【実施例】
【0073】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
(チタニア半導体粒子懸濁液の調製)
オルトチタン酸テトライソプロピル56.8gを、イオン交換水200mL中によく撹拌しながら滴下し、滴下終了後、さらに1時間撹拌を続けることで加水分解を完結させ、目的とする水酸化チタンの沈殿物を得た。沈殿物は濾紙を用いて濾別し、イオン交換水で十分に洗浄した。
5.8gのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を溶解させたイオン交換水にこの沈殿物を加え、さらにイオン交換水を追加して試料の全量を160gとした。
この試料を、140℃で4時間加熱還流を行った後、ガラスフィルターでマイクロクリスタルを除去することで、白濁半透明なコロイド溶液を得た。
得られたコロイド溶液を密閉したオートクレーブ容器に移し260℃で8時間水熱合成を行い、この水熱合成後、エバポレーターを用いてコロイド溶液の溶媒をエタノールに置換した後、超音波分散の処理を行い、平均粒子径20nmのアナターゼ結晶型のチタニア粒子〔A〕を含むエタノール懸濁液〔A〕を得た(以上の操作を「半導体粒子懸濁液の調製操作」という。)。
なお、TMAHが分解して生成されるトリメチルアミンは、コロイド溶液の溶媒をエタノールに置換する操作の際にほぼ全量除去される。
【0074】
この半導体粒子懸濁液の調製操作において、TMAHの添加量を1.5gとしたことの他は同様にして、平均粒子径100nmのアナターゼ結晶型のチタニア粒子〔B〕を含むエタノール懸濁液〔B〕を得た。
なお、エタノール懸濁液〔A〕、〔B〕に含有されるチタニア粒子について、エタノール懸濁液をスライドガラス上にドクターブレード法で塗布・乾燥後、XRDパターンを測定し、得られたXRDパターンから半価幅を求め、Scherrerの式(D=K×λ/βcosθ)を用いることにより、平均粒子径を算出し、かつ、チタニア粒子の結晶型を確認した。ただし、式中、Dは結晶子の長さ、βは半価幅、θは回折角、K=0.94、λ=1.5418である。
チタニア粒子〔A〕およびチタニア粒子〔B〕は、その結晶型がほぼ100%アナターゼ結晶型であり、ルチル結晶型の存在は確認されなかった。
なお、Scherrerの式は、平均粒子径が50nmを超える場合は誤差が大きくなるため、平均粒子径が50nmを超えた場合は、次の方法を用いた。すなわち、エタノール懸濁液をスライドガラス上にドクターブレード法で塗布・乾燥後、SEMを用いて撮像し、画像に得られた、粒子の粒子半径の算出平均を取ることで平均粒子径とした。
【0075】
(光電変換層形成用水性ペーストの調製)
これら2種類のエタノール懸濁液〔A〕,〔B〕について、各々のチタニア粒子の濃度を、まず、るつぼの質量(W)を電子天秤で秤り、その後、るつぼにエタノール懸濁液を取り、るつぼとエタノール懸濁液の総質量(W1)を秤り、これを電気炉内に入れ、150℃で2時間保持してエタノール懸濁液の溶媒を完全に除去し、次いで、再び質量(W2)を秤り、式{チタニア粒子の濃度(wt%)=(W2−W)/(W1−W)×100}から求めた。
そして、それぞれの濃度に基づいて、チタニア粒子〔A〕およびチタニア粒子〔B〕が重量比で7:3となるように混合し、この混合液を再びエバポレーターを用いて溶媒をほぼ完全に水で置換した上で濃縮することにより、最終的に、チタニア粒子の濃度が10wt%であって水を媒体とする光電変換層形成用ペースト〔1〕を得た。
【0076】
(機能性半導体層の作製)
この光電変換層形成用水性ペースト〔1〕を、ドクターブレード法により、表面抵抗13Ω/□のITO/PEN(ポリエチレンナフタレート)基板(王子トービ製)よりなる透光性基板に、0.5cm×0.5cmの大きさの作用極領域に塗布した後、室温で乾燥させて塗膜を得、この塗膜に対して、ロールプレス処理には、金属ロールを用いたロールプレス機を使用した。ロールプレス機を用い、所定のプレス圧の直径25cmのロールプレスを1rpmでロールプレス処理を行った。ロールプレスの圧力はクリアランスを調整し、感圧フィルム(「プレスケール、富士フィルム社製」)を用いて確認した。なお、感圧フィルムは、チタニア塗布膜が形成されていない基板面に配置した。プレス圧力は、ロールクリアランスを調整して感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら設定した。このペーストを圧力100MPaで両面からロールプレス処理を行い、透光性基板上に機能性半導体層が形成された光電極構造体を得た。
【0077】
このロールプレス処理を行うことにより、機能性半導体層における波長400〜800nmの光透過率は、ロールプレス処理前の値に対して110%に増加し、層厚は70%に減少し、約6μmであった。セル実効面積については、デジタルマイクロスコープおよび校正スケールを用い、有効数字4桁での補正を行った。この光電極構造体の波長200〜900nmの透過率の測定結果をロールプレス処理前後のサンプルにおいて行った。なお、透過率測定はU−4000(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて行った。また、膜厚測定は触針式表面形状測定器DEKTAK(ULVAC製)を用いて行った。
【0078】
ロールプレス処理後に、基板上に形成した塗膜の千倍および2万倍のSEM写真を観察したところ、
図7に示すように、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡 が確認された。
さらに、ロールプレス処理の前後における機能性半導体層の膜厚を計測し、原子力間顕微鏡(AFM)を用いて、機能性半導体層の表面粗さRaを測定した。測定手順は以下の通りである。
【0079】
まず、機能性半導体層表面のうち、一辺が10μmの正方形の領域をAFMで測定する。このとき、ロールプレス処理方向と当該正方形領域の一辺とが平行または略平行となるようにする。
この正方形領域300を、
