特許第6025178号(P6025178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6025178ペリクルの貼り付け方法及びこの方法に用いる貼り付け装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025178
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ペリクルの貼り付け方法及びこの方法に用いる貼り付け装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20161107BHJP
【FI】
   G03F1/62
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-232807(P2013-232807)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-94800(P2015-94800A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159433
【弁理士】
【氏名又は名称】沼澤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕一
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−013152(JP,A)
【文献】 特開2011−017833(JP,A)
【文献】 特開昭63−284551(JP,A)
【文献】 特開平04−212958(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0045262(US,A1)
【文献】 米国特許第06841312(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルフレームの一端面に接着剤を介してペリクル膜を張設し、他の端面に粘着層を設けたリソグラフィ用ペリクルをマスク基板に貼り付ける方法であって、前記粘着層と前記マスク基板を加温して、前記ペリクルを前記マスク基板に貼り付け荷重100N以下で貼り付けるとともに、該貼り付け荷重に到達するまでの時間を1分以上とすることを特徴とするペリクルの貼り付け方法。
【請求項2】
前記加温温度は、35℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のペリクルの貼り付け方法。
【請求項3】
前記貼り付け荷重を少なくとも1つ以上の加圧ステップに分けて断続的に上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載のペリクルの貼り付け方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つ以上の加圧ステップの間で、前記張り付け荷重を解放する時間を設けることを特徴とする請求項3に記載のペリクルの貼り付け方法。
【請求項5】
前記解放時間が30秒以上であることを特徴とする請求項4に記載のペリクルの貼り付け方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のペリクルの貼り付け方法を実施するための貼り付け装置であって、マスク基板及びペリクルの粘着剤層を加温する熱源と、ペリクルをマスク基板に貼り付けるための荷重手段と、少なくとも1つ以上の加圧ステップの貼り付け荷重、荷重時間及び荷重解放時間を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするペリクルの貼り付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSIなどの半導体装置又は液晶表示板を製造する際のリソグラフィ用マスクのゴミよけとして使用される、リソグラフィ用ペリクルの貼り付け方法及びこの方法に用いる貼り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSIなどの半導体製造又は液晶表示板などの製造においては、半導体ウエハー又は液晶用原版に光を照射してパターンを作製するが、この場合に用いる露光原版にゴミが付着していると、このゴミが光を吸収したり、光を曲げてしまうために、転写したパターンが変形したり、エッジががさついたものとなるほか、下地が黒く汚れたりして、寸法、品質、外観などが損なわれるという問題があった。なお、本発明において、「露光原版」とは、リソグラフィ用マスク及びレチクルの総称である。
【0003】
そこで、これらの作業は通常クリーンルームで行われているが、このクリーンルーム内でも露光原版を常に清浄に保つことが難しいので、露光原版の表面にゴミよけのための露光用の光をよく通過させるペリクルを貼着する方法が取られている。この場合、ゴミは露光原版の表面上には直接付着せず、ペリクル膜上に付着するため、リソグラフィ時に焦点を露光原版のパターン上に合わせておけば、ペリクル膜上のゴミは転写に無関係となる。
【0004】
このようなペリクルの基本的な構成は、ペリクルフレーム及びこれに張設したペリクル膜からなる。このペリクル膜は、露光に用いる光(g線、i線、248nm、193nm、157nm等)を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素系ポリマーなどからなる。また、ペリクルフレームは、黒色アルマイト処理等を施したA7075、A6061、A5052などのアルミニウム合金、ステンレス、ポリエチレンなどからなる。
【0005】
ペリクルフレームの上部には、ペリクル膜の良溶媒を塗布し、ペリクル膜を風乾して接着するか、アクリル樹脂、エポキシ樹脂やフッ素樹脂などの接着剤で接着する。一方、ペリクルフレームの下部には、露光原版が装着されるために、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等からなる粘着層及び粘着層の保護を目的としたレチクル粘着剤保護用ライナーを設ける。
【0006】
このようにして作製したペリクルは、露光原版の表面に形成されたパターン領域を囲むように設置されるが、このペリクルは、露光原版上にゴミが付着することを防止するために設けられるものであるから、このパターン領域とペリクル外部とはペリクル外部の塵埃がパターン面に付着しないように隔離されている。
【0007】
