特許第6028574号(P6028574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028574形状測定装置及び構造物製造システム並びに構造物製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028574
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】形状測定装置及び構造物製造システム並びに構造物製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G01B11/24 B
   G01B11/24 K
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-2081(P2013-2081)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-134437(P2014-134437A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】竹下 孝樹
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−223710(JP,A)
【文献】 特開2009−139176(JP,A)
【文献】 特開2001−147115(JP,A)
【文献】 特開平09−089788(JP,A)
【文献】 実開平06−046310(JP,U)
【文献】 特開2004−233131(JP,A)
【文献】 特開昭63−236915(JP,A)
【文献】 特開2012−093235(JP,A)
【文献】 米国特許第5895927(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01B 21/00 − 21/32
G01N 21/84 − 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔の表面の形状を測定するための形状測定装置であって、
前記孔の表面に光を照射し、前記孔の表面で反射する光を検出する撮像素子を含む形状取得部と、
前記形状取得部で検出する信号を用い、前記孔の表面の形状を算出する演算部と、
前記孔の表面との接触に伴い、前記形状取得部の光路に挿入するように配置される接触検出部とを備える形状測定装置。
【請求項2】
前記接触に伴い、前記接触検出部は、前記形状取得部と前記孔の表面との間の光路に配置される請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記形状取得部は、
前記撮像素子の撮像面に前記孔の表面で反射する光を導入する光学部材を有する光学系と、
前記光学部材を収容する鏡筒と、をさらに備え、
前記鏡筒と前記接触検出部との間の相対位置の違いに応じて、前記形状取得部と前記孔の表面との間の光路に前記接触検出部が挿入される距離が変化する請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記接触検出部が挿入される距離を用いて、前記孔の表面との接触に伴う前記接触検出部に作用する力を算出する応力算出部を備える請求項3に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記光学系のうち、前記撮像素子に導入する光路に沿った、前記孔の表面に前記光を入射させる先端光学部材と前記孔の表面との間の光路に、前記接触に伴い前記接触検出部が配置される請求項4に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記形状取得部は、前記孔の表面に照射する照明光学系をさらに備える請求項5に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記先端光学部材は、前記孔の表面に照射される光を導入するとともに、前記孔の表面で反射する光を前記撮像素子に導入する請求項6に記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記接触検出部は、前記孔の表面に照射する光を反射する反射部を含み、
前記形状取得部と前記撮像素子との間に前記反射部が挿入され、前記反射部からの反射光を前記撮像素子で撮像する請求項1〜7のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項9】
前記接触検出部は、円周方向に前記孔の表面に照射する光の透過率が異なる請求項1〜8のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項10】
前記接触検出部は、前記挿入される距離に応じて前記孔の表面に照射する光の透過率が異なる請求項1〜9のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項11】
前記形状取得部と前記接触検出部とを移動させる移動装置と、
前記接触検出部と前記孔の表面との接触を検出するまでの、前記形状取得部と前記接触検出部との移動経路を記憶する記憶装置とを備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項12】
構造物の形状に関する設計情報に基づいて前記構造物を成形する成形装置と、
前記成形装置によって成形された前記構造物の形状を測定する請求項1〜11のいずれか一項に記載の形状測定装置と、
前記形状測定装置によって測定された前記構造物の形状を示す形状情報と前記設計情報とを比較する制御装置と、を備える構造物製造システム。
【請求項13】
構造物の形状に関する設計情報に基づいて、前記構造物を成形することと、
前記成形された前記構造物の形状を請求項1〜11のいずれか一項に記載の形状測定装置によって測定することと、
前記形状測定装置によって測定された前記構造物の形状を示す形状情報と前記設計情報とを比較することと、を含む構造物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置及び構造物製造システム並びに構造物製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