図9に示すように、ロールプレス方向に延び、幅がそれぞれ3μm、4μm、3μmの帯状領域310、320、および330に分け、各帯状領域310、320、330においてAFMを用いて表面粗さRaを算出する。得られた表面粗さRaの値を合計して3で除した値を第一の方向の表面粗さRaとする。
次に、正方形領域300を、
図10に示すように、ロールプレス方向と直交する方向に延び、幅がそれぞれ3μm、4μm、3μmの帯状領域410、420、および430に分け、各帯状領域410、420、430においてAFMを用いて表面粗さRaを算出する。得られた表面粗さRaの値を合計して3で除した値を第二の方向の表面粗さRaとする。
そして、第二の方向の表面粗さRaを第一の方向の表面粗さRaで除して表面粗さ比率を算出した。その結果、表面粗さ比率は、35.0nm/19.3nm=1.81であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
なお、本発明における表面粗さRaの定義は、ASME B46.1中に記載のImg.Raに準拠した。
【0080】
(増感色素の担持・光電極の作製)
一方、増感色素としてシス−ビス(イソチオシアナート)−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)ビス−テトラブチルアンモニウムを用い、エタノール中に0.2mMの濃度で溶解させて色素溶液を得、この色素溶液中に上記の機能性半導体層を形成させた光電極構造体を24時間浸漬させ、機能性半導体層に増感色素が担持された光電極〔1〕を得た。
なお、この光電極〔1〕について上記と同様にしてSEM観察を行ったところ、ロールプレス処理後のSEM観察において確認されたのと同様のロールプレス痕跡が観察された。
なお、光電変換層の表面粗さRaは、増感色素を担持する前の機能性半導体層の表面粗さRaと実質的に同一である。
【0081】
(色素増感太陽電池の作製)
電解質溶液として、ヨウ素、ヨウ化リチウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドおよびt−ブチルピリジンが溶解されたアセトニトリル溶液を用いた。これらはそれぞれ0.05M、0.1M、0.6Mおよび0.5Mになるよう窒素雰囲気下でアセトニトリルに溶解されたものである。
対極としては、100μmの厚みのTi板に白金が蒸着されたものを用いた。
上記の光電極〔1〕に、厚さ50μmの絶縁スペーサ、対極の順に組み合わせ、光電極〔1〕と対極との間にマイクロシリンジで電解質溶液を注入することにより、色素増感太陽電池〔1〕を作製した。
【0082】
(色素増感太陽電池の性能評価)
この色素増感太陽電池〔1〕に、「ソーラーシミュレータ」(ペクセル社製)を用いて、AM1.5、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射しながら「2400型ソースメータ」(KEITHLEY社製)を用いてI−V特性を測定して短絡電流、開放電圧、形状因子ffの値を得ると共に、これらの値を用いて下記式(1)により、光電変換効率を算出した。
式(1);光電変換効率(%)=[短絡電流値(mA/cm
2)×開放電圧値(V)×{形状因子ff/入射光(100mW/cm
2)}]×100
【0083】
〔実施例2〕
チタニア粒子〔A〕のみのペーストを用いた他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔2〕を得、この色素増感太陽電池〔2〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、34.1nm/17.5nm=1.95であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0084】
〔実施例3〕
チタニア粒子〔A〕およびチタニア粒子〔B〕が重量比で6:4となるように混合したペーストを用いた他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔3〕を得、この色素増感太陽電池〔3〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、13.7nm/9.0nm=1.52であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0085】
〔実施例4〕
ITO/PEN基板の代わりにITO/PETを用いたことの他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔4〕を得、この色素増感太陽電池〔4〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、23.9nm/18.8nm=1.27であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0086】
〔実施例5〕
作用極領域を0.5cm×4.5cmとしたことの他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔5〕を得、この色素増感太陽電池〔5〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、25.5nm/16.6nm=1.54であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0087】
〔実施例6〕
ペーストに市販のペースト「PECC−K01」(ペクセル社製)を用いたことの他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔6〕を得、この色素増感太陽電池〔6〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、30.0nm/16.4nm=1.83であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
実施例1から6のデータを表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
〔比較例A−1〕
