(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機500という)に適用した実施形態について説明する。
まず、複写機500の基本的な構成について説明する。
図2は、複写機500を示す概略構成図である。複写機500は、画像形成手段としての画像形成部1と、転写紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ部150と、これに支持されるシート材搬送装置としての原稿自動搬送装置(auto document feeder)(以下、ADF51という)とを有している。
【0014】
転写紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された二つの給紙カセット42、給紙カセット42から転写紙を送り出す送出ローラ43、送り出された転写紙を分離して給紙路44に供給する転写紙分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の本体側給紙路37に転写紙を搬送する複数の転写紙搬送ローラ47等も有している。このような、送出ローラ43や転写紙搬送ローラ47等によって給紙カセット42内の転写紙を画像形成部1内の本体側給紙路37内に給紙する。
【0015】
図3は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、K,Y,M,C色のトナー像を形成する四つのプロセスユニット3(K,Y,M,C)、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、転写紙反転装置36、本体側給紙路37等を備えている。そして、画像形成を行う際には、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の四つの感光体4(K,Y,M,C)に向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4(K,Y,M,C)の表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0016】
プロセスユニット3(K,Y,M,C)は、それぞれ、感光体4とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用の黒用プロセスユニット3Kを例にすると、これは、黒用感光体4Kの他、黒用感光体4Kの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための黒用現像装置6Kを有している。さらに、黒用プロセスユニット3Kは、後述するK用(黒用)の一次転写ニップを通過した後の黒用感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする黒用ドラムクリーニング装置15Kなども有している。複写機500では、四つのプロセスユニット3(K,Y,M,C)を、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0017】
図4は、四つのプロセスユニット3(K,Y,M,C)からなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、四つのプロセスユニット3(K,Y,M,C)は、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、
図4においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
図4に示すように、プロセスユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。
【0018】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0019】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。また、現像装置6は、内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0020】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された二本の搬送スクリュー8、これら2本の搬送スクリュー8間に設けられた仕切り板、及び、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサ10などを有している。
【0021】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、及び、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ13は、ドクタブレード14との対向位置から現像スリーブ12の回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれ現像スリーブ12上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ12表面に引き寄せて担持させるとともに、現像スリーブ12表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0022】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制された後、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によって磁気ブラシを形成していた二成分現像剤は現像スリーブ12表面から離脱し、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサ10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0023】