孔や溝等の凹部の表面形状を非接触で測定可能な測定装置が知られている(例えば、特許文献1に記載してある)。これらの測定装置は、例えば、孔の深さ方向に光を送る送光部と、孔の深さ方向と略直交する方向に光の方向を変換する変換部と、変換部で方向が変化した光のうち孔の内側表面で反射した光を検出する検出部とを備える。これらの測定装置は、例えば、検出部で検出された孔の内側表面の像に基づいて、孔の表面形状を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5895927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
底部を有する凹部を測定する場合には、プローブ等の測定子を凹部に挿入した際に、測定子の一部が底部に衝突する可能性がある。また、底部に限らず、凹部の側壁に測定子の一部が衝突する可能性もある。これらの衝突は、測定精度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、凹部の内側表面形状の情報に関する測定精度の低下を抑制できる形状測定装置及び構造物製造システム並びに構造物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、孔の表面の形状を測定するための形状測定装置であって、孔の表面に光を照射し、孔の表面で反射する光を検出する撮像素子を含む形状取得部と、形状取得部で検出する信号を用い、孔の表面の形状を算出する演算部と、孔の表面との接触に伴い、形状取得部の光路に挿入するように配置される接触検出部とを備える形状測定装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、構造物の形状に関する設計情報に基づいて構造物を成形する成形装置と、成形装置によって成形された構造物の形状を測定する第1の態様の形状測定装置と、形状測定装置によって測定された構造物の形状を示す形状情報と設計情報とを比較する制御装置と、を備える構造物製造システムが提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、構造物の形状に関する設計情報に基づいて、構造物を成形することと、成形された構造物の形状を第1の態様の形状測定装置によって測定することと、形状測定装置によって測定された構造物の形状を示す形状情報と設計情報とを比較することと、を含む構造物製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、凹部の内側表面形状の情報に関する測定精度の低下を抑制でき、形状測定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る形状測定装置1Aの外観を示す図。
図2】同形状測定装置1Aの概略構成を示す図。
図3】同形状測定装置1Aの動作を示す図。
図4】撮像画像の例を示す概念図である。
図5】検出部40が遮光位置となる場合のフローチャート。
図6】検出部40の他の形態を示す図。
図7】検出部40の他の形態を示す図。
図8】第2実施形態に係る形状測定装置を示す図。
図9】第3実施形態に係る形状測定装置を示す図。
図10】第4実施形態に係る形状測定装置を示す図。
図11】構造物製造システム200のブロック構成図。
図12】構造物製造システム200による処理の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の形状測定装置及び構造物製造システム並びに構造物製造方法の実施の形態を、図1ないし図12を参照して説明する。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。Z軸方向は、例えば鉛直方向に設定され、X軸方向及びY軸方向は、例えば、水平方向に平行で互いに直交する方向に設定される。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る形状測定装置1Aの外観を示す図である。図2は、本実施形態の形状測定装置1Aの概略構成を示す図である。形状測定装置1Aは、例えば光切断法を利用して、測定対象の物体Mの三次元的な形状を測定するものである。
【0013】
形状測定装置1Aは、移動装置2、制御部4、光学プローブ3を備える形状情報取得部(形状取得部)5を備える。形状測定装置1Aは、移動装置2が物体Mを保持し、移動装置2に保持されている物体Mを光学プローブ3が撮像する。移動装置2は、光学プローブ3による撮像範囲(視野)が物体M上を走査するように、物体Mと光学プローブ3とを相対的に移動させる。制御装置4は、形状測定装置1Aの各部を制御するとともに、光学プローブ3による撮像結果に基づいて物体Mの形状情報を取得する。
【0014】
本実施形態において、形状情報は、測定対象の物体Mの少なくとも一部に関する形状、寸法、凹凸分布、表面粗さ、及び測定対象面上の点の位置(座標)、の少なくとも1つを示す情報を含む。形状測定装置1Aは、例えば、測定対象の物体Mの孔部(孔)Maに関する形状情報を取得できる。なお、測定対象の物体Mの孔部は貫通孔でも良いし、底部を有する孔でもどちらでも構わない。
【0015】
移動装置2は、例えば測定対象の物体Mを保持可能なステージ装置である。移動装置2は、物体Mを保持する第1保持部7と、光学プローブ3を保持する第2保持部8とを備える。移動装置2においては、物体Mを保持した第1保持部7に対して、光学プローブ3を保持した第2保持部8を相対的に移動させることができる。
【0016】
本実施形態の第1保持部7は、物体Mを保持してθZ方向に回転可能である。測定対象の物体Mは、孔部Maの内側の測定時に、例えば孔部Maの開口を+Z側に向けて第1保持部7に保持される。本実施形態において、孔部が物体を貫通している場合に、孔部の深さ方向(延在方向)は、孔部の内側に沿って孔部の一方の開口と他方の開口とを結ぶ方向とする。また、孔部Maが物体Mを貫通していない場合に、孔部の深さ方向は、孔部の内側に沿って孔部の開口と底部とを結ぶ方向とする。例えば、物体Mの孔部Maの深さ方向は、物体Mが孔部Maの開口を+Z側(上方)に向けて第1保持部7に保持されている場合に、Z軸方向とほぼ平行である。
