(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記励起光源の棒状部分が、該棒状部分の長手方向に互いに離れているレーザチャンバの2つの壁部に形成された貫通孔に通して保持されている請求項1から8いずれか1項記載の固体レーザ装置。
前記固体レーザ媒質がロッド状に形成されたものであり、この固体レーザ媒質が前記励起光源の棒状部分と平行に配置されている請求項1から9いずれか1項記載の固体レーザ装置。
【背景技術】
【0003】
従来、生体等の被検体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一つとして、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信および受信が可能な超音波探触子を用いる。例えば超音波探触子から生体に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んで行き、組織界面で反射する。その反射超音波を超音波探触子で受信し、反射超音波が超音波探触子に戻って来るまでの時間に基づいて距離を計算することで、生体内部の様子を画像化することができる。
【0004】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。光音響イメージングでは、一般にパルスレーザ光等のパルス光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルス光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0005】
光音響波の計測では一般に、強度が強いパルス光を照射する必要があり、そのため光源には、フラッシュランプ励起の固体レーザ装置が多く用いられている。この種の固体レーザ装置は、例えばロッド状に形成された固体レーザ媒質と、固体レーザ媒質を励起するためのフラッシュランプとを有する。これらの固体レーザ媒質およびフラッシュランプは多くの場合、内部空間を有するレーザチャンバ内に収容される。一般にレーザチャンバの内壁面には、フラッシュランプから出射した励起光を効率良く固体レーザ媒質に照射するための反射面や拡散面が設けられ、またレーザチャンバの内部空間には、固体レーザ媒質およびフラッシュランプを冷却する冷媒が供給される。
【0006】
ここで、フラッシュランプ等の励起光源は消耗品であり、定期的に交換する必要がある。また、光音響波の計測に用いる場合に限らず、固体レーザ装置に対しては小型化の要求が広く存在する。
【0007】
特許文献1および2には、励起光源の交換や、装置の小型化について考慮された固体レーザ装置の例が示されている。
【0008】
すなわち特許文献1には、真っ直ぐな棒状とされた励起ランプとロッド状に形成された固体レーザ媒質とを、互いに平行な向きで相近接する状態にしてレーザチャンバ内に収容してなる固体レーザ装置が示されている。そしてこの特許文献1には、固体レーザ装置が固体レーザ媒質の長手方向に長大化することを防止するために、1対の共振器ミラーの一方(リアミラー)と固体レーザ媒質との間の光路を、ミラーによって横方向に折り曲げることが示されている。また特許文献1には、棒状の励起ランプを交換する際に、励起ランプをレーザチャンバからランプ長手方向に引き抜くこと、そしてこの引き抜きのためのスペースを確保するために、上記ミラーをそのホルダごと回転させることが示されている。
【0009】
一方特許文献2には、励起ランプとロッド状に形成された固体レーザ媒質とをレーザチャンバ内に収容してなる固体レーザ装置が示されている。そしてこの特許文献2にも、固体レーザ装置が固体レーザ媒質の長手方向に長大化することを防止するために、1対の共振器ミラーの一方(リアミラー)と固体レーザ媒質との間の光路を、ミラーによって横方向に折り曲げることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示された固体レーザ装置は、前述したように光路を折り曲げるミラーが設けられたことにより、装置の長大化をある程度防止できると考えられる。
【0012】
しかし特許文献1に示された固体レーザ装置においては、光路折り曲げ用のミラーが、固体レーザ媒質の端面から著しく長い距離を置いて(その
図2および
図5から判断すれば、励起ランプの端面とも長い距離を置いて)配置されているので、必然的に固体レーザ媒質の端面とリアミラーとの間の距離も極めて長くなっている。このように固体レーザ媒質の端面から大きく離して共振器ミラーが配置され、共振器長が大きくなると、装置が大型化する上に、パルス発振させる場合はパルスレーザ光のパルス幅を十分短くすることが困難になる。以上の問題は、特許文献2に示された固体レーザ装置においても同様に認められるものである。
【0013】
また特許文献1に示された固体レーザ装置において、励起ランプをレーザチャンバから引き抜くスペースを確保するために、前記ミラーをそのホルダごと回転させる場合は、装置の構造が複雑化するという問題が認められる。
【0014】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、レーザチャンバ内にランプ等の励起光源および固体レーザ媒質を収容してなる固体レーザ装置において、簡単な構成で励起光源をレーザチャンバから容易に引き抜くこと、および十分な小型化を可能にすることを目的とする。
【0015】
また本発明は、上述のような固体レーザ装置を備えることにより、十分小型に形成することができる光音響計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による固体レーザ装置は、
内部に空間を有するレーザチャンバと、
少なくとも一部がこのレーザチャンバ内に収容される固体レーザ媒質と、
直線状に延びる棒状部分を有し、この棒状部分の一部が固体レーザ媒質を励起する励起光を発する部分としてレーザチャンバ内に配設される一方、両端部がレーザチャンバの外に配設される励起光源と、