ドラムクリーニング装置15としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナー(以下、回収トナーという)は、ファーブラシ17に対してカウンター方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。その後、回収トナーは、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュー20上に落下する。回収スクリュー20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡された回収トナーを現像部11に送ってリサイクルする。
【0024】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電手段である帯電装置23としては、複写機500では、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。帯電手段としては、感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いた構成でもよい。
【0025】
先に示した
図3において、四つのプロセスユニット3(K,Y,M,C)の感光体4(K,Y,M,C)には、これまで説明してきたプロセスによってそれぞれ、K,Y,M,Cのトナー像が形成される。
【0026】
図2に示すように、画像形成部1における四つのプロセスユニット3(K,Y,M,C)の下方には、転写ユニット24が配設されている。この転写ユニット24は、複数のローラによって張架された中間転写ベルト25を、感光体4(K,Y,M,C)に当接させながら
図2中の時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4(K,Y,M,C)と中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の一次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ26(K,Y,M,C)によって中間転写ベルト25を感光体4(K,Y,M,C)に向けて押圧している。
【0027】
これら一次転写ローラ26(K,Y,M,C)には、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の各一次転写ニップには、感光体4(K,Y,M,C)上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる一次転写電界がそれぞれ形成される。
図2及び
図3中の時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
【0028】
図3に示すように、画像形成部1の転写ユニット24の下方には、駆動ローラ30と二次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの二次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ31には図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成される。
【0029】
この二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙を中間転写ベルト25上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の四色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙に一括二次転写され、転写紙の白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0030】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、二次転写ニップで転写紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0031】
定着装置34に搬送された転写紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着され、定着装置34から転写紙排紙ローラ対35に送られた後に、機外の転写紙排紙トレイ上へと排出される。
【0032】
図2に示すように、画像形成部1の紙搬送ユニット28および定着装置34の下には、転写紙反転装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置36側に切り換えられ、そこで反転されて再び二次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、転写紙は排紙トレイ上に排紙される。
【0033】
次に、画像形成部1の上に固定された画像読取ユニット50について、説明する。
図5は、画像読取ユニット50の概略構成図であり、
図6は、画像読取ユニット50の斜視説明図である。画像読取ユニット50は、スキャナ部150とADF51とを備えており、
図6に示すように、ADF51はスキャナ部150の上部に開閉可能に取り付けられている。
【0034】
