(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、微細パターンを形成する技術として、ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprintlithography;NIL)が注目されている。この技術は、ウェハ上のレジストに、ナノスケールの微細構造を有するモールド(型)を圧力印加することで、レジストに微細パターンを形成するものである。
【0009】
ナノインプリント技術では、生産性を上げるために、原版となるマスターテンプレートを用いて、複製のテンプレート(レプリカテンプレート)を複数作成し、各レプリカテンプレートを異なるナノインプリント装置に装着して使用する。レプリカテンプレートは、マスターテンプレートに正確に対応するように製造される必要がある。このため、レプリカテンプレートを検査する際にも高い検査精度が要求される。
【0010】
レプリカテンプレートは、外周部よりも中央部分が突出したメサ構造を有し、パターンは、突出した部分(メサ部またはランド部と称す。)の上に形成されている。このような構造とすることにより、レジストにパターンを転写する際に、レプリカテンプレートとレジストとの間で不要な接触が起こるのを防ぐことができる。
【0011】
レプリカテンプレートのパターン欠陥を検査する場合、光源からの光によってレプリカテンプレートの面が走査される。このとき、メサ部とそれ以外の部分との間に段差があるために、オートフォーカス機構による焦点制御が追従できなくなるという問題がある。例えば、光が段差やメサ部の端部に当たり、それによって拡散した光が反射して高さ測定回路に入射すると、焦点位置ではない位置に合焦してしまうことがある。あるいは、段差を通過する際には、その部分を像面に合わせ込むために、テーブルの高さが大きく低下するが、このとき、Zテーブル駆動回路による制御が追従できないと、光学系と検査対象面との距離が一定でなくなりパターン像がぼやけてしまう。
【0012】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、パターンが設けられたメサ部を有する試料に対して正確な検査を行うことのできる検査方法および検査装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、パターンが設けられたメサ部を有する試料をテーブルの上に載置する工程と、
光学系を介して前記メサ部に光を照射するとともに前記メサ部で反射した光を受光して、前記メサ部の高さを測定する工程と、
前記メサ部の周縁部の高さから、前記メサ部における高さマップを作成する工程と、
前記メサ部の高さの測定値の目標値からのずれと、前記メサ部に照射される光の焦点位置の経時的な変動量とに基づいて、前記高さマップから求められる前記メサ部の高さを補正する工程と、
前記補正されたメサ部の高さに基づいて前記テーブルの位置を制御しながら、前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する工程とを有することを特徴とする検査方法に関する。
【0015】
本発明の第1の態様では、前記パターンの光学画像を得ながら測定した前記メサ部の高さに基づいて、前記光の焦点位置の経時的な変動量を求めることが好ましい。
【0016】
本発明の第1の態様では、前記光の焦点位置の経時的な変動量を気圧の変化から求めることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様は、パターンが設けられたメサ部を有する試料をテーブルの上に載置する工程と、
光学系を介して前記メサ部に光を照射するとともに前記メサ部で反射した光を受光して、前記メサ部の高さを測定する工程と、
前記メサ部の周縁部の高さから、前記メサ部における高さマップを作成する工程と、
前記メサ部の高さの測定値の目標値からのずれと、前記メサ部に照射される光の焦点位置の経時的な変動量とに基づいて、前記高さマップから求められる前記メサ部の高さを補正する工程と、
前記補正されたメサ部の高さに基づいて前記テーブルの位置を制御しながら、前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する工程とを有することを特徴とする検査装置に関する。
【0018】
本発明の第2の態様では、前記パターンの光学画像を得ながら測定した前記メサ部の高さに基づいて、前記光の焦点位置の経時的な変動量を求めることが好ましい。
【0019】
本発明の第2の態様では、前記光の焦点位置の経時的な変動量を気圧の変化から求めることが好ましい。
【0020】
本発明の第3の態様は、パターンが設けられたメサ部を有する試料をテーブルの上に載置する工程と、
光学系を介して前記メサ部に光を照射するとともに前記メサ部で反射した光を受光して、前記メサ部の高さを測定する工程と、
前記メサ部の周縁部の高さから、前記パターンが設けられた面の水平面からの傾き量を求める工程と、
前記傾き量に基づいて前記テーブルを調整し、前記パターンが設けられた面が水平となるように前記試料を傾かせる工程と、
前記メサ部に照射される光の焦点位置の経時的な変動量を求める工程と、
前記変動量に基づいて前記テーブルの位置を制御しながら、前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する工程とを有することを特徴とする検査方法に関する。
【0021】
本発明の第3の態様では、前記光の焦点位置の経時的な変動量を気圧の変化から求めることが好ましい。
【0022】
本発明の第3の態様において、前記試料は、前記テーブルに設けられた支持部材によって3点で支持され、
前記試料を傾かせる工程は、前記3点の支持部材の高さを調整して行われることが好ましい。
【0023】
本発明の第4の態様は、パターンが設けられたメサ部を有する試料をテーブルの上に載置する工程と、
光学系を介して前記メサ部に光を照射するとともに前記メサ部で反射した光を受光することにより、前記メサ部の周縁部の高さを測定して、前記パターンが設けられた面の水平面からの傾き量を求める工程と、
前記傾き量に基づいて前記テーブルを調整し、前記パターンが設けられた面が水平となるように前記試料を傾かせる工程と、
前記パターンが設けられた領域を短冊状の複数のフレームに分割し、これらのフレームに順に前記光を照射し反射した光を受光することにより前記メサ部の高さを測定しながら、前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する工程とを有し、
前記光学画像を得る工程では、前記フレームの1つにおける前記メサ部の高さの測定値が所定値以上変動している場合に、前記測定値を補正し、この補正値に基づいて前記テーブルの位置を調整した後、次のフレームにおける前記メサ部の高さを測定することを特徴とする検査方法に関する。
【0024】