励起された固体レーザ媒質の両端面から発せられた光を共振させる1対の共振器ミラーとを有する固体レーザ装置において、
励起光源の棒状部分が、棒状部分の長手方向に移動させてレーザチャンバから引き抜き可能に配設され、
固体レーザ媒質の一端面と向かい合って、この一端面から発せられた光を横方向に折り曲げる光学素子が設けられ、
上記光学素子が、上記棒状部分の長手方向に関して棒状部分と少なくとも一部同士が同じ位置に有って、かつ棒状部分と離間した位置に配設され、
1対の共振器ミラーの一方が、光学素子により折り曲げられた光が入射する位置に配置され、
光学素子から上記一方の共振器ミラーまでの光学要素が、励起光源の棒状部分が引き抜かれる軌道に対し、離間した位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、上述の「光学素子から上記一方の共振器ミラーまでの光学要素」とは、それら2つの間に別の光学要素が配置されている場合は、その別の光学要素も含むものとする。また、「光学素子が、上記棒状部分の長手方向に関して棒状部分と少なくとも一部同士が同じ位置に有って」とは、上記長手方向に垂直な面を考えたとき、光学素子の少なくとも一部を含む面が、棒状部分の全長範囲内に存在することを意味するものである。
【0018】
なお本発明による固体レーザ装置は、パルスレーザ光を発生させる構成を有するものであることが望ましい。
【0019】
また上述した光学素子は、リアミラーとしての共振器ミラーと固体レーザ媒質との間の光路に配置されてもよいし、あるいは出力ミラーとしての共振器ミラーと固体レーザ媒質との間の光路に配置されてもよい。
【0020】
また上記の光学素子としては、例えばプリズムやミラー、さらにはブリュースタ偏光子等が適用可能である。
【0021】
他方、励起光源としてはフラッシュランプが好適に用いられ得る。
【0022】
また励起光源の棒状部分は、この棒状部分の長手方向に互いに離れているレーザチャンバの2つの壁部に形成された貫通孔に通して保持されることが望ましい。
【0023】
また本発明の固体レーザ装置において、固体レーザ媒質はロッド状に形成された上で、この固体レーザ媒質が励起光源の棒状部分と平行に配置されていることが望ましい。
【0024】
また本発明の固体レーザ装置は、レーザチャンバの内部の空間に冷媒を供給する手段を備えていることが望ましい。
【0025】
また本発明の固体レーザ装置において、レーザチャンバの内壁面には、励起光源が発した励起光を拡散反射させる拡散部材が形成されていることが望ましい。
【0026】
また本発明の固体レーザ装置において、固体レーザ媒質および光学素子の間の光路を内包する筒部材が配置されていることが好ましく、この場合、筒部材は光学素子も内包するものであってもよい。
【0027】
或いは本発明の固体レーザ装置において、固体レーザ媒質および光学素子の間の光路と励起光源との間に、板形状の部材が配置されていることが好ましい。
【0028】
或いは本発明の固体レーザ装置において、固体レーザ媒質および光学素子の間の光路上に導光部材が配置されていることが好ましい。
【0029】
或いは本発明の固体レーザ装置において、光学素子がプリズムである場合には、固体レーザ媒質およびプリズムが光学的に直接接続されていることが好ましい。
【0030】
他方、本発明による光音響計測装置は、
本発明の固体レーザ装置と、
この固体レーザ装置から出射したレーザ光が被検体に照射されることにより該被検体内で生じた光音響波を検出する光音響波検出手段と、
検出された光音響波に基づいて信号処理を行う信号処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の固体レーザ装置は、上述した通り、
励起光源の棒状部分が、棒状部分の長手方向に移動させてレーザチャンバから引き抜き可能に配設され、
固体レーザ媒質の一端面と向かい合って、この一端面から発せられた光を横方向に折り曲げる光学素子が設けられ、
上記光学素子が、上記棒状部分の長手方向に関して棒状部分と少なくとも一部同士が同じ位置に有って、かつ棒状部分と離間した位置に配設され、
1対の共振器ミラーの一方が、光学素子により折り曲げられた光が入射する位置に配置され、
光学素子から上記一方の共振器ミラーまでの光学要素が、励起光源の棒状部分が引き抜かれる軌道に対し、離間した位置に配設されてなるものであるので、
励起光源の棒状部分を長手方向に移動させてレーザチャンバから引き抜けば、その棒状部分はいずれの光学要素とも干渉することなく、簡単にフラッシュランプ13をレーザチャンバから取り出すことができる。
【0032】
そして、このように励起光源の棒状部分をレーザチャンバから引き抜く際に、上記光学素子を動かして引き抜きのためのスペースを確保するようなことは不要であるから、本発明の固体レーザ装置は、上記光学素子を動かす構成を有する固体レーザ装置と比べれば構成がより簡単なものとなる。
【0033】
また上記光学素子は、励起光源の棒状部分の長手方向に関して棒状部分と少なくとも一部同士が同じ位置に有るように配置されているので、固体レーザ媒質の端面から光学素子までの距離、ひいては固体レーザ媒質の端面から共振器ミラーまでの距離を十分短くすることができる。それにより装置の十分な小型化が可能になる上、共振器長が短くなるので、パルスレーザ光を発生させる場合はそのパルス幅を十分短くすることができる。
【0034】
他方、本発明による光音響計測装置は、光源として上記の通りの本発明による固体レーザ装置を備えたものであるから、十分小型に形成可能なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1および
図2はそれぞれ、本発明の第1の実施形態に係る固体レーザ装置10の側面形状および平面形状を示すものである。なお以下の説明では、
図1および
図2中において、使用されるレーザ光が取り出される側である図中右側を前側あるいは前方といい、図中左側を後側あるいは後方ということにする。