近年、LSIのデザインルールはサブクオーターミクロンへと微細化が進んでおり、それに伴って露光光源の短波長化が進んでいる、即ち、露光光源がこれまで主流であった、水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)から、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2レーザー(157nm)などに移行しつつある。そして、微細化が進んだ結果、ペリクルを貼り付けたマスク基板パターン面の平坦度が厳しく管理されるようになって来ているので、ペリクルをマスクに貼り付けする際に発生するマスク基板の歪みを抑制する必要性が増してきている。
【0008】
特に、ペリクルの貼り付けによるマスクの歪みの発生は、ペリクルフレームの平坦度、ペリクルマスク貼り付け用粘着剤の材質(柔らかさ)及び形状に大きく依存している。そのため、これまでも粘着剤の形状を平坦加工したペリクルやフレームの平坦度を管理したペリクル、更には粘着剤の材質として、貼り付け時のマスク歪みを抑制するために柔らかい粘着剤を採用するなど、一定の改善は進められてきている。
【0009】
例えば、特許文献1には、ペリクルの粘着剤の形状を平坦度が15μm以下の平坦な面としたペリクルが記載されている。しかしながら、上記のような対策を行っても、ペリクルが貼りつけられたマスクの歪みを完全に抑制することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−25560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記のような事情に鑑み、ペリクルをマスク基板に貼り付ける際のマスク基板の歪変形を低減させることができるペリクルの貼り付け方法及びこの方法を実施するための貼り付け装置を提供することである。
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行ったところ、ペリクルをマスク基板に貼り付ける際に、粘着剤層とマスク基板を加温すれば粘着剤の柔らかさが増し、より弱い荷重圧力でもペリクルをマスク基板に貼り付けることが可能になり、貼り付け時のマスク基板の歪変形を低減させることができることを知見し、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、ペリクルフレームの一端面に接着剤を介してペリクル膜を張設し、他の端面に粘着層を設けたリソグラフィ用ペリクルをマスク基板に貼り付ける方法であって、粘着層とマスク基板を加温して、ペリクルをマスク基板に貼り付け荷重100N以下で貼り付けるとともに、貼り付け荷重に到達するまでの時間を1分以上とすることを特徴とするものである。そして、この場合の加温温度は、35℃以上80℃以下であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明では、貼り付け荷重を少なくとも1つ以上の加圧ステップに分けて断続的に上昇させることを特徴とするものであり、この場合に、各加圧ステップの間では、張り付け荷重を解放する時間を設けることが好ましく、その解放時間を30秒以上とすることが好ましい。
【0016】
本発明の貼り付け装置は、上記ペリクルの貼り付け方法を実施するためのものであり、マスク基板及びペリクルの粘着層を加温する熱源と、ペリクルをマスク基板に貼り付けるための荷重手段と、少なくとも1つ以上の加圧ステップの貼り付け荷重、荷重時間及び荷重解放時間を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ペリクルをマスク基板に貼り付ける時のマスク基板の歪変形を低減させることが可能になるので、マスク基板のPIDの悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ペリクルの基本的構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の方法は、ペリクルフレームの一端面に接着剤を介してペリクル膜を張設し、他の端面にマスク粘着層を設けた構成のリソグラフィ用ペリクルをマスク基板に貼り付ける際に、粘着層とマスク基板を加温することを特徴とするものである。
【0021】
本発明に使用するペリクル10の基本的構成は、図1に示すとおりである。このペリクル10では、ペリクルフレーム3の上端面には、ペリクル膜1が接着剤2を介して張設されている。一方、ペリクルフレーム3の下端面には、ペリクル10をマスク基板又はレチクル5(露光原版)に粘着させるためのマスク粘着剤4が形成されている。また、この粘着剤4の下端面には、通常、ライナー(図示せず)が剥離可能に貼着され、さらに、気圧調整用穴6(通気口)がペリクルフレーム3に設置されていると共に、必要に応じてパーティクル除去の目的で除塵用フィルター7が設けられている。
【0022】
このようなペリクル10の構成部材の大きさは、通常のペリクルである、例えば半導体リソグラフィ用ペリクルや大型液晶表示板製造リソグラフィ工程用ペリクル等と同様であり、その材質も、上述した公知の材質を採用することができる。
【0023】
ペリクル膜1の種類については特に制限はなく、従来から例えばエキシマレーザー用に使用されている非晶質フッ素ポリマー等が用いられる。この非晶質フッ素ポリマーの例としては、サイトップ(旭硝子(株)製商品名)、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製商品名)等が挙げられる。これらのポリマーは、そのペリクル膜1を作製する時に必要に応じて溶媒に溶解して使用してもよく、例えばフッ素系溶媒などで適宜溶解することができる。
【0024】
ペリクルフレーム3の材質については、従来から使用されているアルミニウム合金材、好ましくは、JIS A7075、JIS A6061、JIS A5052材等が用いられるが、アルミニウム合金材を使用する場合は、ペリクルフレーム3としての強度が確保される限り、特に制限はない。ペリクルフレーム3の表面は、ポリマー被膜を設ける前にサンドブラストや化学研磨によって粗化することが好ましく、このペリクルフレーム3の表面を粗化する方法は、従来公知の方法を採用することができる。特に、アルミニウム合金材に対しては、ステンレス、カーボランダム、ガラスビーズ等によって表面をブラスト処理した後に、さらにNaOH等によって化学研磨を行って表面を粗化する方法が好ましい。
【0025】
粘着層4に使用する接着剤としては、各種の接着剤を適宜選択できるが、アクリル接着剤やシリコーン系接着剤が好ましい。また、粘着剤の形状としては、マスク基板に貼り付ける面が平坦化されていることが好ましい。
【0026】
本発明では、ペリクルをマスク基板に貼り付ける時に、マスク基板の歪み等の影響を軽減させるために、貼り付けによる残留応力を抑制する必要があるので、ペリクル10は、貼り付けの時に変形の少ない平坦加工されたものが好ましい。
【0027】
次に、本発明のペリクルの貼り付け方法について、その具体例に基づいて説明する。
