(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028034
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】検体収納装置、検体処理システム、およびこれらの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
G01N35/04 H
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-535481(P2014-535481)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2013073046
(87)【国際公開番号】WO2014042011
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-200068(P2012-200068)
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-215459(P2012-215459)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正史
(72)【発明者】
【氏名】福垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】平間 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】田村 一真
【審査官】
渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−124786(JP,A)
【文献】
特開昭63−317773(JP,A)
【文献】
特表平06−509782(JP,A)
【文献】
特開2007−089416(JP,A)
【文献】
特開平09−043246(JP,A)
【文献】
特開2007−309675(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/148897(WO,A1)
【文献】
特開2012−021911(JP,A)
【文献】
特開2000−321287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の検体を保持するトレイを収納可能な収納位置を多段に構成した検体収納部と、
検体を保持する複数のトレイを待機させる待機位置と、
検体をトレイに移載する移載手段と、
前記待機位置にある複数のトレイを独立して移送可能な少なくとも二つの移送手段と、
前記移送手段および移載手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記移送手段は、複数のトレイを前記収納位置と前記待機位置の間で個別に移送可能であり、
前記制御手段は、再検査又は追加検査が依頼された検体が、前記移送手段上に現在保持され、収納処理が実施されているトレイ上にある場合は、当該トレイへの移載処理を一旦停止させて当該再検査又は追加検査が依頼された検体を当該トレイ外に移載し、
再検査又は追加検査が依頼された検体が、前記移送手段上に現在保持され、収納処理が実施されているトレイ上にない場合は、当該検体が収納されているトレイおよび当該トレイ上の位置を検索し、トレイの取出し処理を割り込ませ、当該再検査又は追加検査が依頼された検体を別のトレイ外に移載する、ことを特徴とする検体収納装置。
【請求項2】
請求項1記載の検体収納装置において、
前記移送手段は、前記待機位置にある複数のトレイを独立して水平方向に駆動させる複数の水平駆動手段を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項3】
請求項1記載の検体収納装置において、
前記検体収納部は、内部に収納したトレイに保持される検体を保冷するための保冷手段を有することを特徴とする検体収納装置。
【請求項4】
請求項1記載の検体収納装置において、
前記移送手段は、前記待機位置にある複数のトレイを独立して上下方向に駆動させる上下駆動手段と、独立して水平方向に駆動させる複数の水平駆動手段と、を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項5】
請求項3記載の検体収納装置において、
前記検体収納部は、前記移送手段により移送されるトレイを通過させる開口部を有し、
前記開口部を閉鎖し、かつ、前記移送手段により前記開口部をトレイが通過する際に開放する開閉手段を設けたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項6】
請求項1記載の検体収納装置であって、
前記検体収納部を増設または縮小可能であることを特徴とする検体収納装置。
【請求項7】
請求項1記載の検体収納装置であって、
前記トレイの識別情報を記憶するトレイ記憶媒体と、
前記検体の識別情報を記憶する検体記憶媒体と、
前記トレイ記憶媒体に記憶されたトレイの識別情報を読み取る読み取り手段と、
前記検体記憶媒体に記憶された検体の識別情報を読み取る読み取り手段と、を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項8】
請求項7記載の検体収納装置であって、
検体をトレイに移載する移載手段と、
前記移載手段を前記トレイ上の任意のポジションに駆動させる駆動手段と、を備え、
前記トレイの識別情報と、前記検体の識別情報と、前記移載手段により検体が移載されたトレイ上のポジションに関する情報と、を関連させて記憶する記憶手段と、を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項9】
請求項1記載の検体収納装置であって、
前記検体収納部のみを搬送することができる手段を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項10】
請求項1記載の検体収納装置であって、
