(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
50%以上の気孔率を有する多孔質の隔壁により形成された軸方向に延びる多数のセルを有するセラミックハニカム体と、前記セラミックハニカム体の外周に形成された外周壁とからなるセラミックハニカム構造体を製造する方法であって、
セラミック坏土を押出し、セラミックハニカム構造を有する成形体を形成する工程、
前記成型体、又は前記成形体を焼成した後の焼成体の外周部を加工することにより、外周部に位置するセルの隔壁の一部を除去し、外周面に軸方向に延びる溝を有するセラミックハニカム体を得る工程、及び
前記セラミックハニカム体の外周面に平均粒子径が5〜100 nmのコロイド状金属酸化物を塗布し、乾燥後、平均粒子径1μm以上のセラミックス骨材を含むコート材を、さらに塗布して外周壁を形成する工程
を有することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法
請求項1に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法において、前記コロイド状金属酸化物がコロイダルシリカ又はコロイダルアルミナであることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
請求項1又は2に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法において、前記コロイド状金属酸化物の塗布量が、前記セラミックハニカム体の単位容積当たり、固形分で2.0×10-3〜150×10-3 g/cm3 であることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関の排気ガス中に含まれる有害物質を減少させるため、排気ガス浄化用の触媒コンバータ、粒子状物質(PM:Particulate Matter)捕集用のフィルタ、及び窒素酸化物(NOx)を低減するための触媒の担体としてセラミックハニカム構造体が使用されている。
【0003】
セラミックハニカム構造体1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、多孔質の隔壁13により形成された軸方向に延びる多数のセル14を有するセラミックハニカム体10と、前記セラミックハニカム体10の外周に形成された外周壁11とからなり、その流路方向に垂直な断面の形状は通常ほぼ円形又は楕円形をしている(
図1(a)参照)。セラミックハニカム構造体1は、金属メッシュ又はセラミックス製のマット等で形成された把持部材(図示せず)で使用中に動かないように強固に把持され、金属製収納容器(図示せず)内に収納されている。従って、外周壁11は、セラミックハニカム構造体1を把持した状態での熱衝撃に耐えうるアイソスタティック強度が必要である。
【0004】
ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれている窒素酸化物(NOx)を低減するために、隔壁にNOx触媒を担持させたセラミックハニカム構造体が使用されている。このセラミックハニカム構造体のNOx浄化性能を高めるためには、担持させる触媒量を増加させることが有効であり、そのためには隔壁を、例えば50%以上の高気孔率とする必要がある。
【0005】
特開平05-269388号は、多孔質の隔壁により形成された軸方向に延びる多数のセルを有し、外部に開口して軸方向に延びる溝を外周面に有しているセラミックハニカム体と、前記溝をコート材で充填して形成された外周壁とからなるセラミックハニカム構造体を開示している。このセラミックハニカム構造体は、外周壁が一体的に形成されたセラミックハニカム焼成体を公知の方法で作製した後、外周部のセルを研削除去して得られた、外周面に溝を有するセラミックハニカム体に、セラミック粒子及び又はセラミックファイバーとコロイダルシリカ又はコロイダルアルミナとからなるペースト状コート材を、前記外周面の溝に充填するように塗布及び乾燥して外周壁を形成することにより製造される。特開平05-269388号は、このような方法により、外周面が補強され、耐熱性及び耐熱衝撃に優れたセラミックハニカム構造体が得られると記載している。
【0006】
しかしながら、特開平05-269388号に記載された外周壁を、例えば50%以上の高気孔率の隔壁からなるセラミックハニカム構造体に適用した場合、前記隔壁の強度が非常に低いため、前記外周壁による強度向上効果が十分に発揮されず、得られるセラミックハニカム焼成体は使用時の熱衝撃に十分耐え得るほどのアイソスタティック強度を有さない。
【0007】
