特許第6026434号(P6026434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6026434熱可塑性樹脂微細発泡反射シート、光反射板、バックライトパネルおよび発泡反射シートの製造方法
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  • 特許6026434-熱可塑性樹脂微細発泡反射シート、光反射板、バックライトパネルおよび発泡反射シートの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026434
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂微細発泡反射シート、光反射板、バックライトパネルおよび発泡反射シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20161107BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161107BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G02B5/08 A
   B32B27/00 N
   B32B27/36 102
【請求項の数】27
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-553543(P2013-553543)
(86)(22)【出願日】2013年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2013071258
(87)【国際公開番号】WO2014024882
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-177612(P2012-177612)
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】池田 英行
(72)【発明者】
【氏名】稲森 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】恩田 将樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 和寛
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−230138(JP,A)
【文献】 特開2010−241946(JP,A)
【文献】 特開2007−187795(JP,A)
【文献】 特開平4−239540(JP,A)
【文献】 特開2009−175522(JP,A)
【文献】 特開2010−222566(JP,A)
【文献】 特開2012−58610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00− 5/136
B32B27/00
B29C47/06
F21V 7/22
B32B 5/18
B32B27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層と、該発泡層を挟んで上下に、150μm以下で30μm以上の厚みの非発泡層を有する熱可塑性樹脂微細発泡反射シートであって、
前記非発泡層の少なくとも一方が、非発泡の機能付与層と該機能付与層とは異なる非発泡層を含む非発泡層であり、
前記機能付与層中の樹脂の50質量%以上が前記発泡層と同じ熱可塑性樹脂によって構成され、
前記発泡層に前記上下の非発泡層が、互いに接した一体構造であって、
前記発泡層が、平均気泡径10μm以下0.5μm以上で、かつ気泡数密度が1×10個/mm以上1.0×1012個/mm以下の均一な気泡構造を有する熱可塑性樹脂微細発泡体であることを特徴とする熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項2】
前記非発泡層の厚みが150μm以下で50μm以上であり、前記機能付与層の厚みが30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項3】
前記機能付与層が、前記非発泡層の最外層であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項4】
前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径10μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項5】
前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径5.0μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項6】
前記機能付与層が、帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤を含有する帯電防止層もしくは紫外線吸収層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項7】
前記帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤が、前記機能付与層のみに含有するか、または前記機能付与層の少なくとも1層に含有する帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤の含有量が、前記発泡層および前記機能付与層とは異なる非発泡層に含有する含有量より多いことを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項8】
前記上下の非発泡層がいずれも前記機能付与層を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項9】
前記発泡層が、気泡化核剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項11】
550nmの波長での反射率(酸化アルミニウム製標準白色板基準)が98%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項12】
350nmの波長での反射率(酸化アルミニウム製標準白色板基準)が30%以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項13】
表面固有抵抗値が1×1012Ω以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートからなる光反射板。
【請求項15】
請求項14に記載の光反射板を有することを特徴とするバックライトパネル。
【請求項16】
