特許第6027962号(P6027962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027962重合性液晶組成物、偏光発光性塗料、新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体及び新規アントラセン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027962
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物、偏光発光性塗料、新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体及び新規アントラセン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/38 20060101AFI20161107BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20161107BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20161107BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20161107BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20161107BHJP
   C08F 24/00 20060101ALI20161107BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20161107BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20161107BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20161107BHJP
   C09B 19/00 20060101ALI20161107BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20161107BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20161107BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20161107BHJP
   C09D 5/22 20060101ALI20161107BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C09K19/38
   C09K19/60 Z
   C09K19/54 Z
   C08F220/30
   C08F220/36
   C08F24/00
   C08F26/06
   C08F212/14
   C07C69/76 ACSP
   C09B19/00
   C07D401/04
   C09D4/00
   C09D201/02
   C09D5/22
   G02F1/1335 510
【請求項の数】8
【全頁数】96
(21)【出願番号】特願2013-507377(P2013-507377)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2012056708
(87)【国際公開番号】WO2012132936
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-75698(P2011-75698)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-268370(P2011-268370)
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】入沢 正福
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亨
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536953(JP,A)
【文献】 特表2004−535483(JP,A)
【文献】 特開2007−297606(JP,A)
【文献】 特開2009−249586(JP,A)
【文献】 特開平11−130817(JP,A)
【文献】 特開2005−258430(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/057984(WO,A1)
【文献】 特開平11−074077(JP,A)
【文献】 特開2005−100782(JP,A)
【文献】 特開2011−195587(JP,A)
【文献】 特開昭63−135458(JP,A)
【文献】 特開平06−234806(JP,A)
【文献】 特開2000−087027(JP,A)
【文献】 特開平08−020614(JP,A)
【文献】 特開2010−150425(JP,A)
【文献】 特開2007−119415(JP,A)
【文献】 特開平10−321371(JP,A)
【文献】 特開2006−143862(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0027872(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01854150(EP,A1)
【文献】 国際公開第2006/088369(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101138100(CN,A)
【文献】 韓国特許第10−2007−0120956(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0164272(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01256602(EP,A1)
【文献】 国際公開第2002/090447(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1507478(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/38
C07C 69/76
C07D 401/04
C08F 24/00
C08F 26/06
C08F 212/14
C08F 220/30
C08F 220/36
C09B 19/00
C09K 19/54
C09K 19/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性官能基を有する液晶化合物の少なくとも一種(A)、色材の少なくとも一種(B)及び重合開始剤(C)を含有する重合性液晶組成物であって、
上記(A)成分である重合性官能基を有する液晶化合物が、下記一般式(I)で表される液晶化合物であり、上記(B)成分である色材が、下記一般式(IV)で表されるナフトラクタム誘導体、下記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体及び下記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体から選択される重合性液晶組成物
【化1】
(式中、環A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、デカヒドロナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環又は光学活性を有する結合基を表し、
1及びS2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、S1及びS2で表されるアルキレン基はハロゲン原子で置換されてもよく分岐を有してもよく、S1及びS2で表されるアルキレン基のメチレン基は−O−で中断されてもよく、
1、Z2、Z3、Z4及びZ5は、それぞれ独立に、直接結合、−L1−、−O−CO−、−CO−O−、−L1O−、−OL1−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−L1O−CO−O−、−O−COL1−、−CO−OL1−、−O−CO−OL1−、−CO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−又は−CH2=N−N=CH2−を表し、
1は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、L1で表されるアルキレン基は−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で中断されてもよく、
1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y1、Y2、Y3及びY4で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されてもよく、
a、b、c及びdは、それぞれ独立に、0〜8であり、f、g及びhは、それぞれ独立に、0又は1であり、
j及びkは、それぞれ独立に、0、1又は2であり、j+k≧2であり、
1及びG2は、それぞれ独立に、下記式(1)〜(4)で表される群より選択される置換基を表す。)
【化2】
(式(1)中、M1は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表し、式(2)中、R1は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(3)中、R2は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(4)中、R3は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【化3】
(式中、X1は酸素原子及び硫黄原子を表し、
5〜R10及びD1は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は下記一般式(V)で表される置換基を表す。
但し、R5〜R10のうち、少なくとも1つは下記一般式(V)で表される置換基を表す。
【化4】
(式中、環A5、A6、A7及びA8は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、
3は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し
6、Z7、Z8、Z9及びZ10は、それぞれ独立に、直接結合、−O−CO−又は−CO−O−を表し
5、Y6、Y7及びY8は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、上記Y5、Y6、Y7及びY8で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく、上記Y5、Y6、Y7及びY8におけるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されていてもよく、
m、n、p及びqは、0であり、
s、t及びuは、それぞれ独立に、0又は1であり、
rは、1又は2であり、
3は、下記式(5)で表される置換基を表す。)
【化5】
(式(5)中、M2は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。)
【化6】
(式中、X111は、窒素原子又はCR116であり、R111〜R116は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し
記R111〜R116のうち隣接するもの同士が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい
但し、R111〜R116のうち、少なくとも1つは上記一般式(V)で表される置換基を表す。
【化7】
(式中、R201〜R206、R209及びR210は、それぞれ独立に、水素原子、−NRR’、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し
記R201〜R206のうち隣接するもの同士、或いはR201〜R206のうち何れか一つが−NRR’である場合には、隣接するR201〜R206の何れかとR又はR’が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
207及びR208は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、
R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基をす。
但し、R201〜R206、R209及びR210のうち、少なくとも1つは上記一般式(V)で表される置換基を表す。
【請求項2】
請求項に記載の重合性液晶組成物からなる偏光発光性塗料。
【請求項3】
支持体に請求項に記載の偏光発光性塗料を塗布することにより得られる、偏光発光を示す積層物。
【請求項4】
請求項に記載の重合性液晶組成物を光重合して得られる重合物を含有する、偏光発光を示す積層物。
【請求項5】
請求項又はに記載の積層物を用いた偏光素子。
【請求項6】
下記一般式(IV’)で表されるナフトラクタム誘導体。
【化8】
(式中、X1’は酸素原子又は硫黄原子を表し、
5’〜R1’及びD1’は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素
原子数1〜30のアルキル基又は下記一般式(V’)で表される置換基を表す。
し、R5’〜R10’のうち、少なくとも1つは下記一般式(V’)で表される置換基
を表す。)
【化9】
(式中、環A5’、A6’、A7’及びA8’は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフ
タレン環を表し、
3’は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し
6’、Z7’、Z8’、Z9’及びZ10’は、それぞれ独立に、直接結合、−O−C
O−又は−CO−O−を表し
5’、Y6’、Y7’及びY8’は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル
基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y5’、Y6’、Y7’及びY8’で表されるア
ルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y5’、Y6’、
7’及びY8’で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されて
もよく、
m’、n’、p’及びq’は、0であり、
s’、t’及びu’は、それぞれ独立に、0又は1であり、
r’は、1又は2であり、
3’は、下記式(5’)で表される置換基を表す。)
【化10】
(式(5’)中、M2’は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項7】
下記一般式(VI’)で表されるクマリン誘導体。
【化11】
(式中、X111’は、窒素原子又はCR116’であり、R111’〜R116’は、それぞれ
独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は下記一般式(V’)で表される置換基を表し
上記111’〜R116’のうち隣接するもの同士が、それぞれ一緒になって環を形成し
ていてもよい
し、R111’〜R116’のうち少なくとも1つは下記一般式(V’)で表される置換
基を表わす。)
【化12】
(式中、環A5’、A6’、A7’及びA8’は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフ
タレン環を表し、
3’は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し
6’、Z7’、Z8’、Z9’及びZ10’は、それぞれ独立に、直接結合、−O−C
O−又は−CO−O−を表し
5’、Y6’、Y7’及びY8’は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル
基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y5’、Y6’、Y7’及びY8’で表されるア
ルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y5’、Y6’、
7’及びY8’で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されて
もよく、
m’、n’、p’及びq’は、0であり、
s’、t’及びu’は、それぞれ独立に、0又は1であり、
r’は、1又は2であり、
3’は、下記式(5’)で表される置換基を表す。)
【化13】
(式(5’)中、M2’は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項8】
下記一般式(VII’)で表されるナイルレッド誘導体。
【化14】
(式中、R201’〜R206’、R209’及びR210’は、それぞれ独立に、水素原子、−
NR''R'''、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は下記一般
式(V’)で表される置換基を表し
上記201’〜R206’のうち隣接するもの同士、或いはR201’〜R206’のうち何
れか一つが−NR''R'''である場合には、隣接するR201’〜R206’の何れかと
R''又はR'''が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
207’及びR208’は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、