特開2004-175654号は、多孔質の隔壁により形成された軸方向に延びる多数のセルを有し、外部に開口して軸方向に延びる溝を外周面に有しているセラミックハニカム体と、前記溝を充填して外表面を形成する外周壁とを有し、前記外周壁又は外周壁と溝との間の少なくとも一部に応力開放部(空隙部)を有するセラミックハニカム構造体を開示しており、熱衝撃が発生しても、熱衝撃によるクラックが隔壁にまで進展しにくくした、耐熱衝撃性に優れると記載している。このセラミックハニカム構造体は、外周壁が一体的に形成されたセラミックハニカム焼成体を公知の方法で作製した後、外周部のセルの隔壁の一部を研削除去して得られた、外周面に溝を有するハニカム体に、セラミック骨材及び無機バインダーからなるコート材を、前記溝をほぼ充填するように塗布し、70℃以上に加熱させられた乾燥炉でコート材中に含まれる水分を急速乾燥することにより製造される。
【0008】
しかしながら、特開2004-175654号に記載されたセラミックハニカム構造体は、前記応力開放部(外表面に開口した外周壁のクラック状空隙、又はセラミックハニカム体と外周壁との間に形成された空隙)を有することから、外周壁がセラミックハニカム体から剥離し易く、特に特開2004-175654号に記載の方法を、例えば50%以上の高気孔率の隔壁からなるセラミックハニカム体に適用した場合、十分なアイソスタティック強度を得られない。
【0009】
特開2006-255542号は、多孔質の隔壁により形成された複数のセルを有するセル構造体と、前記セル構造体の外周面上に配設された、平均粒径20〜50μmのセラミック粒子を含むコート材からなる外壁を有し、前記外壁の厚み方向中央部分の気孔率よりも、前記中央部分よりも外側の部分の気孔率のほうが小さいセラミックハニカム構造体を開示しており、外壁を構成するセラミック粒子の離脱が少なく、耐久性及び耐磨耗性に優れ、外壁表面にした印字の磨耗損傷が起こり難いと記載している。特開2006-255542号に記載のセラミックハニカム構造体は、公知の方法で得られたハニカム構造の焼結体の外周部を研削加工して除去し、その外周面にコート材を塗布して外周コート層を形成し、前記外周コート層を乾燥又は半乾燥した後に、外周コート層の表面にコロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等のコロイド状セラミックを主成分とする緻密層形成用のコート材を塗布することで製造される。
【0010】
しかしながら、特開2006-255542号に記載された気孔率勾配を有する外周壁は、外壁表面の印字の耐磨耗損傷性は優れているが、例えば50%以上の高気孔率の隔壁からなるセラミックハニカム体に適用した場合、隔壁が非常に脆いため、塗布された外周コート層がセラミックハニカム体の外周面から剥離し易く、外周壁とセラミックハニカム体との接合性に問題がある。
【0011】
特開2003-284923号は、
図5に示すように、セラミックハニカム体51のセルのうち、最外周に位置する最外周セル及びそれから内部側に位置する所定数のセルの少なくとも一方の端部及び/又は中間部が、外周壁52の内周面によって封止されて、流体が流れない遮蔽セル54を構成してなるセラミックハニカム構造体50を開示しており、このセラミックハニカム構造体50は、外周壁52により形成された遮蔽セル54の断熱効果により、運転開始からの温度上昇時間を短くでき、担持した触媒の触媒活性を短時間で高めることができると記載している。特開2003-284923号は、このセラミックハニカム構造体50は、押出成形により作製したハニカム構造を有する成形体を、一方の端部の収縮率が他方と異なるように乾燥及び焼成することにより円錐台状のセラミックハニカム体51を形成し、前記セラミックハニカム体の円錐台状の外周面を円筒状に加工し、その外周面51aにセラミックセメント等のコート材で外周壁52を形成することにより製造されると記載しており、前記外周壁52の材料として、コージェライトからなるセラミック、コージェライト及び/又はセラミックファイバーと非晶質酸化物マトリックス(コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等)とからなるセラミック等を挙げている。
【0012】
しかしながら、特開2003-284923号に記載の発明を、例えば50%以上の高気孔率の隔壁からなるセラミックハニカム体に適用した場合、隔壁が非常に脆いため、特開2003-284923号に記載された外周壁ではセラミックハニカム構造体のアイソスタティック強度を十分に保つことができない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基いて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
【0023】
[1]セラミックハニカム構造体の製造方法
