(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のトルク補償器場誘起要素は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向及び前記第1軸に実質的に垂直な第2軸まわりのトルクを与えるようにも構成されている、請求項1に記載の支持部。
前記固定子要素は、追加部分をさらに備え、前記追加部分は、前記複数のトルク補償器場誘起要素の1つのための固定子として主に動作するよう構成されている、請求項3に記載の支持部。
前記複数のトルク補償器場誘起要素は、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場のサイズの空間的変動を制御するよう構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の支持部。
前記複数のトルク補償器場誘起要素は、第1領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている第1場誘起要素と、第2領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている第2場誘起要素と、を備え、前記第1領域は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に垂直な方向に前記第2領域から分離されている、請求項1から6のいずれかに記載の支持部。
前記第1場誘起要素及び前記第2場誘起要素は、前記第1領域における磁場のサイズを前記第2領域における磁場のサイズと異ならせることによって前記第1軸まわりのトルクを与えるよう構成されている、請求項7に記載の支持部。
磁場のサイズは、前記第1領域においては前記隙間における磁場の平均サイズより小さく、前記第2領域においては前記隙間における磁場の平均サイズより大きいよう調整される、請求項8に記載の支持部。
前記第1領域における磁場の変更により前記可動要素に与えられる力の変化は、前記第2領域における磁場の変更により前記可動要素に与えられる力の変化と実質的に等しくかつ反対向きである、請求項9に記載の支持部。
前記重力補償器場誘起要素は、2以上のトルク補償器場誘起要素から形成され、かつ重力方向に作用する動的変動並進力を補正するのみであるよう構成され、前記可動要素の重量は、前記永久磁石が供給する場によって主に支持される、請求項11に記載の支持部。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のある実施の形態は、プログラマブルパターニングデバイスを含みうる装置に関連し、当該デバイスは例えば自己放射コントラストデバイスの1つ又は複数のアレイからなることがある。こうした装置に関する更なる情報は国際公開第2010/032224号、米国特許出願公開第2011/0188016号明細書、米国特許出願第61/473636号、及び米国特許出願第61/524190号にあり、これらの全体が本明細書に援用される。しかし、本発明のある実施の形態は、いかなる形式のプログラマブルパターニングデバイスを使用してもよく、当該デバイスには例えば既に説明したものが含まれる。
【0030】
図1は、リソグラフィ装置又は露光装置の部分の概略側断面図である。この実施形態においては、本装置は、後述するようにXY面で実質的に静止した個別制御可能素子を有するが、そうである必要はない。装置1は、基板を保持する基板テーブル2と、基板テーブル2を最大6自由度で移動させる位置決め装置3と、を備える。基板は、レジストで被覆された基板であってもよい。ある実施の形態においては、基板はウェーハである。ある実施の形態においては、基板は多角形(例えば矩形)の基板である。ある実施の形態においては、基板はガラスプレートである。ある実施の形態においては、基板はプラスチック基板である。ある実施の形態においては、基板は箔である。ある実施の形態においては、本装置は、ロールトゥロール製造に適する。
【0031】
装置1は、複数のビームを発するよう構成されている複数の個別に制御可能な自己放射可能なコントラストデバイス4を備える。ある実施の形態においては、自己放射コントラストデバイス4は、放射発光ダイオード(例えば、発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、高分子LED(PLED))、または、レーザダイオード(例えば、固体レーザダイオード)である。ある実施の形態においては、個別制御可能素子4の各々は青紫レーザダイオード(例えば、三洋の型式番号DL-3146-151)である。こうしたダイオードは、三洋、日亜、オスラム、ナイトライド等の企業により供給される。ある実施の形態においては、ダイオードは、例えば約365nmまたは約405nmの波長を有するUV放射を発する。ある実施の形態においては、ダイオードは、0.5mWないし200mWの範囲から選択される出力パワーを提供することができる。ある実施の形態においては、レーザダイオードの(むき出しのダイの)サイズは、100μmないし800μmの範囲から選択される。ある実施の形態においては、レーザダイオードは、0.5μm
2ないし5μm
2の範囲から選択される発光領域を有する。ある実施の形態においては、レーザダイオードは、5度ないし44度の範囲から選択される発散角を有する。ある実施の形態においては、それらのダイオードは、合計の明るさを約6.4×10
8W/(m
2・sr)以上にするための構成(例えば、発光領域、発散角、出力パワーなど)を有する。
【0032】
自己放射コントラストデバイス4は、フレーム5に配設されており、Y方向に沿って及び/またはX方向に沿って延在してもよい。1つのフレーム5が図示されているが、本装置は
図2に示されるように複数のフレーム5を有してもよい。フレーム5には更に、複数のレンズ12が配設されている。フレーム5、従って、自己放射コントラストデバイス4及びレンズ12はXY面内で実質的に静止している。フレーム5、自己放射コントラストデバイス4、及びレンズ12は、アクチュエータ7によってZ方向に移動されてもよい。それに代えて又はそれとともに、レンズ12はこの特定のレンズに関連するアクチュエータによってZ方向に移動されてもよい。任意選択として、各レンズ12にアクチュエータが設けられていてもよい。
【0033】
自己放射コントラストデバイス4はビームを発するよう構成されていてもよく、投影系12、14、18はそのビームを基板の目標部分に投影するよう構成されていてもよい。自己放射コントラストデバイス4及び投影系が光学コラムを形成する。装置1は、光学コラム又はその一部を基板に対して移動させるためのアクチュエータ(例えばモータ11)を備えてもよい。フレーム8には視野レンズ14及び結像レンズ18が配設されており、そのアクチュエータを用いてフレーム8は回転可能であってもよい。視野レンズ14と結像レンズ18との結合が可動光学系9を形成する。使用時においては、フレーム8は自身の軸10まわりを、例えば