発泡反射シートの製造方法であって、該発泡反射シートが請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートであり、かつ下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする発泡反射シートの製造方法。
(a)発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層とからなる少なくとも3層構造の樹脂シートであって、該非発泡層の少なくとも一方が機能付与層を含み、該3層構造の樹脂シートを、共押出による一体成形により調製する工程
(b)該樹脂シートに不活性高圧ガスを含浸させる工程
(c)該樹脂シートを加熱して、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層を発泡させる工程
【請求項17】
発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂100質量部に対して気泡化核剤が、0.1〜10質量部配合することを特徴とする請求項16に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項18】
発泡反射シートの製造方法であって、
前記発泡反射シートが、発泡層と、該発泡層を挟んで上下に、150μm以下で30μm以上の厚みの非発泡層を有する熱可塑性樹脂微細発泡反射シートであり、該非発泡層の少なくとも一方が、非発泡の機能付与層と該機能付与層とは異なる非発泡層を含む非発泡層であり、該機能付与層中の樹脂の50質量%以上が該発泡層と同じ熱可塑性樹脂によって構成され、該発泡層が、平均気泡径10μm以下0.5μm以上で、かつ気泡数密度が1×10個/mm以上1.0×1012個/mm以下の均一な気泡構造を有する熱可塑性樹脂微細発泡体であり、
前記発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、前記非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層からなる少なくとも3層構造の樹脂シートを一体成形により調製する工程を含むことを特徴とする発泡反射シートの製造方法。
【請求項19】
前記非発泡層の厚みが150μm以下で50μm以上であり、前記機能付与層の厚みが30μm以下であることを特徴とする請求項18に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項20】
前記機能付与層が、前記非発泡層の最外層であることを特徴とする請求項18または19に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項21】
前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径10μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項22】
前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径5.0μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項23】
前記機能付与層が、帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤を含有する帯電防止層もしくは紫外線吸収層であることを特徴とする請求項18〜22のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項24】
前記帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤が、前記機能付与層のみに含有するか、または前記機能付与層の少なくとも1層に含有する帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤の含有量が、前記発泡層および前記機能付与層とは異なる非発泡層に含有する含有量より多いことを特徴とする請求項23に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項25】
前記上下の非発泡層がいずれも前記機能付与層を含むことを特徴とする請求項18〜24のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項26】
前記発泡層が、気泡化核剤を含有することを特徴とする請求項18〜25のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【請求項27】
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートであることを特徴とする請求項18〜26のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な気泡を有し、一つ以上の機能性を持つ非晶性樹脂熱可塑性樹脂発泡シート、光反射板、バックライトパネルおよび発泡反射シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明や液晶バックライトの反射板として、金属板に光反射性に優れた塗料を塗布したものや、金属板に光反射性に優れた樹脂フィルム等を積層させたものが使用されている。近年、照明器具や液晶ディスプレイといった分野では一層の省電力化、高効率化が要求されている。特に、電飾看板やディスプレイの分野では省スペース化のニーズも高まっており、上述の反射板では省スペース化に対応することは難しい。
そこで、光反射性に優れる微細な気泡を有し、高い成形加工性を有する樹脂シートが照明や液晶バックライトの反射板等として利用されている(例えば特許文献1参照)。
ところで、照明器具等のような外気に暴露される用途に供される光反射板には高い機能性が求められる。高い機能性とは防汚性、表面硬度、耐候性等のプラスチック製品に求められる種々の特性であるが、これらは一般的に成型体の表層部への付与により十分な機能性を得られるものが多い。
【0003】
従来、このような機能性付与を目的としてプラスチック発泡シートの表層部に対しての機能性添加剤の添加により、高い機能性をもった発泡製品を実現した例は多い。しかし、一般的にこのような機能性添加剤の添加は樹脂の発泡性に大きな影響を与え、気泡構造の粗大化を引き起こすことが知られている。
発泡性に大きな影響を与えず、高い機能性を付与する方法としては塗布、ラミネート等による方法が広く用いられている(例えば参考文献2参照)。しかしながら、このような方法は工程数が増えるため高コスト化の問題を抱えている。
しかし、発泡シートは発泡の際に微細な気泡だけでなく0.5mm以上(もしくはシート厚の1/2以上大きさ)の粗大な気泡が生じやすい。特に熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合、この傾向が顕著となる。そのため、光反射材をはじめとする各種成形品として使用することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/023173号パンフレット
