(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビニルアルコール単位の含有率が8〜30質量%であるポリビニルアセタールを用いて形成したポリビニルアセタールフィルムであって、外側の2つのスキン層Aおよびスキン層Bの間にコア層Cが存在する3層構造を有し、且つ下記の式(I)、(II)および(IV);
ΔnMDA≧ΔnMDB (I)
ΔnMDB−ΔnMDC≧0.1×10-3 (II)
ΔnMDA<3.5×10-3 (IV)
(上記式中、ΔnMDAはスキン層Aの機械流れ方向の複屈折率、ΔnMDBはスキン層Bの機械流れ方向の複屈折率、ΔnMDCはコア層Cの機械流れ方向の複屈折率を示す。)
を満足するポリビニルアセタールフィルムよりなることを特徴とする太陽電池用封止材。
ビニルアルコール単位の含有率が8〜30質量%であるポリビニルアセタールを用いて形成したポリビニルアセタールフィルムであって、外側の2つのスキン層Aおよびスキン層Bの間にコア層Cが存在する3層構造を有し、且つ下記の式(I)、(II)および(IV);
ΔnMDA≧ΔnMDB (I)
ΔnMDB−ΔnMDC≧0.1×10-3 (II)
ΔnMDA<3.5×10-3 (IV)
(上記式中、ΔnMDAはスキン層Aの機械流れ方向の複屈折率、ΔnMDBはスキン層Bの機械流れ方向の複屈折率、ΔnMDCはコア層Cの機械流れ方向の複屈折率を示す。)
を満足するポリビニルアセタールフィルムよりなることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、フィルムの両面(外側)にそれぞれスキン層Aとスキン層Bを有し、当該2つのスキン層Aおよびスキン層Bの間にコア層Cが存在する3層構造を有する。
本発明のポリビニルアセタールフィルムでは、スキン層Aおよびスキン層Bのそれぞれの厚みは特に制限されないが、ポリビニルアセタールフィルムの全体の厚みに対して、例えば、5%以下であり(フィルムの表層から5%の深さまでの間の厚みであり)、スキン層Aおよびスキン層Bはコア層C部分よりも高い複屈折率を有している。
本発明では、コア層Cの厚みとは、ポリビニルアセタールフィルムの全体の厚みから、両表面のスキン層Aおよびスキン層Bの厚みの合計を差し引いた残りの部分をいう。
例えば、スキン層Aおよびスキン層Bの厚みが、ポリビニルアセタールフィルムの全体の厚みに対してそれぞれ3%であるとすると、スキン層Aおよびスキン層Bの内側に存在するコア層Cの厚みは、フィルム全体の厚みの94%となる。
【0018】
ポリビニルアセタールフィルムの機械流れ方向(ポリビニルアセタールフィルムを連続製膜する際のライン方向、長さ方向)(以下「長さ方向(MD)」という)の複屈折率を測定したときに、スキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率とスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率は同じであってもまたは異なっていてもよいが、本発明では、2つのスキン層のうち、長さ方向(MD)の複屈折率の大きい方のスキン層[長さ方向(MD)の複屈折率がもう一方のスキン層の長さ方向(MD)の複屈折率以上であるスキン層]をスキン層Aとし、長さ方向(MD)の複屈折率がスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率以下であるスキン層をスキン層Bとする。
すなわち、本発明のポリビニルアセタールフィルムでは、スキン層Aとスキン層Bは、以下の式(I)に示す関係を有する。
Δn
MDA≧Δn
MDB (I)
[式中、Δn
MDAはスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率を示し、Δn
MDBはスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率を示す。]
【0019】
スキン層Aとスキン層Bが上記の式(I)の関係にある本発明のポリビニルアセタールフィルムは、下記の式(II)および
(IV)を満たす。
Δn
MDB−Δn
MDC≧0.1×10
-3 (II)
ΔnMDA<3.5×10-3 (IV)
[式中、
ΔnMDAはスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率、Δn
MDBはスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率、Δn
MDCはコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率を示す。]
【0020】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、スキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDB−Δn
MDC)が、上記の式(II)を満足する、すなわち0.1×10
-3以上であることが必要であり、0.15×10
-3以上であることが好ましく、0.3×10
-3以上であることがより好ましい。
スキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDB−Δn
MDC)が0.1×10
-3よりも小さいと、ポリビニルアセタールフィルム間での密着や他の部材に対する密着が生じ易くなって、ポリビニルアセタールフィルムをガラス板やその他の部材にレイアップした時(重ね合わせた時、積層時)に、位置の微調整が難しくなり、ポリビニルアセタールフィルムのレイアップを良好な作業性で正確に行うことが困難になる。
【0021】
スキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDB−Δn
MDC)の上限値は特に制限されないが、スキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDB−Δn
MDC)、ひいてはスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDA−Δn
MDC)が大きくなりすぎると、太陽電池モジュールでは、太陽電池セルの位置ずれ、未封止部分の発生、空隙の発生、ポリビニルアセタール封止材と他の部材との接着強度の低下などが起こり易くなり、また合わせガラスでは、貼り合わされるガラス間の位置ずれ、貼り合わせ部分での気泡の発生、中間膜の存在しない箇所の発生、空隙の発生、ガラス板とポリビニルアセタール中間膜との接着強度の低下などが起こり易くなる傾向がある。
かかる点から、スキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDB−Δn
MDC)、およびスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA)とコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)の差(Δn
MDA−Δn
MDC)は、3.3×10
-3以下であることが好ましく、2.3×10
-3以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、ポリビニルアセタールフィルムの収縮を防止するという観点から、上記の式(I)および(II)を満足し、更に下記の数式(IV);
ΔnMDA<3.5×10-3 (IV)
[
上記式中、ΔnMDAはスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率を示す。]
を満足
するものである。かかる点から、ポリビニルアセタールフィルムのスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(ΔnMDB)も3.5×10-3未満であることが好ましい。
【0023】
また、本発明のポリビニルアセタールフィルムでは、コア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(ΔnMDC)が、下記の式(III);
ΔnMDC≦0.2×10-3 (III)
を満足すること、特にΔnMDCが0.15×10-3以下、更には0.1×10-3以下であることが好ましい。
コア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(ΔnMDC)が大きくなりすぎると、ポリビニルアセタールフィルムを他の部材に積層して(重ね合わせて)加熱したときにポリビニルアセタールフィルムの収縮が生じて、太陽電池モジュールでは、太陽電池セルの位置ずれ、未封止部分の発生、空隙の発生、ポリビニルアセタール封止材と他の部材との接着強度の低下などが起こり易くなり、また合わせガラスでは、貼り合わされるガラス間の位置ずれ、貼り合わせ部分での気泡の発生、中間膜の存在しない箇所の発生、空隙の発生、ガラス板とポリビニルアセタール中間膜との接着強度の低下などが起こり易くなる傾向がある。
また、製造上の観点から、コア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(ΔnMDC)は、0.001×10-3以上であることが好ましく、0.01×10-3以上であることがより好ましい。
ポリビニルアセタールフィルムのラミネート時の密着防止、収縮防止の点から、ポリビニルアセタールフィルムのスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA)およびスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)は、0.1×10
-3以上で且つ3.5×10
-3未満であることが好ましく、0.2×10
-3〜3.0×10
-3であることがより好ましく、0.5×10
-3〜2.5×10
-3であることが更に好ましい。
【0024】
また、本発明のポリビニルアセタールフィルムは、上記の式
