(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に作用した前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む状況データ、又は、車両に作用したロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データを含む状況データ、のうち少なくとも一方の状況データを受信する状況データ受信部と、
受信した状況データにおける前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの波形のばらつきの大小関係、又は、ロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの波形のばらつきの大小関係、のうち少なくとも一方の波形のばらつきの大小関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を特定する車両挙動特定部とを備え、
前記車両挙動特定部が、前記一方の波形のばらつきの大小関係を用いて、衝突事故、衝突事故に繋がるヒヤリハット又はそれ以外の急ブレーキを示すヒヤリハット等挙動と、縁石への片輪乗り上げ又は側溝への脱輪を示す乗り上げ等挙動と、車道上の凹凸を両輪が通過することにより生じるバウンドを示すバウンド挙動とのいずれかとして特定する車両挙動解析装置。
車両に作用した前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む状況データ、又は、車両に作用したロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データを含む状況データ、のうち少なくとも一方の状況データを受信する状況データ受信部と、
受信した状況データにおける前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの波形のばらつきの大小関係、又は、ロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの波形のばらつきの大小関係、のうち少なくとも一方の波形のばらつきの大小関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を特定する車両挙動特定部と、としての機能をコンピュータに備えさせるものであり、
前記車両挙動特定部が、前記一方の波形のばらつきの大小関係を用いて、衝突事故、衝突事故に繋がるヒヤリハット又はそれ以外の急ブレーキを示すヒヤリハット等挙動と、縁石への片輪乗り上げ又は側溝への脱輪を示す乗り上げ等挙動と、車道上の凹凸を両輪が通過することにより生じるバウンドを示すバウンド挙動とのいずれかとして特定することを特徴とする車両挙動解析プログラム。
車両に作用した前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む状況データ、又は、車両に作用したロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データを含む状況データ、のうち少なくとも一方の状況データを受信する状況データ受信部と、
受信した状況データにおける前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの波形のばらつきの大小関係、又は、ロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの波形のばらつきの大小関係、のうち少なくとも一方の波形のばらつきの大小関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を特定する車両挙動特定部とを備え、
前記車両挙動特定部が、前記一方の波形のばらつきの大小関係を用いて、衝突事故、衝突事故に繋がるヒヤリハット又はそれ以外の急ブレーキを示すヒヤリハット等挙動と、縁石への片輪乗り上げ又は側溝への脱輪を示す乗り上げ等挙動と、車道上の凹凸を両輪が通過することにより生じるバウンドを示すバウンド挙動とのいずれかとして特定するドライブレコーダ。
【背景技術】
【0002】
近時、車両挙動データ収集装置として、例えば運転中の車両(自動車)の外部や内部の映像を自動的に記録して、事故やヒヤリハット等の際の客観的な状況、ひいては、ドライバーの運転傾向を事後分析できるようにした車両搭載型のドライブレコーダが開発されてきている。そして、例えばタクシー等では、日常運転の事後分析による事故予防対策や、事故が起こったときにはその原因の客観的な証拠、究明等のために、この種のドライブレコーダを搭載する動きも出てきている。
【0003】
