【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。最初にトナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。
【0088】
合成例1〜3,5,7(ポリエステル樹脂の合成)
フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けた5リットル4口フラスコに下記表1及び表2に示した多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)を投入し、触媒としてテトライソプロピルチタネート(TIPT)を全モノマーに対して0.2重量%を投入し、常圧窒素気流下にて180℃で5時間エステル交換反応を行った。その後、表1及び表2記載の残りの多塩基酸(a1)を投入し、210℃迄昇温し、2時間反応させた。次いで185℃まで降温した後、表1及び表2記載(a3)TMAnを所定量投入し2時間反応させた後、205℃へ昇温し666Pa以下の真空度にて減圧反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。合成したポリエステル樹脂の組成および物性値(特性値)を表1及び表2に示す。
【0089】
合成例4,6,8(ポリエステル樹脂の合成)
フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けた5リットル4口フラスコに下記表1及び表2に示した、多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)の所定量を投入し、触媒としてテトライソプロピルチタネート(TIPT)を全モノマー量に対して0.2重量%を投入し、常圧窒素気流下にて245℃で4時間反応させた後、185℃へ降温し(a3)を所定量投入し、2時間反応させた後、230℃へ昇温し666Pa以下の真空度にて減圧反応を行いポリエステル樹脂を得た。反応追跡は、デジタルコーンビスコメーター(東亜工業株式会社製)「CV−1S」による粘度測定により追跡し、所定の粘度となったところで反応を停止し各種ポリエステル樹脂を得た。合成したポリエステル樹脂の組成および物性値(特性値)を表2に示す。
【0090】
ここで、表1,2中の各ポリエステル樹脂の性状値は以下の方法にて測定した値である。
<ポリエステル樹脂中のスルホン酸ナトリウム塩基の含有量(S/Kα強度)>
樹脂中のスルホン酸基モノマー量の定量方法として、蛍光X線分析(EDX)装置(株式会社島津製作所製EDX−700)より、S元素の特性X線エネルギーKα線のX線検出強度より、樹脂中スルホン酸基中のS元素量を分析し、S/Kα強度として表示した。
【0091】
<分子量>
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL−H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC−8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0092】
<軟化点(T1/2温度)>
下記条件にて測定された1/2法による溶融温度(℃)である。
測定機器:島津製作所製フローテスターCFT−500D
測定条件:昇温速度6℃/min、ノズル1.0mmφ×10mm、荷重10kgf、試料量1.5g
【0093】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は以下に示す条件で測定した値(℃)である。
測定機器:セイコー電子工業(株)製DSC220C
測定条件:10℃/min,試料:アルミ容器に試料を10mg程度入れ、ふたをする。
測定方法:DSC(示唆走査熱量分析)法
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
表1及び表2中の略号は以下の通りである。
DMT:テレフタル酸ジメチル
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
SIPM:イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム
SIPA:イソフタル酸−5−スルホン酸ナトリウム
EG:エチレングリコール
NPG:2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール
PG:1,2−プロパンジオール
TMAn:無水トリメリット酸
【0096】
(ワックスマスターの調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)30質量部を120℃に加温し溶解させた後、イオン交換水57質量部に乳化剤「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬(株)製)を0.11量部添加し90℃に加温した乳化剤混合温水中へ溶解した前記カルナバワックスを投入し強制乳化装置「TKホモミクサー」(プライミクス(株)製)にて乳化した。その後、撹拌しながら30℃以下になるまで冷却し、固形分35質量%になるように調整しワックスエマルジョンとした。
前記合成例7で得られたポリエステル樹脂R7の70質量部を酢酸エチル85.6質量部をデスパーを用いて、750rpmの回転数にて60分間分散させた後、前記ワックスエマルジョンの87.9質量部を投入しデスバーにて、750min
−1の回転数にて5分間分散予備混合した後、アイガーモーターミル(米国アイガー社製「M−1000」)で周速13.3m/sにて90分間分散処理しワックスマスター(1)を調整した。
【0097】
(比較用ワックスマスター)の調製例)
合成例7で得られたポリエステル樹脂R7に代えて、合成例8で得られたポリエステル樹脂R8を用いる他は、前記「ワックスマスターの調製例」と同様にしてワックスマスター(2)を調整した。
【0098】
(着色剤マスターチップの製造例)
シアン顔料(DIC株式会社製シアン顔料「Ket Blue111」C.I.ピグメントB−15:3)の2000質量部と、前記合成例7で得られたポリエステル樹脂R7の2000質量部とを、ST/AO撹拌羽根を取り付けた20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山製)へ投入し、698min
−1で2分間撹拌し混合物を得た。該混合物を、オープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山製ニーデックス「MOS140−800」)を用いて、溶融混練し着色剤マスターチップを得た(以下、これを「シアンマスターチップMC」とする)。
また、シアン顔料を、マゼンタ顔料(クラリアントジャパン製マゼンタ顔料「パーマネントルビンF6B」)、イエロー顔料(クラリアントジャパン製イエロー顔料「トナーイエローHG」)、ブラック顔料(キャボットジャパン製カーボンブラック「ELFTEX8」)に変えて、マスターチップを得た(以下、これらをそれぞれ「マゼンタマスターチップMM」、「イエローマスターチップYM」、「ブラックマスターチップBM」とする。
また、得られた各色のマスターチップを前記ポリエステル樹脂R12及び酢酸エチルで希釈し、400倍の光学顕微鏡で着色剤の微分散状態、粗大粒子の有無を観察したところ、粗大粒子がなく、均一に微分散していた。各着色剤のマスターチップの組成は、それぞれ質量比でシアンマスターチップ:着色剤/樹脂2=(50)/(50)、マゼンタ:着色剤/樹脂2=(50)/(50)、イエロー:着色剤/樹脂2=(55)/(45)、ブラック:着色剤/樹脂2=(40)/(60)であった。
【0099】
(比較用着色剤マスターチップの製造)
合成例7で得られたポリエステル樹脂R7に代えて、合成例8で得られたポリエステル樹脂R8を用いる他は、前記「着色剤マスターチップの製造例」と同様にして、各色の着色剤マスターチップを得た。ここで、シアン顔料を用いたものを「シアンマスターチップMC2」、マゼンタ顔料を用いたものを「マゼンタマスターチップMM2」、イエロー顔料を用いたものを「イエローマスターチップYM2」、ブラック顔料を用いたものを「ブラックマスターチップBM2」とする。
【0100】
実施例1
(樹脂溶液調製工程)
ブラックマスターチップBMを42質量部、前記合成例1で得られたポリエステル樹脂R1 158.0質量部、及び酢酸エチル159.9質量部を40〜45℃の範囲で翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所(株)製高速攪拌機)を使用して777min
−1で1時間混合し、溶解・分散を行い、その後、上記ワックスマスター(1) 241.6質量部を投入しデスパーにて30分間分散を行い、着色剤含有樹脂溶液を調製した(工程1)。
【0101】
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に工程1で得られた着色剤含有樹脂溶液601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、777min
−1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min-1に変更して310質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの各々の微粒子が安定的に分散している状態が観察され、未乳化物は観察されなかった。更に、回転数を777min
−1に落とし、アニオン性乳化剤である「ネオゲンSC−F(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した(工程2)。
【0102】
(合一工程)
次いで、翼径340mmの「マックスブレンド翼」(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記乳化工程で得られた縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min
−1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min
−1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min−1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min
−1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.5μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0103】
(分離・乾燥工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。脱溶剤後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、粉体混合機(ホソカワミクロン(株)社製「ナウタミキサ」)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.7μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
実施例2
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R2を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.986であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0104】
実施例3
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R3を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.07、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0105】
実施例4
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R4を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.9μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0106】
実施例5
実施例1の表1中の樹脂R1に代えて、樹脂R5を用いた他は、実施例1と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.7μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.985であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、疎水性シリカ(クラリアントジャパン社製「シリカH13TM」)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した静電荷画像用トナーを製造した。
【0107】
比較例1[乳化工程後、合一工程前に脱溶剤処理した例]
(樹脂溶液調製工程)
着色剤マスターチップとして、ブラックマスターチップBMを42質量部、前記合成例3で得られたポリエステル樹脂R3 158.0質量部、及び酢酸エチル159.9質量部を40〜45℃の範囲で翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所(株)製高速攪拌機)を使用して777min
−1で1時間混合し、溶解・分散を行い、その後、前記ワックスマスター(1) 241.6質量部を投入しデスパーにて30分間分散を行い、着色剤含有樹脂溶液を調製した。
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのディスパーを有する円筒型の容器に「樹脂溶液調製工程」で得られた着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、777min
-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min
-1に変更して310質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min
-1に落とし、アニオン性乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した(工程2)。
(脱溶剤工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。
【0108】
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min
-1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min
-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min
-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min
-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min