前記検体収納部は、オペレータによりトレイを取り出し可能な開口部と、当該開口部の開閉手段と、を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の検体収納装置と、
検体に対して分析を実施する分析装置と、
前記検体収納装置および前記分析装置の間で検体を搬送する搬送装置と、
前記検体収納装置内の各検体の位置情報を記憶する記憶装置と、
検体の分析を依頼する依頼入力装置と、
各装置の動作を制御する制御装置と、を備えた検体処理システムであって、
前記依頼入力装置により分析依頼された検体の位置情報を前記記憶装置から検索し、
当該検体が前記検体収納装置内に収納されている場合には、当該検体収納装置から該当する検体を取り出し、当該検体を依頼された分析を実施可能な分析装置に搬送することを特徴とする検体処理システム。
【請求項12】
請求項11記載の検体処理システムであって、
前記搬送装置は、空の検体搬送部材を貯留する貯留部と、検体を保持した前記検体搬送部材を搬送する搬送ラインと、を備え、
前記貯留部は、前記依頼入力装置から検体収納装置内に保管された検体についての分析依頼がされたときには、空の検体搬送部材を前記検体収納装置に供給することを特徴とする検体処理システム。
【請求項13】
複数本の検体を保持するトレイを複数収納可能な検体収納装置の制御方法であって、
いずれかのトレイに対して検体の移載を継続している状態で、他のトレイに対する検体移載動作の準備を行うものであり、
再検査又は追加検査が依頼された検体が、移送手段上に現在保持され、収納処理が実施されているトレイ上にある場合は、当該トレイへの移載処理を一旦停止させて当該再検査又は追加検査が依頼された検体を当該トレイ外に移載し、
再検査又は追加検査が依頼された検体が、前記移送手段上に現在保持され、収納処理が実施されているトレイ上にない場合は、当該検体が収納されているトレイおよび当該トレイ上の位置を検索し、トレイの取出し処理を割り込ませ、当該再検査又は追加検査が依頼された検体を別のトレイ外に移載する、ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項13記載の制御方法であって、
前記他のトレイは、前記いずれかのトレイが満杯になる前に、空ポジションを有する新たなトレイの準備動作を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
請求項13記載の制御方法であって、
前記他のトレイは、検体収納装置内に保管されている検体について分析依頼がされたときに、当該分析依頼に係る検体が移載されたトレイの準備動作を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
請求項1記載の検体収納装置において、
検体を設置する試験管差込用孔を複数有する検体トレイと、
前記検体トレイに設置する検体を保持する検体保持機構と、
前記検体保持機構が検体を設置する位置に検体トレイを保持するトレイ移載部と、
前記検体トレイに設置された検体を保冷保管するトレイ保管部と、
前記トレイ移載部と前記トレイ保管部の間で前記検体トレイを受け渡しする受渡機構と、を備え、
当該受渡機構は、検体トレイを載せたトレイ設置用カセットごとトレイの出し入れを行うことを特徴とする検体収納装置。
【請求項17】
請求項16記載の検体収納装置において、
前記トレイ設置用カセットは、少なくとも2つ以上の突起部をカセット上面に有し、
前記検体トレイには、前記トレイ設置用カセットの突起部に対向して、少なくとも2つ以上の窪み部を下面に有し、
前記突起部及び前記窪み部の位置関係により、単一方向のみのトレイ設置が可能である検体収納装置。
【請求項18】
請求項17記載の検体収納装置において、
1つの前記トレイ設置用カセットに、複数のトレイを設置可能であることを特徴とする検体収納装置。
【請求項19】
請求項16記載の検体収納装置において、
前記トレイ保管部は、オペレータが検体トレイを出し入れするための第一の取出し口と、前記受渡機構が検体トレイを出し入れするための第二の取出し口と、を備えたことを特徴とする検体収納装置。
【請求項20】
請求項19記載の検体収納装置において、
オペレータが検体トレイを出し入れする場合は、前記第一の取出し口を介して前記トレイ設置用カセットに当該検体トレイを出し入れし、
前記受渡機構が検体トレイを取出す場合は、前記第二の取出し口を介して当該検体トレイが載せられたトレイ設置用カセットごと出し入れすることを特徴とする検体収納装置。
【請求項21】
請求項16記載の検体収納装置において、
前記トレイ移載部は、前記受渡機構により前記トレイ移載部に移載された検体トレイを載せたトレイ設置用カセットの位置を固定する固定手段を備えたこと特徴とする検体収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理、分析処理後の親試験管や保存子検体の収納を行う検体収納装置、および当該検体収納装置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査の分野において、病院で患者から採取した血液、尿などの検体は試験管に封入され、病院の検査室または検査センターに運ばれて、分析装置にて分析される。分析装置に投入する際は、検体が封入された試験管(以下、親検体試験管と称す。)に対して、遠心分離、親検体試験管開栓、親検体試験管からの検体分注時に使用する複数の試験管(以下、子検体試験管と称す。)の準備、子検体分注など、種々の前処理を行い、その後、分析装置に運ばれ分析処理が行われる。分析が終了した検体は検査結果に基づく再検査の依頼がされない場合には、収納モジュールに搬送されて収納、保管される。
【0003】
近年、これらの前処理、分析装置への搬送、分析、分析後の検体の収納に関する一連の作業は自動化され、検体前処理システムや検体搬送システムとして、病院の検査室や検査センターなどで使用されている。
【0004】
