特許第6027358号(P6027358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027358クロックデータリカバリ回路及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027358
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】クロックデータリカバリ回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/02 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H04L7/02
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-163559(P2012-163559)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-27328(P2014-27328A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】中山 晃
(72)【発明者】
【氏名】原山 国広
【審査官】 森谷 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−192338(JP,A)
【文献】 米国特許第05012494(US,A)
【文献】 特開2012−039357(JP,A)
【文献】 特開2009−232462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準遷移周期毎にデータの値が遷移する基準遷移部を含むデータ系列からなる入力データ信号からクロック信号を再生するクロックデータリカバリ回路であって、
前記入力データ信号中のデータの値の遷移を検出したときに遷移検出信号を生成する遷移検出手段と、
前記遷移検出信号中から前記基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号を生成するイネーブル生成手段と、
基準クロック信号を生成する一方、前記イネーブル信号に応じて前記遷移検出信号中から前記基準遷移部を取り込み、前記基準クロック信号を前記基準遷移部に同期せしめるクロック生成手段と、
前記基準クロック信号に基づいて夫々異なる位相を有する複数の再生クロック信号を生成する遅延ロックループ手段と、を有し、
前記イネーブル生成手段は、前記複数の再生クロック信号の内のいずれか2つの再生クロック信号同士の位相差に基づいて前記データ系列における単位データ周期を検出し、前記単位データ周期に基づいて前記複数の再生クロック信号の内の1の再生クロック信号をイネーブルクロック信号として選定するイネーブルクロック選定手段と、
前記イネーブルクロック信号に応じて前記イネーブル信号のフロントエッジ部を生成する手段と、を含むことを特徴とするクロックデータリカバリ回路。
【請求項2】
前記クロック生成手段は、前記基準遷移部に同期した信号を前記単位データ周期分だけ遅延させたものを前記基準クロック信号として生成し、
前記イネーブル生成手段は、前記イネーブルクロック信号を前記単位データ周期分だけ遅延させたタイミングで前記イネーブル信号のフロントエッジ部を生成することを特徴とする請求項1記載のクロックデータリカバリ回路。
【請求項3】
前記遅延ロックループ手段は、前記基準クロック信号と前記複数の再生クロック信号の内の1の再生クロック信号との位相差に基づく遅延調整信号に応じて前記複数の再生クロック信号各々を送出する際の遅延時間を調整する手段を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のクロックデータリカバリ回路。
【請求項4】
前記クロック生成手段は、前記イネーブル信号に応じて前記遷移検出信号を前記単位データ周期分だけ遅延させて取り込む可変遅延取込手段を含み、
前記イネーブル生成手段は、前記イネーブルクロック信号を前記単位データ周期分だけ遅延させたタイミングで送出する可変遅延送出手段を含み、
前記可変遅延取込手段及び前記可変遅延送出手段は、前記遅延調整信号に応じて遅延量を調整することを特徴とする請求項3記載のクロックデータリカバリ回路。
【請求項5】
前記可変遅延取込手段は、前記イネーブル信号と前記遷移検出信号との論理積結果を取り込むと共に前記遅延調整信号に応じてその遅延量を調整する可変遅延ゲートであることを特徴とする請求項4記載のクロックデータリカバリ回路。
【請求項6】
前記可変遅延取込手段は、前記イネーブル信号を前記遷移検出信号のエッジタイミングで取り込んで保持すると共に前記遅延調整信号に応じてその遅延量を調整する可変遅延フリップフロップであることを特徴とする請求項4記載のクロックデータリカバリ回路。
【請求項7】
基準遷移周期毎にデータの値が遷移する基準遷移部を含むデータ系列からなる入力データ信号からクロック信号を再生するクロックデータリカバリ回路が形成されている半導体装置であって、
前記クロックデータリカバリ回路は、
前記入力データ信号中のデータの値の遷移を検出したときに遷移検出信号を生成する遷移検出手段と、
前記遷移検出信号中から前記基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号を生成するイネーブル生成手段と、
基準クロック信号を生成する一方、前記イネーブル信号に応じて前記遷移検出信号中から前記基準遷移部を取り込み、前記基準クロック信号を前記基準遷移部に同期せしめるクロック生成手段と、
前記基準クロック信号に基づいて夫々異なる位相を有する複数の再生クロック信号を生成する遅延ロックループ手段と、を有し、
前記イネーブル生成手段は、前記複数の再生クロック信号の内のいずれか2つの再生クロック信号同士の位相差に基づいて前記データ系列における単位データ周期を検出し、前記単位データ周期に基づいて前記複数の再生クロック信号の内の1の再生クロック信号をイネーブルクロック信号として選定するイネーブルクロック選定手段と、
前記イネーブルクロック信号に応じて前記イネーブル信号のフロントエッジ部を生成する手段と、を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記クロック生成手段は、前記基準遷移部に同期した信号を前記単位データ周期分だけ遅延させたものを前記基準クロック信号として生成し、