R''及びR'''は、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子
数1〜30のアルキル基をす。
但し、R201’〜R206’、R209’及びR210’のうち少なくとも1つは下記一般式
(V’)で表される置換基を表わす。)
【化15】
(式中、環A5’、A6’、A7’及びA8’は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフ
タレン環を表し、
3’は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し
6’、Z7’、Z8’、Z9’及びZ10’は、それぞれ独立に、直接結合、−O−C
O−又は−CO−O−を表し
5’、Y6’、Y7’及びY8’は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル
基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y5’、Y6’、Y7’及びY8’で表されるア
ルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y5’、Y6’、
7’及びY8’で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されて
もよく、
m’、n’、p’及びq’は、0であり、
s’、t’及びu’は、それぞれ独立に、0又は1であり、
r’は、1又は2であり、
3’は、下記式(5’)で表される置換基を表す。)
【化16】
(式(5’)中、M2’は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性官能基を有する液晶化合物、色材及び重合開始剤を含有する重合性液晶組成物、該重合性液晶組成物からなる偏光発光性塗料、支持体に該偏光発光性塗料を塗布することにより得られる偏光発光を示す積層物及び該積層物を用いた偏光素子に関する。
また、本発明は、上記色材として好適な新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体及び新規アントラセン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性官能基を有する液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物」と称す)を少なくとも一種含有する液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物」と称す)を、液晶状態で均一に配向させた後、液晶状態を保持したまま紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、液晶分子の配向状態構造を半永久的に固定化した重合物を含有する光学異方性膜を作成することが出来る。このようにして得られた重合物は、屈折率、誘電率、磁化率、弾性率、熱膨張率等の物理的性質の異方性を有していることから、例えば、位相差板、偏光板、偏光プリズム、輝度向上フィルム、ローパス・フィルター、各種光フィルター、光ファイバーの被覆材、導波路、圧電素子、非線形光学素子等の光学異方性を有する成型体として応用可能である。重合によって得られる上記の光学異方体(重合物)においては、異方性以外の特性も重要である。該特性としては、重合速度、重合物の透明性、力学的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性、耐熱性等が挙げられる。
【0003】
特許文献1〜5には重合性液晶化合物を用いた画像表示装置が開示されているが、重合性液晶化合物自体が発光するものや蛍光物質を用いて色純度を向上させるものが開示されているに過ぎず、本願発明のような、重合性液晶化合物及び色材を用いた偏光発光素子については記載も示唆もされていない。
【0004】
特許文献6には、蛍光物質に放射線を照射することにより放出された偏光された蛍光又は燐光放射線を検出することにより物品の真正保証を行うシステムが開示されており、特許文献7には、配向性蛍光染料を用いた偽造から保護されている光学部品が開示されているが、本願発明のような、重合性液晶化合物及び色材を用いた偏光発光素子については記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−182678号公報
【特許文献2】米国特許公開2009/0137761号公報
【特許文献3】米国特許公開2010/0066950号公報
【特許文献4】米国特許公開2008/0135098号公報
【特許文献5】米国特許公開2010/0314995号公報
【特許文献6】米国特許公開2003/0106994号公報
【特許文献7】米国特許公開2008/0098488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、重合性液晶化合物及び色材を用いた、偏光素子に好適な偏光発光を示す重合性液晶組成物、塗料、媒体及び偏光素子を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記色材として好適な新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体及び新規アントラセン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため、種々の重合性液晶化合物及び色材について検討を重ねた結果、特定の化学構造を有する重合性液晶化合物と色材とを組み合わせた重合性液晶組成物が、偏光素子に好適な偏光発光を示すことを見出し、また特定の構造を有する新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体及び新規アントラセン誘導体が、上記色材として好適であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、重合性官能基を有する液晶化合物の少なくとも一種(A)、色材の少なくとも一種(B)及び重合開始剤(C)を含有する重合性液晶化合物であって、
上記(A)成分である重合性官能基を有する液晶化合物が、下記一般式(I)で表される液晶化合物であり、上記(B)成分である色材が、下記一般式(IV)で表されるナフトラクタム誘導体、下記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体及び下記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体から選択される重合性液晶組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【化1A】
(式中、環A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、デカヒドロナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環又は光学活性を有する結合基を表し、
1及びS2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、S1及びS2で表されるアルキレン基はハロゲン原子で置換されてもよく分岐を有してもよく、S1及びS2で表されるアルキレン基のメチレン基は−O−で中断されてもよく、
1、Z2、Z3、Z4及びZ5は、それぞれ独立に、直接結合、−L1−、−O−CO−、−CO−O−、−L1O−、−OL1−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−L1O−CO−O−、−O−COL1−、−CO−OL1−、−O−CO−OL1−、−CO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−又は−CH2=N−N=CH2−を表し、
1は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、L1で表されるアルキレン基は−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で中断されてもよく、
1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y1、Y2、Y3及びY4で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されてもよく、
a、b、c及びdは、それぞれ独立に、0〜8であり、f、g及びhは、それぞれ独立に、0又は1であり、
j及びkは、それぞれ独立に、0、1又は2であり、j+k≧2であり、
1及びG2は、それぞれ独立に、下記式(1)〜(4)で表される群より選択される置換基を表す。)
【化1B】
(式(1)中、M1は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表し、式(2)中、R1は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(3)中、R2は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(4)中、R3は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【化1C】
(式中、X1は酸素原子及び硫黄原子を表し、
5〜R10及びD1は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は下記一般式(V)で表される置換基を表す。
但し、R5〜R10のうち、少なくとも1つは下記一般式(V)で表される置換基を表す。)

【化1D】
(式中、環A5、A6、A7及びA8は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、
3は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、
6、Z7、Z8、Z9及びZ10は、それぞれ独立に、直接結合、−O−CO−又は−CO−O−を表し、
5、Y6、Y7及びY8は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、上記Y5、Y6、Y7及びY8で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく、上記Y5、Y6、Y7及びY8におけるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されていてもよく、
m、n、p及びqは、0であり、
s、t及びuは、それぞれ独立に、0又は1であり、
rは、1又は2であり、
3は、下記式(5)で表される置換基を表す。)
【化1E】
(式(5)中、M2は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。)
【化1F】
(式中、X111は、窒素原子又はCR116であり、R111〜R116は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し
記R111〜R116のうち隣接するもの同士が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい
但し、R111〜R116のうち、少なくとも1つは上記一般式(V)で表される置換基を表す。
【化1G】
(式中、R201〜R206、R209及びR210は、それぞれ独立に、水素原子、−NRR’、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し
記R201〜R206のうち隣接するもの同士、或いはR201〜R206のうち何れか一つが−NRR’である場合には、隣接するR201〜R206の何れかとR又はR’が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
207及びR208は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、
R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基をす。
但し、R201〜R206、R209及びR210のうち、少なくとも1つは上記一般式(V)で表される置換基を表す。
【0009】
また、本発明は、上記重合性液晶組成物からなる偏光発光性塗料を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、支持体に上記偏光発光性塗料を塗布することにより得られる、偏光発光を示す積層物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記重合性液晶組成物を光重合して得られる重合物を含有する、偏光発光を示す積層物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記積層物を用いた偏光素子を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(IV')で表されるナフトラクタム誘導体を提供するものである。
【0014】
【化1】
(式中、X1’は酸素原子又は硫黄原子を表し、
5’〜R10’及びD1’は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素
原子数1〜30のアルキル基又は下記一般式(V’)で表される置換基を表す。
し、R5’〜R10’のうち、少なくとも1つは下記一般式(V’)で表される置換基
を表す。)
【0015】
【化2】
(式中、環A5’、A6’、A7’及びA8’は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフ
タレン環を表し、
3’は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し
6’、Z7’、Z8’、Z9’及びZ10’は、それぞれ独立に、直接結合、−O−C
O−又は−CO−O−を表し
5’、Y6’、Y7’及びY8’は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル
基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y5’、Y6’、Y7’及びY8’で表されるア
ルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y5’、Y6’、
7’及びY8’で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されて
もよく、
m’、n’、p’及びq’は、0であり、
s’、t’及びu’は、それぞれ独立に、0又は1であり、
r’は、1又は2であり、
3’は、下記式(5’)で表される置換基を表す。)
【0016】
【化3】
(式(5’)中、M2’は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。)
【0017】
また、本発明は、下記一般式(VI')で表されるクマリン誘導体を提供するものである。
【0018】
【化4】
(式中、X111’は、窒素原子又はCR116’であり、R111’〜R116’は、それぞれ
独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は下記一般式(V’)で表される置換基を表し
上記111’〜R116’のうち隣接するもの同士が、それぞれ一緒になって環を形成し
ていてもよい
し、R111’〜R116’のうち少なくとも1つは上記一般式(V’)で表される置換
基を表わす。)
【0019】
また、本発明は、下記一般式(VII')で表されるナイルレッド誘導体を提供するものである。
【0020】
【化5】
(式中、R201’〜R206’、R209’及びR210’は、それぞれ独立に、水素原子、−
NR''R'''、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は下記一般
式(V’)で表される置換基を表し
上記201’〜R206’のうち隣接するもの同士、或いはR201’〜R206’のうち何
れか一つが−NR''R'''である場合には、隣接するR201’〜R206’の何れかと
R''又はR'''が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
207’及びR208’は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、

R''及びR'''は、それぞれ独立に、水素原子又は置換されていてもよい炭素原子
数1〜30のアルキル基をす。
但し、R201’〜R206’、R209’及びR210’のうち少なくとも1つは下記一般式
(V’)で表される置換基を表わす。)
【0021】
また、本発明は、下記一般式(VIII')で表されるアントラセン誘導体を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の重合性液晶組成物は、偏光素子として好適な偏光発光を示す。特に色素化合物として、本発明の新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体又は新規アントラセン誘導体を用いると、偏光度の高い偏光発光を発生させることができる。また、液晶化合物として、光学活性基を有する重合性液晶化合物を用いると、特定の波長において、一様な選択反射が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の重合性液晶組成物は、重合性官能基を有する液晶化合物の少なくとも一種(A)(以下、重合性液晶化合物(A)ともいう)、色材の少なくとも一種(B)及び重合開始剤(C)を含有する。以下、各成分について順に説明する。
【0026】
<重合性液晶化合物(A)>