具体的に、このような車両挙動データ収集装置は、例えば走行中の内外部画像データ、加速度データ、速度データ、位置データ等の状況データを、逐次、時系列的に順次メモリ内に記録している。そして、別装置で、そのメモリ内の状況データを事後に参照することにより、事故等の客観的な分析ができるように構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところがこのように記録した状況データを事後に解析しようとした場合、これらの状況データにはヒヤリハット等の特定の車両挙動の他に種々の挙動を示す状況データが含まれていることから、収集した多数の状況データの中から所望の車両挙動を示す状況データを分類して抽出する必要がある。
【0005】
ここで従来は、収集された多数の状況データを1つ1つ目視により確認して、各状況データを、例えば衝突事故、ヒヤリハット、ヒヤリハットに関係の無い急ブレーキ、単なるノイズ等に分類する作業を行っている。
【0006】
しかしながら、状況データを1つ1つ目視による確認して分類する作業は、1つの状況データを確認する作業時間がかかりすぎてしまうだけでなく、ユーザの恣意的な判断により正確に分類することが難しいという問題がある。また、ユーザに与える肉体的負担及び精神的負担も大きいという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に示すように、ユーザの負担を軽減するために状況データをノイズに起因する状況データと、ヒヤリハット等の挙動解析に用いる状況データとに自動的に分類する装置が考えられている。具体的にこの装置は、加速度データの波形の波高及びパルス幅に基づいてノイズに起因する不要な状況データを排除するように構成されている。
【0008】
しかしながら、上記の装置のように、閾値を用いてノイズに起因する不要な状況データとヒヤリハット等の挙動解析に用いる状況データとを判別するものでは、閾値の設定の仕方で分類精度が大きく異なるという問題がある。また、閾値を用いてノイズに起因するデータを除去できたとしても、残りの状況データを1つ1つ目視により確認して分類する必要がある。
【0009】
例えば閾値を低く設定すれば、全状況データからヒヤリハット事例候補の抽出件数は増えるものの、抽出されたデータにおけるヒヤリハット事例の的中率が低くなり、不要なデータが含まれる割合が大きくなる。一方で、閾値を高く設定すれば、全状況データからヒヤリハット事例候補の抽出件数は減るものの、抽出された状況データにおけるヒヤリハット事例の的中率が高くなり、不要なデータが含まれる割合が小さくなる。ところがこの場合、ヒヤリハット事例の漏れ率が高くなってしまう。つまり、閾値で画一的に分離する手法では、的中率と漏れ率との間にトレードオフが存在する。また、閾値を高くして的中率を挙げたからといって、その的中率は目視により分類した場合に比べてかなり低く実用的ではない。したがって正確に状況データからヒヤリハット事例を分類するためには、依然として目視による作業が必要であるというのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、本願発明者の鋭意検討の結果、車両の挙動毎に各加速度データの特徴量に特有の相対関係があることに着目して初めてなされたものであり、状況データが示す車両の挙動を目視のみにより分類することなく、状況データが示す車両挙動を自動的に且つ高い信頼性で特定することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る車両挙動解析装置は、車両に作用した前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む状況データ、又は、車両に作用したロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データを含む状況データ、のうち少なくとも一方の状況データを受信する状況データ受信部と、受信した状況データにおける前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの特徴量の相対関係、又は、ロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの特徴量の相対関係、のうち少なくとも一方の特徴量の相対関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を特定する車両挙動特定部とを備えることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、各加速度データの特徴量又は各角加速度データの特徴量を用いて、その相対関係により車両挙動を特定することができるので、目視に依ることなく状況データが示す車両挙動を特定することができる。これにより、ユーザの恣意的な判断を排除して客観的に車両挙動を特定することができるだけでなく、ユーザの時間的、肉体的及び精神的負担を軽減することができる。また、各加速度データの特徴量又は各角加速度データの特徴量の相対関係により車両挙動を特定することができるので、閾値のみで判別するものに比べて信頼性の高い特定結果を得ることができる。
