特許第6025499号(P6025499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6025499畜肉加工品の風味を向上させる方法、および風味向上剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025499
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】畜肉加工品の風味を向上させる方法、および風味向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/60 20160101AFI20161107BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20161107BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20161107BHJP
【FI】
   A23L13/60 Z
   A23L27/20 D
   !A23L35/00
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-230965(P2012-230965)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-79217(P2014-79217A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】江川 やよい
(72)【発明者】
【氏名】山口 進
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/046353(WO,A1)
【文献】 特開平07−278586(JP,A)
【文献】 特開平09−037736(JP,A)
【文献】 特開2012−135280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/
A23L 27/
A23L 35/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が以上700以下であり、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下であり、かつ、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が1.4以下である組成物を畜肉に添加することを特徴とする畜肉加工品の風味を向上させる方法。
【請求項2】
アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の前記割合(重量比)が20以上200以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アラキドン酸がグリセロールエステル体の形態である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が以上700以下であり、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下であり、かつ、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が1.4以下であることを特徴とする畜肉加工品の風味向上剤。
【請求項5】
アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の前記割合(重量比)が20以上200以下である、請求項4に記載の風味向上剤。
【請求項6】
前記アラキドン酸がグリセロールエステル体の形態である、請求項4又は5に記載の風味向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉加工品の製造方法、ならびに、風味の向上した畜肉加工品を提供する。
【背景技術】
【0002】
アラキドン酸(シス-5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)は長鎖高度(多価)不飽和脂肪酸の一種であり動物の臓器および組織から得られるリン脂質中に存在する。これは必須脂肪酸でありプロスタグランジン、トロンボキサンチンおよびロイコトリエン等の合成の前駆体となる重要な化合物である。
【0003】
このようなアラキドン酸の機能に注目して、従来、アラキドン酸のような長鎖高度不飽和脂肪酸およびそのエステルを、栄養強化および各種生理的機能を付与する目的で油脂および食品等の各種組成物へ添加することが試みられてきた。
【0004】
例えば、特開平10−70992および特開平10−191886にはアラキドン酸をトリグリセリドの形で豊富に含有する微生物由来の食用油脂を未熟児用調製乳、乳児用調製乳、幼児用食品、および妊婦用食品等へ配合することが開示されている。
【0005】
また、他のアラキドン酸の生理機能として、特開平9−13075では、アラキドン酸等の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むグリセリドからなる血中脂質濃度を低減する作用のある油脂が記載されている。また、特開平9−13076では、同じ構成から成る血小板凝集能を抑制する作用のある油脂が記載されている。
【0006】
一方で、食品分野におけるアラキドン酸の利用例として調味料がある。WO2003/094633には、n-6系の長鎖高度不飽和脂肪酸および/またはそのエステル体から成るコク味増強剤が記載され、アラキドン酸等の長鎖高度不飽和脂肪酸および/またはそのエステル体を単独で食品に含有させるか、またはそれを特定の範囲で含有する植物油脂で加熱調理などの酸化処理をした場合に、食品のコク味が増し、味を引き立たす効果が得られることが見出された。しかしながら、所定のアラキドン酸等とリノール酸の比率を有する組成物が、畜肉加工品等の風味を向上することについては開示されていない。
【0007】
また、WO2005/046653には、長鎖高度不飽和脂肪酸および/またはそのエステル体を食品に添加することでコク味増強の他に、食品の味または風味を向上させる様々な機能があることを見出している。実施例には、ハンバーグにアラキドン酸を添加することでコク味のあるハンバーグが得られたことが記載されている。しかしながら、当該効果は限定的であり、過剰の添加量では、香り等の点で問題があった。さらに、所定のアラキドン酸等とリノール酸の比率を有する組成物が畜肉加工品等の風味をさらに向上することについては示唆も開示もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−70992号公報
