(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
センサネットワークでは多数の無線センサ端末を使用するため、無線センサ端末のコストの低減が課題となる。従来の無線センサ端末は、センサ回路、A/D変換回路、CPUといった高度な信号処理回路が必要となるため、コストの低減が困難であるといった問題があった。また、無線センサ端末の電源として電池を用いた場合は、電池を交換するコストが発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、環境をモニタリングするセンサネットワークのコストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るセンサネットワークシステムは、1つ以上のセンサ端末と受信装置とを備えたセンサネットワークシステムであって、前記センサ端末は、環境の状態に応じて電気エネルギーを生み出す環境発電素子と、前記環境発電素子が生み出した電気エネルギーを蓄積する蓄電素子と、前記蓄電素子に蓄積された電気エネルギーを用いてセンサ端末に付与された端末IDを送信する送信手段と、前記蓄電素子の電圧値を検知し、前記電圧値が第1の閾値以上になった場合に前記送信手段に前記端末IDを送信させ、前記電圧値が第2の閾値以下になった場合に前記送信手段に前記端末IDの送信を停止させるモニタ手段と、を有し、前記受信装置は、前記センサ端末が送信する前記端末IDを受信する受信手段と、前記端末ID毎に前記端末IDの通信頻度を求めて前記センサ端末により観測された環境の相対的な統計量とする解析手段と、
を有することを特徴とする。
【0006】
上記センサネットワークシステムにおいて、前記解析手段は、前記環境の相対的な統計量を物理量へ変換することを特徴とする。
【0007】
上記センサネットワークシステムにおいて、前記センサ端末は、環境の状態を検知するセンサをさらに備え、前記モニタ手段は、前記蓄電素子の電圧値が第3の閾値以上となった場合に前記センサを動作させ、前記センサの出力値が所定の範囲内であった場合に、前記送信手段に前記端末IDを送信させることを特徴とする。
【0008】
上記センサネットワークシステムにおいて、前記センサ端末は、高速で発振器を起動する高速起動発振器をさらに備え、前記モニタ手段は、前記蓄電素子の電圧値が前記第1の閾値に満たない場合は前記送信手段及び前記高速起動発振器に前記蓄電素子からエネルギーを供給せず、前記蓄電素子の電圧値が前記第1の閾値以上になった場合に前記送信手段及び前記高速起動発振器に前記蓄電素子から電気エネルギーを供給して前記送信手段に前記端末IDを送信させることを特徴とする。
【0009】
上記センサネットワークシステムにおいて、前記受信装置は、前記センサ端末の位置を推定する位置推定手段をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサ端末が環境の状態に応じた電気エネルギーを生み出す環境発電素子と環境発電素子が生み出した電気エネルギーを蓄積する蓄電素子を備え、蓄電素子の電圧値が第1の閾値以上であった場合に、蓄電素子に蓄積された電気エネルギーを用いて端末IDを送信し、受信装置が端末IDを受信して端末ID毎に通信頻度を求めてセンサ端末により観測された環境の相対的な統計量とすることにより、センサ端末を安価に構成でき、環境をモニタリングするセンサネットワークのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】蓄電素子に蓄積されるエネルギーの変化と端末IDの送信状態を示すグラフである。
【
図3】無線センサ端末の位置情報を利用した相対的な環境情報マップの例を示す図である。
【
図4】第2の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】第3の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】第4の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第5の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態における無線センサネットワークシステムは、複数の無線センサ端末1A〜1Dと受信装置2を備える。
【0013】
無線センサ端末1A〜1Dは、環境発電素子11、蓄電素子12、電圧モニタ回路13、端末ID記憶部14、および無線送信部15を備える。無線センサ端末1B〜1Dの構成は、無線センサ端末1Aと同様である。
【0014】
環境発電素子11は、太陽電池、温度差発電素子、振動発電素子などの環境の状態に応じたエネルギーを生み出す素子である。収集したい環境情報に応じた種類の環境発電素子11を用いる。
【0015】
蓄電素子12は、コンデンサや二次電池などの電気エネルギーを蓄積する素子である。蓄電素子12は、環境発電素子11が発電した電気エネルギーを蓄積する。