前記イネーブル生成手段は、前記イネーブルクロック信号を前記単位データ周期分だけ遅延させたタイミングで前記イネーブル信号のフロントエッジ部を生成することを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記遅延ロックループ手段は、前記基準クロック信号と前記複数の再生クロック信号の内の1の再生クロック信号との位相差に基づく遅延調整信号に応じて前記複数の再生クロック信号各々を送出する際の遅延時間を調整する手段を含むことを特徴とする請求項7又は8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記クロック生成手段は、前記イネーブル信号に応じて前記遷移検出信号を前記単位データ周期分だけ遅延させて取り込む可変遅延取込手段を含み、
前記イネーブル生成手段は、前記イネーブルクロック信号を前記単位データ周期分だけ遅延させたタイミングで送出する可変遅延送出手段を含み、
前記可変遅延取込手段及び前記可変遅延送出手段は、前記遅延調整信号に応じて遅延量を調整することを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記可変遅延取込手段は、前記イネーブル信号と前記遷移検出信号との論理積結果を取り込むと共に前記遅延調整信号に応じてその遅延量を調整する可変遅延ゲートであることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記可変遅延取込手段は、前記イネーブル信号を前記遷移検出信号のエッジタイミングで取り込んで保持すると共に前記遅延調整信号に応じてその遅延量を調整する可変遅延フリップフロップであることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ信号中からクロック信号を再生するクロックデータリカバリ回路(以下、CDR回路と称する)及びこのCDR回路が形成されている半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高速シリアルデータの通信方式として、データ信号中にクロック信号を重畳させて伝送するエンベデットクロック(embedded clock)方式が採用されている。
【0003】
エンベデットクロック方式を採用した通信システムの受信装置には、受信データ信号におけるデータ遷移の周期性を利用してこの受信データ信号からクロック信号を再生し、この再生クロック信号のタイミングで受信データ信号の取り込みを行うCDR回路が搭載されている。
【0004】
ところで、CDR回路では、データ遷移点を基準にして再生クロック信号の周波数を調整している為、受信データ信号中にデータ遷移の無い期間が長期に亘ると、再生クロック信号の精度が低下してくる。
【0005】
そこで、所定の基準遷移周期毎に必ず信号レベルの遷移が生じる基準遷移部を含んだデータ信号を伝送するようにした、いわゆるクロックエンペデッド方式が提案された(例えば、特許文献1の図3参照)。この方式を採用した受信装置に搭載されているCDR回路として、受信データ信号中から基準遷移部だけを取り出し、かかる基準遷移部に位相同期したクロック信号を基準クロック信号として生成するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2の図6参照)。この際、かかるCDR回路では、上記した基準クロック信号に同期し且つ夫々異なる位相を有する複数の受信クロック信号を生成し、複数の受信クロック信号の内の少なくとも1つを用いて、上記した基準遷移部だけを取り出す為のイネーブル信号を生成する。
【0006】
ところで、上記した基準クロック信号を生成する回路及びイネーブル信号を生成する回路は、製造上のバラツキ、周囲温度の変化、或いは電源電圧の変動等に起因して、基準クロック信号及びイネーブル信号を送出する際の遅延時間に変動が生じる。
【0007】
よって、高速データ通信によって受信データ信号のデータ遷移部同士の間隔が短くなると、上記した遅延時間の変動に伴い、本来想定していた基準遷移部の出現時点よりも遅いタイミング或いは早いタイミングでイネーブル信号が生成される虞があった。このような場合、受信データ信号中から基準遷移部だけを取り出すのが困難となり、再生クロック信号の精度が低下するという問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−39357号公報
【特許文献2】特開2009−232462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、受信データ信号中からクロック信号を再生するにあたり、高速通信動作に伴うクロック信号の精度低下を招くことがないクロックデータリカバリ回路及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るクロックデータリカバリ回路は、基準遷移周期毎にデータの値が遷移する基準遷移部を含むデータ系列からなる入力データ信号からクロック信号を再生するクロックデータリカバリ回路であって、前記入力データ信号中のデータの値の遷移を検出したときに遷移検出信号を生成する遷移検出手段と、前記遷移検出信号中から前記基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号を生成するイネーブル生成手段と、基準クロック信号を生成する一方、前記イネーブル信号に応じて前記遷移検出信号中から前記基準遷移部を取り込み、前記基準クロック信号を前記基準遷移部に同期せしめるクロック生成手段と、
前記基準クロック信号に基づいて夫々異なる位相を有する複数の再生クロック信号を生成する遅延ロックループ手段と、を有し、前記イネーブル生成手段は、前記複数の再生クロック信号の内のいずれか2つの再生クロック信号同士の位相差に基づいて前記データ系列における単位データ周期を検出し、前記単位データ周期に基づいて前記複数の再生クロック信号の内の1の再生クロック信号をイネーブルクロック信号として選定するイネーブルクロック選定手段と、前記イネーブルクロック信号に応じて前記イネーブル信号のフロントエッジ部を生成する手段と、を含む。
【0011】
また、本発明に係る半導体装置は、基準遷移周期毎にデータの値が遷移する基準遷移部を含むデータ系列からなる入力データ信号からクロック信号を再生するクロックデータリカバリ回路が形成されている半導体装置であって、前記クロックデータリカバリ回路は、
