特許第6028584号(P6028584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028584
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20161107BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/08 331
   G03G9/08 365
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-6299(P2013-6299)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-137488(P2014-137488A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2016年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝之
(72)【発明者】
【氏名】堤 大士
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−020474(JP,A)
【文献】 特開2007−003865(JP,A)
【文献】 特開2002−082485(JP,A)
【文献】 特開2011−123423(JP,A)
【文献】 特開2005−275145(JP,A)
【文献】 特開2004−271573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)スルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解あるいは分散させ樹脂溶液又は樹脂分散液を製造する工程、(ii)前記樹脂溶液又は樹脂分散液を水性媒体と混合させることにより、前記水性媒体中に前記樹脂溶液又は樹脂分散液の微粒子が懸濁した懸濁液を製造する工程、次いで、(iii)30℃以下の温度条件下に電解質を添加することにより前記微粒子の合一体を形成させる工程、(iv)前記合一体の有機溶剤を除去する工程、(v)前記合一体を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂が、スルホン酸金属基を有するジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを原料酸成分として、また、炭素原子数2〜6の直鎖状アルキレンジオールを原料アルコール成分として用い製造されたものである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂が、スルホン酸金属塩基を、該ポリエステル樹脂を蛍光X線解析にて測定した場合の硫黄原子の強度[S/Kα]が0.030〜0.090の範囲で有するものである請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(iii)の合一化を10〜30℃の温度条件下に行う請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(i)が、前記ポリエステル樹脂と共に、着色剤成分及びワックス成分を併用して、有機溶剤に溶解あるいは分散させ樹脂溶液又は樹脂分散液を製造するものである請求項4記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられ、更にはトナージェット方式のプリンター等にも用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンター、ファックスなどにおいては、印刷画像品質のさらなる向上、あるいはマシンのコストダウン、小型化、省電力化、省資源化などのために、トナーに対して、(1)トナーの小粒径化による印刷画像の解像性や階調性の向上、トナー層の薄層化、廃トナー量の削減、ページ当たりのトナー消費量の低減、(2)定着温度の低温度化による消費電力の低減、(3)オイルレス定着化によるマシンの簡素化、(4)フルカラー画像における色相・透明性・光沢の向上、(5)トナーの定着時における有害性VOC(揮発性有機化合物)の低減等が要求されている。
【0003】
特に、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料又はその他の有彩色の顔料や染料等をバインダー中に分散させたカラートナーでは、印刷後の画像が鮮やかな発色性を有すること、多色印刷を行った際の色重ねに於いて優れた透明性を発揮して色濁りの生じない鮮明な色再現性を有すること、あるいは、オフセット印刷と同等の解像性及び階調性を有する印刷を可能とする印刷画像特性が求められている。
【0004】
このような背景から、印刷画像の解像性、階調性、発色性に優れるトナーが得られることから重合法や乳化分散法によるトナー(以下、ケミカルトナーという)の開発が活発に行われてきた。特に、乳化分散法は、トナーの小粒径化や球形化に容易に対応できることに加え、重合法と比較して、1)バインダー樹脂の種類の選択幅が広くなる、2)残留モノマー低減が容易である、3)有機顔料等の濃度を低濃度から高濃度まで任意に変化させることができる、などの利点を有しており、カラートナーの製造においても有利である。
【0005】
このような製造方法の例としては、特にトナーの小粒径化や球形化に有効な技術として、例えば、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解させ、次いで水性媒体を加え転送乳化させた後、室温レベルの温度条件下に乳化剤と電解質を加えて分散粒子を合一化させて所定粒径の粒子を、その後、有機溶媒を除去、乾燥してトナーを製造する所謂合一法による製造方法が知られている(下記特許文献1参照)。
然し乍ら、前記特許文献1記載の方法では最終的に得られるトナー粒子の小粒径化や球形化には有効であるものの、多量の乳化剤が必要となってトナーの十分な帯電特性が得られない他、中和工程が必要となり、中和剤の除去、或いは、苛性ソーダの如く強アルカリを用いた場合は逆中和の工程が更に必要になるなど工程上煩雑で生産性に劣る他、顔料分散性に劣り、印刷物の光沢性に劣るものであった。
また、トナーの粒子サイズの制御が容易であり粒度分布の狭いトナーを製造する技術として、スルホン酸ナトリウム基を有するポリエステルを無溶剤状態で水中分散させ、アルカリハライドを添加、加熱凝集させてトナーを製造する技術が知られている(下記特許文献2)。
然し乍ら、斯かる技術によれば粒径が小さくかつ粒度分布の小さいトナー粒子が得られるものの、トナーの耐電特性に劣る他、真球以外の異形トナー粒子が発生しやすく、やはり印刷した画像の光沢性が低くなり、高品質な印刷物が得られないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4247669号公報
【特許文献2】特許第4068250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、異形粒子の発生を抑えられ、真球に近いケミカルトナーを工業的に生産性よく製造できると共に、得られるトナーが帯電特性と印刷物の光沢に著しく優れたものとなる、新規な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解乃至分散させ、水性媒体を加え転送乳化、電解質の添加により微粒子を合一化させることにより、小粒径で粒度分布が小さく、かつ、真球に近いケミカルトナーが得られ、かつ、その帯電特性や印刷物の品質にも優れたケミカルトナーとなり、然も、その工業的生産性に優れた製造方法となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、(i)スルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解あるいは分散させ樹脂溶液又は樹脂分散液を製造する工程、(ii)前期樹脂溶液を水性媒体と混合させることにより、前記水性媒体中に前記樹脂溶液又は樹脂分散液の微粒子が懸濁した懸濁液を製造する工程、次いで、(iii)30℃以下の温度条件下に電解質を添加することにより前記微粒子の合一体を形成させる工程、(iv)前記合一体の有機溶剤を除去する工程、(v)前記合一体を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異形粒子の発生を抑えられ、真球に近いケミカルトナーを工業的に生産性よく製造できると共に、得られるトナーが帯電特性と印刷物の光沢に著しく優れたものとなる、新規な静電荷像現像用トナーの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の製造方法は以下の各工程を必須の製造工程とするものである。
樹脂溶液調整工程:スルホン酸金属基を有する樹脂構造中に有するポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解あるいは分散させて樹脂溶液又は樹脂分散液を製造する[工程(i)]。
乳化工程:次いで、該樹脂溶液又は樹脂分散液に水性媒体を加えることにより該水性媒体中に該樹脂溶液の懸濁液(微粒子)を形成させる[工程(ii)]。
合一工程:該水性媒体中に30℃以下の温度条件下に電解質を順次添加することで該懸濁液中の微粒子の合一体を形成させる[工程(iii)]。
分離・乾燥工程:その後、該合一体中の有機溶剤を除去し[工程(iv)]、次いで脱溶剤後の前記合一体を水性媒体から分離し、乾燥させ、トナーを製造する[工程(v)]。
【0012】
