特許第6027550号(P6027550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027550医薬剤形用の安定した保護被覆のための粉末被覆剤の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027550
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】医薬剤形用の安定した保護被覆のための粉末被覆剤の製造
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20161107BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20161107BHJP
   A61K 47/32 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   C08J3/12 101
   C08J3/12CEY
   C08L33/10
   !A61K47/32
【請求項の数】30
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-555834(P2013-555834)
(86)(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公表番号】特表2014-508205(P2014-508205A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2012053231
(87)【国際公開番号】WO2012116940
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月23日
(31)【優先権主張番号】11156224.5
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】コルター,カール
(72)【発明者】
【氏名】アンゲル,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】リンナー,ベルンハルト
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535261(JP,A)
【文献】 特開平11−315017(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/012335(WO,A1)
【文献】 特表2008−535962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28、99/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
A61K 9/00−9/72、47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aとして、
a)N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、及び
b)α,β-エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸とC1〜C8アルカノールとのエステルから選択される少なくとも一つのラジカル重合性化合物
のラジカル重合により得られるポリマーを含む、水性ポリマー分散体の粉状酸化防止剤含有被覆組成物の製造方法であって、
酸化防止剤が、溶液又は分散体の形態で水性ポリマー分散体に組み込まれ、水性ポリマー分散体が、噴霧工程により粉末形態に変換される、上記方法。
【請求項2】
20℃で1g/l以下の水中の可溶性を有する難水溶性の酸化防止剤が酸化防止剤として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化防止剤が、有機溶媒中の溶液の形態で又は可溶化剤を含むミセル水性溶液として組み込まれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
酸化防止剤のミセル溶液が、可溶化剤として界面活性剤又は両親媒性コポリマーを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
酸化防止剤が、界面活性剤又はポリマー中の酸化防止剤の固溶体の形態で組み込まれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤又はポリマー中の酸化防止剤の固溶体が、溶融押出により得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸化防止剤が、10を超える親水性-親油性バランス値を有する乳化剤を含む分散体の形態で水性ポリマー分散体に組み込まれる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸化防止剤が、成分Aに基づいて0.1〜10.0重量%の量で組み込まれる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水性ポリマー分散体が、乾燥ガスの存在下で噴霧工程により粉末に変換され、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、ガラス転移温度を少なくとも20℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも20℃超え、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が40〜85℃に保持される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、ガラス転移温度を少なくとも40℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも40℃超える、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が45〜70℃に保持される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が100〜140℃であり、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が45〜70℃に保持される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が110〜130℃であり、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が50〜60℃に保持される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が、最低皮膜形成温度のプラス/マイナス5℃の範囲に保持される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
噴霧工程が噴霧乾燥として実施される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
噴霧工程が凝集体形成噴霧乾燥として実施される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
酸又は酸性塩が噴霧工程の前に水性ポリマー分散体に添加される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
酸又は酸性塩が噴霧工程の後で得られた粉末に添加される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
噴霧工程の後、得られたポリマーが水に再分散され、酸又は酸性塩と混合される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
無機酸又はその酸性塩が酸として添加される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
有機酸又はその酸性塩が酸として添加される、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
添加される酸が、噴霧工程の条件下で分解又は蒸発する酸又はその酸性塩である、請求項17から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
酸又は酸性塩を添加した結果として、水性分散体、粉末又は水再分散粉末のpHが5〜9の範囲である、請求項17から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
酸又は酸性塩を添加することにより、水性分散体、粉末又は水再分散粉末のpHが6〜8の範囲である、請求項17から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
更なる助剤が噴霧工程の前に水性ポリマー分散体に添加される、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
酸化防止剤が、10を超える親水性-親油性バランス値を有する乳化剤を含むエマルションの形態で、酸化防止剤の融点を超える温度で水性ポリマー分散体に組み込まれる、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
医薬剤形の被覆組成物としての、請求項1から26により得られるポリマー粉末の使用。
【請求項28】
被覆組成物が、再分散水性分散体の形態で剤形に適用される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
再分散が、分散装置の助けを借りて5000rpm未満の回転で実施される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
再分散が、分散装置の助けを借りて1000rpm未満の回転で実施される、請求項28又は29に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味覚を遮蔽する目的又は水分に対する保護のため、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートを含むモノマー混合物のラジカル乳化重合により得られるカチオン性ポリマーに基づいた被膜を備えた、医薬剤形用の安定した保護被覆のための被覆組成物の製造に関する。本発明は、更に、水性分散体を噴霧工程により良好な再分散性の易流動性粉末に変換することによる、粉末形態のそのような被覆組成物の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