図2に矢印で示す方向に、回転する。フレーム8は、アクチュエータ(例えばモータ)11を使用して軸10まわりに回転させられる。また、フレーム8はモータ7によってZ方向に移動されてもよく、それによって可動光学系9が基板テーブル2に対し変位させられてもよい。
【0034】
内側にアパーチャを有するアパーチャ構造13がレンズ12の上方でレンズ12と自己放射コントラストデバイス4との間に配置されてもよい。アパーチャ構造13は、レンズ12、関連する自己放射コントラストデバイス4、及び/または、隣接するレンズ12/自己放射コントラストデバイス4の回折効果を限定することができる。
【0035】
図示される装置は、フレーム8を回転させると同時に光学コラム下方の基板テーブル2上の基板を移動させることによって、使用されてもよい。自己放射コントラストデバイス4は、レンズ12、14、18が互いに実質的に整列されたときこれらのレンズを通じてビームを放つことができる。レンズ14、18を移動させることによって、基板上でのビームの像が基板の一部分を走査する。同時に光学コラム下方の基板テーブル2上の基板を移動させることによって、自己放射コントラストデバイス4の像にさらされる基板の当該部分も移動する。光学コラム又はその一部の回転を制御し、自己放射コントラストデバイス4の強度を制御し、且つ基板速度を制御するコントローラにより自己放射コントラストデバイス4の「オン」と「オフ」とを高速に切り換える制御をすることによって(例えば、「オフ」であるとき出力がないか、しきい値を下回る出力を有し、「オン」であるときしきい値を上回る出力を有する)、所望のパターンを基板上のレジスト層に結像することができる。
【0036】
図2は、自己放射コントラストデバイス4を有する
図1の装置の概略上面図である。
図1に示す装置1と同様に、装置1は、基板17を保持する基板テーブル2と、基板テーブル2を最大6自由度で移動させる位置決め装置3と、自己放射コントラストデバイス4と基板17とのアライメントを決定し、自己放射コントラストデバイス4の投影に対して基板17が水平か否かを決定するためのアライメント/レベルセンサ19と、を備える。図示されるように基板17は矩形形状を有するが、追加的に又は代替的に円形の基板が処理されてもよい。
【0037】
自己放射コントラストデバイス4はフレーム15に配設されている。自己放射コントラストデバイス4は、放射発光ダイオード、例えばレーザダイオード、例えば青紫レーザダイオードであってもよい。
図2に示されるように、自己放射コントラストデバイス4はXY面内に延在するアレイ21に配列されていてもよい。
【0038】
アレイ21は細長い線であってもよい。ある実施の形態においては、アレイ21は、自己放射コントラストデバイス4の一次元配列であってもよい。ある実施の形態においては、アレイ21は、自己放射コントラストデバイス4の二次元配列であってもよい。
【0039】
回転フレーム8が設けられていてもよく、これは、矢印で図示される方向に回転してもよい。回転フレームには、各自己放射コントラストデバイス4の像を与えるためのレンズ14、18(
図1参照)が設けられていてもよい。本装置には、フレーム8及びレンズ14、18を備える光学コラムを基板に対して回転させるためのアクチュエータが設けられていてもよい。
【0040】
図3は、周辺部にレンズ14、18が設けられている回転フレーム8を高度に概略的に示す斜視図である。複数のビーム、本実施例では10本のビームが、それらレンズの一方へと入射し、基板テーブル2により保持された基板17のある目標部分に投影されている。ある実施の形態においては、複数のビームは直線に配列されている。回転可能フレームは、アクチュエータ(図示せず)によって軸10まわりに回転可能である。回転可能フレーム8の回転の結果として、ビームが一連のレンズ14、18(視野レンズ14及び結像レンズ18)に入射する。一連のレンズの各々に入射してビームは偏向され、それによりビームは基板17の表面の一部分に沿って動く。詳しくは
図4を参照して後述する。ある実施の形態においては、各ビームは、対応する源によって、すなわち自己放射コントラストデバイス、例えばレーザダイオードによって、生成される(
図3には図示せず)。
図3に示される構成においては、ビームどうしの距離を小さくするために、それらビームはともに、あるセグメントミラー30によって偏向されかつ運ばれる。それによって、後述するように、より多数のビームを同一のレンズを通じて投影し、要求解像度を実現することができる。
【0041】
回転可能フレームが回転すると、ビームが連続する複数のレンズへと入射する。このときあるレンズがビームに照射されるたびに、レンズ表面上でビームが入射する場所が移動する。レンズ上のビーム入射場所に依存してビームが異なって(例えば、異なる偏向をもって)基板に投影されるので、(基板に到達する)ビームは後続のレンズが通過するたびに走査移動をすることになる。この原理について
図4を参照して更に説明する。
図4は、回転可能フレーム8の一部を高度に概略的に示す上面図である。第1ビームセットをB1と表記し、第2ビームセットをB2と表記し、第3ビームセットをB3と表記する。ビームセットのそれぞれが、回転可能フレーム8の対応するレンズセット14、18を通じて投影される。回転可能フレーム8が回転すると、複数ビームB1が基板17に投影され、走査移動によって領域A14を走査する。同様に、複数ビームB2は領域A24を走査し、複数ビームB3は領域A34を走査する。回転可能フレーム8の回転と同時に、対応するアクチュエータによって基板17及び基板テーブルが(
図2に示すX軸に沿う方向であってもよい)方向Dに移動され、そうして領域A14、A24、A34におけるビームの走査方向に実質的に垂直に移動される。方向Dの第2のアクチュエータによる移動(例えば、対応する基板テーブルモータによる基板テーブルの移動)の結果、回転可能フレーム8の一連のレンズによって投影されるとき連続する複数回のビーム走査が互いに実質的に隣接するよう投影されて、実質的に隣接する領域A11、A12、A13、A14がビームB1の走査のたびに生じ(
図4に示すように、領域A11、A12、A13は以前に走査され、領域A14は今回走査されている)、ビームB2については領域A21、A22、A23、A24が生じ(
図4に示すように、領域A21、A22、A23は以前に走査され、領域A24は今回走査されている)、ビームB3については領域A31、A32、A33、A34が生じる(