本発明の第4の態様において、前記試料は、前記テーブルに設けられた支持部材によって3点で支持され、
前記試料を傾かせる工程は、前記3点の支持部材の高さを調整して行われることが好ましい。
【0025】
本発明の第5の態様は、パターンが設けられたメサ部を有する試料をテーブルの上に載置する工程と、
光学系を介して前記メサ部に光を照射するとともに前記メサ部で反射した光を受光して、前記メサ部の高さを測定する工程と、
前記メサ部の周縁部の高さから、前記メサ部における高さマップを作成する工程と、
前記メサ部の高さの測定値の目標値からのずれと、前記メサ部に照射される光の焦点位置の気圧による変動量とに基づいて、前記高さマップから求められる前記メサ部の高さを補正する工程と、
前記補正されたメサ部の高さに基づいて前記テーブルの位置を制御しながら、前記パターンの光学画像を得る工程と、
前記光学画像を基準画像と比較して、これらの差分値が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する工程とを有することを特徴とする検査方法に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、パターンが設けられたメサ部を有する試料に対して正確な検査を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態におけるオートフォーカス装置の構成を示す図である。
【0029】
図1において、試料1は、垂直方向に移動可能なZテーブル2の上に載置されている。Zテーブル2は、XYテーブル3によって水平方向に移動可能である。ここで、試料1は、外周部よりも中央部分が突出したメサ構造を有し、検査対象となるパターンは、矩形状のメサ部(ランド部とも称す。)1aの上に形成されている。例えば、試料1として、ナノインプリント技術で用いられるレプリカテンプレートなどが挙げられる。
【0030】
試料1の上方には、光学系4が配置されている。光学系4において、第1の光源5は、試料1に対して、欠陥検査用の光を照射する。第1の光源5から出射された光は、レンズ6を透過し、ミラー7によって向きを変えた後、レンズ8によって試料1の上に集光される。試料1の下方には、(図示されない)フォトダイオードアレイが配置されており、試料1を透過した光は、フォトダイオードアレイに結像して、後述する光学画像が生成される。
【0031】
ここで、試料1上の検査領域は、短冊状の複数の検査フレームに仮想的に分割され、さらにその分割された各検査フレームが連続的に走査されるように、
図1のXYテーブル3の動作が制御される。
【0032】
また、光学系4において、第2の光源9は、試料1に対して、高さ測定用の光を照射する。第2の光源9から出射された光は、ミラー10によって向きを変えて、試料1の上に照射される。次いで、この光は、試料1上で反射した後、ミラー11によって高さ測定部12に入射する。尚、
図1の光学系4では、第2の光源9から出射された光を試料1上に収束させる投光レンズと、試料1上で反射した光を受けて収束させる受光レンズとを省略している。
【0033】
高さ測定部12は、図示されない受光素子を有している。受光素子としては、例えば、位置検出素子(Position Sensitive Detector;PSD)が用いられる。これは、PIN型フォトダイオードと同様の構造であって、光起電力効果により光電流を測定して光の重心位置計測を実現するものである。
【0034】
高さ測定部12において、受光素子から出力された信号は、I/V変換アンプで電流値から電圧値に変換される。その後、非反転増幅アンプによって適切な電圧レベルに増幅された後、A/D変換部でデジタルデータに変換され、受光素子で検出した光の位置に応じた試料1の表面の高さデータが作成される。
【0035】
高さデータの作成方法の具体例を挙げる。
【0036】
第2の光源9から出射した光は、投光レンズによって試料1の表面上に収束する。収束した光は、試料1の表面で反射して受光レンズに入射した後、PSDに収束する。PSDへスポット光が入射すると、入射位置には光エネルギーに比例した電荷が発生し、均一な抵抗値を持つ抵抗層(P層)を通り、PSD上の2端面に設置された電極へと流れる。このときの電流量は、電極までの距離に反比例して分割されたものとなる。一方の端面に設置された電極からの出力電流をI
1とし、他方の端面に設置された電極からの出力電流をI
2とすれば、スポット光のPSD中心からの重心位置Xは、式(1)で求めることができる。但し、Lは受光面の長さである。PSDの受光強度を示す全光電流は、I
1とI
2の和で得られる。
【0038】
入射した光の重心位置は、2つの微弱な電流変化量を計測することにより求められる。このため、通常は、I/V変換回路を構成し、PSDからの出力電流変化(I
1,I
2)を出力電圧変化(V
1,V
2)として個々に変換して、光の重心位置の計測を行う。このとき、受光素子の暗電流、回路上の漏洩電流およびI/V変換アンプのオフセット電流が製作上の誤差として存在するため、これらの電流量の総和が、回路全体のオフセット電圧(V
10,V
20)として出力電圧に作用する。すなわち、電圧変換後の出力電圧をV
1、V
2とすると、測定される高さZは式(2)で表される。ここで、αは試料高さの測定範囲と、PSD上での光の重心移動範囲とから決定される係数である。
【0040】
但し、オフセット電圧を考慮すると、実際に測定される高さZ'は、式(3)で表される。式(3)において、V
10、V
20は、それぞれオフセット電圧である。
【0042】
試料1においては、メサ部1aとそれ以外の部分との間に段差があるために、オートフォーカス機構による焦点制御が追従できなくなる。そこで、本実施の形態では、メサ部1aの周縁部(例えば、四隅)の高さデータから、水平面、より詳しくは、試料1に照射される光の走査面に対する、メサ部1aのパターン面の傾き量を求める。
【0043】
図2は、メサ部1aのパターン面P1が、水平面に対して一方向に傾いている様子を示す図である。具体的には、同じY位置に対して、+X方向のZ位置が、−X方向のZ位置より高くなっている。そこで、パターン面P1が水平となるように、
図3の矢印の方向に試料面を傾かせる。このようにすることで、光学系4と試料1との距離を一定にして、フォーカス変位量が一定となるようにすることができる。
【0044】
図1において、高さ補正部13は、高さ測定部12からの高さデータに基づいて、水平面からのパターン面の傾き量を求める。高さ制御部14は、高さ補正部13からの傾き量に基づいて、Zテーブル駆動装置15を制御し、メサ部1aの傾き量がゼロとなるように試料1を傾かせる。これにより、
図3に示すように、パターン面P1を水平面に一致させて、光学系4と試料1との距離が一定になるようにすることができる。
【0045】