上記重合性官能基を有する液晶化合物としては、特に制限されず公知のものを用いることができるが、特に下記一般式(I)で表されるものが、低コストで、液晶相を示す温度範囲が広く、耐熱性に優れるため好ましい。
【0027】
【化8】
(式中、環A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、デカヒドロナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環又は光学活性を有する結合基を表し、
1及びS2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、S1及びS2で表されるアルキレン基はハロゲン原子で置換されてもよく分岐を有してもよく、S1及びS2で表されるアルキレン基のメチレン基は−O−で中断されてもよく、
1、Z2、Z3、Z4及びZ5は、それぞれ独立に、直接結合、−L1−、−O−CO−、−CO−O−、−L1O−、−OL1−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−L1O−CO−O−、−O−COL1−、−CO−OL1−、−O−CO−OL1−、−CO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−又は−CH2=N−N=CH2−を表し、
1は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、L1で表されるアルキレン基は−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で中断されてもよく、
1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、Y1、Y2、Y3及びY4で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されてもよく、
a、b、c及びdは、それぞれ独立に、0〜8であり、f、g及びhは、それぞれ独立に、0又は1であり、
j及びkは、それぞれ独立に、0、1又は2であり、j+k≧2であり、
1及びG2は、それぞれ独立に、下記式(1)〜(4)で表される群より選択される置換基を表す。)
【0028】
【化9】
(式(1)中、M1は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表し、式(2)中、R1は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(3)中、R2は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(4)中、R3は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【0029】
上記一般式(I)中の環A1、A2、A3及びA4で表される光学活性を有する結合基としては、例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用キラル剤、200頁、201頁又は202頁に記載のキラル剤が有する結合基、あるいは下記式(15)〜(21)で表される結合基が好ましい。
【0030】
【化10】
(式(15)中、R15は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、R15中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、R15中のメチレン基は、−O−、−COO−又は−OCO−で中断されていてもよい。式(19)中、J1〜J4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、−COOR’、−OCOR’、−OCOOR’、−CONHR’又は−NHCOR’を表し、R’は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。式(21)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、直接結合、炭素原子数1〜10のアルキレン基又は炭素原子数1〜10のアルキレン−オキシ基であり、Q3は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
【0031】
上記一般式(I)中のS1及びS2で表される炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ブタン−1,3−ジイル、2−メチルプロパン−1,3−ジイル、2−メチルブタン−1,3−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、ペンタン−1,4−ジイル、3−メチルブタン−1,4−ジイル、2−メチルペンタン−1,4−ジイル、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン等のアルキレン基が挙げられる。
上記アルキレン基はハロゲン原子で置換されていてもよく分岐を有していてもよく、上記アルキレン基のメチレン基は−O−で中断されてもよく、上記アルキレン基におけるハロゲン原子による置換基の位置及び数、分岐の位置及び数、−O−による中断の位置及び数は特に制限されない。
【0032】
上記一般式(I)中のL1で表されるハロゲン原子又はシアノで置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、上記一般式(I)中のS1及びS2の説明で例示した炭素原子数1〜8のアルキレン基等が挙げられる。
上記アルキレン基におけるハロゲン原子又はシアノ基による置換基の位置及び数、分岐の位置及び数は特に制限されない。また、上記アルキレン基のメチレン基は−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で中断されてもよく、該アルキレン基における−O−、−CH=CH−又は−C≡C−による中断の位置及び数は特に制限されない。
【0033】
上記一般式(I)中のY1、Y2、Y3及びY4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル、クロロメチル、トリフルオロメチル、シアノメチル、エチル、ジクロロエチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル等が挙げられる。
上記アルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、該アルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されてもよく、該アルキル基におけるハロゲン原子又はシアノ基による置換の位置及び数、−O−又は−CO−による中断の位置及び数は特に制限されない。
1、Y2、Y3及びY4で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0034】
上記式(1)中のM1で表されるハロゲン原子、上記式(2)中のR1、上記式(3)中のR2及び上記式(4)中のR3で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記一般式(I)のY1、Y2、Y3及びY4の説明で例示したものが挙げられる。
【0035】
上記一般式(I)で表される重合性液晶化合物の中でも、環A1、環A2、環A3及び環A4がベンゼン環又はナフタレン環であるものは、結晶性が低く25℃以下で液晶相を発現し、直線偏光発光を示すため好ましく、また、上記一般式(I)で表される重合性液晶化合物の中でも、環A1、環A2、環A3及び環A4の少なくとも一つが光学活性を有する結合基を任意の比率で有すると、円偏光発光を示すため好ましい。
また上記一般式(I)において、G1及びG2の両方が上記式(1)で表される置換基であるものは、大気中下でUV照射による速硬性を有するので好ましい。
さらに、上記一般式(I)において、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5が、−CO−O−又は−OCO−であるものは、液晶配向性が向上するため好ましい。
【0036】
また、上記一般式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(II)で表されるものは、液晶発現温度範囲が広く、また結晶性が低く低温域における液晶相安定性が高くなるため好ましい。
【0037】
【化11】
(式中、S1、S2、M1、Z1、Z2、Z3及びZ5は、上記一般式(I)と同じであり、R21〜R36はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、R21〜R36で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、R21〜R36で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されていてもよい。)
【0038】
上記一般式(II)中のR21〜R36で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記一般式(I)のY1、Y2、Y3及びY4の説明で例示した炭素原子数1〜6のアルキル基等が挙げられる。
【0039】
また、上記一般式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(III)で表されるものは、液晶発現温度範囲が広く、また結晶性が低く低温域における液晶相安定性が高くなるため好ましい。
【0040】
【化12】
(式中、S1、S2、M1、Z1、Z2、Z3及びZ5は、上記一般式(I)と同じであり、R41〜R52はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、R41〜R52で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されてもよく、R41〜R52で表されるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されていてもよい。)
【0041】
上記一般式(III)中のR41〜R52で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記一般式(I)のY1、Y2、Y3及びY4の説明で例示した炭素原子数1〜6のアルキル基等が挙げられる。
【0042】
上記重合性液晶化合物(A)のうち光学活性を有するもの(後述のA−124〜A−132等)は、液晶骨格のらせん構造を内部に有する高分子を得ることを目的として、光学活性を有さない重合性液晶化合物と併用することができる。
その場合、光学活性を有するものの含有量は、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。光学活性を有するものの含有量が0.1質量部未満であると、所望のピッチ長(反射特性)が得られない場合があり、10質量部超であると、所望の特性が得られない場合がある。
【0043】
上記重合性液晶化合物の具体例としては、特開2005−15473号公報明細書の段落〔0172〕〜〔0314〕に挙げられる化合物、特開2010−30974号公報明細書の段落〔0090〕〜〔0093〕に挙げられる化合物、特開2010−105940号公報明細書の段落〔0075〕に挙げられる化合物の他、下記の化合物A−1〜A−134等が挙げられる。
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
【化18】
【0050】
【化19】
【0051】
【化20】
【0052】
【化21】
【0053】
【化22】
【0054】
【化23】
【0055】
【化24】
【0056】
【化25】
【0057】
【化26】
【0058】
【化27】
【0059】
【化28】
【0060】
【化29】
【0061】
【化30】
【0062】
【化31】
【0063】
【化32】
【0064】
【化33】
【0065】
上記重合性液晶化合物は、重合性液晶性単量体として、単独で又は2種以上を組み合わせて、単独重合又は共重合させることができる。また、上記重合性液晶化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物と共重合させることもできる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、上記重合性液晶化合物以外のエチレン性不飽和結合を有する液晶性単量体(以下、他の液晶性単量体という)、(メタ)アクリル酸エステル等の化合物が挙げられる。これらのエチレン性不飽和結合を有する化合物は、それらの構造に応じて適当な量で使用することができるが、全単量体中、上記重合性液晶化合物が5質量%以上、特に10〜100質量%となる範囲で使用することが好ましい。
【0066】
上記の(メタ)アクリル酸エステル等のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、フェニル−α−ブロモ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0067】
上記重合性液晶化合物(A)は、上述したように(共)重合することにより、液晶性(共)重合物とすることができる。かかる液晶性(共)重合物は、上記重合性液晶化合物(A)を含む重合性液晶組成物を(共)重合することにより得ることができる。
【0068】
また、重合性液晶化合物(A)の(共)重合物は、偏光発光を示す媒体を構成する場合には、少なくとも室温付近で液晶相を示し、特に20℃以下で液晶相を示すことが好ましい。
【0069】
本発明の重合性液晶組成物において、上記重合性液晶化合物(A)の含有量は、重合性液晶組成物を用いて作製する高分子の耐熱性を保持する意味で、好ましくは10〜98質量%、より好ましくは70〜95質量%である。重合性液晶化合物(A)の含有量が10質量%未満であると、重合性液晶化合物(A)の配向性が悪くなる場合があり、98質量%超であると、重合性液晶組成物が硬化しにくくなる場合がある。
【0070】
<色材(B)>
上記色材(B)としては、有機、無機又は有機無機ハイブリッドの顔料、有機染料等が挙げられ、これらは蛍光又は燐光を有してもよい。
【0071】
上記有機顔料としては、不溶性染料、染料をレーキ化させたもの、合成有機顔料等が挙げられ、上記無機顔料としては、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物及び塩化物である無機蛍光体、希土類蛍光錯体等が挙げられ、上記有機無機ハイブリッドの顔料としては、無機顔料が有機物で化学的に修飾されているものが挙げられる。
【0072】
上記色材(B)としては、有機染料が好ましく、中でも色素化合物が好ましい。
【0073】
上記色素化合物としては、紫外から近赤外の波長領域の光により励起され、可視光領域に発光領域を持つ蛍光性染料が好ましい。かかる蛍光性染料としては、特に制限されず公知のものを用いることができるが、例えば、テルフェニル、クアテルフェニル、ポリフェニル1、7H−ベンズイミダゾ(2,1−ア)ベンズ(デ)イソキノリン−7−オン(BBQ)等のオリゴフェニレン類;2−(4−ビフェニルイル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、1,4−ビス(5−フェニルオキサゾール−2−イル)ベンゼン(POPOP)等のオキサゾール及びオキザジアゾール誘導体;7−ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(4−MU)、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン(DAMC)、クマリン6、クマリン120等のクマリン誘導体;キノリノール誘導体;フタロシアニン誘導体;ナフトラクタム誘導体;フルオレン及びその誘導体;アントラセン及びその誘導体;ローダミン6G、ローダミン110等のキサンテン系(ピロニン系、ローダミン系、フルオレセイン系)色素;クレシルバイオレット、オキサジン1等のオキサジン系色素;トランス−4,4’−ジフェニルスチルベン等のスチ
ルベン系色素;シアニン系色素;アントラキノン系色素;アゾメチン系色素;インジゴ系色素;チオインジゴ系色素;インダン系色素;アズレン系色素;ペリレン系色素;フタロペリン系色素;アジン系色素;アクリジン系色素;チアジン系色素;ポリアセチレン系化合物;フェニレンビニレン系化合物;フェニレンエチニレン系化合物;五員環及び六員環複素環化合物等が挙げられ、これらの化合物は、単独或いは混合して使用できる。
【0074】
上記色素化合物の分子構造としては、発光部分及びメソゲン構造を有するもの、分子の主鎖の長さに対するその垂直方向の長さの比が1より小さいもの、また直線性が高いものが分子配向させやすく、偏光度の高い偏光発光を発生させる上で好ましい。
【0075】
上記色素化合物の中でも、発光効率の点から、ナフトラクタム誘導体(B−1)が好ましく、下記一般式(IV)で表されるナフトラクタム誘導体がさらに好ましい。
【0076】
【化34】
(式中、X1は酸素原子及び硫黄原子を表し、
5〜R10及びD1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR’、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基又は下記一般式(V)で表される置換基を表し、R5〜R10及びD1で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基及びR5〜R10及びD1で表されるアリール基とナフトラクタム構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよく、
R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基を表し、R及びR’で表されるアルキル基中のメチレン基及びR及びR’で表されるアリール基とナフトラクタム構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。)