特許文献1には、検体を投入し、分析した後、分析終了検体を収納するシステムであって、分析終了後の検体を保持したラックをトレイに収容し、当該トレイを上下方向に5段、左右方向に2列に配列して保管するラック回収装置を備えたシステムが開示されている。
【0005】
また、検体を保管する際は、検体の入った試験管を複数本設置可能な検体トレイ(以下トレイと称する)に乗せ、冷蔵庫などの保冷が可能な場所に保管される。多くのオペレータはトレイ単位で検体を管理している。
【0006】
検体検査システムの収納装置においても、検体の保管に使用されるトレイをそのままセットして、収納できるようになっている。そうすることで保管時にトレイから取出し、別の保管容器に入れるような入替え作業がなく、手間を省くことができる。ただし、トレイは装置にセット可能な形状である必要があり、専用のトレイが使用されている。トレイが専用であることから、1つのトレイに搭載できる試験管の本数は決まっており、小分けして保管したい場合や、トレイに搭載できる検体上限数以上の本数での保管は対応できていない。
【0007】
また検体検査自動化システムでは、検体は搬送ラインによって搬送される。例えば特許文献3には、収納装置まで搬送ラインによって搬送された検体を、ロボットアームによって、ラインから移載位置にセットされたトレイに移載する検体検査自動化システムが開示されている。
【0008】
また、例えば特許文献1には、トレイを収納する収納部が多段に構成されており、任意の棚からトレイを取出して、移載位置にて検体を移載するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−309675号公報
【特許文献2】米国特許第5,233,844
【特許文献3】国際公開2011/148897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のラック回収装置は、収納可能な検体数は500本程度であり、かつ、検体収納装置には保冷機能が存在しないため、多数の検体を処理した場合や検体を長時間保存する必要がある場合には、オペレータが冷蔵庫へトレイを移載する作業が発生していた。このような運用の場合、冷蔵庫に検体を収納したあとに再検査や追加検査の依頼があった場合には、オペレータが冷蔵庫から該当する検体を目視で検索して、再度装置に投入し直す必要があった。
【0011】
特許文献2には保冷機能つきの検体保管庫が開示されている。この装置では、ストレージ内に検体を保冷して保管可能なストレージ装置が記載されており、このストレージ装置内には複数のトレイが多段に構成され、各トレイが垂直に駆動可能であることが記載されている。しかし、当該装置には再検査のために一度収納したトレイから検体を取り出して自動的に分析装置へ搬送することについては記載がない。従い、ストレージ装置に保管された後の検体について再検査が依頼されている場合、オペレータはトレイ上を目視でチェックして該当する検体を探し出し、抜き取って、用手で装置に投入する必要があった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その第一の目的は、比較的長期間の保管が可能な検体数を拡張すると共に、保管されている検体に再検査や追加検査が依頼された場合には自動で再検査することを可能とする検体収納装置を提供することにある。
【0013】
また、特許文献3に開示されている検体検査自動化システムでは、収納装置は冷却機能を備えておらず、また、数千本もの大量の検体を収納することはできない。そのためオペレータは、トレイが一杯になる度にトレイを手動で収納装置から取出し、冷蔵庫など、検体を冷却保管可能な装置へ移動させる必要があった。
【0014】
特許文献1に開示されているシステムでは、検体を収容したトレイを収納部から移載位置へ、出し入れする動作が必要となる。このような動作制御は、例えば、引き込み台を駆動系で移載位置から収納部へ移動させ、トレイの下側に引き込み台を差し込み、そのまま引き込み台を上昇させてトレイを持ち上げ、再び引き込み台を移載位置に戻すことにより、実現されると考えられる。
【0015】
このような動作制御を実施する場合、引き込み台がトレイを脱落させることなく安全に移動させることができるよう、引き込み台の全面がトレイ底面の広い領域を支持することが必要である。具体的には、収納部内のトレイがセットされる棚が、トレイの周囲を保持し、トレイの中心部は引き込み台がアクセス可能となるようにコの字型形状などに構成することが考えられる。この場合、トレイの中心部を支える部分がない為、オペレータがトレイを架設したり、トレイを取出したりする際に、誤ってトレイを脱落させてしまう危険性がある。また、トレイの前後方向を誤った状態で架設してしまう恐れがある。
【0016】
さらに、従来は、検体収納装置の形状に合わせた専用トレイを使用する為、1つのトレイに搭載できる試験管の本数は決まっており、小分けして保管したい場合やトレイに搭載できる検体上限数以上の本数を保管することはできなかった。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その第二の目的は、自動的なトレイの出し入れとオペレータによる脱落の危険性の無い出し入れが可能な検体収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を備える。
【0019】
すなわち、第一の手段として、本発明の検体収納装置は、複数本の検体を保持するトレイを収納可能な収納位置を多段に構成した検体収納部と、検体を保持する複数のトレイを待機させる待機位置と、前記待機位置にある複数のトレイを独立して移送可能な少なくとも二つの移送手段と、前記各機構の動作を制御する制御手段と、を備え、前記移送手段は、複数のトレイを前記収納位置と前記待機位置の間で個別に移送可能であることを特徴としている。
【0020】