【特許文献2】特開平10−191886号公報
【特許文献3】特開平9−13075号公報
【特許文献4】特開平9−13076号公報
【特許文献5】WO2003/094633号公報
【特許文献6】WO2005/046653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、食品の風味を改善する成分は報告されているが、その効果は限定的である。本発明では、特定の組成を有する組成物を畜肉に添加することで畜肉加工品の風味を向上させる製造方法、ならびに、風味の向上した畜肉加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が所定値である組成物を畜肉に添加することで、畜肉加工品の風味が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が4以上700以下であり、かつ、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下である組成物を畜肉に添加することを特徴とする畜肉加工品の製造方法である。
【0012】
さらに、前記組成物がアラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が3.1以下であることが好ましい。
【0013】
さらに、畜肉1gに対してアラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量が0.01mg以上10mg以下になるように前記組成物を添加することが好ましい。
【0014】
さらに、前記組成物は油脂組成物であることが好ましく、畜肉1gに対して、0.5mg以上500mg以下添加することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が4以上700以下であり、かつ、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下である組成物を畜肉に添加することを特徴とする畜肉加工品の風味を向上させる方法である。
【0016】
また、本発明は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が4以上700以下であり、かつ、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下であることを特徴とする畜肉加工品の風味向上剤である。
【0017】
また、本発明は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が4以上700以下であり、かつ、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下である組成物を添加した畜肉加工品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、畜肉加工品の風味を向上させる製造方法、ならびに、風味の向上した畜肉加工品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の製造方法で使用する組成物は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸のいずれか1種または2種、および、リノール酸を含有することを特徴とする。好ましくは、アラキドン酸およびリノール酸を含有する。アラキドン酸、γ−リノレン酸及びリノール酸の形態は特に問わないが、アラキドン酸等の安定性の点で、エステル体であることが好ましく、さらに、グリセロールエステル体であることがより好ましい。
【0020】
アラキドン酸としては、遊離のアラキドン酸やアラキドン酸塩等の他に、アラキドン酸を含有する食用油脂、例えば、各種動植物、微生物、藻類等から得られたものを使用することができる。これらは市販されており、当業者は適宜使用することができる。安定性、含有量の点で微生物から得られた油脂が好ましい。
【0021】
γ−リノレン酸としては、遊離のγ−リノレン酸やγ−リノレン酸塩の他に、γ−リノレン酸を含有する食用油脂を使用することができる。γ−リノレン酸を含有する食用油脂としては、例えば、ボラージ油、ブラックカラント油、月見草油、ローズヒップ油、大麻油等が挙げられる。含有量の点でボラージから得られた油脂が好ましい。
【0022】
リノール酸としては、遊離のリノール酸やリノール酸塩の他に、リノール酸を含有する食用油脂を使用することができる。リノール酸を含有する食用油脂としては、例えば、コーン油、パーム油、大豆油、菜種油、紅花油、ひまわり油等が挙げられる。α−リノレン酸含有量の点で、コーン油、パーム油、大豆油が好ましく、コーン油がより好ましい。
【0023】
また、前記組成物には、効果に影響しない範囲で乳化剤、でんぷん等を含有していても良い。また、前記組成物を公知のピックル液等に配合しても良い。
【0024】
前記乳化剤の例としては、通常、食品用に使用される乳化剤であればよく、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレート、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、アルキルグリコシド酸、エリスリトール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等を1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
また、上記組成物は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するリノール酸量の割合(重量比)が4以上700以下であることを特徴とする。より好ましくは9以上であり、さらに好ましくは12以上であり、特に好ましくは20以上である。また、好ましくは500以下であり、より好ましくは200以下であり、さらに好ましくは80以下である。前記割合が低すぎると充分な風味向上が得られない場合がある。
【0026】