【0077】
【化35】
(式中、環A5、A6、A7及びA8は、それぞれ独立に、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環、デカヒドロナフタレン環又はテトラヒドロナフタレン環を表し、
3は、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、S3で表されるアルキレン基はハロゲン原子で置換されていてもよく分岐を有してもよく−O−で中断されていてもよく、
6、Z7、Z8、Z9及びZ10は、それぞれ独立に、直接結合、−L2−、−O−CO−、−CO−O−、−L2O−、−OL2−、−L2O−CO−、−L2CO−O−、−L2O−CO−O−、−O−COL2−、−CO−OL2−、−O−CO−OL2−、−CO−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CH=CH−COO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−又は−CH2=N−N=CH2−を表し、
2は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、L2で表されるアルキレン基は−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で中断されていてもよく、
5、Y6、Y7及びY8は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、上記Y5、Y6、Y7及びY8で表されるアルキル基の水素原子はハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく、上記Y5、Y6、Y7及びY8におけるアルキル基のメチレン基は−O−又は−CO−で中断されていてもよく、
m、n、p及びqは、それぞれ独立に、0〜8であり、
s、t及びuは、それぞれ独立に、0又は1であり、rは、1又は2であり、G3は、下記式(5)〜(14)で表される群より選択される置換基を表す。)
【0078】
【化36】
(式(5)中、M2は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表し、式(6)中、R11は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(7)中、R12は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(8)中、R13は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(9)中、R14は、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、式(11)中、Z11は、メチレン、−O−又は−CO−を表す。)
【0079】
上記一般式(IV)中のR5〜R10、D1、R及びR’で表される炭素原子数1〜30のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−へプタデシル、n−オクタデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられ、R5〜R10、D1、R及びR’で表されるアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。
上記アルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、上記アルキル基中のメチレン基が−S−で中断された基としては、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ等が挙げられ、上記アルキル基中のメチレン基が−SO2−で中断された基としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等が挙げられ、上記アルキル基中のメチレン基が−CO−で中断された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル、シクロペンタンカルボニル等が挙げられ、上記アルキル基中のメチレン基が−OCO−で中断された基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられ、上記アルキル基中のメチレン基が−COO−で中断された基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基等が挙げられる。
尚、上記アルキル基中のメチレン基が−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断された基を例示したが、これらは一例に過ぎず、中断の位置及び数は特に制限されない。
【0080】
上記一般式(IV)中のR5〜R10、D1、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、R5〜R10、D1、R及びR’で表されるアリール基とナフトラクタム構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。
上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−O−で中断された基としては、フェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ等が挙げられ、上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−S−で中断された基としては、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ等が挙げられ、上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−SO2−で中断された基としては、フェニルスルホン、1−ナフチルスルホン、2−ナフチルスルホン等が挙げられ、上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−CO−で中断された基としては、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられ、上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−OCO−で中断された基としては、ベンゾイルオキシ、1−ナフトイルオキシ、2−ナフトイルオキシ等が挙げられ、上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−COO−で中断された基としては、フェノキシカルボニル基、1−ナフトキシカルボニル基等が挙げられる。
尚、上記アリール基とナフトラクタム構造との結合が−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断された基を例示したが、これらは一例に過ぎず、中断の位置及び数は特に制限されない。
【0081】
上記一般式(IV)中のR5〜R10及びD1で表される置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、4−クロロフェニルメチル等が挙げられ、R5〜R10及びD1で表されるアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。
上記アリールアルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、ベンジルオキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、1−ナフチルメトキシ基、2−ナフチルメトキシ基、1−アントリルメトキシ等が挙げられ、上記アリールアルキル基中のメチレン基が−S−で中断された基としては、ベンジルチオ、フェニルチオメチル、フェニルチオエチル等が挙げられ、上記アリールアルキル基中のメチレン基が−SO2−で中断された基としては、ベンジルスルホニル等が挙げられ、上記アリールアルキル基中のメチレン基が−CO−で中断された基としては、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル、1−ナフチルメチルカルボニル基等が挙げられ、上記アリールアルキル基中のメチレン基が−OCO−で中断された基としては、フェニルアセテート基、1−ナフチルアセテート機等が挙げられ、上記アリールアルキル基中のメチレン基が−COO−で中断された基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェニチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
尚、上記アリールアルキル基中のメチレン基が−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断された基を例示したが、これらは一例に過ぎず、中断の位置及び数は特に制限されない。
【0082】
上記一般式(IV)中のR5〜R10及びD1で表される置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。
【0083】
上記一般式(IV)中のR5〜R10及びD1で表される有機シリル基としては、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリヘキシルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリメチルシリルチオ、メチルシリルアミノ等が挙げられる。
【0084】
上記一般式(IV)におけるR5〜R10で表されるハロゲン原子としては、上記一般式(I)で例示したものが挙げられる。
【0085】
上記一般式(IV)におけるR5〜R10、D1、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R5〜R10及びD1で表される置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基の置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。尚、炭素原子を有する置換基で置換される場合は、該置換基を含めたR6〜R10、D1、R及びR’で表される基全体の炭素原子数が規定された炭素原子数範囲を満たすものとする。
【0086】
上記一般式(V)中のS3で表される炭素原子数1〜8のアルキレン基、L2で表されるハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基、Y5、Y6、Y7及びY8で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、Y5、Y6、Y7及びY8で表されるハロゲン原子、上記式(5)中のM2で表されるハロゲン原子、上記式(6)中のR11、上記式(7)中のR12、上記式(8)中のR13及び上記式(9)中のR14で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記一般式(I)で例示した基が挙げられる。
【0087】
上記一般式(IV)で表されるナフトラクタム誘導体の中でも、X1が酸素原子であり、R5〜R10のうち少なくとも一つ、特にR8が上記一般式(V)で表される置換基であるものは、分子の主鎖の長さに対するその垂直方向の長さの比が1より小さく、直線性が高いという構造を有することから、分子配向させやすく、偏光度の高い偏光発光を発生させることができるため好ましい。
尚、R5〜R10のうち、上記一般式(V)で表される置換基以外の基は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR’、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数1〜30のアルキル基中のメチレン基が−O−、−CO−又は−COO−で中断されたもの、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基中のメチレン基が−SO2−で中断されたもの、炭素原子数1〜30のアルキル基中のメチレン基が−C=C−又は−C≡C−で表されるものが、原料入手が容易であるため好ましい。
1は、水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基又はハロアルキル基で置換された炭素原子数1〜30のアルキル基、アルコキシ基又はハロアルキル基で置換された炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数1〜30のアルキル基中のメチレン基が−CO−で中断されたものが、原料入手が容易であるため好ましい。
さらに、上記一般式(V)における環A5、A6、A7及びA8がベンゼン環であるものは、直線性を拡大するため好ましく、Z6、Z7、Z8、Z9及びZ10が、直接結合、−O−CO−又は−CO−O−であるものは、原料入手が容易であるため好ましい。
3が上記式(5)で表される基であるものは、重合性液晶化合物(A)と共重合しやすいため好ましい。
【0088】
本発明に係る上記一般式(IV)で表されるナフトラクタム誘導体の具体例としては下記化合物B−1〜B−52が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0089】
【化37】
【0090】
【化38】
【0091】
【化39】
【0092】
【化40】
【0093】
【化41】
【0094】
上記一般式(IV)で表されるナフトラクタム誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記一般式(IV)においてR8が一般式(V)で表されるものは通常の液晶化合物の合成に用いられる方法に準じて製造することができ、具体的には下記スキーム1又はスキーム2により製造することができる。尚、下記スキームでは、上記一般式(V)において環A5がベンゼン環、Z6が単結合、Z7が−COO−でsが1の場合を示しているが、他のナフトラクタム誘導体についても、下記製造方法に準じて製造できる。
【0095】
【化42】
(式中、X1、R5〜R7、R9、R10及びD1は、上記一般式(IV)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0096】
【化43】
(式中、X1、R5〜R7、R9、R10及びD1は、上記一般式(IV)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0097】
また、上記色素化合物の中でも、発光効率の点から、クマリン誘導体(B−2)が好ましく、該クマリン誘導体としては、7−ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(4−MU)、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン(DAMC)、クマリン6、クマリン120等の他、下記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体等が挙げられ、これらの化合物は、単独或いは混合して使用できる。上記クマリン誘導体の中でも、発光効率の点から、上記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体がさらに好ましい。
【0098】
【化44】
(式中、X111は、窒素原子又はCR116であり、R111〜R116は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR'、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し、
上記R111〜R116で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに上記R111〜R116で表されるアリール基とクマリン構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−CH=CH−又は−C≡C−を表してもよく、
上記R111〜R116のうち隣接するもの同士、或いはR111〜R116のうち何れか一つが−NRR'である場合には、隣接するR111〜R116の何れかとR又はR'が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R及びR'は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
上記R及びR'で表されるアルキル基中のメチレン基並びに上記R及びR'で表されるアリール基とクマリン構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。)
【0099】
上記一般式(VI)中のR111〜R116、R及びR’で表される炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、上記一般式(VI)中のR111〜R116で表されるハロゲン原子、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基、並びに上記一般式(VI)中のR111〜R116、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R111〜R116及びD1で表される置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基の置換基としては、上記一般式(IV)の説明で例示したものが挙げられる。
【0100】