【0017】
本実施形態の第2保持部8は、第1保持部7に対して+Z側(上方)に配置されている。第2保持部8は、光学プローブ3の長手方向とZ軸方向がほぼ一致するように取り付けられている。第2保持部8は、光学プローブ3を保持してX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の各方向に移動可能である。孔部Maの測定時に、第2保持部8がZ軸方向に移動すると、光学プローブ3は、物体Mに形成された孔部Maの形成方向に対して進退移動する。移動装置2は、第2保持部8に保持されている光学プローブ3の少なくとも一部が第1保持部に保持されている物体Mの孔部Maに挿入されるように、第2保持部8を移動できる。
【0018】
移動装置2は、図2に示すように、駆動部10及び位置情報取得部11を備える。駆動部10は、電動モータ等のアクチュエータを含み、第1保持部7及び第2保持部8を駆動する。位置情報取得部11は、例えばエンコーダ等の位置計測用のセンサーを含み、光学プローブ3の位置に関する位置情報を取得する。
【0019】
本実施形態において、制御装置4は、形状測定装置1Aの各部を制御するものであり、移動装置2の駆動部10を制御する移動制御部6、位置情報取得部11が取得した位置情報を記憶する記憶装置9、演算装置(演算部)12を備えている。
例えば、制御装置4は、移動装置2の駆動部10を制御して、光学プローブ3と物体Mの相対位置を制御する。また、制御装置4は、光学プローブ3を制御して、物体M上の測定領域Ma(孔部の内面)を光学プローブ3に撮像させる。
【0020】
また、制御装置4は、測定対象の形状情報を取得するための演算装置12を備える。演算装置12は、光学プローブ3の位置情報を移動装置2の位置情報取得部11から取得し、測定領域を撮像した画像を示すデータ(撮像画像データ)を光学プローブ3から取得する。演算装置12は、光学プローブ3の位置に応じた撮像画像データから得られる物体Mの表面の位置と光学プローブ3の位置とを対応付けることによって、測定対象の三次元的な形状に関する形状情報を演算して取得する。
【0021】
本実施形態の制御装置4は、CPU等を有するコンピュータシステムと、コンピュータシステムの外部の装置との通信を実行可能なインターフェースを含む。制御装置4は、測定結果に関する画像処理、補間処理、統計処理、表示処理等の各種処理の少なくとも1つを実行できる。
【0022】
なお、制御装置4は、形状測定装置1Aの各部の制御に要する各種処理を実行するASIC等の論理回路を含んでいてもよく、コンピュータシステムを含んでいなくてもよい。制御装置4は、制御装置4へ信号を入力可能な入力装置が接続されていてもよい。この入力装置は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいはコンピュータシステムの外部の装置からのデータを入力可能な通信装置のうちの1種又は2種以上でもよい。制御装置4は、液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよいし、表示装置と接続されていてもよい。制御装置4は、形状測定装置1Aの外部の装置であってもよい。
【0023】
形状情報取得部5は、上記光学プローブ3と、制御装置4に設けられた演算装置12と、検出部(接触検出部)40とを備える。本実施形態において、光学プローブ3は、形状測定用の光学装置であって、測定対象の物体M上の測定領域Ma(本実施形態では孔部の内周面(表面))を落射照明しながら撮像する。図2に示す光学プローブ3は、光源14から出射した照明光束L1を、結像光学系19及び反射部材16を介して物体M上の測定領域に投影(照射)することで、測定領域を落射照明するものであって、照明光学系IL、結像光学系19、反射部材(先端光学部材)16、撮像部17、鏡筒25を備える。
【0024】
撮像部17(撮像装置)は、撮像素子18を備えている。撮像素子18は、例えばCCDセンサー又はCMOSセンサーで構成される。撮像素子18は、例えば、複数の画素のそれぞれに配置されて入射光を電力(電荷)に変換するフォトダイオードと、フォトダイオードで発生した電荷を読み出す読出回路とを含む。フォトダイオードは、例えば、撮像素子18の受光面18aに二次元的に配列される。
【0025】
照明光学系ILは、物体面19a(後述)に照明光束L1照射するものであって、光源14、導光部材20を備えており、光源14から出射した照明光束L1を伝播させる伝播経路15を備えている。
本実施形態において、光源14は、レーザーダイオード(固体光源)を含み、照明光束L1としてレーザー光を射出する。光源14は、例えば発光ダイオード(LED)等の固体光源を含んでいてもよいし、高圧水銀ランプ等のランプ光源を含んでいてもよい。
【0026】
導光部材20は、光源から出射した照明光束L1を結像光学系19に導くものであって、例えばハーフミラーを含み、撮像素子18と結像光学系19との間の光路に配置されている。導光部材20は、光源14から出射した照明光束L1が入射する位置に配置された面20aを有する。この面20aは、結像光学系19の光軸AX(後述)に対して傾斜している。面20aと結像光学系19の光軸AXがなす角度は、例えば45°に設定される。
【0027】
光源14から出射した照明光束L1は、導光部材20の面20aに入射し、その少なくとも一部が面20aで反射して結像光学系19に入射する。導光部材20を介して結像光学系19に入射した照明光束L1は、結像光学系19の光軸AXに沿って進行する。本実施形態において、伝播経路15は、結像光学系19における照明光束L1の光路を含む。すなわち、結像光学系19の光軸AXは、伝播経路15上に設定されている。
【0028】
結像光学系19は、撮像素子18の受光面18a(像面)と共役な物体面19aを形成する。本実施形態において、物体面19aは、光学プローブ3の進退方向(Z軸方向)にほぼ直交する平面を含む。物体面19a上の各点から出射した光束(以下、結像光束L2という)は、撮像素子18の受光面18a上の各点に収斂する。
【0029】
