伴い移動し、上記回転部材に当接して上記回転部材を回転させる当接部材と、
上記回転部材の回転を検知する検知部とを備え、
上記検知部による検知結果に基づき潤滑剤の量が判定される潤滑剤供給装置であって、
上記回転部材は、上記回転部材の一端側において上記当接部材が当接し、上記回転部材の他端側において上記検知部により上記回転部材が回転したことが検知されることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項3】
潤滑剤と、
上記潤滑剤を潤滑剤供給対象に供給する供給部材と、
回転部材と、
上記潤滑剤の消費に伴い移動し、上記回転部材に当接して上記回転部材を回転させる当接部材と、
上記回転部材の回転を検知する検知部とを備え、
上記検知部による検知結果に基づき潤滑剤の量が判定される潤滑剤供給装置であって、、
上記当接部材と上記回転部材とが当接する空間と上記検知部が配置される空間とを仕切る仕切り手段を備え、
上記回転部材の上記検知部に検知される被検知箇所が、上記回転部材の回転の支点を挟んで上記仕切り手段がと反対側に配置されていることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記潤滑剤の量が、上記潤滑剤の終了前のニアエンド状態となると、上記検知部が上記回転部材の回転を検知することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記潤滑剤を保持する潤滑剤保持部材を備え、
上記当接部材は、上記潤滑剤保持部材から突出する突出部であることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項6】
請求項に記載の潤滑剤供給装置において、
上記突出部は、前記潤滑剤保持部材の短手方向に突出することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記回転部材の上記当接部材が当接する箇所よりも鉛直方向上方に上記検知部を配置したことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記潤滑剤を収納する収納ケースを備え、
上記収納ケースには、上記当接部材が貫通する開口部が設けられていることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の潤滑剤供給装置において、
上記検知部と上記開口部を覆うカバー部材を設けたことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記回転部材の自重による回転方向を、上記潤滑剤の消費に伴い回転する方向と逆方向とし、
上記回転部材に当接して上記回転部材の自重による回転を規制する規制突起を備えたことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記検知部は、第1電極部材と、上記回転部材により上記第1電極部材へ移動する第2電極部材とを備え、上記第1電極部材と上記第2電極部材との間の導通状態を検知することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項12】
請求項1乃至10いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記回転部材を導電性部材で構成し、
上記検知部は、電極部材を備え、該電極部材と上記回転部材との間の導通状態を検知することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の潤滑剤供給装置において、
上記検知部は、上記導通状態を検知する抵抗検知部を備え、
上記抵抗検知部が検知した電気抵抗値が所定値以下であることが検知されることにより、上記回転部材の回転を検知することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項14】
請求項1乃至10いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記検知部は、プッシュスイッチを備え、上記回転部材の回転により上記プッシュスイッチが押し込まれることにより上記回転部材の回転を検知することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項15】
請求項1乃至10いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記検知部は、フォトインタラプタを備え、上記回転部材の回転により上記フォトインタラプタから発光された光が、上記回転部材により遮ぎられたことを検知することにより、上記回転部材の回転を検知する潤滑剤供給装置。
【請求項16】
請求項1乃至10いずれかに記載の潤滑剤供給装置において、
上記検知部は、フォトリフレクタを備え、上記回転部材の回転により上記フォトリフレクタから発光された光が、上記回転部材に設けた反射板により反射されたことを検知することにより、上記回転部材の回転を検知する潤滑剤供給装置。
【請求項17】
像担持体と、該像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段とを有し、該像担持体上の画像を記録材上に転移させて該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
画像形成装置において、
上記潤滑剤供給手段として、請求項1乃至16いずれかに記載の潤滑剤供給装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
像担持体と、該像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段とを有し、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジにおいて、
上記潤滑剤供給手段として、請求項1乃至17いずれかに記載の潤滑剤供給装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項19】
請求項17に記載の画像形成装置において、
上記検知部による検知結果に基づき潤滑剤の量を判定する判定部を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤供給装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置において、感光体や中間転写ベルトなどの像担持体の保護や低摩擦化のため像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置を備えたものが知られている。
【0003】
また、潤滑剤が枯渇した状態で画像形成動作が行われると、潤滑剤の保護作用が働かないため、像担持体が磨耗して劣化してしまう。特許文献1には、潤滑剤のニアエンドを検知する潤滑剤供給装置が記載されている。
【0004】
図13は、特許文献1に記載の潤滑剤供給装置の潤滑剤ニアエンド検知部を示す概略斜視図である。
図13に示すように、固形潤滑剤140を保持する潤滑剤保持部材143を導電性部材で構成し、潤滑剤の残量が少なくなった時点で潤滑剤保持部材143の一端に当接する第1電極部材181と、他端に当接する第2電極部材182とを有している。第1電極部材181と第2電極部材182とには、検知回路183が接続されており、検知回路183は、電極部材間に電圧を印加して、電流が流れたか否かを検知する。また、潤滑剤保持部材143は、バネ142により不図示の供給部材側に付勢されている。
【0005】
使用初期は、各電極部材に対し潤滑剤保持部材143が離間しており、電極部材間には電流が流れない。固形潤滑剤が不図示の供給部材による摺擦で徐々に削られながら、バネ142の付勢力により潤滑剤保持部材143が供給部材側へと移動していく。そして、固形潤滑剤140がニアエンドとなると、導電性の潤滑剤保持部材143が、第1電極部材181、第2電極部材182と当接する。その結果、電極部材間に電流が流れ、検知回路183で潤滑剤のニアエンドが検知される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