本発明の製造方法は、
図1(a)及び
図1(b)に示すような、50%以上の気孔率を有する多孔質の隔壁13により形成された、軸方向に延びる多数のセル14を有するセラミックハニカム体10と、前記セラミックハニカム体10の外周に形成された外周壁11とからなセラミックハニカム構造体1を製造する方法であって、
(a)セラミック坏土を押出し、セラミックハニカム構造を有する成形体を形成する工程、
(b)前記成型体、又は前記成形体を焼成した後の焼成体の外周部を加工することにより、外周部に位置するセルの隔壁の一部を除去し、外周面に軸方向に延びる溝を有するセラミックハニカム体を得る工程、及び
(c)前記セラミックハニカム体の外周面にコロイド状金属酸化物を塗布し、乾燥後、平均粒子径1μm以上のセラミックス骨材を含むコート材を、さらに塗布して外周壁を形成する工程
を有する。
【0024】
(a) 成形体の形成
セラミックハニカム構造を有する成形体は、セラミック坏土の押出成形によって作製する。まずセラミックス粉末に、バインダー、潤滑剤、及び造孔材を添加し、乾式で十分混合した後、水を添加し、十分な混練を行って可塑化したセラミック坏土を作製する。このセラミック坏土を押出して、所定長さに切断し、乾燥することにより、外周壁と隔壁とが一体に形成されたセラミックハニカム構造を有する成形体を得る。
【0025】
(b) セラミックハニカム体の作製
得られたセラミックハニカム構造を有する成形体を焼成し、気孔率が50%以上の焼成体とする。この焼成体の外周部を加工により除去して、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、外周部に位置するセルの隔壁の一部が除去されたことにより、外周面11aに軸方向に延びる溝140が形成されたセラミックハニカム体10を作製する。なお、この方法では、成形体を焼成した後に外周面を加工する例を示したが、焼成前の成形体に加工を施して、その後焼成してセラミックハニカム体10を作製してもよい。
【0026】
セラミックハニカム体10の好ましい材質としては、コーディエライト、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、LAS等が挙げられ、中でもコーディエライトを主結晶相とするセラミックは、安価で耐熱性に優れ、化学的にも安定なため最も好ましい。
【0027】
(c)外周壁の形成
(i) コロイド状金属酸化物の塗布
得られたセラミックハニカム体10の外周面11aの溝140に、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、コロイド状金属酸化物21を、刷毛、ローラー等を用いて塗布する。コロイド状金属酸化物21を塗布することにより、外周面11aの溝140を形成する隔壁13a及びその内周側セルの隔壁13bの気孔にコロイド状金属酸化物が浸透して気孔が塞がれ、外周面11aの隔壁13aの強度が向上する。前記溝140に塗布されたコロイド状金属酸化物21は、自然乾燥、乾燥炉での熱風乾燥等の方法で乾燥させる。
【0028】
コロイド状金属酸化物21としては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、チタニアゾル、水ガラス等を用いることができる。中でもコロイダルシリカ又はコロイダルアルミナが好ましい。コロイド状金属酸化物21は、水等の分散物として使用するのが好ましく、固形分濃度は、塗布に適した粘度になるように適宜調節する。
【0029】
コロイド状金属酸化物21の塗布量は、セラミックハニカム体10の単位容積当たり、固形分で2.0×10
-3〜150×10
-3 g/cm
3であるのが好ましい。前記塗布量が、固形分で2.0×10
-3g/cm
3未満の場合、溝140を形成する隔壁13aとその内周側セルの隔壁13bの気孔の塞がりが不十分となり、十分なアイソスタティック強度を得ることができない場合がある。一方、150×10
-3 g/cm
3を超える場合、多量のコロイド状金属酸化物21が、溝140そのものを埋めてしまい耐熱衝撃性を低下させる。前記塗布量は、好ましくは固形分で4.0×10
-3〜90×10
-3 g/cm
3である。ここで単位容積当たりの固形分塗布量[g/cm
3]とは、塗布したコロイド状金属酸化物21の固形分量[g]を、セラミックハニカム体の容積[cm
3][例えば、外径D及び長さLの円柱状の場合、{(π/4)×D
2×L}で表される値]で除した値である。
【0030】
コロイド状金属酸化物21の粒子径は5〜100 nm