スキャナ部150はその筐体157の上面に、第一コンタクトガラス154と、第二コンタクトガラス155とを備えている。スキャナ部150内には、画像読取手段が設けられている。画像読取手段は、光源152aや第一ミラー152bを有する第一キャリッジ152、第二ミラー151aや第三ミラー151bを有する第二キャリッジ151、固定レンズ153、撮像素子であるCCD156などで構成されている。第一キャリッジ152、第二キャリッジ151は、第二コンタクトガラス155に平行に移動可能に設けられている。第二キャリッジ151は、第一キャリッジ152の1/2の速度で移動するよう構成されている。第一キャリッジ152は、非使用時は第一コンタクトガラス154と対向する位置をホームポジション(HP位置)として、そこで停止している。
【0035】
スキャナ部150の上に配設されたADF51には、シート材である原稿MSを収容するシート材収容部である原稿トレイ53、ピックアップローラ80、排紙ローラ対93
及びシート材排出部たる排紙トレイ55等が原稿搬送経路に沿って順次配設されている。原稿MSは原稿載置台である原稿トレイ53に画像面を上にしてページ順にセットされる。ピックアップローラ80は通常は原稿トレイ53と所定間隔をあけて待機しており、原稿トレイ53に原稿MSがセットされたことを原稿積置センサ57により検知され、かつ、本体操作部300上で読取開始の指示された場合に、待機位置から下降して原稿MSの上面と接触する位置に移動するように制御される。
排紙トレイ55は、排紙ローラ対93によって排出された原稿MSをスタックするための平面部エリア55aと、排紙トレイ55から原稿落下を防ぐために設けられた斜面部エリア55bとからなる。
【0036】
また、ADF51は、原稿MSの経路として、搬送路(イ)、排紙路(ロ)、スイッチバック搬送路(ハ)、及び、反転路(ニ)を有している。
搬送路(イ)は、搬送下ガイド83aと搬送上ガイド83bとの間に形成されるものである。この搬送路(イ)は、フィードローラ81と分離パッド82とによって形成される分離ニップで分離搬送された原稿MSを第一コンタクトガラス154上へ搬送させるための経路である。
排紙路(ロ)は、排出上ガイド87aと排出下ガイド87bとの間に形成される経路である。この排紙路(ロ)は、第一コンタクトガラス154上を通過して搬送されてきた原稿MSを排紙口94へ移動させるための経路である。
【0037】
スイッチバック搬送路(ハ)は、原稿トレイ53の下方で、かつ、排紙トレイ55の上方に設けられたスイッチバック下ガイド54b及び原稿分岐爪95とスイッチバック上ガイド54aとの間に形成される経路である。このスイッチバック搬送路(ハ)は、排紙口94から排紙された原稿MSをスイッチバックさせて、原稿MSの後端から反転路(ニ)へ搬送するものである。
反転路(ニ)は、反転下ガイド84aと反転上ガイド84bとの間に形成されたものである。この反転路(ニ)は、搬送路(イ)と合流しており、スイッチバックされた原稿MSを再び搬送路(イ)へ搬送するための経路である。
【0038】
フィードローラ81と分離パッド82とで構成された分離手段は、フィードローラ81の表面と原稿MSとの間の摩擦力の方が、分離パッド82の表面と原稿MSとの摩擦力よりも大きくなるように、さらに、分離パッド82と原稿MSとの摩擦力の方が原稿MS同士の摩擦力よりも大きくなるように設定されている。このような設定により、複数枚の原稿MSが分離ニップに進入した際に、最上位の一枚の原稿MSはフィードローラ81によって搬送路(イ)に向けて搬送され、二枚目以降の原稿MSは、分離パッド82により分離ニップの通過が阻害され、原稿MSの分離がなされる。分離ニップを構成する部材としては、分離パッド82の代わりに、リバースローラを用いてもよいが、分離パッド82を用いることにより、リバースローラを用いる構成よりも低コスト化を図ることができる。
【0039】
原稿分岐爪95は排紙トレイ55の上方に設けられ、
図5中の実線で示す位置から点線で示す位置に切り替わることにより、排紙口94から排紙された原稿MSをスイッチバック搬送路(ハ)へ導く。また、原稿MSがスイッチバック搬送路(ハ)内に導入されると、実線で示す位置に切り替わることにより、スイッチバック搬送路(ハ)でスイッチバックされた原稿MSを後端から反転路(ニ)に導く。
図5に示す各ローラ対は、単一動力源(一つのモータ)により駆動されているが、反転下ローラ96aと反転上ローラ96bとからなる反転ローラ対96は、単独で正転と逆転とを切り替えるための切り替え手段を有している。そして、正転方向に回転することで、スイッチバック搬送路(ハ)へ搬送されてくる原稿MSをスイッチバック搬送路(ハ)内に導入し、その後逆転方向に回転して、反転路(ニ)に原稿MSを搬送する。
【0040】
読取入口ローラ対89と第一コンタクトガラス154との間の読取入口ローラ対89に対して原稿MSの搬送方向下流側近傍には、レジストセンサ65が配置されている。このレジストセンサ65は、読取入口ローラ対89によって搬送されてくる原稿MSの先端と、第一コンタクトガラス154の読取位置での読取開始のタイミングをあわせるためのものである。
また、ADF51としては、原稿読取基準が装置の幅方向中央設けられている場合と、幅方向の片側に設けられている場合とがある。
【0041】
ADF51の排紙トレイ55の底部には、弾性部材を介して白色の圧板97が設けられている。圧板97は、第二コンタクトガラス155上に設置された原稿MSを第二コンタクトガラス155に浮き無く押さえつけるものである。圧板97を設ける弾性部材は、スポンジ、マジックテープ(登録商標)を用いることができる。また、ブラケットを用いて圧板97と排紙トレイ55との間に隙間が形成されるよう圧板97を支持して、機械的に圧板97を弾性保持しても問題ない。
