【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。なお、実施例及び比較例における「マスク」は、「露光原版」を例としたものであり、レチクルに対しても同様に適用できるものである。
【0035】
<実施例1>
実施例1では、先ず、アルミニウム合金製のペリクルフレーム(外形サイズ149mmx115mmx3.5mm肉厚2mm、マスク基板貼り付け用粘着剤の塗布端面側の平坦度が15μm)を準備し、これを精密洗浄した後に、15μm側の端面に信越化学工業株式会社製のシリコーン粘着剤(製品名;X-40-3264)を塗布し、60分間室温で静置した。その後、平坦度が5μmのアルミ板上にセパレータを置くと共に、これに粘着剤を塗布したペリクルフレームを粘着剤が下向きになるように置くことで、粘着剤の表面に平坦なセパレータを接触させ、粘着剤の表面を平坦加工した。
【0036】
また、アルミ板上のペリクルフレームを60℃のオーブンに60分間入れて粘着剤を硬化させた後に、このペリクルフレームをアルミ板ごと取り出して、セパレータを剥離した。その後、粘着剤の塗布された端面の反対側端面に旭硝子株式会社製の接着剤(商品名;サイトップCTX-A)を塗布すると共に、このペリクルフレームを130℃で加熱して接着剤を硬化させた。最後に、上記ペリクルフレームよりも大きなアルミニウム枠にとったペリクル膜にこのペリクルフレームの接着剤端面側を貼り付けると共に、ペリクルフレームよりも外側の部分を除去して、ペリクルを作製した。
【0037】
次に、6インチ□、0.25インチ厚みの基板である「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。測定後にこのマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、加温手段によってマスク基板を35℃になるように加熱すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、60秒間かけて貼り付け荷重100Nの設定荷重まで到達させた後、この貼り付け荷重で30秒間加圧してペリクルを35℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0038】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.32μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスク基板の歪み量の変化が0.07μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0039】
この実施例1と後述する実施例2〜4及び比較例1〜4のペリクル貼り付け前後のマスク基板の平坦度と変化量の結果及びペリクルの貼り付け条件は、次の表1に示すとおりである。
【0040】
【表1】
【0041】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.26μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、貼り付け荷重100N(60秒間かけて設定荷重まで到達させた)で、荷重時間30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0042】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.26μmから0.30μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.04μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0043】
<実施例3>
実施例3では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が35℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に、貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを35℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0044】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.30μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.05μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0045】
<実施例4>
実施例4では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0046】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.28μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.03μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0047】
<比較例1>
比較例1では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板を加熱せずに室温(25℃)の状態のまま、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧して室温状態のペリクルをマスク基板に貼り付けた。
【0048】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.36μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.11μmと大きなものであるから、期待した値の範囲内に抑制することができなかった。
【0049】
<比較例2>
比較例2では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.26μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が100℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを100℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0050】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.28μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.02μmという小さな値に抑制することができたが、マスク基板の加熱温度が100℃で高すぎたために、粘着剤の貼り付け付近のマスク基板にくもりの発生が見られ、ペリクルの貼り付け条件としては問題があることが確認された。
【0051】
<比較例3>
比較例3では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(5秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに100N(15秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0052】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.37μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.12μmと大きなものであるから、期待した値の範囲内に抑制することができなかった。
【0053】
<比較例4>
比較例4では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒放置し、さらに150N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0054】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.38μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.13μmと大きなものであるから、期待した値の範囲内に抑制することができなかった。