図4に示すように、領域A31、A32、A33は以前に走査され、領域A34は今回走査されている)。このようにして、基板表面の領域A1、A2、A3が、回転可能フレーム8を回転させる間に基板を方向Dに移動させることにより、覆われてもよい。多数のビームを同一のレンズを通じて投影することにより、(回転可能フレーム8をある同一の回転速度とすると)より短い時間で基板全体を処理することができる。レンズ通過のたびに各レンズにより基板を複数のビームが走査するので、連続する複数回の走査に際して方向Dの変位量を大きくすることができるからである。見方を変えると、多数のビームを同一のレンズを通じて基板に投影するとき、ある所与の処理時間における回転可能フレームの回転速度を小さくしてもよいということである。こうして、回転可能フレームの変形、摩耗、振動、乱流などといった高回転速度による影響を軽減してもよい。ある実施の形態においては、
図4に示すように、複数のビームは、レンズ14、18の回転の接線に対してある角度をなして配列されている。ある実施の形態においては、複数のビームは、各ビームが重なるか、又は各ビームが隣接ビームの走査経路に隣接するように配列されている。
【0042】
多数のビームを一度に同一レンズにより投影する態様の更なる効果は、公差の緩和に見ることができる。レンズの公差(位置決め、光学投影など)があるために、連続する領域A11、A12、A13、A14(及び/または領域A21、A22、A23、A24及び/またはA31、A32、A33、A34)の位置には、互いの位置決めにいくらかの不正確さが現れ得る。したがって、連続する領域A11、A12、A13、A14間にいくらかの重なりが必要とされるかもしれない。1本のビームの例えば10%を重なりとする場合、同一レンズに一度にビームが一つであると、同様に10%の係数で処理速度が遅くなるであろう。一方、同一レンズを通じて一度に5本又はそれより多数のビームが投影される状況においては、(上記同様1本のビームについて)同じ10%の重なりが5本又はそれより多数の投影線ごとにあるとすると、重なりの総計は概ね5(又はそれより多数)分の1である2%(又はそれ未満)へと小さくなるであろう。これは、全体的な処理速度を顕著に小さくする効果をもつ。同様に、少なくとも10本のビームを投影することにより、重なりの総計をおよそ10分の1に小さくしうる。したがって、多数のビームを同時に同一レンズにより投影するという特徴によって、基板の処理時間に生じる公差の影響を小さくしうる。それに加えて又はそれに代えて、より大きな重なり(従って、より大きな公差幅)が許容されてもよい。一度に同一レンズにより多数のビームを投影するのであれば、重なりが処理に与える影響が小さいからである。
【0043】
多数のビームを同一レンズを通じて同時に投影することに代えて又はそれとともに、インタレース技術を使用することができるかもしれない。しかしながらそのためには、より厳格にレンズどうしを整合させることが必要になるかもしれない。従って、それらレンズのうち同一レンズを通じて一度に基板に投影される少なくとも2つのビームは相互間隔を有し、本装置は、その間隔の中に後続のビーム投影が投影されるように光学コラムに対して基板を移動させるよう第2アクチュエータを動作させるよう構成されていてもよい。
【0044】
1つのグループにおいて連続するビームどうしの方向Dにおける距離を小さくするために(それによって、例えば方向Dに解像度を高くするために)、それらビームは方向Dに対して、互いに斜めに配列されていてもよい。そうした間隔は、各セグメントが複数ビームのうち対応する1つのビームを反射するセグメントミラー30を光路に設けることによって更に縮小されてもよい。それらセグメントは、それらミラーに入射するビームどうしの間隔よりもミラーで反射されたビームどうしの間隔を狭くするよう配設されている。そうした効果は、複数の光ファイバによっても実現しうる。この場合、ビームのそれぞれが複数ファイバのうち対応する1つのファイバに入射し、それらファイバが、光路に沿って光ファイバ上流側でのビームどうしの間隔よりも光ファイバ下流側でのビームどうしの間隔を狭くするよう配設されている。
【0045】
また、そうした効果は、複数ビームのうち対応する1つのビームを各々が受光する複数の入力を有する集積光学導波路回路を使用して実現されてもよい。この集積光学導波路回路は、光路に沿って集積光学導波路回路の上流側でのビームどうしの間隔よりも集積光学導波路回路の下流側でのビームどうしの間隔を狭くするよう構成されている。
【0046】
基板に投影される像のフォーカスを制御するためのシステムが設けられていてもよい。上述のある構成において、ある光学コラムの部分又は全体により投影される像のフォーカスを調整するための構成が設けられていてもよい。
【0047】
ある実施の形態においては、投影系は、少なくとも1つの放射ビームを、デバイスが形成されるべき基板17の上方にある材料層で形成された基板へと、レーザ誘起材料移動により材料(例えば金属)の滴の局所的な堆積を生じさせるように、投影する。
【0048】
図5を参照するに、レーザ誘起材料移動の物理的なメカニズムが示されている。ある実施の形態においては、放射ビーム200は、実質的に透明な材料202(例えばガラス)を通じて材料202のプラズマ着火に満たない強度で集束されている。表面熱吸収が、材料202を覆う供与材料層204(例えば金属フィルム)から形成される基板に生じる。この熱吸収によって供与材料204が溶ける。また、加熱によって、誘起圧力勾配が前進方向に生じ、これは供与材料層204からの、従って供与構造体(例えばプレート)208からの供与材料滴206の前進加速をもたらす。故に、供与材料滴206は供与材料層204から解放され、デバイスが形成されるべき基板17に向けて当該基板上に(重力の支援の有無によらず)移動される。ビーム200を供与プレート208上の適切な位置に当てることにより、供与材料パターンを基板17上に成膜することができる。ある実施の形態においては、ビームは供与材料層204に集束される。
【0049】
ある実施の形態においては、1つ又は複数の短いパルスを使用して供与材料の輸送が行われる。ある実施の形態においては、これらのパルスは、準一次元の前進加熱及び溶融材料の質量移動を得るための数ピコ秒又は数フェムト秒の長さであってもよい。このような短パルスは材料層204における横方向の熱流れをほとんど又はまったく促進しないので、供与構造体208にほとんど又はまったく熱負荷は生じない。この短パルスは、材料の急速溶融及び前進加速を可能とする(例えば、金属のような材料が気化された場合、スパッタ成膜をもたらす前進方向性は失われるであろう)。短パルスは、その加熱温度より僅かに高く気化温度より低い材料加熱を可能とする。例えばアルミニウムの場合、およそ摂氏900ないし1000度の温度が望ましい。
【0050】
ある実施の形態においては、レーザパルスの使用によって、ある量の材料(例えば金属)が供与構造体208から基板17へと100nmないし1000nmの滴状に転写される。ある実施の形態においては、供与材料は、金属を備え、または実質的に金属からなる。ある実施の形態においては、金属は、アルミニウムである。ある実施の形態においては、材料層204はフィルム状である。ある実施の形態においては、フィルムは他の本体または層に付着されている。上述のように、本体または層はガラスであってもよい。