(I)、(II)および(IV)または式(I)〜(IV)を満足し、更に下記の式(V)および(VI)のいずれか一方または両方を満足することが、収縮防止の点から好ましい。
Δn
MDA/Δn
TDA=0.5〜3.0 (V)
Δn
MDB/Δn
TDB=0.5〜3.0 (VI)
[上記式中、Δn
MDAはスキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率、Δn
MDBはスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率、Δn
TDAはスキン層Aの長さ方向(MD)と直角な方向(幅方向(TD))の複屈折率、Δn
TDBはスキン層Bの長さ方向(MD)と直角な方向(幅方向(TD))の複屈折率を示す。]
特に、本発明のポリビニルアセタールフィルムでは、加熱したときの収縮がより効果的に防止できることから、スキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA)とスキン層Aの長さ方向(ND)と直角な方向(幅方向(TD))[以下「幅方向(TD)」という]の複屈折率(Δn
TDA)との比(Δn
MDA/Δn
TDA)、およびスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)とスキン層Bの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDB)との比(Δn
MDB/Δn
TDB)が、いずれも、0.5〜2.0の範囲であることが更に好ましい。
【0025】
また、本発明のポリビニルアセタールフィルムでは、上記した式に加えて、コア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDC)が、0.2×10
-3以下であることが好ましく、0.15×10
-3以下であることがより好ましく、0.1×10
-3以下であることが更に好ましい。コア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDC)が大きくなりすぎると、ポリビニルアセタールフィルムを加熱したときに収縮が生じ易くなり、太陽電池モジュールの製造に用いる場合は、太陽電池セルの位置ずれ、未封止部分の発生、空隙の発生、ポリビニルアセタール封止材と他の部材との接着強度の低下などが起こり易くなり、また合わせガラスの製造に用いる場合は、貼り合わされるガラス間の位置ずれ、貼り合わせ部分での気泡の発生、中間膜の存在しない箇所の発生、空隙の発生、ガラス板とポリビニルアセタール中間膜との接着強度の低下などが起こり易くなる傾向がある。
また、製造上の観点から、コア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDC)は、0.001×10
-3以上であることが好ましく、0.01×10
-3以上であることがより好ましい。
【0026】
ここで、本発明におけるポリビニルアセタールフィルムのスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDBおよびΔn
MDC)、幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDBおよびΔn
TDC)は、以下の方法により測定したものをいう。
【0027】
[ポリビニルアセタールフィルムの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)および幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDBおよびΔn
TDC)の測定法]
(1) ポリビニルアセタールフィルムのスキン層A、スキン層B、コア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)並びに幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDBおよびΔn
TDC)は、非特許文献1に記載されている方法を参照して、以下の(2)および(3)の方法で測定した。
(2)長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)の測定:
(i) ポリビニルアセタールフィルムの長さ方向(MD)の任意の位置で、
図1の(a)に示すように、フィルムの幅方向(TD)における中央部からMD×TD=2mm×10mmの大きさの細片を切り出し、その細片を厚さ100μmのPETフィルムで両側を挟み、それを更に木枠に挟んでミクロトーム装置に取り付けた。
(ii) 次に、前記で採取した細片を、
図1の(b)に示すように(PETフィルムおよび木枠は図示せず)、細片の長さ方向(MD)と平行に20μm間隔でスライスし、
図1の(c)に示す観察用のスライス片(MD×TD=2mm×20μm)を20個作製した。このスライス片の中から、スライス面が平滑でかつスライス厚み斑のないスライス片3個を選び、それぞれをスライドガラス上に載せてカバーガラスと封入液で封じ、接眼マイクロメータでスライス厚みを計測した。なお、観察は接眼10倍、対物20倍(トータル200倍)の視野で行った。
【0028】
(iii) 次いで、スライス面が観察できるように、カバーガラスを動かしてスライス片を
図1の(d)のように倒し、前記(ii)で厚みを計測したところと同一場所を消光位+45°の対角位に置き、偏光顕微鏡に取り付けたベレックコンペンセータを用いて白色光照明下でスライス面の干渉光からレターデーションが1波長以下であることを確認した。
(iv) 光源をナトリウムD線(波長589nmの単色光)に変え、ベレックコンペンセータの角度つまみを回転させて、黒い縞の中心が視野中央の十字線にくるようにし、回転角度aを読み取った。次に角度つまみを反対に回転させて1波長分を動かし、黒い縞の中心が視野中央の十字線にくるようにして角度bを読み取った。この操作を4回繰り返し、角度a、bともに計4回の平均値を読み取り値とした。
(v) 上記で得られたa、bの二つの角度から補償値i=(a−b)/2(ただしa>b)を求め、f(i)=sin
2i×(1+0.204sin
2i)にベレックコンペンセータ固有の光学定数Cを掛けてレターデーションRを求め[R=f(i)×C]、計測厚みで除して複屈折率を求め、同じ測定を3回行って(n=3)、その平均値を複屈折率(Δn)とした。その際に、スキン層Aの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA)およびスキン層Bの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDB)は、ポリビニルアセタールフィルムの最表面から1μmの深さ位置で測定し、コア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDC)はフィルムの厚みの中央位置(スライス面の中央位置)で測定した。
【0029】
(3)幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDBおよびΔn
TDC)の測定:
(i) ポリビニルアセタールフィルムの長さ方向(MD)の任意の位置で、
図2の(a)に示すように、フィルムの幅方向(TD)における中央部からMD×TD=10mm×2mmの大きさの細片を切り出し、その細片を厚さ100μmのPETフィルムで両側を挟み、それを更に木枠に挟んでミクロトーム装置に取り付けた。
(ii) 次に、前記で採取した細片を、
図2の(b)に示すように(PETフィルムおよび木枠は図示せず)、細片の幅方向(TD)と平行に20μm間隔でスライスし、
図2の(c)に示す観察用のスライス片(MD×TD=20μm×2mm)を20個作製した。このスライス片の中から、スライス面が平滑でかつスライス厚み斑のないスライス片3個を選び、それぞれをスライドガラス上に載せてカバーガラスと封入液で封じ、接眼マイクロメータでスライス厚みを計測した。なお、観察は接眼10倍、対物20倍(トータル200倍)の視野で行った。
【0030】
(iii) 次いで、スライス面が観察できるように、カバーガラスを動かしてスライス片を
図2の(d)のように倒し、前記(ii)で厚みを計測したところと同一場所を消光位+45°の対角位に置き、偏光顕微鏡に取り付けたベレックコンペンセータを用いて白色光照明下でスライス面の干渉光からレターデーションが1波長以下であることを確認した。
(iv) 光源をナトリウムD線(波長589nmの単色光)に変え、ベレックコンペンセータの角度つまみを回転させて、黒い縞の中心が視野中央の十字線にくるようにし、回転角度aを読み取った。次に角度つまみを反対に回転させて1波長分を動かし、黒い縞の中心が視野中央の十字線にくるようにして角度bを読み取った。この操作を4回繰り返し、角度a、bともに計4回の平均値を読み取り値とした。
(v) 上記で得られたa、bの二つの角度から補償値i=(a−b)/2(ただしa>b)を求め、f(i)=sin
2i×(1+0.204sin
2i)にベレックコンペンセータ固有の光学定数Cを掛けてレターデーションRを求め[R=f(i)×C]、計測厚みで除して複屈折率を求め、同じ測定を3回行って(n=3)、その平均値を複屈折率(Δn)とした。その際に、スキン層Aの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA)およびスキン層Bの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDB)は、ポリビニルアセタールフィルムの最表面から1μmの深さ位置で測定し、コア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDC)はフィルムの厚みの中央位置(スライス面の中央位置)で測定した。