【0037】
この固体レーザ装置10は、概略直方体状の外形を有するレーザチャンバ11と、一部がこのレーザチャンバ11内に収容される固体レーザ媒質12と、直線状に延びる棒状部分を有してこの棒状部分の一部がレーザチャンバ11内に配設されたフラッシュランプ13と、ホルダ14に取り付けられたQスイッチ素子15と、ホルダ16に取り付けられて上記フラッシュランプ13とQスイッチ素子15との間に配された偏光子17と、ホルダ18に取り付けられた共振器ミラー19と、ホルダ20に取り付けられた反射光学素子としてのプリズム21と、ホルダ22に取り付けられた共振器ミラー23とを有している。以上述べたレーザチャンバ11並びにホルダ14、16、18、20および22は、共通のベースプレート24の上に固定されている。
【0038】
レーザチャンバ11は後に詳述するように、内部に冷媒を流通させる空間を画成しており、この空間内には例えば純水等の冷媒が供給される。すなわち、
図1に示すようにポンプ25により配管26を通して冷媒がレーザチャンバ11の内部空間に供給され、この内部空間を流通した後の冷媒は配管26を通ってレーザチャンバ11外に流出し、熱交換器27により冷却されてから、再度ポンプ25によってレーザチャンバ11内に供給される。
【0039】
上記固体レーザ媒質12は、例えばアレキサンドライト(Cr:BeAl
2O
3)、ネオジウムYAG(Nd:YAG)、チタンサファイ(Ti:Al
2O
3)等の固体レーザ結晶がロッド状に加工されてなるものである。このロッド状の固体レーザ媒質12は、フラッシュランプ13の棒状部分と平行に配置され、その両端部がレーザチャンバ11の前壁部と後壁部に保持されて、大部分がレーザチャンバ11内に収容されている。なお、固体レーザ媒質12としては上に挙げたものに限らず、その他公知のものが適宜用いられてもよい。
【0040】
フラッシュランプ13は、上記固体レーザ媒質12を励起するための励起光源であり、両端にそれぞれ形成された端子13aを含む全体がほぼ棒状に形成されている。この棒状の部分の長さは、例えば10cm程度とされる。2つの端子13aにはそれぞれ図示外の導線が接続され、それらの導線を介してフラッシュランプ13が点灯用光源に接続される。なおフラッシュランプ13としてより詳しくは、例えばキセノン・フラッシュランプ等が適用可能である。また、本発明の固体レーザ装置における励起光源としては、このようなフラッシュランプ13に限らず、例えばLED(発光ダイオード)を複数並べて透明な直管内に配置することにより、全体が棒状に形成されたもの等が適用されてもよい。
【0041】
ここで
図3に、レーザチャンバ11を前側から見た正面形状を示し、また
図4には、レーザチャンバ11を前後方向中央付近で切断した状態を示す。
図3に示されるように、レーザチャンバ11の前壁部には円形の貫通孔11aおよび11bが形成され、前者に固体レーザ媒質12の一端部が、そして後者にフラッシュランプ13の一端部がそれぞれ挿通、保持されている。なお、図示は省略するが、レーザチャンバ11の後壁部にも上記と同様の貫通孔が形成され、それらの貫通孔に上記と同様にして固体レーザ媒質12、フラッシュランプ13の他端部がそれぞれ挿通、保持されている。
【0042】
一方
図4に示されるように、レーザチャンバ11の内部に画成された空間11cは、一例としてほぼ長円状の断面形状のものとされ、この空間内に、固体レーザ媒質12およびフラッシュランプ13の一部が前後方向に延びる向きで収容されている。すなわち、レーザチャンバ11に収容された、固体レーザ媒質12およびフラッシュランプ13の長手方向と、前後方向とは平行である。上記空間11cを画成するレーザチャンバ11の内壁面11dの上には、フラッシュランプ13が発した光を拡散反射させる拡散部材29が層状に形成されている。
【0043】
図1に戻ると、レーザチャンバ11から突出した固体レーザ媒質12の端部には、レーザチャンバ11の外壁面に接するようにOリング30が嵌め込まれ、同様にレーザチャンバ11から突出したフラッシュランプ13の端部には、同じくレーザチャンバ11の外壁面に接するようにOリング31が嵌め込まれている。そしてレーザチャンバ11の前壁部と後壁部には、フラッシュランプ13を通過させる貫通孔を有する保持部材(図示せず)が宛われ、それらの保持部材が例えばネジ止め等によってレーザチャンバ11と一体化されることにより、固体レーザ媒質12が固定される。その際、Oリング30、31が上記保持部材によってある程度潰されながらレーザチャンバ11の外壁面に強く押圧されることにより、レーザチャンバ11の内外が高度の水密状態に保たれる。
【0044】
図1および
図2に示されたQスイッチ素子15は、高出力のパルス状のレーザ光を発生させるように、いわゆるQスイッチ動作するものである。なお本発明の固体レーザ装置は、このようにパルス状のレーザ光を発生させるものに限らず、CW(連続波)動作するものとして構成されてもよい。偏光子17は、発振したレーザ光から所定方向に直線偏光した成分のみを取り出すために設けられている。
【0045】
共振器ミラー19は、もう一つの共振器ミラー23と共にレーザ共振器を構成する。すなわち、共振器ミラー23は反射率が例えば99.99%以上の高反射ミラーとされ、いわゆるリアミラーとして作用する。他方共振器ミラー19は反射率が例えば95〜99%程度の部分透過ミラーとされ、いわゆる出力ミラーとして作用する。
【0046】
上記Qスイッチ素子15を光遮断状態にしてフラッシュランプ13を点灯させると、そこから発せられた励起光により固体レーザ媒質12が励起され、強い反転分布状態が形成される。この状態になってからQスイッチ素子15が光通過状態にされると、固体レーザ媒質12から誘導放出された光Lが、上記1対の共振器ミラー19と、共振器ミラー23との間で共振し、高出力のジャイアントパルスとなって共振器ミラー19を透過し、ホルダ18の貫通孔18aを通過して共振器外に出射される。なお、発熱するフラッシュランプ13および固体レーザ媒質12は、レーザチャンバ11内を流通する冷媒によって冷却される。