本実施形態の結像光学系19は、屈折系の光学系であり、複数の光学部材(レンズ)を含む。結像光学系19の光学部材の少なくとも1つは、軸対称な光学部材であり、ここでは、この光学部材の対称軸(中心軸)を結像光学系19の光軸AXという。なお、結像光学系19は、反射系の光学系又は反射屈折系の光学系のいずれでもよい。
【0030】
反射部材16は、例えば、光軸AX周りに反射面16aが形成された円錐状のプリズムミラーで形成されており、結像光学系19を通った照明光束L1が入射する位置に反射面16aが配置されている。反射面16aとしては、例えば、蒸着法などで形成された反射膜で構成される。なお、反射部材16に、結像光学系19の光路が形成されていても構わない。
【0031】
上記撮像素子18、結像光学系19、反射部材16及び導光部材20は、鏡筒25に保持される。鏡筒25は、結像光学系19の光軸AXと平行な方向(Z軸方向)が長手方向であり、光軸AXと直交する方向(XY方向)が短手方向である。鏡筒25は、伝播経路15を囲むように設けられており、少なくとも伝播経路15の周囲の部分が結像光学系19の光軸AXに関して軸対称な円筒状である。
【0032】
鏡筒25は、物体面19aを含む領域、反射部材16(反射面16a)で反射して測定領域Maに向かう照明光束L1の光路、及び物体面19a上の各点から出射して結像光学系19に向かう結像光束L2の光路に位置する範囲については、照明光束L1及び結像光束L2が通過(透過)可能な通過部25bとなっており、他の範囲については照明光束L1及び結像光束L2を遮光する遮光部25cとなり、迷光による悪影響を抑制できる構成となっている。
【0033】
検出部40は、形状情報取得部5(光学プローブ3)と測定領域Ma(物体M)との接触を検出するものであって、筒部材41、支持部材42を備えている。筒部材41は、照明光束L1を反射する材料で形成されており、光軸AX周りに形成されて筒部43と底部44とを備えている。筒部43は、鏡筒25の外周面との間に隙間が形成され、且つ測定領域Maとの間にも隙間が形成される径で形成されている。底部44は、筒部43の−Z側の端部(下端部)を閉塞するように配設されている。底部44の−Z側の面(下面)には、物体Mとの接触時の衝撃を緩和するために、ゴム等の弾性材で半球状に形成された突部45が光軸AX上に設けられている。なお、本実施形態においては、突部45は一つであるが、複数設けても構わない。また、突部45を設けずに、底部44が突部45の機能を備えていても構わない。
【0034】
支持部材42は、鏡筒25に対して筒部材41を同軸で、Z軸方向に移動可能に吊下して支持させるものであって、本実施形態では、コイルバネ等の弾性体により形成されている。支持部材42の長さは、鏡筒25から吊下された筒部材41が物体Mと非接触のときは、図2に示すように、筒部43が物体面19aから−Z側に離間して、測定領域Maに向かう照明光束L1を遮光しない位置(以下、非遮光位置と称する)となり、鏡筒25から吊下された筒部材41が物体Mの底部と接触したときは、図3に示すように、筒部43が照明光束L1の光路おいて物体面19aと測定領域Maとの間に挿入され、測定領域Maに向かう照明光束L1を遮光する位置(以下、遮光位置と称する)となる長さに設定される。
【0035】
次に、上記構成の形状測定装置1Aにより、物体Mにおける測定領域Maの形状を測定する動作について、図4を参照して説明する。図4は、撮像素子18により撮像された撮像画像の例を示す概念図である。
【0036】
まず、検出部40が非遮光位置の場合(図2参照)について説明する。
物体Mの孔部に光学プローブ3を挿入した後に、光源14から出射し導光部材20の面20aで反射した照明光束L1は、結像光学系19に入射する。結像光学系19から出射し反射部材16の反射面16aで反射した照明光束L1は、物体面19aに沿って伝播し、測定領域Maで反射散乱する。測定領域Maで反射散乱した結像光束L2は、鏡筒25の通過部25bを通って結像光学系19に入射する。結像光学系19に入射した結像光束L2は、その少なくとも一部が導光部材20(ハーフミラー)を通って撮像素子18の受光面18aに入射する。
【0037】
ここで、受光面18aと物体面19aとが光学的に共役であるので、物体面19aと物体Mの測定領域Maである表面との交線26の像は、受光面18a上でピントが合うことになる。そのため、物体面19aと物体Mの表面との交線26は、図4に示す撮像画像Imにおいて輝線27になる。輝線27上の各点は、交線26上のいずれかの点と1対1で対応し、例えば、交線26が円環状である場合に、輝線27は円環状になる。図2に示した演算装置12は、図4に示したような撮像画像Imにおける輝線27上の各点の位置情報を演算することで、各点に対応する物体M上の点の位置情報を算出する。
【0038】
演算装置12は、上述のように撮像画像Imの輝線27上の各点の位置情報を算出することで、物体Mの表面のうち物体面19aと交差する部分(図2に示した交線26)の位置情報を演算する。また、演算装置12は、光学プローブ3がZ方向に位置を変えながら撮像した複数の撮像画像のそれぞれについても同様に、光学プローブ3のZ方向の位置(以下、Z位置と称する)に応じた測定領域Maにおける物体Mの表面の位置情報を算出する。演算装置12は、光学プローブ3の位置と、この位置で撮像された撮像画像に基づいて算出された物体Mの位置情報とを対応させることで、物体Mの三次元的な形状を示す形状情報を取得する。
なお、演算装置12は、形状測定装置1Aと別に配置されていても構わない。この場合に、演算装置12は形状測定装置1Aに配置されるPCなどの演算装置でも構わない。また、演算装置12は、形状装置1Aと一体で配置されていても構わない。例えば、演算装置12と光学プローブ3とが一体で配置されても構わない。
なお、演算装置12は、撮像画像Imにおける輝線27の各点の位置情報を演算することとなっているが、演算の対象となるのは撮像画像Imだけに限られない。例えば、撮像素子18で撮像され、検出される信号のうち一部を用いても構わない。この場合に、撮像素子18のうち、輝線27のみに関する情報のみを抽出し、それとは他の輝線27の周囲の情報は抽出せずに、抽出した情報のみとを使い、演算装置12は物体Mの位置情報を算出しても構わない。
【0039】