【0031】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、ビニルアルコール単位の含有率が8〜30質量%であるポリビニルアセタールを用いて形成されていることが必要であり、ビニルアルコール単位の含有率が10〜22質量%のポリビニルアセタールを用いて形成されていることが好ましく、ビニルアルコール単位の含有率が12〜18質量%のポリビニルアセタールを用いて形成されていることがより好ましい。
ポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールにおいて、ビニルアルコール単位の含有率が少なすぎると、ポリビニルアセタールフィルムの力学的強度の低下、基材への接着不良などの問題が生じ、一方ビニルアルコール単位の含有率が多すぎると、ポリビニルアセタールフィルムの吸湿性が高くなって、吸収した水による金属の腐食、絶縁性の低下、ポリビニルアセタールフィルムの基材からの剥離などが生じ易くなる。
ここで、本明細書でいう「ビニルアルコール単位」は、アセタール化されずに、式「−CH
2−CH(OH)−」で表される水酸基含有構造単位のままでポリビニルアセタール中に残留している単位であり、本明細書における「ビニルアルコール単位の含有率(質量%)は、JIS K6728:1977年に従って測定された含有率(質量%)をいう。
【0032】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールは、ビニルアルコール単位の含有率が8〜30質量%である限り、その製法は特に制限されないが、一般的には、ポリビニルアルコール系重合体にアルデヒド類を反応させてアセタール化することによって製造することができる。
ポリビニルアセタールの製造に用いるポリビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル系単量体を重合して得られる重合体(ポリビニルエステル)をけん化して、重合体中のエステル基を水酸基に変えることによって製造することができる。
【0033】
ポリビニルエステルの製造に用い得るビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリビニルエステルは、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルであることが好ましい。
【0034】
また、ポリビニルエステル、特にポリ酢酸ビニルは、本発明の主旨を損なわない範囲で、必要に応じて他の重合性単量体に由来する構造単位を有していてもよい。当該他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩若しくは4級塩、N−メチロールアクリルアミドまたはその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩若しくは4級塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステル若しくは酸無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。ポリビニルエステル、特にポリ酢酸ビニルが他の単量体に由来する構造単位を有する場合は、その含有率はポリビニルエステルを構成する全構造単位に対して20モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることがより好ましい。
【0035】
ポリビニルエステル(特にポリ酢酸ビニル)のけん化反応は、特に制限されず、従来と同様にして行うことができ、例えば、アルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解法、加水分解法などが適用でき、そのうちでも、メタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり好ましく採用される。
【0036】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、重合度が100〜3000、更には500〜2500、特に1000〜2000の範囲にあり、且つけん化度が95モル%以上、更には98モル%以上、特に99モル%以上であるポリビニルアルコール系重合体をアセタール化してなるポリビニルアセタールを用いて形成されていることが、ポリビニルアセタールフィルムを製造する際の成形性が優れたものになり、ポリビニルアセタールフィルムの力学特性などが良好になり、しかも金属部材の腐食防止などの点から好ましい。
ここで、本明細書におけるポリビニルアルコール系重合体の重合度は、JIS K 6726:1994年に準じて測定される重合度をいい、ポリビニルアルコール系重合体を再けん化し、精製した後に30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
また、本明細書におけるポリビニルアルコール系重合体のけん化度は、ポリビニルアルコール系重合体が有する、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる構造単位(典型的には酢酸ビニル単位)とビニルアルコール単位の合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)を意味し、JIS K 6726:1994年の記載に準じて測定することができる。
【0037】
ポリビニルアルコール系重合体をアルデヒド類でアセタール化してポリビニルアセタールにするためのアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミリスチンアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、ステアリルアルデヒド、トリルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどを挙げることができる。本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール系重合体を前記したアルデヒド類の1種または2種以上でアセタール化したものであることができる。
また、必要に応じて、本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールは、上記したアルデヒド類と共に、多官能アルデヒド類、アルデヒド基以外の官能基を有するアルデヒド類などを少割合(好ましくは全アルデヒド類の20質量%以下)で用いてポリビニルアルコール系重合体をアセタール化したものであってもよい。
【0038】
そのうちでも、本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール系重合体を炭素数1〜12のアルデヒド化合物でアセタール化したポリビニルアセタールであることが好ましく、ポリビニルアルコール系重合体を炭素数1〜6のアルキルアルデヒド化合物でアセタール化したポリビニルアセタールであることがより好ましく、ポリビニルアルコール系重合体を炭素数1〜4のアルキルアルデヒド化合物でアセタール化したポリビニルアセタールであることが更に好ましく、ポリビニルアルコール系重合体をブチルアルデヒドでアセタール化したポリビニルブチラールであることが特に好ましい。ポリビニルブチラールを用いて形成したフィルムは、力学特性に優れており、太陽電池モジュールや合わせガラスの製造に適している。
【0039】
ポリビニルアセタールを得るためのポリビニルアルコール系重合体のアセタール化方法は特に制限されないが、ポリビニルアセタールを工業的に大量に製造するためには、ポリビニルアルコール系重合体を、高温下、例えば90℃以上の温度で水に十分に溶解させてポリビニルアルコール系重合体水溶液を予め調製しておき、ポリビニルアルコール系重合体が均一に溶解した水溶液中で、酸性条件下にアルデヒド類を反応させる方法が好ましく採用される。
その際のポリビニルアルコール系重合体水溶液におけるポリビニルアルコール系重合体の濃度は、5〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、8〜15質量%が更に好ましい。ポリビニルアルコール系重合体の濃度が低すぎるとポリビニルアセタールの生産性が悪くなる恐れがあり、一方ポリビニルアルコール系重合体の濃度が高すぎると、反応中に攪拌が困難になり、またポリビニルアルコール系重合体の分子間の水素結合によるゲル化が起こり、反応に斑が生ずる恐れがある。
【0040】
ポリビニルアルコール系重合体の水溶液中で、酸性条件下にアルデヒド類を反応させてアセタール化を行うための触媒としては、無機酸および有機酸のいずれもが使用可能であり、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸などの無機酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸を挙げることができる。中でも、充分な反応速度が得られ、しかも反応後の洗浄が容易であることから、無機酸が好ましく用いられ、特に塩酸、硫酸、硝酸がより好ましく用いられる。反応系における酸触媒の濃度は用いる酸触媒の種類によるが、塩酸、硫酸、硝酸の場合には、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液1リットルに対して、これらの酸を0.01〜5mol、特に0.1〜2molの割合で添加することが好ましい。
ポリビニルアルコール系重合体の水溶液中での酸の濃度が低すぎると、反応速度が遅くなり、目的とするアセタール化度および物性を有するポリビニルアセタールを得るのに時間がかかる恐れがある。一方、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液中での酸の濃度が高すぎると、反応を制御することが困難になると共に、アルデヒドの3量体が生成し易くなる。
【0041】