また、第二の手段として、本発明の検体収納装置は、検体を設置する試験管差込用孔を複数有する検体トレイと、前記検体トレイに設置する検体を保持する検体保持機構と、前記検体保持機構が検体を設置する位置に検体トレイを保持するトレイ移載部と、前記検体トレイに設置された検体を保冷保管するトレイ保管部と、前記トレイ移載部と前記トレイ保管部の間で前記検体トレイを受け渡しする受渡機構と、を備え、当該受渡機構は、検体トレイを載せたトレイ設置用カセットごとトレイの出し入れを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
第一の効果として、本発明によれば、長時間の検体保存が可能で、かつ収納検体に対して再検査依頼や追加検査の依頼があった場合にも、自動で分析することが可能な検体収納装置を提供することが可能となる。
【0022】
第二の効果として、本発明によれば、オペレータが検体収納装置にトレイを出し入れする際は、カセットに対してトレイを脱着させ、装置側がトレイを出し入れする際には、カセット毎出し入れすることができるため、自動的なトレイの出し入れとオペレータによる脱落の危険性の無い出し入れが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係る大容量検体収納装置の構成例を表す模式図である。
【
図2】本発明の一実施例において、大容量検体収納装置の構造および、当該装置内の検体搬送ラインの構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例において、検体収納部の構造を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例において、リフト機構の動作詳細を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例において、大容量検体収納装置および分析装置を含む全体システムを示す図である。
【
図6】本発明の一実施例において、大容量検体収納装置および分析装置を含む全体システムを示す図である。
【
図7】本発明の一実施例において、大容量検体収納装置におけるリフト機構とトレイ棚の関係(リフト機構上にトレイを保持している状態)を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例において、大容量検体収納装置におけるリフト機構とトレイ棚の関係(トレイ棚上にトレイを保持している状態)を示す図である。
【
図9】本発明の一実施例において、カセットへのトレイ架設例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施例において、カセットおよび100本用トレイ、50本用トレイの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施例に係る大容量検体収納装置の構成例を表す模式図である。
【0026】
図1において、大容量検体収納装置は、前処理の完了した検体搬送用ホルダに架設された検体を搬送するための図示しない検体搬送ラインと、検体1を架設する検体トレイ2を前後および上下方向に駆動可能なリフト機構3と、検体を掴み上げて、検体搬送ラインの検体取得位置からリフト機構3上の検体トレイ2に検体1を移載する検体チャック機構10と、リフト機構3から検体トレイ2を受取り、上下方向に階層状に検体収納空間を備え左右方向に複数の検体トレイ2を保冷可能に収納する検体収納部7と、リフト機構3と検体収納部7との検体トレイ2の受け渡しに応じて開閉するシャッタ機構6と、前記各機構を制御する制御部11からなる。
【0027】
図1では、検体収納部7は検体トレイを収納する棚を上下方向に五段有しており、各棚に左右に二つの検体トレイを架設可能である。なお、検体収納部7に保管させる必要のある検体数は当該検体収納部7が接続されるシステムの規模によって異なる。システムを拡張・縮小する場合や、検体収納部7の運用を変更する場合には、検体収納部7に保管可能な検体数を変更可能なように、拡張性を持たせることが望ましい。例えば、複数台の検体収納部7を並列して複数台接続して使用できるようにすることもできるし、検体収納部7において検体トレイを収納する棚をカセット状にすることで増設・縮小できるようにしても良い。
【0028】
検体収納部7のトレイをそれぞれ引き出してリフト機構の上に保持することにより、検体チャック機構10はリフト機構上にある二つの検体トレイのいずれに対しても検体の架設動作を実施可能である。引き出すトレイは任意の段から選択可能である。また、本実施例は二つのリフト機構を備えており、リフト機構3は互いに独立して動作可能なように、個別の上下駆動機構を有している。また、検体トレイ2をリフト機構3と検体収納部7の間で移送しあうためのアーム4がそれぞれのリフト機構に個別に設けられている。
【0029】
なお、
図1ではリフト機構を二つ備えた装置構成を開示しているが、リフト機構の上下に駆動させる駆動機構自体が左右に駆動可能である場合には一つの駆動機構を複数のリフト機構が共用するような構成としても良い。
【0030】
検体収納時の動作の流れを以下で説明する。
【0031】
本発明における大容量検体収納装置を有するシステムの構成例を
図5および
図6に示す。
【0032】
図5は検体搬送ライン35に複数の分析装置34が直列式に接続されており、その最下流に本発明における大容量検体収納装置33が接続されている場合である。
図5のシステムでは、各分析装置の最上流にはオペレータが用手で検体を投入する投入モジュールあるいは検体に必要な前処理を施す前処理システムが接続されている場合が多い。
【0033】
検体は投入されると、検体を搬送するためのラックまたはホルダに載せられ、依頼された分析項目に基づいて最適な分析装置34に搬送される。依頼された分析項目の測定が全て終了した検体は、検体搬送ライン35を介して本発明における検体収納装置33へ搬送され、トレイに乗せ換えられて検体収納装置の検体収納部に保冷保管される。このとき、どのトレイのどのポジションに検体を保管したかについて、システム内の記憶手段に記憶している。
【0034】