【0016】
電圧モニタ回路13は、蓄電素子12の電圧値を検知し、検知した電圧値が第1の閾値以上であった場合は端末IDを送信する指示を無線送信部15に出す。また、検知した電圧値が第1の閾値より小さい第2の閾値以下となった場合は端末IDの送信を停止させる指示を無線送信部15に出す。端末IDは、無線センサ端末1A〜1Dそれぞれに付与された識別子である。第1の閾値は、無線送信部15を動作させることができる電圧値以上に設定する。
【0017】
端末ID記憶部14は、端末IDを記憶する。
【0018】
無線送信部15は、蓄電素子12に蓄積されたエネルギーを用いて、端末ID記憶部14から端末IDを読みだして受信装置2へ送信する。無線送信部15が端末IDを送信する間は、無線送信部15により蓄電素子12に蓄積されたエネルギーが消費され、無線送信部15が端末IDを送信していない間は、環境の状態に応じて、蓄電素子12に蓄積されるエネルギーが増加する。
【0019】
無線センサ端末1A〜1Dが送信した端末IDは、受信装置2が受信する。
図1に示すように、受信装置2は無線受信部21と信号処理部22を備える。無線受信部21は、無線センサ端末1A〜1Dが送信した端末IDを受信する。信号処理部22は、端末ID毎に単位時間あたりの通信頻度を求めて、各無線センサ端末1A〜1Dにより観測された環境の相対的な統計量とする。
【0020】
ここで、無線送信部15が端末IDの送信開始、送信停止を繰り返す動作について説明する。
図2は、蓄電素子12に蓄積されるエネルギーの変化と端末IDの送信状態を示すグラフである。縦軸に蓄電素子12の電圧値をとり、横軸に時間をとった。環境発電素子11が生み出したエネルギーは蓄電素子12に蓄積されて電圧値は増加する。蓄電素子12の電圧値が第1の閾値(図の閾値1)以上になると、無線送信部15は、蓄電素子12に蓄積されたエネルギーを利用して端末IDの送信を開始する。無線送信部15が蓄電素子12に蓄積されたエネルギーを利用するので、蓄電素子12の電圧値は減少する。蓄電素子12に蓄積されたエネルギーの電圧値が第2の閾値(図の閾値2)以下になると、無線送信部15は端末IDの送信を停止する。無線送信部15が端末IDの送信を停止すると、エネルギーの消費量が減るので、再び環境発電素子11が生み出したエネルギーが蓄電素子12に充填される。その結果、
図2に示すように、無線送信部15は、蓄電素子12の電圧値に応じて送信開始と送信停止を繰り返すことになる。
【0021】
環境発電素子11が生み出すエネルギー量が大きくなるほど蓄電素子12の電圧値は速く上昇するので、端末IDの送信間隔は短くなり、端末IDの通信頻度が高くなる。例えば、環境発電素子11として太陽電池を使用した場合、輝度が高い場合は発生するエネルギー量が大きいため端末IDの通信頻度が高くなる。温度や振動などの場合も同様である。環境発電素子11が生み出すエネルギー量は環境の違いにより多寡が発生するため、環境発電素子11が生み出すエネルギー量が大きい無線センサ端末1A〜1Dほど端末IDの通信頻度が高くなる。そこで、受信装置2では、無線センサ端末1A〜1Dそれぞれの端末IDの送信回数をカウントし、単位時間あたりの端末IDの送信回数を環境の状態を表す相対的な統計量とする。あるいは、無線センサ端末1A〜1Dが端末IDの送信を停止してから送信を開始するまでの間隔、つまり蓄電素子12が第2の閾値から第1の閾値まで充電される時間を環境の状態を表す統計量としてもよい。
【0022】
図3に示すように、複数の無線センサ端末1A〜1Dそれぞれの設置場所を予め記憶しておけば、相対的な環境情報マップを作成することも可能である。
図3の例では、単位時間あたりの通信頻度は以下のとおりである。
【0023】
無線センサ端末1Aの通信頻度は単位時間あたり10回
無線センサ端末1Bの通信頻度は単位時間あたり5回
無線センサ端末1Cの通信頻度は単位時間あたり7回
無線センサ端末1Dの通信頻度は単位時間あたり1回
【0024】
また、予め端末IDの通信頻度に対する環境状態がわかる場合は、端末IDの通信頻度から環境状態を数値化することができる。例えば、次式を用いて単位時間あたりに生み出されるエネルギー量を算出し、環境発電素子11の環境状態に対する単位時間の発電エネルギー量を比較することで、環境状態を示す物理量を絶対値化することができる。
【0025】
単位時間の発電エネルギー量=通信頻度×端末IDの送信に必要となるエネルギー量
例えば、
図3の例で、温度に応じて発電エネルギー量が変化する環境発電素子11を用いた場合、無線センサ端末1A〜1Dそれぞれの端末IDの通信頻度から温度の絶対値を以下のように求めることができる。
【0026】
無線センサ端末1Aの通信頻度=10回/単位時間=温度65℃
無線センサ端末1Bの通信頻度=5回/単位時間=温度32℃
無線センサ端末1Cの通信頻度=7回/単位時間=温度48℃
無線センサ端末1Dの通信頻度=1回/単位時間=温度18℃