-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が2.3μmにて粒子成長が停止したため、希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0109】
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、2.0μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.957であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0110】
比較例2[乳化工程後、合一工程前に脱溶剤処理を行い、加熱融着させた例]
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に比較例1の「樹脂溶液調製工程」で得られた着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、777min
-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min
-1に変更して310質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min
-1に落とし、アニオン性乳化剤であるネオゲンSC−F(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。
(脱溶剤工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。
【0111】
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min
-1に保持したまま、温度を70℃に調整した。その後回転数を120min
-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min
-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min
-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min
-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.4μmにて粒子成長が停止したため、希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0112】
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.7μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.15、平均円形度は、0.968であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0113】
比較例3(スルホン酸ナトリムを有しないポリエステル樹脂を使用した例)
(樹脂溶液調製工程)
ブラックマスターチップBM2を42質量部、前記合成例3で得られたポリエステル樹脂R6 158.0質量部、及び酢酸エチル159.9質量部を40〜45℃の範囲で翼径230mmのデスパー(アサダ鉄工所(株)製高速攪拌機)を使用して777min
−1で1時間混合し、溶解・分散を行い、その後、前記ワックスマスター(2) 241.6質量部を投入しデスパーにて30分間分散を行い、着色剤含有樹脂溶液を調製した。
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に前記樹脂溶液調製工程で得られた着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、次いで1規定アンモニア水40質量部を加えて777min
-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min
-1に変更して350質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。顔料、ワックスの微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min
-1に落とし、残りの1規定アンモニア水10部とアニオン性乳化剤である「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。
【0114】
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min
-1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min
-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、回転数85min
-1で5分間、65min
-1で5分間攪拌し、47min
-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min
-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、回転数85min
-1で5分間、65min
-1で5分間攪拌し、47min
-1で20分間攪拌を継続した。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.5μmに成長した段階で希釈水を添加して合一操作を終了した。
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.984であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0115】
比較例4(スルホン酸ナトリムを有しないポリエステル樹脂を使用した例)
(乳化工程)
攪拌翼として翼径230mmのデスパーを有する円筒型の容器に比較例3で製造した着色剤含有樹脂組成物601.5質量部(固形分300.1質量部)を仕込み、次いで1規定アンモニア水40質量部を加えて777min
-1で攪拌した後、温度を35℃に調整した。次いで、攪拌速度を1100min
-1に変更して350質量部の脱イオン水を20質量部/minで滴下して懸濁液を作製した。この時の攪拌翼の周速は13.2m/sであった。脱イオン水を添加していくにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ攪拌混合は均一であった。脱イオン水を200質量部添加した後、粘度の急激な低下が観測された(転相乳化)。さらに残りの脱イオン水を所定量添加した後、スラリーを光学顕微鏡で観察すると、樹脂と顔料及びワックスの微粒子が分散している状態が観察された。未乳化物は観察されなかった。顔料、ワックスの微粒子は水性媒体中に安定に分散していることから、微粒子表面には樹脂が吸着していると考えられる。更に、回転数を777min
-1に落とし、残りの1規定アンモニア水10部とアニオン性乳化剤である「ネオゲンSC−F」(第一工業製薬(株)製)1.1質量部を脱イオン水184.7質量部にあらかじめ溶解した水溶液を添加した。
(脱溶剤工程)
消泡剤「BY22−517」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を0.0068質量部添加後、減圧下、真空度が4kPaとなるまで酢酸エチル及び水を留去した。
(合一工程)
次いで、翼径340mmのマックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業製)付属の円筒容器に、上記縣濁液を移送した後、攪拌速度を85min