【特許文献2】特開2007−90599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平均気泡径10μm以下の微細かつ均一な気泡構造を有し、高い光反射効率と機能性を有する熱可塑性樹脂微細発泡反射シート、光反射板、バックライトパネルおよび発泡反射シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討した結果、上記課題は以下の手段により達成された。
【0007】
(1)発泡層と、該発泡層を挟んで上下に、150μm以下で30μm以上の厚みの非発泡層を有する熱可塑性樹脂微細発泡反射シートであって、
前記非発泡層の少なくとも一方が、非発泡の機能付与層と該機能付与層とは異なる非発泡層を含む非発泡層であり、
前記機能付与層中の樹脂の50質量%以上が前記発泡層と同じ熱可塑性樹脂によって構成され、
前記発泡層に前記上下の非発泡層が、互いに接した一体構造であって、
前記発泡層が、平均気泡径10μm以下0.5μm以上で、かつ気泡数密度が1×10個/mm以上1.0×1012個/mm以下の均一な気泡構造を有する熱可塑性樹脂微細発泡体であることを特徴とする熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(2)前記非発泡層の厚みが150μm以下で50μm以上であり、前記機能付与層の厚みが30μm以下であることを特徴とする(1)に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(3)前記機能付与層が、前記非発泡層の最外層であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(4)前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径10μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(5)前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径5.0μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(6)前記機能付与層が、帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤を含有する帯電防止層もしくは紫外線吸収層であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(7)前記帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤が、前記機能性付与層のみに含有するか、または前記機能付与層の少なくとも1層に含有する帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤の含有量が、前記発泡層および前記機能付与層とは異なる非発泡層に含有する含有量より多いことを特徴とする(6)に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(8)前記上下の非発泡層がいずれも前記機能性付与層を含むことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(9)前記発泡層が、気泡化核剤を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(10)前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(11)550nmの波長での反射率(酸化アルミニウム製標準白色板基準)が98%以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(12)350nmの波長での反射率(酸化アルミニウム製標準白色板基準)が30%以下であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(13)表面固有抵抗値が1×1012Ω以下であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シート。
(14)前記(1)〜(13)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートからなる光反射板。
(15)前記(14)に記載の光反射板を有することを特徴とするバックライトパネル。
(16)発泡反射シートの製造方法であって、発泡反射シートが(1)〜(13)のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートであり、かつ下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする発泡反射シートの製造方法。
(a)発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層とからなる少なくとも3層構造の樹脂シートであって、該非発泡層の少なくとも一方が機能性付与層を含み、該3層構造の樹脂シートを、共押出による一体成形により調製する工程
(b)該樹脂シートに不活性高圧ガスを含浸させる工程
(c)該樹脂シートを加熱して、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層を発泡させる工程
(17)発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂100質量部に対して気泡化核剤が、0.1〜10質量部配合することを特徴とする(16)に記載の発泡反射シートの製造方法。
(18)発泡反射シートの製造方法であって、
前記発泡反射シートが、発泡層と、該発泡層を挟んで上下に、150μm以下で30μm以上の厚みの非発泡層を有する熱可塑性樹脂微細発泡反射シートであり、該非発泡層の少なくとも一方が、非発泡の機能付与層と該機能付与層とは異なる非発泡層を含む非発泡層であり、該機能付与層中の樹脂の50質量%以上が該発泡層と同じ熱可塑性樹脂によって構成され、該発泡層が、平均気泡径10μm以下0.5μm以上で、かつ気泡数密度が1×10個/mm以上1.0×1012個/mm以下の均一な気泡構造を有する熱可塑性樹脂微細発泡体であり、
前記発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、前記非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層からなる少なくとも3層構造の樹脂シートを一体成形により調製する工程を含むことを特徴とする発泡反射シートの製造方法。
(19)前記非発泡層の厚みが150μm以下で50μm以上であり、前記機能付与層の厚みが30μm以下であることを特徴とする(18)に記載の発泡反射シートの製造方法。