前記入力データ信号中のデータの値の遷移を検出したときに遷移検出信号を生成する遷移検出手段と、前記遷移検出信号中から前記基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号を生成するイネーブル生成手段と、基準クロック信号を生成する一方、前記イネーブル信号に応じて前記遷移検出信号中から前記基準遷移部を取り込み、前記基準クロック信号を前記基準遷移部に同期せしめるクロック生成手段と、前記基準クロック信号に基づいて夫々異なる位相を有する複数の再生クロック信号を生成する遅延ロックループ手段と、を有し、前記イネーブル生成手段は、前記複数の再生クロック信号の内のいずれか2つの再生クロック信号同士の位相差に基づいて前記データ系列における単位データ周期を検出し、前記単位データ周期に基づいて前記複数の再生クロック信号の内の1の再生クロック信号をイネーブルクロック信号として選定するイネーブルクロック選定手段と、前記イネーブルクロック信号に応じて前記イネーブル信号のフロントエッジ部を生成する手段と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るクロックデータリカバリ回路は、基準遷移周期毎にデータの値が遷移する基準遷移部を含むデータ系列からなる入力データ信号から基準クロック信号を再生するにあたり、先ず、入力データ信号中のデータの値の遷移を検出して遷移検出信号を生成する。次に、この遷移検出信号中から基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号を生成する。そして、かかるイネーブル信号に応じて遷移検出信号中から基準遷移部を取り込み、この基準遷移部に同期した信号を基準クロック信号として生成すると共に、この基準クロック信号に基づいて夫々異なる位相を有する複数の再生クロック信号を生成する。ここで、上記したイネーブル信号を生成する為に、先ず、上記した複数の再生クロック信号の内のいずれか2つの再生クロック信号同士の位相差に基づいて入力データ信号中のデータ系列における単位データ周期を検出する。そして、この単位データ周期に基づいて複数の再生クロック信号の内から1の再生クロック信号をイネーブル信号生成用のイネーブルクロック信号として選定し、このイネーブルクロック信号に応じてイネーブル信号のフロントエッジ部を生成するのである。これにより、単位データ周期に追従させて、遷移検出信号中から基準遷移部に対応したパルスだけを確実に取り込めるタイミングで、基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号が生成される。
【0013】
よって、本発明によれば、高速通信動作に伴い単位データ周期が短縮されても、この通信速度に追従させて、入力データ信号中の基準遷移部だけに同期させた精度の高い基準クロック信号を再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るクロックデータリカバリ回路100の構成を示すブロック図である。
図2】クロックデータリカバリ回路100の内部動作を示すタイムチャートである。
図3】クロック生成部2の内部構成の一例を示す回路図である。
図4】可変遅延ナンドゲート21、22及び62の内部構成を示す回路図である。
図5】多相クロック生成部30の内部構成を示す回路図である。
図6】可変遅延回路301〜301各々の内部構成を示す回路図である。
図7】イネーブル信号生成部6の内部構成の一例を示す回路図である。
図8】イネーブル信号ENの送出タイミング及びイネーブル信号ENを生成する為に用いられるイネーブルクロック信号CK(X)のタイミングを示すタイムチャートの一例である。
図9】クロック生成部2の内部構成の他の一例を示す回路図である。
図10】可変遅延DFF26の内部構成を示す回路図である。
図11】クロック生成部2として図9に示す内部構成を採用した場合における、イネーブル信号EN及びイネーブルクロック信号CK(X)のタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るクロックデータリカバリ回路100を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すクロックデータリカバリ回路100は、図示せぬ受信装置に搭載されている半導体ICに形成されている。受信装置は、送信装置(図示せぬ)から送信された送信信号を受信して復調し、これを2値データ化して受信データ信号DINを生成する。この際、受信データ信号DINには、図2に示す如く、夫々が単位データ周期UIを有する複数のデータビットからなるデータ系列DS中に、基準遷移周期P毎に1ビット分のダミービットDBが挿入されている。この際、図2に示すように、データ系列DSの先頭のデータビットが論理レベル0である場合にはその直前に論理レベル1のダミービットDBが挿入される。一方、先頭のデータビットが論理レベル1である場合にはその直前に論理レベル0のダミービットDBが挿入される。これにより、受信データ信号DINには、基準遷移周期P毎に、ダミービットDBのリアエッジ部にて論理レベル1から論理レベル0、或いは論理レベル0から論理レベル1に遷移する基準遷移部TCが出現することになる。
【0017】
遷移検出部1は、かかる受信データ信号DIN中からデータビットの値が論理レベル0から論理レベル1に遷移する立ち上がりエッジ部を検出した時、及び論理レベル1から論理レベル0に遷移する立ち下がりエッジ部を検出した時に、図2に示す如き短パルスの遷移検出信号CLKX2を生成し、これをクロック生成部2に供給する。
【0018】
図3は、クロック生成部2の内部構成を示す回路図である。
【0019】
図3に示すように、クロック生成部2は、可変遅延ナンドゲート21、22、ナンドゲート23、インバータ24及び25からなるRSフリップフロップ(以下、RSFFと称する)によって構成されている。
【0020】
可変遅延ナンドゲート21は、遷移検出部1から供給された遷移検出信号CLKX2と、後述するイネーブル信号生成部6から供給された、図2に示す如きイネーブル信号ENとの否定論理積を求め、この否定論理積結果を示すセット信号ST1をナンドゲート23の入力端子I1に供給する。要するに、可変遅延ナンドゲート21は、イネーブル信号ENが論理レベル1である間にだけ遷移検出信号CLKX2を取り込み、この取り込んだ遷移検出信号CLKX2の論理レベルを反転させた信号を、セット信号ST1としてナンドゲート23に供給するのである。尚、可変遅延ナンドゲート21は、遷移検出信号CLKX2が論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移した時点から0.5・UI(UI:単位データ周期)だけ遅らせて上記セット信号ST1をナンドゲート23に供給する。この際、可変遅延ナンドゲート21での遅延時間は、後述する遅延調整信号(CT、CT)に応じて常に0.5・UIを維持するように調整されている。このように、可変遅延ナンドゲート21は、イネーブル信号ENに応じて遷移検出信号CLKX2を単位データ周期UI分だけ遅延させてから取り込む可変遅延取込手段として動作するものである。インバータ24は、再生クロック信号CK(後述する)の論理レベルを反転させた信号をリセット信号RT1として可変遅延ナンドゲート22の入力端子I2に供給する。可変遅延ナンドゲート22の入力端子I1にはナンドゲート23の出力端子が接続されており、可変遅延ナンドゲート22の出力端子には、ナンドゲート23の入力端子I2及びインバータ25の入力端子が接続されている。尚、可変遅延ナンドゲート22は、再生クロック信号CKが論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移した時点から0.5・UIだけ遅らせてその出力結果をナンドゲート23及びインバータ25各々に供給する。この際、可変遅延ナンドゲート22での遅延時間は、遅延調整信号(CT、CT)に応じて常に0.5・UIを維持するように調整されている。インバータ25は、可変遅延ナンドゲート22から送出された信号の論理レベルを反転させた信号を基準クロック信号CLKとして出力する。