検体収納装置33内に保管された検体に、再検査や追加検査が依頼された場合、システムは記憶手段から、当該検体を収納したトレイおよびそのポジションに関する情報を読み出す。特定されたトレイのポジションから当該検体を取り出し、ラックやホルダなどの検体搬送部材に再度載せ換えた上で、依頼された再検査や追加検査に基づいて最適な分析装置34に搬送される。このとき、検体搬送ライン35は、検体を上流から下流に搬送するメインラインと、下流から上流に搬送する戻りラインと、メインラインと戻りラインとの間でラックやホルダを行き来させる交差ラインを備えていることが望ましい。なお、分析装置34での全ての依頼された分析が終了した検体は、再び大容量検体収納装置33へ搬送され、当該装置内のトレイで保管される。
【0035】
一方、
図6には、検体前処理システム36と分析装置34が検体搬送ライン35を介して接続されている場合のシステム構成例を示す図である。このシステムでは、本発明の大容量検体収納装置33は、検体前処理システム36の内部に含まれている。
【0036】
大容量検体収納装置33内には、検体前処理システム36にて前処理が終了した検体が収納される。このとき、どのトレイの、どのポジションに検体を保管したかについて、システム内の記憶手段に記憶している。収納されている検体に分析依頼がされた場合、システムは記憶手段内に記憶されている情報に基づいて、当該検体が収納されているトレイおよびポジションを特定し、トレイから該当する検体を抜き出してラックまたはホルダに載せ替える。検体は検体前処理システムを通過し、検体搬送ライン35を介して、最適な分析装置34に搬送され、依頼された分析が実行される。分析が終了した検体は、再度検体搬送ライン35を介して再び検体前処理システム内の大容量検体収納装置33内に収納される。この場合において、本発明の大容量検体収納装置は検体前処理システムの最下流に配置されている。
【0037】
なお、
図6の場合において、検体は検体投入装置から投入され、図示しないメインラインを介して必要な前処理を実行する各処理装置に搬送される。この時点で既に分析装置34による分析依頼がされている場合には、最後尾の分注モジュールに到達した時点で適切の分析装置34へと搬送される。一方、この時点で分析依頼がされていない場合には、図示しない戻りラインを介して、大容量検体収納装置に収納される。収納された検体に分析依頼がされた場合、システムは記憶されている情報に基づいて、当該検体が収納されているトレイおよびポジションを特定し、トレイから該当する検体を抜き出してラックまたはホルダに載せ替える。検体は検体前処理システムを通過し、検体搬送ライン35を介して、最適な分析装置34に搬送され、依頼された分析が実行される。分析が終了した検体は、再度検体搬送ライン35を介して再び検体前処理システム内の大容量検体収納装置内に収納される。
【0038】
なお、
図5および
図6の場合において、大容量検体収納装置33から取り出され、分析処理を実行した後に、もう一度大容量検体収納装置33内に保管する検体は、取り出される前に収納されていた位置と同じ位置に収納することが望ましい。
【0039】
大容量検体収納装置33の構造を説明するため、大容量検体収納装置の構造および、当該装置内の検体搬送ラインの構成例を
図2に示す。
【0040】
図2は、多段に形成され、各段に二つのトレイを収納可能である検体収納部7、破線で示され、検体収納部7から取り出されたトレイに対して移載されてきた検体を載せ替える位置である待機位置37、トレイに載せ替える検体を搬送するための複数の搬送ライン24等、所定の位置で処理を施す検体を停止させるストッパやRFID読取アンテナにより構成されている。なお、装置を動作させる前に、オペレータは検体収納部7の各階層に空の検体トレイを設置しておく必要がある。そのため、検体収納部7の前面は開閉可能な構造となっており、オペレータは容易に検体トレイの出し入れが可能となっている。
【0041】
前処理あるいは分析の完了した検体搬送用ホルダに架設された検体は、上流に隣接する装置から収納検体搬送ライン24によって、大容量検体収納装置に供給される。大容量検体収納装置内に供給された検体は、ホルダRFID読取位置32にて検体IDの読み取りを行なうと共に、RFID読取位置に設けられたストッパによって、一定数量バッファリングすることができるようになっている。ホルダRFID読取位置にて読取られた検体ID情報は、後述する記憶装置に記憶される。
【0042】
検体が、ホルダRFID読取位置32から検体チャック位置30まで移動する間に、リフト機構3は検体収納部7の保冷庫内に収納された検体トレイから、空きポジションを有する検体トレイ2を取りに行き、チャック機構10により掴み上げられた検体1を受け取り可能な待機位置まで移動させる。
【0043】
検体トレイ2はそれぞれの検体トレイ2を個別に識別可能な識別情報を有する識別子(たとえば、RFIDタグや、バーコードラベルなど)を備えている。リフト機構などにこの識別子を読取可能なリーダ(たとえば、RFIDタグリーダ、バーコードリーダなど)を備えることにより、装置側で検体の収納動作を行っている対象となる検体トレイ2を識別することが可能である。このとき読取った検体トレイ2の識別情報は、記憶装置に記憶される。
【0044】
検体がメインライン25上の検体チャック位置30まで到達すると、大容量検体収納装置は、到達したことをメインライン25上の検体検知センサにより認識し、チャック機構10により検体を掴みあげ、リフト機構3上の検体トレイ2の空きポジションに移載する。チャック機構は任意のポジションに検体を移載可能なよう、XYZ機構や回転式アームなどの駆動機構に取り付けられている。このとき、駆動機構によりいずれのポジションに検体を移載したかの位置情報を記憶装置に記憶する。
【0045】
記憶装置は、ホルダRFID読取位置32で読取った検体ID情報、リーダで読取った検体トレイの識別情報、および、検体チャック機構による検体収納動作でチャック機構が検体を収納させた検体トレイ上のポジション情報、を関連付けて記憶する。これによって、検体収納部7に収納された検体を適切に管理することができ、再検査や追加検査が依頼された場合に対応可能である。
【0046】