(20)前記機能付与層が、前記非発泡層の最外層であることを特徴とする(18)または(19)に記載の発泡反射シートの製造方法。
(21)前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径10μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする(18)〜(20)のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
(22)前記発泡層に存在する気泡が、前記発泡層の面内方向および厚さ方向ともに、平均気泡径5.0μm以下0.5μm以上の均一な気泡構造であることを特徴とする(18)〜(20)に記載の発泡反射シートの製造方法。
(23)前記機能付与層が、帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤を含有する帯電防止層もしくは紫外線吸収層であることを特徴とする(18)〜(22)のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
(24)前記帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤が、前記機能付与層のみに含有するか、または前記機能付与層の少なくとも1層に含有する帯電防止剤、紫外線吸収剤または酸化防止剤の含有量が、前記発泡層および前記機能付与層とは異なる非発泡層に含有する含有量より多いことを特徴とする(23)に記載の発泡反射シートの製造方法。
(25)前記上下の非発泡層がいずれも前記機能付与層を含むことを特徴とする(18)〜(24)のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
(26)前記発泡層が、気泡化核剤を含有することを特徴とする(18)〜(25)のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
(27)前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートであることを特徴とする(18)〜(26)のいずれか1項に記載の発泡反射シートの製造方法。
【0008】
本明細書において「熱可塑性樹脂」という用語は、1種類の熱可塑性樹脂からなる樹脂の他、2種以上の熱可塑性樹脂からなるブレンド樹脂も包含する概念として用いる。したがって、「熱可塑性樹脂の組成」という用語は、熱可塑性樹脂が1種の熱可塑性樹脂からなる場合には、当該熱可塑性樹脂の種類を意味し、熱可塑性樹脂が2種以上の熱可塑性樹脂からなるブレンド樹脂であれば、当該ブレンド樹脂の組成を意味する。
【0009】
また、本明細書において、ある原料、部材ないし構成が「熱可塑性樹脂からなる」又は「熱可塑性樹脂から形成される」とは、当該原料、部材ないし構成が熱可塑性樹脂のみにより構成されている態様の他、熱可塑性樹脂に種々の添加剤が配合された組成物により構成されている態様も包含する概念として用いる。
具体的には、80〜100質量%が熱可塑性樹脂で構成されている形態は「熱可塑性樹脂からなる」または「熱可塑性樹脂から形成される」形態である。また、「熱可塑性樹脂からなる」または「熱可塑性樹脂から形成される」とは、好ましくは90〜100質量%。より好ましくは95〜100質量%が熱可塑性樹脂で構成される形態である。このことは、熱可塑性樹脂がより具体的な樹脂名で特定されている場合も同様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、平均気泡径10μm以下の微細かつ均一な気泡構造を有し、高い光反射効率と機能性を有する熱可塑性樹脂微細発泡反射シート、光反射板、バックライトパネルおよび上記の性能を有しかつ安価かつ簡便な発泡反射シートの製造方法を提供することができる。
【0011】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの一形態の縦断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明に係る熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの実施の形態を詳細に説明するが、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの一実施形態を図1に示す。熱可塑性樹脂微細発泡反射シート(10)は、発泡層(11)と、該発泡層の両側に非発泡層(12)とを備えた構造を有する。ここで、この発泡層(11)の両側に有する非発泡層(12)のうちのいずれか一方、もしくは両方は機能付与層を含む。なお、非発泡層が機能付与層であっても構わない。
ただし、本発明では、非発泡層の少なくとも一方が、非発泡の機能付与層と該機能付与層とは異なる非発泡層を含む非発泡層である。
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートにおいて、発泡層と非発泡層はいずれも熱可塑性樹脂で形成されるが、発泡層を形成する熱可塑性樹脂の組成と、非発泡層に形成された機能付与層を形成する熱可塑性樹脂の組成は、互いに異なっている。
【0015】
[発泡層]
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの発泡層は、熱可塑性樹脂からなる。当該熱可塑性樹脂に特に制限はないが、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、本発明においては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。なかでもポリカーボネート樹脂は、軽量性、形状安定性、経済性などの特性に優れ、さらに光反射特性に優れるため好ましい。
なお、熱可塑性樹脂は非発泡層形成の観点から非晶性のものが好ましい。
発泡層の厚さは、上記の反射シートの用途、様態等により適宜に定まり、一義的に定めることはできないが、好ましくは300〜5000μm、より好ましくは500〜1500μmである。
【0016】
ポリカーボネート樹脂は、特に製造方法における制限はないが、脂肪族もしくは芳香族のジもしくはポリオール化合物とホスゲンもしくは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる。また、芳香族のジもしくはポリオール化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンもしくは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる。
【0017】
芳香族のジもしくはポリオール化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、ハイドロキノン、レゾルシノールおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0018】