【0021】
図4は、可変遅延ナンドゲート21及び23の内部構成の一例を示す回路図である。
【0022】
図4に示すように、可変遅延ナンドゲート21及び23の各々は、nチャネルMOS(metal-oxide semiconductor)型のトランジスタ201及び202と、pチャネルMOS型のトランジスタ203及び204と、可変抵抗205〜207と、を有する。
【0023】
トランジスタ201のゲート端子は入力端子I1に接続されており、そのソース端子はトランジスタ202のドレイン端子に接続されている。トランジスタ201のドレイン端子は出力ラインL0を介してトランジスタ203及び204各々のドレイン端子に接続されている。トランジスタ202のゲート端子は入力端子I2に接続されており、そのソース端子は可変抵抗205の一端に接続されている。可変抵抗205の他端には接地電圧GNDが印加されている。可変抵抗205は、遅延調整信号CT(後述する)に応じてその抵抗値を変更する。トランジスタ203のゲート端子は入力端子I1に接続されており、そのソース端子は可変抵抗206の一端に接続されている。可変抵抗206の他端には電源電圧VDDが印加されている。トランジスタ204のゲート端子は入力端子I2に接続されており、そのソース端子は可変抵抗207の一端に接続されている。可変抵抗207の他端には電源電圧VDDが印加されている。これら可変抵抗206及び207は、遅延調整信号CT(後述する)に応じて、その抵抗値を変更する。よって、入力端子I1又はI2に論理レベル0に対応した電圧が印加されると、トランジスタ203又は204がオン状態となり、可変抵抗206及びトランジスタ203、または可変抵抗207及びトランジスタ204を介して電流が出力ラインL0に流れ込む。これにより、出力ラインL0が充電され、この出力ラインL0上の電圧が時間経過につれて上昇する。この際、入力端子I1又はI2に印加されていた電圧が論理レベル1から論理レベル0に遷移してから0.5・UIだけ経過した時点で出力ラインL0上の電圧が閾値電圧以上となり、論理レベル0から論理レベル1に遷移する信号が出力端子Yを介して送出される。
【0024】
ここで、遅延調整信号CTに応じて可変抵抗206及び207の抵抗値が増加すると、出力ラインL0を充電する電流量が低下し、時間経過に伴う出力ラインL0上の電圧上昇率が低下する。よって、その電圧が閾値電圧を超えるまでの時間が長くなり、それ故、出力端子Yを介して送出される信号の遅延時間が増加する。一方、遅延調整信号CTに応じて可変抵抗206及び207の抵抗値が低下すると、出力ラインL0を充電する電流量が増加し、時間経過に伴う出力ラインL0上の電圧上昇率が高くなる。よって、その電圧が閾値電圧を超えるまでの時間が短くなり、それ故、出力端子Yを介して送出される信号の遅延時間が減少する。又、入力端子I1及びI2に共に論理レベル1に対応した電圧が印加されると、トランジスタ201及び202がオン状態となり、出力ラインL0からトランジスタ201、202及び可変抵抗205に電流が引き込まれる。これにより、出力ラインL0が放電し、この出力ラインL0上の電圧が時間経過につれて下降する。この際、入力端子I1及びI2に共に論理レベル1に対応した電圧が印加開始されてから0.5・UIだけ経過した時点で出力ラインL0上の電圧が閾値電圧未満となり、論理レベル1から論理レベル0に遷移する信号が出力端子Yを介して送出される。ここで、遅延調整信号CTに応じて可変抵抗205の抵抗値を増加すると、出力ラインL0を放電させる電流量が低下するので、時間経過に伴う出力ラインL0上の電圧下降率が低くなる。よって、その電圧が閾値電圧を下回るまでの時間が長くなり、それ故、出力端子Yを介して送出される信号の遅延時間を増大させるような調整が施されることになる。一方、遅延調整信号CTに応じて可変抵抗205の抵抗値が低下すると、出力ラインL0を放電する電流量が増加するので、時間経過に伴う出力ラインL0上の電圧下降率が高くなる。よって、その電圧が閾値電圧を下回るまでの時間が短くなり、それ故、出力端子Yを介して送出される信号の遅延時間を減少させるような調整が施されることになる。
【0025】
上記した構成により、クロック生成部2は、イネーブル信号ENが論理レベル1の状態にある場合にだけ遷移検出信号CLKX2を取り込む。そして、クロック生成部2は、図2に示す如く、遷移検出信号CLKX2の立ち上がりエッジタイミングで論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移し、その後、再生クロック信号CKの立ち上がりエッジタイミングで論理レベル0の状態に遷移するというパルス波形を有する基準クロック信号CLKを生成する。尚、クロック生成部2は、上記した可変遅延ナンドゲート21及び22を備えることにより、図2に示すように、遷移検出信号CLKX2又は再生クロック信号CKの立ち上がりエッジタイミングから、1.0・UIだけ遅延させたタイミングで基準クロック信号CLKを出力する。この際、クロック生成部2での遅延時間は、可変遅延ナンドゲート21及び22により、遅延調整信号(CT、CT)に応じて常に1.0・UIを維持するように調整されている。
【0026】
クロック生成部2は、かかる基準クロック信号CLKを遅延ロックループ(以下、DLLと称する)回路3に供給する。
【0027】
DLL回路3は、位相比較器31、チャージポンプ32、位相制御回路33及び多相クロック生成部30を含む。
【0028】