111〜R116のうち隣接するもの同士、或いはR111〜R116のうち何れか一つが−NRR’において、隣接するR111〜R116の何れかとR又はR’が、それぞれ一緒になって環を形成し得る環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環、ジュロリジン環等の5〜7員環が挙げられる。
【0101】
上記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体の中でも、R111〜R116のうち少なくとも一つ、特にR111が一般式(V)で表される置換基であるものは、分子の主鎖の長さに対するその垂直方向の長さの比が1より小さく、直線性が高いという構造を有することから、分子配向させやすく、偏光度の高い偏光発光を発生させることができるため好ましい。
尚、R111〜R116のうち、上記一般式(V)で表される置換基以外の基は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、−NRR’、有機シリル基、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数1〜30のアルキル中基のメチレン基が−O−で中断されたもの、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基中のメチレン基が−COO−又は−OCO−で中断されたもの、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基中のメチレン基が−C≡C−で表されるもの、アルキル基又はフェニル基で置換された炭素原子数2〜30の複素環基、R112とR113が一緒になってベンゼン環を形成しているもの、R114とR115が一緒になってベンゼン環を形成しているもの、R113、R114及びR115が一緒になってジュロリジン環を形成しているものが好ましい。
さらに、上記一般式(V)における環A5、A6、A7及びA8がベンゼン環又はナフタレン環であるものは、直線性を拡大するため好ましく、Z6、Z7、Z8、Z9及びZ10が、
直接結合、−O−CO−又は−CO−O−であるものが、原料入手が容易であるため好ましい。
3が上記式(5)で表される基であるものは、重合性液晶化合物(A)と共重合しやすいため好ましい。
【0102】
本発明に係る上記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体の具体例としては下記化合物B−101〜B−178が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0103】
【化45】
【0104】
【化46】
【0105】
【化47】
【0106】
【化48】
【0107】
【化49】
【0108】
【化50】
【0109】
上記一般式(VI)で表されるクマリン誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記一般式(VI)においてR111が一般式(V)で表されるものは通常の液晶化合物の合成に用いられる方法に準じて製造することができ、具体的には下記スキーム1又はスキーム2により製造することができる。尚、下記スキームでは、上記一般式(V)において環A5がベンゼン環、Z6が単結合、Z7が−COO−でsが1の場合を示しているが、他のクマリン誘導体についても、下記製造方法に準じて製造できる。
【0110】
【化51】
(式中、X111、R112〜R115は、上記一般式(VI)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0111】
【化52】
(式中、X111及びR112〜R115は、上記一般式(VI)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0112】
また、上記色素化合物の中でも、発光効率の点から、ナイルレッド誘導体(B−3)が好ましく、該ナイルレッド誘導体としては、6−トリフルオロメチルナイルレッド、6−パーフルオロエチルナイルレッド、6−パーフルオロプロピルナイルレッド、6−パーフルオロブチルナイルレッド、6−パーフルオロペンチルナイルレッド、6−パーフルオロヘキシルナイルレッド、6−パーフルオロヘプチルナイルレッド、6−パーフルオロオクチルナイルレッド、6−パーフルオロノニルナイルレッド、6−パーフルオロデシルナイルレッド、6−(2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ナイルレッド等の他、下記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体等が挙げられ、これらの化合物は、単独或いは混合して使用できる。上記ナイルレッド誘導体の中でも、発光効率の点から、下記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体が好ましい。
【0113】
【化53】
(式中、R201〜R206、R209及びR210は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR'、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し、
上記R201〜R206、R209及びR210で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに上記R201〜R206、R209及びR210で表されるアリール基とナイルレッド構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−CH=CH−又は−C≡C−を表してもよく、
上記R201〜R206のうち隣接するもの同士、或いはR201〜R206のうち何れか一つが−NRR'である場合には、隣接するR201〜R206の何れかとR又はR'が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
207及びR208は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、
R及びR'は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
上記R及びR'で表されるアルキル基中のメチレン基並びに上記R及びR'で表されるアリール基とナイルレッド構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。)
【0114】
上記一般式(VII)中のR207及びR208で表される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、上記一般式(IV)の説明で例示した炭素原子数1〜30のアルキル基のうち、炭素原子数1〜10のものが挙げられる。
201〜R206、R209、R210、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基及び炭素原子数6〜30のアリール基、R201〜R206、R209及びR210で表されるハロゲン原子、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基、並びに上記一般式(VII)中のR201〜R206、R209、R210、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R201〜R206、R209及びR210で表される置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基の置換基としては、上記一般式(IV)の説明で例示したものが挙げられる。
また、R201〜R206のうち隣接するもの同士、或いはR201〜R206のうち何れか一つが−NRR’において、隣接するR201〜R206の何れかとR又はR’が、それぞれ一緒になって環を形成し得る環としては、上記一般式(V)の説明で例示したものが挙げられる。
【0115】
上記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体の中でも、R201〜R206、R209及びR210のうち少なくとも一つ、特にR202が一般式(V)で表される置換基であるものは、分子の主鎖の長さに対するその垂直方向の長さの比が1より小さく、直線性が高いという構造を有することから、分子配向させやすく、偏光度の高い偏光発光を発生させることができるため好ましい。
尚、R201〜R206、R209及びR210のうち、上記一般式(V)で表される置換基以外の基は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−NRR’、有機シリル基、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基、炭素原子数1〜30のアルキル基のアルキル基中のメチレン基が−O−で中断されたもの、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜30のアルキル基、シアノ基で置換された炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数1〜30のアルキル基中のメチレン基が−C=C−で表されるものが、原料入手が容易であるため好ましい。
さらに、上記一般式(V)における環A5、A6、A7及びA8がベンゼン環又はナフタレン環であるものは、直線性を拡大するため好ましく、Z6、Z7、Z8、Z9及びZ10が、直接結合、−O−CO−又は−CO−O−であるものが、原料入手が容易であるため好ましい。
3が上記式(5)で表される基であるものは、重合性液晶化合物(A)と共重合しやすいため好ましい。
【0116】
本発明に係る上記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体の具体例としては下記化合物B−201〜B−225が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0117】
【化54】
【0118】
【化55】
【0119】
【化56】
【0120】
上記一般式(VII)で表されるナイルレッド誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記一般式(VII)においてR202が一般式(V)で表されるものは通常の液晶化合物の合成に用いられる方法に準じて製造することができ、具体的には下記スキーム1又はスキーム2により製造することができる。尚、下記スキームでは、上記一般式(V)において環A5がベンゼン環、Z6が単結合、Z7が−COO−でsが1の場合を示しているが、他のナイルレッド誘導体についても、下記製造方法に準じて製造できる。
【0121】
【化57】
(式中、R201、R203〜R210は、上記一般式(VII)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0122】
【化58】
(式中、R14、R16〜R20及びR37〜R39は、上記一般式(VII)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0123】
また、上記色素化合物の中でも、発光効率の点から、アントラセン誘導体(B−4)が好ましく、該アントラセン誘導体としては、9−(4−ジエチルアミノスチリル)−10−(4−ニトロスチリル)アントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10−ビス(ジフェニルアミノ)アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]アントラセン等の他、下記一般式(VIII)で表されるアントラセン誘導体等が挙げられ、これらの化合物は、単独或いは混合して使用できる。上記アントラセン誘導体の中でも、発光効率の点から、下記一般式(VIII)で表されるアントラセン誘導体が好ましい。
【0124】
【化59】
(式中、R301〜R310は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR'、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基、上記一般式(V)で表される置換基又は下記一般式(IX)で表される置換基を表し、R301〜R310のうち少なくとも一つは下記一般式(IX)で表される置換基であり、
上記R301〜R310で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに上記R301〜R310で表されるアリール基とアントラセン構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−CH=CH−又は−C≡C−を表してもよく、
上記R301〜R310のうち隣接するもの同士、或いはR301〜R310のうち何れか一つが−NRR'である場合には、隣接するR301〜R310の何れかとR又はR'が、それぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R及びR'は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
上記R及びR'で表されるアルキル基中のメチレン基並びに上記R及びR'で表されるアリール基とアントラセン構造との結合は、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−又は−COO−で中断されていてもよく、上記メチレン基中の連続したメチレン基は、−C=C−又は−C≡C−を表してもよい。)
【0125】
【化60】
(式中、Z301は、単結合、炭素原子数1〜4のアルキレン基、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−OCO−、−COO−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、
311〜R315は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基、−NRR’、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(V)で表される置換基を表し、
R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基を表す。)
【0126】
上記一般式(VIII)中のR301〜R310、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R301〜R310で表されるハロゲン原子、有機シリル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基、並びに上記一般式(VIII)中のR301〜R310、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R301〜R310で表される置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基の置換基としては、上記一般式(IV)の説明で例示したものが挙げられる。
【0127】
上記一般式(IX)中のZ301で表される炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、上記一般式(I)のS1及びS2の説明で例示した炭素原子数1〜8のアルキレン基のうち、炭素原子数1〜4のものが挙げられる。
311〜R315、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R311〜R315で表されるハロゲン原子、有機シリル基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基、並びに上記一般式(VIII)中のR311〜R315、R及びR’で表される置換されていてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基及び置換されていてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、R311〜R315で表される置換されていてもよい炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜30の複素環基の置換基としては、上記一般式(IV)の説明で例示したものが挙げられる。
【0128】
上記一般式(VIII)で表されるアントラセン誘導体の中でも、R301〜R310のうち少なくとも一つ、特にR301又はR302が上記一般式(V)で表されるもの、又はR301〜R310のうち少なくとも一つ、特にR301又はR302が上記一般式(IX)で表される置換基であり、且つ一般式(IX)におけるR313が上記一般式(V)で表されるものは、分子の主鎖の長さに対するその垂直方向の長さの比が1より小さく、直線性が高いという構造を有することから、分子配向させやすく、偏光度の高い偏光発光を発生させることができるため好ましい。
尚、上記一般式(VIII)中のR301〜R310、上記一般式(IX)中のR311〜R315のうち、上記一般式(V)で表される置換基以外の基は、水素原子、水酸基、ニトロ基、−NRR’、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数1〜30のアルキル基中のメチレン基が−O−で中断されているものが、原料入手が容易であるため好ましい。
また上記一般式(IX)におけるZ301は、直接結合又は−C≡C−であるものが好ましい。
さらに、上記一般式(V)における環A5、A6、A7及びA8が、ベンゼン環又はナフタレン環であるもの、特にベンゼン環であるものは、直線性を拡大するため好ましく、G3が上記式(5)で表される基であるものは、重合性液晶化合物(A)と共重合しやすいため好ましい。
6、Z7、Z8、Z9及びZ10が、直接結合、−O−CO−又は−CO−O−であるものが、原料入手が容易であるため好ましい。
【0129】