ロールプレス処理の代わりに、平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、透光性基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は実施例1と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔A−1〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔A−1〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、
図8に示す拡大写真のように、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0090】
〔比較例A−2〕
ロールプレス処理の代わりに、平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、透光性基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は実施例2と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔A−2〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔A−2〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0091】
〔比較例A−3〕
ロールプレス処理の代わりに、平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、透光性基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は実施例3と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔A−3〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔A−3〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0092】
〔比較例A−4〕
ロールプレス処理の代わりに、平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、透光性基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は実施例4と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔A−4〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔A−4〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0093】
〔比較例A−5〕
ロールプレス処理の代わりに、平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、透光性基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は実施例5と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔A−5〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔A−5〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0094】
〔比較例A−6〕
ロールプレス処理の代わりに、平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、透光性基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は実施例6と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔A−6〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔A−6〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
比較例A−1からA−6のデータを表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
〔比較例C−1〕
塗膜に対してロールプレス処理を行わず、150℃で10分間、加熱処理を行ったことの他は実施例1と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔C−1〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔C−1〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。ただし、表面粗さRaの測定においては、ロールプレス処理を行っていないため、上述の正方形領域300を任意の位置に設定し、表面粗さRaの測定値が小さい方の方向を第一の方向とした。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、45.0nm/42.4nm=1.06であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0097】
〔比較例C−2〕
塗膜に対してロールプレス処理を行わず、150℃で10分間、加熱処理を行ったことの他は実施例2と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔C−2〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔C−2〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例C−1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、45.3nm/43.0nm=1.05であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0098】