本実施の形態において、試料1は、Zテーブル2に設けられた支持部材により、3点で支持されることが好ましい。試料1を4点で支持する場合には、支持部材に対して高精度の高さ調整が必要となる。また、高さ調整が不十分であると、試料1が変形するおそれがある。これに対して、3点支持によれば、試料1の変形を最小限に抑えながら、試料1を支持することができる。ここで、支持部材は、例えば、頭面が球状のボールポイントを用いて構成される。3つの支持部材のうちの2つの支持部材は、試料1の四隅のうちの対角でない、隣接する二隅で試料1に接する。3つの支持部材のうちの残る1つの支持部材は、他の2つの支持部材が配置されていない二隅の間の領域に配置される。これらの支持部材の高さを調整することで、パターン面P1を水平面に一致させるように試料1を傾かせることが可能である。
【0046】
ところで、検査工程で気圧や温度が変化すると、メサ部1aに照射される光の焦点位置が変わり、メサ部1aの周縁部の高さデータが変動する。
【0047】
例えば、気圧が変化すると、空気の屈折率が変化する。これにより、物体の結像面、すなわち、焦点位置が変化してフォーカス変位を生じる。このため、上記の方法によって、試料面の傾きを変えてフォーカス変位量を一定にしても、気圧の変化でフォーカス変位量が変動してしまう。そこで、気圧の変化量を測定し、その値から経時的なフォーカス変位量を求めて、メサ部1aの高さを補正する必要がある。
【0048】
図4は、気圧とフォーカス変位の各経時変化を示す一例である。この図から分かるように、気圧変化とフォーカス変位の変化との間には相関性がある。したがって、気圧変化を測定することで、フォーカス変位量を予測することができる。そこで、
図1に示すように、気圧計16の測定結果を気圧情報として高さ補正部13へ送る。高さ補正部13は、送られた気圧情報を基にフォーカス変位量を求める。次いで、このフォーカス変位量を用いて、高さ測定部12からの高さデータを補正する。
【0049】
高さ制御部14は、補正された高さデータを高さ補正部13から受け取る。そして、この高さデータを基に、メサ部1aの高さが目標値となるように、Zテーブル駆動装置15を制御する。尚、目標値は、メサ部1aに照射された光の焦点位置がパターン面に一致する高さとすることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、気圧や温度による高さデータの補正を次の様にして行うこともできる。
【0051】
例えば、欠陥検査用の光をメサ部1a上で走査する際に、高さ測定部12でメサ部1aの高さデータを作成する。このとき、検査フレーム毎に高さデータの変動量を求める。検査フレームの1つにおけるメサ部1aの高さの変動量が所定値以上である場合には、高さ補正部13で高さデータを補正する。Zテーブル駆動装置15は、補正された高さデータに基づいて、メサ部1aの高さが目標値となるようにZテーブル2の位置を調整する。そして、次の検査フレームを走査する。尚、メサ部1a上において、高さ測定の有効エリアは、段差部から所定の距離を置いた内側に設定される。
【0052】
図5は、欠陥検査用の光学画像の取得手順を説明する図である。
【0053】
メサ部1aの検査領域は、
図5に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査フレームに仮想的に分割され、さらにその分割された各検査フレーム20
1、20
2、20
3、20
4、・・・が連続的に走査されるように、
図1のXYテーブル3の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。そして、フォトダイオードアレイに、
図5に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。第1の検査フレーム20
1における画像を取得した後、第2の検査フレーム20
2における画像を今度は逆方向に移動しながら同様に走査幅Wの画像が連続的に入力される。第3の検査フレーム20
3における画像を取得する場合には、第2の検査フレーム20
2における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査フレーム20
1における画像を取得した方向に、XYテーブル3が移動する。尚、
図5の斜線部分は、上記のようにして光学画像の取得が済んだ領域を模式的に表したものである。
【0054】
本実施の形態では、各検査フレーム20
1、20
2、20
3、20
4、・・・について、パターンの光学画像を得ながらメサ部1aの高さを測定し、検査フレーム毎に高さデータの変位量を求める。そして、例えば、検査フレーム20
1におけるメサ部1aの高さの変動量が所定値以上である場合には、高さ補正部13で高さデータを補正する。Zテーブル駆動装置15は、補正された高さデータに基づいて、メサ部1aの高さが目標値となるようにZテーブル2の位置を調整する。そして、次の検査フレーム20
2を走査する。
【0055】
さらに、本実施の形態では、検査を開始する度に、メサ部1aの高さを測定し、その後で検査を行うようにしてもよい。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、フォーカス変位量がパターン面内で一定となるように試料面を傾かせることで、光学系4と試料1との距離が一定になるようにすることができる。
【0057】
また、メサ部1aに照射される光の焦点位置の経時的な変動量、すなわち、経時的なフォーカス変位量を求め、この値に基づいてZテーブル2の位置を制御しながらパターンの光学画像を取得する。この方法によれば、試料1に対して正確な検査を行うことが可能となる。焦点位置の経時的な変動量を気圧の変化から求めれば、気圧変動による検査への影響を低減することができる。
【0058】
あるいは、パターンの光学画像を取得する際に、高さ測定部12でメサ部1aの高さデータを作成し、フレームの1つにおけるメサ部1aの高さの測定値が所定値以上変動している場合には、測定値を補正し、得られた補正値に基づいてZテーブル2の位置を調整した後、次のフレームにおけるメサ部1aの高さを測定する。この方法によれば、検査工程時の温度変化によって、メサ部1aに照射される光の焦点位置が変動しても、試料1に対して正確な検査を行うことが可能となる。
【0059】
図6は、本実施の形態における検査装置100の構成図である。尚、検査装置100は、
図1のオートフォーカス装置を備えているが、欠陥検査のための光学系とXYテーブル3以外の部分については省略している。
【0060】
図6に示すように、検査装置100は、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0061】
光学画像取得部Aは、第1の光源5と、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能なXYテーブル3と、レンズ6,8,104と、ミラー7と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。尚、XYテーブル3は、回転方向(θ方向)にも移動可能な構造とすることができる。