【0014】
具体的には、本願発明者の鋭意検討の結果、以下(1)〜(3)の車両挙動において、前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの特徴量において特有の相対関係が存在することが分かった。つまり、前記受信した状況データが前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む場合、前記車両挙動特定部が、前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの特徴量の相対関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を以下の(1)〜(3)のいずれかとして特定することが考えられる。
(1)衝突事故、衝突事故に繋がるヒヤリハット又はそれ以外の急ブレーキを示すヒヤリハット等挙動。
(2)縁石への片輪乗り上げ又は側溝への脱輪を示す乗り上げ等挙動。
(3)車道上の凹凸を両輪が通過することにより生じるバウンドを示すバウンド挙動。
【0015】
より詳細には前記車両挙動特定部が、左右加速度データ及び上下加速度データの特徴量よりも前後加速度データの特徴量が大きい場合には、前記状況データが示す車両挙動を前記ヒヤリハット等挙動と特定し、前後加速度データ及び上下加速度データの特徴量よりも前記左右加速度データの特徴量が大きい場合には、前記状況データが示す車両挙動を前記乗り上げ等挙動と特定し、前後加速度データ及び前記左右加速度データの特徴量よりも上下加速度データの特徴量が大きい場合には、前記状況データが示す車両挙動を前記バウンド挙動と特定することが望ましい。
【0016】
前記ヒヤリハット等挙動において、衝突事故及びヒヤリハット以外の急ブレーキをさらに細分化して特定するためには、前記状況データが、前記車両のウィンカーの作動情報を示すウィンカーデータを含み、前記車両挙動特定部が、前記ヒヤリハット等挙動と特定した状況データにおいて前記ウィンカーデータが含まれる場合には、車道の路肩に寄って停車するための急ブレーキを示す挙動であると特定することが望ましい。
【0017】
また本発明に係る車両挙動解析プログラムは、車両に作用した前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む状況データ、又は、車両に作用したロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データを含む状況データ、のうち少なくとも一方の状況データを受信する状況データ受信部と、受信した状況データにおける前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの特徴量の相対関係、又は、ロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの特徴量の相対関係、のうち少なくとも一方の特徴量の相対関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を特定する車両挙動特定部と、としての機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする。
【0018】
上記の車両挙動解析装置は、車両に搭載されたドライブレコーダから状況データを取得して、その状況データを解析するものである。上記の車両挙動解析装置の機能をドライブレコーダに付与しても良い。つまり本発明に係るドライブレコーダは、車両に作用した前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データを含む状況データ、又は、車両に作用したロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データを含む状況データ、のうち少なくとも一方の状況データを受信する状況データ受信部と、受信した状況データにおける前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの特徴量の相対関係、又は、ロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの特徴量の相対関係、のうち少なくとも一方の特徴量の相対関係を用いて、前記状況データが示す車両挙動を特定する車両挙動特定部とを備えることを特徴とする。