低残留性モノマー含有量を有する薬剤被覆のための結合剤の提供において、DE-B 2512238は、これらの薬剤形態用の被覆溶液を製造するために、ポリマー分散体を噴霧乾燥して得られる粉末の使用を教示する。噴霧乾燥に使用される分散体として、DE 1090381、DE 1219175及びDE 2135073が参照される。
【0003】
DE 3049179A1は、DE 2512238に追加の出願であり、被覆を熱ゲル化(thermogelation)により製造するための、可塑剤を追加的に含む水性懸濁剤の形態を最後に挙げた文献の教示に従って噴霧乾燥して得られる粉末の使用に関する。
【0004】
WO 00/05307は、第三級アミノ基を持つモノマーラジカルを有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む、薬剤形態用の被覆及び結合組成物の提供を扱い、その意図は、更なる簡単な乾燥又は水性加工が可能になることである。加えて、この文献は、(a)(メタ)アクリル酸のC1〜C4エステルと第三級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマー、(b)可塑剤及び(c)少なくとも14のHLB値を有する乳化剤を互いに組み合わせ、溶融、流し込み、塗布又は噴霧によりこれらから被覆又は結合組成物を製造する方法を教示し、ここでコポリマー(a)は、1〜40μmの平均粒径を有する粉末形態で組み込まれる。ここで達成される加工性は、極めて小さい粒径の粉末形態のコポリマー(a)の提供に寄与する。
【0005】
WO 02/067906は、WO 00/05307に記載されたものと比較して改善された透湿性(water vapor permeability)を有する被覆及び結合組成物に関する。ここでは、被覆及び結合組成物は、(a)1〜40μmの平均粒径を有する粉末形態の、(メタ)アクリル酸のC1〜C4エステルと、官能性第三級アンモニウム基を持つ更なる(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマー、(b)少なくとも14のHLB値の乳化剤及び(c)C12〜C18モノカルボン酸又はC12〜C18ヒドロキシル化合物を含む混合物を使用して製造される。
【0006】
WO 2004/019918は、その組成に関してWO 00/05307及びWO 02/067906に記載されたものに対応する被覆及び結合組成物を記載する。
【0007】
米国特許第6,696,085B2号によると、メタクリル酸コポリマーC型が崩壊剤として使用されることが報告されている。メタクリル酸コポリマーC型は、酸性pH範囲では可溶性でないが、口腔内に存在するようにpH範囲の7では水溶性である腸溶性ポリマーである。低い破壊強度(<20N)の他、錠剤は、高い破砕性(>7%)を有し、15重量%の領域の高い割合で粗粒状崩壊剤を含む。したがって、これらは低い機械的強度を有し、高い割合の粗粒状崩壊剤のため、口の中で不快なざらざらした感触を有する。
【0008】
EP88951 A2は、エマルションポリマーに基づいた水分散性被覆組成物を使用して薬剤を被覆するプロセスを記載し、ここで被覆組成物は、部分的に塩の形態で存在しうる。被覆組成物は、再分散粉末から得ることもでき、噴霧乾燥及び凍結乾燥のプロセスが、原則的に適している方法として特定されている。しかし、これに関連して、凍結乾燥を適切なガラス転移温度の範囲の下限でも使用できることも記述されている。その組成に関して高いガラス転移温度を有する30%のメタクリル酸及び70%のメチルメタクリレートを凍結乾燥することにより又はその噴霧乾燥生成物により得た粉末のどちらも詳細に記載されている。
【0009】
WO 97/42255は、水性溶液に再分散されうる、遊離酸又は塩基担持コポリマーを噴霧乾燥により含むポリマーの噴霧乾燥を記載し、ここで、噴霧乾燥の前に分散体のpH値を緩衝剤系の助けにより調整する必要がある。
【0010】
EP 262326 A2は、60℃未満の最低皮膜形成温度及び150℃未満の動的ガラス転移温度を有する、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーの水性分散体が、乾燥ガスの流入温度が最低皮膜形成温度を超え、ガラス転移温度を下回るように噴霧乾燥される、再分散性プラスチックポリマーの製造方法を記載する。
【0011】
EP 901 787 A1は、光又はフリーラジカルによる分解に感受性があり、金属酸化物、塩基性物質及び可塑剤の他に、活性成分を安定化するフリーラジカルスカベンジャーを含む被覆組成物で被覆されている活性成分を含む、安定化された医薬調合剤を記載する。被覆組成物について記述されている塩基性材料は、糖、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン又は(メタ)アクリレートポリマーなどの原則的に可能である全ての材料である。被覆組成物が徐放ポリマーとしてアミノアルキルメタクリレートポリマーを含みうることも記述されている。
【0012】
WO 2009/016258は、本発明により使用されるN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートに基づいたカチオン性ポリマーの水性ポリマー分散体の製造及び薬剤の被覆におけるその使用を開示する。粉状被覆組成物は、全く一般的な用語としてのみ記述されている。これらの低ガラス転移温度のため、ある特定の状況下において、ポリマーは、凝集体形成する望ましくない傾向を示し、したがって、加工の観点から高い要件が求められる。例えば保存の際の変色に対して安定化する又は長期間の保存若しくは応力下でも安定した放出を達成する特別の方法は、記述されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE-B 2512238
【特許文献2】DE 1090381
【特許文献3】DE 1219175
【特許文献4】DE 2135073
【特許文献5】DE 3049179A1
【特許文献6】WO 00/05307
【特許文献7】WO 02/067906
【特許文献8】WO 2004/019918
【特許文献9】米国特許第6,696,085B2号
【特許文献10】EP88951 A2
【特許文献11】WO 97/42255
【特許文献12】EP 262326 A2
【特許文献13】EP 901 787 A1
【特許文献14】WO 2009/016258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、長期間又は熱的に過酷な保存であっても被膜の放出挙動に変化がなく、変色しない、医薬剤形に適した、水において良好な再分散性を有する易流動性粉状被膜組成物を見出すことである。見出される再分散被覆組成物に課せられる特定の要件は、とりわけ、狭い粒径分布を有し、凝集が回避される安定した小型粒子分散体の生成である。更に、目的は、安定化物質が多くの場合に有している水中での不十分な可溶性のため、ポリマー分散体又はポリマー粉末の安定性に悪影響を与えることなく、酸化防止剤などの安定化物質を組み込むこと及びそれらの適用関連特性を確実にすることでもある。本発明において解決しようとする更なる課題は、大部分の場合において水に難溶性の酸化防止剤を水性分散体に均質に組み込むことのみならず、その中で効果を発揮するべきなので、水不溶性酸化防止剤がポリマー粒子の中に移動する目的のために、これらを適切な程度で分散ポリマー粒子と接触させることからなる。したがって、難水溶性の物質をそのような水相を介して別の相に輸送する方法を見出す必要があった。特定の方法において、問題は、皮膜形成の際にそのような調製物の再分散性粉末への変換を可塑剤が不可能にするので、添加溶剤(entrainer)として作用しうる可塑剤を使用できないという事実により悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、成分Aとして、
a)N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、及び
b)α,β-エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸とC1〜C8アルカノールとのエステルから選択される少なくとも一つのラジカル重合性化合物
のラジカル重合により得られるポリマーを含む、水性ポリマー分散体からの粉状酸化防止剤含有被覆組成物の製造方法であって、酸化防止剤が、溶液又は微粉化分散体の形態で水性ポリマー分散体に組み込まれ、水性分散体が、噴霧工程により粉末形態に変換される、方法が見出された。
【0016】
酸化防止剤は、「微粉化分散体」の形態で導入され、ここで、本発明によると、「微粉化」は、平均粒径が20μm未満であることを意味する。
【0017】
更に、酸化防止剤で安定化された水性ポリマー分散体を、噴霧工程により易流動性粉末に変換する方法であって、水性ポリマー分散体が、乾燥ガスの存在下で噴霧工程により易流動性粉末に変換され、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、ガラス転移温度を少なくとも20℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも20℃超え、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が40〜85℃に保持される、方法が見出された。
【0018】
更なる実施態様によると、乾燥ガスの流入温度は、ガラス転移温度を少なくとも20℃超え、動的ガラス転移温度を少なくとも20℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも20℃超え、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度は、40〜85℃である。
【0019】
好ましくは、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度は、ガラス転移温度を少なくとも40℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも40℃超える。