【0062】
制御部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT(Cathode Ray Tube)117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYテーブル3は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータおよびY軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0063】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(設計画素データ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路112に送られて参照画像の生成に用いられる。
【0064】
尚、本実施の形態の検査装置は、
図6に示す構成要素以外に、試料1を検査するのに必要な他の公知要素が含まれていてもよい。例えば、後述するレビュー装置を検査装置自身が有していてもよい。
【0065】
図7は、本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
【0066】
図7に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて試料1に形成されるパターンデータが格納される。ここで、一般に、検査装置は、設計中間データ202を直接読み込めるようには構成されていない。すなわち、検査装置の製造メーカー毎に、異なるフォーマットデータが用いられている。このため、設計中間データ202は、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に検査装置100に入力される。この場合、フォーマットデータ203は、検査装置100に固有のデータとすることができる。
【0067】
図8は、検査工程を示すフローチャートである。尚、以下では、ダイ−トゥ−データベース方式による検査方法を述べる。したがって、検査対象の光学画像と比較される基準画像は、描画データ(設計パターンデータ)をベースに作成された参照画像である。但し、本発明の検査装置は、ダイ−トゥ−ダイ方式による検査方法にも適用可能であり、その場合の基準画像は、検査対象とは異なる光学画像になる。
【0068】
図8に示すように、検査工程は、光学画像取得工程(S1)と、設計パターンデータの記憶工程(S2)と、参照画像生成工程の一例となる展開工程(S3)およびフィルタ処理工程(S4)と、光学画像と参照画像の比較工程(S5)とを有する。
【0069】
<光学画像取得工程>
図8において、S1の光学画像取得工程では、
図6の光学画像取得部Aが、試料1の光学画像(測定データ)を取得する。ここで、光学画像は、設計パターンに含まれる図形データに基づく図形が描画された試料1の画像である。光学画像の具体的な取得方法の一例を、
図1および
図6を用いて説明する。
【0070】
試料1は、Zテーブル2の上に載置される。Zテーブル2は、XYテーブル3によって水平方向に移動可能である。具体的には、XYテーブル3は、
図6の制御計算機110の制御の下、テーブル制御回路114によって駆動され、X方向とY方向に駆動する駆動系によって移動可能となっている。X軸モータとY軸モータには、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYテーブル3の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。また、XYテーブル3上の試料1は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後には自動的に排出される。
【0071】
第1の光源5は、試料1に対して、欠陥検査用の光を照射する。第1の光源5から出射された光は、レンズ6を透過し、ミラー7によって向きを変えた後、レンズ8によって試料1の上に集光される。
【0072】
レンズ8と試料1との距離は、次のようにして一定に保たれる。
【0073】
図1において、第2の光源9は、試料1に対して、高さ測定用の光を照射する。第2の光源9から出射された光は、ミラー10によって向きを変えて、試料1の上に照射される。次いで、この光は、試料1上で反射した後、ミラー11によって高さ測定部12に入射する。
【0074】
高さ測定部12では、試料1の表面の高さデータが作成される。次いで、高さ補正部13において、高さ測定部12からの高さデータに基づいて、水平面、より詳しくは、試料1に照射される光の走査面に対する、メサ部1aのパターン面の傾き量が求められる。次に、高さ制御部14は、高さ補正部13からの傾き量に基づいて、Zテーブル駆動装置15を制御する。
【0075】
より詳しくは、高さ補正部13は、高さ測定部12からの高さデータに基づいて、水平面からのパターン面の傾き量を求める。高さ制御部14は、高さ補正部13からの傾き量に基づいて、Zテーブル駆動装置15を制御し、メサ部1aの傾き量がゼロとなるように試料1を傾かせる。これにより、
図3に示すように、パターン面P1を水平面に一致させて、光学系4と試料1との距離が一定になるようにすることができる。また、検査中においては、例えば、気圧計16の測定結果が高さ補正部13へ送られる。高さ補正部13は、送られた気圧情報を基にフォーカス変位量を求める。次いで、このフォーカス変位量を用いて、高さ測定部12からの高さデータを補正する。高さ制御部14は、補正された高さデータを高さ補正部13から受け取る。そして、この高さデータを基に、メサ部1aの高さが目標値となるように、Zテーブル駆動装置15を制御する。これにより、フォーカス変位量が常に一定となるようにすることができる。
【0076】
図6に示すように、第1の光源5から照射されて試料1を透過した光は、レンズ104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。
【0077】
試料1の検査領域における光学画像の取得手順は、
図5を用いて説明した通りである。そして、
図6のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、画像センサが配置されている。本実施の形態の画像センサとしては、例えば、撮像素子としてのCCDカメラを一列に並べたラインセンサが用いられる。ラインセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。XYテーブル3がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによって試料1のパターンが撮像される。