待機位置では、トレイは左右方向に並んだ二つのリフト機構上に一つずつ保持されており、チャック機構10はいずれの検体トレイ2に対してもアクセス可能である。これにより、一方の検体トレイ2が満杯になりそうなときは、実際に満杯になる前に、他方のリフト機構3が保冷庫内にある空の検体トレイ2を、次に使用する新たな検体トレイとして準備することができるため、収納処理を時間ロスなく継続できる。
【0047】
一方の検体トレイ2が満杯になった場合、チャック機構は満杯となった検体トレイ以外の、新たな検体トレイに対して、検体の移載動作を継続する。満杯となった検体トレイ2を保持するリフト機構3は、満杯となった検体トレイ2が当初収容されていた階層にアクセスするため、上昇もしくは下降する。検体収納部7のシャッタ機構6はリフト機構3の上昇もしくは下降動作開始と同時に開動作を開始する。
【0048】
リフト機構3はシャッタ機構6が開ききったことを確認するとアーム4を伸ばして検体収納部7に検体トレイ2を検体収納部7内に収納する。その後、リフト機構3のアーム4が検体収納部7の外に出たことを確認すると、シャッタ機構6は閉動作を行う。検体収納部7内の低温を保つため、シャッタ機構6は、検体トレイ2の収納または取出し行為をしていないときは常に閉まっている。
【0049】
なお、検体トレイ2に検体を移載するため、検体チャック位置30で検体を抜き取られた空の検体搬送用ホルダは、空検体搬送用ホルダ排出ライン27により空検体搬送用ホルダ搬送ライン23に搬送され、他の検体の搬送に再使用される。
【0050】
次に、検体収納部7に収納された検体について再検査や追加検査が依頼された時の動作の流れを以下に説明する。
【0051】
医師が、検体に対する全ての分析結果や前回測定値、患者の容態を総合的に考慮して、再検査や追加検査が必要であると判断すると、上位のホストシステムから分析依頼をする。もしくは、オペレータに連絡し、検体搬送システムの入力装置から分析依頼することも可能である。このような再検依頼や追加検査の依頼があったとき、制御部11は図示しない記憶装置の内部に記憶された情報の中から、依頼された検体の検体IDおよび当該検体IDを有する検体に関連付けて記憶されている収納位置情報を検索する。
【0052】
該当する検体1が、リフト機構3上に現在保持され、収納処理が実施されている検体トレイ2上にある場合、チャック機構による検体トレイへの検体移載処理を一旦停止させる。当該検体1を、依頼された検査を実行するための分析装置に搬送するため、検体ホルダまたは検体ラックなどの検体を他の装置に搬送する搬送部材を用意し、チャック機構により検体を搬送部材に移載する。
【0053】
再検査や追加検査が依頼された検体1が、リフト機構3上に現在保持されていない場合は、現時点で検体の移載動作を行っていない方のリフト機構3を用いて所定の検体トレイを取り出し動作する。当該リフト機構3上に別の検体トレイが保持されている場合は、まずこの検体トレイを検体収納部7内に収納する必要があるため、当該検体トレイ2が当初収納されていた階層にアクセスするよう、リフト機構を上昇もしくは下降させる。
【0054】
シャッタ機構6はリフト機構3の上昇もしくは下降動作開始と同時に開動作を開始する。リフト機構3はシャッタ機構6が開ききったことを確認するとアーム4を伸ばして検体収納部7に、現在リフト機構3上に保持されている検体トレイ2を収納する。
【0055】
トレイ2の収納が完了し、アーム4が検体収納部7の外に出たことを確認すると、リフト機構3は、分析が依頼された検体1が収納されている検体トレイ2が収納されている階層に向かって上昇もしくは下降する。その後、アーム4を伸ばして検体収納部7に収納されている所望の検体トレイ2を取り出すと、チャック機構10と検体1をやりとりする待機位置まで上昇もしくは下降する。
【0056】
シャッタ機構6はリフト機構3のアーム4が検体収納部7の外に出たことを確認すると閉動作を行う。リフト機構3が待機位置に到着すると、該当する検体1が保持されているポジション情報を元に、チャック機構10が検体トレイ2から検体1を取り出し、空検体搬送用ホルダ供給ライン26から供給されメインライン25上の検体チャック位置30で待機している空の検体搬送用ホルダに移載する。検体搬送用ホルダに架設された検体1は、メインライン25を通過して、再検査や追加検査を実施する分析装置へ搬送される。
【0057】
なお、本実施例では検体収納装置や分析装置の間で検体を移載するためには、ホルダに検体を搭載してベルトコンベヤで搬送する方式としているが、本発明はこの方式に限定されるものではない。例えば、検体をチャックしアーム機構で任意の分析装置に搬送する方式としても良い。
【0058】
これらの構成を備えることにより、再検査や追加検査が依頼された場合に、自動で該当する検体が収納されている検体トレイ2および検体トレイ上の位置を検索し、検体を取り出すことができるため、オペレータの操作を介することなく自動的に再検査や追加検査を実施することが可能となる。
【実施例1】
【0060】
検体収納部7の構造を
図3(a)に示す。
【0061】
図3の検体収納部にあっては、検体収納部は五段の棚を有し、一つの棚に二つの検体トレイを収容可能である。
【0062】
検体収納部7は冷却ユニット8によって冷やされた冷却空気を、送風ファン9によって循環させることで、検体収納部7内の温度を均一に保冷する。検体収納部7内の冷却空気の流れを
図3(a)中の矢印13によって示す。これにより、多段に構成された検体収納部のいずれの位置に検体が収納されていても、均一に保冷保管することができる。
【0063】
また、検体収納部の内部は保冷されている上に、シャッタ機構等が開閉して内部の検体トレイの取り出しを行うために、内部に結露水が発生する可能性がある。結露水が検体収納部内に溜まると雑菌が繁殖する可能性があるばかりか、検体容器に付着して検体容器に貼付されたバーコードを破損したり、検体を薄めたりする可能性がある。よって、結露水が検体の周囲に溜まったり、滴下しないよう、結露水の経路14を設けておく。経路14を経由してドレイン12に貯留され、オペレータにより廃棄される。
【0064】