ポリビニルアルコール系重合体にアルデヒド類を反応させてアセタール化する際のアルデヒド類および触媒の添加順序などは特に制限されず、従来から知られた方法により行うことができ、例えば、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液に上記した酸触媒を添加してからアルデヒド類を添加する方法、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液にアルデヒド類を添加した後に酸触媒を添加する方法、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液にアルデヒド類および酸触媒を同時に添加する方法、アルデヒド類および酸触媒を含む溶液にポリビニルアルコール系重合体の水溶液を添加する方法などを挙げることができる。その際に、アルデヒド類の添加および酸触媒の添加は、一度に行ってもよいしまたは複数回に分けて行ってもよい。
【0042】
ポリビニルアルコール系重合体のアルデヒド類によるアセタール化は、0〜80℃の温度範囲で行うことが好ましい。そのうちでも、ポリビニルアセタール粒子が析出するまでは0〜40℃、特に5〜20℃の比較的低温で反応を行い、次いでポリビニルアセタール粒子が析出した後は反応を完結させるためにそれよりも高い温度、例えば50〜80℃、特に65〜75℃の温度で更に反応を行うと、洗浄し易い多孔質状のポリビニルアセタールを生産性良く製造することができ、より好ましい。反応温度が高すぎると、ポリビニルアセタール同士が融着し、多孔質状のポリビニルアセタール粒子が得られにくくなる恐れがある。
【0043】
上記により得られるポリビニルアセタールの粒子は、残存する酸触媒やアルデヒド類などを効率的に除去するために、多孔質状であることが好ましい。多孔質状のポリビニルアセタール粒子を得るには、上記した反応温度の調節に加えて、反応液の粘度、攪拌速度、攪拌翼の形状、反応容器の形状、反応速度、触媒およびアルデヒド類の添加方法などを調整するとよい。
【0044】
上記により得られるポリビニルアセタールは、水の存在下で酸により分解してアルデヒド類を生ずるため、未反応のアルデヒド類の除去や酸の除去処理を行うのがよい。
一般的には、アルデヒド類の除去を行った後に、酸の除去処理を行うことが未反応のアルデヒド類を効率的に除去できる点から好ましい。
未反応のアルデヒド類の含有量が少ないポリビニルアセタールを得る方法としては、例えば、アルデヒド類の反応率が高くなる条件で反応を完結させる方法、水や水/アルコール混合溶媒などのような溶媒で充分に洗浄する方法、化学的にアルデヒド類を処理する方法などが挙げられる。
【0045】
ポリビニルアセタールに含まれる酸の除去方法としては、ポリビニルアセタール粒子をアルカリ化合物の水溶液で洗浄する方法、多量の水で洗浄する方法などを挙げることができる。その際に用いるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系化合物などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。着色防止の点からは無機金属の水酸化物が好ましく、ガラスとの接着性に悪影響を与えにくい点からアルカリ金属の水酸化物がより好ましく用いられる。
【0046】
酸を除去した後のポリビニルアセタールは、0.1〜30のアルカリタイター値を有することが好ましく、1〜20のアルカリタイター値を有することがより好ましい。ポリビニルアセタールのアルカリタイター値が低すぎると耐加水分解性が低下し、一方アルカリタイター値が高すぎるとポリビニルアセタールフィルムの製造時に着色が起こり易くなる。
なお、本明細書におけるポリビニルアセタールのアルカリタイター値とは、ポリビニルアセタール100gのアルカリ滴定(中和)に要する濃度0.01mol/Lの塩酸水溶液の量(mL)を表す。
【0047】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、JIS K6728:1977年の規定に基づき測定した酢酸ビニル単位[式:−CH
2−C(H)(−O−CO−CH
3)−で表される酢酸エステル基を有する未けん化単位]の含有率が、ポリビニルアセタールの質量に基づいて5質量%以下のポリビニルアセタールを用いて形成されていることが好ましく、酢酸ビニル単位の含有率が2質量%以下のポリビニルアセタールを用いて形成されていることがより好ましく、酢酸ビニル単位の含有率が1質量%以下のポリビニルアセタールを用いて形成されていることが更に好ましい。ポリビニルアセタールにおける酢酸ビニル単位の含有率が高いと、酢酸ビニル単位は、熱による分解や水分による加水分解によって、金属部材を腐食する酢酸を発生させるほか、酢酸の脱離によりポリビニルアセタール中にオレフィン結合を生成して着色し易くなる。
【0048】
また、本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールは、アセタール化に用いた酸触媒に由来する塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオンの含有量(複数のイオンを含有する場合はそれらの合計含有量)が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることが更に好ましい。これらの強酸イオンは、太陽電池モジュールなどに使用される金属部材の腐食の原因となるため、その含有量が少ないほど好ましい。
【0049】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコール系重合体をアルデヒド類で処理してアセタール化しただけのポリビニルアセタールであってもよいし、またはアルデヒド類で処理してアセタール化すると共に更に架橋または部分架橋したポリビニルアセタールであってもよい。架橋または部分架橋ポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルアセタール中に残存するビニルアルコール単位中の水酸基の一部を、ポリアルデヒド化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリカルボン酸無水物などの多官能性の水酸基反応性化合物(水酸基反応性架橋剤)と反応させて、架橋または部分架橋したポリビニルアセタールが挙げられる。
【0050】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、ポリビニルアセタール以外の他の成分を含有させずにポリビニルアセタール単独から形成されていてもよいし、またはポリビニルアセタールに可塑剤等のポリビニルアセタール以外の成分を配合したポリビニルアセタール組成物から形成されていてもよい。
そのうちでも、本発明のポリビニルアセタールフィルムを良好な成形性で生産性よく製造できることから、本発明のポリビニルアセタールフィルムは、可塑剤を配合したポリビニルアセタール組成物から形成されていることが好ましい。
【0051】
ポリビニルアセタールに配合する可塑剤の種類は特に制限されず、例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−フタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−フタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸−ジイソノニルエステルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。その中でも、可塑剤分子を構成する炭素の数と酸素の数の合計が28よりも高い可塑剤が、揮発性が低く高温でラミネートできる点から好ましく用いられる。それに相当するものとしては、例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸−ジイソノニルエステルなどを挙げることができる。これらの中でも、太陽電池用封止材または合わせガラス用中間膜の腐食防止特性を低下させることなく、少量で、所望の可塑化効果が得られる点から、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸−ジイソノニルエステルがより好ましく用いられる。
本発明のポリビニルアセタールフィルムを可塑剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成する場合は、可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール100質量部に対して、15〜50質量部が好ましく、20〜40質量部がより好ましい。
【0052】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタール組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着力調整剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物などの1種または2種以上を含有していてもよい。
本発明のポリビニルアセタールフィルムが、酸化防止剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、酸化防止剤として、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの1種または2種以上を含有することができる。その中でも、フェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
本発明のポリビニルアセタールフィルムが酸化防止剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、ポリビニルアセタール100質量部に対して、酸化防止剤の含有量が0.001〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。
【0053】