【0078】
レンズ8と試料1との距離は、気圧や温度によって変化する。したがって、気圧や温度の変化量に応じて、高さデータに基づいて作成されたフォーカス変位量を補正する必要がある。例えば、
図1の気圧計16で測定された気圧情報を高さ補正部13へ送り、それを基に、高さ測定部12からの高さデータを補正する。高さ制御部14は、補正されたフォーカス変位量を高さ補正部13から受け取る。そして、このフォーカス変位量に基づいて、Zテーブル駆動装置15を制御する。これにより、試料1のパターン面を水平面に一致させて、フォーカス変位量が常に一定となるようにすることができる。
【0079】
以上のようにして光学画像取得工程(S1)で得られた光学画像は、
図6の比較回路108へ送られる。
【0080】
<記憶工程>
図8において、S2は記憶工程である。
図6において、試料1のパターン形成時に用いた設計パターンデータは、記憶装置(記憶部)の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。
【0081】
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標、辺の長さ、長方形や三角形などの図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置などを定義した図形データが格納される。
【0082】
さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにフレームに配置される。フレームは、例えば、幅が数百μmであって、長さが試料1のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域である。
【0083】
<展開工程>
図8のS3は展開工程である。この工程においては、
図6の展開回路111が、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された試料1の設計パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。そして、このイメージデータは参照回路112に送られる。
【0084】
図形データとなる設計パターンデータが展開回路111に入力されると、展開回路111は、設計パターンデータを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開する。展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0085】
<フィルタ処理工程>
図8のS4はフィルタ処理工程である。この工程では、
図6の参照回路112によって、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに適切なフィルタ処理が施される。
【0086】
図9は、フィルタ処理を説明する図である。
【0087】
図6のセンサ回路106から得られた光学画像としての測定データは、レンズ104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果などによってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続的に変化するアナログ状態にある。したがって、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計パターンデータにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。このようにして光学画像と比較する参照画像を作成する。
【0088】
<比較工程>
図8のS5は比較工程である。
図6において、センサ回路106からの光学画像データは、比較回路108へ送られる。また、設計パターンデータも、展開回路111および参照回路112により参照画像データに変換されて比較回路108に送られる。
【0089】
比較回路108では,センサ回路106から送られた光学画像と、参照回路112で生成した参照画像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較され、誤差が所定の値を超えた場合にその箇所は欠陥と判定される。次いで、欠陥の座標と、欠陥判定の根拠となった光学画像および参照画像とが、
図7に示す検査結果205として、磁気ディスク装置109に保存される。
【0090】
尚、欠陥判定は、次の2種類の方法により行うことができる。1つは、参照画像における輪郭線の位置と、光学画像における輪郭線の位置との間に、所定の閾値寸法を超える差が認められる場合に欠陥と判定する方法である。他の1つは、参照画像におけるパターンの線幅と、光学画像におけるパターンの線幅との比率が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する方法である。この方法では、参照画像におけるパターン間の距離と、光学画像におけるパターン間の距離との比率を対象としてもよい。
【0091】
以上のようにして得られた検査結果205は、
図7に示すように、レビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。具体的には、検査結果205がレビュー装置500に送られ、オペレータによるレビューによって修正の要否が判断される。このとき、オペレータは、欠陥判定の根拠となった参照画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べてレビューする。
【0092】
レビュー装置500では、欠陥1つ1つの座標が観察できるように、試料1が載置されたテーブルを移動させながら、試料1の欠陥箇所の画像を表示する。また同時に欠陥判定の判断条件や、判定の根拠となった光学画像と参照画像を確認できるよう、レビュー装置500に備えられた計算機の画面上にこれらを並べて表示する。
【0093】
尚、検査装置100にレビュー装置500が備えられている場合には、検査装置100の観察光学系を使って、試料1の欠陥箇所の画像を表示する。また同時に欠陥判定の判断条件や、判定根拠になった光学画像と参照画像などは、
図6に示す制御計算機110の画面を利用して表示される。
【0094】
レビュー工程を経て判別された欠陥情報は、
図6の磁気ディスク装置109に保存される。そして、
図7において、レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、試料1は、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100の外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0095】
実施の形態2.