とする。このような範囲の粒子径を有するコロイド状金属酸化物21を使用することで、溝140を形成する隔壁13aの気孔にコロイド状金属酸化物21が浸透し易くなり、十分なアイソスタティック強度を得ることができる。粒子径が5 nm未満の場合、耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。一方、粒子径が100 nmを超える場合、溝140を形成する隔壁13aの気孔にコロイド状金属酸化物が浸透し難くなり、隔壁13aの気孔の塞がりが不十分となり、十分なアイソスタティック強度を得ることができない場合がある。前記粒子径は、好ましくは10〜90 nmである。
【0031】
(ii)コート剤の塗布
乾燥したコロイド状金属酸化物21の上から、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、前記セラミックハニカム体10の外周面11aの溝140を充填するようにコート材22を0.1〜3 mmの厚さに塗布する。塗布したコート材22を、熱風乾燥、マイクロ波乾燥等の公知の方法で乾燥させ、コート材22中の水分を除去することにより、外周壁11が形成されてなるセラミックハニカム構造体1を得る。
【0032】
コート材22は、平均粒子径1μm以上のセラミックス骨材、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ、バインダー、水、及び必要に応じて分散剤、セラミックファイバー等を混練して、ペースト状にしたものを使用する。コート材22に用いるセラミックス骨材の平均粒子径が1μm以上であることで、外周壁11の強度が向上し、セラミックハニカム構造体1のアイソスタティック強度が向上する。しかし、セラミックス骨材の平均粒子径が1μm未満の場合、セラミックス骨材を結合するために添加するコロイダルシリカ又はコロイダルアルミナが多量に必要になるため、外周壁11の耐熱衝撃性が低下する。一方、セラミックス骨材の平均粒子径が大きすぎると、外周壁11の強度が低下し、外周壁11がセラミックハニカム構造体の外周面から剥離し易くなるので、セラミックス骨材の平均粒子径は2〜50μmであるのが好ましい。
【0033】
コート材22に用いるセラミックス骨材は、セラミックハニカム体10と同材質であっても、異なる材質であっても良く、コーディエライト、アルミナ、ムライト、シリカ等が使用できる。セラミックハニカム体10よりも熱膨張係数の小さい材質を用いると、使用時の耐熱衝撃性が良好となるので好ましい。例えば、非晶質シリカが好ましい。
【0034】
前記溝140に塗布されるコロイド状金属酸化物21と、その上に塗布されるコート材22のセラミックス骨材とが同材質であると、隔壁13aと、コロイド状金属酸化物21と、コート材22との接合性が良好となり、隔壁13aと外周壁11との接合強度を向上させるので好ましい。
【0035】
本発明の方法により作製されたセラミックハニカム構造体1は、外周面11aの軸方向に延びる溝140を構成する隔壁13aに塗布されたコロイド状金属酸化物21が、前記隔壁13a及びその内側のセルの隔壁13bの気孔内に浸透し強固に接合するため、隔壁13aと、コロイド状金属酸化物21と、コロイド状金属酸化物21の上に塗布したコート材22とが一体となり、隔壁13aと外周壁11との接合強度を向上させる。そのため、気孔率が50%以上の高気孔率の隔壁13からなるセラミックハニカム構造体1であっても、このようなコロイド状金属酸化物21と、その上に形成したコート材22とからなる外周壁11を有することにより、アイソスタティック強度が著しく向上し、セラミックハニカム構造体の外周面11aから外周壁11が剥離し難くなる。
【0036】
本発明の方法を、
図5に示すような、一方の端部が外周壁52の内周面によって封止された遮蔽セル54を有するセラミックハニカム構造体50の製造へ適用した場合、外周壁の剥離を防止することができるだけでなく、前記遮蔽セル54の溝に塗布されたコロイド状金属酸化物が前記溝を形成する隔壁の気孔内に浸透し、さらにその上に塗布されたコート材によって隔壁の気孔が塞がれるため、外周壁により形成された遮蔽セルの断熱効果がより向上する。このため、セラミックハニカム構造体50の温度上昇が速くなり、運転開始から短時間で触媒活性を高めることができる。
【0037】
[2]セラミックハニカム構造体
本発明のセラミックハニカム構造体1は、
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、多孔質の隔壁13により形成された軸方向に延びる多数のセル14を有するセラミックハニカム体10と、前記セラミックハニカム体10の外周面11aに形成された外周壁11とからなるセラミックハニカム構造体1であって、
前記セラミックハニカム体10は、外周面11aに軸方向に延びる溝140を有し、
前記外周壁11は、前記軸方向に延びる溝140を充填して形成されており、