【0047】
プリズム21は固体レーザ媒質12の後端面と向かい合う位置に配され、この後端面から出射した光Lはプリズム21で横方向に折り曲げられて、リアミラーである共振器ミラー23に入射する。プリズム21は、フラッシュランプ13の棒状部分の長手方向つまり
図1および
図2中の左右方向に関して、該棒状部分と少なくとも一部同士が同じ位置に有って、かつこの棒状部分と干渉しないように配設されている。或いは、プリズム21は、固体レーザ媒質12及びフラッシュランプ13が互いに重畳する方向(例えば
図1の上方向或いは
図2の紙面に垂直な方向)から眺めた場合に、プリズム21の少なくとも一部が上記棒状部分と重畳する位置に配設されている、とも言える。
【0048】
なお、本実施形態において上記の「横方向」は、固体レーザ媒質12の光軸に対して直角な方向である。しかしこの「横方向」とは、それに限られるものではなく、励起光源の棒状部分の長手方向と角度をなすような方向であれば、どのような方向とされても構わない。例えば
図2の構成において、プリズム21で反射した出射した光Lが図中で右側に倒れるような方向に折り曲げられてもよい。ただし一般には、固体レーザ媒質12の光軸に対して直角な方向とするのが最も好ましい。その理由は後に詳述する。
【0049】
フラッシュランプ13は、寿命が尽きた場合等において、適宜新しいものと交換することが必要である。交換のためには、レーザチャンバ11の上部を開放できるようにして、そこから上にフラッシュランプ13を引き抜くことも考えられるが、レーザチャンバ11が大きく開放されるようになっていると、レーザチャンバ内部に細かいゴミ等が侵入するおそれがあるので好ましくない。その点を考慮して本実施形態の固体レーザ装置10では、先に
図3を参照して説明したようなフラッシュランプ13の保持構造を採用して、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から後方に引き抜けるようにしている。
【0050】
しかしそのようにする場合、もしプリズム21が配置されないで、共振器ミラー23が固体レーザ媒質12の後端面と向かい合う位置(該後端面からの距離は本実施形態におけるのと同じとする)に存在したとすると、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から後方に引き抜こうとしても、途中で共振器ミラー23用のホルダ22と干渉するので引き抜くことができない。この干渉を回避するために、共振器ミラー23を固体レーザ媒質12の後端面から大きく離して配置すると、固体レーザ装置10が大型化してしまう。また、上記の干渉を回避するために、フラッシュランプ13と固体レーザ媒質12とを互いに大きく離して配置すると、励起効率が低下してしまう。
【0051】
それに対して本実施形態では、光路を折り曲げるプリズム21を設けることにより、共振器ミラー23およびホルダ22を、引き抜かれるフラッシュランプ13の棒状部分と干渉しない位置(
図2参照)に配設している。換言すれば、フラッシュランプ13が引き抜かれる軌道に対して、共振器ミラー23およびホルダ22が離間した位置に配置されている。従って、フラッシュランプ13を引き抜く際に、フラッシュランプ13と、共振器ミラー23およびホルダ22とが接触しないので、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から完全に引き抜くことが可能となっている。また、この構成によれば、上述のようにして固体レーザ装置10が大型化することを防止できる。さらに、フラッシュランプ13と固体レーザ媒質12とを互いに大きく離して配置する必要もないので、励起効率が低下することも防止できる。
【0052】
共振器ミラー23の反射面はある程度大きな面積にすることが必要であり、またホルダ22も、共振器ミラー23の光軸調整機構が設けられること等から、ある程度大きなものになってしまう。そのため、共振器ミラー23およびホルダ22を十分小型化してフラッシュランプ13とは干渉しないようにして、共振器ミラー23を固体レーザ媒質12の後端面と向かい合う位置に配設するのは困難である。
【0053】
一方、単に光路を曲げるだけのプリズム21としては比較的小さいものが適用可能である。そこでこのプリズム21を、上述したようにフラッシュランプ13の棒状部分の長手方向に関して、少なくとも一部同士が棒状部分と同じ位置にあるように配しても、長手方向と垂直な平面上の位置をずらすことにより、棒状部分と離間した状態で配置することが可能である。より具体的には、X軸、Y軸及びZ軸によって表される3次元空間において、フラッシュランプ13の棒状部分の長手方向をX軸方向とした場合に、プリズム21と、フラッシュランプ13とは、X座標が一部同一であり、Y座標及びZ座標の少なくともいずれか一方が異なる。このようにプリズム21を配置することにより、引き抜かれるフラッシュランプ13とプリズム21とが干渉することを回避可能である。こうしてプリズム21を、固体レーザ媒質12の後端面に十分近い位置に配しておけば、この後端面から共振器ミラー23までの距離も十分短くすることができる。それにより装置の十分な小型化が可能になる上、共振器長を短く保って、パルス幅が十分に短いパルスレーザ光が得られるようになる。
【0054】
ここで、パルス幅が短いパルスレーザ光が望まれる理由について説明する。パルスレーザ光の照射によって生じる光音響波の大きさは、パルスレーザ光の総エネルギーに依存するだけではなく、パルスレーザ光の時間波形にも依存する。例えばパルスレーザ光の時間波形が緩やかに変化するとき、発生する光音響波はあまり大きくなく、パルスレーザ光の時間波形が急峻に変化するほど、発生する光音響波の大きさが大きくなる。すなわち、光強度の時間変化量と光音響波の大きさとが相関する。したがって、発生する光音響波、およびその検出信号の信号強度を大きく確保する上では、光強度の時間変化量が大きい、パルス幅(時間幅)の短いパルスレーザ光が用いられるのが望ましい。