図6に示すように、ADF51と圧板97との一体物は、スキャナ部150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ部150の上面の第一コンタクトガラス154や第二コンタクトガラス155を露出させる。
【0042】
また、
図6に示すように、スキャナ部150の正面部には、テンキーやディスプレイ等からなる操作部たる本体操作部300を有しており、この本体操作部300は、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、スタートキー158の押下操作などが行われる。
【0043】
画像読取ユニット50は、フラットベッドスキャンモードと、ADFスキャンモードとを備えている。フラットベッドスキャンモードは、第二コンタクトガラス155上に載置された状態の原稿MSの画像を読み取る動作モードである。ADFスキャンモードは、原稿トレイ53からADF51によって搬送され、第一コンタクトガラス154の上方を通過する原稿MSの画像を読み取る動作モードである。ADFスキャンモードでは、原稿MSは第一コンタクトガラス154の上方を通過するため、第一キャリッジ152をHP位置から動かさない状態のまま、画像を読み取ることができる。
【0044】
フラットヘッドスキャンモードでは、第一キャリッジ152がHP位置から
図5中右側へ移動しながら第二コンタクトガラス155上にセットされた原稿に光源152aから光を照射する。光源152aから発せられて原稿で反射した走査光は、第一ミラー152b、第二ミラー151a、第三ミラー151b上で順次反射して、固定レンズ153で結像された後、CCD156に取り込まれる。取り込まれた結像データはデジタル信号として適宜処理され、ファクシミリ機能によって電話回線を介して遠隔地へ送られたり、画像形成部1に送られたりする。
【0045】
ADFスキャンモードでは、画像読取ユニット50は、本体操作部300からの指示によって両面読取モードと片面読取モードとを選択でき、その設定されたモードによってADF51の動作が制御される。
以下、ADFスキャンモードにおけるADF51の動作について説明する。
【0046】
<片面読取モード>
片面モードが設定された状態で、本体操作部300のスタートキー158(
図6参照)の押下操作などが行われると、原稿積置センサ57からの検知信号により原稿トレイ53上に原稿MSがセットされているか否かがチェックされる。原稿セットが検知されると、不図示のモータが正回転し、ピックアップローラ80が待機位置から下降して原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。ピックアップローラ80が原稿と当接したら、ピックアップローラ80を
図5中の時計回り方向に回転駆動して、原稿MSを原稿トレイ53上から送り出す。
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、フィードローラ81と分離パッド82との当接により形成される分離ニップへ搬送される。そして、フィードローラ81と分離パッド82とによって順次一枚づつ分離され、搬送路(イ)へと搬送される。
【0047】
搬送路(イ)へ搬送された原稿MSは、搬送ローラ対86によって搬送力を付与され、搬送路(イ)の湾曲した部分を搬送される間に上下面が逆転し、読取入口ローラ対89のローラ間のニップへ搬送される。
【0048】
読取入口ローラ対89を通過した原稿MSの先端は、レジストセンサ65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサ65によって検知されると、読取開始タイミングがとられ、原稿MSの先端が第一コンタクトガラス154の読取位置を到達するタイミングにあわせて読取が開始される。その後、レジストセンサ65により、原稿MSの後端が検知されると、読取終了のタイミングがとられ、原稿MSの後端が読取位置を通過するタイミングにあわせて読取が終了される。
【0049】
片面読取モードのときは、原稿分岐爪95が常に
図5中の実線で示す位置あるため、第一コンタクトガラス154の上を通過して画像が読み取られた後の原稿MSは、排紙ローラ対93によって排紙口94から排紙トレイ55に排紙されて、画像面を下に積載されていく。原稿トレイ53上のすべての原稿MSの読取が終了すると、不図示のモータが逆転し、ピックアップローラ80を上昇させて待機位置に移動させる。
ピックアップローラ80、フィードローラ81、搬送ローラ対86は、すべての原稿MSの読取動作が終了するまで常に回転しており、順次、搬送ローラ対86へ原稿が搬送される。しかし、搬送ローラ対86以降のローラの線速をフィードローラ81の線速に対して早く設定しているので、所定の紙間が形成されて、搬送路(イ)内を原稿MSが搬送される。
【0050】
<両面読取モード>
両面モードが設定された状態で、本体操作部300のスタートキー158の押下操作などが行われると、原稿積置センサ57からの検知信号により原稿トレイ53上に原稿MSがセットされているか否かがチェックされる。原稿セットが検知されると、不図示のモータが正回転し、ピックアップローラ80が待機位置から下降して原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。ピックアップローラ80が原稿と当接したら、ピックアップローラ80を
図5中の時計回り方向に回転駆動して、原稿MSを原稿トレイ53上から送り出す。
