特許第6028712号(P6028712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028712両面成膜方法と金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028712
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】両面成膜方法と金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/58 20060101AFI20161107BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20161107BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20161107BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20161107BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C23C14/58 B
   C23C14/14 D
   C23C14/34 V
   C23C14/56 A
   H05K1/03 630G
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-220244(P2013-220244)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81374(P2015-81374A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(72)【発明者】
【氏名】大上 秀晴
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−149284(JP,A)
【文献】 特開2002−367847(JP,A)
【文献】 特公平07−062238(JP,B2)
【文献】 特開2010−053447(JP,A)
【文献】 特開平07−073459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
B32B 1/00−43/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧雰囲気下においてロール・ツー・ロールで搬送される長尺状樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜する両面成膜方法であって、成膜された各金属膜上に湿式めっき法による金属めっき層を形成して金属めっき層付樹脂フィルムが製造される上記金属膜の両面成膜方法において、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
第二スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段と第二スパッタリング手段が収容される成膜室と隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、第二成膜工程および金属膜酸化工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とする両面成膜方法。
【請求項2】
減圧雰囲気下においてロール・ツー・ロールで搬送される長尺状樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜する両面成膜方法であって、成膜された各金属膜上に湿式めっき法による金属めっき層を形成して金属めっき層付樹脂フィルムが製造される上記金属膜の両面成膜方法において、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
オゾン反応手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段が収容される成膜室と第二スパッタリング手段が収容される成膜室に対しそれぞれ隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、金属膜酸化工程および第二成膜工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とする両面成膜方法。
【請求項3】
減圧室内に設けられる上記オゾン反応手段が、隔壁の開口部を介し第一スパッタリング手段と第二スパッタリング手段を収容する成膜室から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の両面成膜方法
【請求項4】
減圧室内に設けられる上記オゾン反応手段が、隔壁の開口部を介し第一スパッタリング手段を収容する成膜室から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の両面成膜方法
【請求項5】
記オゾン反応手段を構成するオゾン反応室内が100℃以上に加熱されていることを特徴とする請求項3または4に記載の両面成膜方法。
【請求項6】
上記長尺状樹脂フィルムが、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンフィルムから選ばれる1種で構成されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の両面成膜方法。
【請求項7】
両面成膜方法により長尺状樹脂フィルムの両面に成膜される上記金属膜が金属シード層とこの金属シード層上に形成される金属ベース層とで構成され、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階の金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法において、
上記金属シード層がNi合金で構成され、上記金属ベース層がCuまたはCu合金で構成されると共に、上記金属シード層と金属ベース層を請求項1〜のいずれかに記載の両面成膜方法により成膜することを特徴とする金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状樹脂フィルム等の長尺体両面にスパッタリング法により金属膜を連続的に成膜する両面成膜方法に係り、特に、両面に金属膜が成膜された直後における長尺状樹脂フィルム(長尺体)を巻き取りロールに巻き取った際、金属膜同士が貼り付いてしまうブロッキング現象が起こり難い両面成膜方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、樹脂フィルム上に金属膜を被覆して得られる多種類のフレキシブル配線基板が用いられ、このフレキシブル配線基板には、樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜した金属膜付樹脂フィルムが用いられている。また、金属膜付樹脂フィルムは折り曲げて使用されることがあるため、樹脂フィルムに対する金属膜の密着力が高いことが必要となり、更に、配線パターンの繊細化、高密度化に伴い、金属膜にピンホールが存在すると断線の原因になり易いためピンホールが無いことも求められている。
【0003】
そして、この種の金属膜付樹脂フィルムの製造方法として、従来、金属箔を接着剤により樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングしかつ乾燥させて製造する方法、および、樹脂フィルムに真空成膜法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等)若しくは湿式めっき法により金属膜を成膜して製造する方法等が知られている。
【0004】
また、真空成膜法若しくは湿式めっき法を用いる三番目の製造方法として、成膜速度は遅いが密着力に優れる金属膜を形成できるスパッタリング法を用いて金属膜付樹脂フィルムを製造する方法が特許文献1に開示され、また、成膜速度は遅いが密着力に優れる金属膜を形成できるスパッタリング法を用いて薄膜の金属ベース層をまず成膜し、次いで成膜速度の速い湿式めっき法を用い上記金属ベース層上に厚膜の金属膜(すなわち、金属めっき層)を形成して金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)を効率よく製造する方法が特許文献2に開示されている。尚、特許文献1には、金属膜の密着力を更に高めるため、2種類のスパッタリングターゲットを用いた方法も開示されている。すなわち、モネルメタル等をスパッタリングターゲットとして薄膜の金属シード層をまず成膜し、次いで銅等をスパッタリングターゲットとして上記金属シード層上に厚膜の金属膜を成膜する方法が提案されている。
【0005】
そして、成膜速度の速い湿式めっき法と成膜速度の遅いスパッタリング法を併用する特許文献2の製造方法は、スパッタリング法のみを用いる特許文献1の方法と比較して効率に優れるため、特許文献2に記載された製造方法が広く利用されている。
【0006】
また、スパッタリング法により長尺状樹脂フィルム(長尺体)の両面に効率的に金属膜を成膜する装置としてはスパッタリングウェブコータが広く用いられ、特許文献4や特許文献5にスパッタリングウェブコータの一例が開示されている。
【0007】
ところで、スパッタリングウェブコータを用いて長尺状樹脂フィルム(長尺体)両面に金属膜を成膜した場合、成膜直後の金属膜は表面活性が高い状態にある。このため、両面に金属膜が成膜された直後における長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取った場合、金属膜同士が貼り付いてしまうブロッキングと称される現象が発生することがあり、長尺状樹脂フィルムの一方の面に成膜された金属膜が剥がれて他方の面に貼り付いたり、フィルム皺を生じさせたりすることがあった。尚、ブロッキング現象のメカニズムを考察すると、金属膜が成膜された長尺状樹脂フィルム(長尺体)を大気圧下で巻き取るならば、長尺状樹脂フィルムの金属膜同士間に気体が巻き込まれるため上記ブロッキング現象は起こり難くなる。しかし、稼働中のスパッタリングウェブコータ内部においては減圧雰囲気下にあり、長尺状樹脂フィルムの金属膜同士間に巻き込まれる気体が存在しないため、上記ブロッキング現象が起こってしまう。