なお、本発明では、前記工程(ii)で生成する有機溶剤を含有する樹脂溶液の微粒子を凝集させ、一体化させることを「合一」と言い、前記工程(iii)を「合一工程」と言う。また、工程(iii)により形成される粒子を「合一体」と言う。更に、合一工程を経てトナーを製造する方法を「合一法」による製造方法と言う。
【0013】
前記工程(i)では、有機溶剤中にポリエステル樹脂を投入して溶解あるいは分散することにより、ポリエステル樹脂と有機溶剤を含む樹脂溶液を調整する。この場合、必要に応じてワックス成分または着色剤、あるいはその他の添加物をポリエステル樹脂等と共に用いることができるが、いずれもトナー粒径以下に微分散あるいは溶解される必要がある。
【0014】
有機溶剤中にポリエステル樹脂及び必要に応じて添加する、ワックス成分、着色剤等の各種添加剤を溶解あるいは分散させる手段としては、以下の方法を用いることが好ましい。
【0015】
1)上記のポリエステル樹脂、ワックス成分、着色剤等の各種添加剤を含む混合物を加圧ニーダー、加熱2本ロール、2軸押し出し混練機などを用いて、使用する樹脂の軟化点以上、且つ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。その後、得られた混練チップをデスパー等の攪拌機あるいはメディアを用いた分散機等により有機溶剤中に溶解、ないし分散する。あるいは、2)ポリエステル樹脂、ワックス成分、着色剤等の各種添加剤をそれぞれ有機溶剤と混合し、これらを、デスパー等の高速攪拌機や、ボールミルにより湿式混練して樹脂溶液乃至樹脂混合液を製造することができる。
【0016】
上記1)及び2)のなかでも、特に2)の製造方法が、ポリエステル樹脂の高分子成分(ゲル成分)が切断されないため好ましく、特に、2)の方法により製造する場合、ポリエステル樹脂と有機溶剤との混合溶液を調整すると共に、予め、ワックス成分をポリエステル樹脂や有機溶剤と混合したワックス溶液を調整、一方、着色剤も、顔料とポリエステル樹脂とを溶融混練し着色剤マスターチップを調整し、これらを混合した混合物を工程(ii)に用いることが、乳化により各成分が微粒子状になる点から好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂を溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、ポリエステル樹脂を溶解あるいは分散するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0018】
次に、乳化工程である工程(ii)では:工程(i)で得られた樹脂溶液又は樹脂分散液に水性媒体を加えることにより該水性媒体中に該樹脂溶液の懸濁液(微粒子)を形成させる。この場合、上記の方法で調整された樹脂溶液を、塩基性中和剤の存在下で水性媒体と混合して乳化させてもよいが、本発明では実質的に中和剤を用いることなく、乳化させることが可能であり、そのため最終的に得られるトナーの帯電特性を飛躍的に改善させることができる。この工程(ii)は、具体的には、樹脂溶液又は樹脂分散液に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、前記混合物の有機連続相に水を徐々に添加することにより、ウォーター・イン・オイルの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、オイル・イン・ウォーターの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を「転相乳化」という)。
【0019】
転相乳化においては、有機溶剤と添加した水の合計量に対する水の比率が30〜80質量%となるように水を添加する。より好ましくは35〜70質量%であり、特に40〜70質量%であることが好ましい。使用する水性媒体は水であることが好ましく、さらに好ましくは、脱イオン水である。
【0020】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、前記したとおり、スルホン酸金属塩基を有するポリエステル樹脂であり、自己水分散性を有するものである。ここでスルホン酸金属塩基の存在量は、ポリエステル樹脂を蛍光X線解析にて測定した場合の硫黄原子の強度[S/Kα]が0.030〜0.090の範囲であることが、工程(ii)における転相乳化が容易であり、分散性が良好なものとなり、トナー粒子の小粒径化及び真球度が良好なものとなって、光沢性に優れた印刷物が得られる点から好ましい。ここで、スルホン酸金属塩基の如く塩構造部位は通常、最終的なトナーの帯電特性を低下させるものであるにも拘わらず、本発明では、優れた乳化安定性を発現しつつも、トナーの帯電特性に何等のマイナスの影響を与えない点は特筆すべき点である。
【0021】
この転相乳化は、ホモミクサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)などの高シェア乳化分散機や連続式乳化分散機、及び、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置や、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を持つ攪拌混合機により行うことができる。
これらのなかでも、特開平9−114135号公報で開示されているような攪拌装置や、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を持つ攪拌混合機、特に、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼を持つ攪拌混合機を用いることが均一性の点から好ましい。
【0022】
大型翼を持つ攪拌混合機を用いる場合、水性媒体中に前記混合物の微粒子を形成させるための乳化工程(転相乳化工程)における該攪拌翼の周速は、0.2〜10m/sの範囲であることが好ましく、0.2〜8m/s未満の低シェアで攪拌しながら水を滴下する方法がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sの範囲である。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、転相乳化時の分散径が大きくなり易い。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり、転相が不均一になり易く、粗大粒子が発生する傾向となり好ましくない。また、転相乳化時の温度は、特に制限はないが、温度が高いほど粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。他方、低温すぎるとポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、やはり粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。その為、具体的な転相乳化時の温度範囲としては10〜40℃の範囲であること、特に15〜30℃の範囲であることが好ましい。
【0023】
乳化工程で製造する樹脂溶液の微粒子のピーク体積粒径は、1μm〜5μmの範囲、より好ましくは1μm〜3μmの範囲であることが、最終的に得られるトナーの粒径を小粒径化できると共に、トナー中の着色剤やワックス成分のポリエステル樹脂によるカプセル化も良好にでき帯電特性や乳化特性に優れたトナーが得られる点から好ましい。また、乳化工程で製造する着色樹脂溶液の微粒子の粒度分布は、10μm以上の体積粒径の比率が1%以下、より好ましくは0.5%以下であり、5μm以上の体積粒径の比率が3%以下、より好ましくは1%以下であることが好ましい。
【0024】
次に、合一工程は、前記した乳化工程で得られた樹脂溶液の微粒子を合一させることにより該微粒子の合一体を生成させ、所望の粒径のトナー粒子を形成させる工程である。
【0025】
この合一工程は、乳化工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し溶剤量を調整し、30℃以下の温度条件下に、電解質の水溶液を滴下することで合一を進め、所定粒径の凝集体を得る工程である。
【0026】
前工程である乳化工程で得られた微粒子は、カルボン酸塩による電気二重層の作用により水性媒体中で安定に分散している。合一工程では、微粒子が分散している水性媒体中に電気二重層を破壊、あるいは縮小させる電解質を添加することで、粒子を不安定化させるものである。
【0027】
ここで用いることのできる電解質としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等も電解質として有効に用いることができる。これらの電解質は、単独でも、あるいは2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニュウムのごとき1価のカチオンの硫酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。本発明の製造方法では、乳化工程で得られた微粒子は溶剤により膨潤しており、かつ電解質の添加により粒子の電気二重層が収縮した不安定な状態となっているため、低シェアー(低剪断力)の攪拌による粒子同士の衝突でも容易に合一が進行する。
【0028】
また、斯かる合一工程では、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤やイオン性、あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として少量用い、電解質を添加する前に予め系内に添加しておくか、或いは、分散安定剤を電解質水溶液と共に系内に添加してもよい。
