(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の閾値以上となった場合、前記回転信号に基づく前記DCモータの位置と所定の停止位置との位置偏差の補正を行う位置偏差補正部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の制御回路。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の駆動装置では、駆動力源としてステッピングモータに代えて直流(DC)ブラシレスモータが用いられている(例えば、特許文献1参照)。DCブラシレスモータを用いることにより、エネルギー効率をより高くし、モータ重量を削減することが可能となる上、ブラシ付モータと比較し、ブラシ磨耗が無いことから、高耐久化を図ることが可能となる。
【0003】
また、従来の駆動装置において、モータ軸上にエンコーダなどの回転検出手段を設けないで、被駆動体上に回転検出手段や移動量検出手段を設ける構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。この構成では、モータ1回転当たりの被駆動体の移動量等を考慮した制御設計をしなければならないという不都合や、伝達系や被駆動体の構成が変わったり別の箇所に同じ駆動装置を適用したりする場合に制御手段の設計を変えなければならないという不都合が生じる。そこで、モータ軸上にエンコーダなどの回転検出手段を設け、モータ軸の回転を検出することで、駆動装置の設計を容易にすることが可能となる。
【0004】
以上の観点から、DCブラシレスモータでの位置、速度を制御するための回転検出手段をモータ軸上に設けた、エンコーダ一体型のDCブラシレスモータを備えた駆動装置が考えられ既に知られている。
【0005】
しかしながら、DCブラシレスモータでの位置、速度を制御するための回転検出手段をモータ軸上に設けた場合、モータを励磁しながら保持するホールド制御時に、回転子の位置によっては目標位置との位置偏差が解消できない場合がある。この場合、DCブラシレスモータが、位置偏差を解消しようとする動作を行うことで、位置偏差に相当するパルス分行ったり来たりするような振れ現象が生じることがある。そのため、画像形成装置に振動が発生し、搬送性のタイミングなどに影響を及ぼすとともに、DCブラシレスモータが駆動するローラの磨耗促進や画像品質が劣化するという課題があった。
図14を参照して、従来の駆動装置で発生していたモータ振れ現象について説明する。
【0006】
図14は、DCブラシレスモータがローラを駆動して用紙が搬送される定常状態、DCブラシレスモータの回転速度を徐々に低下させるスルーダウン、DCブラシレスモータを所定の停止位置で停止させた状態で励磁しながら保持するホールド状態、DCブラシレスモータの回転速度を徐々に上昇させるスルーアップ、その後の定常状態を含む駆動目標シーケンスと実際の挙動とを示している。なお、
図14の縦軸はDCブラシレスモータの回転速度を示しているが、ホールド状態では便宜上位置偏差も示している。
【0007】
図14に示すように、DCモータブラシレスの位置制御において、駆動目標シーケンスに対して実際の挙動は異なり、DCブラシレスモータの回転子の停止位置によってはホールド状態で位置偏差が発生してしまう。この場合、ホールド状態において、従来の装置では、制御回路が位置偏差を解消するよう制御するため、モータ振れが発生していた。
【0008】
これに対し、本出願人は、先に、比例積分微分制御器を用いて、ホールド状態におけるモータ振れを短時間で抑制することができる駆動装置を提案した(特願2011−209306号、以下「先行技術」という。)。
【0009】
図15に示すように、先行技術の駆動装置は、ホールド状態の開始時から一定時間tの経過後、かつ、位置偏差が所定値y以下になったことを条件に、比例積分微分制御器の各ゲインを予め定めた値に設定することにより、ホールド状態におけるモータ振れを短時間で抑制することができるものであった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態における構成について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における画像形成装置100の概略構成図である。