-1に保持したまま、温度を26℃に調整した。その後回転数を120min
-1に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液120質量部を、10質量部/minで滴下し、滴下終了5分後、段階的に攪拌回転数を下げ、最終的な回転数は47min
-1で20分間攪拌を継続した。このときの撹拌翼の周速は0.47m/sであった。引き続き、回転数を120min
-1に調整し、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部/minで20質量部滴下し、滴下終了5分後、上記操作同様に、回転数85rpmに下げて5分間、更に段階的に攪拌回転数を下げ、47min
-1で20分間攪拌を継続させる操作を行った。その後、濃度5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を滴下して攪拌する操作を3回繰り返し、粒径が6.4μmにて粒子成長が停止したため、希釈水を添加して合一操作を終了した。
【0116】
(分離・乾燥工程)
合一後のスラリーは、固液分離と再分散による洗浄を繰り返した後、バスケット型遠心分離器により着色剤樹脂粒子のウットケーキを得た。その後、ナウタミキサ(ホソカワミクロン(株)社製)にて乾燥しトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、1.9μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.08、平均円形度は、0.960であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカH13TM(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0117】
比較例5(スルホン酸ナトリムを有しないポリエステル樹脂を使用した例)
合一工程における温度条件を26℃から70℃へ変更する他は比較例4と同様にしてトナー母粒子を得た。このトナー母粒子の体積平均粒径(d50)は、5.8μm、体積平均粒径/個数平均粒径=1.17、平均円形度は、0.965であった。
(外添工程)
トナー母粒子に、トナー母粒子100部に対して、シリカ「H13TM」(クラリアントジャパン社製)を1部添加し、これらをヘンシェルミキサーにより、35m/secにて5分間処理して静電荷像現像用トナーを製造した。
【0118】
表3に上記各合成例で得られたポリエステル樹脂中のスルホン酸ナトリウム塩基の含有量、実施例1〜5及び比較例1〜5の乳化工程後の乳化状態の評価、及び最終的に得られた各トナーの評価結果を示す。表3に示される各物性の評価測定方法は下記の通りである。
【0119】
<乳化状態評価>
転相乳化後の微粒子を光学顕微鏡にて分散状態を確認した。観察時の倍率は300倍、600倍の2視野で確認し、目視で視野中に6μm以上の乳化物または、未乳化物が有無を確認。
【0120】
(乳化状態の評価基準)
◎:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:0
○:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:0〜10
△:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:10〜20
×:300倍の視野に6μm以上の乳化物または、未乳化物の数:20以上
【0121】
<トナー性状の評価方法>
(粒度分布)
コールターマルチサイザーII(コールターベックマン社製)の100ミクロンアパーチャーチューブを用いて50%体積平均径を平均粒径とした。粒度分布は、50%体積平均径/50%個数平均径より求めた。
【0122】
(平均円形度)
東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」により求めた。
ここで、フロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、円形度は以下の方法にて算出した値である。
【0123】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置「FPIP−1000」中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。「FPIP−1000」のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0124】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。
平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0125】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0126】
(粒子形状)
合一後の粒子を光学顕微鏡(600倍)および電子顕微鏡(SEM)(500倍、1000倍)にてトナー表面状態および合一界面の状態より確認すると共に、トナーの円形度から評価した。
粒子形状の評価基準
◎:トナー表面が滑らかであり、形状が球形であって、かつ、平均円形度0.980以上。
○:トナー表面が滑らかで、形状が略球形であって、かつ、平均円形度0.975以上0.980未満。
△:トナー表面が滑らかであるが、合一界面があって、かつ、平均円形度0.964以上0.975未満。
×:トナー表面が粗く、粒子合一界面があって、かつ、平均円形度0.964未満。
【0127】
(帯電量及び帯電安定性の評価)
トナーとシリコンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製)の比率を97/3とした現像剤を調整し、100mlのポリ容器にて1分間、10分間、30分間、60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し、帯電量をトレックジャパン(株)製「210HSー2A」ブローオフ帯電量測定機器を用いて測定した。それらの平均値をとったものを帯電量とした。また、前記10分間、30分間及び60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した帯電量において、最大帯電量と最小帯電量の差を求め、この値を帯電安定性の評価とした。この値が小さいほど帯電安定性に優れることを表す。
【0128】
(帯電量の評価基準)
◎:−45μC/g以上
○:−40μC/g以上、−45μC/g未満
△:−35μC/g以上、−40μC/g未満
×:−30μC/g未満
【0129】
(耐熱保存性試験)
実施例および比較例で得られたトナー3gをガラス製30cc瓶に入れ、温度55℃/湿度30%で12時間保管し、トナーの凝集を観察した。トナーが凝集しなかったものを○、部分的に凝集していたものを△、凝集していたものを×で示す。
【0130】
(光沢性の評価)
紙上にトナーによる未定着ベタ画像を形成し、別に用意した定着試験器により未定着ベタ画像の定着を行った。ヒートロール温度160℃、90mm/秒のスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)に通して定着を行った。定着後のベタ画像印字紙上の光沢を日本電色工業(株)製のグロスメーターを使用し投受光角60°で測定し、下記基準に従って評価した。
◎:数値が9以上
○:数値が7以上、9未満
△:数値が5以上、7未満
×:数値が3以上、5未満
【0131】
【表3】