先ず、ペリクル10をペリクル貼り付け装置のステージ上のペリクルホルダーにマスク粘着剤が上になるようにセットし、粘着剤保護シートを剥離した後に、マスク基板をペリクル貼り付け面が下になるようにセットして、スタートボタンを押すと、貼り付け装置のヒーターの電源が入り、ペリクルフレームとマスク基板を加温し始める。ペリクルフレームとマスク基板が設定温度に上昇したところで、マスク基板をゆっくりとペリクルフレームの上に下ろして、マスク基板をその自重でペリクルフレームに押しつける。
【0028】
このようなペリクルの貼り付け工程では、温度の影響が非常に大きいために、ペリクルフレームとマスク基板の温度を照射温度計のようなもので測定して、35℃〜80℃の温度条件に設定することは、マスク粘着剤を適度に軟化させマスク基板に悪影響を与えない範囲の低い荷重で貼り付けが可能になるために好ましい。そして、実際に貼り付け操作を行う場合、ペリクルフレームとマスク基板の温度が設定温度に安定していることを確認する必要がある。この温度範囲よりも低くなると、マスク粘着剤が軟化せずペリクル貼り付け荷重を十分に低下させることができない。また、この温度範囲よりも高くなると、マスク粘着剤が変質したり、アウトガスが発生する可能性があるために好ましくないからである。
【0029】
本発明の貼り付け工程では、貼り付け荷重を100N以下とし、この貼り付け荷重に1分以上かけてこの荷重まで到達させるのが好ましい。貼り付け荷重が100Nを超えた大きな荷重では、マスク基板に余分な応力を与えペリクル貼り付け時にマスク平坦性を悪化させてしまう可能性があるために好ましくない。また、この貼り付け荷重に1分未満と短い時間で到達させると、マスク基板に局所的に応力がかかり、その結果マスク平面均一性を阻害する可能性があるために好ましくない。そこで、具体的な貼り付け工程では、1分間程度経過した後に、貼り付け装置の上部のプレス部によってマスク基板の裏面外周部を加圧する。第1の加圧ステップでは、その設定値まで1分以上かけて到達させたところで30秒間ホールドし、次にプレス圧力を解放して30秒間静置する。その後、第2の加圧ステップで再びプレス部によって、その設定値まで1分以上かけて到達させたところで、30秒間ホールドしてペリクルの貼り付け工程を終了する。なお、必要がある場合には、第1及び第2の加圧ステップの他に、同様の加圧ステップを追加してペリクルを貼り付けても構わない。
【0030】
また、貼り付け工程では、少なくとも1つ以上の加圧ステップ方式で加圧力を順次上昇させていく方が一度に目標の設定値まで加圧力を上昇させるよりも、ペリクルの貼り付けによるマスク基板の残留応力を減少させることができるので好ましい。さらに、少なくとも1つ以上の加圧ステップの各加圧ステップの間で、加圧力を解放する時間を確保する方がペリクル貼り付けによるマスク基板の残留応力を低減させることができるので好ましい。そして、この解放時間は、30秒間以上とすることが好ましく、30秒間より短いとマスク基板の残留応力を十分に低減させることができないからである。
【0031】
本発明の貼り付け方法では、加圧力を限界まで下げてペリクルを貼り付けることで、ペリクル貼り付け時のマスク基板の歪変形を低減させることを目的としているので、使用するペリクルフレームの平坦度やマスク基板を貼り付けるための粘着剤面の平坦性、さらには、粘着剤の柔らかさについても最適化することで、PIDの優れたペリクルの貼り付け工程とすることが可能になる。
【0032】
次に、本発明の貼り付け装置について説明する。この貼り付け装置は、本発明の貼り付け方法に使用するための装置であるから、ペリクルフレームとマスク基板(露光原版)の粘着層を加熱する加温手段を備えている。また、粘着剤保護シートを剥離するための剥離装置を備えていると共に、マスク基板をゆっくりとペリクルフレーム上に昇降させてマスク基板をペリクルフレームに自重で押し付ける昇降手段と、マスク基板の裏面外周部を加圧するプレス部等の加圧手段を備えている。
【0033】
また、この貼り付け装置には、ペリクルフレームとマスク基板の前述のような貼り付け工程を実行するために、少なくとも1つ以上の加圧ステップにおける加圧力・加圧時間・加圧力解放時間等をプログラムした制御手段を備えている。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。なお、実施例及び比較例における「マスク」は、「露光原版」を例としたものであり、レチクルに対しても同様に適用できるものである。
【0035】
<実施例1>
実施例1では、先ず、アルミニウム合金製のペリクルフレーム(外形サイズ149mmx115mmx3.5mm肉厚2mm、マスク基板貼り付け用粘着剤の塗布端面側の平坦度が15μm)を準備し、これを精密洗浄した後に、15μm側の端面に信越化学工業株式会社製のシリコーン粘着剤(製品名;X-40-3264)を塗布し、60分間室温で静置した。その後、平坦度が5μmのアルミ板上にセパレータを置くと共に、これに粘着剤を塗布したペリクルフレームを粘着剤が下向きになるように置くことで、粘着剤の表面に平坦なセパレータを接触させ、粘着剤の表面を平坦加工した。
【0036】
また、アルミ板上のペリクルフレームを60℃のオーブンに60分間入れて粘着剤を硬化させた後に、このペリクルフレームをアルミ板ごと取り出して、セパレータを剥離した。その後、粘着剤の塗布された端面の反対側端面に旭硝子株式会社製の接着剤(商品名;サイトップCTX-A)を塗布すると共に、このペリクルフレームを130℃で加熱して接着剤を硬化させた。最後に、上記ペリクルフレームよりも大きなアルミニウム枠にとったペリクル膜にこのペリクルフレームの接着剤端面側を貼り付けると共に、ペリクルフレームよりも外側の部分を除去して、ペリクルを作製した。
【0037】
次に、6インチ□、0.25インチ厚みの基板である「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。測定後にこのマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、加温手段によってマスク基板を35℃になるように加熱すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、60秒間かけて貼り付け荷重100Nの設定荷重まで到達させた後、この貼り付け荷重で30秒間加圧してペリクルを35℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0038】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.32μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスク基板の歪み量の変化が0.07μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0039】