位相比較器31は、基準クロック信号CLKと再生クロック信号CK(後述する)との位相を比較する。この際、位相比較器31は、基準クロック信号CLKに対して再生クロック信号CKが遅れ位相である場合にはチャージアップ信号UPをチャージポンプ32に供給する一方、基準クロック信号CLKに対して再生クロック信号CKが進み位相である場合にはチャージダウン信号DNをチャージポンプ32に供給する。チャージポンプ32は、チャージアップ信号UPが供給されている間は徐々にその電圧が増加する一方、チャージダウン信号DNが供給されている間は徐々にその電圧が下降する位相制御電圧CTRを生成し、これを位相制御回路33に供給する。位相制御回路33は、位相制御電圧CTRが増加している間は遅延量を徐々に低下させるべき遅延調整信号CT及びCTを生成する。一方、位相制御電圧CTRが下降している間は、位相制御回路33は、その遅延量を徐々に増加させるべき遅延調整信号CT及びCTを生成する。位相制御回路33は、かかる遅延調整信号CT及びCTをクロック生成部2、イネーブル信号生成部6及び多相クロック生成部30に供給する。すなわち、位相比較器31、チャージポンプ32及び位相制御回路33からなる位相制御手段は、再生クロック信号CK〜CKの内の1の再生クロック信号CKと基準クロック信号CLKとの位相差に対応した遅延調整信号CT及びCTに応じて、クロック生成部2、イネーブル信号生成部6及び多相クロック生成部30各々の遅延量(位相)を制御する。
【0029】
図5は、多相クロック生成部30の内部構成を示す回路図である。
【0030】
図5に示すように、多相クロック生成部30は、直列に接続された可変遅延回路301〜301からなる。
【0031】
図6は、可変遅延回路301〜301各々の内部構成を示す回路図である。
【0032】
図6において、pチャネルMOS(metal-oxide semiconductor)型のトランジスタ311及びnチャネルMOS型のトランジスタ312各々のゲート端子は、入力端子Iに接続されており、夫々のドレイン端子はラインL1を介してインバータ313の入力端子に接続されている。トランジスタ311のソース端子には可変抵抗314を介して電源電圧VDDが印加されている。可変抵抗314は、遅延調整信号CTに応じてその抵抗値を変更する。トランジスタ312のソース端子には可変抵抗315を介して接地電圧GNDが印加されている。可変抵抗315は、遅延調整信号CTに応じてその抵抗値を変更する。 よって、入力端子Iに論理レベル0に対応した電圧が印加されると、トランジスタ311及び312の内のトランジスタ311がオン状態となり、可変抵抗314及びトランジスタ311を介して電流がラインL1に流れ込む。これにより、ラインL1が充電され、このラインL1上の電圧が時間経過につれて上昇する。ここで、入力端子Iに論理レベル1に対応した電圧が印加開始されてから0.5・UIだけ経過するとラインL1上の電圧がインバータ313の閾値電圧を超える。よって、インバータ313は論理レベル1から論理レベル0に遷移する信号を出力端子Yを介して送出する。この際、遅延調整信号CTに応じて可変抵抗314の抵抗値が増加すると、ラインL1を充電する電流量が低下するので、時間経過に伴うラインL1上の電圧上昇率が低下する。よって、その電圧がインバータ313の閾値電圧を超えるまでの時間が長くなり、インバータ313が論理レベル0に対応した電圧をその出力端子Yに送出するタイミングが遅くなる。一方、入力端子Iに論理レベル1に対応した電圧が印加されると、トランジスタ311及び312の内のトランジスタ312がオン状態となり、トランジスタ312及び可変抵抗315を介してラインL1から電流が引き出される。これにより、ラインL1が放電し、このラインL1上の電圧が時間経過につれて下降する。ここで、入力端子Iに論理レベル0に対応した電圧が印加開始されてから0.5・UIだけ経過するとラインL1上の電圧がインバータ313の閾値電圧を下回る。よって、インバータ313は論理レベル0から論理レベル1に遷移する信号を出力端子Yを介して送出する。この際、遅延調整信号CTに応じて可変抵抗315の抵抗値が増加すると、ラインL1を放電する電流量が低下するので、時間経過に伴うラインL1上の電圧下降率が低下する。よって、その電圧がインバータ313の閾値電圧を下回るまでの時間が長くなり、インバータ313が論理レベル1に対応した電圧をその出力端子Yに送出するタイミングが遅くなる。
【0033】
上記した構成により、可変遅延回路301は、その入力端子Iに供給された、上記基準クロック信号CLKを図2に示す如く0.5・UIだけ遅延させたものを再生クロック信号CKとして出力端子Yから送出すると共に、これを次段の可変遅延回路301の入力端子Iに供給する。可変遅延回路301は、再生クロック信号CK図2に示す如く0.5・UIだけ遅延させたものを再生クロック信号CKとして出力端子Yから送出すると共に、これを次段の可変遅延回路301の入力端子Iに供給する。可変遅延回路301は、再生クロック信号CK図2に示す如く0.5・UIだけ遅延させたものを再生クロック信号CKとして出力端子Yから送出すると共に、これを次段の可変遅延回路301の入力端子Iに供給する。以下、同様に、可変遅延回路301〜301n−1の各々は、前段の可変遅延回路301から供給された再生クロック信号CKを図2に示す如く0.5・UIだけ遅延させたものを再生クロック信号CK〜CKn−1として夫々の出力端子Yから送出すると共に、次段の可変遅延回路301の入力端子Iに供給する。更に、最終段の可変遅延回路301は、前段の可変遅延回路301n−1から供給された再生クロック信号CKn−1図2に示す如く0.5・UIだけ遅延させたものを再生クロック信号CKとして出力端子Yから送出する。
【0034】
尚、可変遅延回路301〜301は、上記した位相制御回路33から供給された遅延調整信号CT及びCTに応じて夫々の遅延時間(0.5・UI)を調整する。
【0035】
従って、上記可変遅延回路301〜301からなる多相クロック生成部30、位相比較器31、チャージポンプ32及び位相制御回路33を有するDLL回路3は、図2に示す如く、基準クロック信号CLKに同期させて0.5・UI分ずつ順次位相を遅らせた多相の再生クロック信号CK〜CKを生成する。DLL回路3は、再生クロック信号CK〜CKの内のCKを位相比較31に供給し、CKをクロック生成部2に供給する。更に、DLL回路3は、再生クロック信号CK〜CKの内のCK及びCKをイネーブルクロック選定部4に供給すると共に、再生クロック信号CK〜CKをクロックセレクタ5に供給する。
【0036】
イネーブルクロック選定部4は、先ず、再生クロック信号CK及びCK同士の位相差を検出し、その位相差に基づいて図2に示す如き単位データ周期UIを検出する。例えば、再生クロック信号CK及びCK同士の位相差は可変遅延回路301の遅延時間である0.5UIに相当するから、イネーブルクロック選定部4は、上記の如く検出した位相差を2倍することにより単位データ周期UIが求まる。次に、イネーブルクロック選定部4は、かかる単位データ周期UIに基づいて、以下の数式を満たすクロック位相係数ZZを選択する。
【0037】