【0055】
なお、固体レーザ媒質12から共振器ミラー23までの距離を短く保つ上では、先に述べたように、固体レーザ媒質12の後端面から出射した光Lを、固体レーザ媒質12の光軸に対して直角な方向に折り曲げるのが好ましい。
【0056】
また、上述したようにフラッシュランプ13および固体レーザ媒質12を上下に並べて配設する場合は、フラッシュランプ13を上側に配置しておけば、その引き抜き作業がより容易になる。
【0057】
なお先に述べた通り本実施形態では、フラッシュランプ13の棒状部分は、その発光部分だけでなく両端の端子13aをも含むものであるが、本発明における励起光源の「棒状部分」とはそのような形態に限らず、全体がほぼ棒状になっている部分を全て指すものである。すなわち例えば
図19に示すように、フラッシュランプ13の端子13aにリード線13bが接続されるような構成において、図中Laで示す両端部分では、端子13aのみならず、曲がり切っていないリード線13bの端部も発光部分と共に棒状になっているならば、この両端部分Laも含めたLtの範囲を「棒状部分」とするものである。さらに
図20に示すように、リード線13bにコネクタ13cが装着され、このコネクタ13cを介して端子13aにリード線13bが接続される構成においては、接続後の状態を示す
図21に表されている通り、両端のコネクタ13cをも含めたLtの範囲を「棒状部分」とするものである。
【0058】
次に
図5を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なおこの
図5において、
図1〜4中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
【0059】
この第2の実施形態に係る固体レーザ装置50は、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から前方、つまり同図中の右方に引き抜くように構成されたものである。すなわち本装置においては、レーザチャンバ11に保持された図示外の固体レーザ媒質12(
図1参照)の後端面と向き合う状態にしてリアミラーである共振器ミラー23が配置され、固体レーザ媒質12の前端面と向き合う状態にしてプリズム21が配置されている。プリズム21は、固体レーザ媒質12の前端面から発せられた光Lを、該固体レーザ媒質12の光軸と直角な方向に折り曲げる。
【0060】
上記構成を有する本実施形態の固体レーザ装置50においては、図中右方に引き抜かれるフラッシュランプ13が偏光子17やホルダ16等と干渉することなく、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から完全に取り出すことができる。
【0061】
次に
図6を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態に係る固体レーザ装置60は、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から後方、つまり同図中の左方に引き抜くように構成されたものである。すなわち本装置においてはプリズム21が、
図1および
図2に示した固体レーザ装置10におけるのと同様に配設されている。
【0062】
本実施形態の固体レーザ装置60は、
図1および
図2に示した固体レーザ装置10と比べると基本的に、Qスイッチ素子15および偏光子17が、リアミラーである共振器ミラー23とプリズム21との間に配置されている点のみで異なる。以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置60においても、図中左方に引き抜かれるフラッシュランプ13が偏光子17やホルダ16等と干渉することなく、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から完全に取り出すことができる。
【0063】
次に
図7を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態に係る固体レーザ装置70は、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から前方、つまり同図中の右方に引き抜くように構成されたものである。すなわち本装置においてはプリズム21が、
図5に示した固体レーザ装置50におけるプリズム21と同様に配設されている。
【0064】
本実施形態の固体レーザ装置70は、
図5に示した固体レーザ装置50と比べると基本的に、Qスイッチ素子15および偏光子17が、リアミラーである共振器ミラー23と固体レーザ媒質(図示せず)との間に配置されている点のみで異なる。以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置70においても、図中右方に引き抜かれるフラッシュランプ13が、出力ミラーである共振器ミラー19およびホルダ18と干渉することなく、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から完全に取り出すことができる。
【0065】
なお、反射光学素子としてはプリズム21に限らず、ミラー等を適用することもできる。また、固体レーザ媒質12から直線偏光した光Lが発せられる場合は、特に偏光子17を配置しなくてもよい。さらに、プリズム21によって折り曲げた光路を、さらに別の素子によって任意の方向に折り曲げても構わない。
【0066】
次に
図8を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。この第5の実施形態に係る固体レーザ装置80は、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から後方、つまり同図中の左方に引き抜くように構成されたものである。すなわち本装置においては、光Lを横方向に折り曲げる光学素子として、ホルダ71に取り付けられたブリュースタ偏光子72が用いられている。このブリュースタ偏光子72は、発振したレーザ光からS偏光成分のみを取り出して反射させる作用を果たす。そしてブリュースタ偏光子72およびホルダ71は、フラッシュランプ13の棒状部分の長手方向つまり