図10は、本実施の形態におけるオートフォーカス装置の構成を示す図である。このオートフォーカス装置は、検査対象面に段差部を有する試料、例えば、ナノインプリント技術で用いられるテンプレートなどの検査に好適である。
【0096】
図10において、試料1は、垂直方向に移動可能なZテーブル2の上に載置されている。また、Zテーブル2は、XYテーブル3によって水平方向に移動可能である。ここで、試料1は、外周部よりも中央部分が突出したメサ構造を有し、パターンは、矩形状のメサ部1aの上に形成されている。
【0097】
試料1の上方には、光学系4が配置されている。光学系4において、第1の光源5は、試料1に対して、欠陥検査用の光を照射する。第1の光源5から出射された光は、レンズ6を透過し、ミラー7によって向きを変えた後、レンズ8によって試料1の上に集光される。試料1の下方には、(図示されない)フォトダイオードアレイが配置されており、試料1を透過した光は、フォトダイオードアレイに結像して、後述する光学画像が生成される。
【0098】
また、光学系4において、第2の光源9は、試料1に対して、高さ測定用の光を照射する。第2の光源9から出射された光は、ミラー10によって向きを変えて、試料1の上に照射される。次いで、この光は、試料1上で反射した後、ミラー11によって高さ測定部12に入射する。尚、
図10では、第2の光源9から出射された光を試料1上に収束させる投光レンズと、試料1上で反射した光を受けて収束させる受光レンズを省略している。
【0099】
高さ測定部12は、図示されない受光素子を有している。受光素子としては、例えば、位置検出素子(Position Sensitive Detector;PSD)が用いられる。
【0100】
高さ測定部12において、受光素子から出力された信号は、I/V変換アンプで電流値から電圧値に変換される。その後、非反転増幅アンプによって適切な電圧レベルに増幅された後、A/D変換部でデジタルデータに変換され、受光素子で検出した光の位置に応じた試料1の表面の高さデータが作成される。
【0101】
高さ測定部12で作成された高さデータは、制御CPU(Central Processing Unit)21へ送られる。制御CPU21は、検査対象がメサ部を有するか否かによって異なる信号を生成する。この信号は、切替制御信号として、信号切替部22へ送られる。本実施の形態では、試料1がメサ部1aを有するので、制御CPU21からZマップ作成部23へ高さデータが送られるように、制御CPU21から信号切替部22へ切替制御信号が送られる。一方、メサ部を有しない試料を検査する場合には、制御CPU21から高さ制御部24へ高さデータが送られるように、制御CPU21から信号切替部22へ切替制御信号が送られる。
【0102】
制御CPU21からZマップ作成部23へ高さデータが送られると、Zマップ作成部23において、高さデータを基にZマップ(高さマップ)が作成される。
【0103】
図11は、試料1の模式図である。メサ部1aの四隅にある4つの矢印は、高さ測定位置を表しており、また、各矢印の長さの差は、各測定位置における高さデータの差を反映したものとなっている。高さ測定位置は、周縁部であれば四隅に限られるものではなく、測定数も4点に限られるものではない。
【0104】
図10のZマップ作成部23では、高さ測定部12で作成されたメサ部1aの四隅の高さデータを線形補間してZマップを作成する。
図12の黒丸は、高さ測定部12で測定された高さデータである。一方、
図12の白丸は、測定値を基に線形補間によって得られた高さデータである。そして、四隅で測定した高さデータと、線形補間によって得られた高さデータとを結んだ点線がZマップである。
【0105】
図10において、Zマップ作成部23で作成されたZマップのデータは、高さ補正部25へ送られる。また、高さ補正部25へは、制御CPU21から高さデータも送られる。さらに、気圧計16からの気圧情報と、レーザ干渉計26によって測定されたXYテーブル3の位置情報も、それぞれ高さ測定部25へ送られる。
【0106】
図13は、高さ補正部25でのデータの流れを示す図である。高さ補正部25には、
図10のZマップ作成部23からZマップのデータが入力される。Zマップを用いて、高さ補正をすることにより、メサ部1aのパターン面が水平面に対して一方向に傾いている場合だけでなく、パターン面が捩れている場合にも、光学系4と試料1との距離が一定になるようにすることができる。
【0107】
検査工程で気圧や温度が変化すると、メサ部1aに照射される光の焦点位置が経時的に変わり、メサ部1aの四隅の高さデータが変動する。このため、気圧や温度の変化に応じてZマップのデータを補正する必要がある。本実施の形態では、制御CPU21からの高さデータと、気圧計16からの気圧情報によって、Zマップのデータを補正する。具体的には、制御CPU21から、検査フレーム毎に求めた高さデータが入力されると、目標値、例えば、メサ部1aに照射された光の焦点位置がパターン面に一致する高さとの差分(補正量1)が算出される。また、気圧計16から気圧情報が入力されると、メサ部1aに照射される光の焦点位置の気圧による変動量(補正量2)が求められる。より詳しくは、(実施の形態1の
図4で説明したような)気圧とフォーカス変位の関係を基に、気圧計16で測定した気圧から補正量2を求める。
【0108】
上記のようにして得られた補正量1と補正量2を用いて、レーザ干渉計26によって測定されたXYテーブル3の位置情報に対応する、Zマップのデータを補正する。補正された高さデータは、高さ制御部24へ送られる。
【0109】