【0051】
図6は、例示的な構成を示す。ここで、支持部40は、可動要素8を支持部40の下方に非接触に吊下するよう可動要素8に力46を与えるよう構成されている。故に、力46は、可動要素への重力を「補償」する。図示される実施の形態においては、可動要素8は、重力方向に実質的に平行な軸44まわりに回転するよう構成されている。他の実施の形態においては、可動要素8は、他の1つ又は複数の軸まわりに回転し及び/または並進運動をするよう構成されている。
図1から
図4を参照して説明した形式の実施の形態においては、可動要素8は、視野レンズ14及び結像レンズ18を保持するフレーム8に例えば相当してもよい。可動要素8の運動は、(可動要素駆動部と称されうる)モータ11によって駆動される。
【0052】
ある実施の形態においては、支持部40は、固定子要素と、固定子要素に装着される複数の場誘起要素と、を備える(詳細は後述)。場誘起要素は、支持部40の固定子要素と可動要素8との隙間42における磁場を制御する。場誘起要素は、コイル、または電流を支持する他の要素を備えてもよい。コイルまたは他の要素は、巻き付け処理によって固定子要素に装着されてもよい。支持部駆動部95が場誘起要素を駆動するために(例えば、場誘起要素に電流を駆動するために)設けられてもよい。場誘起要素は、固定子要素に、及び、固定子要素に隣接する隙間42に、磁場を誘起する。ある実施の形態においては、隙間は、0.1mmから10mmの範囲にあり、任意的に1mmから5mmの範囲にあり、任意的に約3mmの厚さを有するよう調整される。
【0053】
ある実施の形態においては、場誘起要素は、重力補償器場誘起要素と複数のトルク補償器場誘起要素を備える(これらは互いに分離されていてもよいし、そうでなくてもよい)。重力補償器場誘起要素は、隙間42における磁場を制御することによって、可動要素8に並進力を(例えば重力と反対の方向に)与えるよう構成されている。トルク補償器場誘起要素は、隙間42における磁場を制御することによって、可動要素にトルクを与えるよう構成されている。ある実施の形態においては、重力補償器場誘起要素は、トルク補償器場誘起要素から独立に駆動可能である(例えば、電流を重力補償器場誘起要素に駆動可能である一方、トルク補償器場誘起要素の各々に電流を駆動しないか又は異なる電流を駆動する)。故に、可動要素8の重量を支持する処理を、可動要素8に与えられるトルクを補正する処理と別に行うことができる。
【0054】
ある実施の形態においては、トルク補償器場誘起要素は、重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向(
図6において上向き)に実質的に垂直な第1軸48まわりのトルクを与えるよう構成されている。こうして与えられるトルクは、例えばトルク補償器場誘起要素以外の何らかの源から可動要素8に与えられるトルクを補償してもよい。ある実施の形態においては、トルク補償器場誘起要素は、重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向(
図6において上向き)及び第1軸48に実質的に垂直な第2軸50(
図6において紙面に進入する向き)まわりのトルクを与えるよう構成されている。ある実施の形態においては、第1軸48まわりに与えられるトルクは、第2軸50まわりに与えられるトルクから独立に制御可能である。第1軸48及び第2軸50まわりのトルクを組み合わせて与えることによって、トルク補償器場誘起要素は、重力方向に垂直な任意の軸まわりの任意のトルクを補償することができる。
【0055】
支持部40の場誘起要素は、隙間42における磁場のサイズ(すなわち強さ)を変えることによって可動要素8に力及び/またはトルクを与える。この処理はリラクタンス原理に基づくものとみなされうる。力及び/またはトルクは、固定子要素及び隙間42によって定められる磁気回路に関連付けられる場のエネルギーを小さくするように作用する。ある実施の形態においては、可動要素8は、高い比透磁率(例えば、空気または真空の透磁率より実質的に大きい)を有する材料を備える。比透磁率は例えば、室温にて0.002T未満の場について、10より大きくてもよい。この材料は例えば、軟磁性材料であってもよい。所与の磁場強度についてその磁場に関連付けられる磁場エネルギーは、磁場が空気または真空を横切るときよりも、磁場が高透磁率の材料を横切るときのほうが小さい。隙間42に磁場を印加することによって、力が可動要素8に与えられる。力は(隙間寸法を縮小し、それによって、磁気回路に関連付けられる場のエネルギーを小さくするように)隙間42へと方向付けられている。
【0056】
本書の導入部分で説明したように、永久磁石をローレンツアクチュエータと組み合わせて使用する重力補償器は、永久磁石の磁化における誤差による寄生力が生じがちでありうる。可動要素8上の永久磁石は、回転周波数に相当する周波数またはそれより高周波数の(可動要素8と支持部の静止部分との間に例えば作用する)AC寄生力を導入しうる。支持部の静止部分上の永久磁石は、DC寄生力を導入しうる。この問題は、重力対抗力の少なくとも一部を提供する上述のリラクタンス機構を使用することによって回避または緩和される。加えて、重力方向に垂直な複数軸に一体的トルク補償を提供することによって、支持精度が向上する。永久磁石及びローレンツアクチュエータを用いる構成に対して漂遊磁場が低減される。漂遊磁場は、例えば、渦電流及び/または抵抗加熱を誘起することによって及び/または寄生力を導入することによって、本装置の近接要素を妨害しうる。
【0057】
ある実施の形態においては、単一の固定子要素が重力補償器場誘起要素とトルク補償器場誘起要素の両方に係合する。こうした実施の形態の一例においては、固定子要素は、重力補償器場誘起要素と主に係合する(例えば、重力補償器場誘起要素によって定められる1つ又は複数のループを通る)1つ又は複数の部分と、トルク補償器場誘起要素と主に係合する(例えば、トルク補償器場誘起要素によって定められるループを通る)他の1つ又は複数の部分と、を備える。1つ又は複数の重力補償器固定子部分は、1つ又は複数のトルク補償器固定子部分と一体であってもよい。ある実施の形態においては、複数の分離された固定子要素(例えば、互いに非一体の、及び/または、互いに間隔を空けて配置される複数の固定子要素)が設けられている。こうした実施の形態の一例においては、1つ又は複数の重力補償器固定子要素は、1つ又は複数のトルク補償器固定子要素から分離されている。
【0058】
図7ないし
図9は、重力補償器場誘起要素及びトルク補償器場誘起要素の両方に係合するよう構成されている固定子要素52の一例を図示する。
図7は、固定子要素52の概略底面図である。