【0019】
このようなものであれば、ドライブレコーダが状況データをメモリに格納する段階で、各状況データが示す車両挙動を特定することができるので、その後収集した状況データを分類する作業を不要又はその作業を軽減することができる。また、特定の挙動のみを選択してドライブレコーダのメモリに格納することができるようになり、メモリを効率的に利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、状況データが示す車両の挙動を目視により分類する、あるいは状況データに含まれる例えば加速度データを閾値を用いて判別して分類するという手法を用いることなく、状況データが示す車両挙動を自動的に且つ高い信頼性で特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る車両挙動解析システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
<1.システム構成>
本実施形態に係る車両挙動解析システムは、
図1に示すように、自動車(車両)Vの外部前方を撮像等するドライブレコーダ100と、当該ドライブレコーダ100により撮像された動画データ等を取得して、当該動画データが示す動画に基づいて自動車Vが所定の挙動を示すか否かを特定等する車両挙動解析装置200とを備える。
【0025】
<2.ドライブレコーダ>
ドライブレコーダ100は、フロントガラスに接着するか、またはダッシュボード付近に設置し、もしくは車両内の適切な位置に装着して、事故発生時あるいは事故発生に至らないまでも事故になり得たヒヤリハット時等の前後一定期間における自動車Vの挙動や周囲状況等を記録する車両搭載型のものであり、単一または複数のケーシング内に、基本構成要素、すなわち、
図2に示す検知手段3、情報処理手段8、報知手段4、入力手段5、通信手段6、着脱式記録手段7等を収容した一体構成にしている。
【0026】
検知手段3とは、自動車Vの挙動や周囲状況等に関する状況をセンシングし、その状況を示す状況データを出力するものであり、ここでは、撮像手段31、加速度センサ32、位置センサ33の3種類を少なくとも用いている。撮像手段31は、自車両前方の車外状況を撮像し、その画像を示す状況データ(動画データ)を出力する例えばCCDカメラである。加速度センサ32は、例えばピエゾ抵抗効果を利用して構成したもので、車両に作用する3次元の加速度をセンシングし、その加速度を示す状況データ(加速度データ)を出力するものである。具体的に加速度センサ32は、車両Vの前後方向に作用する前後加速度、車両Vの左右方向に作用する左右加速度、車両Vの上下方向に作用する上下加速度をセンシングするものである。位置センサ33は、例えば複数衛星からの電波をキャッチして車両Vの位置をセンシングし、その位置を示す状況データ(位置データ)を出力するGPS受信機である。なお、状況データには、その他、車両Vの車速センサから送信されてくる車速データや、ドアの開閉を示すドア開閉データや、ブレーキのON/OFFを示すブレーキデータ、車両Vのウィンカーの作動情報を示すウィンカーデータ等があって、これらは、コネクタCNを介して受信される。またこのコネクタCNは、電源用としても用いるようにしている。
【0027】
報知手段4は、ケーシングの表面に露出させた発光体であるLED41や、ケーシングに内蔵したブザーやスピーカ等の音声出力体(図示しない)等からなる。
【0028】
入力手段5とは、ここでは、ケーシングの表面に設けたボタンスイッチのことである。
【0029】
通信手段6とは、ここではケーシングに内蔵され、基地局又は後述する車両挙動解析装置200と電波を送受信する例えば無線LANや携帯電話などの通信用のハードウェアのことである。
【0030】
着脱式記録手段7とは、ここでは、ケーシングの側方に開口するスロットに抜脱可能に取り付けた例えばCFメモリカードやSDメモリカードのことである。
【0031】
情報処理手段8は、構造的には、CPU81、内部メモリ82(例えば不揮発性メモリ)、I/Oバッファ回路(ADコンバータ等が含まれる場合もある)83等を有したいわゆるコンピュータ回路であり、ケーシングに内蔵されている。そして前記CPU81がメモリ82の所定領域に格納したプログラムに従って動作することで前記各手段の制御や情報処理を行う。
【0032】
簡単に説明するとCPU81は、走行中の種々の状況データ、すなわち加速度データや位置データ、動画データ等を、メモリ82内に設定したテンポラリ領域(以下、一時データ格納部とも言う)に常時次々と更新しながら一時的に保存していくとともに、ヒヤリハットや事故、異常発生等の発生を間接的に示す事象が生じた場合に、その前後一定期間に亘る前記状況データを、メモリ82内の正規領域(以下、正規記録データ格納部とも言う)に移送して記録する。