2.7・UI−WCLK>ZZ・UI>2.3・UI
CLK:CLKX2のパルス幅
尚、クロック位相係数ZZとは、再生クロック信号CK〜CK各々の立ち上がりエッジタイミングを、基準クロック信号CLKの立ち上がりエッジタイミングを基点として相対的に表す為の係数である。例えば、図2において、再生クロック信号CKは基準クロック信号CLKと同一位相であるので、クロック位相係数ZZは0となる。また再生クロック信号CKn−1は基準クロック信号CLKに対して0.5・UIだけ位相が進んでいるので、クロック位相係数ZZは0.5となる。すなわち、再生クロック信号CK〜CKの各々には、夫々に対応したクロック位相係数ZZが予め割り当てられているのである。そこで、イネーブルクロック選定部4は、再生クロック信号CK〜CK各々に割り当てられているクロック位相係数ZZの内から上記数式を満たすものを選択し、この選択したクロック位相係数ZZに対応した1の再生クロック信号CKを、イネーブル信号の立ち上がりエッジ、つまりフロントエッジ生成用のイネーブルクロック信号CK(X)として選定する。そして、イネーブルクロック選定部4は、このイネーブルクロック信号CK(X)を選択させるべきクロック選択信号SCKをクロックセレクタ5に供給する。
【0038】
クロックセレクタ5は、再生クロック信号CK〜CKの内から、クロック選択信号SCKにて示されるイネーブルクロック信号CK(X)を選択し、このイネーブルクロック信号CK(X)をイネーブル信号生成部6に供給する。更に、クロックセレクタ5は、再生クロック信号CK〜CKの内から、上記の如く選択した再生クロック信号CKよりも1・UI分だけ位相が遅れている再生クロック信号CK(X−2)を選択しこれをイネーブル信号生成部6に供給する。
【0039】
図7は、イネーブル信号生成部6の内部構成を示す回路図である。
【0040】
図7に示すように、イネーブル信号生成部6は、可変遅延インバータ61、可変遅延ナンドゲート62、ナンドゲート63、インバータ64及び65からなるRSFFによって構成されている。
【0041】
可変遅延インバータ61は、クロックセレクタ5から供給されたイネーブルクロック信号CK(X)の論理レベルを反転させた反転セット信号をナンドゲート63の入力端子I1に供給する。尚、可変遅延インバータ61は、イネーブルクロック信号CK(X)が論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移した時点から0.5・UIだけ遅らせて、上記した反転セット信号をナンドゲート63に供給する。この際、可変遅延インバータ61での遅延時間は、遅延調整信号(CT、CT)に応じて常に0.5・UIを維持するように調整されている。インバータ64は、クロックセレクタ5から供給された再生クロック信号CK(X−2)の論理レベルを反転させた反転リセット信号を可変遅延ナンドゲート62に供給する。可変遅延ナンドゲート62の入力端子I1にはナンドゲート63の出力端子が接続されており、可変遅延ナンドゲート62の出力端子には、ナンドゲート63の入力端子I2及びインバータ65の入力端子が接続されている。尚、可変遅延ナンドゲート62は、再生クロック信号CK(X−2)が論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移した時点から0.5・UIだけ遅らせてその出力結果をナンドゲート63及びインバータ65各々に供給する。この際、可変遅延ナンドゲート61での遅延時間は、遅延調整信号(CT、CT)に応じて常に0.5・UIを維持するように調整されている。インバータ65は、可変遅延ナンドゲート62から送出された信号の論理レベルを反転させた信号をイネーブル信号ENとして出力する。尚、可変遅延ナンドゲート62の内部構成は図4に示すものと同一であり、可変遅延インバータ61の内部構成は、図6に示される構成からインバータ313を省いたものである。
【0042】
かかる構成により、イネーブル信号生成部6は、図2に示す如く、イネーブルクロック信号CK(X)に応じて論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移し、再生クロック信号CK(X−2)に応じて論理レベル1から論理レベル0の状態に遷移するパルス波形を有するイネーブル信号ENを生成する。すなわち、イネーブル信号生成部6は、再生クロック信号CK〜Ckの内の1のイネーブルクロック信号CK(X)に応じて、図2に示す如き基準遷移部TCを含む区間を示すイネーブル信号ENのフロントエッジ部を生成し、再生クロック信号CK(X−2)に応じて、このイネーブル信号ENのリアエッジ部を生成するのである。尚、イネーブル信号生成部6は、上記した可変遅延インバータ61及び可変遅延ナンドゲート62を備えることにより、図2に示すように、イネーブルクロック信号CK(X)又はCK(X−2)のフロントエッジタイミングから、1.0・UIだけ遅延させてイネーブル信号ENを出力する。この際、かかる遅延時間は、遅延調整信号(CT、CT)に応じて常に1.0・UIを維持するように調整される。すなわち、これら可変遅延インバータ61及び可変遅延ナンドゲート62は、イネーブルクロック信号CK(X)を単位データ周期UIだけ遅延させたタイミングで送出する可変遅延送出手段として動作する。イネーブル信号生成部6は、上記の如く生成したイネーブル信号ENをクロック生成部2に供給する。
【0043】
以下に、図1に示すクロックデータリカバリ回路100の動作について説明する。
【0044】
先ず、遷移検出部1は、受信データ信号DIN中からデータビットの値が遷移するフロントエッジ部及びリアエッジ部を検出し、各エッジ部の検出時点で論理レベル0から論理レベル1の状態に遷移する短パルスの波形を有する、図2に示す如き遷移検出信号CLKX2を生成する。次に、この遷移検出信号CLKX2中から基準遷移部TCに対応したパルスのみを取り込ませるべき論理レベル1のイネーブル信号ENに応じて、クロック生成部2が、図2に示す如き基準遷移部TCに同期した基準クロック信号CLKを生成する。そして、DLL回路3により、この基準クロック信号CLKに同期させて0.5・UI分ずつ順次位相を遅らせた多相の再生クロック信号CK〜CKを生成する。
【0045】
この際、上記したイネーブル信号ENを生成するにあたり、イネーブルクロック選定部4、クロックセレクタ5及びイネーブル信号生成部6からなるイネーブル生成手段は、先ず、再生クロック信号(CK、CK)に基づいて、図2に示す単位データ周期UIを求める。そして、イネーブル生成手段は、単位データ周期UIに基づき、そのフロントエッジ部が図8に示す如き時点t1〜t2までの範囲TW内に現れるイネーブル信号ENを生成する。
【0046】
尚、時点t1とは、0.3・UI分のジッターマージンを付加した状態で、イネーブル信号ENのフロントエッジ部が、遷移検出信号CLKX2中の基準遷移部TCに対応したパルスCPの直前のパルスCPと時間的に重複しない限界の時点である。つまり、時点t1よりも前の時点でイネーブル信号ENのフロントエッジ部が現れると、本来取り込むべきパルスCPの直前のパルスCPを取り込んでしまい、基準クロック信号CLKの精度低下を招くことになる。また、時点t2とは、上記したパルスCPのフロントエッジ部よりも、0.3・UI分のジッターマージンを考慮したセットアップタイムの分だけ時間的に前方の時点である。つまり、時点t2よりも後の時点でイネーブル信号ENのフロントエッジ部が現れると、パルスCPを確実に取り込むことができなくなり、基準クロック信号CLKの精度低下を招くことになる。
【0047】
このように、イネーブル生成手段(4〜6)によれば、単位データ周期UIに追従させて、遷移検出信号CLKX2中から基準遷移部TCに対応したパルスCPだけを確実に取り込めるタイミング(範囲TW内)で、基準遷移部(TC)に対応した区間を示すイネーブル信号のフロントエッジ部が生成される。
【0048】
よって、本発明によれば、高速通信動作に伴い単位データ周期UIが短縮されても、受信データ信号DIN中の基準遷移部TCだけに同期させた精度の高い基準クロック信号CLKを再生することが可能となる。
【0049】
ここで、イネーブル生成手段(4〜6)では、上記したイネーブル信号ENを生成すべく、先ず、イネーブルクロック選定部4及びクロックセレクタ5が、再生クロック信号CK〜CKの内の1つをイネーブル信号生成用のイネーブルクロック信号CK(X)として選定する。そして、イネーブル信号生成部6が、イネーブルクロック信号CK(X)に応じてイネーブル信号ENのフロントエッジ部を生成すると共に、再生クロック信号CK(X−2)に応じてイネーブル信号ENのリアエッジ部を生成する。すなわち、選定したイネーブルクロック信号CK(X)に対して、イネーブル信号生成部6による処理遅延時間の経過後にイネーブル信号ENのフロントエッジ部が現れることになる。この際、イネーブル信号生成部6による処理遅延時間は、このイネーブル信号生成部6内に設けられている可変遅延インバータ61及び可変遅延ナンドゲート62により、1.0・UIとなっている。従って、イネーブルクロック選定部4及びクロックセレクタ5は、図8に示す如き、イネーブル信号ENのフロントエッジ部が含まれるべき時点t1〜t2の範囲TWをそのまま1.0・UIだけ時間的に前にシフトした範囲(ZZ・UI)内に、そのフロントエッジ部が含まれることになるイネーブルクロック信号CK(X)を選定するのである。この際、再生クロック信号CK〜CK各々のフロントエッジ部のタイミングは、上述した如く、基準クロック信号CLKのフロントエッジタイミングを基点としたクロック位相係数ZZによって表されている。また、基準クロック信号CLKは、クロック生成部2に形成されている可変遅延ナンドゲート21及び22により、図8に示す如く、遷移検出信号CLKX2中のパルスCPのフロントエッジ部から1.0・UIだけ遅延して出力される。そこで、イネーブルクロック選定部4及びクロックセレクタ5は、図8に示す範囲TW内にそのフロントエッジ部が含まれるイネーブル信号ENを生成させるべく、再生クロック信号CK〜CKの内から、図8に示す如く上記数式を満たす範囲(ZZ・UI)内にそのフロントエッジ部が含まれるイネーブルクロック信号CK(X)を選定するのである。
【0050】
この際、図1に示すクロックデータリカバリ回路100では、クロック生成部2及びイネーブル信号生成部6各々を形成する素子に可変遅延インバータ61、可変遅延ナンドゲート21、22及び62を含ませることにより、これらクロック生成部2及びイネーブル信号生成部6各々での遅延時間を強制的に1.0・UIにしている。これにより、図8に示される範囲TW内にそのフロントエッジ部が現れるイネーブル信号ENを生成する為に用いられるイネーブルクロック信号CK(X)を選定する為のパラメータは、上記数式に示すように、単位データ周期UIと、CLKX2のパルス幅WCLKだけとなる。
【0051】
よって、上記した如き可変遅延型のインバータ及びナンドゲートに代えて通常のインバータ及びナンドゲートを採用したが故に、これらインバータ及びナンドゲート素子固有の遅延時間がCLKX2のパルス幅WCLK及び単位データ周期UIと共に上記パラメータに含まれる場合に比して、イネーブルクロック信号CK(X)の選定処理が簡易化される。従って、上記した構成によれば、イネーブルクロック選定部4の構成を小型化することが可能となる。
【0052】
更に、クロックデータリカバリ回路100では、遅延調整信号(CT、CT)に応じて、クロック生成部2及びイネーブル信号生成部6各々の遅延時間が常に1.0・UIとなるように遅延時間の調整が施されている。よって、製造上のバラツキ、周囲温度の変化、或いは電源電圧の変動に起因する遅延時間の変動量が小さくなるので、高速通信動作時においても、受信データ信号DINから精度の高い基準クロック信号CLKを再生することが可能となる。
【0053】
尚、上記実施例では、クロック生成部2として図3に示す如き内部構成を有するものを用いているが、これに代えて図9に示す内部構成を有するものを採用するようにしても良い。
【0054】
図9に示す構成では、可変遅延取込手段として、図3に示される可変遅延ナンドゲート21に代えて可変遅延型のDフリップフロップ(以下、可変遅延DFFと称する)26を採用したものであり、この可変遅延取込手段を除く他の構成は、図3に示すものと同一である。よって、以下に可変遅延DFF26を中心に、その動作を説明する。
【0055】
クロック生成部2として図9に示す内部構成を採用した場合、イネーブル信号ENは可変遅延DFF26のD端子に供給され、遷移検出信号CLKX2は可変遅延DFF26のクロック入力端子に供給される。
【0056】
可変遅延DFF26は、遷移検出信号CLKX2に応じて上記イネーブル信号ENを取り込んでその値を保持する。可変遅延DFF26は、保持したイネーブル信号ENの論理レベルを反転させた信号をセット信号ST1とし、これを反転出力端子を介してナンドゲート23の入力端子I1に供給する。尚、可変遅延DFF26は、遷移検出信号CLKX2のフロントエッジタイミングから0.5UIだけ遅延させて上記セット信号ST1を送出する。この際、可変遅延DFF26は、位相制御回路33から供給された遅延調整信号CT及びCTに応じてその遅延時間を調整する。
【0057】
図10は、可変遅延DFF26の内部構成を示す回路図である。
【0058】