【0020】
更なる実施態様によると、乾燥ガスの流入温度は、ガラス転移温度を少なくとも40℃超え、動的ガラス転移温度を少なくとも40℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも40℃超える。
【0021】
前述の実施態様の全てにおいて、乾燥ガスの流出温度は、好ましくは45〜70℃である。
【0022】
更に好ましい実施態様によると、易流動性粉末への変換は、凝集体形成噴霧乾燥により生じる。
【0023】
更に好ましい実施態様によると、ポリマーは、噴霧工程の前又は後に酸で部分的に中和される。
【0024】
更なる実施態様は、噴霧工程を更なるポリマー及び/又は更なる助剤の存在下で実施することに関する。
【0025】
更に、この方法で得られた粉末を医薬被覆組成物として使用することが見出された。好ましくは、被覆組成物は、水中での再分散により得られ、噴霧工程により得られる粉末は、低剪断撹拌装置を1000rpmまでの回転で使用して再分散される。驚くべきことに、高剪断分散装置を5000rpm超の回転で使用することも可能である。これは、再分散体凝集及び調製物凝集の際に微細粒子を形成することなく、本発明に従って実施することができる。
【0026】
易流動性粉末は、本発明の状況において、撹拌助剤を用いず、漏斗から自由及び完全に流出させるPfrengle機器を使用して、DIN ISO 4324に従って流動性を決定した粉末を意味する。
【0027】
更に本発明は、また、成分Aとして、
a)N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、及び
b)α,β-エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸とC1〜C8アルカノールとのエステルから選択される少なくとも一つのラジカル重合性化合物
のラジカル重合により得られるポリマーと、酸化防止剤とを含むポリマー分散体を含み、水に再分散されたポリマー粉末の平均粒径が、親一次分散体の最大で5倍、好ましくは最大で3倍、特に好ましくは最大で2倍である、請求項1〜28のいずれか1項に従って得られるポリマー粉末に関する。
【0028】
平均粒径は、本明細書において、光散乱により確認された平均強度を意味する。
【0029】
噴霧工程に使用される被覆組成物は、
a)N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、及び
b)α,β-エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸とC1〜C8アルカノールとのエステルから選択される少なくとも一つのラジカル重合性化合物
を水性媒質に少なくとも8のpHで含むモノマー混合物M)のラジカル乳化重合により得られる水性ポリマー分散体に基づいている。
【0030】
水性ポリマー分散体の形態の被覆組成物は、好ましくは追加の有機溶媒を得ない。
【0031】
本発明によると、被覆組成物は、胃の酸性環境下で素早く放出されることが意図される医薬剤形を製造するために役立ち、すなわち、本発明による被覆は胃液に可溶性である。これに関連して、素早く放出されるということは、60分後に、活性成分の少なくとも80%が放出されることを意味する。本発明により得られる被覆は、口腔及び咽喉内の唾液の中性又は実質的に中性の環境下で溶解することは意図されていない。
【0032】
本発明による被覆組成物を、味覚遮断又は水分に対する保護のために使用することができる。被覆の透湿性は非常に低く、その結果、感湿活性成分が保護される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ラジカル乳化重合によりポリマーを製造するには、本明細書においてWO 2009/016258の開示が明確に参照され、そこには、製造及び組成物にも関する製造及び好ましい実施態様が詳細に記載されている。
【0034】
本発明の方法の特に好ましい実施態様において、
-重合に使用されるモノマーの総重量に基づいて43〜47重量%のN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートa)及び
-重合に使用されるモノマーの総重量に基づいて53〜57重量%の少なくとも一つの化合物b)、とりわけメチルメタクリレート
からなるモノマー混合物M)から得られるポリマー分散体が使用される。
【0035】
分散体に存在するポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定された、好ましくは30000〜500000、特に好ましくは60,000〜140000、とりわけ80000〜120000g/molの範囲の平均分子量Mwを有する。
【0036】
分散体Pd)に存在するポリマーは、好ましくは40〜60の範囲の(N-メチルピロリドン(NMP)中の1%濃度の溶液においてFikentscherにより決定される)K値を有する。
【0037】
DSC「示差走査熱量測定」により決定されたガラス転移温度TGは、好ましくは40〜70℃、特に好ましくは52〜62℃の範囲である。本明細書において、試料は、最初に150℃に加熱され、次に150℃から素早く冷却される。ガラス転移温度の測定は、20°K/分の加熱速度で実施される。
【0038】
最低皮膜形成温度は、DIN ISO 2115に記載された方法に従って決定され、40〜70℃、好ましくは50〜65℃の範囲である。方法の測定正確度は、プラス/マイナス5℃の範囲である。
【0039】
分散体に存在するポリマーは、本質的にランダムコポリマーである。
【0040】
ポリマー分散体に存在するポリマー粒子の平均粒子直径(分析用超遠心分離機により決定された)は、好ましくは70〜200nm、特に好ましくは80〜150nm、とりわけ90〜120nmの範囲である。粒径分布は、好ましくは本質的に単峰形である。
【0041】
本発明の分散体のLT値は、水中0.01%濃度の分散体で決定され(2.5cmのキュベット、白色光)、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%である。光透過性の決定は、例えば、Dieter Distler, Wassrige Polymerdispersionen [Aqueous polymer dispersions], Wiley-VCH (1999), p. 40に記載されている。
【0042】
噴霧工程のために本発明により使用される分散体の固形分は、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。限外濾過による分散体の前精製の場合では、本発明により使用される分散体は、好ましくは、限外濾過の前後にこれらの範囲内の固形分を有する。当然のことながら、希釈ポリマー分散体を、噴霧工程の前に限外濾過により濃縮させることも同様に可能である。
【0043】
味覚遮断のために本発明により使用される再分散性ポリマー粉末は、20重量%の水中固形分において、好ましく300mPas未満、特に好ましくは200mPas未満、とりわけ100mPas未満(値は、ブルックフィールド粘度計により20℃及び100s-1で決定された)の低い粘度を有する。そのような粘度は、多くの用途において特に重要である。
【0044】
本発明によると、水性ポリマー分散体から粉末形態への変換は、噴霧工程によって実施される。適切な噴霧工程は、原則的に、噴霧乾燥、凝集体形成噴霧乾燥、噴霧造粒(噴霧流動層乾燥)又は噴霧凝集体形成である。
【0045】
霧化及び乾燥を実施するための下記に特定される条件は、原則的に通常の噴霧乾燥、噴霧凝集体形成又は凝集体形成噴霧乾燥のいずれによっても実施することができる噴霧工程の全ての実施態様を参照する。
【0046】
霧化は、好ましくは、例えば単一材料若しくは複数材料ノズルなどのノズルを介した又は霧化ディスクを介した、液体圧又は空気圧による流体力学的霧化として実施される。
【0047】
適切な噴霧装置は、霧化されるポリマー分散体が上方から導入される従来の噴霧塔である。得られるポリマー粉末は、下端部から排出され、下流のサイクロンにおいて乾燥ガス流から分離される。
【0048】
使用することができる乾燥ガスは、空気又は窒素、アルゴン若しくはヘリウムなどの不活性ガスである。乾燥ガスを、噴霧装置の霧化により生じる液滴に対して対流的又は並流的に導入することができる。乾燥ガスは、好ましくは並流的に使用される。乾燥ガスの流入温度は、ガラス転移温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃超え、また一つの実施態様によると、動的ガラス転移温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃超えて保持される。噴霧装置への乾燥ガスの流入温度は、特に好ましくは100〜140℃に保持され、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度は、45〜70℃に保持される。とりわけ好ましくは、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度は、110〜130℃に保持され、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度は、50〜60℃に保持される。乾燥ガスの流出温度は、とりわけ好ましくは最低皮膜形成温度とプラス/マイナス5℃で同じ温度範囲である。
【0049】
噴霧装置内の水の蒸発は、大気圧又は0.06〜0.12MPaのいずれかで実施することができる。
【0050】
噴霧工程を実施する間に、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとグラフトベースとして一つのポリエチレングリコールとポリビニルアルコール側鎖の混合物(Kollicoat(登録商標)Protectとして市販されている)、ポリビニルピロリドン、アルキル化及び/若しくはヒドロキシアルキル化セルロース、デンプン誘導体、リグニンスルホネート、ポリアクリル酸又はポリアクリルアミドなどのポリマー噴霧助剤を、水性ポリマー分散体に添加することもできる。そのような噴霧助剤の適切な量は、固形分に基づいて0.1〜30、好ましくは1〜10重量%の範囲である。
【0051】