本発明に係る上記一般式(VIII)で表されるアントラセン誘導体の具体例としては下記化合物B−301〜B−312が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0130】
【化61】
【0131】
【化62】
【0132】
上記一般式(VIII)で表されるアントラセン誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、上記一般式(VIII)においてR301が一般式(V)で表されるものは通常の液晶化合物の合成に用いられる方法に準じて製造することができ、具体的には下記スキーム1又はスキーム2により製造することができる。尚、下記スキームでは、上記一般式(V)において環A5がベンゼン環、Z6が単結合、Z7が−COO−でsが1の場合を示しているが、他のアントラセン誘導体についても、下記製造方法に準じて製造できる。
【0133】
【化63】
(式中、R302〜R310は、上記一般式(IV)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0134】
【化64】
(式中、R302〜R310は、上記一般式(IV)と同義であり、A6、A7、A8、S3、Z8、Z9、Z10、Y6、Y7、Y8、n、p、q、t、u、r及びG3は、上記一般式(V)と同義である。)
【0135】
本発明の重合性液晶組成物において、上記ナフトラクタム誘導体(B−1)、クマリン誘導体(B−2)、ナイルレッド誘導体(B−3)、アントラセン誘導体(B−4)から選ばれる色素化合物(B)の含有量は、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、最も好ましくは0.1〜3質量%で含有される。色素化合物(B)の含有量が0.005質量%未満であると偏光発光率が小さくなる場合があり、また、10質量%超であると濃度消光が起こり、重合が抑制される場合がある。
【0136】
上記ナフトラクタム誘導体(B−1)、クマリン誘導体(B−2)、ナイルレッド誘導体(B−3)、アントラセン誘導体(B−4)から選ばれる色素化合物(B)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記ナフトラクタム誘導体(B−1)、クマリン誘導体(B−2)、ナイルレッド誘導体(B−3)、アントラセン誘導体(B−4)から選ばれる色素化合物(B)は、本発明の重合性液晶組成物中に分散して用いてもよく、また重合性基を持つものは、上記重合性液晶化合物(A)と共に光重合して重合物を形成して用いてもよい。
【0137】
<重合開始剤(C)>
上記重合開始剤(C)は、本発明の重合性液晶組成物の硬化反応を迅速に進行させることを目的として添加するものであり、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられる。
【0138】
上記ラジカル重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類;4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のクロロアセトフェノン類;1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα−ジカルボニル類;p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン等のトリアジン類;特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報に記載の化合物等のα−アシルオキシムエステル類;過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7−ビス(9’−アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられ、市販品としては、N−1414、N−1717、N−1919、PZ−408、NCI−831、NCI−930((株)ADEKA社製)、IRGACURE369、IRGACURE907、IRGACURE819、IRGACURE184、DAROCUR TPO、IRGACUREOXE01、IRGACUREOXE02(BASF(株)社製)等が挙げられる。これらの中でも、エネルギー線に対するラジカル発生の感度が良好であり、安定性の高い重合膜が製造可能であることから、下記一般式(X)又は(XII)で表される化合物が好ましい。
【0139】
【化65】
(式中、X71は、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、X72は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又は下記一般式(XI)で表される置換基を表し、R71、R72及びR73は、各々独立に、Rx、ORx、CORx、SRx、CONRxy又はCNを表し、Rx及びRyは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子及び/又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアリールアルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよく、また、Rx及びRyは一緒になって環を形成していてもよく、v1は0〜4の整数であり、v1が2以上の時、複数のX71は異なる基でもよい。)
【0140】
【化66】
(式中、環Pはシクロアルカン環、芳香環又は複素環を表し、X73はハロゲン原子又はアルキル基を表し、Y71は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Z71は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、wは0〜4の整数であり、wが2以上の時、複数のX73は異なる基でもよい。)
【0141】
【化67】
(式中、R74及びR75は、それぞれ独立に、R81、OR81、COR81、SR81、CONR8283又はCNを表し、R81、R82及びR83は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、R81、R82及びR83で表わされる置換基の水素原子は、更にOR91、COR91、SR91、NR9293、CONR9293、−NR92−OR93、−NCOR92−OCOR93、−C(=N−OR91)−R92、−C(=N−OCOR91)−R92、CN、ハロゲン原子、又はCOOR91で置換されていてもよく、R76及びR77は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R91、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、R91、R92及びR93で表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく、R81、R82、R83、R91、R92及びR93で表される置換基のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR94−、−NR94COO−、−OCONR94−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、R94は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、R81、R82、R83、R91、R92及びR93で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R82とR83及びR92とR93はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、R83及びR94は、それぞれ独立に、水素原子を除くR81、OR81、SR81、COR81、CONR8283、NR82COR81、OCOR81、COOR81、SCOR81、OCSR81、COSR81、CSOR81、NO2、CN、ハロゲン原子又は下記一般式(XIII)で表わされる基を表し、v2及びv3は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR101102、CO、NR103又はPR104を表し、R101、R102、R103及びR104は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R101、R102、R103及びR104で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R101、R102、R103及びR104は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。)
【0142】
【化68】
(式中、Z72は、結合手であって、−O−、−S−、−NR92−、−NR92CO−、−SO2−、−CS−、−OCO−又は−COO−を表し、Z73は、結合手であって、1〜3のR78で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、Z73で表される結合手のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR92−、−NR92COO−、−OCONR92−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、Z73で表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキレンであってもよく、R75は、OR211、SR211、CONR212213、NR212COR213、OCOR211、COOR211、SCOR211、OCSR211、COSR211、CSOR211、CN又はハロゲン原子を表し、R211、R212及びR213は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R211、R212及びR213で表される置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R212とR213は、一緒になって環を形成していてもよく、vは1〜3の整数を表す。)
【0143】
上記カチオン重合開始剤としては、エネルギー線照射により酸を発生させることが可能な化合物であればどのようなものでも差し支えないが、好ましくは、エネルギー線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、又はその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式、[M]x+[N]x-で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
【0144】
ここで陽イオン[M]x+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、一般式、[(R60yQ]x+で表すことができる。
【0145】
上記一般式中、R60は炭素原子数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいてもよい有機基である。yは1〜5の整数である。y個のR60は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、y個のR60のうち少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。QはS,N,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,I,Br,Cl,F,N=Nからなる群から選ばれる原子或いは原子団である。また、陽イオン[M]x+中のQの原子価をzとしたとき、x=y−zなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0146】
また、陰イオン[N]x-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、一般式、[LTlx-で表すことができる。
【0147】
上記一般式中、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、例えば、B,P,As,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co等が挙げられる。Tはハロゲン原子である。lは3〜7の整数である。また、陰イオン[N]x-中のLの原子価をeとしたとき、x=l−eなる関係が成り立つことが必要である。
【0148】
上記一般式の陰イオン[LTlx-の具体例としては、例えば、塩素陰イオン、臭素陰イオン、ヨウ素陰イオン、フッ素陰イオン等のハロゲン陰イオン;過塩素酸陰イオン、塩素酸陰イオン、チオシアン酸陰イオン、六フッ化リン酸陰イオン、六フッ化アンチモン陰イオン、六フッ化ヒ素陰イオン、四フッ化ホウ素陰イオン等の無機系陰イオン;メタンスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸陰イオン、トルエンスルホン酸陰イオン、1−ナフチルスルホン酸陰イオン、2−ナフチルスルホン酸陰イオン、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸陰イオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸陰イオン、ノナフルオロブタンスルホン酸陰イオン、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸陰イオン、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸陰イオン、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸陰イオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸イオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、N−アルキル(又はアリール)ジフェニルアミン−4−スルホン酸陰イオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸陰イオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、特開2004−53799号公報に記載されたスルホン酸陰イオン、カンファースルホン酸陰イオン、フルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、ジフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、トリフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、テトラフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、等の有機スルホン酸陰イオン;オクチルリン酸陰イオン、ドデシルリン酸陰イオン、オクタデシルリン酸陰イオン、フェニルリン酸陰イオン、ノニルフェニルリン酸陰イオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸陰イオン等の有機リン酸系陰イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドイオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホン)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホン)イミドイオン、ビス(ウンデカフルオロペンタンスルホン)イミドイオン、ビス(ペンタデカフルオロヘプタンスルホン)イミドイオン、ビス(トリデカフルオロヘキサンスルホン)イミドイオン、ビス(ヘプタデカフルオロオクタンスルホンイミド)イオン、(トリフルオロメタンスルホン)(ノナフルオロブタンスルホン)イミドイオン、(メタンスルホン)(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、シクロ−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミド陰イオン等の有機フルオロスルホンイミドイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸陰イオン、テトラキス(4−フルオロフェニル)ホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、特開2008−81470号公報に記載されたホウ酸陰イオン、特開2007−112854号公報に記載されたホウ酸陰イオン、特開平6−184170号公報に記載されたホウ酸陰イオン、特表2002−526391号公報に記載されたホウ酸陰イオン、国際出願PCT/JP2008/069562号公報に記載されたホウ酸陰イオン等のテトラアリールホウ酸陰イオン、各種脂肪族又は芳香族カルボン酸アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリス(メタンスルホニル)メチド等の有機スルホニルメチドイオン;等が挙げられ、更に、アルキルスルホン酸イオンやフルオロ置換アルキルスルホン酸イオン、アルキルスルホンイミド、フルオロ置換アルキルスルホンイミドが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基で置換されたものや、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂肪族環状アルキル基で置換されたものが挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0149】
本発明では、このようなオニウム塩の中でも、下記の(イ)〜(ハ)の芳香族オニウム塩を使用することが特に有効である。これらの中から、その1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0150】
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ジアゾニウム塩
【0151】
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の芳香族ヨードニウム塩
【0152】
(ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアリールスルホニウム塩及びジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートと4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェートの混合物等の芳香族スルホニウム塩
【0153】
また、その他好ましいものとしては、(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄−アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物等も挙げることができる。
【0154】
これらの中でも、実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体を用いることが好ましい。
【0155】
上記熱重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ(t−ブチルーパーオキシ)ブチルバレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類;テトラメチルチラウムジスルフィド等が挙げられる。
【0156】
本発明の重合性液晶組成物において、上記重合開始剤(C)の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、0.5〜4質量%の範囲が最も好ましい。上記ラジカル開始剤(C)の含有量が10質量部超であると、層中に析出物が発生して不安定になる場合がある。
【0157】
本発明の重合性液晶組成物は、更に重合性液晶化合物(A)以外の液晶化合物を含有することができる。尚、ここでいう液晶化合物には、従来既知の液晶化合物及び液晶類似化合物並びにそれらの混合物が含まれる。上記液晶化合物としては、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば、下記の化合物1〜29等が挙げられる。これらの液晶化合物の含有量は、上記重合性液晶化合物(A)100質量部に対して、好ましくは1〜200質量%、より好ましくは10〜100質量%である。
【0158】
【化69】
【0159】
【化70】
(式中、W1は、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルケニル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルケニルオキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキニル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキニルオキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基を表し、これらはハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、W2は、シアノ基、ハロゲン原子、又はW1で表される基を示し、W3、W4及びW5は水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を示す。)
【0160】
また、本発明の重合性液晶組成物には増感剤を用いることができる。該増感剤は、近赤外から可視の波長の光を吸収し、吸収した光エネルギーを他の物質へ転移させる働きを持つものであり、公知のものが用いられるが、例えば、ベンゾイン、アセトフェノン等のカルボニル化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾ化合物、ハロゲン化物、硫黄化合物、無機イオン、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。該増感剤を添加する場合、その添加量は、本発明の重合性液晶組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下が更に好ましく、0.1〜3質量%の範囲内がより好ましい。
【0161】
上記増感剤は、上記色材(B)の吸収波長と増感剤の吸収波長の関係から選択され、それらの波長の差が100nm以下である方が望ましい。一般に、増感剤は、上記色材(B)の吸収波長より低波長側に吸収波長を持つものが選ばれる。そして、紫外領域に発光波長をもつ光源を用いる場合には、増感剤は上記色材(B)のうち発光波長の最も短いものに対応したものが少なくとも一つ選ばれ使用される。また、可視領域に発光波長をもつ光源や屋外光を用いる場合には、通常複数種の上記色材(B)のそれぞれに対応した増感剤が少なくとも一つずつ選ばれ使用される。
【0162】
本発明にいう増感剤は、光源からの全方向の光エネルギーを吸収し、この吸収した光エネルギーを配向した蛍光物質に移すことにより全方向の光エネルギーを効率よく偏光に変換する。そのため全方向の光エネルギーを吸収するためには、増感剤の配向性が小さいことが望ましく、延伸等の配向操作でも配向しにくいものが好ましい。増感剤の量は、高分子フィルム材料全体に対して、0.005重量%以上、10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上、5重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以上、3重量%以下である。増感剤が少なすぎると光エネルギーの吸収量が小さくなり、また、増感剤が多すぎると濃度消光が起こり、光エネルギーの利用効率が低下する。
【0163】
本発明の重合性液晶化合物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合、その目的に応じて、上記重合性液晶組成物には、金属、金属錯体、ワックス、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、重合禁止剤、保存安定剤、架橋剤、液晶配向助剤、無機物及び有機物等の微粒子化物、ポリマー等の機能性化合物等の任意成分を添加することもできる。これらの任意成分は、本発明の重合性液晶組成物中、合計で10質量%以下となるようにする。
【0164】
上記界面活性剤としては、空気界面側に分布する排除体積効果を有し、重合性液晶組成物を支持基板等に塗布することを容易にしたり、液晶相の配向を制御したりする等の効果を得られるものが好ましく、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。界面活性剤の好ましい使用割合は、界面活性剤の種類、組成物の成分比等に依存するが、本発明の重合性液晶組成物中、0.001〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.01〜1質量%の範囲内がより好ましい。
【0165】
上記保存安定剤は、重合性液晶組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、その添加量は、本発明の重合性液晶組成物中、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0166】
上記酸化防止剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等が挙げられる。
【0167】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物等によって紫外線吸収能をもたせたものであってもよい。
【0168】
上記微粒子化物は光学(屈折率)異方性(Δn)を調整したり、重合膜の強度を上げたりするために用いることができる。微粒子化物の材質としては無機物、有機物、金属等が挙げられ、凝集防止のため、微粒子化物は0.001〜0.1μmの粒子径が好ましく利用することができ、更に好ましくは0.001〜0.05μmの粒子径である。粒子径の分布はシャープであるものが好ましい。微粒子化物を使用する場合、その使用量は、本発明の重合性液晶組成物中、0.1〜30質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0169】
上記無機物としては、例えば、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4等が挙げられる。尚、炭酸カルシウムの針状結晶等の微粒子は光学異方性を有し、このような微粒子によって重合体の光学異方性を調節できる。上記有機物としては、例えばカーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0170】
上記ポリマーとしては、重合膜の電気特性や配向性を制御することができ、上記溶剤に可溶性の高分子化合物を好ましく使用することができる。上記の高分子化合物としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキサイド、ポリエステル、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等が挙げられる。
【0171】
次に、本発明の重合性液晶組成物からなる偏光発光性塗料について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の重合性液晶組成物における説明が適宜適用される。
偏光発光性塗料は、配向処理した支持体或いは支持体に配向膜を積層したものに塗布し、乾燥後、熱を供与及び/又は紫外線等を照射して、塗料中の成分である重合性液晶化合物(A)の重合物及び色材(B)を配向、固定化することにより偏光を発光する性質を有する。
【0172】
本発明の偏光発光性塗料は、上記重合性液晶組成物、具体的には、必須成分である重合性液晶化合物(A)、色材(B)、重合開始剤(C)及び必要に応じて重合性液晶化合物(A)以外の液晶化合物等の上述の各種添加成分を含み、更に必要に応じて溶媒を加えてそれらを溶解させたものであり、これを、配向処理した支持体、支持体に配向膜を積層したもの或いは支持体上に形成した後転写した配向膜に塗布し、重合性液晶化合物(A)及び色材(B)が自発的に一軸配向するところに熱を供与して配向を促進し、紫外線等を照射して重合性反応基を反応させて、重合性液晶化合物(A)の重合物及び色材(B)からなる配向構造を固定化することにより、本発明の偏光発光を示す積層物(偏光発光性積層物)を製造することができる。
【0173】
上記配向構造は、重合性液晶化合物(A)の重合物及び色材(B)が一定方向に配列し、面内で光の透過性において異方性を示す状態をいう。この配向の程度が高いほど、偏光発光性塗料から製造される積層物の偏光度は大きくなる。
【0174】
上記支持体としては、特に限定されないが、その好ましい例としては、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリオレフィン板、シクロオレフィンポリマー板、ポリテトラフルオロエチレン板、トリアセチルセルロース板、ノルボルネン板、ポリビニルアルコール板、酢酸セルロース板、ポリアリレート板、ポリスルホン板、ポリエーテルスルホン板、シリコン板、反射板、方解石板、石英板、ガラス板、紙、木材、金属板等が挙げられる。
【0175】
上記溶媒としては、重合性液晶組成物を溶解しうるものを特に制限なく使用できるが、生産性の点で高沸点の溶媒は好ましくないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸メトキシブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセルソルブ等のセルソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチレン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、中でも、ケトン類或いはセロソルブ系溶媒、特に、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランが、安全で溶解性に優れることから好ましい。これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0176】
上記配向膜を用いない場合、分子配向を制御する方法としては、ラビング法、摩擦転写法、水面展開法、LB法等の公知の方法を用いることができる。その他、磁場、電場配向、ずり応力操作により配向させることもできる。
【0177】
本発明の偏光発光性塗料の上記支持体或いは配向膜上への塗工は、加熱溶融方式でもよく、又は溶媒に溶解させた溶液として塗工することもできる。通常、溶媒に溶解させた溶液として塗工する。
上記支持体或いは配向膜に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
【0178】
上記重合性液晶化合物(A)及び色材(B)の配向を促進するための加熱(加熱配向)の温度は、一般的には、重合性液晶組成物のCr(結晶相)/N(ネマチック相)転移温度以上、N(ネマチック相)/I(等方相)転移温度以下で行なわれる。高温になると、熱重合進行して配向を阻害する懸念があるため、Cr/Nの相転移温度+50℃以下とするのが好ましい。加熱配向の時間は、特に制限されないが、10秒〜10分程度の範囲が好ましい。
【0179】
配向構造の固定は、本発明の偏光発光性塗料中に含まれる重合性液晶性化合物(A)の重合性反応基を反応させて硬化させることにより行う。硬化手法としては熱又は電磁波を用いる公知の方法により重合させることができ、中でも、活性エネルギー線照射により硬化させるのが好ましい。活性エネルギー光線としては、紫外線、可視光線、赤外線等或いは、電子線、X線等の電磁波が用いられるが、特に紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。更に好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプが好ましく使用することができる。光源からの光はそのまま液晶組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を液晶組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、10〜50000mJ/cm2であり、更に好ましい範囲は10〜20000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、更に好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。露光量が少ないと重合が不十分であり、露光量が多いと急硬化のため、黄変や劣化が起こる恐れがある。また、磁場や電場を印加しながら重合させることもできる。
上記配向膜としては、従来知られているものを採用でき、例えば、支持体上にポリイミド、ポリアミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を形成して、それをレーヨン布等でラビング処理したラビング膜、斜方蒸着膜、シンナメートやアゾベンゼン等光架橋基を有するポリマー或いはポリイミドに偏光紫外線を照射した光配向膜、延伸フィルム等が用いられる。
【0180】
上記配向膜を用いない場合、分子配向を制御する方法としては、ラビング法、摩擦転写法、水面展開法、LB法等の公知の方法を用いることができる。その他、磁場、電場配向、ずり応力操作により配向させることもできる。
【0181】
本発明の偏光発光性塗料の上記支持体或いは配向膜上への塗工は、加熱溶融方式でもよく、または溶媒に溶解させた溶液として塗工することもできる。通常、溶媒に溶解させた溶液として塗工する。
上記支持体或いは配向膜に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
【0182】
次に、本発明の偏光発光を示す積層物について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の重合性液晶組成物及び偏光発光性塗料における説明が適宜適用される。
本発明の偏光発光を示す積層物は、上述した通り、支持体上に本発明の偏光発光性塗料を塗布することにより得られるものであり、上記重合性液晶組成物を光重合して得られる重合物を含有するものである。
上記支持体に塗布された偏光発光性塗料からなる膜の膜厚は、積層物の用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは0.01〜100μmの範囲から選択する。また、上記の膜を複数重ねて用いる場合にも、膜厚は上記の範囲内が好ましい。
【0183】
本発明の偏光発光を示す積層物は、励起光源より照射された特定波長の励起光により偏光発光を放射するものであり、励起光源としては、紫外LEDランプ、キセノンランプ、短波長半導体レーザー、ガスレーザー、放電管、白熱灯、蛍光灯、ハロゲンランプ等を用いることができ、これらの光源は複数を組み合わせてもよい。
【0184】
本発明の偏光発光を示す積層物は、液晶ディスプレイにおける選択反射フィルム、輝度向上フィルム、光学異方性フィルム、光学補償フィルム、位相差板、偏光子等;3Dディスプレイ;高分子分散型液晶(PDLC)電子ペーパー;デジタルペーパー;液晶レーザー;偽造防止用のフィルム、ラベル、シート、プレート、カード、識別マーク、識別ラベル、識別マーカー;バーコード、データコード、ベリコード、マキシコード、QRコード(登録商標)、CPコード等の一次元、二次元、三次元識別コード等の偏光素子に用いることができる。