検体収納部7の検体収納部である棚の下面に結露水が溜まると、その下の段に保管されている検体容器に結露水が滴下する可能性がある。よって、このような事態を回避するため、棚の下面に傾斜をつけ、結露水がドレイン12に集まるように構成しても良い。
【0065】
リフト機構3の検体トレイ取出し時の動作の流れを
図4(a)の左欄を用いて説明する。
【0066】
リフト機構3は、取り出し対象のトレイ2が収容されている任意の階層まで上昇または下降し、検体収納部7で検体トレイ2を保持している検体トレイ棚15よりも低い位置で停止する(
図4(a)左欄一段目)。
【0067】
シャッタ機構が空いていることを確認した後、検体トレイ2の下にアーム4の先端が達するまでアーム4を伸ばす(
図4(a)左欄二段目)。
【0068】
アーム4が伸びきったことを確認すると、リフト機構3を検体トレイ棚15よりもわずかに高い位置まで上昇させる。これにより、検体トレイ棚15に保持されていた検体がリフト機構3のアーム4によって保持されることとなる(
図4(a)左欄三段目)。
【0069】
アーム4を縮めてチャック機構10が検体にアクセス可能な待機位置までリフト機構を上昇または下降させる(
図4(a)左欄四段目)。
【0070】
リフト機構3の検体トレイ収納時の動作の流れを
図4(a)の右欄を用いて説明する。
【0071】
リフト機構3は、チャック機構10が検体にアクセスする待機位置から、現在リフト機構3が保持している検体トレイ2が当初収納されていた階層まで上昇または下降し、検体トレイ棚よりも高い位置で停止する(
図4(a)右欄一段目)。
【0072】
シャッタ機構があいていることを確認した後、アーム4を伸ばして検体トレイ2を検体収納部7の内部に搬送する(
図4(a)右欄二段目)。
【0073】
アーム4を伸ばしきり、検体トレイ棚の適切な位置に検体トレイ2が搬送されたことを確認した後、検体トレイ棚よりもわずかに低い位置までアーム4を下降させる(
図4(a)右欄三段目)。
【0074】
その後、アーム4を縮めて、次の動作に遷移する(
図4(a)右欄四段目)。
【0075】
この動作フローにすることで、リフト機構3と検体収納部7との高さの位置調整が厳密な調整を必要とせず、構成が簡易とすることができる。
【0076】
検体トレイを取り出すための構成として、リフト機構は検体トレイ2を引っ掛けるための突起部を有する。検体収納部7の棚とリフト機構の構造の詳細を
図7および
図8により説明する。なお、
図7,8はリフト機構と検体収納部の棚を上方(
図7(a))および側方(
図7(b))より見た図であり、それぞれ図面上側がリフト機構、下側が検体収納部の棚部分を示す。
【0077】
図7は、リフト機構にトレイが保持されている状態である。トレイは検体収納部内にリフト機構のアームを差し込むことによりリフト機構上に移動する。アームの先端には検体収納部内のトレイをリフト機構上に引き込むためのトレイ引き込み用突起16が設けられている。この突起は
図4(a)の検体トレイ取り出し動作時に、トレイの下側を通過してトレイの端部に引っかかることによってトレイをリフト上に引き込む。そのため突起の大きさは、トレイ取り出し動作時にトレイ自体に引っかからないよう、リフト機構がトレイ取り出し動作を行う前後で上に持ち上がる長さよりも短く形成されている。一方、検体収納部の棚は検体トレイを保持し、かつ、リフト機構による取り出し動作が可能なよう、中心部にリフト機構の侵入が可能な中空領域が形成されている。トレイ引き込み用突起は、この中空領域内でトレイに作用する。
【0078】
図8は、リフト機構から検体収納部の棚にトレイを戻している状態である。トレイを保持したリフト機構は、アームを伸ばして検体収納部の空いているポジションにトレイを戻す。このとき、トレイを押し込むためのトレイ押し込み用突起17がアームに設けられている。トレイ押し込み用突起によりトレイは検体収納部の棚の所定のポジションに収められる。
【0079】
なお、検体収納装置の検体収納部7は、全体のシステムと分離してこの部分だけを搬送できるように構成しても良い。例えば、検体収納部7の下部にキャスタを備え、分析が終了したら、検体収納部7をシステムから切り離して任意の場所まで容易に搬送させることができるようにすることで、検体収納部7内のトレイを冷蔵庫など、別の場所に保管するような運用をしている検査室において、検体トレイの移動を容易に行なうことができる。
【0080】
本実施例に記載した機構は、あくまで例であり、他の手段で実現させてもよい。また、本実施例ではモータでの駆動を例にしたが、エアーシリンジ等のエアー駆動など、他の駆動手段でもよい。
【0081】
また、本発明における検体収納装置は
図1の構成に限定されるものではなく、リフト機構は三つ以上設けられていても良い。この場合、リフト機構上の検体トレイは、リフト機構と同様の向きに三つ以上並べて待機可能であり、これらの検体トレイに対してチャック機構10が検体の架設動作可能なようにするようにしても良い。
【0082】
また、検体収納部7内に設けられた検体トレイを収納する棚が上下駆動するように構成しても良い。この場合、リフト機構に替えて前後方向にのみ移動可能な搬送装置が待機位置で検体トレイ2を保持することが望ましい。このような搬送装置を並べて複数設ければ、一つの検体トレイ2が満杯に成った場合は、検体収納部7の棚が駆動して最適な収納棚が検体トレイの受け入れ位置まで移動し、搬送装置が前に突き出すように駆動することによって、検体収納部7内の適切な位置に検体トレイを収納することが可能となる。また、搬送装置が複数設けられているため、一方の検体トレイが満杯となり上記の収納動作を実施している場合には、他方の検体トレイに対して検体の収納動作を実施できるため、検体収納制御を連続的に行うことができる。
【実施例2】
【0083】
検体収納部7の構造を
図3(b)に示す。
【0084】
図3の検体収納部にあっては、検体収納部は五段の棚を有し、一つの棚に二つの検体トレイを収容可能である。
【0085】
検体収納部7の下面には冷却ユニットが配置されており、冷却ユニットの冷却面は検体収納部の底面に密着した構造となっている。検体収納装置が稼働すると同時に冷却ユニットが稼働し、検体収納部の底面を冷却する。検体収納部の底面および壁面には、アルミや銅など、熱伝導性のよい部材を使用することで底面から壁面に冷気が伝わり、収納部壁面全体を冷却する。収納庫内部は、冷却された壁面の放熱により保冷する。
【0086】
なお、冷却ユニットは検体収納部の下面にある状態で説明しているが、検体収納部の側面や上面に設置してもよい。
【0087】
結露水は、実施例1と同様、結露水の流路(図示せず)を設ける。もしくは、上面に吸水性の部材を固定してもよい。
【0088】
次に、リフト機構3のカセット取出し時の動作の流れを
図4(b)の左欄を用いて説明する。
【0089】
リフト機構3は、取り出し対象のトレイ2が収容されている任意の階層まで上昇または下降し、検体収納部7で検体トレイ2を保持している検体トレイ棚15よりも低い位置で停止する(
図4(b)左欄一段目)。
【0090】
シャッタ機構が空いていることを確認した後、検体トレイ2の下にアーム4の先端が達するまでアーム4を伸ばす(
図4(b)左欄二段目)。
【0091】
アーム4が伸びきったことを確認すると、リフト機構3を検体トレイ棚15と同じ高さまで上昇させる(
図4(b)左欄三段目)。
【0092】
アーム4を縮めてチャック機構10が検体にアクセス可能な待機位置までリフト機構を上昇または下降させる(
図4(b)左欄四段目)。
【0093】
リフト機構3の検体トレイ収納時の動作の流れを
図4(b)の右欄を用いて説明する。
【0094】
リフト機構3は、チャック機構10が検体にアクセスする待機位置から、現在リフト機構3が保持している検体トレイ2が当初収納されていた階層まで上昇または下降し、検体トレイ棚と同じ高さの位置で停止する(
図4(b)右欄一段目)。
【0095】
シャッタ機構があいていることを確認した後、アーム4を伸ばして検体トレイ2を検体収納部7の内部に搬送する(
図4(b)右欄二段目)。
【0096】
アーム4を伸ばしきり、検体トレイ棚の適切な位置に検体トレイ2が搬送されたことを確認した後、検体トレイ棚よりもわずかに低い位置までアーム4を下降させる(
図4(b)右欄三段目)。
【0097】
その後、アーム4を縮めて、次の動作に遷移する(
図4(b)右欄四段目)。
【0098】
この動作フローは、トレイ棚上で検体トレイを持ち上げることなく引き出すことができるため、収納部の高さを余分に高くする必要がない。また、持ち上げる動作時間分を短縮できるため、処理能力を向上させることが可能となる。
【0099】
検体トレイを取り出すための構成として、リフト機構は検体トレイ2を引っ掛けるための突起部、トレイ受取り用の傾斜部38を有する。トレイ受取り用の傾斜部38を設けることにより、厳密な高さの位置調整をしなくても、トレイ棚に対するリフト機構の停止の微小なずれを補い、リフト機構およびトレイ棚間での検体トレイ受け渡し時に検体トレイが引っかからずに受け渡しが可能となる。
【実施例3】
【0100】
カセットの構造を
図9および
図10に示す。
【0101】
カセットを使用することにより、検体トレイを拡張することが可能となる。
【0102】
カセット80には、
図9および
図10のごとく上面に6つの突起部81がある。カセット80に対して、トレイ90aの底面には窪み部91aが6つ、突起部81に対向した位置にあり、オペレータはカセット80の突起部81に合わせてトレイ90aの窪み部91aをはめ込む。はめ込み式にすることで、架設されるトレイ90aの位置は、毎回ずれることなく架設することができる。また、このとき、トレイ90aの向きが誤った方向であれば、突起部81と窪み部91aの位置がかみ合わず、トレイ90aを架設できない。
【0103】
また、ここで、例えば50本の検体を搭載できるトレイ90bを架設させたい場合は、トレイ90bの底面にある3つの窪み部91bが、カセット80上面の6つの突起部81のうち、対向する3つにはめ込むことができるようになっており、トレイ90bを2個架設できるようになっている。また、トレイ90bにおいても、突起部および窪み部の位置により、誤った方向でトレイを架設できないようになっている。
【0104】
また、トレイ90bは当該検体収納装置のみの仕様にかぎらず、従来の検体検査自動化システムの検体収納装置および検体投入装置においても使用することができる共通のトレイである。
【0105】
他にも、トレイの窪み部およびカセットの突起部を増やすことで、25本搭載できるトレイ、200本搭載できるトレイなど、増設および縮小が可能である。
【0106】
ここで、カセット80がない状態でトレイ90bを架設する場合には、収納部の形状がトレイ90bの片側のみを支える形状になってしまうため、トレイ90bを脱落させてしまう。そのため、トレイ90bを架設するには収納部のトレイ架設部を複雑な構造にする必要がある。カセット80を使用することでその問題を解消できる。
【符号の説明】
【0107】
1 検体
2 検体トレイ
3 リフト機構
4 アーム
5 RFIDリーダ
6 シャッタ機構
7 検体収納部
8 冷却ユニット
9 送風ファン
10 検体チャック機構
11 制御部
12 ドレイン
13 空気の流れ
14 結露水の経路
15 検体トレイ棚
16 トレイ引き込み用突起
17 トレイ押し込み用突起
21 戻りライン
22 空検体搬送用ホルダ戻りライン
23 空検体搬送用ホルダ搬送ライン
24 収納検体搬送ライン
25 メインライン
26 空検体搬送用ホルダ供給ライン
27 空検体搬送用ホルダ排出ライン
28 空検体搬送用ホルダストッパ
29 分岐機構
30 検体チャック位置
31 空検体搬送用ホルダRFID読取位置
32 収納検体ホルダRFID読取位置
33 大容量検体収納装置
34 分析装置
35 検体搬送ライン
36 検体前処理システム
37 待機位置
38 トレイ受取り用の傾斜部
80 トレイ設置用カセット
81 突起部
90a 検体トレイ(100本架設用)
90b 検体トレイ(50本架設用)
91a 窪み部(検体トレイ(100本架設用))
91b 窪み部(検体トレイ(50本架設用))