次に、検出部40が遮光位置となる場合(図3参照)について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。上述したように、光学プローブ3を孔部に挿入し所定のZ位置にて、被検面である測定領域Maを撮像し(ステップS101)、表面位置情報を取得した(ステップS102)後に、光学プローブ3を所定量−Z側に移動させることを順次繰り返して実行するが、各撮像位置の情報(X位置、Y位置、Z位置)は、記憶装置9に記憶される。
【0040】
そして、光学プローブ3を−Z側に下降させた際に、検出部40が物体Mと接触すると、図3に示すように、筒部材41の下降は停止する一方で、鏡筒25は下降するため、鏡筒25に対して筒部材41が支持部材42の弾性復元力に抗して+Z側に相対移動し、筒部43が照明光束L1の光路おいて物体面19a(反射部材16)と測定領域Maとの間に挿入され、測定領域Maに向かう照明光束L1を遮光する位置となる。
【0041】
このとき、反射部材16の反射面16aで反射して測定領域Maに向かう照明光束L1は、物体面19aに沿って伝播し、筒部43の内周面で反射散乱する。筒部43の内周面で反射散乱した結像光束L2は、鏡筒25の通過部25bを通って結像光学系19に入射する。結像光学系19に入射した結像光束L2は、その少なくとも一部が導光部材20(ハーフミラー)を通って撮像素子18の受光面18aに入射する。
【0042】
この場合、物体面19aと筒部43の内周面との交線26’の像は、受光面18a上でピントが合うことになるが、撮像画像Imにおいては、筒部43の内周面の径に対応して、物体Mの表面の場合の径よりも小径の輝線27’となる。
従って、演算装置12が撮像画像Imの輝線27’上の各点の位置情報を演算して、輝線27よりも小径に変化した結果が得られると、演算装置12は筒部材41と物体Mとの接触を検出し(ステップS103)、警告信号を出力する。警告信号としては、例えば、音声を用いることができる。これにより、撮像画像を観察しなくても、筒部材41と物体Mとの接触を検出することができる。
【0043】
また、演算装置12は、筒部材41と物体Mとの接触を検出すると、記憶装置9に記憶されている各撮像位置の情報から、接触までの移動経路を求め、当該移動経路に基づいて、経路生成部として退避経路を生成し(ステップS104)、記憶装置9に記憶させる。そして、移動装置2が、記憶された退避経路に基づいて光学プローブ3を物体Mの孔部から退避させる(ステップS105)。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、検出部40と物体の物体Mの物体面Maとの接触を検出する検出部40を設けた。また、本実施形態においては、光学プローブ3と物体面Maとが接触するよりも前に、検出部40と物体面Maとが接触する。したがって、検出部40と物体面Maとの接触を検出することで、光学プローブ3と物体Maとが接触することを抑制することができる。したがって、光学プローブ3と物体Maとが接触することによる、光学プローブ3の破損を抑制することができる。また本実施形態では、検出部40と物体面Maとの接触を、鏡筒25に対してZ方向に移動可能に支持された筒部材41が照明光束を遮光したことを、撮像素子18の撮像結果に基づいて、検出する。なお、Z軸方向に光学プローブ3が移動する場合に、移動方向の物体Mに近い部分に検出部40の突部45を設けたので、移動する場合に検出部40の突部45が最初に物体面Maと接触する。また、本実施形態では、突部45は物体Mの物体面Maよりも弾性の弾性材で形成されているので、突部45の接触による物体Mへの損傷を抑制することができる。なお、本実施形態においては、検出部40と物体面Maとが接触することで、光学プローブの光路が変化することにより、光学プローブの撮像結果が変化する。したがって、検出部40の接触により、光学プローブの撮像結果が変化するので、検出部40と物体面Maとの接触を直接検出する必要がない。したがって、検出部40のみで物体面Maとの接触を検出する機構を設ける必要がない。したがって、本実施形態における、検出部40の接触を検出する機構のための配線を設ける必要がない。
【0045】
さらに、本実施形態では、演算装置12は光学プローブ3の移動経路を記憶することができる。したがって、物体Mの測定時の記憶された移動経路に基づいて、物体Mから光学プローブ3を退避する場合の退避経路を算出することができる。これにより、退避経路を算出することが可能である。また、例えば、測定時に光学プローブ3と物体Mとが接触したとしても、記憶された移動経路から、物体Mとの接触を抑制するような移動経路を算出することができる。また、例えば、物体Mの測定時に記憶された移動経路を、記憶する際に測定した物体Mとは異なる物体Mに用いても構わない。例えば、物体Mは量産品などの同一形状の物体Mを複数個測定する場合である。
【0046】
なお、上記実施形態では、物体Mとの接触時に検出部40の筒部材41が照明光束L1を全周に亘って遮光する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、図6(A)、(B)に示すように、筒部材41における筒部43の+Z側の面に、径方向に延びる溝部43aを光軸AX周りに間隔をあけて複数(図6では4つ)設ける構成とし、図6(B)に示すように、筒部材41が物体Mに接触してZ方向に相対移動した際に、溝部43aを通った照明光束L1は遮光されずに測定領域Maに到達可能で、他の照明光束L1は筒部材41で反射する構成としてもよい。
【0047】
この構成では、図6(C)に示すように、撮像画像Imにおいて、物体Mの表面に対応する輝線27と、筒部43の内周面に対応する輝線27’とは、溝部43aに応じて、光軸AX周りに交互に配置される。そのため、この構成では、互いに径の異なる輝線27、27’が同一の画像内に存在することになるため、例えば、輝線27、27’の径差が小さい場合でも、確実に画像の変化を検出して検出部40と物体Mとの接触を検出することが可能となる。
【0048】
また、検出部40と物体Mとの接触時に、照明光束L1の遮光・非遮光によって撮像素子18の撮像画像に変化を生じさせる構成の他に、照明光束L1に対する検出部40の透過率の差によって撮像画像に変化を生じさせる構成とすることも可能である。