また、発泡層は、添加剤として気泡化核剤が添加された熱可塑性樹脂からなることが好ましい。気泡化核剤が添加されることで、熱可塑性樹脂中に気泡核をより多く生成することができる。これにより、後述する発泡工程において、生成した気泡が互いの気泡の成長を阻害しあうため、より微細な気泡を有する発泡層を形成させることが可能になる。当該気泡化核剤に特に制限はないが、ポリエステル系エラストマー、ポリカーボネート系エラストマーを好適に用いることができる。
気泡化核剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部配合されていることが好ましい。
【0019】
発泡層は、上記熱可塑性樹脂、気泡化核剤の他、結晶化核剤、結晶化促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光像白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑材、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤等の各種添加剤を含有してもよい。
なお、発泡層が気泡化核剤のように気泡を発生させるのに必要な化合物以外で、上記のような化合物を含有する場合、その含有量は、後述する機能付与層における含有量より少ないことが好ましい。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートが備える発泡層は気泡を有する。当該気泡は独立気泡であることが好ましい。より具体的には、熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの総気泡数の70%以上が独立気泡であることが好ましく、より好ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%が独立気泡である。
平均気泡径は10μm以下であるが、薄肉化と高反射率化の両立の観点から、7.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましく、2.0μm以下が特に好ましい。
また、平均気泡径は、通常には0.5μm以上であり、1.0μm以上であってもよい。
なお、平均気泡径は以下の方法で測定できる。
【0021】
(平均気泡径の測定)
ASTM D3576−77に準拠して求めた。発泡シートの断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、撮影したSEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の個々の長さを測定し、この平均値tを求めた。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求める。
【0022】
d=t/(0.616×M)
【0023】
また、発泡層の気泡数密度は1.0×10個/mm以上であり、薄肉化と高反射率化の両立の観点から、1.0×10個/mm〜1.0×1011個/mmであることが好ましく、1.0×10個/mm〜1.0×1011個/mmであることがより好ましい。なお、発泡層の気泡数密度の上限は、1.0×1012個/mm以下、好ましくは1.0×1011個/mmである。
なお、発泡層の気泡数密度は以下の方法で測定できる。
【0024】
(気泡数密度の測定)
発泡シートの縦断面についてSEM写真を撮影し、このSEM写真上において発泡層中の任意の100×100μmの領域を無作為に選び、その中に存在する気泡数nを計数し、1mm当たりに存在する気泡数を算出する。得られた数値を3/2乗することで1mm当たりの気泡数に換算し気泡数密度とした。
【0025】
[非発泡層]
【0026】
非発泡層を構成する樹脂は、発泡層と同じ熱可塑性樹脂を含むものが好ましい。発泡層と同じ熱可塑性樹脂は、非発泡層を構成する樹脂中の50質量%以上が好ましく、100質量%である場合、すなわち、発泡層と同じ熱可塑性樹脂が好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂が好ましい。
発泡体に形成される非発泡層の肉厚は、好ましくは30μm以上であり、60μm以上あることがより好ましい。また、一体成形する機能付与層の肉厚は、好ましくは30μm未満であり、より好ましくは25μm以下である。また、光学特性維持の観点から非発泡層は150μmを超えないことが好ましい。
非発泡層の厚みが30μm未満とすると非発泡層樹脂への機能性材料の添加濃度が増大し吸光性が増大する。このため、反射率等の光学特性が低下する。そのため、厚みが30μm未満の非発泡層を形成することは望ましくない。
【0027】
なお、非発泡層の厚みは走査電子顕微鏡(SEM)写真で測定することができる。
具体的には、走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの表面部と気泡層の最も表層側のラインに平行線を引き、この平行線の間隔を未発泡層としての非発泡層の厚みとして測定できる。
【0028】
非発泡層は、上記熱可塑性樹脂の他、結晶化核剤、結晶化促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、蛍光像白剤、顔料、染料、相溶化剤、滑材、強化剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、可塑剤、増粘剤、減粘剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0029】
[機能付与層]
本発明では、上記非発泡層の少なくとも一方において、その少なくともひとつの構成層として、機能付与層を設ける。発泡層の両面の非発泡層内に機能付与層を設けるのがより好ましい。その場合、機能付与層は、非発泡層内に含まれていればその非発泡層の位置は特に限定されない。最外層でも、最内層でも、中間層であってもよいが、実際上、最外層もしくは最内層がよい。
機能付与層における機能は、帯電防止、紫外線吸収、劣化防止等の直接反射防止そのもの以外の機能である。この機能のうち、本発明では、帯電防止や紫外線吸収が特に好適に付与できる。一体成形する機能付与層の肉厚を30μm未満(より好ましくは25μm以下)とすることで、粗大な気泡(いわゆる「フクレ」)の発生を防ぐことができる。
【0030】
このような機能は、添加剤を含有させて機能発現するものが好ましく、このような添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が好ましく、これらを単独で含有しても併用しても構わない。本発明においては、これらを併用することが好ましく、なかでも帯電防止剤と紫外線吸収剤を併用することが好ましい。
【0031】
帯電防止剤は、有機の帯電防止剤であっても無機の帯電防止剤であっても構わない。
本発明においては有機の帯電防止剤が好ましく、アニオン系、カチオン系もしくはノニオン系の界面活性剤が好ましい。なかでもアニオン系の界面活性剤が好ましい。