図10において、高さ制御部24は、高さ補正部25からの補正された高さデータに基づいて、Zテーブル駆動装置27を制御する。これにより、光学系4と試料1との距離が一定に保たれた状態で検査を行うことができる。尚、メサ部を有しない試料を検査する場合には、制御CPU21から高さ制御部24へ高さデータが送られ、高さ制御部24は、この高さデータに基づいてZテーブル駆動装置27を制御する。
【0110】
本実施の形態における検査装置は、
図10のオートフォーカス装置を備えているが、それ以外の構成は、実施の形態1で説明した
図6の検査装置100と同様である。
【0111】
すなわち、本実施の形態の検査装置は、
図6の検査装置100と同様に、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0112】
光学画像取得部Aは、
図6に示す、第1の光源5と、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能なXYテーブル3と、レンズ6,8,104と、ミラー7と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。尚、XYテーブル3は、回転方向(θ方向)にも移動可能な構造とすることができる。
【0113】
制御部Bの動作も
図6の検査装置100と同様である。すなわち、
図6を用いて説明すると、以下の通りとなる。
【0114】
検査装置100全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT(Cathode Ray Tube)117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYテーブル3は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータおよびY軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0115】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(設計画素データ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路112に送られて参照画像の生成に用いられる。
【0116】
尚、本実施の形態の検査装置は、上記以外に、試料1を検査するのに必要な他の公知要素が含まれていてもよい。例えば、レビュー装置を検査装置自身が有していてもよい。
【0117】
図14は、本実施の形態における検査工程を示すフローチャートである。尚、以下では、ダイ−トゥ−データベース方式による検査方法を述べる。したがって、検査対象の光学画像と比較される基準画像は、描画データ(設計パターンデータ)をベースに作成された参照画像である。但し、本発明の検査装置は、ダイ−トゥ−ダイ方式による検査方法にも適用可能であり、その場合の基準画像は、検査対象とは異なる光学画像になる。
【0118】
図14に示すように、検査工程は、光学画像取得工程(S11)と、設計パターンデータの記憶工程(S2)と、参照画像生成工程の一例となる展開工程(S3)およびフィルタ処理工程(S4)と、光学画像と参照画像の比較工程(S5)とを有する。尚、S2〜S5の各工程は、実施の形態1の
図8と同様であるので、説明を省略する。
【0119】
図14において、S11の光学画像取得工程では、試料1の光学画像(測定データ)が取得される。ここで、光学画像は、設計パターンに含まれる図形データに基づく図形が描画された試料1の画像である。
【0120】
実施の形態1で述べた
図5を用いて、欠陥検査用の光学画像の取得手順を説明する。
【0121】
メサ部1aの検査領域は、
図5に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査フレームに仮想的に分割され、さらにその分割された各検査フレーム20
1、20
2、20
3、20
4、・・・が連続的に走査されるように、
図1のXYテーブル3の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。そして、フォトダイオードアレイに、
図5に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。第1の検査フレーム20
1における画像を取得した後、第2の検査フレーム20
2における画像を今度は逆方向に移動しながら同様に走査幅Wの画像が連続的に入力される。第3の検査フレーム20
3における画像を取得する場合には、第2の検査フレーム20
2における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査フレーム20
1における画像を取得した方向に、XYテーブル3が移動する。尚、
図5の斜線部分は、上記のようにして光学画像の取得が済んだ領域を模式的に表したものである。
【0122】
本実施の形態では、各検査フレーム20
1、20
2、20
3、20
4、・・・について、検査フレーム毎に、検査フレームを走査しながらメサ部1aの高さを測定した後、この検査フレームに対応するZマップの高さデータと比較し、Zマップの高さデータからの変位量(差分)を求める。そして、例えば、検査フレーム20
1におけるメサ部1aの高さの変位量(差分)がZマップの高さデータに対して所定値以上である場合には、次の検査フレーム20
2を検査する際に、高さ補正部25で変位量(差分)がゼロになるように、高さデータを補正する。具体的には、Zテーブル駆動装置15により、補正された高さデータに基づいて、メサ部1aの高さが目標値となるようにZテーブル2の位置を調整した後、次の検査フレーム20
2を走査する。
【0123】
次に、光学画像の具体的な取得方法の一例を、
図10および
