【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例では、以下の油脂等を使用した。
アラキドン酸含有油脂(AA油)(サントリー株式会社製、微生物由来)
アラキドン酸含有量45重量%、リノール酸含量8重量%、α−リノレン酸含量0.4重量%
ボラージ油(Statfold社製)
γ−リノレン酸含22重量%、リノール酸含量39重量%、α−リノレン酸含量0.9重量%
コーン油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量55重量%、α−リノレン酸含量1.1重量%
パーム油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量13重量%、α−リノレン酸含量0.1重量%
大豆油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量54重量%、α−リノレン酸含量7.0重量%
菜種油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量18重量%、α−リノレン酸含量9.8重量%
アラキドン酸(和光純薬株式会社製)
リノール酸(和光純薬株式会社製)
【0037】
(畜肉の脂肪酸組成分析)
使用した挽肉を−35℃で冷凍した。冷凍した挽肉を凍結乾燥し、水分を除去した(72時間)。乾燥した挽肉3gをソックスレー抽出器(ジエチルエーテル150ml、ウォーターバス温度約80℃、4時間循環)で脂質を抽出した。ジエチルエーテルを除去した後、得られた脂質から油分量と脂肪酸組成を分析した。
【0038】
油分量は、得られた脂質の乾燥試料に対する百分率(w/w)で計算した。
【0039】
脂肪酸組成は、得られた脂質を基準油脂分析試験法(2.4.1.2−1996、参3.2.3−1996)に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、ガスクロマトグラフ法により測定をおこなった。
(分離条件)
カラム:キャピラリーカラムDB−23 内径0.25mm×30m(アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:ヘリウム
ヘッド圧:126kPa (線速度35.4cm/sec)
カラム温度:昇温モード 80〜230℃
検出器:FID
【0040】
(試験例1) 鶏肉
市販の鶏肉(若鶏モモ肉)を購入し、脂肪分を可能な限り除去した。脂肪分を除去した鶏肉を自動ひき肉機で二度挽きし、挽肉を得た(アラキドン酸 0.3mg/1g挽肉、リノール酸 4.86mg/1g挽肉、α−リノレン酸 6.68mg/1g肉)。得られた挽肉300gに表1、2で示すように油脂組成物を所定量添加し、よく混合した。イノタマ化学かしこいパック丸型に約15g入れ、電子レンジで加熱調理した(500w、2分、10個)。調理後の挽肉を官能評価した。評価基準を示す。
5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
添加リノール酸量/添加アラキドン酸量(LA/AA)が所定量になるように添加すると、鶏肉の風味が向上した。アラキドン酸含有油脂単独またはコーン油単独では風味向上の効果は低い(比較例2−1)、若しくは、効果がない(比較例2−2、2−3)にもかかわらず、両者を添加した鶏肉では、著しい風味向上が得られた(
参考実施例1−1
、実施例1−2〜1−3)。特に添加リノール酸量/添加アラキドン酸量(LA/AA)の値が5.3以上で風味の向上効果が高く、26.5以上で風味向上の効果がさらに高かった。
一方、添加α−リノレン酸量/添加アラキドン酸量(LN/AA)の値が3.36以上(
参考実施例2−2、2−3)となると、風味向上の効果は少し劣っていた。
【0044】
(試験例2) 豚肉
市販の豚肉(鹿児島産豚肉ヒレブロック)を購入し、脂肪分を可能な限り除去した。脂肪分を除去した豚肉を自動ひき肉機で二度挽きし、挽肉を得た(アラキドン酸 0.18mg/1g挽肉、リノール酸 1.92mg/1g挽肉、α−リノレン酸 検出されず)。得られた挽肉400gに表3、4で示すように組成物を所定量添加し、よく混合した。イノタマ化学かしこいパック丸型に約15g入れ、電子レンジで加熱調理した(500w、2分、10個)。調理後の挽肉を官能評価した。評価基準を示す。
5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
アラキドン酸とリノール酸の重量比が所定量になるように添加すると、豚肉の風味が向上した。特に添加リノール酸量/添加アラキドン酸量の値が5.3以上で風味の向上効果が高く、11.4以上で風味向上の効果がさらに高かった。
【0048】
(試験例3) 牛肉
市販の牛肉(豪州産 ロースステーキ用)を購入し、脂肪分を可能な限り除去した。脂肪分を除去した牛肉を自動ひき肉機で二度挽きし、挽肉を得た(アラキドン酸 検出されず、リノール酸 0.92mg/1g挽肉、α−リノレン酸 検出されず)。得られた挽肉400gに表5、6で示すように組成物を所定量添加し、よく混合した。イノタマ化学かしこいパック丸型に約15g入れ、電子レンジで加熱調理した(500w、2分、10個)。調理後の挽肉を官能評価した。評価基準を示す。
5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
牛肉においても、鶏肉や豚肉同様の風味向上の効果が得られた。また、畜肉のアラキドン酸やその他の脂肪酸、その他の成分の含量の違いがあっても、本発明の風味向上の効果が得られることが判った。
【0052】
(試験例4)
添加した組成物を表7に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0053】
【表7】
【0054】
アラキドン酸の添加量は、畜肉1gあたり27μg以上で風味向上の効果が得られた。添加量が5000μgでは、若干アラキドン酸の獣臭が感じられた。また、添加リノール酸量/添加アラキドン酸量の値が731を超えると充分な風味向上の効果を得ることができなかった(比較例7−2)。
【0055】
(試験例5)
添加した油脂組成物を表8に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0056】
【表8】
【0057】
油脂組成物の添加量は、畜肉1gあたり1.26mg以上で風味向上の効果が得られた。添加量が375.77mgまで、異風味を感じることなく、風味向上の効果が得られた。
【0058】
(試験例6)
添加した組成物を表9に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0059】
【表9】
【0060】
アラキドン酸に代えてγ−リノレン酸でも効果のあることが確認できた。また、アラキドン酸とγ−リノレン酸の両方を含んでいても効果のあることが確認できた。
【0061】
(試験例7) 遊離脂肪酸としての添加
添加した組成物を表10に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0062】
【表10】
【0063】
遊離アラキドン酸や遊離リノール酸であっても、風味向上効果は得られた。また、アラキドン酸はグリセロールエステル体の形態で添加するほうがより好ましいことが判った。
【0064】
(試験例8)
添加した組成物を表11に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0065】
【表11】
【0066】
アラキドン酸を含有する菜種油の場合(比較例11−1)には、充分な風味向上の効果は得られなかった。リノール酸量に対するα−リノレン酸量(0.534)が多いためと考えられる。
【0067】
(試験例9) ハンバーグでの評価
表12の組成物をホバートミキサーで混合し、100gずつに小分けしたものに表13に示すように油脂組成物を所定量添加し、よく混合した。30g/個に成型しホットプレートで焼いて(ホットプレート温度:200℃設定、片面5分×2 計10分)調理後のハンバーグを官能評価した。
評価基準を示す。
5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0068】
【表12】
【0069】
【表13】
【0070】
ハンバーグに対して添加しても、畜肉単体に添加した場合と同様の効果を得ることができた。したがって、畜肉を含有する食品で効果があることがわかった。