【0185】
上記偏光素子には、特定波長の励起光を取り出すための波長選択フィルター;偏光板;フォトダイオード、光電子倍増管、CCD等の光検出器;偏光発光の検出感度を上げるための光変調器等を用いることができ、保護層を設けてもよい。
【0186】
次に、本発明の新規ナフトラクタム誘導体について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の重合性液晶組成物における説明が適宜適用される。
【0187】
本発明の新規ナフトラクタム誘導体は、上記一般式(IV’)で表される化合物であり、上述した上記一般式(IV)で表される化合物のうち、R5〜R10のうち少なくとも1つが上記一般式(V)で表される置換基(上記一般式(V’)で表される置換基)である化合物が該当する。
【0188】
上記一般式(IV’)で表される本発明の新規ナフトラクタム誘導体としては、化合物B−1〜B−52として例示したものが挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0189】
次に、本発明の新規クマリン誘導体について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の重合性液晶組成物における説明が適宜適用される。
【0190】
本発明の新規クマリン誘導体は、上記一般式(VI’)で表される化合物であり、上述した上記一般式(VI)で表される化合物のうち、R111〜R116のうち少なくとも1つが上記式(V)で表される置換基(上記一般式(V’)で表される置換基)である化合物が該当する。
【0191】
上記一般式(VI’)で表される本発明の新規クマリン誘導体としては、化合物B−101〜B−178として例示したものが挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0192】
次に、本発明の新規ナイルレッド誘導体について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の重合性液晶組成物における説明が適宜適用される。
【0193】
本発明の新規ナイルレッド誘導体は、上記一般式(VII')で表される化合物であり、上述した上記一般式(VII)で表される化合物のうち、R201206、R209及びR210のうち少なくとも1つが上記一般式(V)で表される置換基(上記一般式(V')で表される置換基)である化合物が該当する。
【0194】
上記一般式(VII’)で表される本発明の新規ナイルレッド誘導体としては、化合物B−201〜B−225として例示したものが挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0195】
次に、本発明の新規アントラセン誘導体について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の重合性液晶組成物における説明が適宜適用される。
【0196】
本発明の新規アントラセン誘導体は、上記一般式(VIII’)で表される化合物であり、上述した上記一般式(VIII)で表される化合物のうち、R301〜R312のうち少なくとも1つが上記式(V)で表される置換基(上記一般式(V’)で表される置換基)である化合物が該当する。
【0197】
上記一般式(VIII’)で表される本発明の新規アントラセン誘導体としては、化合物B−301〜B−312として例示したものが挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0198】
本発明の新規ナフトラクタム誘導体、新規クマリン誘導体、新規ナイルレッド誘導体及び新規アントラセン誘導体は、偏光発光性塗料に用いられる色材として種々の用途に用いられる他、DVD−R等の光学記録層用色素、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置における光学フィルタ用色素、有機エレクトロルミネッセンス用発光色素、カラートナー、インクジェット用インキ、塗料用色素、LED照明、エレクトロルミネッセンス照明、光電変換素子用及び銀塩写真用等の分光増感色素、或いは光反応系の増感剤等に用いられる。
【実施例】
【0199】
以下、実施例等を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0200】
下記実施例1−1〜1−2においては、本発明の新規ナフトラクタム誘導体(B−33及びB−35)を合成した。
下記実施例1−3〜1−9においては、本発明の新規クマリン誘導体(B−169〜B−175)を合成した。
下記実施例1−10〜1−11においては、本発明の新規ナイルレッド誘導体(B−221及びB−222)を合成した。
下記実施例1−12においては、本発明の新規アントラセン誘導体(B−308)を合成した。
下記実施例2−1〜2−22では、本発明の重合性液晶組成物(偏光発光性塗料)を調製し、本発明の偏光発光を示す積層物(偏光発光性積層物)を作製した。
下記比較例2−1〜2−2では、比較の重合性液晶組成物を調製し、比較の積層物を作製した。
下記評価例1−1〜1−22及び比較評価例1−1〜1−2は、上記偏光発光積層物と比較の積層物とを比較評価したものである。また、評価例2−1〜2−3は、光学活性基を有する重合性液晶化合物を含有する本発明の重合性液晶組成物を用いて作製した偏光発光性媒体を評価したものである。
【0201】
[実施例1−1]化合物B−33の合成
以下に示す方法に従い、化合物B−33を合成した。
即ち、三つ口フラスコに、メシルクロライド(0.14g、0.0012mol)及びテトラヒドロフラン(THF)(4.29g)を仕込み、窒素雰囲気下で−30℃まで冷却した。この反応溶液に、下記[化71]に示す中間体1(300mg、0.001mol)及びトリエチルアミン(TEA)(0.12g、0.012mol)のTHF(4.29g)懸濁液を滴下した。3時間撹拌後、TEA(0.12g、0.0012mol)、アクリル酸ブタノール(0.14g、0.001mol)を加え、常温に戻して終夜撹拌を行った。クロロホルム及び水を加えて中性になるまで油水分離を行い、有機溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)にて分離後、メタノールから晶析を行い、目的物である化合物B−33を0.06g得た(収率14%)。目的物の同定は、1H−NMR分析により行った。分析結果を[表1]及び[表2]に示す。
【0202】
【化71】
【0203】
[実施例1−2]化合物B−35の合成
以下に示す方法に従い、化合物B−35を合成した。
即ち、三つ口フラスコに、メシルクロライド(0.34g、0.003mol)及びTHF(6.18g)を仕込み、窒素雰囲気下で−30℃まで冷却した。この反応溶液に、下記[化72]に示す中間体2(0.73g、0.0025mol)及びTEA(0.03g、0.003mol)のTHF(6.18g)溶液を滴下した。さらにTEA(0.03g、0.003mol)及びN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.003g)のTHF(6.18g)溶液を加えた後、下記[化73]に示す中間体3(0.86g、0.0025mol)のTHF(6.18g)溶液を加え、常温に戻して終夜撹拌を行った。クロロホルム及び水を加えて油水分離を行い、有機溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:n−へキサン=1:1)にて分離後、メタノールから晶析を行い、目的物である化合物B−35を0.48g得た(収率31%)。目的物の同定は、1H−NMR分析により行った。分析結果を[表1]及び[表2]に示す。
【0204】
【化72】
【0205】
【化73】
【0206】
[実施例1−3〜1−9]化合物B−169〜B−175の合成
以下に示す方法に従い、化合物B−169を合成した。
<ステップ1>
300ml四つ口フラスコに、サリチルアルデヒド(2.93g,0.024mol)、ベンジルオキシフェニル酢酸(4.85g,0.02mol)、酢酸ナトリウム(3.28g,0.040mol)及び無水酢酸(26.27g)を仕込み、130℃で5時間加熱を行った。これを水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、得られた白色沈殿をろ過し、メタノールで還流することにより洗浄後、白色固体をろ別し、下記[化74]に示す中間体4を2.4g得た(収率36.5%)。
【0207】
【化74】
【0208】
<ステップ2>
300ml四つ口フラスコに、ステップ1で得られた中間体4(2.17g,0.066mol)及びアニソール(9.43g)を仕込み、塩化アルミニウム(0.44g,0.033mol)を溶解したアニソール溶液(1.57g)を滴下し、85℃で1時間加熱した。クロロホルム及び水を加え、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた固体を20gのジエチルエーテルで洗浄後、80℃で乾燥し、下記[化75]に示す中間体5を1.0g得た(収率63.6%)。
【0209】
【化75】
【0210】
<ステップ3>
300ml四つ口フラスコにメシルクロライド(0.28g,0.002mol)及びTHF(4.1g)を仕込み、窒素置換して−30℃まで冷却した。TEA(0.24,0.0024mol)及び4−(6−アクリロキシ−ヘキシ−1−ロキシ)安息香酸(0.56g,0.002mol)のTHF(4.1g)溶液を滴下、0℃で2時間撹拌した。更にTEA(0.24g,0.0024mol)とDMAP(0.002g)のTHF(4.1g)溶液を加えた後、ステップ2で得られた中間体5(0.48,0.002mol)を加え、常温に戻して終夜で撹拌した。有機層を抽出し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で分離した。クロロホルム/メタノール系から晶析し、常温減圧下で乾燥して目的物である化合物B−169を0.74g得た(収率72.2%)。
化合物B−170〜B−175についても、B−169の合成方法に準じて合成を行った。得られた化合物の同定は、1H−NMR分析により行った。結果を[表1]及び[表2]に示す。
【0211】
[実施例1−10〜1−11]化合物B−221〜B−222の合成
以下に示す方法に従い、化合物B−221を合成した。
<ステップ1>
300ml四つ口フラスコに、ジエチルアミノニトロソフェノール塩酸塩(1.15g,0.05mol)、1,7−ジヒドロキシナフタレン(0.80g,0.05mol)及びジメチルホルムアミド(DMF)(6.69g)を仕込み、150℃で3時間加熱を行った。これを塩化ナトリウム10%水溶液250gに滴下し、得られた赤色沈殿をろ過し、アセトンで還流することにより洗浄後、赤色固体をろ別し、下記[化76]に示す中間体6を0.65g得た(収率38.9%)。
【0212】
【化76】
【0213】
<ステップ2>
300ml四つ口フラスコに、メシルクロライド(0.25g,0.0022mol)及びTHF4.38gを仕込み、窒素雰囲気下−30℃でTEA(0.22g,0.0022mol)及び4−(6−アクリロキシ−ヘキシ−1−ロキシ)安息香酸(0.53g,0.0018mol)のTHF4.38g溶液を滴下し、0℃で2時間撹拌した。更にTEA(0.22g,0.0022mol)及びDMAP0.002gのTHF4.38g溶液を加えた後、ステップ1で得られた中間体6(0.60g,0.0018mol)を加え、常温で終夜撹拌した。有機層を抽出し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:酢酸エチル=20:1)で分離した。メタノールから晶析し、40℃減圧下で乾燥して目的物である化合物B−221を0.77g得た(収率70.3%)。
化合物B−222についても、B−221の合成方法に準じて合成を行った。得られた化合物の同定は、1H−NMR分析により行った。結果を[表1]及び[表2]に示す。
【0214】
[実施例1−12]化合物B−308の合成
以下に示す方法に従い、化合物B−308を合成した。
<ステップ1>
300ml四つ口フラスコに、9,10−ジブロモアントラセン(0.84g,0.0025mol)、リン酸カリウム(2.12g,0.005mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.29g,0.000025mol)及びボロンピナコールエステル(1.21g,0.0055mol)を仕込み、アルゴン雰囲気下でDMF4.53gを加えて80℃で5時間、110℃で2時間加熱を行った。クロロホルム、水及び塩酸を仕込み、水層を酸性にした後油水分離を行い、アセトンから晶析を行い、得られた白色固体をろ別し、9,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントラセンを0.63g得た(収率69.5%)。
【0215】
<ステップ2>
300ml四つ口フラスコに、メシルクロライド(0.22g,0.00192mol)及びTHF7.29gを仕込み、窒素雰囲気下−30℃でTEA(0.19g,0.00192mol)及び4−(6−アクリロキシ−ヘキシ−1−ロキシ)安息香酸(0.47g,0.0016mol)のTHF7.29g溶液を滴下し、0℃で2時間撹拌した。更にTEA(0.19g,0.00192mol)及びDMAP0.002gのTHF7.29g溶液を加えた後、ステップ1で得られた9,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントラセン(0.29g,0.0008mol)を加え、常温で終夜撹拌した。有機層を抽出し、溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で分離した。クロロホルム/メタノールから晶析し、40℃減圧下で乾燥して白色固体0.41gを得た(収率56.3%)。
得られた白色固体が化合物B−308であることは、1H−NMR分析により行った。結果を[表1]及び[表2]に示す。
【0216】
【表1】
【0217】
【表2】
【0218】
〔実施例2−1〜2−22及び比較例1−1、1−2〕本発明又は比較の重合性液晶組成物の調製及び本発明の偏光発光性積層物及び比較の積層物の作製
下記の手順[1]重合性液晶組成物溶液の調製、[2]基板への塗布及び硬化、に従い、本発明又は比較の重合性液晶組成物から、それぞれ本発明の偏光発光積層物及び比較の積層物を作製した。
【0219】
[1]重合性液晶組成物溶液の調製
下記〔表3〕に記載の配合に従って、重合性液晶化合物(A)、色材(色素化合物)(B)、重合開始剤(C)及び溶媒、さらにレべリング剤としてサーフロンS−242(AGCセイミケミカル社製)を加えて10分間超音波照射して完全に溶解した後に、0.45μmフィルターでろ過処理を実施することによって本発明又は比較の重合性液晶組成物溶液を調製した。
【0220】
[2]基板への塗布及び硬化
上記[1]で調製した本発明又は比較の重合性液晶組成物溶液を、ポリイミドを塗布し、ラビングを施したガラス基板上に、スピンコーター(1200rpm×10秒間)で塗工した。塗工は、膜厚が約1〜3μmになるように、スピンコーターの回転数及び時間を調整して実施した。塗工後、ホットプレートを用いて100℃で1分間乾燥した後に室温下で1〜10分間冷却し、次いで高圧水銀灯を使用し300mJ/cm2に相当する光を照射し、塗工膜を硬化させ、本発明の偏光発光性積層物及び比較の積層物を得た。
【0221】
〔評価例1−1〜1−22及び比較評価例1−1〜1−2〕
上記実施例2−1〜2−22で得られた偏光発光性媒体及び比較例2−1〜2−2で得られた比較の媒体について、ガラス基板のラビング方向と媒体のなす角度が0°である時(0°)及びガラス基板のラビング方向と媒体のなす角度が90°である時(90°)についてUV吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定し、下記式により吸収偏光度及び偏光発光率を求めた。これらの結果を〔表3A〕及び〔表3B〕に示す。尚、吸収偏光度及び偏光発光率の値が大きいほど、偏光発光が大きく好ましい。
【0222】
<式>
吸収偏光度=[(0°吸光度*1−90°吸光度*2)/0°吸光度]×100
偏光発光率=[(0°蛍光強度*3−90°蛍光強度*4)/0°蛍光強度]×100
*1:0°のUV吸収スペクトルにおけるλmaxを示す波長での吸光度
*2:90°のUV吸収スペクトルにおける*1の波長での吸光度
*3:0°の蛍光スペクトルにおけるλmaxを示す波長での蛍光強度
*4:90°の蛍光スペクトルにおける*3の波長での蛍光強度
【0223】
【表3A】
【0224】
【表3B】
【0225】
〔評価例2−1〜2−3〕
下記〔表4〕に記載の配合に従って、重合性液晶化合物(A)、色材(色素化合物)(B)、重合開始剤(C)及び溶媒、さらにレべリング剤としてサーフロンS−242(AGCセイミケミカル社製)を混合して実施例2−1〜2−22と同様に重合性液晶組成物溶液を調製し、下記の方法により選択反射波長及び反射率を測定した。
<選択反射波長測定>
5°正反射付属装置を取り付けた分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製;U−3010形)を使用して、25℃、波長800〜400nmの範囲で反射率測定を実施し、選択反射中心波長(λ)を測定した。
【0226】
【表4】
【0227】
上記[表3A]および[表3B]の結果より、本発明の重合性液晶組成物からなる偏光発光性塗料を用いた積層物は直線偏光発光が確認された。特に色材(色素化合物)(B)として本発明の新規ナフトラクタム誘導体(B−1)、新規クマリン誘導体(B−2)、新規ナイルレッド誘導体(B−3)、新規アントラセン誘導体(B−4)を用いると、特に偏光度の高い偏光発光を発射することが確認された。また、上記[表4]の結果より、重合性液晶化合物(A)として、光学活性基を有する重合性液晶化合物を用いた場合、特定の波長で選択反射が一様であり、円偏光発光が確認された。