特許第6025410号(P6025410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025410
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】光デバイスの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 M
   H01L21/78 R
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-132748(P2012-132748)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258233(P2013-258233A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−055816(JP,A)
【文献】 特開2008−130721(JP,A)
【文献】 特開2012−069909(JP,A)
【文献】 特開2004−031619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の分割予定ラインで区画された表面の各領域に電極を含む光デバイスが形成された光デバイスウエーハから光デバイスを加工する光デバイスの加工方法であって、
光デバイスウエーハの表面から該分割予定ラインに沿って仕上げ厚みに至る深さの溝を形成する溝形成ステップと、
該溝形成ステップを実施した後、光デバイスウエーハの表面側に非導電性の反射膜を被覆して少なくとも該溝の側面に反射膜を形成する反射膜形成ステップと、
該反射膜形成ステップを実施した後、光デバイスウエーハの表面の該電極上に形成された該反射膜を除去して該電極を露出させる電極露出ステップと、
該電極露出ステップを実施する前又は後に、光デバイスウエーハの裏面を研削して該仕上げ厚みへと薄化するとともに該溝を光デバイスウエーハの裏面に露出させて光デバイスウエーハを個々の光デバイスチップへと分割する研削ステップと、を備え
前記反射膜形成ステップでは、光デバイスウエーハの表面全面に前記反射膜を被覆し、
前記電極露出ステップでは、バイト切削手段によって光デバイスウエーハの表面に被覆された該反射膜を旋削することで前記電極を露出させることを特徴とする光デバイスの加工方法。
【請求項2】
前記研削ステップを実施した後、個々の光デバイスチップを基板上にフリップチップ実装する実装ステップと、
該基板上に実装された該光デバイスチップを封止材で封止する封止ステップと、
を更に備えた請求項1記載の光デバイスの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等の光デバイスは、結晶成長用基板上にエピタキシャル層(結晶層)を成長させ、更に格子状の分割予定ラインで区画された各領域に形成される。その後、例えば結晶成長用基板を分割予定ラインに沿って分割して個片化することで、個々の光デバイスが製造されている。
【0003】
緑や青色の光を出射する発光層がInGaN系のチップでは、サファイアが結晶成長用基板に一般的に用いられ、このサファイア基板上に順次n型GaN半導体層、InGaN発光層、p型GaN半導体層をエピタキシャル成長させる。そして、n型GaN半導体層とp型GaN半導体層のそれぞれに外部取り出し用電極が形成されて光デバイスが形成される。
【0004】
LED等の光デバイスにおいては、より高い輝度が求められており、光の取り出し効率の向上が要望されている。近年、特開平4−10670号公報に開示されるようなフリップチップ実装によって実装された光デバイスが広く市場に出回っている。
【0005】
フリップチップ実装による光デバイスでは、発光層の光が外部に出る際に電極による遮蔽がないため、従来のワイヤーボンディングによる実装に比べて光の取り出し効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−10670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フリップチップ実装されたLEDでは、ワイヤーボンディング実装に比べて発光効率が数十%高まるとされているが、更なる光の取り出し効率の向上が要望されている。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、更なる光の取り出し効率を向上可能な光デバイスの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、交差する複数の分割予定ラインで区画された表面の各領域に電極を含む光デバイスが形成された光デバイスウエーハから光デバイスを加工する光デバイスの加工方法であって、光デバイスウエーハの表面から該分割予定ラインに沿って仕上げ厚みに至る深さの溝を形成する溝形成ステップと、該溝形成ステップを実施した後、光デバイスウエーハの表面側に非導電性の反射膜を被覆して少なくとも該溝の側面に反射膜を形成する反射膜形成ステップと、
該反射膜形成ステップを実施した後、光デバイスウエーハの表面の該電極上に形成された該反射膜を除去して該電極を露出させる電極露出ステップと、該電極露出ステップを実施する前又は後に、光デバイスウエーハの裏面を研削して該仕上げ厚みへと薄化するとともに該溝を光デバイスウエーハの裏面に露出させて光デバイスウエーハを個々の光デバイスチップへと分割する研削ステップと、を備え、前記反射膜形成ステップでは、光デバイスウエーハの表面全面に前記反射膜を被覆し、前記電極露出ステップでは、バイト切削手段によって光デバイスウエーハの表面に被覆された該反射膜を旋削することで前記電極を露出させることを特徴とする光デバイスの加工方法が提供される。
【0011】
好ましくは、本発明の光デバイスの加工方法は、研削ステップを実施した後、個々の光デバイスチップを基板上にフリップチップ実装する実装ステップと、基板上にフリップチップ実装された光デバイスチップを封止材で封止する封止ステップとを更に備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光デバイスの加工方法によると、光デバイスチップの側面には反射膜が形成されるため、発光層からの光がチップ側面から出射することが防止される。また、裏面側は研削されるため、研削で形成された微小凹凸によってチップ内で全反射する光を減少させ光の取り出し効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光デバイスウエーハの表面側斜視図である。
図2】光デバイスウエーハの縦断面図である。
図3】溝形成ステップ実施後の光デバイスウエーハの縦断面図である。
図4】反射膜形成ステップ実施後の光デバイスウエーハの縦断面図である。
図5】電極露出ステップを示す一部断面側面図である。
図6】電極露出ステップ実施後の光デバイスウエーハの縦断面図である。
図7】保護テープ貼着ステップ実施後の光デバイスウエーハの縦断面図である。
図8】研削ステップを示す斜視図である。
図9】研削ステップ実施後の光デバイスウエーハの縦断面図である。
図10】基板上に実装され封止された光デバイスチップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、光デバイスウエーハ11の表面側斜視図が示されている。光デバイスウエーハ11は、サファイア基板13上に窒化ガリウム(GaN)等のエピタキシャル層(発光層)15が積層されて構成されている。光デバイスウエーハ11は、エピタキシャル層15が積層された表面11aと、サファイア基板13が露出した裏面11bとを有している。
【0015】
エピタキシャル層15にLED等の複数の光デバイス19が格子状の分割予定ライン(ストリート)17によって区画されて形成されている。図2に示すように、各光デバイス9には一対の電極21,23が形成されている。
【0016】
本発明の光デバイスの加工方法では、まず、図3に示すように、光デバイスウエーハ11の表面11aから分割予定ライン17に沿って仕上げ厚みt1に至る深さの溝27を形成する溝形成ステップを実施する。
【0017】
この溝27の形成はサファイア基板13に対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のレーザービームを照射して、アブレーション加工により分割予定ライン17に沿って仕上げ厚みt1に至る深さの溝27を形成するのが好ましい。代替実施形態として、水溶性ではない保護層を形成して、溝27を切削ブレードによる切削により形成してもよい。
【0018】
溝形成ステップ実施後、図4に示すように、非導電性の反射膜29を光デバイスウエーハ11の表面11a上及び溝27内に形成する反射膜形成ステップを実施する。この非導電性反射膜29は、例えば誘電体多層膜から形成される。この反射膜形成ステップを実施すると、溝27の側面にも反射膜29が形成される。
【0019】
反射膜形成ステップを実施した後、光デバイスウエーハ11の表面11aの電極21,23上に形成された反射膜29を除去して電極21,23を露出させる電極露出ステップを実施する。
【0020】
この電極露出ステップは、例えば図5に示すようなバイト切削装置の旋削により実施する。バイト切削装置のバイト切削ユニット12は、回転駆動されるスピンドル14と、スピンドル14の先端に固定されたホイールマウント16と、ホイールマウント16の先端に装着されたバイト切削刃20を有するバイトホイール18とを含んでいる。図では模式的に描いているがバイトホイール18の直径はウエーハ11の直径以上である。
【0021】
バイトホイール18を矢印R1方向に回転させながら、バイト切削刃20で光デバイスウエーハ11の表面に形成された反射膜29に所定深さ切り込み、チャックテーブル10を矢印Y1方向に直線移動させることにより、反射膜29をバイト切削刃20で旋回切削して除去し、電極21,23を露出させる。この電極露出ステップが終了すると、図6に示すように、反射膜29が除去されて、電極21,23が露出する。溝27内の反射膜29は残存する。
【0022】
次いで、図7に示すように、光デバイスウエーハ11の表面11aに表面保護テープ31を貼着する。そして、図8に示すように、表面保護テープ31側を研削装置のチャックテーブル24で吸引保持し、研削ユニット26により光デバイスウエーハ11の裏面11bを研削する研削ステップを実施する。
【0023】
研削ユニット26は、回転駆動されるスピンドル28と、スピンドル28の先端に固定されたホイールマウント30と、ホイールマウント30に複数のねじ34により着脱可能に装着された研削ホイール32とを含んでいる。
【0024】
研削ホイール32は、環状基台36の自由端部に複数の研削砥石38が固着されて構成されている。研削砥石38は、例えば粒度の粗いダイアモンド砥粒をビトリファイドボンド等で固めて形成されている。
【0025】
この研削ステップでは、チャックテーブル24を矢印a方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール32をチャックテーブル24と同一方向に、即ち矢印b方向に例えば1000rpmで回転させるとともに、図示しない研削ユニット送り機構を作動して研削砥石38を光デバイスウエーハ11の裏面11bに露出したサファイア基板13に接触させる。
【0026】
そして、研削ホイール32を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りして、サファイア基板13の研削を実施する。サファイア基板13を仕上げ厚みt1まで研削すると、溝27が仕上げ厚みに至る深さを有しているため、図9に示すように、光デバイスウエーハ11は個々の光デバイスチップ35に分割される。研削ステップで使用した研削砥石38が粒度の粗い砥粒を含んだ粗研削砥石であるため、光デバイスチップ33の研削面には微小な凹凸35が形成される。
【0027】
次いで、表面保護テープ31を光デバイスウエーハ11の表面から剥離した後、図10に示すように、光デバイスチップ33を半田39を介して基板の電極41,43にフリップチップ実装し、更に光デバイスチップ33をエポキシ樹脂等の透明樹脂からなる封止材37で封止する。
【0028】
このように封止材37で封止された光デバイスチップ33は、光デバイスチップ33の側面に反射膜29が形成されているため、発光層からの光がチップ33の側面から出射することが防止される。また、裏面側が粗研削されているため、研削で形成された微小凹凸35によってチップ33内で全反射する光を減少させ光の取り出し効率を向上できる。
【0029】
上述した実施形態では、電極露出ステップを実施した後、研削ステップを実施しているが、光デバイスウエーハ11の表面11aに表面保護テープ31を貼着して研削ステップを先に実施し、研削により光デバイスウエーハ11を個々の光デバイスチップ33に分割した後、バイト切削装置を使用して反射膜29を切削除去して電極21,23を露出させる電極露出ステップを実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
11 光デバイスウエーハ
12 バイト切削ユニット
13 サファイア基板
15 エピタキシャル層(発光層)
17 分割予定ライン
18 バイトホイール
19 光デバイス
20 バイト切削刃
21,23 電極
27 溝
29 非導電性反射膜
31 表面保護テープ
32 研削ホイール
33 光デバイスチップ
35 微小凹凸
38 研削砥石
37 封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10