さらに、上記組成物は、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が0.4以下であることを特徴とする。より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。また、α−リノレン酸は含まれなくてもよく、リノール酸量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)の下限は0である。
【0027】
また、上記組成物は、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)が3.1以下であることが好ましく、2.0以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましい。また、α−リノレン酸は含まれなくてもよく、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量に対するα−リノレン酸量の割合(重量比)の下限は0である。
【0028】
上記組成物を畜肉に添加する方法には特に制限はなく、一般的に当業者が用いることのできる方法を使用すればよい。例えば、インジェクション、混合、浸漬等であり、使用する畜肉の形態、種類により適時選択すれば良い。また、添加する組成物は、必ずしも1種類である必要はなく、結果的に畜肉に対し、所定量のアラキドン酸、γ−リノレン酸、および、リノール酸を含有するように添加すれば良い。また、前記組成物は、畜肉に対し、加熱等の調理をする前に添加するのが好ましい。
【0029】
ここで、畜肉とは、食用の肉類を意味し、牛、豚、鶏、羊、山羊等の陸上動物の肉、魚等の水産動物の肉を含み、好ましくは陸上動物の肉であり、より好ましくは牛、豚、鶏の肉である。
【0030】
本発明の畜肉加工品とは、畜肉を含む加工品であり、畜肉以外の食材を含んでいても良い。畜肉加工品に含まれる畜肉の量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、上限に限定はなく、例えば、100重量%以下である。また、本発明の畜肉加工品は、主に食品としての用途であるが、ペットフード、飼料等での用途にも用いることができる。
【0031】
上記組成物は、畜肉に1gに対し、アラキドン酸及びγ−リノレン酸の合計量が、好ましくは、0.01mg以上10mg以下、より好ましくは0.02mg以上5mg未満、さらに好ましくは0.03mg以上3mg以下になるように添加する。少なすぎると、畜肉加工品の風味向上の効果が得られない場合があり、多すぎると異風味を感じる場合がある。
【0032】
また、上記組成物が油脂組成物の場合、前記油脂組成物は、アラキドン酸及びγ‐リノレン酸が所定の濃度になるように畜肉1gに対し、好ましくは0.5mg以上500mg以下、より好ましくは0.5mg以上400mg以下、さらに好ましくは1mg以上300mg以下になるように添加する。少なすぎると、畜肉加工品の風味向上の効果が得られない場合があり、多すぎると異風味を感じる場合がある。また、所定量の油脂組成物を添加することで畜肉加工品の生臭み、えぐみが除去され風味が向上する。
【0033】
前記油脂組成物とは、通常食用として用いられる食用油脂を含有する組成物である。食用油脂の含有量は、例えば、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは、50重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上である。特に上限はなく、例えば、100重量%以下である。
【0034】
前記食用油脂としては、効果を損なわない範囲で、例えば、大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、高リノール酸ひまわり油、ミッドオレイックひまわり油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、胡桃油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、えごま油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、パーム油、パームオレイン、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、藻類油、微生物油、牛脂、豚脂及びこれら油脂の水添油、エステル交換油、分別油等から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例では、以下の油脂等を使用した。
アラキドン酸含有油脂(AA油)(サントリー株式会社製、微生物由来)
アラキドン酸含有量45重量%、リノール酸含量8重量%、α−リノレン酸含量0.4重量%
ボラージ油(Statfold社製)
γ−リノレン酸含22重量%、リノール酸含量39重量%、α−リノレン酸含量0.9重量%
コーン油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量55重量%、α−リノレン酸含量1.1重量%
パーム油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量13重量%、α−リノレン酸含量0.1重量%
大豆油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量54重量%、α−リノレン酸含量7.0重量%
菜種油(株式会社J−オイルミルズ社製)
リノール酸含量18重量%、α−リノレン酸含量9.8重量%
アラキドン酸(和光純薬株式会社製)
リノール酸(和光純薬株式会社製)
【0037】
(畜肉の脂肪酸組成分析)
使用した挽肉を−35℃で冷凍した。冷凍した挽肉を凍結乾燥し、水分を除去した(72時間)。乾燥した挽肉3gをソックスレー抽出器(ジエチルエーテル150ml、ウォーターバス温度約80℃、4時間循環)で脂質を抽出した。ジエチルエーテルを除去した後、得られた脂質から油分量と脂肪酸組成を分析した。
【0038】
油分量は、得られた脂質の乾燥試料に対する百分率(w/w)で計算した。
【0039】
脂肪酸組成は、得られた脂質を基準油脂分析試験法(2.4.1.2−1996、参3.2.3−1996)に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、ガスクロマトグラフ法により測定をおこなった。

(分離条件)