ここで用いることのできる分散安定剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等、あるいは各種プルロニック系等のノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤等がある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があり、好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。以上に記載した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
上記した分散安定剤を使用することにより系内の微粒子の分散安定性は一層向上するが、その使用量が多くなる場合には、トナーの帯電特性が低下する他、顔料分散性も低下することとなる。本発明では乳化工程において樹脂ポリエステル樹脂自体が優れた分散性を有することから、この分散安定剤を使用する場合であっても、その使用量を低く抑えることができる。具体的には、分散安定剤の使用量は、微粒子の固形分含有量に対し、0.25質量%以下の範囲であることが好ましく、分散安定剤使用による分散安定性改善の効果が認められる点から0.1〜0.25質量%の範囲であることが特に好ましい。
また、分散安定剤を用いる場合、前記した通り、電解質を添加する前に予め系内に添加しておくか、或いは、分散安定剤を電解質水溶液と共に系内に添加してもよいが、分散安定性の改善効果が得られやすい点から、電解質を添加する前に予め系内に添加しておき、次いで、電解質の水溶液を滴下する方法が望ましい。
【0030】
合一工程の攪拌条件は、均一な合一体が得られる点から、乳化工程における撹拌翼の種類及び撹拌条件は前記と同様の条件にて行うことが好ましい。
【0031】
合一体を製造する場合には、乳化工程で転相乳化により得られた微粒子の分散液を水でさらに希釈することが好ましい。電解質を添加する前の系中に含まれる溶剤量としては、15〜45質量%の範囲内であることが好ましい。溶剤量が15質量%以上であれば、合一に要する電解質量を少なく抑えることが可能となり、また、溶剤量が45質量%以下であれば得られる合一体に均一性が良好なものとなる。斯かる効果が顕著なものとなる点から溶剤量は18〜30質量%の範囲内がより好ましく、特に、20〜25質量%の範囲内が好ましい。
【0032】
また、使用する電解質の量は、微粒子の固形分含有量に対し、0.5〜15質量%の範囲内であることが好ましい。1〜12質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。電解質の量が0.5質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないため好ましくない。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物や粗大粒子が発生し易く、収率低下を招きやすくなる。
【0033】
また、合一工程における合一時の温度は30℃以下である。温度が30℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなる。また、合一温度が低い場合には、合一が進行し難くなる為、特に10℃〜30℃の範囲であることが好ましい。
【0034】
ここで、トナーにおける摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤やその他の添加物(通常、ワックス成分など)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス成分等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0035】
本発明により製造されるトナー粒子は、着色剤やワックス成分等がポリエステル樹脂に内包されていることが特徴である。トナー粒子表面に着色剤やワックス成分等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス成分等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0036】
合一工程で得られる合一体の形状は、合一の程度により不定形から球形まで変化させることができるが、球形であること、特に球形度の高いものが最終的煮えられるトナーの球形度が高くなる点から好ましい。
【0037】
次に、分離・乾燥工程は、合一工程で得られた合一体中の有機溶剤を除去し[工程(iv)]、次いで脱溶剤後の前記合一体を水性媒体から分離し、乾燥させ、トナーを製造する工程[工程(v)]から成る。
【0038】
ここで、工程(iv)の脱溶剤の工程は、合一体を、常圧、あるいは減圧下で行う脱溶剤を行う方法が挙げられる。脱溶剤を低温条件下で、速やかに行うためには減圧下で行うことが好ましい。
【0039】
次いで、工程(v)として、脱溶剤後の合一体を水性媒体から分離し、乾燥させる。水性媒体からの分離は、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で行うことができる。ついで粒子を乾燥させることにより目的とするトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0040】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
【0041】
本発明の製造方法で得られるトナーの粒度分布については、コールター社製マルチサイザーTAII型(アパーチャーチューブ径:100μm)による測定で、50%体積粒径/50%個数粒径が1.25以下であること好ましく、より好ましくは1.20以下である。1.25以下であると良好な画像を得られやすく好ましい。また、GSDは1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましい。なお、GSDは、コールター社製マルチサイザーTAII型による測定で、(16%体積粒径/84%体積粒径)の平方根により求められる値である。GSDの値が小さいほど粒度分布がシャープになり、良好な画像が得られる。
【0042】
本発明の製造方法で得られるトナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜13μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度が現行のマシンとのマッチングが得やすいことなどもあってより好ましい。カラートナーにあっては、体積平均粒径が3〜8μmとなる範囲が好適である。体積平均粒径が小さくなると印刷物の光沢が向上するのみならず、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現される。
【0043】
また、最終的に得られるトナーの平均円形度は、より高い方が好ましく、具体的には平均円形度が0.97以上、特に0.98以上であることが粉体流動性の向上、転写効率の向上、印刷物の光沢向上といった点から好ましい。特に、粒径が小さくなるにつれ、球形と不定形では、粉体流動性、転写効率、トナー消費量の面での差は大きくなる。
【0044】
ここで、前記平均円形度は、最終的に得られるトナー粒子を東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」を用い、画像解析・算出した値であり、具体的には、以下の通りにして求めることができる。
【0045】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。「FPIP−1000」のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0046】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。
本発明における平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0047】
上記装置で測定する際の条件は以下の通りである。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0048】
本発明で使用するバインダー樹脂は、スルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂である。本発明では、前記した通り、このスルホン酸金属塩基を、該ポリエステル樹脂を蛍光X線解析にて測定した場合の硫黄原子の強度[S/Kα]が0.030〜0.080の範囲で有することが、乳化工程における乳化安定性に優れると共に、異形粒子が少なく平均円形度が高く、更に印刷物における光沢性に優れるトナーが得られやすい点から好ましく、斯かるポリエステル樹脂は、例えば、スルホン酸金属基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを原料酸成分として、また、二価の脂肪族ジオールを原料アルコール成分として用い製造することができる。原料アルコール成分として、二価の脂肪族ジオールを用いることにより、トナーの平均円形度の向上の他、ポリエステル樹脂とワックス成分との相溶性が良好となり、耐オフセット性が改良される。また、ポリエステル主鎖を軟質化することにより低温での定着性が改善される。
【0049】
ここで前記ポリエステル樹脂の原料として用いることのできるスルホン酸金属基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルは、具体的には、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、2−スルホテレフタル酸カリウム塩、2−スルホテレフタル酸リチウム塩、テレフタル酸ジメチル−2−スルホン酸ナトリウム塩、テレフタル酸ジメチル−2−スルホン酸カリウム塩、テレフタル酸ジメチル−2−スルホン酸リチウム塩、テレフタル酸ジエチル−2−スルホン酸ナトリウム塩、テレフタル酸ジエチル−2−スルホン酸カリウム塩、テレフタル酸ジエチル−2−スルホン酸リチウム塩、テレフタル酸ジブチル−2−スルホン酸ナトリウム塩、テレフタル酸ジブチル−2−スルホン酸カリウム塩、テレフタル酸ジブチル−2−スルホン酸リチウム塩等のスルホテレフタル酸アルカリ金属塩及びそのC1−4アルキルエステル;5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸カリウム塩、5−スルホイソフタル酸リチウム塩、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム塩、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸カリウム塩、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸リチウム塩、イソフタル酸ジエチル−5−スルホン酸ナトリウム塩、イソフタル酸ジエチル−5−スルホン酸カリウム塩、イソフタル酸ジエチル−5−スルホン酸リチウム塩、イソフタル酸ジブチル−5−スルホン酸ナトリウム塩、イソフタル酸ジブチル−5−スルホン酸カリウム塩、イソフタル酸ジブチル−5−スルホン酸リチウム塩等のスルホイソフタル酸アルカリ金属塩及びそのC1−4アルキルエステル;スルホコハク酸ナトリム塩、スルホコハク酸カリウム塩、スルホコハク酸リチウム塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリム塩、スルホコハク酸ジオクチルカリウム塩、スルホコハク酸ジオクチルリチウム塩、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリム塩、スルホコハク酸ジエチルヘキシルカリウム塩、スルホコハク酸ジエチルヘキシルリチウム塩、等のスルホコハク酸アルカリ金属塩及びそのアルキルエステル等が挙げられる。
【0050】
本発明ではこれらのなかでも特に乳化工程における乳化安定性に優れる点からスルホテレフタル酸アルカリ金属塩及びそのC1−4アルキルエステル、スルホイソフタル酸アルカリ金属塩及びそのC1−4アルキルエステル等のスルホン酸アルカリ金属塩を含む芳香族ジカルボン酸又はそのC1−4アルキルエステルであることが好ましく、特にスルホイソフタル酸アルカリ金属塩及びそのC1−4アルキルエステルであることが、粒度分布がシャープでかつ平均円形度の高いトナーが得られる点から好ましい。
【0051】
他方、二価の脂肪族アルコールは、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロカクトンジオール等のジオールが挙げられる。これらのなかでも特に、最終的に得られるポリエステル樹脂の溶剤溶解性に優れ、平均円形度の高いトナーが得られ易い点から炭素原子数2〜6のアルカンジオールが好ましく、特に1,2−プロパンジオールがその効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0052】
本発明では原料成分として、これらの各成分に加え、3価以上の多官能カルボン酸、その無水物、若しくはそのエステル、又は、3価以上の多価アルコールを併用することにより、得られるポリエステル樹脂の架橋度が高まり、適度に分子量が大きくなって、優れた低温定着を保持しながらもホットオフセットが良好なものとなる点から好ましい。
【0053】
ここで、3価以上の多官能カルボン酸、その無水物、若しくはそのエステルは、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、又はそれらのアルキルエステル化物が挙げられる。
【0054】
他方、3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン等が挙げられる。
【0055】
これらの3価以上の原料成分の中でも特に架橋度の向上、得られる樹脂のガラス転移点が向上する点から無水トリメリット酸であることが好ましい。
【0056】
本発明では、前記ポリエステル樹脂の原料酸成分として上記した各成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、或いは、所望のスルホン酸金属塩量に調整する目的から、その他の多塩基酸化合物を使用してもよい。該多塩基酸化合物としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸又はその誘導体又はそのエステル化物が挙げられる。
【0057】
前記ポリエステル樹脂を製造する際、架橋剤として多価エポキシ化合物を併用してもよい。斯かる多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラキス1,1,2,2(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等が挙げられる。
【0058】
上記した架橋剤として使用するエポキシ化合物の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルがより好適に用いられる。
【0059】
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の例としてDIC(株)製エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、エピクロン3050等が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の例としてDIC(株)製エピクロン830、エピクロン520等が、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の例としてDIC(株)製エピクロンN−660,N−665,N−667,N−670,N−673,N−680,N−690,N−695等が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の例としてはDIC(株)製エピクロンN−740,N−770,N−775,N−865等が挙げられる。エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体としてはグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、あるいはアクリル共重合体、スチレンとの共重合体が挙げられる。
【0060】
また、上記エポキシ化合物は2種以上併用して用いることもでき、さらに、樹脂の変性剤として、モノエポキシ化合物を併用してもよい。該モノエポキシ化合物としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0061】
これらのモノエポキシ化合物を併用することにより定着性、高温での耐オフセット性が向上する。これらの中でも、特にアルキルグリシジルエステルがより好適に用いられる。具体的な例としてはネオデカン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェルジャパン製が挙げられる。
【0062】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、上記の原料成分を用いて、例えば触媒の存在下で脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。
【0063】
上記反応を行う際の触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、パラトルエンスルホン酸等を適宜使用する事が出来る。
【0064】
本発明に用いられるポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50〜85℃のものが好ましいが、中でも、そのTgが55〜75℃のものが特に好ましい。Tgが50℃より低いと、トナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。85℃より高いと、低温定着性が低下するため好ましくない。
【0065】
また、本発明に使用されるポリエステル樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際に凝集し易く、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0066】
上記各原料成分の反応割合は特に限定されるものではなく、所定のスルホン酸金属塩基量となる様に、また、望ましくは前記90〜180℃の軟化点範囲となるように重合度を調整すればよいが、前記した3価以上の多官能カルボン酸、その無水物、若しくはそのエステルを用いる場合は、全原料酸成分中1〜5質量%となる割合で用いることが好ましく、また、前記3価以上の多価アルコールを使用する場合は、原料全アルコール成分中1〜5質量%となる割合で用いることが好ましい。
【0067】
更に、前記多価エポキシ化合物を併用する場合には、全原料成分中0.5〜2.0質量%となる割合で用いることが好ましく、また、更にモノエポキシ化合物を併用する場合には全原料成分中2.0〜10.0質量%となる割合で用いることが好ましい。
【0068】
尚、本発明においては、実質的に前記工程(ii)、前記工程(iv)で粒径、粒度分布が決定される。本発明の製造方法では乳化工程である工程(ii)において優れた乳化安定性を発現する為、シャープな粒度分布のトナーが得ることができる。
【0069】
本発明で使用するスルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂は、軟化点の異なる複数の樹脂をブレンドして使用してもよい。軟化点の異なる複数の樹脂をブレンドすることにより、単一樹脂に比べ、広い温度領域での耐オフセット性、良好な低温定着性のバランスを得ることができる。高軟化点の樹脂としては架橋型のポリエステル樹脂が好ましく、軟化点が150〜230℃、好ましくは160〜200℃の範囲であることが好ましい。一方、低軟化点の樹脂としては直鎖状のポリエステル樹脂が好ましく、軟化点としては80〜130℃、好ましくは90〜120℃の範囲である。高軟化点樹脂と低軟化点樹脂の使用比率(質量比率)は20/80〜70/30、好ましくは30/70〜60/40の範囲である。
【0070】
軟化点の異なる複数の樹脂をブレンドする場合、高軟化点樹脂は多価エポキシ化合物で架橋されたポリエステル樹脂を使用することが好ましい。
【0071】
本発明における樹脂の軟化点は、定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製「フローテスタCFT−500」を用いて測定されるT1/2温度で定義される値である。この際、「フローテスタCFT−500」での測定条件は、ピストン断面積1cm 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5gの条件である。
【0072】
本発明の製造方法では、前記した通り、ワックス成分を用いることができる。このワックス成分としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、合成エステルワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックスの群の中から選ばれたワックス成分が用いられる。中でも、カルナバワックス、ライスワックス等の天然系エステルワックス、多価アルコールと長鎖モノカルボン酸から得られる合成エステルワックス、フィーシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックスが好適に用いられる。合成エステルワックスとしては、例えば、「WEP−5」(日本油脂社製)が好適に用いられる。トナー中のワックス成分の含有量は、1質量%未満であると離型性が不十分となりやすく、40質量%を越えるとワックスがトナー粒子表面に露出しやすくなり、帯電性や保存安定性が低下しやすくなるため、1〜40質量%の範囲内が好ましい。
【0073】
ここで、前記ワックス成分を用いる場合には、前記した通り、前記ワックス成分を有機溶剤と前記ポリエステル樹脂と混合して樹脂溶液を製造しておき、工程(ii)に供する方法が好ましいが、該樹脂溶液を製造する方法は、具体的には、前記ワックス成分を予め水性媒体と攪拌混合してエマルジョンを調整し、次いで、ここに前記スルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂を有機溶剤と共に加え混合する方法が挙げられる。
【0074】
本発明の製造方法に使用される着色剤は、公知慣用のものが用いられる。例えば、本発明のトナーに使用できる黒の着色剤としては製造方法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11等の鉄酸化物系顔料、C.I.Pigment Black 12等の鉄−チタン複合酸化物系顔料、青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63等が挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,15,16,60が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
【0075】
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 17,74,93,97,110,155,および180が挙げられ、より好ましくはC.I.Pigment Yellow 74,93,97,180が挙げられ、特に、C.I.Pigment Yellow 93,97,180が好ましい。
【0076】
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,53:1,57:1,122および209が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122および209が挙げられる。
【0077】
着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜18質量%であることが更に好ましく、2〜15質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0078】
また、着色剤は、前記した通り、各着色剤と前記スルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂とを溶融混練し着色剤マスターチップを調整し、これをスルホン酸金属基を樹脂構造中に有するポリエステル樹脂の樹脂溶液又は樹脂分散体、及びワックス成分を含む樹脂溶液と共に、工程(ii)に供することが好ましい。
【0079】
本発明の製造方法では、帯電制御剤を用いることができる。正帯電性帯電制御剤としては、特に限定はなく、トナー用として公知慣用のニグロシン化合物、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物等が使用できる。また、アミノ基、イミノ基、N−ヘテロ環などの塩基性基含有化合物、例えば3級アミノ基含有スチレンアクリル樹脂なども正帯電性帯電制御剤としてニグロシン染料と併用できる。また、用途によっては、アゾ染料金属錯体やサリチル酸誘導体金属錯塩などの負帯電制御剤を少量併用することも可能である。負帯電性帯電制御剤としては、トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックス等の重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフエノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基および/またはスルホニル基を含有する樹脂、等が挙げられる。
【0080】
帯電制御剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。特に0.1〜6質量%であることが好ましい。ここで、帯電制御剤は、トナー粒径よりも小さい粒径となるように溶媒中に分散させた状態で、前記工程(i)の樹脂溶液調整工程時に樹脂溶液又は樹脂分散液に配合させればよい。この際、帯電制御剤の分散径は、0.01〜0.5μmの範囲であることが好ましい。特に、0.01〜0.2μmの範囲であることが、最終的に得られるトナー粒子内での帯電制御剤の分散性が良好で均一となり易い点から好ましい。
【0081】
この様にして得られるトナー粒子は、そのままでも現像剤として使用可能であるが、トナー用外添剤として公知慣用の無機酸化物微粒子や有機ポリマー微粒子などの外添剤をトナー粒子表面に添加するのが好ましい。即ち、疎水性シリカ、酸化チタン等の無機酸化物微粒子、あるいは有機ポリマー微粒子などは、トナー粒子に外添され、静電印刷法による乾式現像剤として用いる場合に、流動性や帯電性等の物理的特性を改良する効果がある。外添剤の種類は、各種シリコーンオイルで処理された疎水性シリカ等が好適に用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッソ変性シリコーンオイル、及びオレフィン変性シリコーンオイル等で処理された疎水性シリカが挙げられる。外添方法は、公知慣用の機種を用いて処理される。
【0082】
上記のトナー粒子にキャリアを混合することによって、静電荷像現像剤とすることができる。静電荷像現像剤は、本発明の製造方法により製造されたトナーと、磁性キャリア、好ましくは表面に樹脂被覆した磁性キャリアとからなる。
【0083】
静電荷像現像剤に用いられるキャリアのコア剤(磁性キャリア)は通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉、マグネタイト、フェライト等が使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトが好適に用いられる。コア剤の形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜200μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜110μmが好ましい。
【0084】
また、これらのコア剤を被覆するコーティング樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。
【0085】
これらの中でも、特にシリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。また、トナー粒子とキャリアからなる現像剤の帯電特性は、シリコン等のコート剤のコート量の調整、帯電制御剤の添加、カーボンに代表される導電物質の添加等により調整できる。即ち、本発明で用いられる樹脂被覆キャリアは、コア剤としてフェライト、あるいはマグネタイトを用い、シリコン樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであり、場合により、コート在中に帯電制御剤、カーボン等を添加して帯電特性を調整することが好ましい。
【0086】
また、本発明の製造方法により製造されたトナーは、通常の非磁性一成分現像方式の印刷装置、あるいは二成分現像方式の印刷装置、磁性一成分現像方式の印刷装置等に使用できる。また、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置等を用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量等を調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方式の、いわゆるトナージェット方式のプリンター等にも好適に使用できる。本発明の製造方法により製造されたトナーは、潜像保持体上に静電荷像を形成させ、得られた静電荷像を、現像剤担持体上に担持された現像剤を用いて現像し、前記荷像保持体上に形成されたトナー像を紙やフィルム等の転写材上に転写し、該転写材上のトナー像をヒートロールにより熱定着する画像形成方法により印刷を行うことができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。最初にトナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。
【0088】
合成例1〜3,5,7(ポリエステル樹脂の合成)
フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けた5リットル4口フラスコに下記表1及び表2に示した多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)を投入し、触媒としてテトライソプロピルチタネート(TIPT)を全モノマーに対して0.2重量%を投入し、常圧窒素気流下にて180℃で5時間エステル交換反応を行った。その後、表1及び表2記載の残りの多塩基酸(a1)を投入し、210℃迄昇温し、2時間反応させた。次いで185℃まで降温した後、表1及び表2記載(a3)TMAnを所定量投入し2時間反応させた後、205℃へ昇温し666Pa以下の真空度にて減圧反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。合成したポリエステル樹脂の組成および物性値(特性値)を表1及び表2に示す。
【0089】
合成例4,6,8(ポリエステル樹脂の合成)
フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けた5リットル4口フラスコに下記表1及び表2に示した、多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)の所定量を投入し、触媒としてテトライソプロピルチタネート(TIPT)を全モノマー量に対して0.2重量%を投入し、常圧窒素気流下にて245℃で4時間反応させた後、185℃へ降温し(a3)を所定量投入し、2時間反応させた後、230℃へ昇温し666Pa以下の真空度にて減圧反応を行いポリエステル樹脂を得た。反応追跡は、デジタルコーンビスコメーター(東亜工業株式会社製)「CV−1S」による粘度測定により追跡し、所定の粘度となったところで反応を停止し各種ポリエステル樹脂を得た。合成したポリエステル樹脂の組成および物性値(特性値)を表2に示す。
【0090】
ここで、表1,2中の各ポリエステル樹脂の性状値は以下の方法にて測定した値である。
<ポリエステル樹脂中のスルホン酸ナトリウム塩基の含有量(S/Kα強度)>
樹脂中のスルホン酸基モノマー量の定量方法として、蛍光X線分析(EDX)装置(株式会社島津製作所製EDX−700)より、S元素の特性X線エネルギーKα線のX線検出強度より、樹脂中スルホン酸基中のS元素量を分析し、S/Kα強度として表示した。
【0091】
<分子量>
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL−H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC−8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0092】
<軟化点(T1/2温度)>
下記条件にて測定された1/2法による溶融温度(℃)である。
測定機器:島津製作所製フローテスターCFT−500D
測定条件:昇温速度6℃/min、ノズル1.0mmφ×10mm、荷重10kgf、試料量1.5g
【0093】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は以下に示す条件で測定した値(℃)である。
測定機器:セイコー電子工業(株)製DSC220C
測定条件:10℃/min,試料:アルミ容器に試料を10mg程度入れ、ふたをする。
測定方法:DSC(示唆走査熱量分析)法
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

表1及び表2中の略号は以下の通りである。
DMT:テレフタル酸ジメチル
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
SIPM:イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム
SIPA:イソフタル酸−5−スルホン酸ナトリウム
EG:エチレングリコール
NPG:2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール
PG:1,2−プロパンジオール
TMAn:無水トリメリット酸
【0096】
(ワックスマスターの調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)30質量部を120℃に加温し溶解させた後、イオン交換水57質量部に乳化剤「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬(株)製)を0.11量部添加し90℃に加温した乳化剤混合温水中へ溶解した前記カルナバワックスを投入し強制乳化装置「TKホモミクサー」(プライミクス(株)製)にて乳化した。その後、撹拌しながら30℃以下になるまで冷却し、固形分35質量%になるように調整しワックスエマルジョンとした。
前記合成例7で得られたポリエステル樹脂R7の70質量部を酢酸エチル85.6質量部をデスパーを用いて、750rpmの回転数にて60分間分散させた後、前記ワックスエマルジョンの87.9質量部を投入しデスバーにて、750min−1の回転数にて5分間分散予備混合した後、アイガーモーターミル(米国アイガー社製「M−1000」)で周速13.3m/sにて90分間分散処理しワックスマスター(1)を調整した。
【0097】
(比較用ワックスマスター)の調製例)
合成例7で得られたポリエステル樹脂R7に代えて、合成例8で得られたポリエステル樹脂R8を用いる他は、前記「ワックスマスターの調製例」と同様にしてワックスマスター(2)を調整した。
【0098】
(着色剤マスターチップの製造例)
シアン顔料(DIC株式会社製シアン顔料「Ket Blue111」C.I.ピグメントB−15:3)の2000質量部と、前記合成例7で得られたポリエステル樹脂R7の2000質量部とを、ST/AO撹拌羽根を取り付けた20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山製)へ投入し、698min−1で2分間撹拌し混合物を得た。該混合物を、オープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山製ニーデックス「MOS140−800」)を用いて、溶融混練し着色剤マスターチップを得た(以下、これを「シアンマスターチップMC」とする)。
また、シアン顔料を、マゼンタ顔料(クラリアントジャパン製マゼンタ顔料「パーマネントルビンF6B」)、イエロー顔料(クラリアントジャパン製イエロー顔料「トナーイエローHG」)、ブラック顔料(キャボットジャパン製カーボンブラック「ELFTEX8」)に変えて、マスターチップを得た(以下、これらをそれぞれ「マゼンタマスターチップMM」、「イエローマスターチップYM」、「ブラックマスターチップBM」とする。
また、得られた各色のマスターチップを前記ポリエステル樹脂R12及び酢酸エチルで希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子がなく、均一に微分散していた。各着色剤のマスターチップの組成は、それぞれ質量比でシアンマスターチップ:着色剤/樹脂2=(50)/(50)、マゼンタ:着色剤/樹脂2=(50)/(50)、イエロー:着色剤/樹脂2=(55)/(45)、ブラック:着色剤/樹脂2=(40)/(60)であった。
【0099】
(比較用着色剤マスターチップの製造)
合成例7で得られたポリエステル樹脂R7に代えて、合成例8で得られたポリエステル樹脂R8を用いる他は、前記「着色剤マスターチップの製造例」と同様にして、各色の着色剤マスターチップを得た。ここで、シアン顔料を用いたものを「シアンマスターチップMC2」、マゼンタ顔料を用いたものを「マゼンタマスターチップMM2」、イエロー顔料を用いたものを「イエローマスターチップYM2」、ブラック顔料を用いたものを「ブラックマスターチップBM2」とする。
【0100】
実施例1
(樹脂溶液調製工程)
ブラックマスターチップBMを42質量部、前記合成例1で得られたポリエステル樹脂R1 158.0質量部、及び酢酸エチル159.9質量部を40〜45℃の範囲で翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所(株)製高速攪拌機)を使用して777min−1で1時間混合し、溶解・分散を行い、その後、上記ワックスマスター(1) 241.6質量部を投入しデスパーにて30分間分散を行い、着色剤含有樹脂溶液を調製した(工程1)。
【0101】
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に工程1で得られた着色剤含有樹脂溶液601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、777min−1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min-1に変更して310質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの各々の微粒子が安定的に分散している状態が観察され、未乳化物は観察されなかった。更に、回転数を777min−1に落とし、アニオン性乳化剤である「ネオゲンSC−F(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した(工程2)。
【0102】
(合一工程)
次いで、翼径340mmの「マックスブレンド翼」(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記乳化工程で得られた縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min−1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min−1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min−1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min−1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.5μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0103】
(分離・乾燥工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、粉体混合機(ホソカワミクロン(株)社製「ナウタミキサ」)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.7μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
実施例2
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R2を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.986であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0104】
実施例3
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R3を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.07、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0105】
実施例4
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R4を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.9μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0106】
実施例5
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R5を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.7μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0107】
比較例1[乳化工程後、合一工程前に脱溶剤処理した例]
(樹脂溶液調製工程)
着色剤マスターチップとして、ブラックマスターチップBMを42質量部、前記合成例3で得られたポリエステル樹脂R3 158.0質量部、及び酢酸エチル159.9質量部を40〜45℃の範囲で翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所(株)製高速攪拌機)を使用して777min−1で1時間混合し、溶解・分散を行い、その後、前記ワックスマスター(1) 241.6質量部を投入しデスパーにて30分間分散を行い、着色剤含有樹脂溶液を調製した。
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのディスパーを有する円筒型の容器に「樹脂溶液調製工程」で得られた着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、777min-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min-1に変更して310質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min-1に落とし、アニオン性乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した(工程2)。
(脱溶剤工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。
【0108】
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min-1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が2.3μmにて粒子成長が停止したため、希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0109】
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、2.0μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.957であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0110】
比較例2[乳化工程後、合一工程前に脱溶剤処理を行い、加熱融着させた例]
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に比較例1の「樹脂溶液調製工程」で得られた着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、777min-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min-1に変更して310質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min-1に落とし、アニオン性乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。
(脱溶剤工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。
【0111】
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min-1に保持したまま、温度を70℃に調整した。その後回転数を120min-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.4μmにて粒子成長が停止したため、希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0112】
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.7μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.15、平均円形度は、0.968であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0113】
比較例3(スルホン酸ナトリムを有しないポリエステル樹脂を使用した例)
(樹脂溶液調製工程)
ブラックマスターチップBM2を42質量部、前記合成例3で得られたポリエステル樹脂R6 158.0質量部、及び酢酸エチル159.9質量部を40〜45℃の範囲で翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所(株)製高速攪拌機)を使用して777min−1で1時間混合し、溶解・分散を行い、その後、前記ワックスマスター(2) 241.6質量部を投入しデスパーにて30分間分散を行い、着色剤含有樹脂溶液を調製した。
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に前記樹脂溶液調製工程で得られた着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、次いで1規定アンモニア水40質量部を加えて777min-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min-1に変更して350質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。顔料、ワックスの微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min-1に落とし、残りの1規定アンモニア水10部とアニオン性乳化剤である「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。
【0114】
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min-1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、回転数85min-1で5分間、65min-1で5分間攪拌し、47min-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、回転数85min-1で5分間、65min-1で5分間攪拌し、47min-1で20分間攪拌を継続した。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.5μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.984であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0115】
比較例4(スルホン酸ナトリムを有しないポリエステル樹脂を使用した例)
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に比較例3で製造した着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、次いで1規定アンモニア水40質量部を加えて777min-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min-1に変更して350質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。顔料、ワックスの微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min-1に落とし、残りの1規定アンモニア水10部とアニオン性乳化剤である「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。
(脱溶剤工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min-1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.4μmにて粒子成長が停止したため、希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0116】
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、1.9μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.960であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0117】
比較例5(スルホン酸ナトリムを有しないポリエステル樹脂を使用した例)
合一工程における温度条件を26℃から70℃へ変更する他は比較例4と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.17、平均円形度は、0.965であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカ「H13TM」(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0118】
表3に上記各合成例で得られたポリエステル樹脂中のスルホン酸ナトリウム塩基の含有量、実施例1〜5及び比較例1〜5の乳化工程後の乳化状態の評価、及び最終的に得られた各トナーの評価結果を示す。表3に示される各物性の評価測定方法は下記の通りである。
【0119】
<乳化状態評価>
転相乳化後の微粒子を光学顕微鏡にて分散状態を確認した。観察時の倍率は300倍、600倍の2視野で確認し、目視で視野中に6μm以上の乳化物または、未乳化物が有無を確認。
【0120】
(乳化状態の評価基準)
◎:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:0
○:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:0〜10
△:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:10〜20
×:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:20以上
【0121】
<トナー性状の評価方法>
(粒度分布)
コールターマルチサイザーII(コールターベックマン社製)の100ミクロンアパーチャーチューブを用いて50%体積平均径を平均粒径とした。粒度分布は、50%体積平均径/50%個数平均径より求めた。
【0122】
(平均円形度)
東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」により求めた。
ここで、フロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、円形度は以下の方法にて算出した値である。
【0123】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。「FPIP−1000」のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0124】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。
平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0125】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0126】
(粒子形状)
合一後の粒子を光学顕微鏡(600倍)および電子顕微鏡(SEM)(500倍、1000倍)にてトナー表面状態および合一界面の状態より確認すると共に、トナーの円形度から評価した。
粒子形状の評価基準
◎:トナー表面が滑らかであり、形状が球形であって、かつ、平均円形度0.980以上。
○:トナー表面が滑らかで、形状が略球形であって、かつ、平均円形度0.975以上0.980未満。
△:トナー表面が滑らかであるが、合一界面があって、かつ、平均円形度0.964以上0.975未満。
×:トナー表面が粗く、粒子合一界面があって、かつ、平均円形度0.964未満。
【0127】
(帯電量及び帯電安定性の評価)
トナーとシリコンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製)の比率を97/3とした現像剤を調整し、100mlのポリ容器にて1分間、10分間、30分間、60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し、帯電量をトレックジャパン(株)製「210HSー2A」ブローオフ帯電量測定機器を用いて測定した。それらの平均値をとったものを帯電量とした。また、前記10分間、30分間及び60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した帯電量において、最大帯電量と最小帯電量の差を求め、この値を帯電安定性の評価とした。この値が小さいほど帯電安定性に優れることを表す。
【0128】
(帯電量の評価基準)
◎:−45μC/g以上
○:−40μC/g以上、−45μC/g未満
△:−35μC/g以上、−40μC/g未満
×:−30μC/g未満
【0129】
(耐熱保存性試験)
実施例および比較例で得られたトナー3gをガラス製30cc瓶に入れ、温度55℃/湿度30%で12時間保管し、トナーの凝集を観察した。トナーが凝集しなかったものを○、部分的に凝集していたものを△、凝集していたものを×で示す。
【0130】
(光沢性の評価)
紙上にトナーによる未定着ベタ画像を形成し、別に用意した定着試験器により未定着ベタ画像の定着を行った。ヒートロール温度160℃、90mm/秒のスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)に通して定着を行った。定着後のベタ画像印字紙上の光沢を日本電色工業(株)製のグロスメーターを使用し投受光角60°で測定し、下記基準に従って評価した。
◎:数値が9以上
○:数値が7以上、9未満
△:数値が5以上、7未満
×:数値が3以上、5未満
【0131】
【表3】