この実施例1と後述する実施例2〜4及び比較例1〜4のペリクル貼り付け前後のマスク基板の平坦度と変化量の結果及びペリクルの貼り付け条件は、次の表1に示すとおりである。
【0040】
【表1】
【0041】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.26μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、貼り付け荷重100N(60秒間かけて設定荷重まで到達させた)で、荷重時間30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0042】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.26μmから0.30μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.04μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0043】
<実施例3>
実施例3では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が35℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に、貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを35℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0044】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.30μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.05μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0045】
<実施例4>
実施例4では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0046】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.28μmに変化していたが、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.03μmであるから、十分に小さな値に抑制できたことが確認された。
【0047】
<比較例1>
比較例1では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板を加熱せずに室温(25℃)の状態のまま、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧して室温状態のペリクルをマスク基板に貼り付けた。
【0048】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.36μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.11μmと大きなものであるから、期待した値の範囲内に抑制することができなかった。
【0049】
<比較例2>
比較例2では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.26μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が100℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに貼り付け荷重100N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを100℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0050】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.28μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.02μmという小さな値に抑制することができたが、マスク基板の加熱温度が100℃で高すぎたために、粘着剤の貼り付け付近のマスク基板にくもりの発生が見られ、ペリクルの貼り付け条件としては問題があることが確認された。
【0051】
<比較例3>
比較例3では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(5秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒間放置し、さらに100N(15秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0052】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.37μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.12μmと大きなものであるから、期待した値の範囲内に抑制することができなかった。
【0053】
<比較例4>
比較例4では、実施例1と同じ手順でペリクルを作製した。次に、「6025」のマスク基板を準備し、このマスク基板の平坦度を測定したところ、0.25μmであった。また、このマスク基板をペリクル貼り付け装置にセットし、マスク基板の温度が80℃になるように加温すると共に、先に作製したペリクルを貼り付け装置にセットし、最初に貼り付け荷重50N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で30秒間、次に荷重を解放して30秒放置し、さらに150N(60秒かけて設定荷重まで到達させた)で、30秒間加圧してペリクルを80℃に加熱したマスク基板に貼り付けた。
【0054】
そして、ペリクルを貼り付けた時のマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前の平坦度0.25μmから0.38μmに変化しており、ペリクル貼り付けによるマスクの歪み量の変化が0.13μmと大きなものであるから、期待した値の範囲内に抑制することができなかった。
【符号の説明】
【0055】
1 ペリクル膜
2 ペリクル膜接着剤
3 ペリクルフレーム
4 マスク粘着剤
5 マスク又はレチクル
6 気圧調整用穴(通気口)
7 除塵用フィルター
10 ペリクル









図1