図8は、固定子要素52の概略上面図である(隠された界面を破線で図示する)。
図9は、
図7のAA線による概略側断面図である。
【0059】
図示の固定子要素52は、重力補償器場誘起要素のための固定子として主に動作するよう構成されている第1部分54を備える。図示の実施の形態においては、第1部分54は、中空円筒形状を有する。ある実施の形態においては、第1部分54は、他の形状をとる。また、図示の固定子要素52は、4つの追加部分56A,56B,56C,56Dを備える。追加部分56A〜Dは、トルク補償器場誘起要素のための固定子要素として主に動作する。図示の実施の形態においては、追加部分の各々は、(円筒の軸に沿う交線を有する二直交平面で円筒を分割することによって例えば形成される)中空円筒の四半分を備える。図示の実施の形態においては、第1部分54及び追加部分56A〜Dは、固定子要素52の基部58によって1つに接続されている。図示の実施の形態においては、基部58は平坦表面を提供する。基部58の下方で固定子要素52の第1部分54と追加部分56A〜Dとの間の領域はトラフを画定し、その中に重力補償器場誘起要素及び/またはトルク補償器場誘起要素を配置することができる(例えば
図12及び
図13に示される)。円筒穴60は長手方向に固定子要素52を横断する。
【0060】
図9の側断面図からわかるように、固定子要素52の第1部分54は基部58を介して追加部分56A〜Dに一体的に接続されている。この方法によれば、単一の要素を形成することが必要となるだけであるので、製造が容易になる。他の実施の形態においては、第1部分54は、1つ又は複数の追加部分56A〜Dから分離されている。
【0061】
ある実施の形態においては、上述の1つ又は複数の円筒要素は、隙間42の最小寸法に実質的に平行であるように、及び/または、重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に実質的に平行であるように、軸方向に整列されている。ある実施の形態においては、隙間は、固定子要素52の平面によって一方側の境界が定められ、可動要素8の平面によって他方側の境界が定められている。
図9に示される構成においては、隙間42は、平坦かつ中空の円筒の形状(円筒穴60に相当する中心欠落部分をもつ)をとる。
【0062】
ある実施の形態においては、複数のトルク補償器場誘起要素は、固定子要素52と可動要素8との隙間42における磁場のサイズの空間的変動を制御するよう構成されている。磁場のサイズを不均一にすることによって、例えば、重力方向に実質的に垂直な1つ又は複数の軸まわりのトルクを可動要素8に与える(または、他の要素によって与えられるトルクを補償する)ことが可能となる。例えば、ある場誘起要素(例えばコイル)に、隙間の磁場を隙間の第1領域において小さくする(すなわち、重力補償器場誘起要素によって別個に与えられる場に対抗する)ように電流を駆動すると、第1領域における引力は他の領域に対して減少することになる。これにより、可動要素8にトルクが与えられることになる。重力に対抗する力の純変化を回避し、及び/または、与えられるトルクのサイズを増やすために、隙間42の第2領域における場を相当量増やすよう他の場誘起要素に電流を駆動してもよい。ある実施の形態においては、実質的に等しくかつ反対向きの力が第1領域及び第2領域に与えられて、これら二領域の中間に延びる軸まわりのトルクが重力補償に影響しないようにもたらされる。他の実施の形態においては、トルク補償器場誘起要素によって与えられる力は、重力方向に合力を提供するよう意図的に制御される。故に、トルク補償器場誘起要素は、重力補償器場誘起要素によって与えられる力から独立した重力に実質的に平行な力制御を提供するよう構成されることが可能である。ある実施の形態においては、重力補償器場誘起要素に与えられる電流は、実質的に一定に(例えば、可動要素8の公称重量に等しく又は概ね等しい水準に)保たれる一方で、重力に実質的に平行な可動要素に与えられる力の動的変動は、トルク補償器場誘起要素を使用して補正される。
【0063】
図10は、複数のトルク補償器場誘起要素(例えばコイル)を例示する。図示の例においては、4つの場誘起要素66A〜Dが設けられている。4つの場誘起要素66A〜Dは、
図7から
図9に示される幾何形状を有する固定子要素52に装着されることが可能であるように構成されている。具体的には、場誘起要素66Aは、固定子要素52の追加部分56Aに装着される(例えば、巻き付けられる)ことが可能であるように構成され、場誘起要素66Bは、追加部分56Bに装着されるように構成され、場誘起要素66Cは、追加部分56Cに装着されるように構成され、場誘起要素66Dは、追加部分56Dに装着されるように構成されている。図示の実施の形態においては、固定子部分56A〜
Dのまわりに場誘起要素
66A〜Dを装着する(例えば、巻き付ける)ことができるように、開口68A〜Dが固定子要素52に設けられている。例えば、場誘起要素66Aは開口68A及び68Bを通り、場誘起要素66Bは開口68B及び68Cを通り、場誘起要素66Cは開口68C及び68Dを通り、場誘起要素66Dは開口68D及び68Aを通ることがわかるであろう。ある実施の形態においては、開口68A〜Dから固定子部分56A〜Dの前縁へと(すなわち、
図9における上向きに)延在するスロット70が設けられている。故にスロット70は、開口が材料の閉じた輪で囲まれないことを確実にすることに役立つ。スロットは、渦電流を低減し、及び/または、固定子要素52にコイル66A〜Dを装着する(例えば巻き付ける)処理を容易にするかもしれない。
【0064】
図10の構成においては、第1軸48まわりのトルクは、場誘起要素66Aの電流72を場誘起要素66Cの電流72と反対向きに流すよう調整することによって、与えることができる。こうして、場誘起要素66Aの電流72によって生成される(図示の例では紙面から出る)磁場79は、場誘起要素66Cの電流72によって生成される(図示の例では紙面に入る)磁場77と方向が反対になる。よって、場誘起要素66Aの直下の隙間42の領域における磁場の変化は、場誘起要素66Cの直下の隙間42の領域における磁場の変化と逆方向である。その合力が第1軸48まわりのトルクを与える。第2軸50まわりのトルクは、場誘起要素66Bの電流72を場誘起要素66Dの電流72と反対向きに流すよう調整することによって、与えることができる(場誘起要素66B及び66Dそれぞれについての磁場寄与79及び77を参照せよ)。
【0065】
ある実施の形態においては、トルク補償器場誘起要素は、例えば4つではなく、3つの場誘起要素のみを備える。この形式の例示的な実施の形態においては、3つの場誘起要素は、円筒が4つの部分ではなく3つの部分に分割される(よって、各々が90°ではなく120°にわたり延在する)ことを除いて、