更に、粘着防止剤(antiblocking agent)を水性ポリマー分散体に添加することもできる。適切な粘着防止剤は、例えば、ベントナイトなどのケイ酸アルミニウム、また、キースラガー、コロイドシリカ、沈降シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、タルクなどのケイ酸マグネシウム又はリン酸三カルシウムである。そのような粘着防止剤の適切な量は、固形分に基づいて0.1〜15、好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
【0052】
原則的には、慣用的な被覆助剤を水性ポリマー分散体に添加することもできる。適切な助剤は、芳香物質、味覚改善物質、甘味剤(糖、糖アルコール、アパルテーム、サッカリンNa、シクラミン酸ナトリウムなどの甘味料)、滑剤、湿潤剤、離型剤、付着防止剤、安定剤、酸化防止剤、孔形成剤、中和剤、光沢剤、染料、顔料、消毒剤若しくは防腐剤、増粘剤又は可塑剤でありうる。適切な助剤は、例えば、Fiedler, H. P. Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete [Lexicon of auxiliaries for pharmacy, cosmetics and related fields], 4th edition, Aulendorf: ECV-Editio-Cantor-Verlag, 1996に記載されている。
【0053】
既に記述されているように、本発明の一つの実施態様は従来の噴霧乾燥に関し、そこでは、乾燥される水性ポリマー分散体が乾燥ガスのガス流により霧化及び乾燥され、このようにして粉末形態に変換される。
【0054】
更なる実施態様によると、粉末への変換は、噴霧造粒により実施することができる。このために、乾燥される水性ポリマー分散体は同様に霧化され、次に生成された粒子は、初期投入物として導入された種粒子を有する流動層と接触する。この種粒子と水性ポリマー分散体の液滴との接触の結果、種粒子は成長し、種材料として使用される粒子の周りにタマネギの皮様構造を形成して大きな顆粒粒子になる。
【0055】
本発明の一つの好ましい実施態様によると、粉末形態への変換は、凝集体形成噴霧乾燥の助けを借りて実施される。本明細書において、ポリマー分散体は上記に記載された噴霧塔において霧化され、一方、乾燥区域から除去される微細塵が、水性ポリマー分散体が微細液滴の形態で存在する霧化区域に同時に吹き込まれる。本明細書において、微細塵粒子は一緒に付着して、クロイチゴ形状構造を有する比較的大型の凝集体を生じる。加えて、流動層を連結することもでき、この場合、形成される粒子の含水量を更に低減することができる。得られる凝集体は、150〜1000μm、好ましくは200〜500μmの粒径を有することができる。この実施態様においても、流入温度は、ガラス転移温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃超える、また一つの実施態様によると、動的ガラス転移温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃超える、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃超えるように選択され、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度は、ポリマーの40〜85℃、好ましくは45〜70℃に選択される。好ましくは、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度は、100〜140℃に保持され、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度は、45〜70℃に保持される。特に好ましくは、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度は、110〜130℃に保持され、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度は、50〜60℃に保持される。噴霧凝集体形成により得られるクロイチゴ形状構造は、実質的に無塵であり、再分散にとって特に有利な挙動を示す。
【0056】
上記に特定された全ての実施態様において、例えばベントナイトなどのケイ酸アルミニウム、キースラガー、コロイドシリカ、沈降シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、タルクなどのケイ酸マグネシウム又はリン酸三カルシウムなどの噴霧助剤を、噴霧工程の際に、ポリマー粉末に基づいて0.1〜15、好ましくは0.5〜5重量%の量で噴霧塔に吹き込むことができる。
【0057】
残留溶媒含有量は、通常、粉末の固形分に基づいて5重量%以下である。
【0058】
全体として、噴霧工程により形成される粉末の粒径は、特定の変数により決定される。通常の噴霧乾燥の場合、10〜150μmの粒径を達成することができる。例えば噴霧流動層乾燥などの噴霧凝集体形成の場合では、150〜1000μmまでのより大きな粒径を達成することができる。凝集体形成噴霧乾燥の場合では、150〜1000μmの粒径を達成することができる。
【0059】
更なる実施態様によると、酸がポリマーに添加される。好ましくは、酸の量は、塩基性基が部分的に酸塩の形態で存在するように添加される。好ましくは、1〜20mol%、特に好ましくは2〜15mol%の塩基性基が中和される。これは、噴霧乾燥の前又は後で実施することができる。したがって、例えば、酸を噴霧乾燥の前に水性ポリマー分散体に添加することができる。別の実施態様によると、酸を再分散の前又は間に添加することもできる。酸の組み込みが噴霧乾燥の前に実施される場合、慣用のプロセスにより水性分散体の中で撹拌することができる。噴霧乾燥の後での添加の場合、ポリマー粉末への酸の組み込みは、最初にポリマー粉末を簡単な撹拌機により水中で粗く予め分散し、次に酸を加え、完全な再分散を更なる撹拌により達成されるように実施される。再分散は非常に素早く、したがって10分後であっても、微粉化分散体が存在する。変更された手順では、最初に酸を初期投入物として水に導入し、ポリマー粉末を、撹拌しながらこれに加えることも可能である。最初にポリマー粉末を酸と混合し、この粉末混合物を水に導入することも可能である。
【0060】
適切な酸は、炭酸(二酸化炭素の注入)、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、塩酸、硫酸又はリン酸若しくはリン酸二水素ナトリウムなどのリン酸塩などの、無機酸又は酸塩である。また適切なものは、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルコン酸又は更なる生理学的に適合する酸などの有機酸である。天然及び/又は合成ベースのポリマー酸も、当然のことながら可能である。特定された酸は、記載されている実施態様の全てにおいて適している。
【0061】
本発明の更なる実施態様によると、噴霧工程の条件化で分解又は蒸発する酸が使用される。この実施態様によると、ポリマーは、噴霧工程の前及び間に中和又は部分的に中和された形態で存在し、一方、得られる粉末においては遊離塩基形態が再び存在する。
【0062】
個別の場合に使用される酸の重量に基づいた量は、特定の分子量及び上記に記載された望ましい中和の程度によって決まる。
【0063】
好ましくは、酸による処理は、水性分散体、粉末又は水再分散粉末のpHが、5〜9の範囲であるように実施される。
【0064】
特に好ましくは、酸又は酸性塩の添加は、水性分散体、粉末又は水再分散粉末のpHが、6〜8の範囲であるように添加される。
【0065】
被覆組成物は、例えば、本発明により得られるポリマー粉末を再分散することにより緊密に混合して、水性ポリマー分散体を得て、それに好ましくは少なくとも一つの更なる助剤を添加することによって製造することができる。
【0066】
安定化には、ポリマー分散体を粉末形態に変換する前に、記述されたように難水溶性の酸化防止剤で処理する。用語「酸化防止剤」は、当業者にはそれ自体知られており(例えば、Rompp - Lexikon der Chemie [Lexicon of chemistry], 9th edition, 1989, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartを参照すること)、酸素又は他の酸化プロセスにより引き起こされる望ましくない変化を抑制又は防止すると推定される物質を意味する。本発明によると、被覆組成物を安定化するのに適した酸化防止剤は、水に難溶性の酸化防止剤、すなわち、水中の可溶性が20℃で1g/l以下の酸化防止剤である。
【0067】
本発明によると、適切な酸化防止剤は、主に、親油性物質のトコフェロール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、t-ブチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキシアニソール、t-ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸オクチル若しくは没食子酸ドデシル又はこれらの組み合わせである。
【0068】
有機溶媒中の溶液の形態の酸化防止剤の組み込み。
【0069】
本発明の一つの実施態様によると、使用される酸化防止剤は、有機溶媒に溶解される。適切な有機溶媒は、一方では、水中で少なくとも10重量%の濃度を達成することができるほど水と十分に混和性であり、他方では、難水溶性の酸化防止剤を溶解することもできる溶媒である。適切な溶媒は、例えばエタノール又はイソプロパノールなどのアルコール、例えばアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、例えば酢酸メチルなどのエステルである。通常、これらの溶媒は100℃未満の沸点を有する。
【0070】
酸化防止剤を、それ自体慣用の方法によって有機溶液の中に入れることができる。濃度は、溶媒1リットルあたり10〜1000gの酸化防止剤が使用されるように選択される。全体として、有機溶媒の量は、水性分散体の重量に基づいて1〜20重量%の溶媒が使用されるように選択される。
【0071】