〔比較例C−3〕
塗膜に対してロールプレス処理を行わず、150℃で10分間、加熱処理を行ったことの他は実施例6と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔C−3〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔C−3〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。
比較例C−1からC−3のデータを表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
〔比較例D−1〕
塗膜に対してプレス処理および加熱処理を行わず、常温で10分間保持した他は実施例1と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔D−1〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔D−1〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。
【0101】
〔比較例D−2〕
塗膜に対してプレス処理および加熱処理を行わず、常温で10分間保持した他は実施例2と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔D−2〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔D−2〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。
【0102】
〔比較例D−3〕
塗膜に対してプレス処理および加熱処理を行わず、常温で10分間保持した他は実施例6と同様にして比較用の色素増感太陽電池〔D−3〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔D−3〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。
比較例D−1からD−3までのデータを表4に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
〔比較例E−1〕
透光性基板として、ITO/PEN基板の代わりに表面抵抗9Ω/□のFTO/導電性ガラス基板を使用し、プレス処理を行わず、光電変換層形成用水性ペースト〔1〕の塗布・乾燥処理後に520℃で1時間焼成処理を行い、対極として導電性ガラスに白金をスパッタしたものを用いたことの他は実施例1と同様にして比較用の色素増感型太陽電池〔E−1〕を得、この比較用の色素増感太陽電池〔E−1〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、機能性半導体における波長に対する透過率と膜厚を測定した。
比較例E−1のデータを表5に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
実施例1〜実施例6に係る本発明の色素増感太陽電池においては、高い光電変換効率が得られていることが確認された。
また、実施例1、5の結果を比較することにより、作用極領域を大きくすると光電変換効率の大きさに影響し多少低くなる傾向を示すが、ほぼ同等の光電変換効率が得られることが確認された。この点について、作用極領域を大きくした比較例A−5では、比較例A−1と比較して光電変換効率が大きく低下しており、平プレスに対するロールプレス処理の優位性が示された。
【0107】
一方、プレス処理を行わなかった比較用色素増感太陽電池に係る比較例D−1、D−2、D−3の結果から、プレス処理を行わないと高い光電変換効率が得られないことが確認された。これは、プレス処理を行わなかった結果、チタニア粒子間およびチタニア粒子と透光性基板との接合性が低いものとなってしまうことが大きな要因であると考えられる。
また、実施例2の結果から、粒径の小さい1種類の半導体粒子のみを用いた太陽電池は、粒径の異なる2種の半導体粒子を用いる本発明のものに比して高い光電変換効率が得られないことが確認されたが、高い透過率を有する色素増感太陽電池を作成することができる。
【0108】
ロールプレス痕跡は、ロールプレスを行った実施例1〜6において、SEMを用いることで観察された。ロールプレス痕跡は、ロールプレスの回転方向と平行に延びるように生じていることが確認された。また、AFMを用いた機能性半導体層の表面粗さRaの測定において、ロールプレス処理方向に平行な第一の方向と、第一の方向に直交する第二の方向とで表面粗さRaを比較したところ、第二の方向の表面粗さRaの方が第一の方向の表面粗さRaよりも大きく、1.2倍以上の値を示した。これは、ロールプレス処理に起因するロールプレス痕跡の凹凸が、第一の方向に延びているため、生じたと考えられる。
平プレスを用いてサンプルを作製した比較例A−1〜A−6では、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。
【0109】
〔実施例F−1〕
ロールプレス処理の条件を圧力80MPaとしたことの他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔F−1〕を得、この色素増感太陽電池〔F−1〕および光電極構造体〔F−1−1〕を実施例1と同様の測定を行った。
【0110】
〔実施例F−2〕
プレス処理の条件を圧力160MPaとしたことの他は実施例1と同様にして色素増感太陽電池〔F−2〕を得、この色素増感太陽電池〔F−2〕の光電極構造体光電極構造体〔F−2−1〕を実施例1と同様の測定を行った。
【0111】
〔実施例G−1〕
機能性半導体膜厚を実施例1よりも増加させて作成した以外は、同様にして色素増感太陽電池〔G−1〕を得、この色素増感太陽電池〔G−1〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0112】