具体的には、図7(A)、(B)に示すように、筒部材41における筒部43を、透過率約100%で照明光束L1を透過させる透過部43bと、透過率約50%で照明光束L1を透過させる透過部43cとが光軸AX周りに、例えば90°間隔で配置される構成とする。
【0049】
この構成では、照明光束L1は、検出部40と物体Mとの接触時及び非接触時のいずれの場合も筒部43を透過するため、物体面19aと物体Mの表面との交線26は、図7(C)に示すように、撮像画像Imにおいて連続する輝線になる。そして、図7(B)に示すように、検出部40と物体Mとが接触した場合、透過部43cを透過した照明光束L1は光量が低下するため、撮像画像Imにおいては、透過部43bに対応し大きな強度の輝線27と、透過部43cに対応し小さな強度の輝線27’とが連続したものとなる。そのため、この構成では、互いに強度の異なる輝線27、27’が同一の画像内に存在することになるため、例えば、輝線27、27’の径差が小さい場合でも、確実に画像の変化を検出して検出部40と物体Mとの接触を検出することが可能となる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、形状測定装置1Aの第2実施形態について、図8を参照して説明する。
この図において、図1乃至図7に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
本実施形態の形状測定装置1Aにおいては、図8(A)、(B)に示すように、筒部材41における筒部43の+Z側の面に、溝部43dが設けられている。溝部43dは、+Z側に向かうに従って、光軸AX周りの幅が漸次大きくなる、正面視V字状に形成されている。より詳細には、溝部43dを形成する図中、+X側の面は光軸AX方向に延在して形成されている。また、図中、−X側の面は、光軸AXに対して傾斜して形成されている。
【0052】
上記構成の形状測定装置1Aにおいては、図6(B)に示すように、筒部材41が物体Mに接触してZ方向に相対移動した際に、溝部43dを通った照明光束L1は遮光されずに測定領域Maに到達し、他の照明光束L1は筒部43で反射散乱する。そして、図8(C)に示すように、撮像画像Imにおいては、物体Mの表面に対応する輝線27と、筒部43の内周面に対応する輝線27’とが、物体Mの表面及び筒部43の内周面に応じた径で撮像される。このとき、輝線27の周長は、溝部43dと物体面19aとのZ方向の相対位置に応じて変化する。すなわち、照明光束L1は、物体面19aのZ位置における溝部43dの幅(光軸AX周り方向の長さ)に対応した光軸AX周り方向の角度で測定領域Maに到達し、撮像素子18に入射して撮像されるため、輝線27の周長(光軸AX周り方向の角度)は、溝部43dと物体面19aとのZ方向の相対位置に応じたものとなる。筒部材41が物体Mに接触していないときの溝部43dと物体面19aの相対位置、及び溝部43dの幅の変化量は既知であるため、例えば輝線27の角度を演算して求めることにより、溝部43dに対する物体面19aの相対位置が得られ、結果として、Z方向について、筒部材41が物体Mに接触した位置を検出することが可能となる。
【0053】
本実施形態においては、筒部材41と光学プローブ3とのZ方向の相対位置を見積もることができる。また、検出部40の接触により、物体面Maの位置を見積もることができる。特に、物体面Mの底面までの距離を見積もることができる。
また、本実施形態では、筒部材41と物体Mとが非接触であった位置から、接触を検出した位置までの支持部材42(図2参照)の変形量と、当該支持部材42のバネ定数とに基づいて、例えば、応力算出部としての演算装置12が、支持部材42の弾性復元力として光学プローブ3及び筒部材41に加わる荷重(応力)を求めることも可能になる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、形状測定装置1Aの第3実施形態について、図9を参照して説明する。
この図において、図1乃至図7に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記の実施形態では、物体Mにおける孔部の底部に検出部40が接触する場合について説明したが、本実施形態では、孔部の側面に検出部40が接触する場合について説明する。
【0055】
本実施形態における筒部43には、図9(A)に示すように、物体面19aを含む位置に突出する突部43e、43fが光軸AX周りに、例えば90°の位置関係で設けられている。
【0056】
本実施形態の形状測定装置1Aでは、図9(A)に示すように、筒部43が物体Mの側壁に非接触であれば、突部43e、43fに遮光されずに測定領域Maに照射された照明光束L1は、図9(C)に示すように、撮像画像Imにおいて、突部43e、43f以外の範囲に亘る輝線27となる。また、突部43e、43fで照明光束L1が散乱反射した範囲については、筒部43の内周面の径に応じた輝線27aとなる。一方、図9(B)に示すように、光軸AXと物体Mの孔部の軸線とが偏心しており、物体Mの側壁(測定領域Ma)と筒部43の外周面とが接触する場合には、物体Mの側壁と筒部43(突部43e、43f)との距離が近くなるため、撮像画像Imにおいては突部43e、43fで照明光束L1が散乱反射した範囲については、外径側に移動した輝線27’となる。
【0057】
従って、本実施形態では、突部43e、43fで照明光束L1が散乱反射した範囲について、輝線27aから輝線27’に径(位置)が変化したことを検出することにより、物体Mの側壁に検出部40が接触したことを検出することが可能となる。従って、本実施形態においては、物体Mにおける孔部の底部だけでなく、側面の接触を検出することが可能となる。
従って、本実施形態では、物体Mにおける孔部の底部がある孔部であるが物体Mにおける孔部の底部がない貫通孔でも構わない。
【0058】
(第4実施形態)
次に、形状測定装置1Aの第4実施形態について、図10を参照して説明する。