図10のものと同様に構成される。3つの場誘起要素によって与えられる力を適切に組み合わせることによって、必要に応じて、第1軸48及び第2軸50まわりのトルクを選択的に与えることが可能である。他の実施の形態においては、トルク補償器場誘起要素は、5以上の場誘起要素を備える。
【0066】
ある実施の形態においては、1つ又は複数の重力補償器場誘起要素が、トルク補償器場誘起要素とは別個に設けられている。ある実施の形態においては、重力補償器場誘起要素は、トルク補償器場誘起要素から切り離して駆動可能である。
【0067】
図11は、例示的な重力補償器場誘起要素80の概略上面図である。矢印82は、場誘起要素80に流れる電流の方向の例を示す。図示の例においては、結果として得られる場81は、紙面に入るよう方向付けられ、かつ、要素80の径方向内側の固定子要素54の部分(参考に破線54を示す)に大部分が分布するであろう。場誘起要素80は、図示の例においては円筒であり、
図7から
図9に示す形式の固定子要素52の基部58の下方でトラフ内に装着可能であるよう寸法が定められている。装着されたときこの円筒場誘起要素80の軸は、固定子要素52の円筒部分54の軸に一致する。電流82のサイズを増すことで、隙間42における磁場のサイズが増し、固定子要素52と可動要素8との間の引力(すなわち、リラクタンスに基づく重力対抗力)のサイズが増す。電流82のサイズを減らすことで、引力のサイズが減る。
【0068】
図12は、
図7から
図9に示す固定子要素とそこに装着された
図10及び
図11に示す場誘起要素の概略底面図である。
図13は、
図12の組立体のAA破線に沿う概略側断面図である。理解されるように、この例示的な実施の形態においては、2つの円筒場誘起要素80が設けられている。2つの円筒場誘起要素80は軸方向に整列されている。2つの円筒場誘起要素は、トルク補償器場誘起要素66A〜Dの径方向内側部分を挟む。示される断面図においては、トルク補償器場誘起要素66A及び66Dの部分のみが見える(部分66A’及び66D’は、紙面に入る方向に湾曲していくトルク補償器場誘起要素の径方向内側表面を表す)。ある実施の形態においては、単一の場誘起要素80が設けられ、または、3以上の場誘起要素80が設けられる。ある実施の形態においては、2層以上のトルク補償器場誘起要素66A〜Dが設けられ、例えば、1つ又は複数の重力補償器場誘起要素を挟む。
【0069】
図14は、永久磁石96が固定子要素92に組み込まれている実施の形態を示す。こうした固定子要素92を用いる支持部は、ハイブリッドリラクタンスアクチュエータとも称される。図示の例においては、固定子要素92の幾何形状及び寸法は、
図7から
図9、
図12、及び
図13に示す固定子要素52の幾何形状及び寸法と同じである。相違点は、固定子要素92を形成する材料の一部が永久磁石材料を備える一方、固定子要素52においては固定子要素の全体が軟磁性材料で形成されていることである。よって固定子要素92は、
図10及び
図11に示す幾何形状を有する重力補償器場誘起要素及びトルク補償器場誘起要素を受け入れるのに適する。ある実施の形態においては、永久磁石をもつ固定子要素は、
図7から
図9、
図12、及び
図13に示す固定子要素52と異なる幾何形状を有してもよい。
【0070】
図14の実施の形態においては、永久磁石96は、中空円筒形状を有する。部分96’は、紙面に入る方向に湾曲する(凹む)磁石96の部分を表す。
図7から
図9、
図12、及び
図13に示す固定子要素52に対して、永久磁石96は、固定子要素部分54の一部を概念上置き換えたものとみなされうる。ある実施の形態においては、永久磁石96は、固定子要素
92と可動要素8との隙間42における場に寄与することによって可動要素8への重力に対抗する力98の少なくとも一部を提供するよう構成されている。ある実施の形態においては、永久磁石によって提供される力の当該一部は、必要とされる力の大部分である(ある実施の形態においては、例えば、総必要量1100Nのうち900Nである)。故に、重力補償器場誘起要素80に提供される電流が低減されうる。ある実施の形態においては、重力補償器場誘起要素80は、可動要素8を支持する力を微調整し、及び/または、可動要素8に与えられる重力方向に実質的に平行な力及び/または可動要素8の重力方向に実質的に平行な位置の動的変動を補正するために必要とされるのみである。ある実施の形態においては、別個の重力補償器場誘起要素が設けられていない。こうした実施の形態の一例においては、重力補償の微調整(または、力または位置の動的変動の補正)は他の手段によって行なわれる。ある実施の形態においては、重力補償の微調整(または、力または位置の動的変動の補正)は、トルク補償器場誘起要素及び重力補償器場誘起要素の両方として動作する複数の場誘起要素によって実行される。例えば、
図10に示す形式の場誘起要素は、重力補償の微調整に使用することが可能であり、従って、重力補償器場誘起要素及びトルク補償器場誘起要素の両方であるとみなされるかもしれない。
【0071】
永久磁石96が存在することで、重力対抗力を提供する場誘起要素を駆動する電流のサイズを小さくしうる。電流に関連する電気損失及び/または熱負荷が従って低減される。加えて、リラクタンス原理に関連する負の剛性は、永久磁石を持たない固定子要素を有する支持部と比べて低下する。なぜなら、軟磁性材料の代わりに磁気回路に永久磁石があると、隙間寸法の関数としての磁場変動(力変動)が相当に小さいからである。これは、永久磁石材料の比透磁率(典型的には1.05程度であり空気と同じくらい)が軟磁性材料の比透磁率よりも相当に小さいという事実に基づく。よって隙間寸法の変動による系の磁気抵抗の変動は、固定子要素が(永久磁石を有さず)完全に軟磁性材料で形成される実施の形態に比べて、比較的小さくなる。
【0072】
重力に実質的に平行な合力の動的変動を補正するためだけに重力補償器場誘起要素を使用することによって、この処理の精度は重力補償器場誘起要素が可動要素の全重量を補償するとともに動的力変動を補正しなければならない場合に比べて向上され、電子機器の簡素化も可能となる(例えば、電子機器が扱うことを要する最大出力が相当に小さくなるので、高出力の電子機器は必要とされないかもしれない)。
【0073】
また、永久磁石を備える固定子要素を使用することで、固定子要素に装着される場誘起要素(例えば、重力補償器場誘起要素のように並進力を与えるためだけに構成された場誘起要素、または、並進力またはトルクの一方または両方を選択的に与えるよう構成された場誘起要素)に電流を駆動することにより生成される力のサイズとの間の非線形関係が除去され(またはその大半が低減され)、従って可動要素に作用する動的力の制御が例えば容易になる。永久磁石の追加は、システムをリラクタンスのみに基づくものからハイブリッドシステムへと効果的に変化させる。純粋なリラクタンスシステムにおいては、力及び/またはトルクのサイズは電流の二乗にほぼ比例する一方、ハイブリッドシステムにおいては力及び/またはトルクのサイズはほぼ電流に比例する(二乗ではない)。