前記外周面11aの溝140を構成する隔壁13aの気孔率が、前記セラミックハニカム体10中心部の隔壁13の気孔率よりも小さいことを特徴とする。
【0038】
セラミックハニカム構造体1の隔壁13の気孔率は50%以上であるのが好ましく、セラミックハニカム構造体1の強度を確保ためには80%以下であるのが好ましい。セラミックハニカム体10の外周面11aの溝140を構成する隔壁13aは、コロイド状金属酸化物21が浸透するため、その気孔率は、セラミックハニカム体10中心部の隔壁13の気孔率よりも小さい。十分なアイソスタティック強度を有するためには、前記外周面11aの溝140を構成する隔壁13aは、セラミックハニカム体10中心部の隔壁13の気孔率の0.9倍以下であるのが好ましく、0.8倍以下であるのがより好ましい。ただし、耐熱衝撃性が悪化するのを防止するためには、前記外周面11aの溝140を構成する隔壁13aは、セラミックハニカム体10中心部の隔壁13の気孔率の0.1倍以上であるのが好ましい。
【0039】
なおコロイド状金属酸化物21は、セラミックハニカム体10の外周面11aの溝140を構成する隔壁13aの気孔に浸透し、さらに、その内周側セルの隔壁13bの気孔にも浸透するため、内周側セルの隔壁13bの気孔率も、前記外周面11aの溝140を構成する隔壁13aの気孔率と同様、セラミックハニカム体10中心部の隔壁13の気孔率よりも小さいことが好ましい。セラミックハニカム体10中心部の隔壁13よりも気孔率が小さい隔壁13bにより構成される内周側セルの範囲は、外周面11aを除いた内周側の20セルまでであるのが好ましい。前記内周側セルの範囲が20セルを超えると圧力損失が大きくなる。好ましくは15セルまで、さらに好ましくは10セルまでである。隔壁13bの気孔率は、外周面11a側から中心部側へ徐々に、又は段階的に大きくなっているのが好ましい。
【0040】
セラミックハニカム体10の隔壁13厚さは0.1〜0.4 mm、及びセルピッチは1〜3 mmであるのが好ましい。このような構成を有するセラミックハニカム体10を用いることにより、より効果的に、アイソスタティック強度の向上効果を発揮させることができる。
【0041】
[3]実施例
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1
(1)セラミックハニカム体の作製
カオリン、タルク、シリカ、及びアルミナの粉末を調整し、50質量%のSiO
2、36質量%のAl
2O
3、及び14質量%のMgOを含むコージェライト生成原料粉末とし、この原料粉末にバインダーとしてメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、潤滑剤、並びに造孔材として発泡済み樹脂を添加し、乾式で十分混合した後、水を添加して十分な混練を行い、可塑化したセラミック杯土を作製した。このセラミック坏土を押出成形し、所定長さに切断後、乾燥し、周縁部と隔壁とが一体に形成されたセラミックハニカム構造を有する成形体を得た。この成形体を焼成した後、外周部を加工することにより、外周部に位置するセルの隔壁の一部を除去し、外周面に軸方向に延びる溝を有し、外径266 mm、全長305 mm、隔壁厚さ0.3 mm、セルピッチが1.57 mm、及び隔壁の気孔率が61%のコーディエライト質のセラミックハニカム体を得た。
【0043】
(2)外周壁の作製
得られたセラミックハニカム体の外周面に、コロイド状金属酸化物としてコロイダルシリカ(平均粒径15 nm及び固形分濃度20質量%の水分散物)を、セラミックハニカム体の単位容積当たりの固形分塗布量が20×10
-3 g/cm
3になるよう塗布した。塗布したコロイド状金属酸化物を室温で2時間乾燥させた後、その上に、セラミックス骨材(平均粒子径15μmのシリカ粉末)100質量部に対して、コロイダルシリカを固形分で12質量部配合し、さらにセラミックス骨材及びコロイダルシリカの合計100質量部に対して1.2質量部のメチルセルロースを配合し、水と共に混練して作製したコート材を塗布した。塗布したコート材を130℃で2時間乾燥させて、4個のセラミックハニカム構造体を作製した。
【0044】
作製したセラミックハニカム構造体の、アイソスタティック強度、外周壁の接合性、及び耐熱衝撃性を評価した。さらにセラミックハニカム構造体本体の隔壁の気孔率、及び外周面の溝を構成する隔壁の気孔率を、評価済みのセラミックハニカム構造体の中心部の隔壁、及び外周面の溝部の隔壁から試料を切り出して、水銀圧入法で測定した。また外周付近の隔壁を切り出して電子顕微鏡で観察し、コロイド状金属酸化物が浸透した隔壁により構成されるセルが、外周面を除いて内周側の何セルまで存在するかをカウントした。
【0045】
アイソスタティック強度