この図において、図1乃至図7に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記の実施形態では、物体Mにおける孔部の底部に検出部40が接触する場合について説明したが、本実施形態では、鏡筒25が接触する場合について説明する。
【0059】
本実施形態では、鏡筒25は、鏡筒本体25Aと、支持部材42を介して鏡筒本体25AにZ方向に相対移動自在に吊設された検出部25Bとから構成されている。検出部25Bの+Z側の面には結像光学系19と対向させて反射部材16が設けられている。また、検出部25Bの−Z側の面には突部45が設けられている。
【0060】
鏡筒本体25Aには、検出部25Bよりも外周側に光軸AX周りに筒部43が設けられている。筒部43の先端部の位置は、検出部25Bが物体Mと非接触で鏡筒本体25Aから吊下されたときに、物体面19aよりも微少量+Z側に離間する位置に設定されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
上記構成の形状測定装置1Aでは、検出部25Bが物体Mと非接触であれば、照明光束L1は筒部43に遮光されることなく測定領域Maに照射され、図4に示したように、撮像画像Imにおいて、測定領域Maの形状及び径に応じた輝線27となる。一方、図10(B)に示すように、検出部25Bが物体Mと接触すると鏡筒本体25Aに接近する方向に相対移動し、筒部43が測定領域Maに向かう照明光束L1の光路上に位置する。これにより、照明光束L1は筒部43の内周面で散乱反射し、図4に示したように、撮像画像Imにおいては、筒部43の内周面の径に対応して、物体Mの表面の場合の径よりも小径の輝線27’となる。
このように、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0062】
次に、上述した形状測定装置を備えた構造物製造システムについて、図11を参照して説明する。
図11は、構造物製造システム200のブロック構成図である。本実施形態の構造物製造システム200は、上記の実施形態において説明したような形状測定装置201と、設計装置202と、成形装置203と、制御装置(検査装置)204と、リペア装置205とを備える。制御装置204は、座標記憶部210及び検査部211を備える。
【0063】
設計装置202は、構造物の形状に関する設計情報を作製し、作成した設計情報を成形装置203に送信する。また、設計装置202は、作成した設計情報を制御装置204の座標記憶部210に記憶させる。設計情報は、構造物の各位置の座標を示す情報を含む。
【0064】
成形装置203は、設計装置202から入力された設計情報に基づいて、上記の構造物を作製する。成形装置203の成形は、例えば鋳造、鍛造、切削等が含まれる。形状測定装置201は、作製された構造物(測定対象物)の座標を測定し、測定した座標を示す情報(形状情報)を制御装置204へ送信する。
【0065】
制御装置204の座標記憶部210は、設計情報を記憶する。制御装置204の検査部211は、座標記憶部210から設計情報を読み出す。検査部211は、形状測定装置201から受信した座標を示す情報(形状情報)と、座標記憶部210から読み出した設計情報とを比較する。検査部211は、比較結果に基づき、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、検査部211は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。検査部211は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合に、構造物が修復可能であるか否か判定する。検査部211は、構造物が修復できる場合、比較結果に基づいて不良部位と修復量を算出し、リペア装置205に不良部位を示す情報と修復量を示す情報とを送信する。
【0066】
リペア装置205は、制御装置204から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づき、構造物の不良部位を加工する。
【0067】
図12は、構造物製造システム200による処理の流れを示したフローチャートである。構造物製造システム200は、まず、設計装置202が構造物の形状に関する設計情報を作製する(ステップS101)。次に、成形装置202は、設計情報に基づいて上記構造物を作製する(ステップS102)。次に、形状測定装置201は、作製された上記構造物の形状を測定する(ステップS103)。次に、制御装置204の検査部211は、形状測定装置201で得られた形状情報と上記の設計情報とを比較することにより、構造物が誠設計情報通りに作成されたか否か検査する(ステップS104)。
【0068】
次に、制御装置204の検査部211は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS105)。構造物製造システム200は、作成された構造物が良品であると検査部211が判定した場合(ステップS105 YES)、その処理を終了する。また、検査部211は、作成された構造物が良品でないと判定した場合(ステップS105 NO)、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS106)。
【0069】
構造物製造システム200は、作成された構造物が修復できると検査部211が判定した場合(ステップS106 YES)、リペア装置205が構造物の再加工を実施し(ステップS107)、ステップS103の処理に戻る。構造物製造システム200は、作成された構造物が修復できないと検査部211が判定した場合(ステップS106 No)、その処理を終了する。以上で、構造物製造システム200は、図12に示すフローチャートの処理を終了する。
【0070】
本実施形態の構造物製造システム200は、上記の実施形態における形状測定装置が構造物の座標を正確に測定することができるので、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システム200は、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
【0071】