潤滑剤保持部材143は、固形潤滑剤140の消費に伴い不図示の供給部材側へ移動する。そして、固形潤滑剤140のニアエンドのとき、潤滑剤保持部材143は、不図示の供給部材と固形潤滑剤140との当接部近傍に位置する。この位置にある潤滑剤保持部材と当接するように各電極部材181,182を設ける必要がある。そのため、各電極部材181,182を、不図示の供給部材と固形潤滑剤140との当接部近傍に配置することになる。従って、不図示の供給部材により削り取られた固形潤滑剤140の粉が、各電極部材181,182に付着するおそれがあった。固形潤滑剤140の粉が各電極部材181,182に付着すると、潤滑剤保持部材143が電極部材と当接しても導通状態とならず、潤滑剤のニアエンドを検知することができないおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、固形潤滑剤の残量が所定量以下となったことを確実に検知することができる潤滑剤供給装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潤滑剤と、上記潤滑剤を潤滑剤供給対象に供給する供給部材と、回転部材と、上記潤滑剤の消費に伴い移動し、上記回転部材に当接して上記回転部材を回転させる当接部材と、上記回転部材の回転を検知する検知部とを備え、上記検知部による検知結果に基づき潤滑剤の量が判定される潤滑剤供給装置において、上記回転部材の上記検知部に検知される被検知箇所が、上記回転部材の回転の支点を挟んで上記当接部材が当接する当接箇所と反対側に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記回転部材の当接部材との当接箇所と上記回転部材の回転の支点を挟んで反対側に、上記検知部に検知される被検知箇所を配置することで、被検知箇所を潤滑剤と供給部材との当接部近傍から離した位置に位置させることができる。これにより、検知部を、供給部材との当接部近傍から離した位置に位置させることができる。
【0010】
このように、本発明によれば、検知部を、供給部材と潤滑剤との当接部近傍から離れた位置に配置することが可能となり、供給部材により削り取られた潤滑剤が飛散して上記検知部に付着するのを抑制することができ、残量の誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
図2】4つの作像ユニットのうちの1つを示す拡大図である。
図3】潤滑剤供給装置の長手方向一端側を示す概略構成図。
図4図3のA−A断面図。
図5図3のB−B断面図。
図6】潤滑剤残量検知の制御フロー図。
図7】塗布ローラの走行距離および潤滑剤保持部材と電極部材との導通状態の両方でニアエンドを行う場合の制御フロー図。
図8】固形潤滑剤量の推移とニアエンド検知のタイミングとを示す図。
図9】変形例1の潤滑剤供給装置の概略構成図。
図10】変形例1の潤滑剤供給装置の断面図。
図11】押し当て機構の変形例を示す概略構成図。
図12】押し当て機構の変形例の別の構成を示す概略構成図。
図13】従来の潤滑剤供給装置の潤滑剤ニアエンド検知部を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を、電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
このプリンタは、その内部の略中央に像担持体である中間転写体としての中間転写ベルト56を備えている。中間転写ベルト56は、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトで、4つのローラ52,53,54,55に掛け渡して支持され、図中矢印A方向に回転駆動される。中間転写ベルト56の上方にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーに対応した4つの作像ユニットが中間転写ベルト56のベルト面に沿って並んでいる。
【0013】
図2は、4つの作像ユニットのうちの1つを示す拡大図である。
いずれの作像ユニットも同様の構成であるので、ここでは、色の区別を示すY、M、C、Kの添え字を省略する。各作像ユニットは、像担持体としての感光体1を有している。各感光体1の周りには、感光体表面を所望電位(マイナス極性)となるように一様に帯電させる帯電手段としての帯電装置2がそれぞれ配置されている。また、感光体表面に形成された静電潜像をマイナス極性に帯電された各色トナーで現像してトナー像とする現像手段としての現像装置4がそれぞれ配置されている。また、感光体表面に潤滑剤を塗布により供給する潤滑剤供給装置3、トナー像転写後の感光体表面のクリーニングを行うクリーニング装置8もそれぞれ配置されている。
【0014】
作像ユニットは、画像形成装置から着脱可能なプロセスカートリッジとして構成、感光体1、帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置8および潤滑剤供給装置3が一括で交換される構成となっている。
【0015】
また、図1を参照すると、4つの作像ユニットの上方には、帯電した各感光体表面に各色の画像データに基づいて露光して露光部分の電位を落とし、静電潜像を書き込む静電潜像形成手段としての露光装置9が備えられている。また、中間転写ベルト56を挟んで、各感光体1と対向する位置には、感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト56上に一次転写する転写手段としての一次転写ローラ51がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ51は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。
【0016】
中間転写ベルト56のローラ52で支持された部分の外側には、二次転写手段としての二次転写ローラ61が圧接されている。二次転写ローラ61は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。二次転写ローラ61と中間転写ベルト56との接触部が二次転写部であり、中間転写ベルト56上のトナー像が記録材としての転写紙に転写される。二次転写部の図中左側には、転写紙上のトナー像を転写紙に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラ72及び定着ローラ73に巻き掛けられた無端の定着ベルト71と、定着ベルト71を介して定着ローラ73に対向、圧接して配置される加圧ローラ74とから構成されている。プリンタの下部には、転写紙を載置し、二次転写部に向けて転写紙を送り出す不図示の給紙装置が備えられている。
【0017】
感光体1は、有機感光体であり、ポリカーボネート系の樹脂で表面保護層が形成されている。帯電装置2は、帯電部材として導電性芯金の外側に中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ2aを備える。帯電ローラ2aは、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。帯電ローラ2aは、感光体1に対して微小な間隙をもって配設される。この微小な間隙は、例えば、帯電ローラ2aの両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付けるなどして、スペーサ部材の表面を感光体1表面に当接させることで、設定することができる。
【0018】
現像装置4は、感光体1と対向する位置に、内部に磁界発生手段を備える現像剤担持体としての現像スリーブ4aが配置されている。現像スリーブ4aの下方には、図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像スリーブ4aへ汲み上げるための2つのスクリュー4bが備えられている。現像スリーブ4aによって汲み上げられるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、ドクターブレード4cによって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブ4aに担持される。現像スリーブ4aは、感光体1との対向位置において同方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを感光体1上の静電潜像部分に供給する。なお、図1においては、二成分現像方式の現像装置4の構成を示したが、これに限るものではなく、一成分現像方式の現像装置であっても適用可能である。
【0019】
潤滑剤供給装置3は、固定されたケースに収容された固形潤滑剤3bと、固形潤滑剤3bから削り取った粉体状の潤滑剤を感光体1の表面に塗布する塗布手段を構成する供給部材としての塗布ローラ3aとを備える。塗布ローラ3aは、ブラシローラ、ウレタン状発泡ローラを用いることができる。塗布ローラ3aとして、ブラシローラを用いる場合は、次のようなブラシローラが好適である。すなわち、ナイロン、アクリル等の樹脂にカーボンブラック等の抵抗制御材料を添加して体積抵抗率1×10Ωcm以上1×10Ωcm以下の範囲内に調整された材料で形成されたブラシローラである。塗布ローラ3aの回転方向は、感光体1に対してカウンター方向である。すなわち、感光体1と塗布ローラ3aとの当接部において、塗布ローラ3aの表面移動方向が、感光体1の表面移動方向と逆方向である。