更なる実施態様によると、酸化防止剤をミセル水性溶液の形態で水性分散体に組み込むことができる。このためには、物質を可溶化物質(「可溶化剤」)(用語「可溶化」は、Rompp-Chemielexikon [Rompp chemistry Lexicon], 9th editionを参照すること)の存在下で溶液の中に入れる。適切な可溶化剤は、例えばナトリウムドキュセート若しくはナトリウムドデシルスルフェート、エトキシル化脂肪、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪アルコール又はポリマー可溶化剤などの界面活性剤である。
【0072】
適切なポリマー可溶化剤は、とりわけ両親媒性コポリマーである。両親媒性コポリマーは、親水性及び疎水性のセグメントから構成されるコポリマーを意味することが本発明において理解される。セグメントは、LCST(下部臨界完溶温度)を有することもできる。一方でセグメントは、それらの組成物及び/又はセグメントを生成するために使用されるモノマーに関して、親水性又は疎水性のいずれかであるポリマー鎖である。両親媒性コポリマーは、ブロックポリマー又はグラフトポリマーでありうる。線状ブロックポリマーの他に、コポリマーの構造は、櫛状又は星状でもありうる。グラフトポリマーの場合では、疎水性側鎖及び親水性グラフトベース又は親水性側鎖及び疎水性グラフトベースのいずれかが存在することができる。側鎖は、横又は上のいずれかにグラフトされうる。適切な両親媒性コポリマーは、例えばWO 2007/017452、WO 2007/051743、WO 2007/ 065845及びWO 2007/065846に開示されており、適切な両親媒性コポリマー及びそれらの製造に関する記載は、本明細書において参照される。更なる両親媒性コポリマーは、例えばポロキサマーである。
【0073】
適切な親水性セグメントは、N-ビニルラクタムホモポリマー又はコポリマー鎖、とりわけN-ビニルピロリドン含有ポリマー、並びにポリビニルアルコール鎖又はポリエーテルである。
【0074】
適切な疎水性セグメントは、例えば、N-ビニルアセテートのホモポリマー又はコポリマーである。適切なコモノマーは、例えば、N-ビニルカプロラクタムである。
【0075】
好ましいポリマー可溶化剤は、グラフトベースとしてPEG6000を有し、酢酸ビニル及びN-ビニルカプロラクタムから生成されるコポリマー側鎖を有する名称Soluplus(登録商標)でBASF SEから市販されているグラフトコポリマーである。
【0076】
また、ミセル溶液を生成するのに適しているものは、12を超えるHLBを有する全ての界面活性剤である。そのような界面活性剤は、”Fiedler, Encyclopedia of Excipients”, Editio Cantor Verlag. Sixth edition, 2007, page 112-119に記載されている。
【0077】
水性酸化防止剤可溶化物は、0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の酸化防止剤、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%の可溶化剤を含む。全体として、量は、水性分散体の重量に基づいて1〜40重量%の水性酸化防止剤可溶化物が使用されるように選択される。
【0078】
本発明の更なる実施態様によると、難水溶性の酸化防止剤は、微粉化水性分散体の形態でポリマー被覆組成物の水性分散体に組み込まれる。これに関連して、分散体とは、固体/液体(懸濁液)又は液体/液体(エマルション)のいずれかでありうる二相系を意味するために使用される用語である。本明細書における酸化防止剤の平均粒径(d4,3)は、20μm未満、好ましくは10μm未満、特に好ましくは3μm未満であるべきである。
【0079】
したがって、酸化防止剤を乳化剤に溶解し、次に水に分散することができる。しかし、酸化防止剤を水に直接加え、高剪断分散ツールを使用し、乳化剤の助けを借りて分散することもできる。酸化防止剤の融点を超える温度に調製物を加熱し、それによってエマルションを形成することが、本明細書において特に好ましいことである。このホットエマルションを、撹拌しながらポリマー分散体に直接加えることができる。あるいは、予め冷却することもでき、それによって微粉化懸濁液が形成される。同様に酸化防止剤の融点を超える温度を有するポリマー分散体に、ホットエマルションを加えることが特に好ましい。
【0080】
適切な乳化剤は、原則的に>10のHLB値(親水性-親油性バランス値、Fiedler, Encyclopedia of Excipients, Editio Cantor Verlag Sixth edition, 2007, page 112-119を参照すること)を有する全ての部類の界面活性物質である。適切な乳化剤は、原則的に、対応するHLB値を有する全てのエトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸エーテル又はエトキシル化脂肪酸エステルである。対応するエトキシル化ソルビタン、ステアリル、オレイル、ラウリル又はパルミチル誘導体、例えばSolutol(登録商標)HS(マクロゴール15ヒドロキシステアレート)又は例えばCremophor(登録商標)RH40(40個の酸化エチレン単位でエトキシル化されている)などのエトキシル化水素化ヒマシ油又は例えば対応するEumulgin(登録商標)等級が適している。
【0081】
更に適している乳化剤は、ポロキサマー(ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー)である。
【0082】
水性酸化防止剤/乳化剤分散体は、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%の酸化防止剤、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%の乳化剤を含む。
【0083】
全体として、量は、水性ポリマー分散体の重量に基づいて1〜40重量%の水性酸化防止剤/乳化剤分散体が使用されるように選択される。
【0084】
本発明の一つの好ましい実施態様によると、酸化防止剤はいわゆる「固溶体」の形態で使用される。用語「固溶体」は、当業者に知られており、一つの固体が別の固体の中に分子的に分散して分布していることを意味する。本発明の場合では、酸化防止剤を固溶体として適切な固体可溶化剤又はポリマー保護コロイドの中に組み込むことができる。次に得られた固溶体を、固体形態で水性被覆組成物分散体に直接組み込むことができる又は予めミセル水性溶液若しくはコロイド溶液に変換し、次に水性被覆組成物分散体に組み込むことができる。固溶体は、例えば、酸化防止剤を可溶化剤又は保護コロイドと一緒に適切な溶媒に溶解し、次に溶媒を蒸発させることによって製造することができる。
【0085】
一つの特に好ましい実施態様によると、固溶体は溶融押出により製造され、ここで酸化防止剤及び可溶化剤又はポリマー保護コロイドは一緒に溶融され、次に押し出され、成形され、凝固される。押出の後に得た顆粒状固体溶融押出物を、ポリマー被覆組成物の水性分散体に特に有利に組み込むことができる。本明細書の固溶体に適したマトリックスポリマー及び保護コロイドは、既に記述された両親媒性コポリマー、とりわけSoluplus(登録商標)又はLutrol(登録商標)F86などのポロキサマーであるが、また、例えばポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー又はヒドロキシアルキル化セルロースなどの非両親媒性ポリマーである。
【0086】
被覆組成物は、例えば、本発明により得られるポリマー粉末を再分散することにより緊密に混合して、水性ポリマー分散体を得て、それに好ましくは少なくとも一つの更なる助剤を添加することによって製造することができる。
【0087】
一つの好ましい実施態様によると、二酸化ケイ素が、噴霧工程の間又は後に得られたポリマー粉末に添加される。
【0088】
適切な追加の助剤は、芳香物質、味覚改善物質、甘味剤(糖、糖アルコール、例えばアパルテーム、サッカリンNa、シクラミン酸ナトリウムなどの甘味料)、滑剤、湿潤剤、離型剤、付着防止剤、安定剤、酸化防止剤、孔形成剤、中和剤、光沢剤、染料、顔料、消毒剤又は防腐剤、増粘剤、可塑剤などでありうる。そのような物質は、例えば、Fiedler, H. P. Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete [Lexicon of auxiliaries for pharmacy, cosmetics and related fields], 4th edition, Aulendorf: ECV-Editio-Cantor-Verlag, 1996に記載されている。
【0089】
本発明の一つの実施態様によると、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートに基づいたポリマー粉末は、被覆組成物を製造する水への再分散の前に粉砕される。粉砕を、記述された追加の助剤の存在下で実施することもできる。
【0090】
助剤の慣用量は、被覆組成物の固体の総重量に基づいて、それぞれの場合において0〜70重量%、好ましくは0〜60重量%、とりわけ1〜50重量%の範囲である。
【0091】
しかし、本発明の粉末から得た被覆組成物を、粉末形態で医薬剤形に適用することもできる。
【0092】
適用は、造粒、流し込み、塗布又は噴霧適用により水性形態で実施することもできる。
【0093】
好ましくは、適用は、再分散により得られる水性ポリマー分散体としてである。原則的には、任意の分散装置が再分散に適している。これに関連して、再分散は、好ましくはブレード、プロペラ、アンカー撹拌機又は類似の撹拌ツールを用いて、好ましくは低剪断力の適用により実施される。本発明のポリマー粉末は、これにより自然に素早く再分散される。水中でのポリマー粉末の再分散は、通常、10分間で完了する。
【0094】
被覆適用に必要な更なる成分をこれらの再分散調製物に加えることができる。そのような成分は、とりわけ、例えばクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、アセチルクエン酸トリエチルなどの可塑剤である。
【0095】
驚くべきことに、微粉化分散体は、例えば、Ultra-turrax又はコロイドミルとも呼ばれるローター-ステーター装置などの極高剪断力にも耐える。高剪断力の導入は、装置の回転数を介してローター-ステーター装置により調節される。好ましくは、再分散は、分散装置の助けを借りて5000rpm未満で実施される。このプロセスは、更なる粗粒状添加剤又は凝集体形成添加剤が、特別の微粉砕を必要とする分散体に追加的に組み込まれる必要がある場合には、特に有利である。したがって、水中におけるこれらの添加剤の別個の微粉砕、続く再分散ポリマー粉末への添加が省かれる。