図8中の左右方向に関して、該棒状部分と少なくとも一部同士が同じ位置に有って、かつこの棒状部分と干渉しないように配設されている。またブリュースタ偏光子72およびホルダ71は、引き抜かれるフラッシュランプ13と干渉しない位置に配されている。
【0067】
以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置80においても、図中左方に引き抜かれるフラッシュランプ13が、Qスイッチ素子15やホルダ14等と干渉することなく、フラッシュランプ13をレーザチャンバ11から完全に取り出すことができる。
【0068】
次に
図9及び
図10を参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。この第6の実施形態に係る固体レーザ装置90は、第1の実施形態に係る固体レーザ装置10に、固体レーザ媒質12とプリズム21との間の光路を囲う筒部材35a、及び固体レーザ媒質12と偏光子17との間の光路を囲う筒部材35bが追加されたものである。つまり、筒部材35a及び35bは、固体レーザ媒質12とプリズム21或いは偏光子17との間の光路を内包する筒形状の部材である。筒部材35aはホルダ20に保持され、筒部材35bはホルダ35cに保持されている。フラッシュランプ13周辺で暖められた気体(空気)がこれらの光路に流入すると、屈折率の揺らぎ(いわゆる陽炎)が発生してしまい、レーザ光強度の安定性が低下してしまう。特に本発明では、フラッシュランプ13と固体レーザ媒質12との距離が近いため、この陽炎の影響は小さくない。そこで本実施形態では、筒部材35a及び35bを配置し、これらの光路への暖められた気体の流入を防止することで、レーザ光強度の安定性を確保している。
【0069】
筒部材35a及び35bの形状は、特に限定されず、例えば中空の円柱形状、四角柱形状又は他の多角柱形状の部材である。筒部材35a及び35bの内周の幅(中心軸或いは光軸に垂直な方向の長さ)は、特に限定されず、固体レーザ媒質12の幅と同程度かそれよりも長くてもよい。ただし、筒部材35a及び35bの全体の大きさは、フラッシュランプ13を後方に引き抜く際にフラッシュランプ13と干渉しない大きさである。筒部材35aの中心軸或いは光軸に沿った長さは、特に限定されないが、固体レーザ媒質12とプリズム21との間の光路のすべてを覆うことができる長さであることが好ましい。一方、筒部材35bの中心軸或いは光軸に沿った長さは、特に限定されず、陽炎の影響度合を考慮して適宜設定でき、固体レーザ媒質12と偏光子17との間の光路のすべてを覆う必要はない。これは、固体レーザ媒質12及び偏光子17の間隔が固体レーザ媒質12及びプリズム21の間隔よりも長いため、陽炎の影響が大きい領域のみを覆えば十分なためである。なお、筒部材35a及び35bはそれぞれ、固体レーザ媒質12の端部を、固体レーザ媒質12とプリズム21との間の光路と一緒に、又は、固体レーザ媒質12と偏光子17との間の光路と一緒に覆うことが好ましい。筒部材35a及び35bの材料は、特に限定されず、例えば金属材料、ガラス材料又はプラスチック材料である。なお、上記では、筒部材35a及び35bの両方を設ける場合について説明したが、筒部材はどちらか一方のみでもよい。
【0070】
以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置90においては、第1の実施形態と同様にフラッシュランプ13が引き抜かれる際の他の部材との干渉を防止でき、さらにフラッシュランプ13と固体レーザ媒質12とを近づけたことによる光強度の安定性の低下を抑制できる。
【0071】
次に
図11及び
図12を参照して、本発明の第7の実施形態について説明する。この第7の実施形態に係る固体レーザ装置91は、第6の実施形態に係る固体レーザ装置90と同様に筒部材を有するが、固体レーザ装置91の筒部材36は、固体レーザ媒質12とプリズム21との間の光路と一緒にプリズム21も覆う点で第6の実施形態の装置と異なる。このように、筒部材36でプリズム21も一緒に覆うことにより、暖められた気体が筒部材36及びプリズム21の隙間から固体レーザ媒質12及びプリズム21の間の光路に流入することをより確実に防止できる。なお、プリズム21によって折り曲げられたレーザ光Lの光路を確保するため、筒部材36の側面部分には開口、或いは透光部材が埋められた光窓が形成されている。また、
図11及び
図12には明示されていないが、第6の実施形態と同様に固体レーザ媒質12及び偏光子17の間に筒部材を設けてもよい。以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置91においても、第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
第6及び第7の実施形態では、暖められた気体の光路への流入を防止するために、筒部材を使用したが、上記目的を達成するためには、フラッシュランプ13及び各上記光路間の気体の流入を遮断できればよく、必ずしも筒形状の部材の使用に限られない。例えば、このような部材としては、同様に金属材料、ガラス材料又はプラスチック材料からなる板形状の部材(例えばU字形状、L字形状若しくは半円形状の板又は単なる平板)でもよい。
【0073】
次に
図13を参照して、本発明の第8の実施形態について説明する。この第8の実施形態に係る固体レーザ装置92は、第1の実施形態に係る固体レーザ装置10に、固体レーザ媒質12及びプリズム21の間を光学的に接続する導光部材37が追加されたものである。つまり本実施形態では、レーザ光Lは、気体空間に出ることなく導光部材を通って固体レーザ媒質12及びプリズム21の間を往復する。このように、固体レーザ媒質12及びプリズム21の間を導光部材37で接続することにより、暖められた気体が固体レーザ媒質12及びプリズム21の間の光路に流入することを防止できる。
【0074】
導光部材37は、両端面に反射防止膜(ARコート)が形成され配置されることが好ましい。或いは、導光部材37は、接着剤を使用しないオプティカルコンタクトによって固体レーザ媒質12又はプリズム21に接合され配置されることが好ましい。導光部材37の幅又は直径は固体レーザ媒質12よりも大きければよい。ただし、導光部材37の幅又は直径は、フラッシュランプ13を後方に引き抜く際にフラッシュランプ13と干渉しない大きさである。導光部材37の材料は例えば石英ガラスやアクリル等の透光材料である。なお、
図13には明示されていないが、固体レーザ媒質12及び偏光子17の間の全て又は一部に導光部材を設けてもよい。また、光路を折り曲げる光学素子がミラーやブリュースタ偏光子である場合には、導光部材の端面を可能な限りこれらの反射面に近づけることが好ましい。以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置92においても、第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
次に
図14及び
図15を参照して、本発明の第9の実施形態について説明する。この第9の実施形態に係る固体レーザ装置93は、第1の実施形態に係る固体レーザ装置10において、プリズム21の代わりに、固体レーザ媒質12と光学的に直接接続可能なプリズム38を使用したものである。つまり本実施形態では、レーザ光Lは、気体空間に出ることなく固体レーザ媒質12及びプリズム38の間を直接移動する。このように、固体レーザ媒質12及びプリズム38の間を直接接続することにより、固体レーザ媒質12及びプリズム38の間から、陽炎の影響を受けやすい気体空間を排除することができる。
【0076】
プリズム38は、固体レーザ媒質12と対向する入出射面に反射防止膜が形成され配置されることが好ましい。或いは、プリズム38は、オプティカルコンタクトによって固体レーザ媒質12に接合され配置されることが好ましい。プリズム38の大きさ及び形状は、特に限定されないが、フラッシュランプ13を後方に引き抜く際にフラッシュランプ13と干渉しない大きさ及び形状である。プリズム38の材料は、プリズム21と同様に例えば石英ガラスやアクリル等の透光材料である。以上の構成を有する本実施形態の固体レーザ装置93においても、第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
上記第6から第9の実施形態で、レーザ光強度の安定性を確保する手法について説明したが、固体レーザ媒質12の各端部でこれらの実施形態のうち異なる実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、固体レーザ媒質12の後方の端部については第6又は第7の実施形態(筒部材)を適用しかつ前方の端部については第8の実施形態(導光部材)を適用してもよい。また、固体レーザ媒質12の後方の端部については第9の実施形態(プリズムとの直接接続)を適用しかつ前方の端部については第6の実施形態(筒部材)又は第8の実施形態(導光部材)を適用してもよい。
【0078】
なお、以上説明した各実施形態は、共振器の内部にQスイッチ素子15と偏光子17あるいはブリュースタ偏光子72とを有する固体レーザ装置に本発明が適用されたものであるが、本発明は共振器の内部にその他の素子、例えば各種波長板や波長選択素子等を有する固体レーザ装置に対しても同様に適用可能である。
【0079】
次に、本発明の固体レーザ装置に適用することができるレーザチャンバ11の別の例について説明する。
図16に示すレーザチャンバ11は、
図4に示したレーザチャンバ11と比べると、内部空間11cの中にチューブ51および52が配設されている点が基本的に異なるものである。チューブ51は内部に固体レーザ媒質12を収容して、該固体レーザ媒質12と同じ方向に延びる。またチューブ52は内部にフラッシュランプ13を収容して、該フラッシュランプ13と同じ方向に延びる。そしてチューブ51および52の内部には冷媒が供給され、流通するそれらの冷媒によって固体レーザ媒質12およびフラッシュランプ13が冷却される。
【0080】
なおチューブ51および52は、光透過性の材料から形成されている。したがってフラッシュランプ13から発せられた励起光は、それらのチューブ51および52を透過して固体レーザ媒質12に照射され、この励起光によって固体レーザ媒質12が励起される。
【0081】
次に
図17に示すレーザチャンバ11は、
図4に示したレーザチャンバ11と比べると、内部にガラス材61が充填されている点が基本的に異なるものである。このガラス材61は、固体レーザ媒質12と同じ方向に延びて内部に固体レーザ媒質12を収容する貫通孔と、フラッシュランプ13と同じ方向に延びて内部にフラッシュランプ13を収容する貫通孔とを有する。上記2つの貫通孔内には冷媒が供給され、流通するそれらの冷媒によって固体レーザ媒質12およびフラッシュランプ13が冷却される。
【0082】
フラッシュランプ13から発せられた励起光は、ガラス材61を透過して固体レーザ媒質12に照射され、この励起光によって固体レーザ媒質12が励起される。
【0083】
なお本発明による固体レーザ装置においては、プリズム21等の光路を折り曲げる素子をレーザチャンバの前方および後方に配置して、棒状部分を有する励起光源をレーザチャンバの前方側、後方側の双方に引き抜き可能としてもよい。
【0084】
次に、本発明の固体レーザ装置を含む光音響計測装置について説明する。
図18は、一例として
図1および
図2に示した固体レーザ装置10を含む光音響計測装置の概略構成を示すものである。なお
図18では上記固体レーザ装置10を、光音響計測装置を構成する一つのユニットということから「レーザユニット」として示してあり、以下でもそのように称することとする。
【0085】