【0020】
固形潤滑剤3bは、直方体状に形成されており、後述する押し当て機構3cにより塗布ローラ3aに押し当てられている。固形潤滑剤3bの潤滑剤としては、少なくとも脂肪酸金属塩を含有する潤滑剤を用いる。脂肪酸金属塩としては、例えば、フッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどのラメラ結晶構造を持つ脂肪酸金属塩を使用することができる。また、ラウロイルリジン、モノセチルリン酸エステルナトリウム亜鉛塩、ラウロイルタウリンカルシウムなどの物質を使用することができる。これらの脂肪酸金属塩のうち、特にステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。これは、ステアリン酸亜鉛が、感光体1表面上での伸展性が非常によく、しかも吸湿性が低く、さらに湿度が変化しても潤滑性が損なわれ難い特性を有しているためである。よって、環境変化に影響されにくく感光体表面を保護する能力の高い皮膜化された潤滑剤の保護層を形成することができ、良好に感光体表面を保護できる。また、潤滑性が損なわれ難い特性を有していることで、クリーニング不良の低減効果を良好に得ることができる。また、これらの脂肪酸金属塩の他に、シリコーンオイルやフッ素系オイル、天然ワックスなどの液状の材料、ガス状にした材料を外添法として添加することもできる。
【0021】
また、固形潤滑剤3bの潤滑剤は、無機潤滑剤である窒化ホウ素を含むことが好ましい。窒化ホウ素の結晶構造としては、六方晶系の低圧相のもの(h−BN)や、立方晶系の高圧相(c−BN)等を挙げることができる。これらの構造の窒化ホウ素のうち、六方晶系の低圧相の窒化ホウ素の結晶は層状の構造を有しており、容易に劈開する物質である。よって、摩擦係数は400°C近くまで約0.2以下を維持でき、放電により特性が変化し難く、放電を受けても他の潤滑剤に比べて潤滑性が失われることがない。このような窒化ホウ素を添加することで、感光体1表面に供給されて薄膜化された潤滑剤が、帯電装置2や一次転写ローラ51の作動時に発生する放電によって早期に劣化することはない。窒化ホウ素は、放電により特性が変化し難く、放電を受けても、他の潤滑剤に比べて潤滑性が失われることがない。しかも、感光体1の感光体層が放電により酸化、蒸発してしまうことを防止することもできる。また、窒化ホウ素は、わずかな添加量でも、その潤滑性を発揮できるので、帯電ローラ2aなどへの潤滑剤付着による不具合や、クリーニングブレード8aのブレード鳴きに対して有効である。
【0022】
本実施形態の固形潤滑剤3bは、ステアリン酸亜鉛と窒化ホウ素とを含有した潤滑剤原料を圧縮成型したものを用いた。なお、固形潤滑剤3bの成型方法は、これに限定されることはなく、溶融成型などの他の成型方法を採用してもよい。これにより、上述したステアリン酸亜鉛の効果と上述した窒化ホウ素窒の効果とを得ることができる。
【0023】
固形潤滑剤3bは塗布ローラ3aによって削り取られ消耗し、経時的にその厚みが減少するが、押し当て機構3cにより常時塗布ローラ3aに押し当てられている。塗布ローラ3aは、回転しながら削り取った潤滑剤を感光体表面に塗布する。その後、感光体1の表面とクリーニングブレード8aとの接触により、塗布された潤滑剤が押し広げられて薄膜状になる。これにより、感光体1の表面の摩擦係数が低下する。なお、感光体1の表面に付着した潤滑剤の膜は非常に薄いため、帯電ローラ2aによる帯電を阻害することはない。
【0024】
クリーニング装置8は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード8a、支持部材8b、トナー回収コイル8cを備える。クリーニングブレード8aは、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴムを板状に形成してなり、そのエッジが感光体1表面に当接するようにして設けられ、転写後に残留する感光体1上のトナーを除去する。クリーニングブレード8aは、金属、プラスチック、セラミック等からなる支持部材8bに貼着されて支持され、感光体1表面に対し所定の角度で設置される。なお、クリーニング部材としては、クリーニングブレードのほか、クリーニングブラシなどの公知のものを広く利用することができる。
【0025】
本実施形態において、潤滑剤供給装置3は、クリーニング装置8よりも下流側に配置される。潤滑剤供給装置3によって感光体表面に塗布された潤滑剤は、その後に均しブレード8dが感光体表面を摺擦することで引き延ばし、感光体表面に塗布された潤滑剤の塗布ムラをおおまかに均すことができる。
【0026】
潤滑剤供給装置3についてより詳細に説明する。
図3は、潤滑剤供給装置3の長手方向一端側を示す概略構成図であり、図4は、図3のA−A断面図であり、図5は、図3のB−B断面図である。図3(a)は、固形潤滑剤3bの使用初期状態を示す概略構成図であり、図3(b)は、固形潤滑剤3bが残り僅かな状態(ニアエンド状態)を示す概略構成図である。また、潤滑剤供給装置3の長手方向他端側は、一端側と同様な構成である。
【0027】
図4図5に示すように、固形潤滑剤3bの塗布ローラ3aと当接する面(図中下側の面)とは反対側の部分をその長手方向にわたって保持する潤滑剤保持部材3dが設けられている。潤滑剤保持部材3dは、収納ケース3eに塗布ローラ3aに対して接離可能に設けられている。また、収納ケース3eの潤滑剤保持部材3dより図中上部の空間には、潤滑剤保持部材3dを供給部材側に押し当てる押し当て機構としての加圧バネ3cを備えている。この加圧バネ3cによって、潤滑剤保持部材3dが塗布ローラに押し当てられている。
【0028】
また、固形潤滑剤3bの長手方向両端付近には、残量検知手段としての残量検知部40が設けられている。図4図5に示すように、残量検知部40は、収納ケース3eにおける塗布ローラ3aと固形潤滑剤3bとの当接部よりも塗布ローラ3a回転方向下流側の側面に設けられている。残量検知部40は、図3に示すように、検知用回転部材41と、検知用回転部材41の回転を検知する回転検知手段としての回転検知部42とを有している。回転検知部42は、第1電極部材42a、この第1電極部材42aに対向配置された第2電極部材42b、抵抗検知部42cなどを有している。抵抗検知部42cは、第1電極部材42aと第2電極部材42bとに接続されており、第1電極部材42aと第2電極部材42bとの間に電圧を印加して、電気抵抗を計測する。また、抵抗検知部42cは、制御部100に接続されている。検知用回転部材41、第1電極部材42a,第2電極部材42bは、これらを覆うカバー部材43に位置決め保持されている。第1電極部材42a,第2電極部材42bは、検知用回転部材41よりも鉛直方向上方に配置されている。
【0029】
第1電極部材42a,第2電極部材42bは、板金などの導電性部材からなる板状形状である。第2電極部材42bは、第1電極部材42aよりも鉛直下方に配置されており、第2電極部材42bの図中左側端部((固形潤滑剤長手方向中央部側端部)側が第1電極部材42a側に撓み変形可能にカバー部材43に保持されている。また、第2電極部材42bの第1電極部材42aに当接する側(図3左側端部)は、第1電極部材42aと平行に近接配置されている。また、図3に示すように、第1電極部材42aの固形潤滑剤長手方向中央部側端部は、第2電極部材42bの端部よりも中央部側にある。また、図4に示すように、第1電極部材42aのカバー部材43に対して直交する方向の長さが、第2電極部材42bよりも長くなっている。これにより、少なくとも第2電極部材42bの接点部(図3左側端)付近においては、第1電極部材の方が大きい形状となっている。
【0030】
また、収納ケース3eの塗布ローラ3aと固形潤滑剤3bとの当接部よりも塗布ローラ回転方向下流側の側面には、潤滑剤保持部材3dの移動方向に延びる開口部31eが設けられている。この開口部31eに押し部材としての潤滑剤保持部材3dに設けられた当接突起部31dが貫通している(図5参照)。また、カバー部材43には、カバー部材43で覆われた空間を、開口部31eが配置された空間と、第1電極部材42aおよび第2電極部材42bとが配置された空間とに仕切る仕切り壁43bが設けられている。
【0031】
検知用回転部材41は、カバー部材43の回転軸43cに回転自在に支持されている。検知用回転部材41の回転の支点(回転軸43c)よりも図中左側(固形潤滑剤長手方向中央部側)は、板状形状の受け部41bが、図中左側に延びており、先端が、当接突起部31dと対向している。検知用回転部材41の回転の支点(回転軸43c)よりも図中右側(固形潤滑剤長手方向端部側)は、四角筒形状となっており、回転支点よりも図中左側の受け部41bよりも重量が重くなっている。このため、検知用回転部材41は、自重により図中時計回り方向に回転する構成となっている。
【0032】
カバー部材43には、検知用回転部材41の四角筒形状部の内周面に当接して検知用回転部材41の自重による回転を規制する規制突起43aが設けられている。また、検知用回転部材41の四角筒形状部の上面部の図中右側端部には、鉛直上方に延びる鉤状の被検知部41aが設けられている。
【0033】
図3(a)に示すように、使用初期においては、潤滑剤保持部材3dに設けられた当接突起部31dは、検知用回転部材の受け部41bから離間しており、検知用回転部材41は、規制突起43aに当接している。このとき、検知用回転部材41の被検知部41aは、第2電極部材42bから離間しており、第2電極部材42bは所定のギャップを有して第1電極部材42aと対向している。よって、このとき、抵抗検知部42cにより、第1電極部材42aと第2電極部材42bとの間に電圧を印加しても第1電極部材42aと第2電極部材42bとの間に電流が流れず、電気抵抗値の測定が不能な状態である。
【0034】
固形潤滑剤3bが削られ潤滑剤が消費され固形潤滑剤の高さが低くなっていくと、潤滑剤保持部材3dが塗布ローラ3a側へ近づいていく。そして、固形潤滑剤3bの高さが所定値となると、潤滑剤保持部材3dに設けられた当接突起部31dが検知用回転部材41の受け部41bに当接する。さらに固形潤滑剤3bが削られ、高さが低くなると、当接突起部31dにより受け部41bが押され、検知用回転部材41が自重による回転方向と逆方向(図中反時計回り)に回転する。さらに固形潤滑剤3bが削られていくと、検知用回転部材41がさらに反時計回りに回転し、被検知部41aが第2電極部材42bに当接する。さらに固形潤滑剤3bが削られ、検知用回転部材41がさらに反時計回りに回転すると、被検知部41aが第2電極部材42bの図中左側端部付近を第1電極部材42a側に押す。すると、第2電極部材42bの図中左側端部が、第1電極部材42aに近づいていく。そして、図3(b)、図5(b)に示すように、潤滑剤の量が残り僅か(ニアエンド)となると、検知用回転部材41が所定角度回転し、第2電極部材42bが第1電極部材42aと当接する。第2電極部材42bが第1電極部材42aに当接すると、第2電極部材42bと第1電極部材42aとが非導通状態から導通状態に切り替わる。これにより、抵抗検知部42cにより第1電極部材42aと第2電極部材42bとの間に電圧を印加すると、電極部材間に電流が流れる。その結果、抵抗検知部42cで電気抵抗値が計測され、検知用回転部材41の被検知部41aが検知され、検知用回転部材41が固形潤滑剤3bの消費に伴い回転したことを検知することができる。
【0035】
制御部100は、抵抗検知部42cの測定結果を監視しており、抵抗検知部42cが検知した電気抵抗値が所定値以下であることを検知したら、制御部100は、潤滑剤のニアエンドと判定する。そして、不図示の操作表示部に潤滑剤が残り少なくなくなった旨を報知し、ユーザーに固形潤滑剤の交換を促す。また、不図示の通信手段を用いて、サービスセンターに潤滑剤の交換が必要な旨を通知してもよい。
【0036】
潤滑剤の感光体1への塗布量は一定ではなく、感光体表面に形成された画像面積率などにより異なる。具体的に説明すると、潤滑剤が塗布された感光体表面に形成されたトナー像は、一次転写部で中間転写ベルト56に転写されるが、このとき、感光体表面の潤滑剤が、トナーとともに中間転写ベルトに移る場合がある。このため、高画像面積率の画像の方が、低画像面積率の画像に比べて、感光体表面の潤滑剤量が少なくなる。その結果、高画像面積率の画像の方が、感光体表面に供給される潤滑剤量が多くなるのである。このため、文字などの低画像面積率の画像を頻繁に出力するユーザーと、写真などの高画像面積率の画像を頻繁に出力するユーザーとで潤滑剤の減り具合が異なる。よって、本実施形態とは異なり、塗布ローラ3aの走行距離などの動作期間のみでニアエンドを判定する場合、すべての使用条件下で精度よくニアエンドを検知することができない。具体的に説明すると、潤滑剤の消費が多い使用条件のときにおける潤滑剤がニアエンドとなる塗布ローラ3aの走行距離を、ニアエンドの判定に用いた場合、潤滑剤の消費量が少ない使用条件で使用しているユーザーにおいては、固形潤滑剤が使いきれてない状態での潤滑剤の交換となってしまう。これとは逆に、潤滑剤の消費量が少ない使用条件のときにおける潤滑剤がニアエンドとなる塗布ローラ3aの走行距離を、ニアエンドの判定に用いた場合、潤滑剤の消費が多い使用条件のときにニアエンドが検知される前に潤滑剤が枯渇するおそれがある。
【0037】
一方、本実施形態のように、残量検知部40により固形潤滑剤の高さに基づいて潤滑剤のニアエンドを検知することで、塗布ローラ3aの走行距離に基づいてニアエンドを検知する場合に比べて使用条件にかかわらず、精度よくニアエンドを検知することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、検知用回転部材41の姿勢(回転角度)が、潤滑剤ニアエンドに対応する姿勢になるまで第1電極部材42aと第2電極部材42bとが非通電状態となっており、電極部材間に電圧を印加しても電流が流れない。これにより、ニアエンド検知の度に電力が消費されることがないので、電力消費の低減を図ることができる。また、板金などの比較的安価な材料で構成される第1、第2電極部材42a,42bで、回転検知部42を構成することができ、回転検知部42を安価にすることができる。
【0039】
また、本実施形態においては、固形潤滑剤3b長手方向両端部付近にそれぞれ、残量検知手段としての残量検知部40を設けている。よって、固形潤滑剤3bが長手方向で潤滑剤の消費量が異なった場合においても、潤滑剤の消費量が多い側の端部がニアエンドとなった時点で、潤滑剤の消費量が多い側の端部側に配置された検知用回転部材41が、潤滑剤ニアエンドに対応する姿勢になり、第2電極部材42bが第1電極部材42aと当接し導通する。これにより、固形潤滑剤3bが長手方向で潤滑剤の消費量が異なった場合においても、正確に潤滑剤のニアエンドを検知することができる。これにより、消費量が多い方の側の潤滑剤が枯渇して、感光体を保護できず、感光体表面が傷ついてしまうなどの不具合が発生するのを防止することができる。
【0040】
また、本実施形態の残量検知部40は、固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する検知用回転部材41を用い、検知用回転部材の当接突起部31dと当接する箇所と回転支点を挟んで設けられた被検知部41aが所定の位置にきたことを、回転検知部42で検知することにより潤滑剤のニアエンドを検知するようにしている。このように、構成することで、図3(a)に示すように、潤滑剤のニアエンドを検知するための手段である回転検知部42を、固形潤滑剤3bと塗布ローラ3aとの当接部から離れた位置に設けることができる。これにより、塗布ローラ3aにより削れた潤滑剤粉が、第1電極部材42aの第2電極部材42bとの当接部や、第2電極部材42bの第1電極部材42aとの当接部に付着するのを抑制することができる。これにより、各電極部材に付着した潤滑剤により電極部材間に導通不良が生じるのを抑制することができ、精度よく潤滑剤のニアエンドを検知することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、残量検知部40を収納ケース3eの外に設けたので、飛散した潤滑剤粉が第1電極部材42aや第2電極部材42bに付着するのを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、検知用回転部材41の被検知部41aを受け部41bよりも鉛直方向上方に配置するなどにして、第1電極部材42a、第2電極部材42bを、検知用回転部材41よりも鉛直上方に配置している。これにより、開口部31eから進入してきた潤滑剤粉が、第1電極部材42a,第2電極部材42bに付着するのを抑制することができる。また、検知用回転部材41の被検知部41aを受け部41bよりも鉛直方向上方に配置することで、検知用回転部材の回転量が少なくとも、第1電極部材42a、第2電極部材42bを、十分に鉛直上方に配置することができる。
【0043】
また、板状の第1電極部材42a,第2電極部材42bの上面部は、飛散した潤滑剤が付着しやすい。第2電極部材42bの上面部は、第1電極部材42aと当接する箇所であるので、第2電極部材42bの上面部にはなるべく潤滑剤が付着しないようにする必要がある。本実施形態においては、第2電極部材42bの第1電極部材42aと当接する固形潤滑剤長手方向中央側端部付近を、第1電極部材42aに近接配置している。これにより、第2電極部材42bの固形潤滑剤長手方向中央側端部付近と第1電極部材42aとの隙間が狭くなり、第2電極部材42bの固形潤滑剤長手方向中央側端部付近の上面部に潤滑剤が付着するのを抑制することができる。