〔実施例G−2〕
機能性半導体膜厚を実施例1よりも低下させて作成した以外は、同様にして色素増感太陽電池〔G−2〕を得、この色素増感太陽電池〔G−2〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。
また、機能性半導体における波長に対する透過率とプレス処理前後の膜厚を測定した。
【0113】
〔実施例H−1〕
実施例1と同様にして得られた光電変換層形成用水性ペースト〔1〕を塗布し、機能性半導体層を形成し、この機能性半導体層にUV−オゾン処理を施し、その後、増感色素を担持させることにより、色素増感太陽電池〔H−1〕を得、これらの色素増感太陽電池〔H−1〕について実施例1と同様にして短絡電流、開放電圧、形状因子ff、光電変換効率の値を得た。
【0114】
(UV−オゾン処理)
処理対象物をUV−オゾン洗浄装置「OC−2506」(岩崎電気(株)製)に入れ、5分間紫外線照射を行った。
比較例F−1からH−1までのデータを表6に示す。
【0115】
【表6】
【0116】
機能性半導体層にUV−オゾン処理を施すことにより、これを行わなかった場合は例えば実施例1と比較して、高い光電変換効率を得られることが示された。
これは、機能性半導体層へのUV−オゾン処理により、機能性半導体層に含有される半導体粒子の親水基が増加されて当該半導体粒子が色素吸着しやすいものとなり、その結果、得られる色素増感太陽電池が高い光電変換効率を得られると推察される。
【0117】
次に、第二実施形態に対応する実施例を示す。
〔実施例11〕
(第二層の形成)
チタニア粒子〔B〕をエバポレーターを用いて溶媒をほぼ完全に水で置換した上で濃縮することにより、最終的に、チタニア粒子の濃度が10wt%であって水を媒体とする光電変換層形成用ペースト〔2〕を得た。
実施例1と同様の手順で形成したロールプレス処理後の機能性半導体層の上に重なるように、光電変換層形成用ペースト〔2〕を再度ドクターブレード法にて、塗布を行い、室温にて乾燥させ塗布膜を得た。その後、この塗布膜に対して、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を用いて平プレス処理を行い、第二層となる機能性半導体層を形成した。
具体的には、5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、チタニア塗布ITO−PEN基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布ITO−PEN基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。以上の手順で、透光性基板上に第一層および第二層が形成された光電極構造体を得た。
その後、実施例1と同様に増感色素の担持を行って光電極を得、さらに色素増感太陽電池を作製した。
【0118】
〔実施例12〕
実施例11の平プレス処理に代えて、金属ロールを備えたロールプレス機を使用したロールプレス処理を行った。ロールプレス機を用い、所定のプレス圧の直径25cmのロールプレスを1rpmでロールプレス処理を行った。ロールプレスの圧力はクリアランスを調整し、感圧フィルム(「プレスケール、富士フィルム社製」)を用い、荷重を確認しながら行った。なお、感圧フィルムは、チタニア塗布膜が形成されていない基板面に配置した。プレス圧力は、ロールクリアランスを調整して感圧フィルムで実測プレス荷重を確認しながら設定した。このペーストを圧力100MPaで両面からロールプレス処理を行った。
以上の手順で、透光性基板上に第一層および第二層が形成された光電極構造体を得た。
その後、実施例1と同様に増感色素の担持を行って光電極を得、さらに色素増感太陽電池を作製した。
【0119】
〔実施例13〕
実施例12のロールプレス処理に代えて、150℃で10分間加熱乾燥を行って第二層となる機能性半導体層を得た以外は、実施例12と同様の手順で作製した。
【0120】
〔実施例14〕
実施例12のロールプレス処理に代えて、常温で10分間乾燥を行って第二層となる機能性半導体層を得た以外は、実施例12と同様の手順で作製した。
【0121】
実施例11から実施例14の光電極構造体を純水に付け、水中で光電変換層の表面に超音波を5秒間照射したところ、第二層が第一層から剥離された。その後、マイクロスコープを用い、倍率1000倍で第一層の表面を観察したところ、ロールプレス痕跡が確認できた。
【0122】
実施例11から14の構成を表7にまとめた。また、実施例11から14について、上述の方法により電池性能を評価した結果を表8に示す。表8に示すように、第二層を設けた実施例の色素増感太陽電池は、第二層を有さない実施例と比較して電池性能が向上していた。
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
以上の結果から、ロールプレス処理された第一層上に第二層を積層させることにより、第一層のみの比較例よりも高い光電変換効率を得られることが示された。これは、第二層が光散乱層として機能し、光閉じ込め効果を強く発現したものと推察される。
【0126】
続いて、第三実施形態に対応する実施例を示す。
〔実施例21〕
光電変換層を形成する基板として、Ti基板(厚さ40μm)を用いたこと、および対極として表面抵抗13Ω/□のITO/PENフィルム(王子トービ製)に白金が蒸着されたものを用いたことを除き、実施例1と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
ロールプレス処理後に、Ti基板上に形成した塗膜の千倍および2万倍のSEM写真を観察したところ、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡が確認された。
実施例1と同様の方法で表面粗さ比率を測定したところ、18.3nm/13.8nm=1.33であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0127】
〔実施例22〕