アイソスタティック強度試験は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO)M505-87に基づいて行った。セラミックハニカム構造体の軸方向両端面に厚さ20 mmのアルミ板を当接して両端を密閉するとともに、外壁部表面に厚さ2 mmのゴムシートを密着させた試料を圧力容器に入れ、圧力容器内に水を注入して、外壁部表面から静水圧を加えてゆき、セラミックハニカム構造体が破壊した時の圧力を測定して、アイソスタティック強度とした。アイソスタティック強度は、
アイソスタティック強度が2 MPa以上有するものを「優(◎)」、
アイソスタティック強度が1.5 MPa以上2 MPa未満有するものを「良(○)」、
アイソスタティック強度が1.0 MPa以上1.5 MPa未満有するものを「可(△)」、及び
アイソスタティック強度が1.0 MPa未満のものを「不可(×)」
として評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
接合性
外周壁とセラミックハニカム体との接合性は、セラミックハニカム構造体を軸方向に垂直な任意の3か所で切断し、それらの3つの断面を目視で観察し、外周壁とセラミックハニカム体との間の隙間で以下の基準で評価した。
3つの断面全てに隙間が無いものを「優(◎)」、
3つの断面のうち1つの断面に隙間があるものを「良(○)」、
3つの断面のうち2つの断面に隙間があるものを「可(△)」、及び
3つの断面全てに隙間があるものを「不可(×)」。
【0047】
耐熱衝撃性の評価
耐熱衝撃性の評価は、3個のセラミックハニカム構造体を、一定温度に加熱した電気炉中に挿入して30分間保持し、その後室温に急冷して、き裂の発生の有無を目視で観察することにより行った。き裂は加熱温度が高いほど発生しやすくなるので、前記一定温度を25℃ずつ上げながら、き裂が発生するまで評価を繰り返した。3個の試料について同じ評価を行い、3個のうち最も低い温度でき裂が発生した試料の加熱温度と室温との温度差を耐熱衝撃温度とし、
耐熱衝撃温度が600℃以上を「優(◎)」、
550℃以上で600℃未満を「良(○)」、
500℃以上で550℃未満を「可(△)」、及び
500℃未満を「不可(×)」
として評価した。
【0048】
実施例2〜
14、参考例1及び比較例3〜7
コロイド状金属酸化物の種類及び固形分塗布量、並びにコート材のセラミック骨材の種類及び平均粒子径を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてセラミックハニカム構造体を作製し、それらのアイソスタティック強度、外周壁の接合性、及び耐熱衝撃性を評価した。なおこれらの実施例で使用したコロイド状金属酸化物は、20質量%の固形分濃度を有する水分散物であった。
【0049】
比較例1
コロイド状金属酸化物を塗布しないで、セラミックス骨材として使用したシリカ粉末の平均粒子径を15μmから20μmに変更して作製したコート材を、セラミックハニカム体の外周面に直接塗布した以外は実施例1と同様にしてセラミックハニカム構造体を作製し、それらのアイソスタティック強度、外周壁の接合性、及び耐熱衝撃性を評価した。
【0050】
比較例2
セラミックハニカム体の外周面に直接塗布したコート材を乾燥させた後、さらにその上にコロイド状金属酸化物(平均粒子径20 nm及び固形分濃度20質量%のコロイダルシリカ)を、セラミックハニカム体の単位容積当たりの固形分塗布量が50×10
-3 g/cm
3となるように塗布して乾燥した以外は比較例1と同様にしてセラミックハニカム構造体を作製し、それらのアイソスタティック強度、外周壁の接合性、及び耐熱衝撃性を評価した。
【0051】
表1
注(1):セラミックハニカム体の単位容積当たりの固形分塗布量
【0052】
表1(続き)
注(2):コート材を塗布乾燥した後、さらにコロイド状金属酸化物を塗布した。
【0054】
表1から明らかなように、外周面の溝にコロイド状金属酸化物を塗布し、その上に平均粒子径1μm以上のセラミックス粒子を含むコート材を塗布してなる実施例1〜
14のセラミックハニカム構造体は、十分なアイソスタティック強度、外周壁の接合性、及び耐熱衝撃性を有していた。一方、外周面の溝にコロイド状金属酸化物を塗布しないで前記コート材を直接塗布してなる比較例1は、十分なアイソスタティック強度を有しておらず、外周壁の接合性、及び耐熱衝撃性も低かった。外周面の溝にコート材を直接塗布した後、その上にコロイド状金属酸化物を塗布してなる比較例2は、比較例1と同様、十分なアイソスタティック強度を有していなかった。外周面の溝にコロイド状金属酸化物を塗布したが、その上に平均粒子径1μm未満のセラミックス粒子を含むコート材を塗布してなる比較例3〜7のセラミックハニカム構造体は、アイソスタティック強度、及び外周壁の接合性はそれなりに良かったが、耐熱衝撃性が悪かった。