【0033】
前記事象とは、加速度データが示す加速度(減速度)が所定基準値を超えた場合や、その時間が一定以上続いた場合、ドアが開閉された場合、車両の電源が切れた場合などがそれに相当する。ここでは、生じた事象によっては、車速が上限速度以上の場合、車速が加減速度以下の場合、ブレーキの有無などの他の条件のいくつかが合わせて成立した場合にのみ、それをトリガとしてデータ記録を行うようにし、無駄なデータの記録ができるだけ行われないようにしている。
【0034】
また、無駄なデータ記録の防止という観点から言えば、学習機能も備えている。すなわち、データ記録を行う前には、ヒヤリハットや事故等であったかどうかを、前記報知手段によって、必ずドライバーに報知手段によって報知し、ドライバーからの正否入力(例えば前記ボタンスイッチ5のON/OFF)を受けつけるようにしている。これを繰り返すことにより、ある程度ドライバーの運転傾向を把握し、例えば、加速度の所定基準値を変更するなどして、事故等を間接的に示す、そのドライバー特有の事象を学習する。
【0035】
さらに、記録された状況データは、その記録されたときの状況から重み付けがなされて、記録すべき重要度に応じて分類される。そして、メモリ容量が一杯になった場合などでは、重要度の低いものから削除されて新たな状況データが記録されるように構成している。
【0036】
このようにして正規に記録された状況データは、特定場所において、無線で解析センター(図示しない)に送信され、あるいは、着脱式記録手段7に移送されて抜き取られ、解析センターに運び込まれて、車両挙動解析装置200を用いた事後の解析に利用される。
【0037】
<3.車両挙動解析装置>
車両挙動解析装置200は、複数の自動車Aに搭載されたドライブレコーダ100によって得られた状況データ群を所定の車両挙動ごとに分類して、事後の解析を支援するものである。この車両挙動解析装置200の具体的な機器構成としては、CPU、メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等を備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリの所定領域に記憶させた車両挙動解析プログラムにしたがってCPU、周辺機器等を協働させることにより、
図3に示すように、状況データ受信部201、状況データ格納部D1、車両挙動特定部202、解析データ格納部D2等としての機能を発揮する。
【0038】
以下に、各部D1、201、202、D2について
図4を用いて動作とともに説明する。
【0039】
状況データ受信部201は、ドライブレコーダ100の正規記録データ格納部に格納された動画データ及び各加速度データを含む状況データを受け付けて、その状況データを状況データ格納部D1に格納する(
図4、ステップS1)。状況データ受信部201は、ドライブレコーダ100に設けられた通信手段(送信機)6により無線LAN等を用いて送信される状況データを受信する受信機により構成しても良いし、ドライブレコーダ100に設けられた着脱式記録手段7である例えばCFカードを介して状況データを取得するものであっても良い。
【0040】
状況データ格納部D1は、前記ドライブレコーダ100により撮像された動画データ等を含む状況データを格納して蓄積するものである(
図4、ステップS2)。なお、本実施形態では、状況データ格納部D1は、複数台の自動車Vにより得られた複数の状況データを例えば自動車V毎に体系的に格納するように構成している。
【0041】
車両挙動特定部202は、前記状況データ格納部D1に格納された状況データを取得して、当該状況データ毎に含まれる前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの特徴量を算出する(
図4、ステップS3)。本実施形態の車両挙動特定部202は、各加速度データの特徴量として、各加速度データが示す加速度波形の振幅やばらつきの尺度である例えば標準偏差を算出する。
【0042】
そして車両挙動特定部202は、各加速度データの特徴量である例えば標準偏差の相対的な大小関係を用いて、状況データが示す車両挙動を特定する(
図4、ステップS4)。具体的に車両挙動特定部202は、前後加速度、左右加速度及び上下加速度の各加速度データの標準偏差の相対的な大小関係を用いて、状況データが示す車両挙動を、少なくとも以下の(1)〜(3)のいずれかとして特定する。
(1)衝突事故、衝突事故に繋がるヒヤリハット又はそれ以外の急ブレーキを示すヒヤリハット等挙動。