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、フィードローラ81と分離パッド82との当接により形成される分離ニップへ搬送される。そして、フィードローラ81と分離パッド82とによって順次一枚づつ分離され、搬送路(イ)へと搬送される。
【0051】
搬送路(イ)へ搬送された原稿MSは、搬送ローラ対86によって搬送力を付与され、搬送路(イ)の湾曲した部分を搬送される間に上下面が逆転し、読取入口ローラ対89のローラ間のニップへ搬送される。
【0052】
読取入口ローラ対89を通過した原稿MSの先端は、レジストセンサ65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサ65によって一回目の検知がなされると、読取開始タイミングがとられ、原稿MSの先端が第一コンタクトガラス154の読取位置を到達するタイミングにあわせて読取が開始される。
【0053】
また、両面読取モードのときに、レジストセンサ65が原稿MSの先端の一回目の検知を行うと、上述したように読取開始タイミングがとられるとともに、原稿分岐爪95を
図5中の点線で示す位置に移動させ、反転ローラ対96を正転方向(反転下ローラ96aが
図5中の時計回りに回転する方向)に回転させる。また、レジストセンサ65が原稿MSの先端の一回目の検知を行ったときには、フィードローラ81およびピックアップローラ80の駆動をクラッチなどにより解除し、次の原稿MSを給紙せずに待機させておく。第一コンタクトガラス154上を通過した原稿MSは、排紙ローラ対93により排紙口94からスイッチバック経路(ハ)に向けて搬送される。その後、レジストセンサ65により、原稿MSの後端の一回目の検知がなされると、読取終了のタイミングがとられ、原稿MSの後端が読取位置を通過するタイミングにあわせて原稿MSのおもて面の画像の読取が終了される。
【0054】
レジストセンサ65が原稿MSの後端を検知してからT秒後(原稿MSの後端が排紙口94を完全に抜けるだけの時間を経過した後)に、原稿分岐爪95の位置を
図5中の実線で示す位置に切り替えるとともに、反転ローラ対96の回転方向を逆転方向(反転下ローラ96aが
図5中の反時計回りに回転する方向)にし、原稿MSを反転路(ニ)へ導く。反転路(ニ)に進入した原稿MSは搬送路(イ)へ送り込まれる。反転路(ニ)から搬送路(イ)へ送り込まれた原稿MSは、読取入口ローラ対89によって搬送され、その先端がレジストセンサ65の直下を通過する際に、二回目の先端の検知がなされる。
【0055】
原稿MSの先端の二回目の検知がなされると、おもて面と同様に、原稿MSの裏面の読取開始タイミングがとられるとともに、再び原稿分岐爪95を
図5中の点線で示す位置に移動し、反転ローラ対96は正転方向に回転させる。このとき、原稿MSの後端が反転ローラ対96を通過していない状態では、読取入口ローラ対89と反転ローラ対96とが相反する方向に搬送力を付与するように回転する状態となるが、ADF51では反転ローラ対96のローラ軸上にトルクリミッタを設けることにより、読取入口ローラ対89の搬送に従うようになっている。
そして、裏面の画像が読み込まれた原稿MSは、排紙ローラ対93により、スイッチバック経路(ハ)へ搬送され、その後端の二回目の通過をレジストセンサ65により検知される。
【0056】
裏面の画像が読み込まれてスイッチバック経路(ハ)に到達した原稿MSは、再び、反転路(ニ)、搬送路(イ)を経て、おもて面を下にした状態で第一コンタクトガラス154上を通過するが、このときは、読取動作は行わない。また、このとき、レジストセンサ65により原稿MSの先端の三回目の検知がなされても、原稿分岐爪95を実線で示す位置の状態にして、原稿MSを排紙トレイ55におもて面を下にして排紙させる。また、原稿MSの後端の三回目の通過がレジストセンサ65によって検知されると、原稿積置センサ57が原稿を検知しているときは、次の原稿MSの給紙動作が行われ、上述したものと同様の動作が行われる。一方、原稿積置センサ57が原稿を検知していないときは、両面原稿読取が終了する。
【0057】
ADF51は、ピックアップローラ80と分離ニップとの間に、プレ分離手段としてのプレ分離部130を備えている。このプレ分離部130は、原稿MSを分離ニップへと案内するガイド部材の上面に斜め上方に向かう斜面を設けており、この斜面によって通過する原稿MSに対して搬送方向への移動に対する抵抗力を付与する。このようなプレ分離部130では、ピックアップローラ80から直接に搬送力が付与される最上位の一枚の原稿MSはプレ分離部130の斜面による抵抗力に抗して分離ニップに向かって搬送される。一方、最上位から二枚目以降の原稿MSは、プレ分離部130の斜面による抵抗力によって、上記最上位の一枚の原稿MSから分離され、または、密着した状態が緩和されて、分離することを促される。
【0058】
ここで従来のADF51のプレ分離部130について説明する。
図12及び
図13は、従来のADF51の原稿トレイ53から分離ニップNまでの部分の概略断面図であり、
図12は、原稿トレイ53に原稿MSがセットされた状態を示す図であり、
図13は、プレ分離部130により原稿MSの束の最上位の一枚が分離された状態を示す図である。
図12及び
図13に示すプレ分離部130は、原稿トレイ53から分離ニップNまで原稿MSを案内する分離ガイド板200の上面に窪み131、下降斜面132及び上昇斜面である搬送抵抗傾斜面133を形成した構成である。
図12及び
図13に示すプレ分離部130では、原稿MSの先端の進行方向を斜め下方から斜め上方の向きに屈曲させる簡素な構成である。
【0059】
また、ピックアップローラ80の搬送により、三枚以上の原稿MSの先端が揃った状態で重なって分離ニップNに到達すると、一番下の原稿MSには分離部材(分離パッド82やリバースローラ82a)による分離作用が働くが、一番上と一番下との間にある原稿MSには分離作用が働き難く、重送となり易い。
図12及び
図13に示す構成では、原稿トレイ53に先端が斜め下方に位置するように原稿MSの束をセットする。この原稿MSの束にピックアップローラ80が搬送力を付与することにより複数枚の原稿MSが呼び出された場合、呼び出された複数枚の原稿MSの先端が搬送抵抗傾斜面133に突き当たる。この突き当たりにより、複数枚の原稿MSの先端(原稿束の先端面)は、上にある原稿MSほど搬送方向下流側(
図13中の左側)となるように傾斜する。
【0060】
このように、原稿MSが傾斜することにより、複数枚の原稿MSが呼び出されても、複数枚の原稿MSの先端が揃った状態で分離ニップNに到達することを防止できる。また、上にある原稿MSほど先端が搬送方向下流側となるため、最上位の一枚の原稿MSの先端が分離ニップNに到達したときには、他の原稿MSは分離ニップNに到達していないので、分離部搬送部材(フィードローラ81やフィードベルト81a)による搬送力を最上位の一枚の原稿MSにのみ作用させることができる。また、その後、最上位の一枚以外の原稿MSが分離ニップNに到達しても、先端が揃っていないので、一番上と一番下との間にある原稿MSに対しても分離部材による分離作用が働く。すなわち、原稿トレイ53にセットされた原稿MSの束から送り出された原稿MSが複数枚であっても、分離し易い状態で分離ニップNに到達するため、より確実な分離が可能となる。
【0061】
図14及び
図15は、従来のADF51の原稿トレイ53から分離ニップNまでの部分の斜視説明図であり、
図14は、原稿MSをセットした状態、
図15は、スキューした原稿MSがプレ分離部130を通過している状態を示す。また、
図12及び
図13に示す構成では、分離部搬送部材がフィードベルト81aで、分離部材がリバースローラ82aであるが、
図14及び
図15に示す構成では、分離部搬送部材がフィードローラ81で、分離部材が分離パッド82となっている。
図14に示すように、従来のADF51では、分離ガイド板200のプレ分離部130での断面形状が幅方向(
図12及び
図13における紙面に直行する方向)で一様となっている。また、
図14及び
図15中の符号「80a」で示す破線の長方形部分は、ピックアップローラ80が接触する部分(以下、「ピックアップ接触部80a」)である。
【0062】
上述したように、傾斜を用いたプレ分離手段は、ピックアップローラ80によって呼び出された複数枚の原稿MSから一枚ずつ搬送するように分離する場合に有効である。特に、一枚目以外の原稿MSの搬送を阻止する分離部材が、分離パッド82のように原稿MSを押し戻す機能を備えない場合は、プレ分離手段による分離を促す作用は分離性能に大きな影響を与える。
しかし、従来のADF51のプレ分離部130のように、断面形状が幅方向で一様であると、ユーザーの原稿セットがスキュー(斜行)気味だったり、突発的な外力が原稿MSに加わり原稿MSが若干スキューしてしまったりした場合に、
図15で示すように、プレ分離部130を通過するときにスキューが増幅してしまうことがあった。その原理を以下で説明する。
【0063】
通常、
図14の原稿セット状態から原稿MSの先端が分離ニップNに進入するまでピックアップローラ80の搬送力のみで原稿MSは搬送される。しかし、ピックアップローラ80の搬送力は重送防止のため極めて低い。つまり、原稿MSの先端が分離ニップNに到達するまでは原稿MSは極めて不安定な状態で搬送されている。その不安定な状態で原稿MSに突発的な外力がかかるとスキューの要因になる。
【0064】
上述したような突発的な外力や、ユーザーの原稿セット性などが原因で、スキュー状態で原稿MSがプレ分離部130を通過する場合、
図15に示すように原稿MSの手前側の先端(MSa)が搬送抵抗傾斜面133を抜けているにもかかわらず、奥側の先端(MSb)が搬送抵抗傾斜面133上の残ることがある。このとき、奥側の先端のみが搬送抵抗傾斜面133による抵抗力を受けて、搬送方向に対する抵抗が大きくなり、ピックアップ接触部80aを中心に
図15中の時計回り方向に原稿MSを回転させるモーメントM1が発生する。ピックアップローラ80の原稿搬送力が小さいために、搬送抵抗傾斜面133の抵抗力によるモーメントM1でも原稿MSが回転して、大きなスキューとなる。このようにして、従来のプレ分離部130の構成ではスキュー原稿を通紙した場合にスキューを増大してしまう。
【0065】
上述したようなスキューが増大してしまう問題を解決するためには、ピックアップローラ80の原稿搬送力を上げる方法がある。しかし、ピックアップローラ80の原稿搬送力を上げると、原稿セット位置にある原稿MSを分離ニップNまでピックアップローラ80で搬送する際に、分離ニップNに進入する原稿MSの枚数が増えることがある。これは、以下の理由による。
すなわち、ピックアップローラ80による搬送力を増加させるために、ピックアップローラ80の原稿MSに対する当接圧を大きくすると、原稿束における原稿MS同士の接触圧が高まり原稿MS間に働く摩擦力が大きくなる。これにより、ピックアップローラ80から直接に搬送力を付与される最上位の一枚の原稿MSと一緒に、二枚目以降の原稿MSが搬送方向に移動しようとする作用が大きくなり、より多くの原稿MSがピックアップローラ80によって搬送されるためである。このため、ピックアップローラ80による搬送力を増加させると、プレ分離部130や分離ニップNでの分離性能を更に向上させる必要が生じる。
【0066】
次に、本実施形態のADF51のプレ分離部130について説明する。
図7は、本実施形態のADF51が備える分離ガイド板200の斜視説明図であり、