図10において、インバータ260は、遷移検出信号CLKX2の論理レベルを反転させた反転遷移検出信号を、クロックドインバータ261の正側制御端子、クロックドインバータ262の負側制御端子、トランスミッションゲート263の負側制御端子、及びクロックドインバータ262の負側制御端子に供給する。尚、クロックドインバータ262、トランスミッションゲート263及びクロックドインバータ262各々の正側制御端子、並びに、クロックドインバータ261の負側制御端子には遷移検出信号CLKX2が供給される。クロックドインバータ261は、遷移検出信号CLKX2が論理レベル0の状態にある間だけイネーブル信号ENを取り込み、その論理レベルを反転させた反転イネーブル信号をラインLL1を介してインバータ265に供給する。インバータ265は、ラインLL1を介して供給された反転イネーブル信号、又はクロックドインバータ262から供給された信号の論理レベルを反転させた信号を第1ラッチイネーブル信号とし、これをクロックドインバータ262及びトランスミッションゲート263に供給する。クロックドインバータ262は、遷移検出信号CLKX2が論理レベル1の状態にある間だけ、上記第1ラッチイネーブル信号を取り込み、その論理レベルを反転させた信号をラインLL1を介してインバータ265に供給する。トランスミッションゲート263は、遷移検出信号CLKX2が論理レベル1の状態にある間だけ、上記第1ラッチイネーブル信号を取り込み、これをラインLL2を介して可変遅延インバータ266に供給する。可変遅延インバータ266は、ラインLL2を介して供給された第1ラッチイネーブル信号、又はクロックドインバータ264から供給された信号の論理レベルを反転させた信号を0.5UIだけ遅延させたものをセット信号ST1として出力すると共に、これをクロックドインバータ264に供給する。尚、可変遅延インバータ266は、位相制御回路33から供給された遅延調整信号CT及びCTに応じてその遅延時間を調整する。クロックドインバータ264は、遷移検出信号CLKX2が論理レベル1の状態にある間だけ、上記セット信号ST1を取り込み、その論理レベルを反転させた信号をラインLL2を介して可変遅延インバータ266に供給する。
【0059】
上記した構成により、可変遅延DFF26は、遷移検出信号CLKX2のフロントエッジで上記イネーブル信号ENを取り込んでその値を保持する、いわゆるエッジトリガ型のFFとして動作する。従って、遷移検出信号CLKX2のフロントエッジ部より後方の時点ではイネーブル信号ENの取り込みは為されない。よって、イネーブル信号ENのフロントエッジ部のタイミングを、図11に示す如き遷移検出信号CLKX2中の基準遷移部TCに対応したパルスCPの直前のパルスCPのパルス形成区間に重畳させることが可能となる。これにより、図11に示す如く、パルスCPのフロントエッジ部に対するジッターマージン(0.3・UI)だけを考慮して範囲TWの時点t1を設定すれば良いことになる。よって、図8に示す如き、上記したジッターマージンと共にパルスCPのパルス幅WCLKをも考慮してイネーブル信号ENのフロントエッジ部が含まれるべき範囲TWの時点t1が設定されるものに比して、単位データ周期UI内での範囲TWの割合を大きくすることが可能となる。
【0060】
従って、クロック生成部2として図9に示す内部構成を採用した場合には、図2に示す内部構成を採用した場合に比して通信速度の上限を高くすることが可能となる。
【0061】
尚、上記実施例では、図2に示す如き、基準遷移周期P毎にデータ遷移を生じさせる為のダミーデータDBが挿入された受信データ信号を入力対象としているが、このようなダミーデータDBを挿入せず、基準遷移周期P毎に必ずデータ遷移が生じるような変調の施された受信データ信号を入力対象としても同様に動作可能である。
【0062】
また、上記実施例では、受信データ信号中の基準遷移部TCにてデータのリア遷移が生じ、基準遷移部TCにおいてデータの立ち上がり遷移が生じている受信データ信号を入力対象としているが、基準遷移部TCでのデータ遷移は、立ち上がり遷移及び立ち下がり遷移の内の一方に統一しても良い。
【0063】
また、上記実施例でのDLL回路3は、夫々0.5・UIずつその位相がずれた再生クロック信号CK〜CKを生成するものであるが、0.5・UI以外の位相差Q・UI(Qは1未満の実数)ずつ位相がずれた複数の再生クロック信号CKを生成するものであっても良い。
【0064】
また、入力対象となる受信データ信号の形態は差動信号形態であっても良い。
【0065】
要するに、本発明においては、基準遷移周期(P)毎に入力データ信号(DIN)に現れるデータの基準遷移部(TC)に位相同期した基準クロック信号(CLK)を入力データ信号から再生すべく、先ず、遷移検出手段(1)が、入力データ信号中のデータの値の遷移を検出して遷移検出信号(CLKX2)を生成する。ここで、イネーブル生成手段(4〜6)が、遷移検出信号中から基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号(EN)を生成する。かかるイネーブル信号に応じて、クロック生成手段(2)が、遷移検出信号中から基準遷移部を取り込み、この基準遷移部に同期した信号を基準クロック信号(CLK)として生成し、遅延ロックループ手段(3)が、この基準クロック信号に基づいて夫々異なる位相を有する複数の再生クロック信号(CK〜CK)を生成する。この際、イネーブル生成手段(4〜6)は、先ず、複数の再生クロック信号の内のいずれか2つの再生クロック信号(CK、CK)同士の位相差に基づいて入力データ信号(DIN)中のデータ系列における単位データ周期(UI)を検出する。次に、この単位データ周期に基づいて複数の再生クロック信号(CK〜CK)の内から1の再生クロック信号を、イネーブル信号生成用のイネーブルクロック信号(CK(X))として選定する。そして、このイネーブルクロック信号に応じてイネーブル信号のフロントエッジ部を生成するのである。
【0066】
かかる構成によれば、単位データ周期(UI)に追従させて、遷移検出信号(CLKX2)中から基準遷移部(TC)に対応したパルスだけを確実に取り込めるタイミング(範囲TW)で、基準遷移部に対応した区間を示すイネーブル信号(EN)が生成される。
【0067】
よって、本発明によれば、高速通信動作に伴い単位データ周期が短縮されても、入力データ信号(DIN)中の基準遷移部だけに同期させた精度の高い基準クロック信号(CLK)を再生することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0068】
1 遷移検出部
2 クロック生成部
4 イネーブルクロック選定部
5 クロックセレクタ
6 イネーブル信号生成部
21、22、62 可変遅延ナンドゲート
61 可変遅延インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11