【0096】
一つの特定の実施態様において、本発明の再分散性ポリマー粉末は、更なる慣用の被覆構成成分及び/又は上記に記載された添加剤と混合され、被覆に必要な構成成分を全て含む、いわゆる直ぐに使用できる調製物を製造する。これらは、粉末又は顆粒形態で存在する。使用者は、直ぐに噴霧できる懸濁液を製造するためには、これらを水中で撹拌するだけが必要である。これらの直ぐに使用できる調製物は、乾燥混合、粉砕、圧縮又は造粒液を使用する構成成分の造粒、続く乾燥工程により製造される。とりわけ、再分散を助ける酸又は酸性塩を、この方法で組み込むことができる。
【0097】
特に記述のない限り、粉末のマイクロメートル範囲の平均粒径に関する本発明の状況における全てのデータは、光回析により決定された粒子直径(d4,3値)の平均体積である。
【0098】
本発明の被覆組成物は、少なくとも一つの更なるポリマー成分を追加的に含むことができる。これに関連して、少なくとも二つの分散体、少なくとも一つの分散体と少なくとも一つの溶液、少なくとも一つの分散体と少なくとも一つの粉末、少なくとも二つの粉末などの混合物を使用することができる。
【0099】
本発明の被覆組成物は、抗うつ薬、ベータレセプターブロッカー、抗糖尿病剤、鎮痛薬、消炎薬、抗リウマチ薬、抗低血圧薬、抗高血圧薬、向精神薬、精神安定薬、制吐薬、筋弛緩薬、グルココルチコイド、潰瘍性大腸炎又はクローン病を治療する作用物質、抗アレルギー剤、抗生物質、抗てんかん薬、抗凝固薬、抗真菌薬、鎮咳薬、動脈硬化剤(arteriosclerotic agent)、利尿薬、酵素、酵素インヒビター、痛風治療薬、ホルモン及びそのインヒビター、強心配糖体、免疫療法剤及びサイトカイン、緩下薬、抗高脂血症剤(antilipanic agent)、胃腸治療剤、抗片頭痛剤(antimigrane agent)、ミネラル物質の調合剤、耳科用作用物質、パーキンソン病を治療する作用物質、甲状腺治療剤、鎮痙薬、血小板凝集抑制剤、ビタミン、細胞増殖抑制薬及び転移阻害剤、植物性製剤(phytopharmaceuticals)、化学療法剤、機能性食品(nutraceuticals)、ビタミン、カロテノイド及びアミノ酸などの、好ましくは単離又は保護形態で投与することができる、原則的に任意の所望の医薬活性成分の剤形に適している。
【0100】
適切な活性成分の例は、アカルボース、非ステロイド性抗リウマチ薬、強心配糖体、アセチルサリチル酸、ウイルス抑制剤(virustatic agent)、アクラルビシン、アシクロビル、シスプラチン、アクチノマイシン、α-及びβ-交感神経作動薬、アロプリノール、アロセトロン、アルプロスタジル、プロスタグランジン、アマンタジン、アンブロキソール、アムロジピン、メトトレキセート、5-アミノサリチル酸、アミトリプチリン、アムロジピン、アモキシシリン、アナストロゾール、アテノロール、アトルバスタチン、アザチオプリン、バルサラジド、ベクロメタゾン、ベタヒスチン、ベザフィブレート、ビカルタミド、ジアゼパム及びジアゼパム誘導体、ブデソニド、ブフェキサマク、ブプレノルフィン、メサドン、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カンデサルタン、カルバマゼピン、カプトプリル、セファロスポリン、セレトキシブ(celetoxib)、セチリジン、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、テオフィリン及びテオフィリン誘導体、トリプシン、シメチジン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、クロブチノール、クロニジン、コトリモキサゾール、コデイン、カフェイン、ビタミンD及びビタミンDの誘導体、コレスチラミン、クロモグリク酸、クマリン及びクマリン誘導体、システイン、シタラビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シプロテロン、シタラビン、ダピプラゾール、デソゲストレル、デソニド、ジヒドララジン、ジルチアゼム、麦角アルカロイド、ジメンヒドリネート、ジメチルスルホキシド、ジメチコン、ジピリダモール、ドンペリドン及びドンペリドン誘導体、ドネプジル(donepzil)、ドーパミン、ドキサゾシン、ドキソルビシン、ドキシルアミン、ダピプラゾール、ベンゾジアゼピン、ジクロフェナク、グリコシド抗生物質、デシプラミン、エコナゾール、ACEインヒビター、エナラプリル、エフェドリン、エピネフリン、エポエチン及びエポエチン誘導体、モルヒナン(morphinane)、カルシウムアンタゴニスト、イリノテカン、モダフィニル、オーリスタット、ペプチド抗生物質、フェニトイン、リルゾール、リセドロネート、シルデナフィル、トピラメート、マクロライド抗生物質、エソメプラゾール、エストロゲン及びエストロゲン誘導体、ゲスターゲン及びゲスターゲン誘導体、テストステロン及びテストステロン誘導体、アンドロゲン及びアンドロゲン誘導体、エテンザミド、エトフェナメート、エトフィブレート、フェノフィブレート、エトフィリン、エトポシド、ファムシクロビル、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブレート、フェンタニル、フェンチコナゾール、ジャイレースインヒビター、フルコナゾール、フルダラビン、フルナリジン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、フルタミド、フルバスタチン、フォリトロピン、ホルモテロール、ホスホマイシン、フロセミド、フシジン酸、ガランタミン、ガロパミル、ガンシクロビル、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシン、イチョウ、セイヨウオトギリソウ、グリベンクラミド、経口抗糖尿病薬としての尿素誘導体、グルカゴン、グルコサミン及びグルコサミン誘導体、グルタチオン、グリセロール及びグリセロール誘導体、視床下部ホルモン、ゴセレリン、グアネチジン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヘパリン及びヘパリン誘導体、ヒアルロン酸、ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド及びヒドロクロロチアジド誘導体、サリチレート、ヒドロキシジン、イダルビシン、イホスファミド、イミプラミン、インドメタシン、インドラミン、インスリン、インターフェロン、ヨウ素及びヨウ素誘導体、イソコナゾール、イソプレナリン、グルシトール及びグルシトール誘導体、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトチフェン、ラシジピン、ランソプラゾール、レボドパ、レボメタドン(levomethadone)、甲状腺ホルモン、リポ酸及びリポ酸誘導体、リシノプリル、リスリド、ロフェプラミン、ロムスチン、ロペラミド、ロラタジン、マプロチリン、メベンダゾール、メベベリン、メクロジン、メフェナム酸、メフロキン、メロキシカム、メピンドロール、メプロバメート、メロペネム、メサラジン、メスクキシミド、メタミゾール、メトホルミン、メトトレキセート、メチルフェニデート、メチルプレドニゾロン、メチキセン、メトクロプラミド、メトプロロール、メトロニダゾール、ミアンセリン、ミコナゾール、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、マイトマイシン、ミゾラスチン、モエキシプリル、モルヒネ及びモルヒネ誘導体、マツヨイグサ、ナルブフィン、ナロキソン、チリジン、ナプロキセン、ナルコチン、ナタマイシン、ネオスチグミン、ニセルゴリン、ニセタミド(nicethamide)、ニフェジピン、ニフルミン酸、ニモジピン、ニモラゾール、ニムスチン、ニソルジピン、アドレナリン及びアドレナリン誘導体、ノルフロキサシン、ノバミンスルホン(novamine sulfone)、ノスカピン、ナイスタチン、オフロキサシン、オランザピン、オルサラジン、オメプラゾール、オモコナゾール、オンダンセトロン、オーリスタット、オセルタミビル、オキサセプロール、オキサシリン、オキシコナゾール、オキシメタゾリン、パントプラゾール、パラセタモール、パロキセチン、ペンシクロビル、経口ペニシリン、ペンタゾシン、ペンチフィリン、ペントキシフィリン、ペルフェナジン、ペチジン、植物抽出物、フェナゾン、フェニラミン、バルビツール酸誘導体、フェニルブタゾン、フェニトイン、ピモジド、ピンドロール、ピペラジン、ピラセタム、ピレンゼピン、ピリベジル、ピロキシカム、プラミペキソール、プラバスタチン、プラゾシン、プロカイン、プロマジン、プロピベリン、プロプラノロール、プロピフェナゾン、プロスタグランジン、プロチオナミド、プロキシフィリン、クエチアピン、キナプリル、キナプリラート、ラミプリル、ラニチジン、レプロテロール、レセルピン、リバビリン、リファンピシン、リスペリドン、リトナビル、ロピニロール、ロシグリタゾン、ロキサチジン、ロキシスロマイシン、ルスコゲニン、ルトシド及びルトシド誘導体、サバジラ、サルブタモール、サルメテロール、スコポラミン、セレギリン、セルタコナゾール、セルチンドール、セルトラリン、シリケート、シンバスタチン、シトステロール、ソタロール、スパグルム酸、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、スピラプリル、スピロノラクトン、スタブジン、ストレプトマイシン、スクラルファート、スフェンタニル、スルバクタム、スルホンアミド、スルファサラジン、スルピリド、スルタミシリン、スルチアム、スマトリプタン、塩化スキサメトニウム、タクリン、タクロリムス、タリオロール(taliolol)、タモキシフェン、タウロリジン、タザロテン、テガセロッド、テマゼパム、テニポシド、テノキシカム、テラゾシン、テルビナフィン、テルブタリン、テルフェナジン、テルリプレシン、テルタトロール、テトラサイクリン、テトリゾリン、テオブロミン、テオフィリン、ブチジン(butizine)、チアマゾール、フェノチアジン、チオテパ、チアガビン、チアプリド、プロピオン酸誘導体、チクロピジン、チモロール、チニダゾール、チオコナゾール、チオグアニン、チオキソロン(thioxolone)、チロプラミド、チザニジン、トラゾリン、トルブタミド、トルカポン、トルナフテート、トルペリゾン、トポテカン、トラセミド、抗エストロゲン、トラマドール、トラマゾリン、トランドラプリル、トラニルシプロミン、トラピジル、トラゾドン、トリアムシノロン及びトリアムシノロン誘導体、トリアムテレン、トリフルペリドール、トリフルリジン、トリメトプリム、トリミプラミン、トリペレナミン、トリプロリジン、トリフォスファミド(trifosfamide)、トロマンタジン、トロメタモール、トロパルピン(tropalpine)、トロキセルチン、ツロブテロール、チラミン、チロスリシン、ウラピジル、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、バラシクロビル、バルデコキシブ、バルプロ酸、バンコマイシン、塩化ベクロニウム、ベンラファキシン、ベラパミル、ビダラビン、ビガバトリン、ビロキサジン、ビンブラスチン、ビンカミン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンポセチン、ビキジル(viquidil)、ワルファリン、ニコチン酸キサンチノール、キシパミド、ザフィルルカスト、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、ゾテピンなどである。