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線センサ端末1A〜1Dが環境の状態に応じたエネルギーを生み出す環境発電素子11、環境発電素子11が発電したエネルギーを蓄積する蓄電素子12を備え、蓄電素子12の電圧値が第1の閾値以上であった場合に端末IDを送信し、受信装置2が端末IDを受信して、端末ID毎に単位時間あたりの通信頻度を求めて、無線センサ端末1A〜1Dにより観測された環境の相対的な統計量とすることで、無線センサ端末1A〜1Dにおいて高度な信号処理をする必要がなくなり、無線センサ端末1A〜1Dのコストを抑えることができる。また、環境発電素子11が発電したエネルギーを用いて無線センサ端末1A〜1Dを動作させるので、電池を交換する必要がなくなる。
【0028】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。第2の実施の形態における無線センサネットワークシステムは、第1の実施の形態の無線センサ端末1A〜1Dに環境状態を検出するセンサ16をさらに備える。
【0029】
センサ16は、環境発電素子11と異なる環境の状態を検知するものでもよいし、同じ環境の状態を検知するものでもよい。例えば、環境発電素子11に太陽電池を用いた場合、センサ16は温度を検知するものでもよいし、輝度を検知するものでもよい。
【0030】
電圧モニタ回路13は、蓄電素子12の電圧値を検知し、検知した電圧値が第3の閾値以上になるとセンサ16を動作させる。センサ16の出力値が一定値以上、一定値以下、あるいは所定の範囲内であった場合に、無線送信部15を動作させて端末IDを送信する。
【0031】
無線センサ端末1A〜1Dがセンサ16を備えることで、環境発電素子11が検知する環境状態とは異なる別の環境状態を考慮して端末IDを送信することができる。
【0032】
[第3の実施の形態]
図5は、第3の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。第3の実施の形態における無線センサネットワークシステムは、第1の実施の形態の無線センサ端末1A〜1Dに高速起動発振器17をさらに備える。
【0033】
電圧モニタ回路13が検知する蓄電素子12の電圧値が第1の閾値に満たない場合は、無線送信部15及び高速起動発振器17へエネルギーを供給せず、蓄電素子12の電圧値が第1の閾値以上となった場合に、無線送信部15及び高速起動発振器17へエネルギーの供給を開始する。無線送信部15及び高速起動発振器17にエネルギーが供給されると発振器が高速起動し、無線送信部15が端末IDを送信する。高速起動発振器17として、リング共振器や、SAW・FBARデバイスなどの水晶振動子よりもQ値の低い素子を共振器として使用した発振器を用いてもよい。
【0034】
蓄電素子12の電圧値が第1の閾値に満たないときには、無線送信部15及び高速起動発振器17へエネルギーを供給しないので、環境発電素子11が生み出すエネルギーで消費されるものは、蓄電素子12のリークと電圧モニタ回路13が消費するエネルギーだけとなり、消費エネルギーが小さくなり、環境発電素子11のサイズを小さくすることができる。また、高速で起動する発振器を備えることで、端末IDを送信するまでの起動時間を短く抑えるもことができ、無線送信部15の消費エネルギーを削減し、遠距離への通信が可能となる。
【0035】
なお、第2の実施の形態と第3の実施の形態の無線センサ端末を組み合わせてもよい。
【0036】
[第4の実施の形態]
図6は、第4の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。第4の実施の形態における無線センサネットワークシステムは、第1の実施の形態の受信装置2に位置推定部23をさらに備えたものである。
【0037】
位置推定部23は、無線センサ端末1A〜1Dが送信する電波の到来角情報や端末IDとともに送信される送信時間情報などを利用して無線センサ端末1A〜1Dの位置を推定する。
【0038】
受信装置2が無線センサ端末1A〜1Dの位置を推定する位置推定部23を備えることで、無線センサ端末1A〜1Dそれぞれの設置場所を予め記憶しておかなくても、相対的な環境情報マップを作成することが可能となる。
【0039】
[第5の実施の形態]
図7は、第5の実施の形態における無線センサネットワークシステムの構成を示す機能ブロック図である。第5の実施の形態における無線センサネットワークシステムは、第1の実施の形態の受信装置2で行なっていた解析を別の解析装置3に行わせたものである。
【0040】
受信装置2は、無線センサ端末1A〜1Dから受信した電波から端末IDを抽出して解析装置3へ送信する。
【0041】
解析装置3は、解析部31と蓄積部32を備える。解析部31は、受信装置2が送信した端末IDを無線センサ端末1A〜1D毎に集計して、単位時間あたりの端末IDの送信回数をカウントし、蓄積部32に解析結果を蓄積する。
【0042】
なお、解析装置3は、受信装置2に直接接続してもよいし、ネットワークを介して接続してもよい。