このような界面活性剤は、例えば、丸善油化工業(株)のデノンV−57S、デノン2723が好ましく使用される。
帯電防止剤の含有量は、機能付与層の樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.1〜2質量部がさらに好ましい。
【0032】
紫外線吸収剤(含光安定剤)としては、ヒンダードアミン系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾオキサジノン系、シアノアクリレート系、トリアジン系、ベンゾエート系、蓚酸アニリド系、有機ニッケル系などの有機系化合物、あるいはゾルゲル法などで得られた無機系化合物が挙げられる。このうち、無色のものが好ましい。
【0033】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジルベンゾエート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)等が挙げられる。
サリチル酸系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0034】
ベンゾフェノン系化合物としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−エトキシ−ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0035】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェノール)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−アクリロイルエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0036】
シアノアクリレート系化合物としては、2−エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、1,3−ビス−[2’−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリロイルオキシ]−2,2−ビス−[(2−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチルプロパン等が挙げられる。
【0037】
トリアジン系としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール、2−(4,6−ビス−2,4−ジメチルフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等が挙げられる。
【0038】
ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、レゾルシノール・モノベンゾエート、オルソベンゾイル安息香酸メチルなどが、蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザックアシッドビスアニリドなどが、有機ニッケル系化合物としては、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’−チオビス(4−tーオクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0039】
ベンゾオキサジノン系化合物としては、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]等が挙げられる。
マロン酸エステル系化合物としては、プロパンジオイック酸[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル等が挙げられる。
【0040】
これらの中では、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物及びベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
紫外線吸収剤(含光安定剤)の含有量は、機能付与層の樹脂100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、1〜2質量部がさらに好ましい。
【0041】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、3価のリン系化合物、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン類やこれ以外の各種還元剤が挙げられる。
酸化防止剤は、紫外線吸収剤の安定化にも作用し、酸化防止剤の含有量は、機能付与層の樹脂100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、1〜2質量部がさらに好ましい。
【0042】
[発泡反射シートの製造]
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの製造方法について以下に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートは、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層からなる少なくとも3層構造の樹脂シートを一体成により調製し、この樹脂シートを用いて製造される。
このうち、非発泡層の少なくとも一方に機能付与層を含み、機能を付与する添加剤を含有する。なお、非発泡層が機能付与層であっても構わない。
ただし、本発明では、非発泡層の少なくとも一方が、非発泡の機能付与層と該機能付与層とは異なる非発泡層を含む非発泡層である。
より具体的には、下記工程(a)〜(c)を経て製造されることが好ましい。
【0043】
(a)発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層からなる少なくとも3層構造の樹脂シートを共押出による一体成型により調製する工程、
(b)該樹脂シートに不活性高圧ガスを含浸させる工程、及び
(c)該樹脂シートを加熱して、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層を発泡させる工程。
【0044】
上記工程(a)で製造される少なくとも3層構造の樹脂シートは、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層と、その両面に設けられた、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層とからなる3層構造であることが好ましいが、目的とする発泡シートの形態に合わせて適宜に4層以上の構成とすることもできる。発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層は、上述した発泡層を構成する熱可塑性樹脂からなり、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層は、上述した非発泡層を構成する熱可塑性樹脂からなる。