【0101】
望ましい場合、活性成分を薬学的に許容される塩又は誘導体の形態で使用することもでき、キラル活性成分の場合では、光学的に活性な異性体と、また鏡像異性体又はジアステレオ異性体の両方を使用することができる。望ましい場合、本発明の組成物は、二つ以上の医薬活性成分を含むこともできる。
【0102】
本発明によると、被覆組成物を、押出物、ミニ錠剤、カプセル、ソフトカプセル、顆粒、ペレット、マイクロペレット、マイクロカプセル、ナノカプセル又は結晶の被覆に使用することができる。
【0103】
剤形を製造するため、被覆された顆粒、ペレット、マイクロペレット、マイクロカプセル、結晶を適切な助剤と混合し、圧縮して錠剤にすることができ、これは口腔の水性環境で崩壊し、被覆微細成形物を再び放出する。これに関連して特に重要なものは、いわゆる経口分散剤であり、すなわち、口の中で短時間に崩壊し、味覚遮蔽小型成形物を放出する錠剤である。
【0104】
更に、被覆組成物を錠剤の被覆のために有利に使用することもできる。
【0105】
多くの場合に不快な苦味をもたらす可能性があり、本発明により有利に処方することができる活性成分の部類及び物質は、例えば下記である:
パラセタモール、ジクロフェナク、アセクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、アセチルサリチル酸、レバセチルメタドール及びオキシコドンなどの鎮痛薬及び抗リウマチ薬;
プロメタジン、ドネペジル、モダフィニル、ネファゾドン、レボキセチン、セルチンドール及びセルトラリンなどの向精神薬;
エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、グレパフロキサシン、シプロフロキサシ、レボフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン及びネビラピンなどの抗生物質;
プロプラノロール、メトプロロール、ビソプロロール及びネビボロールなどのベータブロッカー;
メトホルミン、ミグリトール及びレパグリニドなどの抗糖尿病薬;
ジフェンヒドラミン、フェキソフェナジン及びミゾラスチンなどのH1抗ヒスタミン薬;
シメチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ニザチジン、チクロピジン、セチリジン及びラニチジンなどのH2抗ヒスタミン薬;
硝酸チアミン及び硫酸キニジン、アミロプリロース(amyloprilose)HCl、プソイドエフェドリンHCl、シルデナフィル、トピラメート、グラニセトロン、レバミピド、キニーネHClなどのビタミン。
【0106】
また、これらの活性成分の多様な塩を対応して処方することができる。
【0107】
並外れた味覚遮蔽は、本発明のポリマーの6を超えるpH値での不溶性及び6を下回るpH値での素早い可溶性からもたらされる。すなわち、唾液中(pH:7.2)では、対応して被覆された形態は、非常に長時間安定しており、苦い薬剤と口腔粘膜の間に接触はないが、胃の中では、1〜5のpH値で活性成分の非常に素早い放出がある。そこでの溶解は素早いので、非被覆形態と比較して作用の開始に差はない。原則として、本発明のポリマーの被膜は、胃液において5分以内に溶解し、一方、pH7.2のリン酸緩衝液では、2時間にわたって安定している。驚くべきことに、被膜は、pH値が4.5の媒体においても比較的素早く溶解し、それにより製造された剤形は、無酸症の患者又は制酸薬(antacid)で治療されている患者であっても素早い効果を発生することを意味する。被覆組成物のこれらの並外れた適用特性は、粉末への変換及び粉末の再分散又は溶融の後も保持される。
【0108】
驚くべきことに、本発明の方法により、難水溶性の酸化防止剤の、ポリマー分散体への組み込みは、酸化防止剤がポリマー粒子に移動し、水相に粒状形態で存在しなくなるような方法で実施される。この結果によってのみ、酸化防止剤がポリマーに対して効果を及ぼすことができ、対応する保護を達成することができる。
【0109】
加えて、驚くべきことに、本発明の方法により、水性ポリマー分散体を、噴霧装置の中に比較的大きな凝集体形成及び付着物をもたらすことなく易流動性粉末に変換することが可能である。乾燥方法又は乾燥ガスの温度制御に関する従来技術の推奨を考慮すると、このことは当業者に予測されなかった。当業者は剪断力による分散体の凝集を通常予測するので、高剪断力の使用が有利であることも驚くべきことであった。
【0110】
したがって本発明の方法は、良好な粒径分布及び例えば流動性などの良好な適用特性を有するポリマー粉末をもたらす。被覆組成物の製造に使用される場合、粉末を極めて有利に再分散して、微粉化分散体を得ることができる。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(1) 成分Aとして、
a)N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、及び
b)α,β-エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸とC1〜C8アルカノールとのエステルから選択される少なくとも一つのラジカル重合性化合物
のラジカル重合により得られるポリマーを含む、水性ポリマー分散体の粉状酸化防止剤含有被覆組成物の製造方法であって、
酸化防止剤が、溶液又は分散体の形態で水性ポリマー分散体に組み込まれ、水性ポリマー分散体が、噴霧工程により粉末形態に変換される、上記方法。
(2) 難水溶性の酸化防止剤が酸化防止剤として使用される、前記実施形態(1)に記載の方法。
(3) 酸化防止剤が、有機溶媒中の溶液の形態で又は可溶化剤を含むミセル水性溶液として組み込まれる、前記実施形態(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 酸化防止剤のミセル溶液が、可溶化剤として界面活性剤又は両親媒性コポリマーを含む、前記実施形態(1)から(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5) 酸化防止剤が、界面活性剤又はポリマー中の酸化防止剤の固溶体の形態で組み込まれる、前記実施形態(1)から(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6) 界面活性剤又はポリマー中の酸化防止剤の固溶体が、溶融押出により得られる、前記実施形態(5)に記載の方法。
(7) 酸化防止剤が、10を超える親水性-親油性バランス値を有する乳化剤を含む分散体の形態で水性ポリマー分散体に組み込まれる、前記実施形態(1)から(3)のいずれか1項に記載の方法。
(8) 酸化防止剤が、成分Aに基づいて0.1〜10.0重量%の量で組み込まれる、前記実施形態(1)から(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9) 水性ポリマー分散体が、乾燥ガスの存在下で噴霧工程により粉末に変換され、噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、ガラス転移温度を少なくとも20℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも20℃超え、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が40〜85℃に保持される、前記実施形態(1)〜(8)のいずれか1項に記載の方法。
(10) 噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、ガラス転移温度を少なくとも40℃超え、ポリマーの最低皮膜形成温度を少なくとも40℃超える、前記実施形態(1)から(9)のいずれか1項に記載の方法。
(11) 噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、動的ガラス転移温度を少なくとも20℃超える、前記実施形態(1)〜(10)のいずれか1項に記載の方法。
(12) 噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が、動的ガラス転移温度を少なくとも40℃超える、前記実施形態(1)〜(11)のいずれか1項に記載の方法。
(13) 噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が45〜70℃に保持される、前記実施形態(1)から(12)のいずれか1項に記載の方法。
(14) 噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が100〜140℃であり、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が45〜70℃に保持される、前記実施形態(1)から(13)のいずれか1項に記載の方法。
(15) 噴霧装置への乾燥ガスの流入温度が110〜130℃であり、噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が50〜60℃に保持される、前記実施形態(1)から(14)のいずれか1項に記載の方法。
(16) 噴霧装置からの乾燥ガスの流出温度が、最低皮膜形成温度のプラス/マイナス5℃の範囲に保持される、前記実施形態(1)から(15)のいずれか1項に記載の方法。