カラム:キャピラリーカラムDB−23 内径0.25mm×30m(アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:ヘリウム
ヘッド圧:126kPa (線速度35.4cm/sec)
カラム温度:昇温モード 80〜230℃
検出器:FID
【0040】
(試験例1) 鶏肉
市販の鶏肉(若鶏モモ肉)を購入し、脂肪分を可能な限り除去した。脂肪分を除去した鶏肉を自動ひき肉機で二度挽きし、挽肉を得た(アラキドン酸 0.3mg/1g挽肉、リノール酸 4.86mg/1g挽肉、α−リノレン酸 6.68mg/1g肉)。得られた挽肉300gに表1、2で示すように油脂組成物を所定量添加し、よく混合した。イノタマ化学かしこいパック丸型に約15g入れ、電子レンジで加熱調理した(500w、2分、10個)。調理後の挽肉を官能評価した。評価基準を示す。

5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
添加リノール酸量/添加アラキドン酸量(LA/AA)が所定量になるように添加すると、鶏肉の風味が向上した。アラキドン酸含有油脂単独またはコーン油単独では風味向上の効果は低い(比較例2−1)、若しくは、効果がない(比較例2−2、2−3)にもかかわらず、両者を添加した鶏肉では、著しい風味向上が得られた(参考実施例1−1、実施例1−2〜1−3)。特に添加リノール酸量/添加アラキドン酸量(LA/AA)の値が5.3以上で風味の向上効果が高く、26.5以上で風味向上の効果がさらに高かった。
一方、添加α−リノレン酸量/添加アラキドン酸量(LN/AA)の値が3.36以上(参考実施例2−2、2−3)となると、風味向上の効果は少し劣っていた。
【0044】
(試験例2) 豚肉
市販の豚肉(鹿児島産豚肉ヒレブロック)を購入し、脂肪分を可能な限り除去した。脂肪分を除去した豚肉を自動ひき肉機で二度挽きし、挽肉を得た(アラキドン酸 0.18mg/1g挽肉、リノール酸 1.92mg/1g挽肉、α−リノレン酸 検出されず)。得られた挽肉400gに表3、4で示すように組成物を所定量添加し、よく混合した。イノタマ化学かしこいパック丸型に約15g入れ、電子レンジで加熱調理した(500w、2分、10個)。調理後の挽肉を官能評価した。評価基準を示す。

5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
アラキドン酸とリノール酸の重量比が所定量になるように添加すると、豚肉の風味が向上した。特に添加リノール酸量/添加アラキドン酸量の値が5.3以上で風味の向上効果が高く、11.4以上で風味向上の効果がさらに高かった。
【0048】
(試験例3) 牛肉
市販の牛肉(豪州産 ロースステーキ用)を購入し、脂肪分を可能な限り除去した。脂肪分を除去した牛肉を自動ひき肉機で二度挽きし、挽肉を得た(アラキドン酸 検出されず、リノール酸 0.92mg/1g挽肉、α−リノレン酸 検出されず)。得られた挽肉400gに表5、6で示すように組成物を所定量添加し、よく混合した。イノタマ化学かしこいパック丸型に約15g入れ、電子レンジで加熱調理した(500w、2分、10個)。調理後の挽肉を官能評価した。評価基準を示す。

5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
牛肉においても、鶏肉や豚肉同様の風味向上の効果が得られた。また、畜肉のアラキドン酸やその他の脂肪酸、その他の成分の含量の違いがあっても、本発明の風味向上の効果が得られることが判った。
【0052】
(試験例4)
添加した組成物を表7に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0053】
【表7】
【0054】
アラキドン酸の添加量は、畜肉1gあたり27μg以上で風味向上の効果が得られた。添加量が5000μgでは、若干アラキドン酸の獣臭が感じられた。また、添加リノール酸量/添加アラキドン酸量の値が731を超えると充分な風味向上の効果を得ることができなかった(比較例7−2)。
【0055】
(試験例5)
添加した油脂組成物を表8に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0056】
【表8】
【0057】
油脂組成物の添加量は、畜肉1gあたり1.26mg以上で風味向上の効果が得られた。添加量が375.77mgまで、異風味を感じることなく、風味向上の効果が得られた。
【0058】
(試験例6)
添加した組成物を表9に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0059】
【表9】
【0060】
アラキドン酸に代えてγ−リノレン酸でも効果のあることが確認できた。また、アラキドン酸とγ−リノレン酸の両方を含んでいても効果のあることが確認できた。
【0061】
(試験例7) 遊離脂肪酸としての添加
添加した組成物を表10に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0062】
【表10】
【0063】
遊離アラキドン酸や遊離リノール酸であっても、風味向上効果は得られた。また、アラキドン酸はグリセロールエステル体の形態で添加するほうがより好ましいことが判った。
【0064】
(試験例8)
添加した組成物を表11に示したものに置き換えた以外は、試験例1と同様に試験をおこなった。
【0065】
【表11】
【0066】
アラキドン酸を含有する菜種油の場合(比較例11−1)には、充分な風味向上の効果は得られなかった。リノール酸量に対するα−リノレン酸量(0.534)が多いためと考えられる。
【0067】
(試験例9) ハンバーグでの評価
表12の組成物をホバートミキサーで混合し、100gずつに小分けしたものに表13に示すように油脂組成物を所定量添加し、よく混合した。30g/個に成型しホットプレートで焼いて(ホットプレート温度:200℃設定、片面5分×2 計10分)調理後のハンバーグを官能評価した。
評価基準を示す。

5:無添加より非常に大きく風味が向上している
4:無添加より大きく風味が向上している
3:無添加より風味が向上している
2:無添加よりやや風味が向上している
1:無添加と同等、若しくは、風味が悪い
【0068】
【表12】
【0069】
【表13】
【0070】
ハンバーグに対して添加しても、畜肉単体に添加した場合と同様の効果を得ることができた。したがって、畜肉を含有する食品で効果があることがわかった。