本発明においては、発泡層の両面の非発泡層に機能付与層を含み、機能を付与する添加剤を含むことが好ましい。
【0045】
上記工程(b)では、上記工程(a)で得られた樹脂シートに不活性ガスを含浸させる。上記工程(a)で得られた樹脂シートとセパレータとを重ねて巻くことによりロールを形成し、このロールを加圧不活性ガス雰囲気中に保持して樹脂シートに不活性ガスを含浸させることが好ましい。当該セパレータは、不活性ガスや必要に応じて用いられる有機溶剤が自由に出入りする空隙を有し、かつそれ自身への不活性ガスの浸透が無視できるものであればいかなるものでもよい。セパレータの好適な例を示せば、樹脂性不織布や金属製の網が挙げられる。
また、上記工程(a)で得られた樹脂シートは無延伸の状態で不活性ガスを含浸させることが好ましい。延伸させてしまうと、ガスがシート内に十分に浸透しなくなるおそれがある。
【0046】
ロールを形成した樹脂シートに不活性ガスを含浸させる前に、樹脂シートに有機溶剤を含有せしめてもよい。樹脂シートに有機溶剤を含有させると、熱可塑性樹脂シートの結晶化度を向上させることができ、シートの剛性が向上してシート表面にセパレータの跡が残存しにくくなる。また、不活性ガスの浸透時間を短縮させる効果も期待できる。
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、ギ酸エチル、アセトン、酢酸、ジオキサン、m−クレゾール、アニリン、アクリロニトリル、フタル酸ジメチル、ニトロエタン、ニトロメタン、ベンジルアルコールが挙げられる。なかでもアセトンが好適に用いられる。
【0047】
上記不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、アルゴン等が挙げられる。なかでも二酸化炭素は、熱可塑性樹脂中に多量に含有させることができる点で好ましい。不活性ガスの浸透圧力は室温(例えば、17℃)で、好ましくは0.2〜15MPa、より好ましくは0.25〜10MPaである。また、不活性ガスの浸透時間は通常には1時間以上(好ましくは1〜30時間)であり、飽和状態になるまで不活性ガスを浸透させることが好ましい。
【0048】
上記工程(c)では、上記工程(b)で得られた、不活性ガスを含浸させた樹脂シートを発泡させる。この発泡工程では、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層が発泡し、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層は発泡しない条件下で行う。具体的には、ロールからセパレータを取り除き、樹脂シートを、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に加熱することで、発泡層を形成させることができる。この加熱は、発泡層の融点よりも低い温度で行うことが好ましい。発泡のための加熱温度は120〜240℃が好ましく、130〜200℃がより好ましい。
また、加熱時間は30秒〜10分が好ましく、10秒〜5分がより好ましい。
【0049】
発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層を発泡させ、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層を発泡させないようにするには種々の方法が考えられる。例えば、発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層に気泡化核剤を添加したり、非発泡層を形成するための熱可塑性樹脂層に結晶化核剤、結晶化促進剤を添加しておくことでも、各樹脂層の発泡性をある程度制御することができる。また、各層の形成に用いる熱可塑性樹脂として特定の樹脂を採用することにより、さらに厳密に発泡性を制御することが可能になる。このような熱可塑性樹脂として好適なものは前述した通りである。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの厚みは、0.2〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましく、さらに好ましくは0.8〜1.2mmであり、特に好ましくは0.9〜1.1mmであり、最も好ましくは1.0±0.05mmである。また、本発明の発泡シートの比重は0.2〜0.7であることが好ましく、0.3〜0.7であることがより好ましく、0.4〜0.65であることがさらに好ましい。なお、比重は0.5以下としてもよい。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートは、550nmの波長での反射率(酸化アルミニウム製標準白色板基準)が98%以上であることが好ましい。また、350nmの波長での反射率(酸化アルミニウム製標準白色板基準)が30%以下であることが好ましい。
熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの550nmの波長での反射率と350nmの波長での反射率の測定は下記のようにして測定することができる。
【0052】
(反射率の測定)
分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U−4100を使用し、リファレンスに酸化アルミニウム白色板(210−0740:日立ハイテクフィールディング社製)を使用し、例えば、分光スリット4nmの条件で、550nmもしくは350nmの波長での反射率を測定する。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートは、熱可塑性樹脂微細発泡反射シート表面の固有抵抗値が1×1012Ω以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの表面固有抵抗値の上限は、1×1014Ω以下であり、これを超える表面固有抵抗値では実用的な帯電防止性がえられない。
熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの表面固有抵抗値をこのように調整することで、熱可塑性樹脂微細発泡反射シートに帯電防止性を付与することができ、長期的な高反射性を維持することが可能となる。
【0054】
(表面固有抵抗値の測定)
高抵抗測定装置(例えば、アドバンテスト製R8340A)を用い50mmφプローブにて、印加電圧500Vの条件の下、表面固有抵抗値の測定を行う。
【0055】
(密度の測定)