(2)縁石への片輪乗り上げ又は側溝への脱輪を示す乗り上げ等挙動。
(3)車道上の凹凸を両輪が通過することにより生じるバウンドを示すバウンド挙動。
【0043】
より詳細に車両挙動特定部202は、
図5に示すように、左右加速度データの加速度波形の標準偏差及び上下加速度データの加速度波形の標準偏差よりも前後加速度データの加速度波形の標準偏差が大きい場合には、前記状況データが示す車両挙動を、前記ヒヤリハット等挙動と特定する。これは、衝突時の衝撃や急ブレーキ時の衝撃によって、各加速度のうち前後加速度が最も大きく変動して、前後加速度波形のばらつきが最も大きくなることに基づいている。なお、
図5は、前記ドライブレコーダ100により得られた多数の状況データを目視により上記(1)〜(3)に分類し、それら挙動毎に状況データを整列させて、各状況データの各加速度波形の標準偏差を示した模式図である。
図5の横軸は各状況データを示し、縦軸は各加速度波形の標準偏差を示す。
【0044】
また、車両挙動特定部202は、前後加速度データの加速度波形の標準偏差及び上下加速度データの加速度波形の標準偏差よりも前記左右加速度データの加速度波形の標準偏差が大きい場合には、前記状況データが示す車両挙動を、前記乗り上げ等挙動と特定する(
図5参照)。これは、乗り上げ等挙動において車両Vの前輪のうち片輪のみが急激に変動することによって、各加速度のうち左右加速度が最も大きく変動して、左右加速度波形のばらつきが最も大きくなることに基づいている。
【0045】
さらに車両挙動特定部202は、前後加速度データの加速度波形の標準偏差及び前記左右加速度データの加速度波形の標準偏差よりも上下加速度データの加速度波形の標準偏差が大きい場合には、前記状況データが示す車両挙動を、前記バウンド挙動と特定する(
図5参照)。これは、バウンド挙動において車両Vの前輪の両輪が略同時に変動する、つまり略同時に上下運動することにより、各加速度のうち上下加速度が最も変動して、上下加速度波形のばらつきが最も大きくなること基づいている。
【0046】
その上、車両挙動特定部202は、前記ヒヤリハット等挙動と特定した状況データにおいて前記ウィンカーデータが含まれる場合には、車道の路肩に寄って停車するための急ブレーキを示す挙動(路肩停止挙動)であると特定する(
図5参照)。このように特定することでヒヤリハット等挙動を更に自動的に細分化して分類することが可能となる。なお、
図5においてウィンカーの有無は、図の下部に縦細線で示している。またウィンカー信号の密集部分はハッチングで示している。
【0047】
そして、車両挙動特定部202は、上記の通り車両挙動を特定した状況データに、その特定結果である挙動特定データを関連付けて、解析データ格納部D2に格納する(
図4、ステップS5)。
【0048】
解析データ格納部D2は、前記車両挙動特定部202により挙動特定された状況データとともにその状況データに対応する挙動特定データを、各車両挙動毎に体系的に分類して格納する。具体的に解析データ格納部D2は、ヒヤリハット等挙動、乗り上げ等挙動、バウンド挙動毎に設定された格納フォルダ内に、対応する状況データ及び挙動特定データを格納する。例えば、解析データ格納部内には、ヒヤリハット等挙動として特定された状況データを格納するヒヤリハット等挙動フォルダ、乗り上げ等挙動として特定された状況データを格納する乗り上げ等挙動フォルダ、バウンド挙動として特定された状況データを格納するバウンド挙動フォルダが設定されており、各フォルダ内に、対応する状況データ及び挙動特定データが格納される。
【0049】
さらに解析データ格納部D2は、前記ヒヤリハット等挙動フォルダを、ヒヤリハット等挙動から前記路肩停止挙動をさらに分類して格納するための路肩停止挙動フォルダが、細分化又は階層化して設定されている。
【0050】
このように解析データ格納部D2に格納された状況データのうち、特定の車両挙動に分類された状況データのみが、オペレータによる例えばキーボードやマウス等の入力手段の操作により選択されて、例えばディスプレイ等の出力手段に出力される。あるいは、特定の車両挙動に分類された状況データのみが、同様に選択されて、別の解析装置やメモリ等に転送される。
【0051】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る車両挙動解析システムによれば、前後加速度データ、左右加速度データ及び上下加速度データにより示される、前後加速度波形の標準偏差、左右加速度波形の標準偏差及び上下加速度波形の標準偏差の大小関係により車両挙動を特定することができる。したがって、目視に依ることなく状況データが示す車両挙動を特定することができ、ユーザの恣意的な判断を排除して客観的に車両挙動を特定することができるだけでなく、ユーザの時間的、肉体的及び精神的負担を軽減することができる。また、閾値を用いることなく、前後加速度波形の標準偏差、左右加速度波形の標準偏差及び上下加速度波形の標準偏差の大小関係により車両挙動を特定することができるので、信頼性の高い特定結果を得ることができる。