この光音響計測装置100は、超音波探触子(プローブ)101と、超音波ユニット102と、レーザユニット10とを備える。なお本実施形態では、音響波として超音波が用いられるが、超音波に限定されるものでは無く、被検対象や測定条件等に応じて適切な周波数を選択してさえいれば、可聴周波数の音響波が用いられてもよい。
【0086】
レーザユニット10から出射したレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ101まで導光され、プローブ101から被検体に向けて照射される。レーザ光の照射位置は特に限定されず、プローブ101以外の場所からレーザ光の照射を行ってもよい。
【0087】
被検体内では、照射されたレーザ光のエネルギーを光吸収体が吸収することで超音波(光音響波)が生じる。プローブ101は音響波検出手段であり、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有している。プローブ101は、一次元配列された複数の超音波振動子により、被検体内からの音響波(光音響波)を検出する。また、プローブ101は、被検体に対する音響波(超音波)の送信、および送信した超音波が被検体で反射した反射音響波(反射超音波)の受信を行う。
【0088】
超音波ユニット102は信号処理手段であり、受信回路121、AD変換手段122、受信メモリ123、データ分離手段124、光音響画像生成手段125、超音波画像生成手段126、画像合成手段127、制御手段128、および送信制御回路129を有する。
【0089】
受信回路121は、プローブ101で検出された光音響波の検出信号を受信し、また、プローブ101で検出された反射超音波の検出信号を受信する。AD変換手段122は、受信回路121が受信した光音響波および反射超音波の検出信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段122は、例えば所定の周期のサンプリングクロック信号に基づいて、所定のサンプリング周期で光音響波および反射超音波の検出信号をサンプリングする。AD変換手段122は、サンプリングした光音響波および反射超音波の検出信号(サンプリングデータ)を受信メモリ123に格納する。
【0090】
データ分離手段124は、受信メモリ123に格納された光音響波の検出信号のサンプリングデータと、反射超音波の検出信号のサンプリングデータとを分離する。データ分離手段124は、光音響波の検出信号のサンプリングデータを光音響画像生成手段125に入力し、また、分離した反射超音波のサンプリングデータを超音波画像生成手段(反射音響波画像生成手段)126に入力する。
【0091】
光音響画像生成手段125は、プローブ101で検出された光音響波の検出信号に基づいて光音響画像を生成する。光音響画像の生成は、例えば、位相整合加算などの画像再構成や、検波、対数変換などを含む。超音波画像生成手段126は、プローブ101で検出された反射超音波の検出信号に基づいて超音波画像(反射音響波画像)を生成する。超音波画像の生成も、位相整合加算などの画像再構成や、検波、対数変換などを含む。
【0092】
画像合成手段127は、光音響画像と超音波画像とを合成する。画像合成手段127は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。合成された画像は、ディスプレイなどの画像表示手段103に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段103に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、あるいは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0093】
制御手段128は、超音波ユニット102内の各部を制御する。制御手段128は、例えば固体レーザ装置にトリガ信号を送る。レーザユニット10内の図示しない制御手段は、上記トリガ信号を受け取るとフラッシュランプ13(
図1参照)を点灯させ、その後、Qスイッチ素子15を光通過状態に切り替えてパルスレーザ光を出射させる。制御手段128は、レーザ光の照射に合わせて、AD変換手段122にサンプリングトリガ信号を送り、光音響波のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0094】
制御手段128は、超音波画像の生成時は、送信制御回路129に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路129は、超音波送信トリガ信号を受けると、プローブ101から超音波を送信させる。制御手段128は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換手段122にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。
【0095】
本実施形態の光音響計測装置100は、光源として本発明による固体レーザ装置10を備えたものであるから、十分小型に形成可能なものとなる。
【0096】
上記では、光音響計測装置100においてプローブ101が光音響波と反射超音波の双方を検出するものとして説明したが、超音波画像の生成に用いるプローブと光音響画像の生成に用いるプローブとは、必ずしも同一である必要はない。つまり、光音響波と反射超音波とを、それぞれ別個のプローブで検出するようにしてもよい。また、上記実施形態では、固体レーザ装置が光音響計測装置の一部を構成する例について説明したが、本発明の固体レーザ装置を、光音響計測装置とは異なる装置に用いることも勿論可能である。
【0097】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の固体レーザ装置および光音響計測装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の変更を施したものも本発明の範囲に含まれる。