図8は、分離ガイド板200を
図7とは異なる方向から見た斜視説明図である。また、
図9は、分離ガイド板200の
図7及び
図8中の幅方向奥側端部近傍の拡大斜視図である。
さらに、
図1は、分離ガイド板200の幅方向の異なる位置における断面形状の説明図であり、
図1(a)は、分離ガイド板200の上面図、
図1(b)は、
図1(a)中のA−A断面の断面説明図、
図1(c)は、
図1(a)中のB−B断面の断面説明図、
図1(d)は、
図1(a)中のC−C断面の断面説明図である。
【0067】
また、
図10及び
図11は、分離ガイド板200の搬送方向の異なる位置における断面形状の説明図である。
図10は、
図11で示す各断面の搬送方向における位置を示す上面図であり、
図11は、
図10中の各断面についての断面説明図である。
図11について、(a)はE−E断面、(b)はF−F断面、(c)はG−G断面、(d)はH−H断面、(e)はD−D断面、(f)はJ−J断面、(g)はK−K断面、(h)はL−L断面、(i)はM−M断面、(j)はN−N断面、(k)はP−P断面である。
【0068】
図1に示すように、本実施形態の分離ガイド板200は、従来の分離ガイド板200と同様に、呼び出し部であるピックアップ接触部80aに対して原稿MSの搬送方向下流側で、分離ニップNに対して搬送方向上流側の位置に、プレ分離部130を形成している。
また、
図7及び
図8に示すように、本実施形態のADF51は、幅方向の中央にフィードローラ81と分離パッド82とを配置し、センター基準の分離手段となっている。
【0069】
図1に示すように、本実施形態の分離ガイド板200は、中央抵抗傾斜面133bと端側抵抗傾斜面133aとからなる搬送抵抗傾斜面133が形成されている。本実施形態の分離ガイド板200の幅方向中央部に形成された中央抵抗傾斜面133bは、従来の分離ガイド板200の搬送抵抗傾斜面133と同様の傾斜を形成している。一方、本実施形態の分離ガイド板200の幅方向の両端側に形成された端側抵抗傾斜面133a(
図1(a)中の斜線部)は、中央抵抗傾斜面133bよりも緩やかな傾斜を形成している。このような形状の分離ガイド板200では、中央部に形成された中央抵抗傾斜面133bがプレ分離部130として作用し、プレ分離機能を維持することができる。また、搬送されてくる原稿MSにスキューが生じ、その幅方向の一方の端側の先端のみがプレ分離部130の斜面に位置する状態であっても、その先端が位置する斜面は端側抵抗傾斜面133aであり中央抵抗傾斜面133bに比べて傾斜が緩やかである。このため、従来の構成のように、プレ分離部130における搬送抵抗傾斜面133の傾斜が幅方向全域において同じであるものに比べて、原稿MSの幅方向一端側の先端に作用する抵抗力を抑制することが出来る。これにより、ピックアップ接触部80aを中心に作用する、プレ分離部130の斜面に残った側の原稿MSの幅方向一端側の先端が、搬送方向上流側に傾く方向の回転モーメントを抑制することができ、スキューが悪化することを抑制できる。
【0070】
また、幅方向端部側ほどピックアップ接触部80aからの距離が遠くなるため、斜面から受ける抵抗力による回転モーメントへの影響が大きくなる。これに対して、本実施形態の分離ガイド板200は、
図1(c)及び(d)に示すように、端側抵抗傾斜面133a内の幅方向端部側ほど傾斜が緩やかになる形状とすることで、斜面から受ける抵抗力による回転モーメントへの影響を少なくし、原稿MSに作用する回転モーメントを抑制することができる。
【0071】
幅方向端部側ほど緩い傾斜であることが望ましいが、中央抵抗傾斜面133bから端側抵抗傾斜面133aの幅方向端部の傾斜まで非連続的に段差となるような形状であると、その段差に原稿MSの先端や幅方向の長さの短い原稿MSの幅方向端部が引っ掛かり、搬送不良が生じるおそれがある。これに対して、本実施形態の分離ガイド板200は、
図7〜
図11に示すように、中央抵抗傾斜面133bから端側抵抗傾斜面133aの幅方向端部に向かうにつれて傾斜を徐々に緩やかにした形状となっている。これにより、段差に起因する搬送不良を防止することができる。
端側抵抗傾斜面133aの傾斜を徐々に緩やかにすることで、幅の広い原稿MSがスキューして進入してきても、原稿MSの幅方向端部側の先端が上昇斜面に激突することがない。そのため、回転モーメントを抑制することができ、プレ分離部130で原稿MSのスキューが悪化してしまうことを抑制できる。また、プレ分離部130の中央部の中央抵抗傾斜面133bの傾きを従来のADF51の搬送抵抗傾斜面133と同等に設定することにより、従来のADF51と同様のプレ分離機能を維持することができる。
【0072】
また、
図11(
e)で示すD−D断面からわかるように、分離ガイド板200は、幅方向についてU字型の高低差(幅方向端部が低く、中央部が高い)が生じている。この高低差によって分離ガイド板200を通過する原稿MSも幅方向の中央部が高くなるような撓みが生じる。この撓みによって原稿MSに腰が生まれ、安定して原稿MSを搬送することができる。また、端側抵抗傾斜面133aの傾斜が幅方向端部側ほど緩やかになるように、端側抵抗傾斜面133aの角度が徐々に変化することによって、副操作方向(幅方向)に広い原稿MSも、狭い原稿MSも一定の曲率で幅方向に撓ませるようにしている。
【0073】
本実施形態の分離ガイド板200では、搬送抵抗傾斜面133よりも上流側の下降斜面132における搬送方向(斜め下方)に沿った姿勢で搬送される原稿MSが水平方向よりも斜め上方にガイドする搬送抵抗傾斜面133に突き当たることで分離が促される構成となっている。しかし、搬送抵抗傾斜面133としては斜め上方にガイドするものに限るものではない。原稿MSがその腰の強さによって、搬送抵抗傾斜面133の直前のプレ分離直前ガイド面(プレ分離直前シート面方向を形成し、下降斜面132に対応するガイド面)に沿った姿勢で搬送されるときに、原稿MSが突き当たるようにプレ分離直前ガイド面との間の角度が180[°]未満となる傾斜面であればよい。
例えば、
図1(b)〜(d)に示す分離ガイド板200を紙面に直行する仮想回転軸を中心に反時計回り方向に回転させて、搬送抵抗傾斜面133が水平面や斜め下方に向かう傾斜面となる構成であっても、搬送抵抗傾斜面133がプレ分離直前ガイド面に対して傾斜し、原稿MSが突き当たる構成であればプレ分離部130としての機能を果たすことが出来、本発明を適用することができる。
【0074】
さらに、
図1(b)〜(d)に示す分離ガイド板200を上下反転させた構成であっても、プレ分離直前ガイド面と搬送抵抗傾斜面133との境目の直前まで原稿MSの下方を支持するガイド部材を設けるなど、プレ分離直前シート面方向に原稿MSが沿うように搬送し、原稿MSの先端が搬送抵抗傾斜面133に突き当たるような構成であればプレ分離部130としての機能を果たすことが出来、本発明を適用することができる。
【0075】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
複数枚の原稿MS等のシート材を重ねて収容する原稿トレイ53等のシート材収容部と、シート材を読取位置等の所定の搬送目的位置まで搬送する搬送ローラ対86、搬送路(イ)及び読取入口ローラ対89等のシート材搬送部と、シート材収容部の複数枚のシート材の最も外側の一枚のシート材にシート材搬送部側に向かう搬送力を付与して複数枚のシート材から一枚のシート材を呼び出すピックアップローラ80等のシート材呼出手段と、シート材呼出手段に搬送力が付与された一枚のシート材と重なってシート材搬送部に向かおうとする他のシート材を一枚のシート材から分離し、一枚のシート材のみをシート材搬送部に向かって搬送するフィードローラ81及び分離パッド82等の分離搬送手段と、シート材呼出手段がシート材に搬送力を付与するピックアップ接触部80a等の呼び出し部から分離搬送手段がシート材に搬送力を付与する分離ニップN等の分離部に向かうシート材を案内する分離ガイド板200等のガイド部材を備え、ガイド部材のシート材を案内する上面等のガイド面に、通過するシート材に対して搬送方向への移動に対する抵抗力を付与する搬送抵抗傾斜面133等の傾斜部を形成し、他のシート材が一枚のシート材から分離することを促すプレ分離部130等のプレ分離手段と、を有するADF51等のシート材搬送装置において、搬送抵抗傾斜面133等の傾斜部を、シート材の搬送方向に直交する方向である幅方向の中央部の傾斜(中央抵抗傾斜面133b等)よりも、幅方向の両端側の傾斜(端側抵抗傾斜面133a等)の方が緩やかになるように形成している。これによれば、上記実施形態について説明したように、幅方向の中央部傾斜によってプレ分離機能を維持することができ、幅方向の両端側の傾斜は中央部の傾斜に比べて緩やかであるため、シート材にスキューが生じても、傾斜部に残った幅方向一方の端部側の先端に作用する抵抗力を抑制することが出来、呼び出し部を中心に作用する、この一方の端部側の先端が搬送方向上流側に傾く方向の回転モーメントを抑制することができ、スキューが悪化することを抑制できる。
(態様B)
(態様A)において、プレ分離部130等のプレ分離手段の分離ガイド板200等のガイド部材の上面の搬送抵抗傾斜面130等の傾斜部は、中央抵抗傾斜面133b等の中央部から幅方向の両端部に向けて段差のない滑らかな形状である。これによれば、上記実施形態について説明したように、幅方向の段差に起因する搬送不良を防止することができる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)の態様において、フィードローラ81等を備える分離搬送手段は、二枚目以降の原稿MS等の他のシート材に停止させる力を作用させる分離パッド82等の分離パッドを備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、リバースローラを用いる構成よりも低コスト化を図ることができ、分離パッドのようにシート材を押し戻す機能を備えない構成であっても、プレ分離部で良好に分離を促すことが出来、且つ、スキューの悪化を防止できるため、シート材の良好な分離搬送を行うことが出来る。
(態様D)
シート材としての原稿MS等の原稿用紙を搬送する原稿搬送手段と、原稿搬送手段によって搬送される原稿用紙の原稿画像を読み取るスキャナ部150等の読取手段とを備えた画像読取ユニット50等の画像読取装置において、原稿搬送手段として、ADF51等の(態様A)乃至(態様C)の何れか一つの態様のシート材搬送装置を用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、原稿用紙のスキューを悪化させることなく、安定した原稿用紙の分離搬送を行うことができるため、安定した画像読取を行うことができる。
(態様E)
画像読取手段と、画像読取手段で読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成部1等の画像形成手段とを備える複写機500等の画像形成装置において、画像読取手段として、画像読取ユニット50等の態様Dの画像読取装置を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、原稿用紙のスキューを悪化させることなく、安定した原稿用紙の分離搬送を行うことができるため、安定した画像読取を行うことができ、原稿画像に基づいて画像を良好に形成することが出来る。