【0052】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記実施形態では各加速度データを用いたものであったが、ドライブレコーダ100がジャイロセンサを有するものであれば、車両に作用するロール角加速度、ピッチ角加速度及びヨー角加速度の各角加速度データの特徴量を用いて車両挙動を特定するようにしても良い。
【0054】
また、前記実施形態では解析データ格納部が、ヒヤリハット等挙動、乗り上げ等挙動、バウンド挙動毎に設定された格納フォルダを有しており、以後、所定挙動の選択を簡単にしているがこれに限られない。例えば車両挙動解析装置が、解析データ格納部内に格納された状況データの中から所定の車両挙動を示す状況データを抽出する状況データ抽出部をさらに備えたものであっても良い。そして状況データ抽出部が、オペレータによる例えばキーボードやマウス等の入力手段の操作により選択された所定の車両挙動を示す状況データを、状況データに付与された挙動特定データに基づいて抽出するように構成しても良い。
【0055】
さらに、前記実施形態ではドライブレコーダ100により得られた状況データを車両挙動解析装置に収集した後に、当該車両挙動解析装置によって状況データが示す車両挙動を特定するように構成しているが、ドライブレコーダ100で同様に状況データが示す車両挙動を特定するようにしても良い。例えば、ドライブレコーダ100が状況データ受信部及び車両挙動特定部を有しており、当該車両挙動特定部により所定の挙動(例えばヒヤリハット等挙動)として特定された状況データのみをメモリ内の正規領域(正規記録データ格納部)に移送して記録するように構成しても良い。
【0056】
その上、ヒヤリハット等挙動に分類された状況データを所定の閾値を用いて細分化するように構成しても良い。例えば、加速度センサにより得られた3軸合成加速度の最大値から上下加速度最大値を差し引いた値と閾値との関係で細分化することが考えられる。
【0057】
また、ヒヤリハット等挙動において、衝突事故をさらに細分化して特定するためには、左右加速度データ、上下加速度データ及び前後加速度データの特徴量が、通常のブレーキによる路面とタイヤの接地面における摩擦力による特徴量よりも顕著に大きな値を示す挙動であると特定することが望ましい。
【0058】
加えて、車両挙動解析装置が、状況データを地図情報とリンクするものであっても良い。具体的に車両挙動解析装置は、状況データに含まれる位置データを用いて、地図情報と状況データとをリンクする。これにより、バウンド挙動として特定された状況データから道路情報(例えば路面の劣化状態等)を推測する等して道路解析を行うことができる。
【0059】
さらに加えて、前後加速度データの変動態様を用いて、衝突事故のうち、他車両や構造物等に衝突した場合の挙動と他車両に衝突された挙動とを分類するように構成しても良い。つまり、前記ヒヤリハット等挙動において、追突事故または被追突事故を特定するためには、左右加速度データ、上下加速度データ及び前後加速度データの特徴量の正負によって特定することが望ましい。
【0060】
その上、前記実施形態に加えて乗り上げ等挙動を示す状況データを、当該状況データに含まれるウィンカーデータを用いて以下のようにしても良い。つまり、ウィンカーデータにより車両の左折又は右折を判別して、車両Vが左折時又は右折時に縁石等に乗り上げたか等を特定するようにしても良い。
【0061】
また、右折で縁石に乗り上げたか左折で縁石に乗り上げたかを判断するには、ウィンカーデータなしに、左右加速度の波形の正負の順番をみることで、左右のタイヤの乗り上げた順番を見極めることができるため、判断が可能である。
これにより、例えば左折時に縁石に乗り上げやすい又は右折時に縁石に乗り上げやすい等のドライバーの運転傾向を容易に解析できるようになる。
【0062】
また、左右加速度の波形をみることでUターンの判断をすることもできるため、例えばUターンしたときの事故もしくはヒヤリハットかどうかをも判断することが可能である。
【0063】
前記実施形態の加速度データの特徴量は、加速度波形の標準偏差であったが、その他加速度波形の分散を用いても良いし、加速度の平均値を用いても良い。その他、各加速度において各挙動特有の大小関係を示す演算値を用いても良い。
【0064】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。