【0044】
また、先の図3に示すように、第1電極部材42aの固形潤滑剤長手方向中央側端部は、第2電極部材42bよりも中央側にある。また、図4に示すように第1電極部材42aの収納ケース3eの検知開口部31eが設けられた側面に対して直交する方向の長さが、第2電極部材42bよりも長くなっている。このような構成を有しているので、丁度、第1電極部材42aが庇のような働きをし、鉛直上方から落下してきた潤滑剤を第1電極部材42aの上面部で受けることができる。これにより、第2電極部材42bの上面部に潤滑剤が付着するのを抑制することができる。なお、第1電極部材42aの上面部に潤滑剤が堆積しても第1電極部材42aと第2電極部材42bとの導通状態になんら影響を与えることはない。
【0045】
さらに、本実施形態においては、仕切り壁43bにより、カバー部材43で覆われた空間を、開口部31eが設けられた空間と、各電極部材が設けられた空間とに仕切っている。これにより、開口部31eから進入してきた潤滑剤粉が、第1電極部材42a,第2電極部材42bに付着するのをより一層抑制することができる。また、カバー部材43と仕切り壁43bとを樹脂で一体成形するのが好ましい。これにより、カバー部材43と仕切り壁43bとを別部材で構成した場合に比べて、部品点数を削減でき、装置を安価にすることができる。また、収納ケース3eに仕切り壁43bを設けてもよい。この場合も、収納ケース3eと仕切り壁43bとを樹脂で一体成形することで、部品点数を削減でき、装置を安価にすることができる。また、カバー部材43、収納ケース3eそれぞれに仕切り壁を設けて、組み合わせることで、カバー部材43で覆われた空間を、開口部31eが設けられた空間と、各電極部材が設けられた空間とに仕切ってもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、カバー部材43で開口部31eおよび第1電極部材42a,第2電極部材42bを覆っている。これにより、開口部31eから潤滑剤供給装置3外へ潤滑剤粉が飛散するのを抑制することができ、装置が汚れるのを抑制することができる。また、飛散トナーなどが、第1電極部材42aや第2電極部材42bに付着するのを抑制することができ、電極部材間に導通不良が生じるのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、検知用回転部材41の自重による回転方向を、固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する方向と逆方向にしている。本実施形態と異なり、検知用回転部材41の自重による回転方向を、固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する方向と同方向にした場合、検知用回転部材41が自重により回転しないように規制する規制部材をスプリングなどの付勢手段により構成し、自重による回動方向と逆方向に付勢しておく必要がある。かかる構成の場合、潤滑剤保持部材3dに設けられた当接突起部31dが、検知用回転部材41の受け部41bを押して、検知用回転部材41を潤滑剤の消費に伴い回転させると、スプリングの付勢力が増していく。その結果、固形潤滑剤3bの残量がニアエンド(検知用回転部材41の回転角度が所定角度)に近づくにつれて、固形潤滑剤3bの塗布ローラ3aに対する当接圧が減少し、感光体1への潤滑剤供給量が低下してしまう。
【0048】
一方、本実施形態のように、検知用回転部材41の自重による回転方向を、固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する方向と逆方向にすることで、上述のようなスプリングが不要となる。よって、固形潤滑剤3bの塗布ローラ3aに対する当接圧の変動を抑えることができる。これにより、検知用回転部材41の自重による回転方向を、上記固形潤滑剤の消費に伴い回転する方向と同方向にした場合に比べて感光体1への潤滑剤供給量の変動を抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、カバー部材43に第1電極部材42a,第2電極部材42b,検知用回転部材41を位置決め保持している。このように、同一の部材に第1電極部材42a,第2電極部材42b,検知用回転部材41を位置決め保持することで、部品公差を最小限に抑えることができる。これにより、第1電極部材42a,第2電極部材42b,検知用回転部材41のそれぞれの位置関係を精度よく出すことができる。これにより、固形潤滑剤3bがニアエンド状態のときに、確実に第2電極部材42bを第1電極部材42aに当接させることができ、精度よく潤滑剤のニアエンド状態を検知することができる。また、カバー部材43を収納ケース3eから取り外すだけで、残量検知部40を、潤滑剤供給装置3から取り外すことができ、残量検知部40の交換作業を容易に行うことができる。
【0050】
図5(b)に示すように潤滑剤塗布動作中のときは塗布ローラ3aが回転して固形潤滑剤3bを摺擦している。このため、固形潤滑剤3bは塗布ローラ3aの表面移動方向(図中左側)に力を受ける。潤滑剤保持部材3dは、収納ケース3e内部で移動できるように構成する必要があるため、収納ケース3eに対してある程度のガタがある状態で収納ケース3eに収納されている。このため、固形潤滑剤3bは塗布ローラ3aの表面移動方向(図中左側)に力を受けると、潤滑剤保持部材3dが、塗布ローラ3aの固形潤滑剤を摺擦する方向(図中左側)に移動する。従って、本実施形態とは異なり、残量検知部40を、収納ケース3eにおける塗布ローラ3aと固形潤滑剤3bとの当接部よりも塗布ローラ3a回転方向上流側の側面に設けた場合、潤滑剤保持部材3dが、塗布ローラ3aの固形潤滑剤を摺擦する方向(図中左側)に移動すると、当接突起部31dが、受け部41bと当接しないおそれがある。その結果、検知用回転部材41が回転しないおそれがある。
【0051】
一方、本実施形態のように、収納ケース3eにおける塗布ローラ3aと固形潤滑剤3bとの当接部よりも塗布ローラ3a回転方向下流側の側面に設けることで、当接突起部31dを確実に検知用回転部材41の受け部41bに当接させることができる。これにより、確実にニアエンド状態を検知することができる。また、潤滑剤保持部材3d、固形潤滑剤3bが、塗布ローラ3aの表面移動方向(図中左側)に移動し、開口部31eを塞ぐことができる。これにより、収納ケース3e内に堆積した潤滑剤粉が、開口部31eから飛散するのを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、潤滑剤が枯渇する直前の所謂固形潤滑剤のエンド状態ではなく、所定回数感光体1表面に潤滑剤を供給可能な量の残量(ニアエンド状態)を検知するようにしている。潤滑剤のエンド状態を検知する場合、検知後に画像形成動作を行うと、潤滑剤枯渇による不具合が生じるため、潤滑剤の交換作業が完了するまで画像形成動作を禁止する必要があり、ダウンタイムが生じてしまう。
【0053】
これに対し、本実施形態においては、潤滑剤のニアエンド状態を検知しているので、検知後の所定回数、画像形成動作を行っても、感光体表面に潤滑剤を塗布でき、感光体表面を保護できる。これにより、検知後から固形潤滑剤の準備が整い交換作業を開始するまでの間も、画像形成動作を行うことができ、装置のダウンタイムが生じるのを抑制することができる。また、準備が整うまでの間に、所定回数以上の画像形成動作が行われると、潤滑剤が枯渇してしまい、潤滑剤枯渇による不具合が出てしまう。よって、ニアエンドを検知したら、塗布ローラ3aの走行距離(回転回数)や、画像形成動作回数などを監視する。そして、塗布ローラ3aの走行距離や画像形成動作回数が所定値となったら、潤滑剤のエンド状態と判定して、画像形成動作を禁止する。
【0054】
潤滑剤塗布動作中のときは塗布ローラ3aが回転して固形潤滑剤を摺擦している。このため、固形潤滑剤3bは塗布ローラ3aの表面移動方向(図中左側)に力を受ける。潤滑剤保持部材3dは、収納ケース3e内部で移動できるように構成する必要があるため、収納ケース3eに対してある程度のガタがある状態で収納ケース3eに収納されている。このため、固形潤滑剤3bは塗布ローラ3aの表面移動方向(図中左側)に力を受けると、潤滑剤保持部材3dが、塗布ローラ3aの固形潤滑剤を摺擦する方向(図5の反時計回り)に傾くおそれがある。本実施形態においては、図4に示すように、当接突起部31dは、潤滑剤保持部材3dの塗布ローラ3a回転方向下流側の側面に設けている。このため、潤滑剤保持部材3dが傾くとまだ固形潤滑剤の量が十分にある状態で当接突起部31dが検知用回転部材を押し込み、電極部材間が導通し、制御部100がニアエンドと誤検知する場合がある。
【0055】
また、潤滑剤塗布動作時の潤滑剤保持部材3dは、塗布ローラ3aとの固形潤滑剤3bの摺擦部での負荷変動により塗布ローラ3aの回転に対して、固形潤滑剤3bが振動した状態となってしまう。特に、本実施形態のように、固形潤滑剤3bの重力方向が、塗布ローラ3aの固形潤滑剤に対する摺擦方向と反対側の場合、上記負荷変動による振動が大きくなる。さらに、塗布ローラ自体の回転動作に振れが生じた場合も、それにみあって固形潤滑剤が振動することとなる。その結果、例え、潤滑剤塗布動作時に上述した傾きが生じなかったとしても、上記振動により、ニアエンド時の当接突起部31dの検知用回転部材41に対する押し込み力が変動する。その結果、検知用回転部材41の第2電極部材42bに対する押し込み力が変動し、第2電極部材42bと第1電極部材42aとの当接状態が不安定となり、導通や非導通を繰り返す状況になる。このため、振動により固形潤滑剤がすでにニアエンド状態まで消費されているにもかかわらず電極部材間の導通が検知されず、ニアエンドを通知しない可能性がある。また、潤滑剤の振動により生じる接触状態の不安定化によるノイズ等が導通状態に及ぼす影響を考慮するために、ノイズの影響を受けないような電力量とする等の対応(必要以上の電力を有する構成)が必要となってしまう。そこで、本実施形態においては、潤滑剤塗布動作停止中に残量検知を行うようにした。
【0056】
図6は、潤滑剤残量検知の制御フロー図である。
図6に示すように、制御部100は、潤滑剤塗布動作が終了したか否かをチェックする(S1)。塗布ローラ3aが、回転駆動する場合は、塗布ローラ3aを回転駆動する駆動モータがONからOFFに切り替わったことを検知することで、潤滑剤塗布動作が終了したことを検知することができる。塗布ローラ3aが、感光体1と連れ回りする場合は、例えば、感光体1を回転駆動させる駆動モータがONからOFFに切り替わったことを検知することで潤滑剤塗布動作が終了したことを検知することができる。また、これに限らず、エンコーダなどで塗布ローラ3aが停止したことを検知することで潤滑剤塗布動作が終了したことを検知してもよい。
【0057】
制御部100は、潤滑剤塗布動作が終了し(S1のYES)、ニアエンド状態を検知していないとき(S2のNO)は、第1電極部材42aと第2電極部材42bとの間に電圧を印加し、抵抗検知部42cで抵抗値を測定する(S2)。抵抗検知部42cで測定した抵抗値が所定値以下の場合(S3のYES)は、潤滑剤がニアエンド状態であると判定し、その旨をユーザーに報知する(S4)。
【0058】
一方、ニアエンドを検知しているとき(S2のYES)は、ニアエンド後の塗布ローラ3aの走行距離が所定値Bt以上のとき(S6のYES)は、潤滑エンドと検知し(S7)、画像形成動作を禁止する。
【0059】
このように、潤滑剤動作終了後の潤滑剤動作停止中に潤滑剤の残量検知を行うことで、潤滑剤保持部材3dが傾いていない状態で残量検知を行うことができ、正確な潤滑剤の残量検知を行うことができる。また、固形潤滑剤3bが振動していない状態で残量検知を行うことができる。よって、固形潤滑剤ニアエンド時において、第2電極部材42bが第1電極部材42aに安定的に接触した状態で検知することができる。その結果、正確に固形潤滑剤のニアエンドを検知することができる。また、潤滑剤保持部材と電極部材との間に高い電圧をかけずとも、良好に導通状態を検知することができ、消費電力も必要最低限でおさえることができる。なお、上述では、潤滑剤動作終了後に残量検知を行っているが、潤滑剤動作開始前に残量検知を行ってもよい。また、ニアエンド後に行うエンド検知を常に行うようにしてもよい。
【0060】
低画像面積率を頻繁に出力する使用条件の場合、粉体状に削り取られた潤滑剤のうち感光体へ塗布されなかった潤滑剤が収納ケース3eに堆積していく。その結果、収納ケース3eに堆積した潤滑剤の一部が開口部31eから多く飛散する。従って、仕切り壁43bの検知用回転部材の受け部41bを通すための連通部を通って、カバー部材43の第1電極部材42a、第2電極部材42bが配置された空間に入り込む潤滑剤粉も多くなる。よって、第1電極部材42a,第2電極部材42bに付着する潤滑剤粉も多くなる。これにより、電極部材間で導通不良が生じ、潤滑剤のニアエンドを検知することができないおそれがある。その結果、固形潤滑剤が枯渇して、感光体表面に潤滑剤で保護できなくなるおそれがある。そこで、塗布ローラ3aの走行距離および電極部材間の導通状態の両方で、潤滑剤のニアエンドを検知してもよい。
【0061】
図7は、塗布ローラ3aの走行距離および残量検知部40の両方でニアエンドを行う場合の制御フロー図である。
図7に示すように、潤滑剤塗布動作終了後(S11のYES)、残量検知部40でニアエンドを検知してない(S12のNO)場合は、塗布ローラ3aの走行距離が、所定値B1以上か否かをチェックする(S13)。所定値B1以下(S13のNO)の場合は、抵抗検知部42cで抵抗値の測定を行い(S14)、抵抗値が所定値以下か否かをチェックする(S15)。抵抗値が所定値以下(1S5のYES)の場合は、電極部材間42a,42bとが導通しているので、潤滑剤ニアエンドと判定(S16)し、ユーザーに報知する。また、塗布ローラ3aの走行距離が、所定値B1以上のとき(S13のYES)も、潤滑剤ニアエンドと判定(S16)し、ユーザーに報知する。
【0062】
図8は、固形潤滑剤量の推移とニアエンド検知のタイミングとを示す図である。
図8に示すように、通常の使用条件のときは、塗布ローラ3aが所定値B1となる前に、電極部材間が導通し、ニアエンドが検知される。一方、低画像面積率の画像を頻繁に出力するような使用条件のときは、電極部材間が導通する前に、塗布ローラ3aの走行距離が所定値B1となり、ニアエンドが検知される。そして、ニアエンドが検知されてから、塗布ローラ3aの走行距離が、上限値Btとなったら、潤滑剤エンド状態として、画像形成動作を禁止する。
【0063】
このように、ニアエンドを検知できない事態が生じるおそれがある低画像面積率の画像を頻繁に出力する使用条件のときは、塗布ローラ3aの走行距離でニアエンドを検知することができる。これにより、残量検知部40でニアエンドが検知されずに、そのまま使用され続けることを防止することができる。これにより、感光体表面を確実に潤滑剤で保護できる。
【0064】
塗布ローラ3aの走行距離以外にも、塗布ローラ3aの回転時間等を計測することで、ニアエンドを検知してもよい。また、塗布ローラ3aが、回転駆動する構成で、環境変動等により潤滑剤塗布ローラの回転数を変化させる制御を搭載した場合は、走行距離を計測することが、より精度よくニアエンドを予測できる構成となる。
【0065】
次に、残量検知部42の変形例について説明する。
【0066】
図9は、第1変形例の残量検知部42の概略構成図であり、図10は、変形例1の断面図である。なお、図10は、仕切り壁43bを省略している。
図9図10に示すように、この変形例1の残量検知部は、検知用回転部材41を導電性部材とし、第2電極部材42bを無くしたものである。
図9(a)に示すように、使用初期においては、検知用回転部材41は、仕切り壁43bに突き当たっており、自重による回転が規制されている。このとき、図9(a)、図10(a)に示すように、検知用回転部材41は、第1電極部材42aから離間している。よって、このとき、抵抗検知部42cにより、第1電極部材42aと検知用回転部材41との間に電圧を印加しても第1電極部材42aと検知用回転部材41との間に電流が流れず、電気抵抗値の測定が不能な状態である。
【0067】
上述と同様に、潤滑剤保持部材3dの当接突起部31dが検知用回転部材41を押して、検知用回転部材を回転させ、固形潤滑剤3bの高さが所定値以下(ニアエンド状態)となると、検知用回転部材41の図中左側先端が、第1電極部材42aと当接する。これにより、検知用回転部材41と第1電極部材42aとが非導通状態から導通状態に切り替わる。その結果、抵抗検知部42cにより第1電極部材42aと検知用回転部材41との間に電圧を印加すると、第1電極部材42aと検知用回転部材41との間に電流が流れる。これにより、抵抗検知部42cで電気抵抗値が計測され、固形潤滑剤がニアエンドとなり、検知用回転部材41が所定角度回転したことを検知することができる。
【0068】
この変形1においては、第2電極部材42bを無くすことができ、部品点数を削減でき、装置のコストダウンを図ることができる。
【0069】
図11は、押し当て機構の変形例を示す概略構成図である。
この変形例の押し当て機構300cは、潤滑剤保持部材3dの長手方向両端部付近にそれぞれ設けられ、収納ケース3eに揺動自在に取り付けられた揺動部材301aと、付勢手段であるバネ301bとを有している。バネ301bの各端部がそれぞれ揺動部材301aに取り付けられている。各揺動部材301aは、このバネ301bから潤滑剤保持部材の長手方向中心に向かう図中矢印Dの向きの付勢力を得ている。この付勢力によって、図中右側の揺動部材は図中反時計回りに、図中左側の揺動部材は図中時計回りに揺動するように付勢される。これにより、各揺動部材301aの潤滑剤保持部材3dと当接する円弧状の当接部311は、図9に示すように潤滑剤保持部材3d側へ付勢される。
【0070】
使用初期時においては、各揺動部材301aの揺動端部がバネ301bの付勢力に抗して収納ケース3eの上面部の内周面32へ近づく方向に揺動した状態となっている。このような構成により、2つの揺動部材301aはバネ301bの付勢力を受けて互いに均等な力で潤滑剤保持部材3dを押し、潤滑剤保持部材3dに保持された固形潤滑剤3bを塗布ローラ3aに押し当てる。よって、固形潤滑剤3bは、その長尺方向において塗布ローラ3aに均一に押し当てられる。その結果、塗布ローラ3aの回転により摺擦されることで削り取られる潤滑剤の量は、長尺方向において均一となり、感光体1の表面に潤滑剤をムラなく塗布することができる。
【0071】
この変形例の押し当て機構300cにおいては、経時使用によって固形潤滑剤3bの高さが減っても固形潤滑剤3bの加圧力の減少を抑制できる。よって、初期から経時にかけて感光体1の表面に供給される粉末潤滑剤量の変動を小さく抑えることができる。
【0072】
このような結果が得られる理由は、次の通りである。
一般に、初期から固形潤滑剤3bが無くなるまでの間に変化するバネの伸び変化量に対し、バネ全体の長さを長くすれば長くするほど、バネの伸び変化量に対するバネの付勢力変動は小さくて済む。図3に示した押し当て機構としての加圧バネ3cを縮めた状態で配置し、その付勢力(押し出し力)の方向と塗布ローラ3aに対する固形潤滑剤3bの押し当て方向とを一致させている。この構成においては、バネ全体の長さを長くするほど、バネの付勢力方向と塗布ローラ3aに対する固形潤滑剤3bの押し当て方向とを一致させることが困難となることから、バネ全体の長さを長くするにも限界がある。加えて、図3の押し当て機構3cでは、塗布ローラ3aの径方向にバネの長さ分の配置スペースを確保しなければならず、装置の大型化につながる。これらの理由から、図3の押し当て機構においては、比較的短いバネを使用しなければならず、経時的なバネの付勢力変動が大きくなる。
【0073】
これに対し、この変形例の押し当て機構300cにおいては、図11に示したように、バネ301bを伸ばした状態で配置し、その付勢力(引っ張り力)で塗布ローラ3aに対して固形潤滑剤3b押し当てることができる。よって、バネ全体の長さを長くしても図3の押し当て機構3cのような問題は生じない。しかも、変形例の押し当て機構300cでは、バネ301bの長さ方向が固形潤滑剤3bの長尺方向すなわち塗布ローラ3aの軸方向に一致するようにバネ301bが配置される。したがって、バネ301bの長さを長くしても、塗布ローラ3aの径方向に配置スペースが広がることはなく、装置を大型化する必要がない。そのため、この変形例の押し当て機構300cは、図3に示した押し当て機構3cで使用していた加圧バネ3cの長さよりもずっと長いバネ301bを採用できる。その結果、経時的なバネの付勢力変動を小さく抑えることができる。
【0074】
また、図12に示すように、潤滑剤保持部材3dに各揺動部材301aを揺動自在に取り付けてもよい。この図12の構成においては、各揺動部材301aは、バネ301bから潤滑剤保持部材3dの長手方向中心に向かう付勢力によって、各揺動部材301aの揺動端部が、潤滑剤保持部材3dから離れる方向に付勢され、各揺動部材301aの揺動端部が、収納ケース3eの上面部の内周面32に当接する構成となる。
【0075】
また、本実施形態においては、第1電極部材42aと第2電極部材42bとが、鉛直方向に対向配置されている。このため、上述したように、潤滑剤などが電極部材の上面に堆積するおそれがある。よって、第1電極部材42aと第2電極部材42とを水平方向に対向配置してもよい。このように、第1電極部材42aと第2電極部材42とを水平方向に対向配置することにより、各電極部材の面が、水平方向に対して直交する方向となる。これにより、各電極部材の面に潤滑剤などが堆積することがなくなり、電極部材間に導通不良が生じるのを抑制することができ、精度よく潤滑剤のニアエンドを検知することができる。
【0076】
また、検知用回転部材41の被検知部41aを検知する回転検知手段としての回転検知部42としては、上述に限られず、例えば、電極部材42a,42bに替えてプッシュスイッチにしてもよい。この場合、検知用回転部材41が潤滑剤ニアエンドのときに対応する姿勢になると、検知用回転部材41の被検知部41aが、プッシュスイッチを押し込み、ニアエンドが検知される。
【0077】
また、フォトインタラプタにて検知用回転部材41の被検知部41aを検知することもできる。検知用回転部材41が潤滑剤ニアエンドのときに対応する姿勢になると、検知用回転部材41の被検知部41aが、光を遮ることで、被検知部41aが検知され、ニアエンドが検知される。また、フォトリフレクタを用いて、潤滑剤のニアエンドを検知することもできる。この場合は、検知用回転部材41の被検知部41aに反射板を設ける。検知用回転部材41が潤滑剤ニアエンドのときに対応する姿勢になると、検知用回転部材41の被検知部41aが、フォトリフレクタからの光を反射し、フォトリフレクタで受光することで、被検知部41aが検知され、ニアエンドを検知することができる。
【0078】
また、中間転写ベルト56に潤滑剤を塗布する潤滑剤供給装置に、上述した潤滑剤供給装置を適用してもよい。
【0079】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(15)の態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
固形潤滑剤3bと、上記固形潤滑剤3bの潤滑剤を感光体1などの潤滑剤供給対象に供給する塗布ローラ3aなどの供給部材と、上記固形潤滑剤3bの残量が所定量以下であることを検知する残量検知部40などの残量検知手段とを備えた潤滑剤供給装置3において、上記残量検知手段は、回転可能に設けられた検知用回転部材41などの回転部材と、上記回転部材を上記固形潤滑剤3bの消費に伴い押して、上記回転部材を回転させる押し部材(本実施形態においては、潤滑剤保持部材3dの当接突起部31d)とを備え、上記回転部材の上記押し部材との当接箇所(本実施形態では、受け部41b)と上記回転部材の回転の支点を挟んで反対側の箇所において潤滑剤が所定量以下であることが検知される。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、検知用回転部材41の回転を検知する回転検知部42などの回転検知手段を、塗布ローラ3aなどの供給部材と固形潤滑剤3bとの当接部から離れた位置に配置することが可能となる。これにより、回転検知手段に、供給部材により削り取られた潤滑剤が飛散して回転検知手段に付着するのを抑制することが可能となり、残量の誤検知を抑制することができる。
【0080】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、検知用回転部材41などの上記回転部材の自重による回転方向を、上記固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する方向と逆方向にした。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、検知用回転部材41の自重による回転方向を、上記固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する方向と同方向にした場合に比べて感光体1への潤滑剤供給量の変動を抑えることができる。
【0081】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、検知用回転部材41などの回転部材の上記押し部材が当接する箇所は板状形状とし、押し部材との当接箇所と回転部材の回転の支点を挟んで反対側を筒形状として、押し部材との当接箇所と上記回転部材の回転の支点を挟んで反対側の重量を、押し部材との当接箇所よりも重くした。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、検知用回転部材41などの上記回転部材の自重による回転方向を、上記固形潤滑剤3bの消費に伴い回転する方向と逆方向にすることができる。
【0082】
(4)
また、上記(3)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、検知用回転部材41などの回転部材の筒形状の内周面に当接して上記回転部材の自重による回転を規制する規制突起43aを備えた。
かかる構成とすることで、回転部材の回転を規制することができる。
【0083】
(5)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置3において、検知用回転部材41などの回転部材の上記押し部材(本実施形態においては、潤滑剤保持部材3dの当接突起部31d)とが当接する箇所よりも鉛直方向上方に上記反対側の箇所を配置した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、上記回転検知部42などの回転検知手段に潤滑剤が付着するのを抑制することができる。
【0084】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、上記固形潤滑剤3bを収納する収納ケース3eを備え、上記残量検知部40などの残量検知手段を収納ケース3eの外に設けた。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、上記回転検知部42などの回転検知手段に潤滑剤が付着するのを抑制することができる。
【0085】
(7)
また、上記(5)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、上記収納ケース3eには、上記押し部材(本実施形態では潤滑剤保持部材3dの当接突起部31d)が貫通する開口部34aが設けられており、上記収納ケース3eの外側で上記押し部材が上記検知用回転部材41などの回転部材と当接する。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、収納ケース3eの外に配置された回転部材を回転させて、固形潤滑剤量が所定量以下であることを検知することができる。
【0086】
(8)
また、上記(7)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、残量検知部40などの残量検知手段と上記開口部34aを覆うカバー部材43を設けた。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、開口部31eから飛散した潤滑剤で装置が汚れるのを防止することができる。また、回転検知部42などの回転検知手段に飛散トナーが付着するのを防止することができる。
【0087】
(9)
また、上記(7)または(8)に記載の態様の潤滑剤供給装置3において、上記開口部31eが配置された空間と、上記残量検知部40などの残量検知手段が配置された空間とに仕切る仕切り壁43bなどの仕切り手段を設けた。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、開口部31eからカバー部材43内へ進入した潤滑剤粉が、回転検知部42などの回転検知手段に付着するのを抑制することができる。
【0088】
(10)
また、上記(7)乃至(9)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置3において、残量検知部40などの残量検知手段を、塗布ローラ3aなどの供給部材と固形潤滑剤3bとの当接部よりも供給部材表面移動方向下流側に配置した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、当接突起部31dなどの押し部材を確実に検知用回転部材41などの回転部材に当接させることができる。
【0089】
(11)
また、上記(1)乃至(10)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置において、
残量検知部41などの残量検知手段を、固形潤滑剤長手方向両端部近傍に設けた。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、固形潤滑剤3bが長手方向で潤滑剤の消費量が異なった場合でも、消費量が多い方の側の端部の潤滑剤量がニアエンドとなった状態を検知することができる。これにより、固形潤滑剤の一方側端部の潤滑剤が枯渇して、感光体表面を傷つけてしまうなどの不具合が発生するのを防止することができる。
【0090】
(12)
また、上記(1)乃至(11)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置3において、残量検知部40などの上記残量検知手段は、第1電極部材42aと、第1電極部材42aに対向配置され、上記検知用回転部材41などの回転部材により上記第1電極部材42a側へ押される第2電極部材42bとを備え、上記第1電極部材42aと上記第2電極部材42bとの間の導通の有無に基づいて上記固形潤滑剤の残量が所定量以下であることを検知する。
かかる構成を備えることで、板金などの比較的安価な材料で構成される第1、第2電極部材で、残量検知手段を構成することができるので、フォトセンサなど、板金に比べて高価な部材で残量検知手段を構成した場合に比べて、装置を安価することができる。また、固形潤滑剤がニアエンド状態となるまで、第1電極部材42aに対して第2電極部材42bが離間した位置にある。よって、ニアエンドの検知の度に電力が消費されることはない。その結果、ニアエンドとなるまで、第1電極部材と第2電極部材とが当接して導通状態となっており、ニアエンドとなると第1電極部材と第2電極部材とが離間して非導通状態となるものに比べて、電力消費を抑えることができる。
【0091】
(13)
また、上記(1)乃至(12)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置において、残量検知部40などの残量検知手段は、上記固形潤滑剤3bの終了前のニアエンド状態を検知する。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、ニアエンド検知後から固形潤滑剤3bの準備が整い交換作業を開始するまでの間も、上記感光体1などの潤滑剤供給対象に潤滑剤を供給することができ装置のダウンタイムが生じるのを抑制することができる。
【0092】
(14)
また、感光体1などの像担持体と、像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段とを有し、像担持体上の画像を最終的に記録材上に転移させて該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、潤滑剤供給手段として、上記(1)乃至(13)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置を用いた。
かかる構成を備えることで、潤滑剤のニアエンドを良好に検知することができ、潤滑剤が枯渇した状態で画像形成動作が行われるのを抑制することができる。これにより、感光体の劣化を経時に亘り抑制することができる。
【0093】
(15)
また、感光体1などの像担持体と、像担持体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段とを有し、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジにおいて、潤滑剤供給手段として、上記(1)乃至(13)いずれかに記載の態様の潤滑剤供給装置を用いた。
かかる構成を備えることで、潤滑剤のニアエンドを良好に検知することができ、潤滑剤が枯渇した状態で画像形成動作が行われるのを抑制することができる。これにより、感光体の劣化を経時に亘り抑制することができるプロセスカートリッジを提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
1:感光体
3:潤滑剤供給装置
3a:塗布ローラ
3b:固形潤滑剤
3c:押し当て機構(加圧バネ)
3d:潤滑剤保持部材
3e:収納ケース
31d:当接突起部
31e:開口部
40:残量検知部
41:検知用回転部材
41a:被検知部
41b:受け部
42:回転検知部
42a:第1電極部材
42b:第2電極部材
42c:抵抗検知部
43:カバー部材
43a:規制突起
43b:仕切り壁
43c:回転軸
56:中間転写ベルト
100:制御部
300c:押し当て機構
301a:揺動部材
301b:バネ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開平8−314346号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13