(17) 噴霧工程が噴霧乾燥として実施される、前記実施形態(1)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(18) 噴霧工程が凝集体形成噴霧乾燥として実施される、前記実施形態(1)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(19) 酸又は酸性塩が噴霧工程の前に水性ポリマー分散体に添加される、前記実施形態(1)から(18)のいずれか1項に記載の方法。
(20) 酸又は酸性塩が噴霧工程の後で得られた粉末に添加される、前記実施形態(1)から(18)のいずれか1項に記載の方法。
(21) 噴霧工程の後、得られたポリマーが水に再分散され、酸又は酸性塩と混合される、前記実施形態(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(22) 無機酸又はその酸性塩が酸として添加される、前記実施形態(1)から(21)のいずれか1項に記載の方法。
(23) 有機酸又はその酸性塩が酸として添加される、前記実施形態(1)から(22)のいずれか1項に記載の方法。
(24) 添加される酸が、噴霧工程の条件下で分解又は蒸発する酸又はその酸性塩である、前記実施形態(1)から(23)のいずれか1項に記載の方法。
(25) 酸又は酸性塩を添加した結果として、水性分散体、粉末又は水再分散粉末のpHが5〜9の範囲である、前記実施形態(1)から(24)のいずれか1項に記載の方法。
(26) 酸又は酸性塩を添加することにより、水性分散体、粉末又は水再分散粉末のpHが6〜8の範囲である、前記実施形態(1)から(25)のいずれか1項に記載の方法。
(27) 更なる助剤が噴霧工程の前に水性ポリマー分散体に添加される、前記実施形態(1)から(26)のいずれか1項に記載の方法。
(28) 酸化防止剤が、10を超える親水性-親油性バランス値を有する乳化剤を含むエマルションの形態で、酸化防止剤の融点を超える温度で水性ポリマー分散体に組み込まれる、前記実施形態(1)から(27)のいずれか1項に記載の方法。
(29) 医薬剤形の被覆組成物としての、前記実施形態(1)から(28)により得られるポリマー粉末の使用。
(30) 被覆組成物が、再分散水性分散体の形態で剤形に適用される、前記実施形態(29)に記載の使用。
(31) 再分散が、分散装置の助けを借りて5000rpm未満の回転で実施される、前記実施形態(30)に記載の使用。
(32) 再分散が、分散装置の助けを借りて1000rpm未満の回転で実施される、前記実施形態(30)又は(31)に記載の使用。
(33) 成分Aとして、
a)N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、及び
b)α,β-エチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸とC1〜C8アルカノールとのエステルから選択される少なくとも一つのラジカル重合性化合物
のラジカル重合により得られるポリマーと、酸化防止剤とを含むポリマー分散体からなり、水に再分散されたポリマー粉末の平均粒径が、親一次分散体の最大で5倍である、前記実施形態(1)から(28)のいずれか1項により得られるポリマー粉末。
(34) 水に再分散されたポリマー粉末の平均粒径が、親一次分散体の最大で3倍である、前記実施形態(33)に記載のポリマー粉末。
(35) 水に再分散されたポリマー粉末の平均粒径が、親一次分散体の最大で2倍である、前記実施形態(33)に記載のポリマー粉末。
【実施例】
【0111】
使用される略号:
ガラス転移温度:Tg
全ての%のデータは、重量%に関する。
【0112】
ポリマーの調製は、WO 2009/016258の実施例1に類似して実施される。
【0113】
ポリマーA:メチルメタクリレート/ジエチルアミノエチルメタクリレート、重量比60:40、K値50、Tg62℃
ポリマーB:メチルメタクリレート/ジエチルアミノエチルメタクリレート、重量比55:45、K値49、Tg57℃
ポリマーC:メチルメタクリレート/ジエチルアミノエチルメタクリレート、重量比53:47、K値52、Tg55℃
K値は、NMPにおいて重量あたり0.1%濃度で測定した。ポリマーは、9+/-0.3のpHにおいて水性分散体の重量あたり30%濃度で使用した。一次分散体の平均粒径は、128、127及び131nmであった。ガラス転移温度は、20°K/分の加熱速度でDSCにより決定した。最低皮膜形成温度は、プラス/マイナス5℃の測定正確度の範囲内でTgに対応した。
【0114】
粉末の平均粒径を決定したとき、(d4,3値)は、Malvern Mastersizer 2000を使用して光回析により決定した。
【0115】
光散乱により再分散粉末の平均粒径を決定したとき、値は、「Malvern Zetasizer nano-s」を使用して、平均強度として決定した。
【0116】
[実施例1]
3.0gのブチルヒドロキシトルエンを50gのエタノールに溶解し、1000mlの、固形分30%を有するポリマーBの水性分散体に、撹拌しながら導入した。次に、撹拌しながら、72.9mlの1モル塩酸を混合した。これは、10mol%の中和度に相当する。0.5時間撹拌した後、この部分的に中和された分散体を、霧化が1.2mmの二材料ノズルを介して2.5barの霧化圧で実施されるFSD噴霧塔において噴霧乾燥した。流入空気温度は115℃であり、流出空気温度は58℃であった。微細画分を噴霧乾燥の際に分離し、噴霧ノズルの前に再び吹き込み、それにより170μmの平均粒径を有する噴霧乾燥粒子をもたらした。
【0117】
噴霧乾燥生成物を水に再分散し、パドル撹拌機を15分間使用して撹拌することにより、固形分20%の噴霧懸濁液を得た。光散乱による粒径の測定によって、135nmの値を得た。
【0118】
[実施例2]
6.0gのトコフェロールを20.0gのCremophor RH 40に溶解し、次に混合物を80.0gの水で希釈した。この可溶化物を、1000mlの、固形分30%を有するポリマーAの水性分散体に撹拌しながらゆっくりと加え、1時間更に撹拌し、噴霧塔で噴霧乾燥した。ここでの霧化は、1.2mmの二材料ノズルを介して3.0barの霧化圧で実施した。乾燥ガスを、噴霧乾燥機の流入区域に接線方向で導入し、乾燥した生成物をサイクロンで分離した。流入空気温度は107℃であり、流出空気温度は55℃であった。粉末の平均粒径は32μmであった。
【0119】
100gの噴霧乾燥生成物を、2.30gのコハク酸が予め溶解されている900mlの水に導入した。調製物を、プロペラ撹拌機を使用して20分間撹拌した。光散乱による粒径の測定によって、139nmの値を得た。
【0120】
[実施例3]
4.5gのブチルヒドロキシトルエンを30.0gの水に加え、80℃に加熱し、Ultra-turraxを10000rpmで10分間使用する超微細乳化(microfine emulsification)に付し、次に、1000mlの、固形分30%を有するポリマーAの75℃高温水性分散体に撹拌しながらゆっくりと加えた。この調製物を更に1時間撹拌し、噴霧塔で噴霧乾燥した。ここでの霧化は、1.2mmの二材料ノズルを介して3.0barの霧化圧で実施した。乾燥ガスを、噴霧乾燥機の流入区域に接線方向で導入し、乾燥した生成物をサイクロンで分離した。流入空気温度は108℃であり、流出空気温度は55℃であった。粉末の平均粒径は34μmであった。
【0121】
150gの噴霧乾燥生成物を850mlの水に導入し、調製物を、Ultra-turraxを12000rpmで使用して20分間処理した。光散乱による粒径の測定によって、230nmの値を得た。
【0122】
[実施例4]
100gのブチルヒドロキシアニソールを、押出機において140℃で400gのSoluplusにより加工して、固溶体を得た。得られたストランドを約2mmの大きさに縮めた。20.0gのこの固溶体を1000mlの、固形分30%を有するポリマーBの水性分散体に加え、混合物を更に1時間撹拌した。次に、撹拌しながら、36.5mlの1モル塩酸を加えた。これは、5mol%の中和度に相当する。この部分的に中和された分散体を、霧化が1.2mmの二材料ノズルを介して3.0barの霧化圧で実施されるFSD噴霧塔において噴霧乾燥した。流入空気温度は125℃であり、流出空気温度は56℃であった。微細画分を噴霧乾燥の際に分離し、噴霧ノズルの前に再び吹き込み、それにより180μmの平均粒径を有する噴霧乾燥粒子をもたらした。噴霧工程の際に、200m2/gのBET表面積を有するコロイド二酸化ケイ素を、ポリマー粉末の総質量に基づいて0.5%の量で塔に吹き込んだ。
【0123】
噴霧乾燥生成物を水に再分散し、パドル撹拌機を20分間使用して撹拌することにより、固形分20%の噴霧懸濁液を得た。光散乱による粒径の測定によって、140nmの値を得た。
【0124】
[実施例5]
5.0gのブチルヒドロキシトルエン及び10.0gのドキュセートナトリウムを50.0gの水に加え、撹拌しながら50℃に加熱した。ブチルヒドロキシトルエンが溶解した後、この調製物を1000mlの、固形分30%を有するポリマーCの水性分散体と撹拌しながら混合した。5mol%の中和度に対応する1.31gのマロン酸を加えた後、この部分的に中和された分散体を200mlの、タルクの40%濃度懸濁液と混合し、霧化が1.2mmの二材料ノズルを介して3.0barの霧化圧で実施されるFSD噴霧塔において噴霧乾燥した。流入空気温度は137℃であり、流出空気温度は59℃であった。微細画分を噴霧乾燥の際に分離し、噴霧ノズルの前に再び吹き込み、それにより185μmの平均粒径を有する噴霧乾燥粒子をもたらした。
【0125】
噴霧乾燥生成物を水に再分散し、パドル撹拌機を15分間使用して撹拌することにより、固形分20%の噴霧懸濁液を得た。光散乱による粒径の測定によって、145nmの値のポリマー粒子を得た。
【0126】
[実施例6]
100gの実施例3で調製されたポリマー粉末を、50gの極微粉砕タルク、4gのインジゴチンレーキ及び2gのコハク酸とTurbulaミキサーで混合した。
【0127】
プロペラ撹拌機の使用によりこの調製物を水に再分散して15%濃度の懸濁液を得た後、ポリマー粒子の粒径の160nmを生じた。
【0128】
[実施例7]
実施例6で製造された調製物を13.0gのクエン酸トリエチルと混合し、1時間撹拌し、噴霧により錠剤コアに適用した。
【表1】
【0129】
得られた皮膜錠剤は、40℃未満のストレス保存下でも変化しなかった平滑で光沢のある味覚遮断被覆を有した。