【0018】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、それぞれ「Y」、「M」、「C」、「K」と記す。)の可視像たるトナー像を生成するため、4つの感光体ドラム1(1Y、1M、1C、1Kを含む。)と、現像装置2(2Y、2M、2C、2Kを含む。)と、を備えている。
【0019】
現像装置2は、それぞれ、現像ローラ3(3Y、3M、3C、3Kを含む。)を備えている。また、各現像装置2Y、2M、2C、2Kの図中下方には、潜像を形成する露光装置4が配設されている。
【0020】
露光装置4は、画像情報に基づいて発したレーザ光を各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに照射して露光する。
【0021】
この露光により、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上にそれぞれY静電潜像、M静電潜像、C静電潜像、K静電潜像が形成される。なお、露光装置4は、光源から発したレーザ光を、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体ドラムに照射するものである。
【0022】
また、露光装置4の図中下側には、紙収容カセット5、給紙ローラ6、レジストローラ7等を有する給紙手段が配設されている。なお、給紙ローラ6及びレジストローラ7は、本発明に係る搬送ローラを構成する。
【0023】
紙収容カセット5は、記録材としての用紙23を複数枚重ねて収納しており、一番上の用紙23には給紙ローラ6を当接させている。給紙ローラ6が図示しない駆動機構によって図中反時計回りに回転させられると、一番上の用紙23がレジストローラ7のローラ間に向けて給紙される。
【0024】
レジストローラ7は、用紙23を挟み込むべく両ローラを回転駆動するが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、レジストローラ7は、用紙23を適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
また、現像装置2Y、2M、2C、2Kの図中上方には、被転写材である中間転写体としての中間転写ベルト8を張架しながら無端移動させる中間転写ユニット15が配設されている。
【0026】
この中間転写ユニット15は、中間転写ベルト8のほか、4つの1次転写バイアスローラ9(9Y、9M、9C、9Kを含む。)、ベルトクリーニング装置10、2次転写バックアップローラ11、クリーニングバックアップローラ12、テンションローラ13等も備えている。なお、2次転写バックアップローラ11は、本発明に係る搬送ローラを構成する。
【0027】
中間転写ベルト8は、これら7つのローラに張架されながら、少なくともいずれか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回りに無端移動させられる。1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス極性)の転写バイアスを印加する方式のものである。
【0028】
1次転写バイアスローラ9Y、9M、9C、9Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY、M、C、K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上のYトナー像、Mトナー像、Cトナー像、Kトナー像が重ね合わせられて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、「4色トナー像」という。)が形成される。
【0029】
また、上記中間転写ユニット15には、中間転写ベルト8が感光体ドラム1Kに接触した状態で、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1Cに対して接離するための図示しない接離機構も設けられている。
【0030】
上記2次転写バックアップローラ11は、2次転写ローラ16との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された4色トナー像は、この2次転写ニップで用紙23に転写される。そして、用紙23の白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0031】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、用紙23に転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、上記ベルトクリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップにおいては、用紙23が互いに順方向に表面移動する中間転写ベルト8と2次転写ローラ16との間に挟まれて、上記レジストローラ7側とは反対方向に搬送される。
【0032】
2次転写ニップから送り出された用紙23は、画像形成装置100本体に対して着脱自在なユニットとしての定着ユニット17のローラ間を通過する際に、熱と圧力と影響を受けて、表面のフルカラートナー像が定着される。その後、用紙23は、排紙ローラ18のローラ間を経て機外へと排出される。なお、排紙ローラ18は、本発明に係る搬送ローラを構成する。
【0033】
画像形成装置100本体の筺体の上面には、スタック部20が形成されており、排紙ローラ18によって機外に排出された用紙23は、このスタック部20に順次スタックされる。
【0034】
上記中間転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部20との間には、ボトル支持部21が配設されている。このボトル支持部21には、各色トナーをそれぞれ収容する剤収容器としてのトナーボトル22(22Y、22M、22C、22Kを含む。)がセットされている。
【0035】
各トナーボトル22Y、22M、22C、22K内の各色トナーは、それぞれ図示しないトナー供給装置により、現像装置2Y、2M、2C、2Kに適宜補給される。各トナーボトル22Y、22M、22C、22Kは、現像装置2Y、2M、2C、2Kとは独立して画像形成装置100の本体に対して脱着可能である。
【0036】
また、画像形成装置100は、CPUを含む本体制御部30と、この本体制御部30で実行されるプログラム等を記憶するメモリ31を備えている。
【0037】
本体制御部30は、図示しない操作パネル等から入力される指示信号に基づいてメモリ31からプログラムを読出して実行し、前述の各構成要素を制御する。
【0038】
図2は、画像形成装置100が備える搬送ローラを駆動する駆動装置の概略構成図である。
【0039】
図2に示した駆動装置150は、
図1に示した画像形成装置100の何れかの搬送ローラを駆動するDCモータ及びその制御回路等からなるものである。以下の説明では、
図1に示した排紙ローラ18の駆動装置を例に挙げる。ただし、排紙ローラ18以外の搬送ローラについても同様に適用することができる。
【0040】
排紙ローラ18(18a、18bを含む。)の駆動装置150は、DCモータ101、減速ギヤ111〜114、制御回路120、ドライバ回路115を備えている。なお、制御回路120は、本発明に係る制御手段を構成する。
【0041】
DCモータ101は、例えばDCブラシレスモータで構成され、出力軸102、この出力軸102に固定されたギヤ102a及びエンコーダ103を備えている。エンコーダ103は、エンコーダディスク103a、フォトセンサ103bを有する。なお、エンコーダ103は、本発明に係る回転位置検知手段を構成する。
【0042】
この構成により、DCモータ101は、ギヤ102a、減速ギヤ111〜114を介し、排紙ローラ18a及び18bを回転させる。そして、排紙ローラ18a及び18bに挟まれながら用紙23が搬送されていく。
【0043】
また、エンコーダディスク103aは、周方向に所定の角度間隔で所定数のスリットを有し、出力軸102に垂直かつ同心にて固定され、出力軸102の回転とともに回転するようになっている。
【0044】
光学センサであるフォトセンサ103bは、エンコーダディスク103aを挟み込む形でDCモータ101に取り付けられ、エンコーダディスク103aのスリットにより光路の伝達・遮断がなされ、フォトセンサ103bの受光素子にてパルス信号となって制御回路120へと伝達する。
【0045】
制御回路120では、このパルス信号を計測することで、DCモータ101の回転量及び回転速度を導出し、排紙ローラ18a及び18bの位置及び速度情報から、用紙23の位置及び速度情報を得ることが可能となる。
【0046】
なお、フォトセンサ103bは、2組の発光素子と受光素子を有し、各々のパルス信号位相差が所定量(本実施形態ではπ/2[rad])となるように配置されている。
【0047】
制御回路120は、本体制御部30(
図1参照)が出力する目標駆動信号及びフォトセンサ103bの出力信号に基づいてDCモータ101の動作信号を生成し、ドライバ回路115に動作信号を送り、その後、ドライバ回路115から動作信号に合った電流をDCモータ101に流すことで、排紙ローラ18a及び18bを駆動させるようになっている。
【0048】
図3は、本発明の第1実施形態における画像形成装置の駆動装置のブロック構成図である。
【0049】
図3において、駆動装置150は、
図1に示す画像形成装置100の何れかの搬送ローラを駆動するモータ及びその制御回路等を含む。
【0050】
駆動装置150において、本体制御部30(
図1参照)に設けられた目標駆動信号生成手段110から、制御回路120内の目標位置・速度計算回路121に、回転方向信号と移動パルス数の信号が渡されるようになっている。すなわち、制御回路120内の目標位置・速度計算回路121は、目標駆動信号生成手段110から、目標駆動信号としての回転方向信号と移動パルス数の信号を取得するようになっている。
【0051】
目標位置・速度計算回路121では、得られた情報と図示しないオシレータの時間情報から、目標位置及び目標速度を導出し、位置・速度追従制御器130に信号を伝達するようになっている。
【0052】
また、制御回路120内のモータ位置・速度計算回路122では、2チャンネルフォトセンサとして構成されたフォトセンサ103bにて、エンコーダディスク103aのパルスを計測している。フォトセンサ103b及びエンコーダディスク103aは、2チャンネルロータリエンコーダとして構成されている。
【0053】
エンコーダディスク103aの1周当りのパルス数は、本実施形態では100パルスとしている。エンコーダディスク103aの1周当りのパルス数は、安価にDCモータ101の出力軸102の回転を検出するために、200パルス以下であることが好ましい。
【0054】
また、エンコーダディスク103aの1周当りのパルス数は、ステッピングモータからインナーロータ型のDCブラシレスモータへの置き換えを容易にするためには、12×Nパルス(Nは自然数)又は50×Nパルスとすることが好ましい。
【0055】
ここで、2チャンネルフォトセンサとして構成されたフォトセンサ103bは、2組の発光素子と受光素子を有し、各々のパルス信号位相差が所定量(本実施形態ではπ/2[rad])となるように配置されている。そのため、モータ位置・速度計算回路122ではその位相差を利用して、回転方向を知ることができる。
【0056】
モータ位置・速度計算回路122では、得られた情報と図示しないオシレータの時間情報から、モータ位置及びモータ速度を導出し、位置・速度追従制御器130へと信号を伝達するようになっている。
【0057】
位置・速度追従制御器130では、目標位置とモータ位置が一致するよう、また目標速度とモータ速度が一致するよう制御し、必要に応じてPWM(パルス幅変調)出力、回転方向、スタートストップ、ブレーキといった信号をドライバ回路115へと送るようになっている。なお、位置・速度追従制御器130では、本発明に係る目標位置信号入力手段を構成する。
【0058】
ドライバ回路115は、4象限ドライバとして構成されており、位置・速度追従制御器130から得られた信号及びホールIC116からのホール信号から、モータ電流及びPWM電圧を制御するようになっている。
【0059】
すなわち、駆動装置150においては、制御回路120が、目標駆動信号から単位時間当りの目標回転量及び目標総回転量を求めるとともに、エンコーダディスク103a、フォトセンサ103bからの出力信号から単位時間当りのモータ回転量及びモータ総回転量を求め、その後、目標総回転量とモータ総回転量が等しく、かつ、単位時間当りの目標回転量と単位時間当りのモータ回転量が等しくなるようドライバ回路115への信号を変化させることで、DCモータ101の回転速度を制御するようになっている。
【0060】
本実施形態では、ドライバ回路115がDCモータ101に搭載されていない形式で示しているが、ドライバ回路115をDCモータ101上の基板に搭載した場合は、ハーネス本数の削減が図れるため、コストダウンにつながる。
【0061】
なお、本実施形態では、目標駆動信号生成手段110は、駆動装置150には含まれず、画像形成装置100の本体制御部30に設けられた構成としたが、目標駆動信号生成手段110が駆動装置150内に含まれていてもよい。
【0062】
図4(a)、
図4(b)は、本発明の第1実施形態における駆動装置150のモータの構成を示す斜視図である。
【0063】
図4(a)、
図4(b)に示すように、DCモータ101の出力軸102にギヤ102aを直接歯切りすることで、モータ初段の減速比を大きくすることができ、コストダウンも実現できるようになっている。
【0064】
また、出力軸102の駆動伝達部であるギヤ102aの逆側の端部には、エンコーダディスク103aが同軸上に直接固定されている。また、フォトセンサ103bは、DCモータ101に取り付けられ、ドライバ回路115(
図3参照)もDCモータ101上の基板104に取り付けられている。DCモータ101上の基板104には、コネクタ105が取り付けられており、モータ信号とエンコーダ信号の入出力がなされるようになっている。
【0065】
また、DCモータ101の軸受け部には、玉軸受けが用いられており、これにより、焼結軸受け等を用いた場合と比較して摩擦力が低減するので、DCモータ101を用いることによる高効率化を更に高められるとともに、高耐久化を図ることができるようになっている。
【0066】
図5(a)、
図5(b)は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のエンコーダディスクの構成を示す斜視図である。
【0067】
図5(a)は、エンコーダディスク103aを溝穴タイプとしたものを示す図である。
図5(a)において、エンコーダディスク103aは、金属板にエッチング加工等により周方向(回転方向)に等間隔にスリット形状の穴103cを開けたものから構成されており、このようにエンコーダディスク103aがスリット形状を有することにより、このスリット形状の穴103cの有無により、フォトセンサ103bの受光素子が信号の有無を検知し、パルス検知をするようになっている。
【0068】
図5(b)は、エンコーダディスク103aをフォトエッチングタイプとしたものを示す図である。
図5(b)において、エンコーダディスク103aは、フィルム上に黒インクでスリット103dを印刷したものから構成されており、この黒インクの有無により、フォトセンサ103bの受光素子が信号の有無又は光量の差異を検知し、パルス検知をするようになっている。
図5(b)に示すエンコーダディスク103aでは、黒インクを用いているが、光量の差異(有無を含む。)が検知できれば、黒インクでなくても構わない。
【0069】
次に、位置・速度追従制御器130の詳細な構成について、
図6を参照して説明する。
【0070】
図6に示すように、位置・速度追従制御器130はPID制御器140を備え、PID制御を行うものである。PID制御は、P:Proportional(比例)、I:Integral(積分)、D:Derivative(微分)の3つの組み合わせで制御するものであり、目標値と現在値の偏差に応じ、複数のパラメータを最適化することにより制御を行うものである。なお、モータを対象としたPID制御には、モータ位置の偏差又は回転速度の偏差を対象として処理するものがあるが、以下の説明ではモータ位置の偏差についてPID制御を行うものを例に挙げる。
【0071】
位置・速度追従制御器130は、PID制御器140に加えて、減算器131、加算器132、PWM回路133、ゲイン設定部134、ゲイン設定指示部135を備えている。なお、PID制御器140は、本発明に係る制御器及び比例積分微分制御器を構成する。
【0072】
減算器131は、目標位置Xtを示す目標位置信号から検出位置xを示す検出位置信号を減算し、両者の位置誤差Xeを示す位置誤差信号をPID制御器140に出力するようになっている。ここで、検出位置信号は、モータ位置・速度計算回路122が有する位置演算部122aから出力される。なお、減算器131は、本発明に係る位置偏差検出手段を構成する。
【0073】
PID制御器140は、比例演算部141、積分演算部142、微分演算部143を備えている。
【0074】
比例演算部141は、位置誤差Xeに比例ゲインGpを乗算して比例演算値を求めるようになっている。積分演算部142は、位置誤差Xeに積分ゲインGiを乗算し、乗算した値を時間的に積算して積分演算値を求めるようになっている。微分演算部143は、位置誤差Xeに微分ゲインGdを乗算し、乗算した値を時間的に微分して微分演算値を求めるようになっている。
【0075】
加算器132は、比例演算値、積分演算値、微分演算値を加算した加算値(PID演算結果)をPWM回路133に出力するようになっている。ここで、加算器132が出力する加算値は、PWM信号のデューティ比を示すデューティ信号としてPWM回路133に出力される。
【0076】
PWM回路133は、加算器132が出力するデューティ信号に基づいて指令信号を生成し、ドライバ回路115に出力するようになっている。
【0077】
ドライバ回路115は、PWM回路133からの指令信号に基づいてDCモータ101の駆動を制御するようになっている。このドライバ回路115は、例えば複数個のトランジスタを備えており、PWM回路133からの指令信号に基づいて、トランジスタをオン、オフさせることでパルス信号を生成し、DCモータ101に電力を供給するようになっている。
【0078】
また、ドライバ回路115は、DCモータ101が定常状態からスルーダウン制御されて、ホールド制御されているホールド状態に変移する際にパルス信号の出力を停止するが、その際にパルス信号の出力停止を示すパルス信号出力停止信号をゲイン設定指示部135に出力するようになっている。
【0079】
ゲイン設定部134は、ゲイン設定指示部135の指示に基づいて、PID制御器140の比例ゲインGp、積分ゲインGi及び微分ゲインGdを設定するものである。本実施形態では、ゲイン設定部134は、2通りのゲインを設定するものとする。すなわち、ゲイン設定部134は、定常状態、スルーダウン制御及びスルーアップ制御時に用いる各ゲイン(以下「駆動時ゲイン」という。)と、ホールド状態に用いるゲイン(以下「ホールド時ゲイン」という。)とを図示しないメモリに予め記憶しており、ゲイン設定指示部135の指示に基づいて設定するようになっている。駆動時ゲイン及びホールド時ゲインは、ともに実験により予め定められたゲインである。駆動時ゲインは、定常状態、スルーダウン制御及びスルーアップ制御時において、駆動目標シーケンスに従う最適な値を求めて定められたゲインである。ホールド時ゲインは、ホールド状態における位置偏差を制御上キャンセルする(ゼロにする)ゲインである。なお、ホールド時ゲインの値及び駆動時ゲインの値は、それぞれ、本発明に係る第1の値及び第2の値に対応する。
【0080】
ゲイン設定指示部135は、減算器131が出力する位置誤差信号と、ドライバ回路115が出力するパルス信号出力停止信号とに基づいて、ゲイン設定部134にPID制御器140の各ゲインの設定を行わせるようになっている。
【0081】
具体的には、ゲイン設定指示部135は、
図7(a)〜(c)に示す3通りの手法のいずれか1つにより、ゲイン設定部134に各ゲインの設定を行わせる。
図7(a)〜(c)は、各ゲインの設定説明図であって、DCモータ101の駆動目標シーケンスと実際の挙動とを示している。
【0082】
図7(a)〜(c)に示すように、ゲイン設定指示部135は、DCモータ101が定常状態からスルーダウン制御されてホールド状態に変移するまでは、ゲイン設定部134に駆動時ゲインを設定させるが、ホールド状態での動作が互いに異なる。
【0083】
まず、
図7(a)は、ゲイン設定指示部135が、DCモータ101がホールド状態になった時刻から一定時間経過後に、ゲイン設定部134にホールド時ゲインを設定させる手法を示している。
【0084】
次に、
図7(b)は、ゲイン設定指示部135が、DCモータ101がホールド状態になった時刻以降において、位置偏差が予め定められた閾値以下になった時刻から、ゲイン設定部134にホールド時ゲインを設定させる。
【0085】
次に、
図7(c)は、ゲイン設定指示部135が、DCモータ101がホールド状態になった時刻以降において、位置偏差が予め定められた閾値以下、かつ、一定時間経過後に、ゲイン設定部134にホールド時ゲインを設定させる。
【0086】
また、ゲイン設定指示部135は、ホールド時ゲインの設定後、減算器131が出力する位置誤差信号に基づいて、位置偏差が予め定められた閾値以上になったとき、スルーアップ制御が開始されたと判断するようになっている。この閾値は、ホールド状態において、例えば外乱によってDCモータ101が動く場合があるため定めるものであり、予め実験等を行って決定する。具体的には、ホールド状態において、例えば、外乱により±1パルス以内の位置偏差が生じる場合には、上記閾値を±2パルスとすることができる。
【0087】
さらに、ゲイン設定指示部135は、スルーアップ制御が開始されたと判断した場合、ゲイン設定部134に駆動時ゲインを設定させるようになっている。その結果、
図8に示すように、スルーアップ制御の開始時以降における駆動が駆動目標シーケンスに追従することとなる。
【0088】
次に、本実施形態における駆動装置150の動作について
図9を参照して説明する。
【0089】
ゲイン設定指示部135は、ゲイン設定部134に、駆動時ゲインに設定させ(ステップS11)、位置・速度追従制御器130は、駆動時ゲインに設定されたPID制御器140により、定常状態の制御を行い(ステップS12)、駆動目標シーケンスに従ってスルーダウン制御を行う(ステップS13)。
【0090】
ゲイン設定指示部135は、ドライバ回路115からのパルス信号出力停止信号に基づいて、ホールド状態になったか否かを判断する(ステップS14)。
【0091】
ステップS14において、ゲイン設定指示部135は、ドライバ回路115からパルス信号出力停止信号を受信しない場合はホールド状態ではないと判断する。この場合、位置・速度追従制御器130は、ステップS13に戻り、スルーダウン制御を継続する。
【0092】
一方、ステップS14において、ゲイン設定指示部135は、ドライバ回路115からパルス信号出力停止信号を受信した場合はホールド状態になったと判断し、ステップS15に進む。
【0093】
ステップS15では、ゲイン設定指示部135は、減算器131が出力する位置偏差が予め定められた±eパルス数相当以下(位置偏差≦|e|パルス)であり、かつ、その位置偏差がホールド状態になったホールド時から予め定められたt時間継続したか否かを判断する。この判断条件を満たさない場合は、ステップS15を繰り返す。
【0094】
ステップS15の判断条件を満たす場合は、ゲイン設定指示部135は、ゲイン設定部134に、位置偏差をキャンセルするために予め実験により取得されたホールド時ゲインを設定させる(ステップS16)。例えば、ゲイン設定部134は、比例ゲインGp=1/2、積分ゲインGi=1/4、微分ゲインGd=1/2に設定する。その結果、ホールド状態での位置偏差が制御上ゼロとなり、位置偏差を解消しようとする動作がなくなってモータ振れが抑制されることとなる。
【0095】
続いて、ゲイン設定指示部135は、スルーアップ制御の開始を検出するため、減算器131が出力する位置偏差が予め定められた±fパルス数相当以上(位置偏差≧|f|パルス)であるか否かを判断する(ステップS17)。この判断条件を満たさない場合は、ステップS17を繰り返す。
【0096】
ステップS17の判断条件を満たす場合は、ゲイン設定指示部135は、ゲイン設定部134に、駆動時ゲインを設定させる(ステップS18)。すなわち、ゲイン設定部134は、スルーアップ制御の開始時に、比例ゲインGp、積分ゲインGi及び微分ゲインGdを、ホールド状態前の各値に戻す。
【0097】
位置・速度追従制御器130は、駆動目標シーケンスに従ってスルーアップ制御を行い(ステップS19)、続いて定常状態の制御を行う(ステップS20)。
【0098】
以上のように、本実施形態における駆動装置150は、ゲイン設定部134が、ホールド状態においてホールド時ゲインに設定して位置偏差を解消し、スルーアップ制御の開始時に駆動時ゲインに戻す構成としたので、ホールド制御時に発生するモータ振れを従来のものよりも短時間で抑制するとともに、スルーアップ制御の開始時以降における駆動を駆動目標シーケンスに追従させることができ、画像品質の向上を図ることができる。
【0099】
なお、前述の実施形態では、ゲイン設定指示部135が、ホールド時ゲインの設定後、減算器131が出力する位置誤差信号に基づいてスルーアップ制御の開始時を判断する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドライバ回路115からスルーアップ制御の開始を示すスルーアップ開始信号をゲイン設定指示部135が入力する構成とし、ゲイン設定指示部135が、スルーアップ開始信号を入力したとき、スルーアップ制御が開始されたと判断して各ゲインをホールド状態前の各値に戻すようにしてもよい。
【0100】
次に、位置・速度追従制御器130(
図6参照)に代わる位置・速度追従制御器160について、
図10を参照して説明する。なお、位置・速度追従制御器130と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図10に示すように、位置・速度追従制御器160は、P制御器170、PI制御器180、減算器131及び161、加算器162、PWM回路133、ゲイン設定部134、ゲイン設定指示部135を備えている。
【0102】
P制御器170は、比例演算部171を備えている。PI制御器180は、比例演算部181、積分演算部182を備えている。なお、P制御器170は、本発明に係る制御器及び比例制御器を構成する。また、PI制御器180は、本発明に係る制御器及び比例積分制御器を構成する。
【0103】
モータ位置・速度計算回路122は、エンコーダ103の出力信号に基づいて、モータ位置を演算する位置演算部122aと、モータ速度を演算する速度演算部122bと、を備えている。
【0104】
減算器131は、位置演算部122aが演算して求めた検出位置xと、目標位置Xtとを比較してその差分である位置誤差Xeを求め、P制御器170に出力するようになっている。
【0105】
P制御器170は、位置誤差Xeを増幅して回転速度の目標速度Vtとして減算器161に出力するようになっている。
【0106】
減算器161は、速度演算部122bが演算により求めた検出速度vと、目標速度Vtとを比較してその差分である速度誤差Veを求め、PI制御器180に出力するようになっている。
【0107】
PI制御器180において、比例演算部181は、速度誤差Veに比例ゲインGpを乗算して比例演算値を求めるようになっている。積分演算部182は、速度誤差Veに積分ゲインGiを乗算し、乗算した値を時間的に積算して積分演算値を求めるようになっている。
【0108】
加算器162は、比例演算値と積分演算値を加算した加算値(PI演算結果)をPWM回路133に出力するようになっている。ここで、加算器162が出力する加算値は、PWM信号のデューティ比を示すデューティ信号としてPWM回路133に出力される。
【0109】
位置・速度追従制御器160は、前述のように、P制御器170とPI制御器180とが組み合わせて構成されているので、ゲイン設定部134が、ホールド制御時に比例ゲインGp及び積分ゲインGiを予め求めた値に設定することができる。
【0110】
したがって、位置・速度追従制御器160を備えた駆動装置では、ゲイン設定部134が、ホールド状態においてホールド時ゲインに設定して位置偏差を解消し、スルーアップ制御の開始時に駆動時ゲインに戻すことができるので、ホールド制御時に発生するモータ振れを従来のものよりも短時間で抑制するとともに、スルーアップ制御の開始時以降における駆動を駆動目標シーケンスに追従させることができ、画像品質の向上を図ることができる。
【0111】
(第2実施形態)
まず、本発明に係る駆動装置の第2実施形態における構成について説明する。本実施形態における駆動装置は、
図11に示す位置・速度追従制御器190を備えている。
【0112】
位置・速度追従制御器190は、第1実施形態(
図6参照)に対し、位置偏差補正部191を備えた点が異なっている。したがって、第1実施形態と同様な構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0113】
図7(a)〜(c)に示したように、位置偏差を制御上キャンセルするよう各ゲインを調整しても実際には位置偏差は生じている。そこで、ゲイン設定指示部135は、実際に生じている位置偏差のデータを記憶しておき、この位置偏差のデータを位置偏差補正部191に出力するようになっている。
【0114】
位置偏差補正部191は、ゲイン設定指示部135から位置偏差のデータを取得し、PWM回路133に出力するようになっている。そして、
図12に示すように、PWM回路133において、ホールド状態の終了時、すなわち、スルーアップ制御の開始時に位置偏差の補正(フィードフォワード制御)がされるようになっている。
【0115】
次に、本実施形態における駆動装置の動作について
図13を参照して説明する。
【0116】
図13に示すように、本実施形態での動作のステップは、第1実施形態における動作のステップ(
図9参照)に対して、ステップS31を追加したものである。したがって、第1実施形態と同様なステップには同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0117】
ステップS18において駆動ゲインを設定した後、ステップS31において、位置偏差補正部191は、ゲイン設定指示部135から位置偏差のデータを取得してPWM回路133に出力し、PWM回路133がスルーアップ制御の開始時に位置偏差の補正を行う。
【0118】
以上のように、本実施形態における駆動装置は、PWM回路133がスルーアップ制御の開始時に位置偏差の補正を行う構成としたので、第1実施形態よりもさらに、スルーアップ制御の開始時以降における駆動を駆動目標シーケンスに追従させることができ、画像品質の向上を図ることができる。