【0074】
電流と補正力(例えば、ACの又は変動する力)とのほぼ線形の関係は、永久磁石が使用されないが重力の全部または大半を補償するために主たる場誘起要素が使用される場合であって補正力を提供するために追加の場誘起要素(例えば、1つ又は複数のトルク補償器場誘起要素)が使用され又は主たる場誘起要素への電流に重ね合わされる追加の電流が使用される場合にも、補正力/トルクが大きすぎない(例えば、重力を補償するのに使用される力の少なくとも80%より補正力が小さい)限り、適用することができる。
【0075】
上述のように、永久磁石は、磁化誤差、例えば磁化方向の誤差を有しがちである。永久磁石96を使用するある実施の形態においては、こうした誤差は、トルク補償器場誘起要素の適切な駆動によって少なくとも部分的に補償される。それとともに又はそれに代えて、場均一化要素94が、固定子要素と可動要素8との隙間42と永久磁石96との間に設けられている。
図14に示す例においては、場均一化要素94は、永久磁石96の中空円筒形状に相当する中空円筒形状を有する(円筒軸に沿って見るとき実質的に同一の寸法及び/または幾何形状を有する)。ある実施の形態においては、場均一化要素94は、高い比透磁率の材料、例えば軟磁性材料を備える。ある実施の形態においては、場均一化要素94は、軟磁性材料のプレートを備える。軟磁性材料は容易に磁化されるがその磁化を保持しない。軟磁性材料の例には、強磁性材料(例えば鉄及びニッケルの合金に基づく)、または、フェリ磁性材料(例えばセラミック酸化物(キュリー温度より高温)に基づく)が含まれる。ある実施の形態においては、場均一化要素は、(室温にて0.002T未満の印加磁場について)10以上の比透磁率を有する。
【0076】
ある実施の形態においては、場均一化要素94は、永久磁石96の磁化における誤差、例えば位置合わせ誤差の効果を低減する。ある実施の形態においては、場均一化要素94の材料は、永久磁石を出る磁力線がより均一な間隔を有し及び/または固定子要素と可動要素8との隙間42とより垂直になるように、それら磁力線を方向付けるものである。高透磁率材料がこの機能を促進するのは、磁力線がこうした材料から垂直に出る傾向をもつからである。従って永久磁石が存在するとしても、不所望の寄生力を低減し又は最小化することができる。
【0077】
あるデバイス製造方法によると、パターンが投影された基板から、ディスプレイ、集積回路、又はその他の任意の品目等のデバイスが製造されうる。
【0078】
本書ではICの製造におけるリソグラフィ装置又は露光装置の使用を例として説明しているが、本明細書に説明したリソグラフィ装置又は露光装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。本書に言及された基板は露光前または露光後において、例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は、処理された多数の層を既に含む基板をも意味し得る。
【0079】
「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学部品、回折光学部品、反射光学部品、磁気的光学部品、電磁気的光学部品、静電的光学部品を含む各種の光学部品のうちいずれか1つ、またはこれらの組み合わせを指し示してもよい。
1.可動要素のための支持部であって、
固定子要素と、
前記固定子要素に装着された重力補償器場誘起要素であって、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって、並進力を前記可動要素に与えるよう構成されている重力補償器場誘起要素と、
前記固定子要素に装着された複数のトルク補償器場誘起要素であって、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に実質的に垂直な第1軸まわりのトルクを前記可動要素に与えるよう構成されている複数のトルク補償器場誘起要素と、を備える支持部。
2.前記複数のトルク補償器場誘起要素は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向及び前記第1軸に実質的に垂直な第2軸まわりのトルクを与えるようにも構成されている、項1に記載の支持部。
3.前記固定子要素は、前記重力補償器場誘起要素のための固定子として主に動作するよう構成されている第1部分を有する、項1または2に記載の支持部。
4.前記固定子要素は、追加部分をさらに備え、前記追加部分は、前記複数のトルク補償器場誘起要素の1つのための固定子として主に動作するよう構成されている、項3に記載の支持部。
5.前記固定子要素の第1部分は、前記固定子要素の追加部分と一体である、項4に記載の支持部。
6.1つ又は複数の場誘起要素が電流を伝導するコイルを備える、項1から5のいずれかに記載の支持部。
7.前記複数のトルク補償器場誘起要素は、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場のサイズの空間的変動を制御するよう構成されている、項1から6のいずれかに記載の支持部。
8.前記複数のトルク補償器場誘起要素は、第1領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている第1場誘起要素と、第2領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている第2場誘起要素と、を備え、前記第1領域は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に垂直な方向に前記第2領域から分離されている、項1から7のいずれかに記載の支持部。
9.前記第1場誘起要素及び前記第2場誘起要素は、前記第1領域における磁場のサイズを前記第2領域における磁場のサイズと異ならせることによって前記第1軸まわりのトルクを与えるよう構成されている、項8に記載の支持部。
10.磁場のサイズは、前記第1領域においては前記隙間における磁場の平均サイズより小さく、前記第2領域においては前記隙間における磁場の平均サイズより大きいよう調整される、項9に記載の支持部。
11.前記第1領域における磁場の変更により前記可動要素に与えられる力の変化は、前記第2領域における磁場の変更により前記可動要素に与えられる力の変化と実質的に等しくかつ反対向きである、項10に記載の支持部。
12.前記複数のトルク補償器場誘起要素は、第3領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている第3場誘起要素と、第4領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている第4場誘起要素と、をさらに備え、前記第3領域及び前記第4領域は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に垂直な方向に互いに分離されかつ前記第1領域及び前記第2領域のそれぞれから分離されている、項8から11のいずれかに記載の支持部。