チタニア粒子〔A〕のみのペーストを用いた他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、30.3nm/19.8nm=1.53であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0128】
〔実施例23〕
チタニア粒子〔A〕およびチタニア粒子〔B〕が重量比で6:4となるように混合したペーストを用いた他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、27.8nm/14.6nm=1.90であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0129】
〔実施例24〕
Ti基板の代わりにCu基板(厚さ40μm)を用いたことの他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、31.2nm/12.6nm=2.48であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0130】
〔実施例25〕
Ti基板の代わりにSUS304製の基板(厚さ50μm)を用いたことの他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、15.2nm/11.7nm=1.30であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0131】
〔実施例26〕
作用極領域を0.5cm×4.5cmとしたことの他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、17.1nm/13.6nm=1.26であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0132】
〔実施例27〕
ペーストに市販のペースト「PECC−K01」(ペクセル社製)を用いたことの他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、23.6nm/15.9nm=1.48であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0133】
実施例21から27の結果を表9に示す。なお、機能性半導体層の膜厚はプレス後の値のみ示す。また、実施例24については、電池として機能することを確認したが、電池性能については測定していない。
【0134】
【表9】
【0135】
〔比較例A−21〕
ロールプレス処理に代えて平プレス処理を行ったことの他は、実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
平プレス処理には、ミニテストプレス−10(東洋精機製)を使用した。5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)、感圧フィルム(「プレスケール」、富士フィルム社製)、Ti基板、フッ素離型フィルム、及び5mmのコーネックスフェルト(デュポン株式会社製)を順次積層し、上から「コーネックスフェルト」/「感圧フィルム」/「フッ素離型フィルム」/チタニア塗布Ti基板/「コーネックスフェルト」の層構成とした積層体を得た。この積層体を、感圧フィルムで実測プレス加重を確認しながら60秒間プレスした。このときの加重は圧力100MPaであった。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。
また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。ただし、表面粗さRaの測定においては、ロールプレス処理を行っていないため、正方形領域300を任意の位置に設定し、表面粗さRaの測定値が小さい方の方向を第一の方向とした。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、41.3nm/38.2nm=1.08であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0136】
〔比較例A−22〕
ロールプレス処理に代えて比較例A−21と同様の平プレス処理を行ったことの他は、実施例22と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、35.2nm/30.9nm=1.14であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0137】
〔比較例A−23〕
ロールプレス処理に代えて比較例A−21と同様の平プレス処理を行ったことの他は、実施例23と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、35.6nm/30.7nm=1.16であった。
【0138】
〔比較例A−24〕
ロールプレス処理に代えて比較例A−21と同様の平プレス処理を行ったことの他は、実施例24と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、37.4nm/31.8nm=1.18であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0139】
〔比較例A−25〕
ロールプレス処理に代えて比較例A−21と同様の平プレス処理を行ったことの他は、実施例25と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、32.8nm/31.7nm=1.03であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0140】
〔比較例A−26〕
ロールプレス処理に代えて比較例A−21と同様の平プレス処理を行ったことの他は、実施例26と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、28.6nm/27.4nm=1.04であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0141】