本発明のポリビニルアセタールフィルムが紫外線吸収剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤などの1種または2種以上を含有することができる。
本発明のポリビニルアセタールフィルムが紫外線吸収剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、紫外線吸収剤の含有量は、ポリビニルアセタールの質量に基づいて、10〜50,000ppmであることが好ましく、100〜10,000ppmであることがより好ましい。
【0054】
本発明のポリビニルアセタールフィルムが接着力調整剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、例えば、特許文献5に開示されている接着力調整剤の1種または2種以上を含有することができ、そのうちでも有機酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩が好ましく、特に酢酸カリウムおよび酢酸マグネシウムの一方または両方がより好ましく用いられる。
本発明のポリビニルアセタールフィルムが接着力調整剤を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、接着力調整剤の含有量は、ポリビニルアセタールの質量に基づいて、1〜10,000ppmであることが好ましく、5〜1,000ppmであることがより好ましく、10〜300ppmであることが更に好ましい。
接着力調整剤の最適な含有量は、接着力調整剤の種類、ポリビニルアセタールフィルムの用途、適用箇所などによって異なるが、ポリビニルアセタールフィルムのガラスへの接着力が、特許文献5に記載されているパンメル試験(Pummel test)において、一般にはその数値が3〜10の範囲になるように調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合はその数値が3〜6の範囲になるように調整することがより好ましく、また高いガラス飛散防止性を必要とする場合はその数値が7〜10の範囲になるように調整することがより好ましい。ポリビニルアセタールフィルムに対して高いガラス飛散防止性能が求められる場合は、接着力調整剤を添加しないことも有用な方法である。
【0055】
本発明のポリビニルアセタールフィルムが機能性無機化合物を含有するポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、機能性無機化合物として、例えば、光反射材料、光吸収材料、熱伝導性改良材料、電気特性改良材料、ガスバリア性改良材料、力学物性改良材などを用いることができる。
【0056】
本発明のポリビニルアセタールフィルムの厚みは特に制限されないが、封止性能、ラミネート工程のサイクルタイムの短縮化などの点から、一般的には、厚みが0.38〜2.28mmであることが好ましく、0.50〜1.52mmであることがより好ましい。ポリビニルアセタールフィルムの厚みが薄すぎると、太陽電池用封止材として用いたときに太陽電池セルや機能性ユニットの周りの空間を充分に充填(封止)しにくくなり、一方ポリビニルアセタールフィルムが厚すぎると、ポリビニルアセタールフィルム自体のコストが高くなり、しかもラミネート工程のサイクルタイムが長くなって生産性が低下する傾向がある。
【0057】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、200℃の加熱溶融下に直径1mmの円形ダイから45mm/秒の速度でストランド状に吐出させて吐出速度の5倍の速度で引き取ったときに、0.5〜2.5cNの範囲内のメルトテンションを有するポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物から形成されていることが好ましく、前記メルトテンションが0.6〜2.0cNの範囲にあるポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物から形成されていることがより好ましく、前記メルトテンションが0.7〜1.5cNの範囲にあるポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物から形成されていることがさらに好ましい。
ここで、本明細書における前記したメルトテンション(溶融張力)は、ポリビニルアセタールフィルムが他の添加剤を含有しないポリビニルアセタール単独から形成されている場合はポリビニルアセタール自体のメルトテンションをいい、またポリビニルアセタールフィルムがポリビニルアセタールに何らかの添加剤を含有させたポリビニルアセタール組成物から形成されている場合は、フィルムを形成している当該ポリビニルアセタール組成物のメルトテンションをいう。
前記したメルトテンションが2.5cNを超えるポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物を用いた場合には、ポリビニルアセタールフィルムを安定して成形することが困難になり易い。一方、ポリビニルアセタールフィルムが、メルトテンションが0.5未満のポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物から形成されていると、ポリビニルアセタールフィルムを太陽電池モジュール、合わせガラスなどの製造に用いたときに、ポリビニルアセタールフィルムの溶融物がガラス板などの基材の間から外部に流出し、太陽電池モジュールや合わせガラスの仕上がりが不良になり易く、しかも製造設備を汚染しその清掃に時間を要するようになり生産性が低下し易くなる。なお、上記メルトテンションは、ポリビニルアセタールの重合度や、ポリビニルアセタール組成物に含まれる可塑剤量に依存する。
【0058】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、平坦な表面を有していてもまたは表面に凹凸を設けてあってもよい。ポリビニルアセタールフィルムの表面に凹凸を設けておくと、太陽電池モジュール、合わせガラスなどを製造するためにポリビニルアセタールフィルムをガラス板やその他の部材にラミネートする際に脱気性を高めることができる。
ポリビニルアセタールフィルムの表面に凹凸を設ける場合は、従来公知の方法を採用でき、例えば、押し出し条件を調整することによりメルトフラクチャー構造を設ける方法、押し出したフィルムにエンボス構造を付与する方法などが挙げられる。
【0059】
本発明のポリビニルアセタールフィルムの製造方法は特に制限されず、スキン層A/コア層C/スキン層Bからなる3層構造を有し且つ本発明で規定する要件を満たすポリビニルアセタールフィルムを製造できるいずれの方法で製造してもよい。
そのうちでも、本発明のポリビニルアセタールフィルムは、以下の方法で円滑に製造される。
【0060】
[本発明のポリビニルアセタールフィルムの好適な製造方法]
ポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物を用いて、押出機を使用して溶融押出成形法によりポリビニルアセタールフィルムを製造する。
その際に、フィルムの製造原料であるポリビニルアセタールまたはポリビニルアセタール組成物[以下これらを総称して「ポリビニルアセタール(組成物)」ということがある]としては、200℃の加熱溶融下に直径1mmの円形ダイから45mm/秒の速度でストランド状に吐出させて吐出速度の5倍の速度で引き取ったときに、0.5〜2.5cNのメルトテンション、更には0.6〜2.0cNのメルトテンション、特に0.7〜1.5cNのメルトテンションを有するポリビニルアセタール(組成物)が好ましく用いられる。
押し出し時のポリビニルアセタール(組成物)の温度(溶融混練時およびダイス部分での樹脂温度)は150〜250℃であることが好ましく、180〜230℃であることがより好ましい。ポリビニルアセタール(組成物)の温度が高すぎるとポリビニルアセタールの分解が生じて揮発性物質の含有量が多くなり、一方ポリビニルアセタール(組成物)の温度が低すぎるとポリビニルアセタール(組成物)中に元々含まれる揮発性物質が揮散しにくくなってやはり揮発性物質の含有量が多くなる。揮発性物質をポリビニルアセタール(組成物)から効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
【0061】
押出機を使用して溶融押出成形法によってポリビニルアセタールフィルムを製造するに当たって、ダイスの平均リップギャップ(平均リップクリアランス)を最終的に得られるポリビニルアセタールフィルムの厚さの100〜135%に調整しておき、当該ダイスからポリビニルアセタール(組成物)を溶融押し出しした後に直ちに温度10〜40℃の水浴で急冷し、次いでテンションをかけずに非緊張状態で30〜70℃で熱処理(緩和処理)を行うことによって、本発明で規定する上記の式(I)〜(III)を少なくとも満足し、場合により更に上記の式(IV)、(V)および(VI)のうちの1つまたは2つ以上を満足する、スキン層A/コア層C/スキン層Bからなる3層構造を有する本発明のポリビニルアセタールフィルムを得ることができる。
【0062】
押出成形に使用されるダイスは、押出口となるスリットを形成すべく互いに間隙を設けて向かい合わせて配置した2つの部材の先端部分のそれぞれが一般にリップと称されており、本明細書における「ダイスのリップギャップ」とは、向かい合う2つのリップの間隙をいう。ポリビニルアセタールフィルムの製造に当たっては、フラットダイスを用いるTダイ法、およびサーキュラーダイスを用いるインフレーション法のいずれもが採用でき、そのうちでもフラットダイスを用いるTダイ法が、ダイスから押し出したフィルムの水浴中での急冷が容易であることから好ましく採用される。
【0063】
ダイスのリップギャップは、ダイスのスリットの幅方向全体(フラットダイの場合)または全周(サーキュラーダイスの場合)にわたって全く同じになっているとは限らず、多少の差があることもあることから、本発明では、フラットダイスのスリットの幅方向に1cmごとに測定した測定値の平均値またはサーキュラーダイスの環状のスリットの全周にわたって1cmごとに測定した測定値の平均値を採って、「ダイスの平均リップギャップ」とした。
ダイスリップのそれぞれの位置でのリップギャップの測定は、例えば、所定の厚さの金属プレートを用い、測定位置において当該金属プレートを最大で何枚重ねてリップに挿入できるかを順次試行する方法により測定できる。
リップギャップの調整については、あらかじめリップギャップが固定されたダイスを用いてもよいし、条件によってリップギャップを適宜調整することが求められる場合には、そのようなリップギャップ調整手段が設けられた形態のダイスを用いればよい。リップ開度調整手段としては、ダイスボルトによる手動調整手段、ヒートボルト方式、ロボット方式、リップヒーター方式、圧電素子方式などによる自動調整手段などがあるが、これらのなかでは、熱可塑性樹脂に対する汎用性が高いことから、ヒートボルト方式による自動調整手段が好ましい。
【0064】
本発明のポリビニルアセタールフィルムの製造に当たっては、製膜時のダイスの平均リップギャップを、最終的に得られるポリビニルアセタールフィルムの厚みに対して、上記した100〜135%の範囲にしておくことが重要であり、110〜125%の範囲にすることが好ましく、115〜120%の範囲にすることがより好ましい。
ダイスの平均リップギャップを前記した特定の範囲とすることにより、ポリビニルアセタールフィルムの表面にかかる圧力が適切な範囲になるため、本発明で規定する特定の式を満足するスキン層がポリビニルアセタールフィルムの両面に形成される。
ダイスのリップギャップが最終的に得られるポリビニルアセタールフィルムの厚みに対して135%を超えると、フィルムの表面にかかる圧力が小さいため、スキン層の形成が阻害されて、密着し易いポリビニルアセタールフィルムとなってしまい、太陽電池モジュールや合わせガラスなどの製造に用いた際に、レイアップ時の位置の微調整が困難になり易い。一方、ダイスのリップギャップが最終的に得られるポリビニルアセタールフィルムの厚みに対して100%未満であると、フィルム表面に大きな圧力がかかるため、分子の配向が必要以上に進行してスキン層の複屈折率が高くなりすぎ、収縮しやすいポリビニルアセタールフィルムとなるおそれがある。
【0065】
ダイスより溶融押し出しされたポリビニルアセタールフィルムを、上記した10〜40℃の水浴で急冷することが重要であり、それによって、スキン層およびコア層の層構造が安定化される。水浴の温度は、20〜30℃であることがより好ましい。水浴の温度が高すぎると、層構造の安定化までに時間がかかり、スキン層の形成が阻害されることがある。一方、水浴の温度が低すぎると、ポリビニルアセタールフィルムにかかる張力が大きくなることで、長さ方向(MD)の複屈折率が高くなりすぎて、収縮しやすいポリビニルアセタールフィルムとなることがある。
【0066】
さらに、冷却後にポリビニルアセタールフィルムのストレスを緩和するために、テンションをかけずに(緊張せずに)熱処理する必要があり、この熱処理の温度(緩和温度)は上記した30〜70℃であることが重要であり、30〜60℃であることが好ましい。緩和温度が高すぎるとポリビニルアセタールフィルム表面の密着性が強くなり、一方緩和温度が低すぎると収縮し易いポリビニルアセタールフィルムとなる。
また、熱処理の時間(緩和時間)は、1〜90分であることが好ましく、5〜60分であることがより好ましく、10〜45分であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明のポリビニルアセタールフィルムは、用途、使用目的などに応じて、1枚のままで使用してもよいし、2枚以上を積層して用いてもよい。
本発明のポリビニルアセタールフィルムの用途は特に制限されず、例えば、太陽電池モジュールを製造する際の封止材、合わせガラス用の中間膜などとして用いることができる。
【0068】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを太陽電池用封止材として用いる場合は、得られる太陽電池モジュールの構成や種類(タイプ)は特に制限されず、封止材を用いて製造される太陽電池モジュールであればいずれでもよい。
何ら限定されるものではないが、本発明のポリビニルアセタールフィルムは、例えば、表面側透明保護部材/表面封止材/太陽電池セル/裏面封止材/裏面側保護部材のように太陽電池セルの両側から封止材で挟む構成を有する太陽電池用封止材、表面側透明保護部材/太陽電池セル/封止材/裏面側保護部材のような構成を有する太陽電池用封止材、表面側透明保護部材/封止材/太陽電池セル/裏面側保護部材のような構成を有する太陽電池用封止材として用いることができる。
【0069】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを封止材として用いて製造した太陽電池モジュールにおける太陽電池セルも特に制限されず、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウム・砒素、CIGS、カドミウム・テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系、色素増感、有機薄膜などの有機系等の各種太陽電池セルを用いることができる。
【0070】
また、太陽電池モジュールを構成する前記した表面側透明保護部材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などの板またはシートを用いることができる。また、太陽電池モジュールを構成する前記した裏面保護部材としては、例えば、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートを用いることができ、具体的には、例えば、錫、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層のシートを用いることができる。
【0071】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを封止材として用いて太陽電池モジュールを製造する際の製法は、特に制限されず、従来と同様の製法を採用することができ、例えば、予め製造しておいた本発明のポリビニルアセタールフィルムからなる封止材シートを、表面側透明保護部材と太陽電池セルとの間および/または太陽電池セルと裏面側保護部材との間に挟んだ状態でポリビニルアセタールフィルムの溶融温度またはそれ以上の温度で圧着する方法によって製造することができる。
【0072】
太陽電池モジュールの製造時に真空ラミネーター装置を使用する場合は、太陽電池モジュールの製造時に従来から用いられている真空ラミネーター装置のいずれもが使用できる。真空ラミネーター装置を用いて太陽電池モジュールを製造する場合は、1〜30000Paの減圧下に、100〜200℃、特に130〜170℃の温度でラミネートして圧着する方法が好ましく採用される。
また、太陽電池モジュールの製造時に真空バッグまたは真空リングを使用する場合は、例えば、特許文献6などに記載されている真空バッグまたは真空リングを使用して、約20000Paの圧力下に130〜170℃でラミネート・圧着することによって太陽電池モジュールを製造することができる。
【0073】
また、ニップロールを用いて太陽電池モジュールを製造する場合は、例えば、ポリビニルアセタールフィルムを形成するポリビニルアセタールの流動開始温度よりも低い温度で1回目の圧着を行って予備接着した後、それよりも高い流動開始温度に近い条件で2回目の圧着を行って第2回目の予備接着を行うかまたは最終接着を行い、次いで、最終接着を行っていない場合(1回目も2回目も仮接着である場合)には、更にオートクレーブ処理(最終接着)する方法などを採用することができる。具体的には、例えば、本発明のポリビニルアセタールフィルムよりなる封止材を赤外線ヒーターなどで30〜100℃に加熱して表面側透明保護部材、太陽電池セル、裏面側保護部材などにラミネートし、ロールで圧縮・脱気して1回目の予備接着を行った後、さらに50〜150℃に加熱したロールで圧着して最終接着または2回目の予備接着を行い、最終接着を行っていない場合には、更に、例えば、約1〜1.5MPaの圧力下で、130〜155℃の温度で約2時間オートクレーブ処理して太陽電池モジュールを製造する方法などを採用することができる。
【0074】
本発明のポリビニルアセタールフィルムを封止材として用いて製造した太陽電池モジュールは、太陽光が照射される窓、壁、屋根、サンルーム、防音壁、ショーウィンドー,バルコニー、手すりなどの部材自体として用いるか、それらの箇所に取り付けることによって、或いは会議室などの仕切りガラス部材、家電製品などとして使用することによって、太陽から照射された光エネルギーを電力に変換することができる。また、本発明のポリビニルアセタールフィルムよりなる封止材を用いた太陽電池モジュールを大量に設置することで太陽光発電所として利用することもできる。
【0075】
また、本発明のポリビニルアセタールフィルムを中間膜として用いて製造した合わせガラスは、耐貫通性、耐衝撃性、遮音性に優れ、しかも割れた際にもガラスの飛散が起きにくいため、自動車ガラス、建造物用の防犯ガラスとして有効に用いることができる。また、本発明のポリビニルアセタールフィルムに紫外線吸収剤や赤外線吸収剤など含有させたり、所定の着色や装飾などを施すことにより、そのような本発明のポリビニルアセタールフィルムを中間膜とする合わせガラスは、耐貫通性、耐衝撃性、遮音性、ガラスの飛散防止性という特性に加えて、紫外線や赤外線の吸収ガラス、装飾ガラスなどとしての機能をも発揮する。
【実施例】
【0076】
以下、実施例などにより本発明について更に詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
以下の例中、ブチルアルデヒドでアセタール化する前のポリビニルアルコール系重合体の重合度、ポリビニルブチラールにおけるビニルアルコール単位の含有率および酢酸ビニル単位の含有率は、上記したように、JIS K 6726:1994年(重合度)、JIS K6728:1977年(ビニルアルコール単位の含有率および酢酸ビニル単位の含有率)に従って測定した。
【0077】
また、以下の例中、ポリビニルブチラールフィルムのスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)ならびにポリビニルブチラールフィルムのスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDB、Δn
TDC)は上記した方法で測定した。
その際の測定機器としては、次のものを使用した。
*偏光顕微鏡:ニコン株式会社製「OPTIPHOTO POL」
*接眼マイクロメータ:日本光学株式会社製
*ベレックコンペンセータ:オリンパス株式会社製造
【0078】
また、ポリビニルブチラールフィルムの製造に用いたポリビニルブチラール組成物のメルトテンションは、以下の方法で測定した。
[フィルム製造用のポリビニルブチラール組成物のメルトテンション]
ポリビニルブチラール組成物を200℃に加熱して溶融し、当該200℃のポリビニルブチラール組成物を直径1mmの円形ダイから45mm/秒の速度でストランド状に吐出させて吐出速度の5倍の速度(225mm/秒)で引き取り、当該引き取り時のメルトテンション(溶融張力)をCEAST社製の「Rheologic 5000」を使用して測定した(以下、この方法で測定したメルトテンションを単に「メルトテンション」ということがある)。
【0079】
以下の例で得られたポリビニルブチラールフィルムを太陽電池モジュール用の封止材または合わせガラス用の中間膜として用いて、日清紡メカトロニクス株式会社製の真空ラミネーター(モジュールラミネーター)(研究開発用)を使用して、太陽電池モジュールまたは合わせガラスを製造した際の、ポリビニルブチラールフィルムをガラス板にレイアップする時の位置の微調整の容易性、加熱圧着したときのポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性については、以下の評価基準に従って評価した。
【0080】
[レイアップ時の位置の微調整の容易性の評価基準]
○:ガラス板に対するポリビニルブチラールフィルムの密着が無く、ガラス板上でポリビニルブチラールフィルムを容易に移動させることができ、レイアップ時におけるポリビニルブチラールフィルムの配置位置の微調整を容易に行うことができる。
×:ガラス板に対してポリビニルブチラールフィルムが密着し易く、レイアップ時におけるポリビニルブチラールフィルムの配置位置の微調整が困難である。
【0081】
[加熱圧着したときのポリビニルブチラールフィルムの収縮性の評価基準]
○:加熱加圧したときにポリビニルブチラールフィルムの収縮がなく、表面側透明保護部材(ガラス板)と太陽電池セルと裏面側保護部材(ガラス板)との間の空間がポリビニルブチラール組成物によって完全に封止されていて、空隙や未封止部分が無い(太陽電池モジュールの場合)、或いは2枚のガラス板の間にポリビニルブチラール組成物から形成される中間膜が空隙や非接着部を生ずることなく完全に充填されている。
×:加熱加圧したときにポリビニルブチラールフィルムの収縮が生じて、表面側透明保護部材(ガラス板)と太陽電池セルと裏面側保護部材(ガラス板)との間の空間がポリビニルブチラール組成物によって完全に封止されておらず、ポリビニルブチラールフィルムと、表面側透明保護部材(ガラス板)、太陽電池セルおよび裏面側保護部材(ガラス板)のいずれかとの接触部分などに空隙や未封止部分が生じている(太陽電池モジュールの場合)、或いはポリビニルブチラール組成物から形成される中間膜と両側の2枚のガラス板の一方または両方との間に空隙や中間膜のない箇所が生じている。
【0082】
[加熱圧着したときのポリビニルブチラールフィルムの端部からの流出性の評価基準]
○:表面側透明保護部材(ガラス板)と太陽電池セルとの間および太陽電池セルと裏面側保護部材(ガラス板)との間にポリビニルブチラールフィルムをレイアップ(配置)して加熱加圧して太陽電池モジュールを製造したときに、または2枚のガラス板の間にポリビニルブチラールフィルムをレイアップ(配置)して合わせガラスを製造したときに、ガラス板の端部からのポリビニルブチラール組成物の流出がない。
×:表面側透明保護部材(ガラス板)と太陽電池セルとの間および太陽電池セルと裏面側保護部材(ガラス板)との間にポリビニルブチラールフィルムをレイアップ(配置)して加熱加圧して太陽電池モジュールを製造したときに、または2枚のガラス板の間にポリビニルブチラールフィルムをレイアップ(配置)して合わせガラスを製造したときに、ガラス板の端部からのポリビニルブチラール組成物の流出が生じている。
【0083】
《実施例1》[ポリビニルブチラールフィルム(a)の製造]
(1) 重合度1700のポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化したポリビニルブチラール(ビニルアルコール単位の含有率=19質量%、酢酸ビニル単位の含有率=1質量%)75質量部およびトリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)25質量部を25℃で混合してポリビニルブチラール組成物を調製した。
このポリビニルブチラール組成物のメルトテンションを上記した方法で測定したところ、0.6cNであった。
(2) 上記(1)で得られたポリビニルブチラール組成物を用いて、二軸押出機(スクリュー径40mm)を使用して、ダイス[Tダイ、リップ部の幅=400mm、平均リップギャップ=0.91mm(最終的に得られたフィルムの厚さの120%)]から、押し出し時のポリビニルブチラール組成物の温度220℃、吐出量240kg/hrの条件下にフィルム状に押し出した後、30℃の水浴中で急冷し、次いで水浴から取り出して、非緊張状態で40℃で30分間熱処理してストレス緩和を行って、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールフィルム[以下このフィルムを「ポリビニルブチラールフィルム(a)」という]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリビニルブチラールフィルム(a)のスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)ならびにスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDB、Δn
TDC)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0084】
《実施例2》[ポリビニルブチラールフィルム(b)の製造]
(1) 実施例1で用いたのと同じポリビニルブチラール組成物を用いて、二軸押出機(スクリュー径40mm)を使用して、ダイス[Tダイ、リップ部の幅=400mm、平均リップギャップ=0.84mm(最終的に得られたフィルムの厚さの110%)]から、押し出し時のポリビニルブチラール組成物の温度220℃、吐出量240kg/hrの条件下にフィルム状に押し出した後、20℃の水浴中で急冷し、次いで水浴から取り出して、非緊張状態で30℃で30分間熱処理してストレス緩和を行って、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールフィルム[以下このフィルムを「ポリビニルブチラール(b)」という]を製造した。
(2) 上記(1)で得られたポリビニルブチラールフィルム(b)のスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)ならびにスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDB、Δn
TDC)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0085】
《実施例3》[ポリビニルブチラールフィルム(c)の製造]
(1) 重合度1700のポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化したポリビニルブチラール(ビニルアルコール単位の含有率=19質量%、酢酸ビニル単位の含有率=1質量%)を得る際に、1質量%のグルタルアルデヒド(架橋剤)を添加して部分架橋ポリビニルブチラールを製造した。
これにより得られた部分架橋ポリビニルブチラール75質量部およびトリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)25質量部を25℃で混合してポリビニルブチラール組成物を調製した。
このポリビニルブチラール組成物のメルトテンションを上記した方法で測定したところ1.5cNであった。
(2) 上記(1)で得られたポリビニルブチラール組成物を用いて、二軸押出機(スクリュー径40mm)を使用して、ダイス[Tダイ、リップ部の幅=400mm、平均リップギャップ=0.91mm(最終的に得られたフィルムの厚さの120%)]から、押し出し時のポリビニルブチラール組成物の温度220℃、吐出量240kg/hrの条件下にフィルム状に押し出した後、30℃の水浴中で急冷し、次いで水浴から取り出して、非緊張状態で40℃で30分間熱処理してストレス緩和を行って、厚さ0.76mmの部分架橋ポリビニルブチラールフィルム[以下このフィルムを「ポリビニルブチラールフィルム(c)」という]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリビニルブチラールフィルム(c)のスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)ならびにスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDB、Δn
TDC)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0086】
《比較例1》[ポリビニルブチラールフィルム(d)の製造]
(1) 実施例1で用いたのと同じポリビニルブチラール組成物を用いて、二軸押出機(スクリュー径40mm)を使用して、ダイス[Tダイ、リップ部の幅=400mm、平均リップギャップ=0.745mm(最終的に得られたフィルムの厚さの98%)]から、押し出し時のポリビニルブチラール組成物の温度220℃、吐出量240kg/hrの条件下にフィルム状に押し出した後、20℃の水浴中で急冷し、次いで水浴から取り出し、ストレス緩和のための熱処理を行わずに、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールフィルム[以下このフィルムを「ポリビニルブチラールフィルム(d)」という]を製造した。
(2) 上記(1)で得られたポリビニルブチラールフィルム(d)のスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)ならびにスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDB、Δn
TDC)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0087】
《比較例2》[ポリビニルブチラールフィルム(e)の製造]
(1) 実施例1で用いたのと同じポリビニルブチラール組成物を用いて、二軸押出機(スクリュー径40mm)を使用して、ダイス[Tダイ、リップ部の幅=400mm、平均リップギャップ=1.06mm(最終的に得られたフィルムの厚さの139%)]から、押し出し時のポリビニルブチラール組成物の温度220℃、吐出量240kg/hrの条件下にフィルム状に押し出した後、50℃の空気中で自然冷却し、次いで非緊張状態で70℃で30分間熱処理してストレス緩和を行って、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールフィルム[以下このフィルムを「ポリビニルブチラールフィルム(e)」という]を製造した。
(2) 上記(1)で得られたポリビニルブチラールフィルム(e)のスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの長さ方向(MD)の複屈折率(Δn
MDA、Δn
MDB、Δn
MDC)ならびにスキン層A、スキン層Bおよびコア層Cの幅方向(TD)の複屈折率(Δn
TDA、Δn
TDB、Δn
TDC)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0088】
《実施例4》[太陽電池モジュールの製造]
(1) 表面側透明保護部材および裏面側保護部材として、縦×横×厚さ=350mm×350mm×3.2mmのガラス板2枚を準備した。
また、太陽電池セル(京セラ社製「RSC150SF−1/1」)(サイズ:縦×横=150mm×155mm)4個を縦2個×横2個で方形に配置し直列に結線した太陽電池セルセットを1組準備した。
(2) 実施例1で製造したポリビニルブチラールフィルム(a)を縦×横=350mm×350mmのサイズに裁断して、封止材用のフィルム片2枚を作製した。
(3) 上記(1)で準備した表面側透明保護部材(ガラス板)の上に、上記(2)で作製したポリビニルブチラールフィルム片の1枚をレイアップ(積層、重ね合わせ)し、その際にレイアップ位置の微調整の容易性について上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) 上記(3)で得られた、表面側透明保護部材(ガラス板)上にポリビニルブチラールフィルム片をレイアップしたものの上に、上記(1)で準備した太陽電池セルセットを載せ、その上に更に上記(2)で作製したフィルム片の残りの1枚を重ね、その上に裏面側保護部材(ガラス板)を重ねて、表面側透明保護部材(ガラス板)/フィルム片/太陽電池セルセット/フィルム片/裏面側保護部材(ガラス板)からなる積層物を製造した。
(5) 上記(4)で製造した積層物を、日清紡メカトロニクス株式会社製の真空ラミネーター(モジュールラミネーター)「LAMINATOR 1522N」内に収容し、100Paの減圧下に160℃で15分間加熱し、その後50kPa、160℃で15分間保持して、太陽電池モジュールを製造した。
これにより得られた太陽電池モジュールを目視により観察して、ポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0089】
《実施例5》[合わせガラスの製造]
(1) 縦×横×厚さ=350mm×350mm×3.2mmのガラス板2枚を準備した。
(2) 実施例2で製造したポリビニルブチラールフィルム(b)を縦×横=350mm×350mmのサイズに裁断して、中間膜用のフィルム片1枚を作製した。
(3) 上記(1)で準備した1枚のガラス板の上に、上記(2)で作製したフィルム片をレイアップし、その際にレイアップ位置の微調整の容易性について上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) 上記(3)で得られた、ガラス板上にフィルム片をレイアップしたものの上に、上記(1)で準備したもう1枚のガラス板を重ねて、ガラス板/フィルム片/ガラス板からなる積層物を製造した。
(5) 上記(4)で製造した積層物を、実施例4で使用したのと同じ真空ラミネーター内に収容し、100Paの減圧下に160℃で15分間加熱し、その後50kPa、160℃で15分間保持して合わせガラスを製造した。得られた合わせガラスを目視により観察して、ポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0090】
《実施例6》[太陽電池モジュールの製造]
(1) 封止材用のフィルム片として、実施例3で得られたポリビニルブチラールフィルム(c)を縦×横=350mm×350mmのサイズに裁断したフィルム片2枚を用いたこと以外は、実施例4と同じ操作を行って、太陽電池モジュールを製造した。
その際に、表面側透明保護部材(ガラス板)の上に、ポリビニルブチラールフィルム(c)から作製した1枚のフィルム片をレイアップした際のレイアップ位置の微調整の容易性について上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2) また、上記(1)で得られた太陽電池モジュールを目視により観察して、ポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0091】
《実施例7》[太陽電池モジュールの製造]
(1) 実施例1で得られたポリビニルブチラールフィルム(a)2枚を重ね合わせて、温度25℃、圧力5MPaの条件下に加圧して、厚さ1.52mmの積層ポリビニルブチラールフィルムを製造した。
(2) 封止材用のフィルム片として、上記(1)で得られた積層ポリビニルブチラールフィルムを縦×横=350mm×350mmのサイズに裁断したフィルム片2枚を用いたこと以外は、実施例4と同じ操作を行って、太陽電池モジュールを製造した。
その際に、表面側透明保護部材(ガラス板)の上に、積層ポリビニルブチラールフィルムから作製した1枚のフィルム片をレイアップした際のレイアップ位置の微調整の容易性について上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) また、上記(2)で得られた太陽電池モジュールを目視により観察して、ポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0092】
《比較例3》[太陽電池モジュールの製造]
(1) 封止材用のフィルム片として、比較例1で得られたポリビニルブチラールフィルム(d)を縦×横=350mm×350mmのサイズに裁断したフィルム片2枚を用いたこと以外は、実施例4と同じ操作を行って、太陽電池モジュールを製造した。
その際に、表面側透明保護部材(ガラス板)の上に、ポリビニルブチラールフィルム(d)から作製した1枚のフィルム片をレイアップした際のレイアップ位置の微調整の容易性について上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2) また、上記(1)で得られた太陽電池モジュールを目視により観察して、ポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0093】
《比較例4》[太陽電池モジュールの製造]
(1) 封止材用のフィルム片として、比較例2で得られたポリビニルブチラールフィルム(e)を縦×横=350mm×350mmのサイズに裁断したフィルム片2枚を用いたこと以外は、実施例4と同じ操作を行って、太陽電池モジュールを製造した。
その際に、表面側透明保護部材(ガラス板)の上に、ポリビニルブチラールフィルム(e)から作製した1枚のフィルム片をレイアップした際のレイアップ位置の微調整の容易性について上記した評価基準にしたがって評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(2) また、上記(1)で得られた太陽電池モジュールを目視により観察して、ポリビニルブチラールフィルムの収縮性および端部からの流出性を上記した評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
上記の表1および表2の結果にみるように、本発明で規定する上記した式(I)〜(III)を満足する実施例1〜3のポリビニルブチラールフィルムは、太陽電池モジュールを製造する際の封止材として用いたときに、また合わせガラスを製造する際の中間膜として用いたときに、ガラス板などの部材への密着がなく、レイアップ時に微細な位置調整を良好に行うことができ、しかも収縮がなく、更にガラス板などの部材の端部からの樹脂の流出もなく、取り扱い性に優れ、高品質の太陽電池モジュールや合わせガラスを良好な作業性で生産性よく製造することができる。