13.前記第3場誘起要素及び前記第4場誘起要素は、前記第3領域における磁場のサイズを前記第4領域における磁場のサイズと異ならせることによって前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向及び前記第1軸に実質的に垂直な第2軸まわりのトルクを与えるよう構成されている、項12に記載の支持部。
14.前記複数のトルク補償器場誘起要素は、各々が前記隙間の異なる領域における磁場のサイズを制御するよう構成されている3つの場誘起要素を備え、前記3つの場誘起要素は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に垂直でありかつ互いに垂直である第1軸及び第2軸の一方または両方まわりのトルクを選択的に与えるよう個別に制御可能である、項1から11のいずれかに記載の支持部。
15.前記固定子要素は、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を提供するよう構成されている永久磁石を備える、項1から14のいずれかに記載の支持部。
16.前記永久磁石によって提供される磁場は、前記重力補償器場誘起要素によって提供される磁場と前記隙間において実質的に平行である、項15に記載の支持部。
17.前記固定子要素と前記可動要素との隙間と前記永久磁石との間に場均一化要素をさらに備える、項15または16に記載の支持部。
18.前記場均一化要素は、軟磁性材料を備える、項17に記載の支持部。
19.前記重力補償器場誘起要素は、2以上のトルク補償器場誘起要素から形成され、かつ重力方向に作用する動的変動並進力を補正するのみであるよう構成され、前記可動要素の重量は、前記永久磁石が供給する場によって主に支持される、項15から18のいずれかに記載の支持部。
20.前記場誘起要素に電流を駆動する支持部駆動部であって、前記可動要素に並進力を提供するのみであるよう前記重力補償器場誘起要素を駆動するとともに、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に実質的に平行に前記可動要素に与えられる合力においてトルク及び動的変動の両方を補償するよう前記複数のトルク補償器場誘起要素を駆動するように構成されている支持部駆動部をさらに備える、項1から18のいずれかに記載の支持部。
21.前記場誘起要素に電流を駆動する支持部駆動部をさらに備える、項1から19のいずれかに記載の支持部。
22.可動要素と、
前記可動要素を支持するよう構成されている項1から21のいずれかに記載の支持部と、を備える支持システム。
23.前記可動要素の運動を駆動するよう構成されている可動要素駆動部をさらに備える、項22に記載のシステム。
24.前記可動要素駆動部は、前記可動要素に回転運動を伝えるよう構成されている、項23に記載のシステム。
25.前記回転運動は、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に実質的に平行な方向まわりである、項24に記載のシステム。
26.前記可動要素駆動部は、前記可動要素に並進運動を伝えるよう構成されている、項23から25のいずれかに記載のシステム。
27.前記可動要素は、非接触に支持される、項22から26のいずれかに記載のシステム。
28.前記支持部は、前記可動要素への重力に実質的に等しい力を与えるよう構成されている、項22から27のいずれかに記載のシステム。
29.前記可動要素は、前記支持部の下方に非接触に吊下される、項22から28のいずれかに記載のシステム。
30.複数の放射ビームの各々を目標物に投影するよう構成されている投影系であって、静止要素及び可動要素を備える投影系と、
前記可動要素を支持するよう構成されている項1から21のいずれかに記載の支持部と、を備える露光装置。
31.複数の放射ビームの各々を目標物に投影する投影系であって、静止要素及び可動要素を備える投影系と、
固定子要素と、
前記固定子要素に装着された重力補償器場誘起要素と、
前記固定子要素に装着された複数のトルク補償器場誘起要素と、を備え、
前記重力補償器場誘起要素は、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって、並進力を前記可動要素に与えるよう構成され、
前記複数のトルク補償器場誘起要素は、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって、前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に垂直な第1軸まわりのトルクを前記可動要素に与えるよう構成されている露光装置。
32.前記可動要素は、前記静止要素に対し回転するよう構成されている、項30または31に記載の装置。
33.前記複数の放射ビームを提供するよう構成されているプログラマブルパターニングデバイスをさらに備える、項30から32のいずれかに記載の装置。
34.前記プログラマブルパターニングデバイスは、複数の自己放射コントラストデバイスを備える、項33に記載の装置。
35.可動要素を支持する方法であって、
固定子要素に装着された重力補償器場誘起要素を、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって並進力を前記可動要素に与えるよう駆動することと、
前記固定子要素に装着された複数のトルク補償器場誘起要素を、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に実質的に垂直な第1軸まわりのトルクを前記可動要素に与えるよう駆動することと、を備える方法。
36.投影系は静止要素及び可動要素を備え、複数の放射ビームの各々を目標物に投影することと、
固定子要素に装着された重力補償器場誘起要素を、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって並進力を前記可動要素に与えるよう駆動することと、
前記固定子要素に装着された複数のトルク補償器場誘起要素を、前記固定子要素と前記可動要素との隙間における磁場を制御することによって前記重力補償器場誘起要素によって与えられる並進力の方向に実質的に垂直な第1軸まわりのトルクを前記可動要素に与えるよう駆動することと、を備えるデバイス製造方法。
【0080】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、以下に述べる請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、当業者には明らかなことである。