熱可塑性樹脂微細発泡反射シート全体の密度は、水中置換法で測定した。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートの用途は特に制限されるものではなく、例えば、光反射板やスピーカー用振動板として用いることができ、なかでも、光反射板として好適に用いることができる。より具体的には、液晶表示装置等のバックライトパネルに用いる光反射板として好適である。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートには、上述した各種の添加剤等を含有する塗料がコーティングされていてもよく、このような熱可塑性樹脂微細発泡反射シートも本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートに包含される。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
実施例1
住化スタイロンポリカーボネート社製のポリカーボネート樹脂SI8000Lに新日本理化製エヌジェスターNU100を0.5質量%添加した系を発泡層とし、この発泡層の表裏の両面に18μmの厚みの機能付与層を積層した厚みが600μmのポリカーボネートシートを得た。機能付与層は住化スタイロンポリカーボネート社製SI8000Lに界面活性剤系帯電防止剤のデノンV−57S(丸善油化工業社製)を0.5質量%、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を0.25質量%添加したコンパウンドとした。得られたシートを17℃、5.5MPaの二酸化炭素中で24時間処理した後、145℃の雰囲気中で1分間加熱し、発泡シートを作製した。発泡シートの厚みは1000μmであった。
この発泡シートに対して、以下の測定と評価を行った。
【0060】
(1)未発泡層の厚み
走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、発泡シートの表面部と気泡層の最も表層側のラインに平行線を引き、この平行線の間隔を未発泡層厚として測定した。
【0061】
(2)気泡径の測定
ASTM D3576−77に準拠して求めた。発泡シートの断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、撮影したSEM写真上に水平方向と垂直方向に直線を引き、直線が横切る気泡の弦の個々の長さを測定し、この平均値tを求めた。写真の倍率をMとして、下記式に代入して平均気泡径dを求めた。
【0062】
d=t/(0.616×M)
【0063】
(3)気泡数密度の測定
発泡シートの縦断面についてSEM写真を撮影し、このSEM写真上において発泡層中の任意の100×100μmの領域を無作為に選び、その中に存在する気泡数nを計数し、1mm当たりに存在する気泡数を算出した。得られた数値を3/2乗することで1mm当たりの気泡数に換算し、気泡数密度とした。
【0064】
(4)発泡シート全体の密度の測定
水中置換法にて発泡シートの比重を測定し、これを発泡体の密度とした。
【0065】
(5)反射率の測定
・全光線反射率
(株)日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計 U−4100を用いて、分光スリット4nmの条件にて350nm、550nmの波長におけ反射率を測定した。表1には、酸化アルミニウムの微粉末を固めた白板の反射率を100%としたときの各発泡シートの反射率を相対値で示している。
【0066】
(6)表面固有抵抗値の測定
JIS K 6911に準拠して求めた。ADVANTEST製のR8340Aを使用し、高抵抗測定用チャンバーR12702Aにて表面固有抵抗値の測定を行った。
【0067】
(7)耐光試験
コニカミノルタ社製のCM−300を使用し、Luv表示系における色調の測定を行った後、スガ試験器社製の愛スーパーUVテスターにて300μW/m、照射距離100mmの条件で16時間の照射を行った。照射後のサンプルを再度、上記CM−300を使用して測定を行い、下記式から、色差ΔEを求め、耐紫外線変色性の評価を行った。
【0068】
【数1】
【0069】
L、u、vは色空間における座標値の各差分を表す。
【0070】
得られたシートは気泡径1μm程度の均一な発泡体であり、密度は330kg/mであり、表層部に50μm程度の未発泡層を有していた。発泡シートの550nmの波長での反射率は100%(Al基準)、350nmの波長での反射率は28%(Al基準)であった。また、表面固有抵抗値は1.83×1011Ω、紫外線照射試験後の色差のΔEは13であった。
得られた結果を下記表1にまとめた。
【0071】
実施例2
表裏の両面の機能付与層の厚みを30μmに変更した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを作製した。
実施例1と同様の評価を行った。
得られたシートは気泡径1μm程度の均一な発泡体であり、密度は330kg/mであり、表層部に50μm程度の未発泡層を有していた。発泡シートの550nmの波長での反射率は98%(Al基準)、350nmの波長での反射率は13%(Al基準)であった。また、表面固有抵抗値は8.62×1010Ω、紫外線照射試験後の色差のΔEは8であった。
【0072】
比較例1
実施例1と同様のコンパウンドを用い、表裏面に60μmの機能付与層を積層した600μm厚のポリカーボネートシートを実施例1に記載の方法にて発泡したシートを得た。得られたシート表面には多量の風船状のフクレが発生し、光学特性、表面固有抵抗値、紫外線照射試験等の評価が実施可能なサンプルを得ることができなかった。
【0073】
比較例2
実施例1の発泡層と同様のコンパウンドに対し界面活性剤系帯電防止剤デノンV−57S(丸善油化工業社製)を0.5質量%、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を0.25質量%添加したコンパウンドにて厚さ600μmの単一層構造のポリカーボネートシートを得た。得られたシートを実施例1に記載の方法にて発泡したシートを得た。得られたシートの平均気泡径は20μm程度の粗大な気泡構造であり、密度は330kg/mであった。発泡シートの550nmの波長での反射率は96%(Al基準)、350nmの波長での反射率は11%(Al基準)であった。また、5.57×1010Ω、紫外線照射試験後の色差のΔEは9であった。
【0074】
得られた結果をまとめて、下記表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
本発明の実施例1、2はともに平均気泡径1μmの微細かつ均一な気泡構造を有し、反射率も高い。このことから、本発明の熱可塑性樹脂微細発泡反射シートを使用することで光反射板、バックライトパネルとして有用であることがわかる。
【0077】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0078】
本願は、2012年8月9日に日本国で特許出願された特願2012−177612に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0079】
10 熱可塑性樹脂微細発泡反射シート
11 発泡層
12 非発泡層又は機能付与層を含む非発泡層
13 気泡
図1