図13を用いて説明する。
【0124】
図10に示すように、試料1は、Zテーブル2の上に載置される。Zテーブル2は、XYテーブル3によって水平方向に移動可能である。具体的には、XYテーブル3は、
図6と同様に、制御計算機の制御の下、テーブル制御回路によって駆動され、X方向とY方向に駆動する駆動系によって移動可能となっている。XYテーブル3の移動位置は、レーザ干渉計26により測定され、高さ補正部25と位置回路に送られる。
【0125】
第1の光源5は、試料1に対して、欠陥検査用の光を照射する。第1の光源1から出射された光は、レンズ6を透過し、ミラー7によって向きを変えた後、レンズ8によって試料1の上に集光される。
【0126】
レンズ8と試料1との距離は、次のようにして一定に保たれる。
【0127】
図10において、第2の光源9は、試料1に対して、高さ測定用の光を照射する。第2の光源9から出射された光は、ミラー10によって向きを変えて、試料1の上に照射される。次いで、この光は、試料1上で反射した後、ミラー11によって高さ測定部12に入射する。
【0128】
高さ測定部12では、試料1の表面の高さデータが作成される。作成された高さデータは、制御CPU21へ送られる。制御CPU21は、検査対象がメサ部を有するか否かによって異なる信号を生成する。この信号は、切替制御信号として、信号切替部22へ送られる。本実施の形態では、試料1がメサ部1aを有するので、制御CPU21からZマップ作成部23へ高さデータが送られるように、制御CPU21から信号切替部22へ切替制御信号が送られる。一方、メサ部を有しない試料を検査する場合には、制御CPU21から高さ制御部24へ高さデータが送られるように、制御CPU21から信号切替部22へ切替制御信号が送られる。
【0129】
制御CPU21からZマップ作成部23へ高さデータが送られると、Zマップ作成部23において、高さデータを基にZマップが作成される。作成されたZマップのデータは、高さ補正部25へ送られる。また、高さ補正部25へは、制御CPU21から高さデータも送られる。さらに、気圧計16からの気圧情報と、レーザ干渉計26によって測定されたXYテーブル3の位置情報も、それぞれ高さ測定部25へ送られる。
【0130】
図13に示すように、制御CPU21から高さデータが入力されると、目標となる高さデータとの差分(補正量1)が算出される。また、気圧計16から気圧情報が入力されると、気圧による高さの変動量(補正量2)が算出される。そして、得られた補正量1と補正量2を用いて、レーザ干渉計26によって測定されたXYテーブル3の位置情報に対応する、Zマップのデータを補正する。補正データは、高さ制御部24へ送られる。
【0131】
次いで、高さ制御部24は、高さ補正部25からの補正データに基づいて、Zテーブル駆動装置27を制御する。これにより、光学系4と試料1との距離が一定に保たれた状態で検査を行うことができる。
【0132】
図10において、第1の光源5から照射されて試料1を透過した光は、試料1の下方に配置されたフォトダイオードアレイ(図示せず)に光学像として結像する。尚、試料1の検査領域における光学画像の取得手順は、実施の形態1で説明したのと同様である。
【0133】
すなわち、フォトダイオードアレイ上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイによって光電変換され、さらにセンサ回路によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイには、画像センサが配置されている。本実施の形態の画像センサとしては、例えば、撮像素子としてのCCDカメラを一列に並べたラインセンサが用いられる。ラインセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。本実施の形態では、例えば、
図10のXYテーブル3がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによって試料1のパターンが撮像される。
【0134】
以上のようにして光学画像取得工程(S11)で得られた光学画像は、比較回路へ送られる。また、試料1の設計パターンデータも、展開回路および参照回路により参照画像データに変換されて比較回路に送られる。
【0135】
比較回路では,センサ回路から送られた光学画像と、参照回路で生成した参照画像とが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較され、誤差が所定の値を超えた場合にその箇所は欠陥と判定される。次いで、欠陥の座標と、欠陥判定の根拠となった光学画像および参照画像とが、検査結果として磁気ディスク装置に保存される。
【0136】
尚、欠陥判定は、次の2種類の方法により行うことができる。1つは、参照画像における輪郭線の位置と、光学画像における輪郭線の位置との間に、所定の閾値寸法を超える差が認められる場合に欠陥と判定する方法である。他の1つは、参照画像におけるパターンの線幅と、光学画像におけるパターンの線幅との比率が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定する方法である。この方法では、参照画像におけるパターン間の距離と、光学画像におけるパターン間の距離との比率を対象としてもよい。
【0137】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0138】
また、上記各実施の形態では、装置構成や制御手法など、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査方法または検査装置は、本発明の範囲に包含される。