なお、本実施形態におけるリペア装置205が実行するリペア工程は、成形装置203が成形工程を再実行する工程に置き換えられてもよい。その際には、制御装置204の検査部211が修復できると判定した場合、成形装置203は、成形工程(鍛造、切削等)を再実行する。具体的には、例えば、成形装置203は、構造物において本来切削されるべき箇所であって切削されていない箇所を切削する。これにより、構造物製造システム200は、構造物を正確に作成することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0073】
例えば、形状測定装置1Aは、孔部Maだけに限られず、溝(凹部)の内面(測定領域)を測定することも可能である。形状測定装置1Aは、所定の方向に延在する溝が形成された物体に対して、溝の内面の測定を行う場合に、溝の延在方向に光学プローブ3を移動させることもできる。溝の延在方向は、例えばXY面に平行な方向でもよいし、XY面に交差する方向でもよい。また、上記の実施形態に係る形状測定装置は、例えば、段差の崖部分を測ることも可能である。また、形状測定装置1Aによる測定方法は、光切断法に限定されず、例えば共焦点法又はSFF法であってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、検出部40の筒部43が照明光束L1を反射、あるいは所定の透過率で透過させる構成としたが、この構成の他に、例えば照明光束L1を吸収する構成としてもよい。この構成では、筒部43に入射した照明光束L1が出射せず、撮像素子18によって撮像されなくなることから、画像の変化を検出して、検出部40と物体Mとの接触を検出することが可能になる。
【0075】
さらに、上記実施形態では、筒部材41が物体Mと接触した際に、筒部材41がZ軸方向あるいはXY平面に沿って相対移動する場合について説明したが、これ以外3にも、例えば筒部材41がZ軸に対して傾いた場合についても物体Mとの接触を検出可能である。
具体的には、筒部材41がZ軸に対して傾くと、光軸AXを挟んで傾斜方向の一方では照明光束L1の進行方向を変化させ、傾斜方向の他方では照明光束L1の進行方向を変化させないため、撮像画像Imにおいては、光軸AXを挟んで一方側と他方側とで異なる径の輝線になるため、筒部材41と物体Mとの接触を検出できる。
【0076】
また、上記実施形態では、反射部材16に導入されて反射した照明光束L1が測定領域Maで反射散乱し、測定領域Maで反射散乱した結像光束L2が結像光学系19に入射した後に撮像素子18に入射する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、物体Mの孔部の直径が大きく測定領域Maで反射散乱した結像光束L2が結像光学系19に入射しない可能性もあるが、このような場合には、測定領域Maで反射散乱した結像光束L2を反射部材16が反射し、結像光学系19及び導光部材20を介して撮像素子18に入射させる(導入する)ことができる。そのため、物体Mの孔部の直径が大きい場合であっても、物体Mにおける測定領域Maの形状を円滑に測定することが可能となる。
【0077】
また、上記実施形態では、照明光束L1の光路(光源14から出射し導光部材20、結像光学系19、反射部材16を介して測定領域Maに向かう照明光束L1の光路)及び結像光束L2の光路(測定領域Maで反射散乱し結像光学系19及び導光部材20を介して撮像素子18に向かう結像光束L2の光路、あるいは測定領域Maで反射散乱し反射部材16、結像光学系19及び導光部材20を介して撮像素子18に向かう結像光束L2の光路)のうち、反射部材16を介して測定領域Maに向かう照明光束L1の光路に検出部40が挿入される構成を例示したが、これに限定されるものではなく、上述した光路であれば、例えば、測定領域Maで反射散乱し結像光学系19に向かう結像光束L2の光路等に検出部40が挿入される構成であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、物体面19aが平面状である構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば物体面が円錐面状であってもよく、このような円錐面上の各点から出射した光束を、平面状の像面上のほぼ1点に収斂させるように、物体面19aから撮像素子18に向かう結像光束L2の進行方向を変化させる先端光学部材を備える構成としてもよい。なお、先端光学部材が結合光学系に属する場合には、先端光学部材は、当該結合光学系を構成する光学部材のうち、最も物体面に近く配置されたものとなる。また、先端光学部材が照明光学系に属する場合には、先端光学部材は、当該照明光学系を構成する光学部材のうち、最も物体面に近く配置されたものとなる。
【0079】
なお、上述の実施形態における、形状測定装置1Aは光学プローブ3を画像により物体Mの物体面を測定する方式でも構わない。例えば、米国特許公開番号5469254号でも構わない。
なお、上述の実施形態における、光学プローブ3は円環状に投影光を作成し、物体面Maを測定したが、光学プローブ3を回転させ、光学プローブ3の周囲の物体面Maを測定する方式でも構わない。例えば、日本特許公開平成11-281582号でも構わない。
なお、上述の実施形態における、光学プローブ3は干渉により、光学プローブ3の周囲の物体面Maを測定する方式でも構わない。例えば、日本特許公開2008-309652号でも構わない。
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した形状測定装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0080】
1A…形状測定装置、 2…移動装置、 5…形状情報取得部(形状取得部)、 9…記憶装置、 12…演算装置(演算部)、 16…反射部材(先端光学部材)、 12…演算装置(経路生成部)、 17…撮像部、 18…撮像素子、 19…結像光学系、 25…鏡筒、 25B、40…検出部(接触検出部)、 42…支持部材(接続部、弾性体)、 203…成形装置、 204…制御装置、 IL…照明光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12