【0008】
この問題を解決する方法として、特許文献3では、成膜直後における金属膜の表面に真空ポンプ油等の有機物液体を塗布する方法を提案している。しかし、特許文献3で提案された方法は、真空ポンプ油等の有機物液体を除去しなければならない問題と、減圧雰囲気下のスパッタリングウェブコータ内で有機物液体を取り扱う必要があるため、スパッタリングウェブコータにおけるメンテナンスの頻度が増えてしまう問題が存在した。
【0009】
また、特許文献4では、成膜直後における金属膜の表面にイオンビーム照射処理あるいはプラズマ処理を施して酸化膜を形成し、上記ブロッキングを防止する方法を提案している。しかし、特許文献4で提案された方法は、イオンビーム等を照射した際の金属膜のスパッタリング作用に起因して成膜装置内が汚染されることがあり、その分、メンテナンスの頻度が増える可能性が懸念される。
【0010】
また、特許文献5では、長尺状樹脂フィルム(長尺体)の両面にスパッタリングウェブコータを用いて金属膜を成膜し、かつ、金属膜表面にスパッタリングウェブコータにより連続して金属酸化物薄膜を成膜してブロッキングを防止する方法を提案している。しかし、特許文献5で提案された方法においては、金属膜表面にスパッタリングウェブコータにより連続して金属酸化物薄膜を成膜する際、金属酸化物薄膜の膜厚が薄過ぎるとピンホールの存在等によりブロッキングの発生が懸念され、反対に膜厚が厚過ぎると金属酸化物薄膜のエッチング処理(両面に金属膜が成膜された長尺状樹脂フィルムを金属ベース層付樹脂フィルムとして適用する場合、湿式めっき法により金属ベース層上に厚膜の金属膜を形成する前に金属酸化物薄膜を除去する必要がある)を煩雑にする悪影響が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3447070号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献2】特許第3570802号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献3】特開2009−249703号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献4】特開2010−053447号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献5】特開2012−246511号公報(特許請求の範囲参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、両面に金属膜が成膜された直後における長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取った際、金属膜同士が貼り付いてしまうブロッキング現象が起こり難い両面成膜方法を提供し、合わせて上記両面成膜方法を用いた金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、金属膜同士が貼り付いてしまうブロッキング現象を防止するため、本発明者は、特許文献3〜5に記載された方法とは異なる方法を検討した。
【0014】
まず、長尺状樹脂フィルム(長尺体)の両面にスパッタリングウェブコータを用いて金属膜(例えば、金属シード層とこの上に成膜される金属ベース層とから成る金属膜)を形成する際、所望厚の金属ベース層が成膜される時点を見計らいながら成膜室内に酸素ガスを導入し、スパッタリング中に金属ベース層表面を酸化させる方法を検討した。
【0015】
しかし、スパッタリング中に酸素ガスを導入する方法は、成膜された金属ベース層の内部まで酸化される危険があり、金属ベース層の電気抵抗が増加して金属ベース層付樹脂フィルムとして利用できなくなる可能性が考えられ、かつ、例え金属ベース層付樹脂フィルムとして利用できたとしても、厚膜の酸化層をエッチング処理により除去する必要があることから、後工程である湿式めっき工程に悪影響を及ぼしてしまうことが確認された。
【0016】
そこで、スパッタリング成膜中に酸素ガスを導入する上記方法に代えて、所望厚の金属ベース層が成膜された時点でスパッタリング成膜を一旦停止し、スパッタリングの停止中に酸素ガスを導入する方法を検討した。
【0017】
尚、既に成膜された金属膜を真空中で酸化させる方法は多様にあるが、酸素ガスを成膜室内に導入するだけではブロッキング現象の低減効果はほとんど確認されない。そこで、酸化をアシストするため、酸素プラズマや酸素イオンビームを用いる方法があるが、設備が大がかりになり、酸素プラズマや酸素イオンビームの局所的な熱負荷によりフィルム皺やうねりが生じ易く、かつ、上述したメンテナンスの頻度を増やす問題が考えられる。
【0018】
このような技術的検討を経た後、本発明者は、強力な酸化力を有するオゾン(O3)を用いて金属膜の最表面を酸化させて金属酸化膜を形成する方法を見出すに至った。
【0019】
電気化学的ポテンシャルは、水酸基ラジカル(OH*)が2.80V、オゾン(O3)が2.08V、過酸化水素(H22)が1.78V、酸素(O2)が1.23Vで、水酸基ラジカル(OH*)はオゾン(O3)よりも強い酸化力を有するが、取り扱いが難しくかつ排気の処理も大がかりとなる不都合がある。
【0020】
そして、オゾン雰囲気中で金属膜(金属シード層と金属ベース層)の最表面を酸化させた場合、金属膜の最表面に形成された金属酸化膜はわずかなエッチング処理にて除去可能な極薄の皮膜であることから後工程である湿式めっき工程に悪影響を与えることも無い。
【0021】
本発明はこのような技術的発見に基づき完成されたものである。
【0022】
すなわち、請求項1に係る発明は、
減圧雰囲気下においてロール・ツー・ロールで搬送される長尺状樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜する両面成膜方法であって、成膜された各金属膜上に湿式めっき法による金属めっき層を形成して金属めっき層付樹脂フィルムが製造される上記金属膜の両面成膜方法において、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
第二スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段と第二スパッタリング手段が収容される成膜室と隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、第二成膜工程および金属膜酸化工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
減圧雰囲気下においてロール・ツー・ロールで搬送される長尺状樹脂フィルムの両面に金属膜を成膜する両面成膜方法であって、成膜された各金属膜上に湿式めっき法による金属めっき層を形成して金属めっき層付樹脂フィルムが製造される上記金属膜の両面成膜方法において、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
オゾン反応手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段が収容される成膜室と第二スパッタリング手段が収容される成膜室に対しそれぞれ隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、金属膜酸化工程および第二成膜工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とする。
【0023】
また、請求項3に係る発明は、
請求項1に記載の両面成膜方法において、
減圧室内に設けられる上記オゾン反応手段が、隔壁の開口部を介し第一スパッタリング手段と第二スパッタリング手段を収容する成膜室から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室により構成されていることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項2に記載の両面成膜方法において、
減圧室内に設けられる上記オゾン反応手段が、隔壁の開口部を介し第一スパッタリング手段を収容する成膜室から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室により構成されていることを特徴とし、
請求項に係る発明は、
請求項3または4に記載の両面成膜方法において、
記オゾン反応手段を構成するオゾン反応室内が100℃以上に加熱されていることを特徴とし、
請求項に係る発明は、
請求項1〜のいずれかに記載の両面成膜方法において、
上記長尺状樹脂フィルムが、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンフィルムから選ばれる1種で構成されることを特徴とする。
【0025】
更に、請求項に係る発明は、
両面成膜方法により長尺状樹脂フィルムの両面に成膜される上記金属膜が金属シード層とこの金属シード層上に形成される金属ベース層とで構成され、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階の金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法において、
上記金属シード層がNi合金で構成され、上記金属ベース層がCuまたはCu合金で構成されると共に、上記金属シード層と金属ベース層を請求項1〜のいずれかに記載の両面成膜方法により成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1、3、5〜6に係る両面成膜方法、および、上記両面成膜方法を用いた請求項に係る金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法は、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
第二スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段と第二スパッタリング手段が収容される成膜室と隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、第二成膜工程および金属膜酸化工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とし、
また、請求項2、4、5〜6に係る両面成膜方法、および、上記両面成膜方法を用いた請求項に係る金属ベース層付樹脂フィルムの製造方法は、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
オゾン反応手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段が収容される成膜室と第二スパッタリング手段が収容される成膜室に対しそれぞれ隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、金属膜酸化工程および第二成膜工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴としている。
【0027】
そして、上記金属膜酸化工程において、金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルムの少なくとも一方の金属膜最表面に金属酸化膜を形成しているため、上述したブロッキング現象を確実に防止でき、しかも、オゾン雰囲気中で金属膜の最表面に酸化形成された金属酸化膜はわずかなエッチング処理にて除去可能な極薄の皮膜であることから、両面に金属膜が成膜された長尺状樹脂フィルムを金属ベース層付樹脂フィルムとして適用した場合に湿式めっき工程に悪影響を与えない効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術に係る両面成膜装置の概略構成を示す説明図。
図2本発明で用いられる第一に係る両面成膜装置の概略構成を示す説明図。
図3本発明で用いられる第二に係る両面成膜装置の概略構成を示す説明図。
図4】従来技術に係る金属ベース層付樹脂フィルム(金属ベース層を構成する金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルム)の概略構成を示す断面図。
図5】本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルム(金属ベース層を構成する金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルム)の概略構成を示す断面図。
図6】本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルム(金属ベース層を構成する金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルム)の金属ベース層上に湿式めっきにより金属めっき層が成膜された金属めっき層付樹脂フィルムの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
(1)金属ベース層付き樹脂フィルム
フレキシブル配線基板に適用される金属膜付樹脂フィルムを製造する場合、上述したように、成膜速度の速い湿式めっき法と成膜速度の遅いスパッタリング法を併用する特許文献2に記載の方法が広く利用されている。
【0033】
そして、成膜速度の速い湿式めっき法にて厚膜の金属膜を形成する前段階の金属膜付樹脂フィルム(すなわち、長尺状樹脂フィルムとその両面にスパッタリング法により成膜された金属膜とで構成される前駆体としての金属膜付樹脂フィルム)が、特許文献2に記載された方法で用いられる金属ベース層付き樹脂フィルムである。
【0034】
(1-1)従来技術に係る金属ベース層付樹脂フィルム
従来技術に係る金属ベース層付樹脂フィルム(金属ベース層を構成する金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルム)は、図4に示すように、長尺状の樹脂フィルム1と、この両面にスパッタリング法により成膜された金属シード層2と、この金属シード層2上にスパッタリング法により成膜された金属ベース層3とで構成されている。
【0035】
そして、図4に示された金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層3上に湿式めっき法により厚膜の金属膜(すなわち、金属めっき層)を形成して、フレキシブル配線基板に適用される金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)が得られる。
【0036】
尚、スパッタリング法にて長尺状の樹脂フィルム1両面に、金属シード層2と金属ベース層3とを連続して成膜した直後においては、金属ベース層3等金属膜の表面活性が高い状態にあるため、金属ベース層3等が成膜された長尺状の樹脂フィルム1を巻き取りロールに巻き取った場合、上述したように金属膜同士が貼り付いてしまうブロッキング現象が発生し、樹脂フィルム1の一方の面に成膜された金属膜が剥がれて他方の面に貼り付いたり、フィルム皺を生じさせたりする問題が存在する。
【0037】
(1-2)本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルム
本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルム(金属ベース層を構成する金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルム)は、図5に示すように、長尺状の樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11の両面にスパッタリング法により成膜された金属シード層12と、金属シード層12上にスパッタリング法により成膜された金属ベース層13と、オゾン(O3)を用いて金属ベース層13の最表面に形成された金属酸化膜から成るブロッキング防止層14とで構成されている。
【0038】
そして、湿式めっき法により厚膜の金属膜(すなわち、金属めっき層)を形成する際、図5に示すブロッキング防止層14がエッチングにより除去され、図6に示すように、スパッタリング法により成膜された金属ベース層13上に湿式めっき法により金属層(金属めっき層)18が成膜されて、フレキシブル配線基板に適用される金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)が得られる。
【0039】
尚、オゾン(O3)を用いて金属ベース層13の最表面に形成された金属酸化膜から成るブロッキング防止層14は、わずかなエッチング処理にて除去可能な極薄の皮膜であることから、湿式めっき工程に悪影響を与えない利点を有する。
【0040】
また、上記金属層18が形成される前の前駆体、すなわち、長尺状の樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11の両面にスパッタリング法により成膜された金属シード層12と、金属シード層12上にスパッタリング法により成膜された金属ベース層13と、オゾン(O3)を用いて金属ベース層13の最表面に形成された金属酸化膜から成るブロッキング防止層14とで構成される前駆体が、上述したように本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルムである。
【0041】
また、本発明で適用できる長尺状樹脂フィルム(長尺体)として、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等のフッ素系樹脂フィルムが挙げられ、金属膜付フレキシブル基板としての柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性を有する点から好ましい。
【0042】
(2)両面成膜方法
本発明の第一実施の形態に係る両面成膜方法は、減圧雰囲気下においてロール・ツー・ロールで搬送される長尺状樹脂フィルム(長尺体)の両面に金属膜を成膜する方法で、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
第二スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段と第二スパッタリング手段が収容される成膜室と隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、第二成膜工程および金属膜酸化工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とし、
また、本発明の第二実施の形態に係る他の両面成膜方法は、減圧雰囲気下においてロール・ツー・ロールで搬送される長尺状樹脂フィルム(長尺体)の両面に金属膜を成膜する方法で、
長尺状樹脂フィルムの搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第一スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの一方の面に金属膜を成膜する第一成膜工程と、
第一スパッタリング手段の下流側搬送路上に設けられたオゾン反応手段により上記長尺状樹脂フィルムの金属膜表面をオゾン雰囲気中で酸化させる金属膜酸化工程と、
オゾン反応手段の下流側搬送路上に設けられたキャンロールとスパッタカソードを有する第二スパッタリング手段により上記長尺状樹脂フィルムの他方の面に金属膜を成膜する第二成膜工程と、
金属膜が両面に成膜された上記長尺状樹脂フィルムを巻き取りロールに巻き取る巻き取り工程、を具備し、
上記オゾン反応手段は、第一スパッタリング手段が収容される成膜室と第二スパッタリング手段が収容される成膜室に対しそれぞれ隔壁を介し隣接して配置される減圧室内に設けられ、かつ、上記第一成膜工程、金属膜酸化工程および第二成膜工程を連続して行なうと共に、金属膜酸化工程で形成される金属酸化膜は、湿式めっき法による金属めっき層が形成される前段階において除去されることを特徴とする。
【0043】
尚、上記ブロッキング防止層14は、オゾン(O3)を用いて金属ベース層13の最表面に形成された極薄の金属酸化膜で構成されている。
【0044】
(2-1)オゾン(O3)を用いた酸化法
電気化学的ポテンシャルは、上述したように水酸基ラジカル(OH*)が2.80V、オゾン(O3)が2.08V、過酸化水素(H22)が1.78V、酸素(O2)が1.23Vで、水酸基ラジカル(OH*)はオゾン(O3)よりも強い酸化力を有するが、取り扱いが難しくかつ排気の処理も大がかりとなる不都合がある。
【0045】
尚、オゾン(O3)は、気相成膜法の一種であるALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法にも利用されはじめ、Al23、HfO2、ZrO2、Ta25、La23、CuO等の成膜が可能になっている。
【0046】
そして、オゾン雰囲気中のオゾン(O3)を用いて金属膜の最表面を酸化させた場合、金属膜の最表面に形成された金属酸化膜はわずかなエッチング処理にて除去可能な極薄の皮膜であることから、後工程である湿式めっき工程に悪影響を与えることも無い。
【0047】
ところで、上記オゾン(O3)を用いた酸化を促進させるには金属膜が成膜された長尺体(例えば金属ベース層付樹脂フィルム)を加熱することが望ましいが、既に金属膜が成膜された金属ベース層付樹脂フィルムを加熱した場合、成膜された金属膜と長尺状樹脂フィルム(長尺体)の熱膨張差によりフィルム皺やうねりの発生原因になることがある。このため、金属膜が成膜された長尺体(金属ベース層付樹脂フィルム)を加熱する場合には、100〜200℃までが適切である。
【0048】
(3)従来技術に係る両面成膜装置(スパッタリングウェブコータ)
従来技術に係る両面成膜装置(スパッタリングウェブコータ)は、図1に示すように、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fを巻き出す巻き出しロール20と長尺状樹脂フィルムFを巻き取る巻き取りロール36が真空装置(減圧室)内に設けられ、かつ、これ等巻き出しロール20と巻き取りロール36間の搬送路上には長尺状樹脂フィルムFの一方の面に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜するための第一スパッタリングウェブコータと、長尺状樹脂フィルムFの他方の面に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜するための第二スパッタリングウェブコータが設けられている。
【0049】
また、上記第一スパッタリングウェブコータは、水冷温調されたキャンロール24とこの外周面に沿って配置された4台のマグネトロンスパッタカソード40、41、42、43とで構成され、上記第二スパッタリングウェブコータは、水冷温調されたキャンロール32とこの外周面に沿って配置された4台のマグネトロンスパッタカソード44、45、46、47とで構成されている。
【0050】
また、上記巻き出しロール20と巻き取りロール36間には、ロール・ツー・ロールの搬送手段を構成する複数のフリーロール21、22、23,25、26、27、28、29、31、33、34、35が長尺状樹脂フィルムFの搬送方向に亘ってそれぞれ設けられている。
【0051】
また、上記巻き出しロール20と巻き取りロール36はパウダークラッチ等により張力バランスが保たれており、水冷温調されたキャンロール24、32の回転により長尺状樹脂フィルムFが搬送される。尚、上記巻き出しロール20と巻き取りロール36間には、駆動部を持たない上述のフリーロール21、22、23,25、26、27、28、29、31、33、34、35が設けられているが、張力によりキャンロール24、32の外周面に長尺状樹脂フィルムFを密着させる制御方法を採る場合には、上記フリーロール22、26、29、34に張力センサが取り付けられることもある。また、周速度差制御によりキャンロール24、32の外周面に長尺状樹脂フィルムFを密着させる方法を採る場合にはフリーロール23、25、31、33が駆動ロールとなることもある。
【0052】
また、第一スパッタリングウェブコータおよび第二スパッタリングウェブコータを用いて金属膜の成膜を行う前段の位置に、アルゴンガス、酸素ガス等を導入したプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行なう表面処理ユニット(図示せず)を配置することも可能である。表面処理ユニットを配置することにより、長尺状樹脂フィルムFの両面をクリーニングおよび活性化させることができる。
【0053】
上記巻き出しロール20から巻き出された長尺状樹脂フィルムFは、水冷温調されたキャンロールと4台のマグネトロンスパッタカソードをそれぞれ有する第一スパッタリングウェブコータと第二スパッタリングウェブコータの成膜領域に搬送される。そして、第一スパッタリングウェブコータの成膜領域で、金属シード層形成用と金属ベース層形成用の金属ターゲットが取り付けられた4台のマグネトロンスパッタカソード40、41、42、43(例えば、マグネトロンスパッタカソード40が金属シード層形成用、マグネトロンスパッタカソード41、42、43が金属ベース層形成用)を用いて水冷温調されたキャンロール24の外周面上に巻き付けられた長尺状樹脂フィルムFの一方の面(第1成膜面と称する)に金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜され、更に、金属シード層形成用と金属ベース層形成用の金属ターゲットが取り付けられた4台のマグネトロンスパッタカソード44、45、46、47(例えば、マグネトロンスパッタカソード44が金属シード層形成用、マグネトロンスパッタカソード45、46、47が金属ベース層形成用)を用いて水冷温調されたキャンロール32の外周面上に巻き付けられた長尺状樹脂フィルムFの他方の面(第2成膜面と称する)に金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜される。
【0054】
尚、上記金属ベース層のスパッタリング成膜には板状のターゲットを使用することが好ましいが、板状ターゲットを用いた場合、ターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがある。このため、ノジュール(異物の成長)の発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用することもできる。
【0055】
ところで、上記両面成膜装置(スパッタリングウェブコータ)を用いて、長尺状樹脂フィルムFの第1成膜面と第2成膜面に金属膜(金属シード層と金属ベース層)が成膜された長尺状樹脂フィルムFを上記巻き取りロール36に巻き取ってしまい、次工程の湿式めっきで成膜後の長尺状樹脂フィルム(金属ベース層付耐熱性樹脂フィルム)Fを巻き出そうとしたときに、ブロッキングによりフィルム同士が張り付いてしまい、無理に引き剥がそうとすると金属ベース層あるいは金属シードと金属ベース層が剥離してしまうことがあり、従来技術に係る両面成膜装置(スパッタリングウェブコータ)は改善の余地を有していた。
【0056】
(4)本発明で用いられる両面成膜装置
(4-1)本発明で用いられる第一に係る両面成膜装置
第一スパッタリング手段により長尺状樹脂フィルム(長尺体)の一方の面(第1成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜し、第二スパッタリング手段により長尺状樹脂フィルムの他方の面(第2成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜すると共に、オゾン反応手段により上記金属膜(金属シード層と金属ベース層)の最表面をオゾン雰囲気中で酸化させる本発明で用いられる第一に係る両面成膜装置(金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置)は、第一減圧室(成膜室)と隔壁を介し上記第一減圧室に隣接して設けられた第二減圧室(減圧室)を具備し、上記第一減圧室内には、長尺状樹脂フィルムを巻き出す巻き出しロールと、この巻き出しロールから巻き出された長尺状樹脂フィルムが巻き付けられるキャンロールとスパッタカソードを有しかつ上記長尺状樹脂フィルムの一方の面(第1成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第一スパッタリングウェブコータと、この第一スパッタリングウェブコータにより上記金属膜が成膜された長尺状樹脂フィルムが巻き付けられるキャンロールとスパッタカソードを有しかつ上記長尺状樹脂フィルムの他方の面(第2成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第二スパッタリングウェブコータが設けられ、かつ、上記第二減圧室内には、隔壁の開口部を介し第一減圧室(成膜室)から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室と、金属酸化膜(ブロッキング防止層)が酸化形成された長尺状樹脂フィルムを巻き取る巻き取りロールが設けられていると共に、ロール・ツー・ロールの搬送手段を構成する複数のロール群が長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘り上記第一減圧室と第二減圧室(減圧室)にそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0057】
また、本発明で用いられる第一に係る両面成膜装置においては、スパッタリング法による金属膜(金属シード層と金属ベース層)の成膜が行なわれる第一減圧室(成膜室)と、オゾン雰囲気下で金属膜の最表面を酸化させて金属酸化膜(ブロッキング防止層)の形成が行なわれる第二減圧室(減圧室)とで成膜等に適したガス圧が異なり、かつ、第二減圧室から第一減圧室にオゾンが流入することを防止するため、第一減圧室(成膜室)と第二減圧室(減圧室)を上記隔壁で区画して差動排気によりそれぞれ適したガス圧が保たれるように調整することを要する。また、オゾン(O3)を用いた酸化を促進させるため、金属膜が成膜された長尺体(金属ベース層付樹脂フィルム)を加熱する場合には、上述したように100〜200℃までが適切である。
【0058】
(4-2)本発明で用いられる第二に係る両面成膜装置
第一スパッタリング手段により長尺状樹脂フィルム(長尺体)の一方の面(第1成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜し、オゾン反応手段により上記第1成膜面に設けられた金属膜の最表面をオゾン雰囲気中で酸化させると共に、第二スパッタリング手段により長尺状樹脂フィルムの他方の面(第2成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する本発明で用いられる第一に係る両面成膜装置(金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置)は、第一減圧室(成膜室)と、隔壁を介し上記第一減圧室に隣接して設けられた第二減圧室(減圧室)と、隔壁を介し上記第二減圧室に隣接して設けられた第三減圧室(成膜室)を具備し、上記第一減圧室(成膜室)内には、長尺状樹脂フィルムを巻き出す巻き出しロールと、この巻き出しロールから巻き出された長尺状樹脂フィルムが巻き付けられるキャンロールとスパッタカソードを有しかつ長尺状樹脂フィルムの一方の面(第1成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第一スパッタリングウェブコータが設けられ、上記第二減圧室(減圧室)内には、隔壁の開口部を介し第一減圧室から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室が設けられ、かつ、上記第三減圧室(成膜室)内には、隔壁の開口部を介し第二減圧室から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムが巻き付けられるキャンロールとスパッタカソードを有しかつ長尺状樹脂フィルムの他方の面(第2成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第二スパッタリングウェブコータと、金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルムを巻き取る巻き取りロールが設けられていると共に、ロール・ツー・ロールの搬送手段を構成する複数のロール群が長尺状樹脂フィルムの搬送方向に亘り上記第一減圧室、第二減圧室およびに第三減圧室にそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0059】
また、本発明で用いられる第二に係る両面成膜装置においては、スパッタリング法による金属膜(金属シード層と金属ベース層)の成膜が行なわれる第一減圧室並びに第三減圧室(成膜室)と、オゾン雰囲気下で金属膜の最表面を酸化させて金属酸化膜(ブロッキング防止層)の形成が行なわれる第二減圧室(減圧室)とで成膜等に適したガス圧が異なり、かつ、第二減圧室から第一減圧室並びに第三減圧室にオゾンが流入することを防止するため、各減圧室を上記隔壁で区画して差動排気によりそれぞれ適したガス圧が保たれるように調整することを要する。また、オゾン(O3)を用いた酸化を促進させるため、金属膜が成膜された長尺体(金属ベース層付樹脂フィルム)を加熱する場合には、本発明で用いられる第一に係る両面成膜装置と同様、100〜200℃までが適切である。
【0060】
(5)金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置
(5-1)第一実施の形態に係る金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置
本発明の第一実施の形態に係る両面成膜方法を適用した金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置は、図2に示すように、第一減圧室(成膜室)90と、隔壁92を介し第一減圧室90に隣接して設けられた第二減圧室(減圧室)91を具備しており、上記隔壁92にはスリットロールを組み込んだ開口部65が設けられている。
【0061】
まず、上記第一減圧室90には、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fを巻き出す巻き出しロール50と、巻き出された長尺状樹脂フィルムFの一方の面(第1成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第一スパッタリングウェブコータと、長尺状樹脂フィルムFの他方の面に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第二スパッタリングウェブコータが設けられている。また、上記第一スパッタリングウェブコータは、水冷温調されたキャンロール54とこの外周面に沿って配置された4台のマグネトロンスパッタカソード70、71、72、73とで構成され、上記第二スパッタリングウェブコータは、水冷温調されたキャンロール61とこの外周面に沿って配置された4台のマグネトロンスパッタカソード74、75、76、77とで構成されている。
【0062】
他方、上記第二減圧室91には、隔壁92の開口部65を介し第一減圧室90から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムFの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80と、オゾン反応室80を通過して金属酸化膜(ブロッキング防止層)が酸化形成された長尺状樹脂フィルムFを巻き取る巻き取りロール66がそれぞれ設けられている。また、オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80の内側には図示外の加熱ヒータが配設され、オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80内を通過する長尺状樹脂フィルムFを100〜200℃の範囲で温度調節するようになっている。更に、第一減圧室90にオゾンが流入することを防止するため、上記オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80を差動排気する構成を採用してもよい。
【0063】
また、スパッタリング法による金属膜(金属シード層と金属ベース層)の成膜が行なわれる第一減圧室90と、オゾン雰囲気下で上記金属膜最表面を酸化させて金属酸化膜(ブロッキング防止層)が形成される第二減圧室91とで成膜等に適したガス圧が異なり、かつ、第二減圧室91から第一減圧室90にオゾンが流入することを防止するため、スリットロールが組み込まれた開口部65を有する上記隔壁92により各領域が区画されて差動排気されている。
【0064】
また、第一減圧室90内の巻き出しロール50と第二減圧室91内の巻き取りロール66間には、ロール・ツー・ロールの搬送手段を構成する複数のフリーロール51、52、53,55、56、57、58、59、60、62、63、64、67、68が長尺状樹脂フィルムFの搬送方向に亘ってそれぞれ設けられている。
【0065】
そして、長尺樹脂フィルムFは、第一減圧室90内の上記巻き出しロール50から巻き出されて第二減圧室91内の巻き取りロール66により巻き取られる。また、巻き出しロール50と巻き取りロール66はパウダークラッチ等により張力バランスが保たれており、水冷温調されたキャンロール54、61の回転により長尺樹脂フィルムFが搬送される。また、上記巻き出しロール50と巻き取りロール66間には、駆動部を持たない上述のフリーロール51、52、53,55、56、57、58、59、60、62、63、64、67、68が設けられているが、張力によりキャンロール54、61の外周面に長尺樹脂フィルムFを密着させる制御方法を採る場合には、上記フリーロール52、56、59、63に張力センサが取り付けられることもある。また、周速度差制御によりキャンロール54、61の外周面に長尺樹脂フィルムFを密着させる方法を採る場合にはフリーロール53、55、60、62が駆動ロールとなることもある。
【0066】
また、第一スパッタリングウェブコータおよび第二スパッタリングウェブコータを用いて金属膜の成膜を行う前段の位置に、アルゴンガス、酸素ガス等を導入したプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行なう表面処理ユニット(図示せず)を配置することも可能である。表面処理ユニットを配置することにより、長尺状樹脂フィルムFの両面をクリーニングおよび活性化させることができる。
【0067】
上記第一減圧室90内の巻き出しロール50から巻き出された長尺樹脂フィルムFは、水冷温調されたキャンロールと4台のマグネトロンスパッタカソードをそれぞれ有する第一スパッタリングウェブコータと第二スパッタリングウェブコータの成膜領域に搬送される。そして、第一スパッタリングウェブコータの成膜領域で、金属シード層形成用と金属ベース層形成用の金属ターゲットが取り付けられた4台のマグネトロンスパッタカソード70、71、72、73(例えば、マグネトロンスパッタカソード70が金属シード層形成用、マグネトロンスパッタカソード71、72、73が金属ベース層形成用)を用いて水冷温調されたキャンロール54の外周面上に巻き付けられた長尺状樹脂フィルムFの一方の面(第1成膜面)に金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜され、更に、金属シード層形成用と金属ベース層形成用の金属ターゲットが取り付けられた4台のマグネトロンスパッタカソード74、75、76、77(例えば、マグネトロンスパッタカソード74が金属シード層形成用、マグネトロンスパッタカソード75、76、77が金属ベース層形成用)を用いて水冷温調されたキャンロール61の外周面上に巻き付けられた長尺状樹脂フィルムFの他方の面(第2成膜面)に金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜された後、第一減圧室90から上記隔壁92の開口部65を通って第二減圧室91内に搬入される。
【0068】
そして、金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜された長尺樹脂フィルムFは、第二減圧室91のオゾンガスを導入するオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80を通過中に上記金属膜の最表面が酸化されて金属酸化膜(ブロッキング防止層)が形成される。金属シード層と金属ベース層から成る各金属膜の最表面に金属酸化膜(ブロッキング防止層)がそれぞれ形成された長尺樹脂フィルムFは、第二減圧室91内の巻き取りロール66に巻き取られて本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルムが得られる。
【0069】
第一実施の形態に係る金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置により製造された金属ベース層付樹脂フィルムは、巻き取りロール66に巻き取られる際に上記ブロッキング防止層が介在して金属膜同士が接触しないためブロッキング現象が低減され、金属ベース層が接触した側の金属ベース層に張り付いて剥離してしまうことがない。
【0070】
また、得られた金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層上に湿式めっき法を用いて膜厚の金属層を形成する際、電気めっき処理のみで行う場合と、一次めっきとして無電解めっき処理を行い、二次めっきとして電解めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う場合がある。湿式めっき処理は常法による湿式めっき法の諸条件を採用すればよい。
【0071】
そして、オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)内のオゾン雰囲気中において上記金属膜(金属シード層と金属ベース層)の最表面に酸化形成された金属酸化膜(ブロッキング防止層)は極薄の皮膜であることから、湿式めっき前のエッチング処理により容易に除去することが可能である。
【0072】
尚、乾式(スパッタリング法)・湿式めっき法による金属(金属ベース層と金属めっき層)の合計厚さは厚くとも18μm以下にすることが好ましい。
【0073】
(5-2)第二実施の形態に係る金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置
本発明の第二実施の形態に係る両面成膜方法を適用した金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置は、図3に示すように、第一減圧室(成膜室)190と、隔壁193を介し第一減圧室190に隣接して設けられた第二減圧室(減圧室)191と、隔壁194を介し第二減圧室191に隣接して設けられた第三減圧室(成膜室)192を具備しており、各隔壁193、194にはスリットロールを組み込んだ開口部195、196がそれぞれ設けられている。
【0074】
まず、上記第一減圧室190には、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fを巻き出す巻き出しロール150と、巻き出された長尺状樹脂フィルムFの一方の面(第1成膜面)に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第一スパッタリングウェブコータが設けられている。また、上記第一スパッタリングウェブコータは、水冷温調されたキャンロール154とこの外周面に沿って配置された4台のマグネトロンスパッタカソード170、171、172、173とで構成されている。
【0075】
他方、上記第二減圧室191には、隔壁193の開口部195を介し第一減圧室190から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムFの搬送方向に亘って配置されたオゾンガスを導入するオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180が設けられている。また、オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180の内側には図示外の加熱ヒータが配設され、オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180内を通過する長尺状樹脂フィルムFを100〜200℃の範囲で温度調節するようになっている。更に、第一減圧室190と第三減圧室192にオゾンが流入することを防止するため、上記オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180を差動排気する構成を採用してもよい。
【0076】
また、上記第三減圧室192には、隔壁194の開口部196を介し第二減圧室191から搬入されてくる長尺状樹脂フィルムFの他方の面に金属膜(金属シード層と金属ベース層)を成膜する第二スパッタリングウェブコータと、金属膜が両面に成膜された長尺状樹脂フィルムFを巻き取る巻き取りロール166がそれぞれ設けられている。また、上記第二スパッタリングウェブコータは、水冷温調されたキャンロール161とこの外周面に沿って配置された4台のマグネトロンスパッタカソード174、175、176、177とで構成されている。
【0077】
また、スパッタリング法による金属膜(金属シード層と金属ベース層)の成膜が行なわれる第一減圧190室並びに第三減圧室192と、オゾン雰囲気下で上記金属膜最表面を酸化させて金属酸化膜(ブロッキング防止層)が形成される第二減圧室191とで成膜等に適したガス圧が異なり、かつ、第二減圧室191から第一減圧190室並びに第三減圧室192にオゾンが流入することを防止するため、スリットロールが組み込まれた開口部195、196を有する各隔壁193、194により各領域が区画されて差動排気されている。
【0078】
また、第一減圧室190内の巻き出しロール150と第三減圧室192内の巻き取りロール166間には、ロール・ツー・ロールの搬送手段を構成する複数のフリーロール151、152、153,155、156、157、158、159、160、162、163、164が長尺状樹脂フィルムFの搬送方向に亘ってそれぞれ設けられている。
【0079】
そして、長尺樹脂フィルムFは、第一減圧室190内の上記巻き出しロール150から巻き出されて第三減圧室192内の巻き取りロール166により巻き取られる。また、巻き出しロール150と巻き取りロール166はパウダークラッチ等により張力バランスが保たれており、水冷温調されたキャンロール154、161の回転により長尺樹脂フィルムFが搬送される。また、上記巻き出しロール150と巻き取りロール166間には、駆動部を持たない上述のフリーロール151、152、153,155、156、157、158、159、160、162、163、164が設けられているが、張力によりキャンロール154、161の外周面に長尺樹脂フィルムFを密着させる制御方法を採る場合には、上記フリーロール152、156、159、163に張力センサが取り付けられることもある。また、周速度差制御によりキャンロール154、161の外周面に長尺樹脂フィルムFを密着させる方法を採る場合にはフリーロール153、155、160、162が駆動ロールとなることもある。
【0080】
また、第一スパッタリングウェブコータおよび第二スパッタリングウェブコータを用いて金属膜の成膜を行う前段の位置に、アルゴンガス、酸素ガス等を導入したプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行なう表面処理ユニット(図示せず)を配置することも可能である。表面処理ユニットを配置することにより、長尺状樹脂フィルムFの両面をクリーニングおよび活性化させることができる。
【0081】
上記第一減圧室190内の巻き出しロール150から巻き出された長尺樹脂フィルムFは、水冷温調されたキャンロールと4台のマグネトロンスパッタカソードをそれぞれ有する第一スパッタリングウェブコータの成膜領域に搬送される。そして、第一スパッタリングウェブコータの成膜領域で、金属シード層形成用と金属ベース層形成用の金属ターゲットが取り付けられた4台のマグネトロンスパッタカソード170、171、172、173(例えば、マグネトロンスパッタカソード170が金属シード層形成用、マグネトロンスパッタカソード171、172、173が金属ベース層形成用)を用いて水冷温調されたキャンロール154の外周面上に巻き付けられた長尺状樹脂フィルムFの一方の面(第1成膜面)に金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜された後、第一減圧室190から上記隔壁193の開口部195を通って第二減圧室191内に搬入される。
【0082】
そして、金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜された長尺樹脂フィルムFは、第二減圧室191のオゾンガスを導入するオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180を通過中に上記金属膜の最表面が酸化されて金属酸化膜(ブロッキング防止層)が形成された後、第二減圧室191から隔壁194の開口部196を通って第三減圧室192の第二スパッタリングウェブコータの成膜領域に搬送される。そして、第三減圧室192の第二スパッタリングウェブコータの成膜領域で、金属シード層形成用と金属ベース層形成用の金属ターゲットが取り付けられた4台のマグネトロンスパッタカソード174、175、176、177(例えば、マグネトロンスパッタカソード174が金属シード層形成用、マグネトロンスパッタカソード175、176、177が金属ベース層形成用)を用いて水冷温調されたキャンロール161の外周面上に巻き付けられた長尺状樹脂フィルムFの他方の面(第2成膜面)に金属シード層と金属ベース層から成る金属膜が成膜された後、巻き取りロール166に巻き取られて本発明に係る金属ベース層付樹脂フィルムが得られる。
【0083】
第二実施の形態に係る金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置により製造された金属ベース層付樹脂フィルムも、巻き取りロール166に巻き取られる際に上記ブロッキング防止層が介在して金属膜同士が接触しないためブロッキング現象が低減され、金属ベース層が接触した側の金属ベース層に張り付いて剥離してしまうことがない。
【0084】
また、得られた金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層上に湿式めっき法を用いて膜厚の金属層を形成する際、電気めっき処理のみで行う場合と、一次めっきとして無電解めっき処理を行い、二次めっきとして電解めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う場合がある。湿式めっき処理は常法による湿式めっき法の諸条件を採用すればよい。
【0085】
そして、オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)内のオゾン雰囲気中において上記金属膜(金属シード層と金属ベース層)の最表面に酸化形成された金属酸化膜(ブロッキング防止層)は極薄の皮膜であることから、湿式めっき前のエッチング処理により容易に除去することが可能である。
【0086】
尚、乾式(スパッタリング法)・湿式めっき法による金属(金属ベース層と金属めっき層)の合計厚さは厚くとも18μm以下にすることが好ましい。
【0087】
(6)金属めっき層付樹脂フィルムの用途
このようにして得られた金属めっき層付樹脂フィルムを用い、このめっき層付樹脂フィルムの少なくとも片面に配線パターンを個別に形成する。また、所定の位置に層間接続のためのヴィアホールを形成して各種用途に用いることもできる。具体的に説明すると、
(a)高密度配線パターンをフレキシブルシートの少なくとも片面に個別に形成して利用する。
(b)配線層が形成されたフレキシブルシートに該配線層とフレキシブルシートとを貫通するヴィアホールを形成して利用する。
(c)場合によっては、該ヴィアホール内に導電性物質を充填してホール内を導電化して利用する。
【0088】
そして、上記配線パターンの形成方法としては、フォトエッチング等の従来公知の方法が利用でき、例えば、金属めっき層付樹脂フィルムを準備し、該金属めっき層上にスクリーン印刷あるいはドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成した後、露光現像してパターニングする。次いで、塩化第2鉄溶液等のエッチング液で該金属めっき層と金属膜(金属シード層と金属ベース層)を選択的にエッチング除去した後、上記レジスト膜を除去して所定の配線パターンを形成する。
【0089】
両面をパターン加工してフレキシブルシートの両面に配線パターンを形成することが好ましい。
【0090】
全ての配線パターンを幾つかの配線領域に分割するかどうかは、配線パターンの配線密度の分布等による。例えば、配線パターンを、配線幅と配線間隔がそれぞれ50μm以下の高密度配線領域とその他の配線領域に分け、プリント基板との熱膨張差や取扱い上の都合等を考慮して分割する配線基板のサイズを10〜65mm程度に設定して適宜分割すればよい。
【0091】
また、上記ヴィアホールの形成方法としては、従来公知の方法が利用でき、例えば、レーザー加工等により、配線パターンの所定の位置に該配線パターンとフレキシブルシートを貫通するヴィアホールを形成する。ヴィアホールの直径は、ホール内の導電化に支障を来たさない範囲内で小さくすることが好ましく、通常100μm以下、好ましくは50μm以下にする。ヴィアホール内には、めっき、蒸着、スパッタリング等により銅等の導電性金属を充填あるいは所定の開孔パターンを持つマスクを使用して導電性ペーストを圧入、乾燥し、ホール内を導電化して層間の電気的接続を行う。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0093】
[実施例1]
図2に示す両面成膜装置(金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置)を用い、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fには、幅500mm、長さ1000m、厚さ25μmの東レデュポン株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「カプトン(登録商標)」を使用した。
【0094】
また、オゾン雰囲気下で金属膜の最表面を酸化させるオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80については、150℃に加熱しかつオゾンを100sccm導入した。
【0095】
また、金属膜(金属シード層と金属ベース層)の金属シード層はNi−Cr合金膜とし、各マグネトロンスパッタリングカソード70、74にはNi−Cr合金から成るマグネトロンスパッタリングターゲットを用い、かつ、上記金属ベース層はCu膜とし、各マグネトロンスパッタリングカソード71、72、73、75、76、77にはCuから成るマグネトロンスパッタリングターゲットを用い、各マグネトロンスパッタリングカソードにはアルゴンガスを300sccmで導入し、各カソード電力10kWで成膜を行った。また、巻き出しロール50と巻き取りロール66の張力は100Nとした。
【0096】
そして、第一減圧室90の巻き出しロール50に耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fをセットし、かつ、キャンロール54、キャンロール61を経由させ、更に、第二減圧室91のオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80を経由させて、上記耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fの先端部を第二減圧室91の巻き取りロール66に取り付けた。尚、使用する耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fは事前に真空乾燥処理がなされている。
【0097】
また、スパッタリング法の成膜を行なう第一減圧室90と、金属膜の最表面をオゾンで酸化させてブロッキング層の形成を行なう第二減圧室91のそれぞれについて、大型ドライポンプにより5Paまで排気した後、更に、スパッタリング法の成膜を行なう上記第一減圧室90はターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて5×10-3Paまで排気した。また、各キャンロール54、61における水冷温調の設定値は20℃とした。
【0098】
そして、上記耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fの搬送速度を4m/分にした後、第一減圧室90の各マグネトロンスパッタカソード70〜77にアルゴンガスを導入しかつ各マグネトロンスパッタカソードに電力を印加すると共に、第二減圧室91のオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80にもオゾンガスを導入して成膜処理を開始した。
【0099】
そして、上記耐熱性ポリイミドフィルムFの長さ990m分が通過して時点で、各マグネトロンスパッタカソードへの電力を停止し、かつ、それぞれのガス導入も停止した。
【0100】
最後に、耐熱性ポリイミドフィルムFの搬送を停止し、かつ、各ポンプを停止してから第一減圧室90と第二減圧室91をベント(大気開放)し、巻き出しロール50の耐熱性ポリイミドフィルムFの終端部を外し、全ての耐熱性ポリイミドフィルムFを巻き取りロール66に巻き取ってから取り外した。
【0101】
そして、製造された金属ベース層付樹脂フィルムを「フィルム巻き替え」にセットし、搬送速度10m/minで巻き替えを行ったところブロッキング現象は観察されず、更に、サンプリングしたシートを顕微鏡で観察しても、金属膜(金属シード層と金属ベース層)同士が貼り付いて一部剥離されている箇所はなかった。
【0102】
更に、製造された金属ベース層付樹脂フィルムの一部を切り出し、第1成膜面(耐熱性ポリイミドフィルムFの一方の面に形成された金属シード層と金属ベース層)、および、第2成膜面(耐熱性ポリイミドフィルムFの他方の面に形成された金属シード層と金属ベース層)を部分的にエッチングし、第1成膜面と第2成膜面に形成された金属膜(金属シード層と金属ベース層)の膜厚を蛍光X線膜厚計によりそれぞれ測定した結果、第1成膜面と第2成膜面とも金属シード層が約30nm、金属ベース層が約100nmであった。
【0103】
その後、製造された金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層表面を酸で洗浄し、オゾンにより酸化形成されたブロッキング防止層を除去した後、硫酸銅水溶液による電解めっき法によりCu全体の膜厚が8μmになるまで金属めっき層を成膜して実施例1に係る金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)を得た。
【0104】
得られた金属膜付樹脂フィルムをサンプリングし、顕微鏡により表面凹凸の観察を行なったところ、ブロッキングに起因する凹凸は見つからなかった。
【0105】
[実施例2]
図3に示す両面成膜装置(金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置)を用い、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fには、幅500mm、長さ1000m、厚さ25μmの東レデュポン株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「カプトン(登録商標)」を使用した。
【0106】
また、オゾン雰囲気下で金属膜の最表面を酸化させるオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180については、150℃に加熱しかつオゾンを100sccm導入した。
【0107】
また、金属膜(金属シード層と金属ベース層)の金属シード層はNi−Cr合金膜とし、各マグネトロンスパッタリングカソード170、174にはNi−Cr合金から成るマグネトロンスパッタリングターゲットを用い、かつ、上記金属ベース層はCu膜とし、各マグネトロンスパッタリングカソード171、172、173、175、176、177にはCuから成るマグネトロンスパッタリングターゲットを用い、各マグネトロンスパッタリングカソードにはアルゴンガスを300sccmで導入し、各カソード電力10kWで成膜を行った。また、巻き出しロール150と巻き取りロール166の張力は100Nとした。
【0108】
そして、第一減圧室190の巻き出しロール150に耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fをセットし、キャンロール154を経由させ、かつ、第二減圧室191のオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180を経由させ、更に、第三減圧室192のキャンロール161を経由させて、上記耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fの先端部を第三減圧室192の巻き取りロール166に取り付けた。尚、使用する耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fは事前に真空乾燥処理がなされている。
【0109】
また、スパッタリング法の成膜を行なう第一減圧室190と、金属膜の最表面をオゾンで酸化させてブロッキング層の形成を行なう第二減圧室191と、スパッタリング法の成膜を行なう第三減圧室192のそれぞれについて、大型ドライポンプにより5Paまで排気した後、更に、スパッタリング法の成膜を行なう上記第一減圧室190と第三減圧室192はターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて5×10-3Paまで排気した。また、各キャンロール154、161における水冷温調の設定値は20℃とした。
【0110】
そして、上記耐熱性ポリイミドフィルム(長尺体)Fの搬送速度を4m/分にした後、第一減圧室190と第三減圧室192の各マグネトロンスパッタカソード170〜177にアルゴンガスを導入しかつ各マグネトロンスパッタカソードに電力を印加すると共に、第二減圧室91のオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180にもオゾンガスを導入して成膜処理を開始した。
【0111】
そして、上記耐熱性ポリイミドフィルムFの長さ990m分が通過して時点で、各マグネトロンスパッタカソードへの電力を停止し、かつ、それぞれのガス導入も停止した。
【0112】
最後に、耐熱性ポリイミドフィルムFの搬送を停止し、かつ、各ポンプを停止してから第一減圧室190と第二減圧室191と第三減圧室192をベント(大気開放)し、巻き出しロール150の耐熱性ポリイミドフィルムFの終端部を外し、全ての耐熱性ポリイミドフィルムFを巻き取りロール166に巻き取ってから取り外した。
【0113】
そして、製造された金属ベース層付樹脂フィルムを「フィルム巻き替え」にセットし、搬送速度10m/minで巻き替えを行ったところブロッキング現象は観察されず、更に、サンプリングしたシートを顕微鏡で観察しても、金属膜(金属シード層と金属ベース層)同士が貼り付いて一部剥離されている箇所はなかった。
【0114】
更に、製造された金属ベース層付樹脂フィルムの一部を切り出し、第1成膜面(耐熱性ポリイミドフィルムFの一方の面に形成された金属シード層と金属ベース層)、および、第2成膜面(耐熱性ポリイミドフィルムFの他方の面に形成された金属シード層と金属ベース層)を部分的にエッチングし、第1成膜面と第2成膜面に形成された金属膜(金属シード層と金属ベース層)の膜厚を蛍光X線膜厚計によりそれぞれ測定した結果、第1成膜面と第2成膜面とも金属シード層が約30nm、金属ベース層が約100nmであった。
【0115】
その後、製造された金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層表面を酸で洗浄し、オゾンにより酸化形成されたブロッキング防止層を除去した後、硫酸銅水溶液による電解めっき法によりCu全体の膜厚が8μmになるまで金属めっき層を成膜して実施例2に係る金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)を得た。
【0116】
得られた金属膜付樹脂フィルムをサンプリングし、顕微鏡により表面凹凸の観察を行なったところ、ブロッキングに起因する凹凸は見つからなかった。
【0117】
[比較例1]
図2に示す両面成膜装置(金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置)を用い、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fには、実施例1と同様、幅500mm、長さ1000m、厚さ25μmの東レデュポン株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「カプトン(登録商標)」を使用した。
【0118】
但し、実施例1と異なり、上記第二減圧室91のオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80を加熱せず、かつ、オゾンガスの導入も行なっていない。
【0119】
そして、第二減圧室91におけるオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)80でのブロッキング層の形成を行なっていない点を除き実施例1と同様にして、金属ベース層付樹脂フィルムを製造した。
【0120】
製造された金属ベース層付樹脂フィルムを「フィルム巻き替え」にセットし、搬送速度10m/minで巻き替えを行ったところ、貼り付いた金属膜同士がパチパチと音を発しながら剥がれるブロッキング現象が観察され、更に、サンプリングしたシートを顕微鏡で観察したところ、金属膜(金属シード層と金属ベース層)同士が貼り付いて一部剥離されている箇所が無数にあった。
【0121】
その後、製造された金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層上に、硫酸銅水溶液による電解めっき法によりCu全体の膜厚が8μmになるまで金属めっき層を成膜して比較例1に係る金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)を得た。
【0122】
得られた金属膜付樹脂フィルムをサンプリングし、顕微鏡により表面凹凸の観察を行ってみたところ、ブロッキングに起因する凹凸が多数見つかった。
【0123】
特に、ブロッキング現象は、巻き打ち側(成膜のスタート側)において顕著に確認され、この原因は、巻締まりによりブロッキングが一層悪化したためと考えられる。
【0124】
[比較例2]
図3に示す両面成膜装置(金属ベース層付樹脂フィルムの製造装置)を用い、長尺状樹脂フィルム(長尺体)Fには、実施例2と同様、幅500mm、長さ1000m、厚さ25μmの東レデュポン株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「カプトン(登録商標)」を使用した。
【0125】
但し、実施例2と異なり、上記第二減圧室191のオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180を加熱せず、かつ、オゾンガスの導入も行なっていない。
【0126】
そして、第二減圧室191におけるオゾン反応室(オゾン反応チャンバー)180でのブロッキング層の形成を行なっていない点を除き実施例2と同様にして、金属ベース層付樹脂フィルムを製造した。
【0127】
製造された金属ベース層付樹脂フィルムを「フィルム巻き替え」にセットし、搬送速度10m/minで巻き替えを行ったところ、貼り付いた金属膜同士がパチパチと音を発しながら剥がれるブロッキング現象が観察され、更に、サンプリングしたシートを顕微鏡で観察したところ、金属膜(金属シード層と金属ベース層)同士が貼り付いて一部剥離されている箇所が無数にあった。
【0128】
その後、製造された金属ベース層付樹脂フィルムの金属ベース層上に、硫酸銅水溶液による電解めっき法によりCu全体の膜厚が8μmになるまで金属めっき層を成膜して比較例2に係る金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)を得た。
【0129】
得られた金属膜付樹脂フィルムをサンプリングし、顕微鏡により表面凹凸の観察を行ってみたところ、ブロッキングに起因する凹凸が多数見つかった。
【0130】
特に、ブロッキング現象は、巻き打ち側(成膜のスタート側)において顕著に確認され、この原因は、巻締まりによりブロッキングが一層悪化したためと考えられる。
【0131】
『確認』
実施例1〜2においては、酸化効果の高いオゾンによる金属ベース層最表面の酸化処理によりブロッキング防止層が両面若しくは片面に形成されているため、両面に金属膜(金属シード層と金属ベース層)が成膜された金属ベース層付耐熱性樹脂フィルムを巻取ロールに巻き取った際、表面活性の高い金属面同士が接触しないことからブロッキング現象が低減され、金属ベース層が接触した側の金属ベース層に張り付いて剥離してしまうことがない。
【0132】
このため、金属ベース層付樹脂フィルムを効率よく製造できることが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係る両面成膜方法によれば、ブロッキング現象の無い金属ベース層付樹脂フィルムを簡便に製造できるため、この金属ベース層付樹脂フィルムを用いて得られる金属膜付樹脂フィルム(すなわち、金属めっき層付樹脂フィルム)を液晶テレビ、携帯電話等のフレキシブル配線基板に適用できる産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0134】
1、11 樹脂フィルム
2、12 金属シード層
3、13 金属ベース層
14 ブロッキング防止層(金属ベース層の最表面に形成された金属酸化膜)
18 金属層(金属めっき層)
F 長尺状樹脂フィルム(長尺体)
20 巻き出しロール
24、32 冷却キャンロール
21、22、23、25、26、27 フリーロール
28、29、31、33、34、35 フリーロール
36 巻き取りロール
40、41、42、43 マグネトロンスパッタカソード
44、45、46、47 マグネトロンスパッタカソード
50 巻き出しロール
54、61 冷却キャンロール
51、52、53、55、56、57、58 フリーロール
59、60、62、63、64、67、68 フリーロール
66 巻き取りロール
70、71、72、73 マグネトロンスパッタカソード
74、75、76、77 マグネトロンスパッタカソード
80 オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)
90 第一減圧室(成膜室)
91 第二減圧室(減圧室)
92 隔壁
65 開口部
150 巻き出しロール
154、161 冷却キャンロール
151、152、153、155、156、157 フリーロール
158、159、160、162、163、164 フリーロール
166 巻き取りロール
170、171、172、173 マグネトロンスパッタカソード
174、175、176、177 マグネトロンスパッタカソード
180 オゾン反応室(オゾン反応チャンバー)
190 第一減圧室(成膜室)
191 第二減圧室(減圧室)
192 第三減圧室(成膜室)
193、194 隔壁
195、196 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6