〔比較例A−27〕
ロールプレス処理に代えて比較例A−21と同様の平プレス処理を行ったことの他は、実施例27と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、47.6nm/43.8nm=1.09であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0142】
比較例A−21からA−27の結果を表10に示す。なお、機能性半導体層の膜厚はプレス後の値のみ示す。また、比較例A−24については、電池として機能することを確認したが、電池性能については測定していない。
【0143】
【表10】
【0144】
〔比較例C−21〕
プレス処理を行わず、常温で乾燥を10分間行った他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体層の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、67.5nm/59.1nm=1.14であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0145】
〔比較例C−22〕
プレス処理を行わず、常温で乾燥を10分間行った他は実施例24と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体層の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、149.6nm/128.8nm=1.16であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0146】
〔比較例C−23〕
プレス処理を行わず、常温で乾燥を10分間行った他は実施例25と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行ったところ、ロールプレス痕跡のように特定方向に延びる痕跡は認められなかった。また、比較例A−21と同様の手順で表面粗さRaを測定し、機能性半導体層の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、61.6nm/61.4nm=1.00であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性は認められなかった。
【0147】
比較例C−21からC−23の結果を表11に示す。なお、比較例C−22については、電池として機能することを確認したが、電池性能については測定していない。
【0148】
【表11】
【0149】
実施例21〜実施例27に係る本発明の色素増感太陽電池においては、高い光電変換効率が得られていることが確認された。
また、実施例21と26の結果を比較することにより、作用極領域を大きくすると光電変換効率の大きさに影響し多少低くなる傾向を示すが、ほぼ同等の光電変換効率が得られることが確認された。この点について、作用極領域を大きくした比較例A−26では、比較例A−21と比較して光電変換効率が大きく低下しており、平プレスに対するロールプレス処理の優位性が示された。
【0150】
一方、プレス処理を行わなかった比較用色素増感太陽電池に係る比較例C−21の結果から、プレス処理を行わないと高い光電変換効率が得られないことが確認された。これは、プレス処理を行わなかった結果、チタニア粒子間およびチタニア粒子と金属基板との接合性が低いものとなってしまうことが大きな要因であると考えられる。
【0151】
ロールプレス痕跡は、ロールプレスを行った実施例21〜27において、SEMを用いることで観察された。ロールプレス痕跡は、ロールプレスの回転方向と平行に延びるように生じていることが確認された。
【0152】
〔実施例D−21〕
ロールプレス処理の条件を圧力80MPaとしたことの他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、17.4nm/13.6nm=1.28であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0153】
〔実施例D−22〕
プレス処理の条件を圧力160MPaとしたことの他は実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、20.5nm/12.6nm=1.63であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0154】
〔実施例E−21〕
光電変換層形成用水性ペースト〔1〕の塗布量を調節することにより、ロールプレス処理後の機能性半導体膜厚を実施例21よりも薄い2μmとした以外は、実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、37.1nm/18.5nm=2.01であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0155】
〔実施例E−22〕
光電変換層形成用水性ペースト〔1〕の塗布量を調節することにより、ロールプレス処理後の機能性半導体膜厚を実施例21よりも厚い10μmとした以外は、実施例21と同様にして光電極および色素増感太陽電池を作製し、実施例1と同様の方法で電池性能を評価した。
この際、得られた、機能性半導体層に対して、SEMを用いて表面観察を行い、ロールプレス処理方向と平行に延びるロールプレス痕跡を確認した。また、実施例1と同様の手順で表面粗さRaを測定し、プレス処理前後の膜厚を測定した。
表面粗さRa測定の結果、表面粗さ比率は、24.1nm/16.7nm=1.44であり、第二の方向と第一の方向とで表面粗さRaの異方性が確認された。
【0156】
比較例D−21からE−22の結果を表12に示す。なお、機能性半導体層の膜厚はプレス後の値のみ示す。
【0157】
【表12】
【0158】
以上、本発明を実施の形態及び実施例にもとづいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはいうまでもない。